最初に菜々花、次に瑠美と来て、順番的には次は菜々花に精子提供をするという形になるわけだが、俺はまだちょっと不安だった。瑠美がセックスについていろいろ教えてくれたのは俺が菜々花への精子提供をより良い形で出来るようにということなんだろうとは思ったが、一回目が済んだときに菜々花がさっさと部屋を出ていってしまったあの様子がどうしてもチラついた。
セックスの時以外でも瑠美とはわりと会話したのだが、菜々花はそうでもない。彼女は仕事に行っていた分、一緒に部屋にいる時間がルミよりずっと短いのだから当たり前といえば当たり前なのだが、それでもなんだか、『避けられているのでは』という気がしてならなかった。
「話してた感じ、トモヤスさんが嫌いとか苦手って感じじゃないと思いましたけど」
瑠美はそう言ってくれたのもあって、俺の気にしすぎなのかもしれないとも思う瞬間もあったが。
しかしそれにしても、最初会った時(この段階で言うと、つい2~3日前)は『こいつは好きになれない』と思った女の子のことをこんなに気にするようになっていたと思うと、なんだかおかしな話だ。男というのはセックスさせてくれる女の子を簡単に好きになってしまうらしい。
「…………じゃ、始める?」
寝室で下着姿の菜々花は明らかに不機嫌というか、口数が少なかった。本当に精子提供なんて出来るんだろうかという雰囲気で、流石の俺も気楽に『始めまーす』とは言えなかった。
「あの、怒ってます?こないだのこと……」
恐る恐る聞くと、菜々花は大きく溜め息をつく。
「別に」
俺は特別女の子心理に詳しい訳じゃなかったが、女の子の『別に』が『怒ってます』という意味だということくらいはわかっていたので、ペコペコ頭を下げてどうにかなだめた。
「瑠美が……」
菜々花がようやく(そしてまだためらいがちに)本音を口にしてくれた頃には、すでに寝室に入って10分か20分は経ってたんじゃないかと思う。
「なんで瑠美と一緒に寝たの?」
俺はその質問の意味が一瞬わからなかったのだが、昨日、瑠美にいろいろセックスについて教えてもらいながら一緒に寝てしまったことを思い出した。そのさらに前には、菜々花を『瑠美に悪い』と言ってベッドから追い出す形になってしまったことも。菜々花から見れば俺の態度はダブルスタンダードもいいところで、怒るのも当たり前だ。
それを理解した俺にためらいなどあろうはずもなく、さらに平謝りを続ける。
「本当に他意はなかったんです」とか「疲れててつい」とか、言い訳がましいことも言っていた気がするが。
「今日は私が一緒に寝るから」
結局、そんな形で決着がついた。「次瑠美とする時はちゃんと返して」ではないことは少し意外だったけれど、それで許してもらえるというなら断る理由もない。ずいぶん遠回りをしてから、菜々花へ二回目の精子提供が始まった。
俺は菜々花を後ろから軽く抱き締めるようにしながら、瑠美に教わった通り、なるべくゆっくり優しく愛撫を始める。ショーツの布地越しにクリトリスを軽く撫でるようにしながら、菜々花の声に注意を払う。
しかし、菜々花はなかなか『いい』とも『ダメ』とも『もっと』とも言ってくれなかった。
「はぁ、はぁ、は……」
と、やや高い声をもらすばかり。てっきり、瑠美は女性全般に通じる方法か、そうでないなら菜々花のツボを押さえた方法を教えてくれたものだとばかり思っていたから、アテの外れた俺は少し焦っていた。もちろん、単に俺がヘタクソで上手く感じさせることが出来ていないだけなのでは、とも思った。
ショーツを脱がせるタイミングすら掴めないまま、触れあうだけのためらいがちな愛撫を続けていると、
「ねぇ……精子、くれるんじゃないの?」
じれったくなったのか、菜々花はそう言って自分から脱ぎ始めた。そこで俺は久しぶりにこれが『セックス』ではなく『精子の提供』なんだと思い出した。
「あ、はい、そうだね……」
俺はさらに焦って、そのまま後ろから挿入しようとした。菜々花は抵抗しようとはしなくて、自然と側位の体勢になったのだが、
「あ、このカッコ、変だよ……」
不安になったのか痛かったのか、菜々花が甘えるような声で言った。それが思いの外かわいくて、俺は急に興奮してきてしまった。
「大丈夫、変じゃない変じゃない」
俺は身体を揺するようにしながらグリグリと腟内を押し広げた。菜々花が感じるようにとか、そんなことを考えている余裕はなかったのだが、
「あっ、あっ、変だってぇ……」
菜々花の声が甘ったるくなって、興奮しているのは俺だけじゃないんだと嬉しくなった。
「かわいい……菜々花、すごくエロいよ」
言ってて恥ずかしくなるような言葉だが、こういうことはキチンと伝えろというのが瑠美からの教えだ。俺は左手で菜々花の大きな胸(たぶんFカップくらいかもっとか)をわしづかみにしながらますます奥を突く。
この体勢での身体の動かし方は少しずつわかってきたけれど、まだ相手を感じさせられるようにとか、性感帯はどこかとかまで考える余裕はなかった。
「ぁっ、あっ、ダメ、ダメっ……」
この『ダメ』は『気持ちいい』。そう判断して安心すると、どちらかというと自分が気持ちよくなるために腰の動きを早めた。
「あんっ、あ、あっ、ダメ、んっ……っ!」
どんどん荒く、甘くなる菜々花の声があんまり可愛かったから、俺もますます興奮する。
「後ろから、気持ちいい?」
どう聞いていいかわからないから率直に言うしかなかったのだが、菜々花はちょっと身体をちぢこませてから、
「……っ!」
小さく頷いて答えてくれた。
「じゃあ……っ!」
挿入した状態のままちょっと強引に菜々花の身体を押し倒し、さらに腰を掴んで引き上げる。やや強引に、側位から後背位に移行した形だ。なんというか、菜々花も瑠美も最初は正常位だったから、もうひとつの王道(?)の体位として、後背位は一度やっておきたい気持ちがあったのだ。
「ぁ、すごい、ヘンタイっぽい……」
菜々花がクスッと笑うのが聞こえて、少なくとも嫌がってはないとわかると、俺は我慢できずに腰を動かした。
「あっ……!あ、あっ、あ、はぁ……っ」
女の子の後頭部、あとは背中とお尻しか見えないというのはちょっと寂しくはあるけれど、流石に動きやすさは抜群だなぁ……なんて調子でこの体位を冷静に分析しながら、正常位とは向きが変わっただけなのに全く違った腟の締める感触に、俺もなんだか情けないあえぎ声をもらしていたような気がする。
「はーっ、ぁ、あっ、あ、ヤバぃ……」
菜々花の声が途切れ途切れになってくると、体位のことばかりに意識が行っていた俺にさらなる欲が芽生え始める。
「どこ?どこが、ヤバい?気持ちいい?」
なるべくテンポよく途切れさせないように腰を打ち付けながら、そんなことを聞いたのは『菜々花を中でイかせたい』と欲張り始めたからだった。
「んんっ、んっ、わかんない、ぁ、わかんないよっ、あんっ、あっ、あ……」
わからないものはしかたない。俺はもう自分の欲と、種付けするという義務感だけで、菜々花の腰を強く掴んで打ち付け続けた。
「あ!もう、だめ、イクっ、嫌っ、ぁあ、あっあっ、あっ!」
「ごめん、もうちょっと……!」
はーっ、と、菜々花が大きく息を吸い込んで、たぶんイッたんじゃないかと思った。でも俺の限界はまだ少し先だ。
「っ……!」
これまでで一番激しいんじゃないかというくらいの勢いで、菜々花の腟をぐちゃぐちゃにするように何度もピストンすると、ようやく精液をぶちまける。ビックリするくらい長い射精の間、菜々花はぎゅっと腟を締めたままだったような気がする。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
俺は萎え始めたものを抜くのももったいなくて、菜々花の身体を引き起こすようにしてまた側位の体勢に戻った。
「ごめん、ちょっと興奮しすぎたかも……」
俺がそう言うと、息を整えていた菜々花はふふっと笑った。
「レイプされてるのかと思った、変な感じ」
とんでもないことを言っているのに口調は明るくて、こんなに機嫌のよさそうな菜々花は初めて見るとすら思った。
「ホントにごめん、菜々花がクッソエロかったから」
「バカじゃん」
あまりにも直球な罵倒に俺も笑うしかなかった。とにかく、俺が派手にやらかしたのにもかかわらずも楽しんでくれたというなら何よりで、俺はセックスの満足感よりも先に菜々花の機嫌がすっかり直ったことを喜んでいたように思う。
その後、すっかり疲れていた様子の菜々花はすぐに眠ってしまって、俺も約束通り一緒に寝ることにした。
二人とも平等に、不公平感を出さないように精子提供する。『取り決めを破ってないから』と油断してはいけないということを、俺はこの時改めて認識した……はずだと思う。