前回からだいぶ経過してしまいました。
いろいろあって更新していませんでしたが、記憶が鮮明なうちに当時を思い出しつつ続き書きます。
長々と二人のエピソードから語っていきますが、俺たちの関係を語る上で重要だと思い書かせいただきました。
お付き合いいただけたら幸いです。
あの一件からユキとは再び疎遠だった。
なんとなくLINEを送るのを躊躇し、ユキからも連絡もない。
そんな俺たちが次に会ったのはハロウィンのライブだった。
彼女の髪はウルフからまた変わってた。
会う度に髪型が変わるなぁ。
当時そんな風に思ったのは覚えてる。
ただ、ぶっちゃけるとこの日ユキがどういった髪型だったかなんてあんま覚えていない。
だからそんなユキが珍しく長年キープしてた、俺の思い出の中の姿で物語を進めていくよ。
白に近いクリームがかった茶色にゆるいウェーブの肩上ショート。
そして、前髪の隙間から覗くどこか世界を斜に見るような冷めた瞳。
一見キツそうに見えるが、どんなに笑ってもふいに見え隠れしてたから、思考がそうさせるってより生まれつきのものなんだろうな。
そんなキツめの顔に反してふわっとした印象のその髪は不思議とユキに良く似合っていた。
再開したユキはあの夜見せてくれたブラックナースではなく、それっぽいスカートに黒T。さらにはパークで買ったカチューシャでミニーマウスとか言って笑ってた。
最初に挨拶を交わして以降お互いに声をかける事もなく会話らしい会話はしていない。
付き合ってもない女といちゃいちゃしたのは初めてじゃなかった。しかし、いつもとはなにか違った。
たぶんだけど俺より歳上で手の届かなそうな存在のユキとあんな事をしてしまったっていうのが大きいと思う。
なんだかんだ他の女との関係は俺が主導権というか、俺のリードで成り立っていたんだ。
翻弄されるのは初めてだった。
今だって昔からの仲間と話す彼女は俺の知らないユキだ。
あの日の出来事は夢だったんじゃないか。そう思わせるほどに彼女を遠くに感じた。
否応なしに耳に入る会話は、どうやらユキの仮装に関するものみたいだった。
仮装が雑とか、そもそも仮装じゃないとか。
仲間と笑い合うユキはやっぱり俺とは住む世界が違って見えた。
「なぁタクミ!」
ふいに名前を呼ばれた。
なんだかむしゃくしゃするのは何故だろうな。
視線を落としていた手元のギターから顔を上げると、顔馴染みの常連はニヤニヤしながらユキを指差して言う。
「これなんの仮装か当ててみ?」
ミニーちゃんだろ。聞こえてた。
ただ、みんなの求める答えが違うってのも知ってる。
「ランドに遊びに来た客のコスプレ?」
あの夜のユキが頭をチラつくが、俺は平静を装って言葉を返した。周りの皆が笑う。
「違うって!この日の為に揃えたんだから、、、。ねっ?」
意味深な含み笑い。俺はおちょくられているのだろうか。
あのナース服をハロウィンのために用意したと確かに言っていた。
ふいに思いついたように着替えに行って見せてくれたじゃんか。
今更どうだっていいのかもしれない。しかし、俺はユキの意図が知りたかった。
「なぁ」
終演後、隙を見てユキの元へ向かった。
バッグをいじっていた彼女はしゃがみ込んだまま、なんてことない顔で俺へと視線を向ける。
「あのさ、、、」
今日初めて会話らしい会話をした気がする。
「んー?なぁに?」
あの日の事を再び話題に出すのが無性に恥ずかしい。なんだか俺だけが舞い上がってるみたいじゃん。
「いや、、、」
いざ彼女を目の前にすると言葉が出てこなかった。確認してどうなる。
彼女にとって俺はあの日限りの関係。
付き纏われたら迷惑だろう。
様々な思考が頭を巡った。
先に口を開いたのはユキだった。
「、、、あの日以来だね。アタシたち」
「あっ?」
小さく呟いたユキは俺が反応するよりも先に立ち上がり、ぐっと口元を俺の耳に寄せた。
170cmと少し。俺の身長だ。
そんな俺とたいして変わらない160台後半のユキは、底の厚いラバーソールで俺とほぼ同じ。俺の肩に肘を置き、そこに顎を乗せながらユキは耳元で囁くように言う。
「なんでミニーちゃん?て思ってる?」
俺はドキッとして言葉を詰まらせる。
心を読まれてるみたいじゃん。
「あんな衣装で外に出られないよ。だって、、、。エッチじゃん」
いろんな感情が混じって俺は何も言えなかった。ユキからあの話題を出してくるとは思わなかったし、すぐ近くには仲間もいる。
現にこの状況をぽか口で見てるし。
「まぁ、あの衣装の事は気にしないで。あっ。誰にも言っちゃダメよ?二人だけのヒミツね」
それだけ言って彼女は俺の肩から肘をどけた。
「じゃあまたね!」
肩がふっと軽くなり、俺の耳には彼女の余韻だけが残っていた。
イライラとドキドキが混じった複雑な心境だった。
俺のことバカにしてんのか?そんな気持ちとは裏腹に、心の中に確かに感じる高鳴り。
◇
ライブを終えたらその足でメンバーと打ち上げをするのが俺たちのルーティーンだった。その夜はメンバーの彼女たちを交えて地元のファミレス。
俺は彼女なんていないし、ぶっちゃけ居心地はよくない。
しかも今夜は俺とユキの関係性に話題は発展し、居心地は益々悪かった。
付き合ってない。友達だよ。
さっきからこればっか言ってる気がする。
現に付き合ってないんだから他に言いようがないよな。
「お前ら彼女いるんだから関係ねぇだろ」
ユキとこれ以上どうこうなんて可能性も薄いし、なんの意味もない話題だ。
全然楽しくない。
「そろそろ時間だな」
誰ともなしに口に出し、店を出たのは22時をまわる少し前だった。
店は22時過ぎると俺たちを追い出しにかかるんだ。高校生だからな。
そして俺がベッドに身を沈めたのは日付をとうに跨いだ深夜1時過ぎ。
寝る前にスマホを弄るのが毎日の日課だ。
2ちゃんねるのまとめサイトを読んでみたり、スマホに入ってる曲を耳コピしてDTMアプリに打ち込んでみたり。
この夜もそうやって過ごしてた。
ライブで他のバンドがコピーしてた気になる曲をYouTubeで検索したりな。
そして、どこかにユキからのLINEを期待している自分がいた。
「じゃあまたね!」
ひらひらと手を振りながらそう言って去っていくユキの背中が鮮明に脳裏に浮かんだ。
「またねって。いつだよ、、、」
思わず口をついた言葉。
俺の頭は彼女でいっぱいだった。悔しいけどな。
このまま受け身を続けていたら万が一の可能性をみすみす逃してしまうかもしれない。
お疲れ様くらいならLINEしてもいいかな。
でも変に思われないかな。
ちょっと気を抜けばユキのことばかり考えてる自分がいた。
考えれば考えるほど眠れなくなった。
俺は意を決してユキとのメッセージを開いた。
あの日、学校で受け取った”迎えに行くから待ってろ”ってのが最後のやり取り。
*今日はありがとね。お疲れ様!
んー。
打ち込んでは消してを繰り返した。
*話したいことがある。会いたい。
最終的に送ったのはこれだった。
今思い返すとキモいけど、当時はこれを送信した後に後悔なんてなかった。
既読はすぐについた。
*どうしたの?
最初の返信はこれだった。
本当にどうしただよな。
*何かあった?話きいてあげるから明日会う?
続け様に受信。
ユキは分割してメッセージを送るタイプ。
翌日はバイトだったからユキとは次の週末に会う事にした。
この夜の行動が俺の人生においてのひとつの大きな分岐点だったんだって今になって思う。
良くも悪くもな。
◇
「ごめんね!待った?」
駅前のロータリー。地元じゃ待ち合わせスポットで有名な素性のわからない子供の銅像の前で俺たちは落ち合った。
この日のユキは、丈の長い黒いふわふわニットにやっぱり黒のミニスカ。
足元は膝まである白黒ボーダーのソックスにラバーソールと、白と黒しかない地味な色味。
身長とハスキーな声も相まってやたらボーイッシュだった。
市外からも客が来る地元の大きなモールで買い物をして飯を食う。なんかもう、デートだった。
何人かの顔見知りに遭遇もしたけれど、なんだか気分がよかった。
「やっぱり地元だと知り合いが多いね。てかさ、今の子たち手つないでたね!初々しいなぁ」
ユキははしゃいでた。
楽しんでくれてる。
それが嬉しかった。
「んっ」
そして唐突に差し出される手のひら。
「えっ?」
「んっ。ほらっ」
ニットの先から覗く華奢な指先。少しごつごつしてるのはベースのせい。
俺はポケットに突っ込んでいた右手を彼女の手のひらに重ねた。
ユキの手は暖かくて、しばらくまともな男女関係を構築していなかった俺は少しの罪悪感と懐かしいトキメキってやつを感じていた。
「で、これからどうする?アタシに会いたいって、話があるんでしょ?」
ふいに発せられた言葉。
人々の雑踏の中、手を繋ぐ俺たちはどう映っているのだろうか。
幸せなカップル?
今の俺たちの関係は、ちょっと間違えば脆く崩れ去ってしまうハリボテみたいなもんだ。
このままデート気分で終えたら次はない。
「二人きりで話せる場所」
「うん。とりあえず車に行こうか」
◇
モールを後にした俺たちは当てもなく車を走らせた。
俺は別に車の中でもよかったんだけど、ユキは親身になって話を聞いてあげたい、車では集中できないとバカにシチュエーションにこだわっていた。
「で、これからどこに?」
「んー。考えてないっ!」
満面の笑み。
「最初にLINEもらった時はびっくりしたよ。なんかこう、文面に重いオーラがかかってた。お姉さんが話聞いてあげるから」
車を走らせていると、いくつかのラブホの看板が目に留まる。見かけは最新のビルみたい。
全室50インチモニター完備!
「ホテルでもいいんだよ?」
たまに見せる何かを企んだような顔。
「えっ?」
「なーんてね!カラオケいこ!カラオケ!相談聞いてあげるからさ、その後はパーッと歌って盛り上がろう」
2時間で入ったカラオケだったけど、最初の10分は何もしないままに消費した。ワンドリンク+部屋料のシステムが売りの激安店。
俺はドリンクを持ってきた店員に話を中断させられるのが嫌だった。
もちろん俺は緊張してたし、ユキも何かを感じ取ったのかなんだか構えてたから歌うって空気でもない。
「ごゆっくりどうぞ」
刺さったままのデンモクとビニールのかかったマイクに視線を流して店員が部屋のドアを丁寧に閉める。いよいよ時間だ。
「あのさ、、、。待って!緊張してきた」
「ふふっ。緊張してるんだぁ?なにかな?ゆっくりでいいからね。ごゆっくりどうぞ」
さっきの店員のモノマネ。
彼女なりに俺のことを気にかけてくれてる。それが嬉しかった。
「まず言いたい。俺はイライラしてた」
「あっ。アタシのせい?」
「ぶっちゃけさ、なんなん?アイツって思ったりもした。だってそうだろ?」
「うん。だよね、、、。ごめんね」
ユキはものすごく悲しそうな顔だった。
自分で言っといてなんだけど胸が痛くなった。
別に俺をバカにしてやろうとかそういう意図はないんだろう。
「まぁそれはいいよ。イライラしてたのは嫌いとかじゃないから。俺さ、、、」
上手く喋れなかった。
自分の中の何かが話すのをやめろって言ってる気がした。
言葉が声として発声できない。
そんな俺を、ユキは何も言わずに待っていてくれた。優しい顔。
「俺さ、ユキさんの事が好きなんだよ。だから余計にイライラしたんだよな。ただ会いたかった」
自分の声じゃないみたいだ。
告白ってヤツをしたことがなかった俺は、経験したことのない気持を感じてた。
気持ちを伝えた達成感となんだかよくわからない絶望感。あれは何なんだろうな。
「うん」
「このまま、なぁなぁでこの関係が終わったらきっと後悔する。明確な答えが欲しいんだ。ダメならダメで諦めもつく。俺と付き合ってほしい」
「うん。嬉しい」
嬉しい?それにしては浮かない顔。
泣きそうじゃないか。なんで?
「ありがとう。すごく嬉しいよ。アタシもキミのことは好きよ?ごめんね。だから距離を置いてた」
言っている意味がまったくわからない。
俺が混乱するのはわかっていたようで、補足するようにユキは言葉を続ける。
「意味わかんないよね。ごめん。アタシと一緒にいたらキミはきっと苦しい思いをすると思う。そもそもあの日キミを誘ったのが間違いだったのかもしれない」
ユキの声は震えてた。
「あれからLINE送らなかったのも別に興味がないとか、そういうのじゃないんだよ?アタシと関わるとロクな思いしないから。これ以上タクミくんの人生に干渉はしないでおこうって思ったんだ。まだ高校生だもん。アタシと一緒にいたら普通の恋愛なんてできないから。最低なんだアタシ」
最低?言い方悪いけど異性に関してだらしないのは俺も同じだ。
まぁ、最低なのかもしれない。
だけどそれはユキがどうこうって事でもないだろう。
彼女はきっと俺がいつか普通に恋愛する日が来て、自分と一緒だとその機会すら逃してしまうって言いたいんだろう。
いや、そもそもユキとだって正式に付き合ったら普通の恋愛なわけで、、、。
彼女が自分以外を想定している意味がイマイチわからない。
頭が混乱する。
「アタシたちが初めて会った日、タクミくんのお友達からキミの女性関係はめちゃくちゃだって話を聞いた」
「んっ?」
不意打ちだった。
お友達?誰だ?
メンバーの顔が浮かぶ。
多分ボーカル。ヤツとは古い仲で、そういうバカな話も普通にしてたんだ。
昨日どこどこの女と遊んでさー。ってな具合にな。
「別にそれに関して何も思わないから安心して。アタシさ、キミに対してちょっとこう、なんていうか挑発的だったよね。お友達から色々聞いてたからそういうの慣れっこなんだって、気にしないんだって思ってた、、、。ごめんね。苦しかったね。今キミの気持ちを聞いてすごく後悔してる。もっと考えてあげるべきだった。アタシとは付き合わない方がいいよ」
そんなこと考えてたんだな、、、。
てっきり俺に興味が失せたとか、そういった類いだと思っていたがユキもまた色々と考えてくれていたようだ。
ただ、俺は彼女の話を聞いても何もすっきりしなかった。付き合わない方がいいってなんだ。
俺に気を使うかのようなその物言いが、なんだかやたら気持ち悪かった。
「俺の気持ちとか置いといてさ、ユキさんの気持ちが聞きたい。付き合わない方がいいって何?それは俺に興味がないから?そうならハッキリと言ってほしい」
俺は少し怒っていたのかもしれない。
ユキは視線を下に落とし、膝の上で握った自分の拳をずっと見てた。
「アタシも、、、。アタシだってキミと一緒にいられたらいいなぁって思ってる。この場でウソついて興味ないからさよならって言うこともできるけど、、、。言えない。言えないよ。でも、今日限りで終わりにしよ?」
、、、。
何も言えなかった。俺たちはただお互いに行き場のない視線を地面に落としてた。
隣の部屋から漏れる歌声。
モニターの中でテンション高めに新曲のプロモーションを行うありきたりな歌ばっか歌うシンガー。
そのどれもがえらく場違いで居心地が悪かった。
「せっかくだから最後に一度くらいタクミくんとデートらしいことしたいなぁって思ったんだ。キミの気持ちなんて知らずに。ごめんね」
さっきから謝ってばっか。
俺の気持ちを無視して自分を戒めるユキに少しだけイラッとした。
「お前に俺の何がわかんの?」
「えっ?」
「アタシ最低とか、俺の為だとか。自分の中だけで勝手に完結するなよ」
思えば俺がユキをお前呼ばわりしたのは生涯でこの一度きりだった。
ただし半べそ。
「ユキと一緒にいて辛いかどうかは俺が決める。だからそんな事言うなよ。俺がとか抜きに正直な気持ちを言って欲しい。思わせぶりな事言われて、でももう会わないって。そんなんで納得できるわけないだろ」
「、、、うん。うん」
ユキはポロポロと涙をこぼして何度もうん。うん。て頷いてた。
自分に何かを言い聞かせるように。
どっちからだっけ?それはもう覚えていない。
俺たちは小さくキスをした。
何度も唇を重ね、それは舌を絡めるディープなものに発展していった。
肩にのしかかるユキの荷重が次第に大きくなっていく。
吐息を漏らしたユキに舌を押し込まれる度に一緒に唾液を注がれた。たぶんわざと。
上顎、頬の裏、舌の根元。
口内を探るようにユキの舌がからみつく。
いつしか上体は完全に押し倒され、ソファの上で二人で抱き合ってずっとキスをしてた。
俺にまたがり上になっていたユキはふと顔を上げ、何度かゆっくりと瞬きをしながら俺を見る。
ユキの前髪が俺の額に垂れて周りの景色は見えなかった。二人だけの世界。
ユキの眼はトロンとしてたけど、やっぱり芯は凍ってるみたいにクールだった。
それが目のカタチからくる印象なのか、別の何かなのかはわからない。
薄い口からツーっと垂れる唾液。
飲んで。
お互い言葉を交わしたわけじゃない。
思考なんてユキの表情を見ればわかる。
注がれるユキの唾液を何度も受け、もう一度舌を絡めて俺たちはぎゅっと抱きしめあった。
「なんだか歌う気分じゃないね」
先に言葉を発したのはユキだった。
どのくらいの時間こうしていたのだろう。
彼女の言葉に手探りで手にしたスマホを確認する。2時間のリミットはそれでもまだ50分近く残っていた。
「まだ時間あるよ」
上体を起こしつつユキにスマホを見せた。
チラッと画面に視線を移しつつ彼女は言う。
「もう出よう。アタシも話したいことがあるから家に来てくれる?」
◇
「さ、上がって」
あの時以来のユキの部屋。適当に合わせたチャンネルは再放送のバラエティだった。俺のセッティングした完璧なテレビから下品な笑い声。
ソファに腰掛け、二人で大して興味もないバラエティに釘付けだった。
無言。
お互いに緊張しているのが空気でわかった。
「は、話って?」
沈黙に耐えかねて先に口を開いたのは俺。
ユキの身体がピクッと反応する。
「、、、すごくショッキングだと思う」
心の中にもやもやが広がっていく嫌な感じ。
「アタシの心は決まった。タクミくんが受け入れてくれるなら一緒にいたい」
「受け入れる?何を?」
正直な話ユキの秘密なんて聞きたくなかった。
怖かったんだ。
ユキの事を嫌いになるのが?
やっぱ無理だってこの関係を終わらすのが?
いや違う。
俺は自分が傷つくのが怖かった。
「じゃあそこ座って待ってて」
促されたのはソファの前に置かれたローテーブルだった。
キッチンに消えるユキの背中を眺めながら、俺は意味もなく部屋を見回して時間をつぶした。
「コーヒー飲める?」
「あ、あぁ」
湯気のたつマグカップを手にユキが戻ってきたのはしばらく経ってからだった。
俺のセッティングした完璧なテレビを背中にし、お互いに向き合うカタチで座ったユキは大きく息をした。
ユキが全てを打ち明けた土曜の午後。
俺が全てを受け入れ、人生で俺およそ体験することのない奇妙な日常が始まった瞬間だった。
意を決したようにユキが言う。
「アタシ、ご主人様がいるの」
唐突に出たそれはなかなかリアルで耳にすることのないワード。
最初は意味がわからなかった。
ただ、ご主人様って言葉にはとんでもなくネガティブな何かを感じた。
身体が熱くなる。
怒りとか悲しみとか、そういうわかりきった感情ではない何かがふつふつと湧いてくるのがわかった。
「詳しく」
かろうじて押さえ込んだ感情を殺し、俺がようやく口にできたのはこの一言だけだった。
「SMって言えばわかりやすいかな。アタシはたまに会ってSMプレイをするパートナーがいる。女性なんだけどね」
とんでもない情報の波に俺は正直言って感情が追いつかなくなっていた。
SM?
女性って女王様ってこと?
レズなの?
あれ?なんかエッチじゃん、、、。
そして根底にある拭えない嫉妬心。
処理しきれない感情の波にグワっと呑まれたら人はどうなると思う?
俺は泣いてしまった。
さすがに大声は上げなかったけど、うぇ〜んくらいは言ったと思う。
「あっ。泣かないで!ごめんね!ごめん」
ユキは慌てたのか立ち上がりざまにローテーブルを蹴飛ばし、コーヒーが少し溢れた。
そんなのを気にする余裕なんて俺たちにはなかった。
「ごめんね。ごめんなさい」
ぎゅっと抱きしめられながら俺は泣いたし、ユキも泣いてた。
頭の中の妄想はやけにリアル。
顔も知らない女王様はユキをエッチに責め立てて恍惚に浸るのだ。
今は俺を胸にかかえて宥めてるけど、俺の知らないパートナーがいる。しかもSM。
あぁ。そもそも俺たちは付き合ってもないし。
これは変えようのない事実であり、怒っても泣いても、今の現状を打破するのは不可能なのだ。
彼女の鼓動を感じる。
こんなに近いのにユキをすごく遠くに感じた。
「ねぇ。俺はどうしたらいい?」
彼女に聞いたところで明確な答えなんて分かりっこない。そんなの知ってた。
「キミ次第。アタシ、最低だから」
俺だって人のことは言えない。
彼女と別れてもう一年になるか。その間に何度か素性もよくわからない女と遊んだ。
まだ高2だぞ。
俺だって根っからのダメ人間だってのにユキを責め立てる権利なんてあるわけないんだ。
今回はたまたま相手が歳上で、翻弄されて俺が少しばかり本気になっちゃっただけの事。
あの日で”はい、さよなら”で終わってたような浅い行動をしたのは自分だろ。
俺だって最低だ。
「俺も人のことは言えない。怒ったり傷ついたりする資格なんてない。どうしたいのかわからない」
「うん。無駄にキミを混乱させるだけだから黙ってようとも思った。でも、真実を隠したままタクミくんと深い関係になっていくのが怖かった。キミと過ごす時間が長くなればなるほど、真実を知ってアタシから離れていくのが辛くなると思ったんだ。だから、話そうって決めた。自分本意なのはわかってる。ごめんね」
「うん」
うん。その一言ですら口にするのがやっとだった。言いたいことはたくさんあった。
ユキだけが最低なわけじゃない。
出会いからして純愛ってガラじゃなかったろ俺たち。
しかし、声の出し方を忘れてしまったみたいに何も言葉が出てこない。
抱き合った姿勢のまま、俺はユキをフローリングに押し倒した。力任せにな。
「痛っ!」
ユキの骨がフローリングでゴリっと音を立てる。
俺はそんなのお構いなしに両手を乱暴に抑えつけて、首筋に舌を這わせた。
それはえらく暴力的な衝動だった。
「ちょっと!ンッ、、、。待って」
押さえつけた手はぎゅっと拳を握り、俺の拘束から逃れようと身体が左右にくねる。
馬乗りになった俺はグッと体重をかけてそいつを制止しつつ、首筋にキスマーク付けた。
「ンッ!やめ、、、。アンッ!!」
抵抗はしてたけど時折漏れる吐息。
怒られるとか嫌われるとか、そういったものは頭になかったし、この状況がエッチとかそういうのもなかった。
何が俺をそうさせるのか。
それは自分でもよくわからなかったんだ。
「嫌っ!アンッ、、、。見えちゃう所に、、、。ンッ!」
2つ、3つ。
諦めたのか、受け入れたのか。
それはわからないが、キスマークを付けるたびにユキの抵抗は弱くなり、いつしか完全に俺の腕にかかる抵抗はなくなった。
ただ潤んだ瞳で眉を下げて俺へと視線を合わせている。お互いに何も言わなかった。
俺は馬乗りのまま着ていた服を脱ぎ捨て、袖口でユキの手首を巻きそのままソファの脚に固定した。
「ンッ、、、」
少し感じているようだった。
自分が手首を拘束されているのを確かめるように時折腕に力を込めているのにも気付いてた。
Mなんだもんな。
俺はユキのニットを胸の上まで捲り上げ、さっきと同じようにキスマークを付けていった。
「ンー!」
片手で口を塞ぎ、もう片方の手で特別大きくもないけどカタチのいい胸をブラの下から弄った。
他に例えようのないフカフカの感覚を手のひらに感じながら、乳房の向きを変えていろんな角度から俺の印を残した。
これは俺なりの戦線布告だったのかもしれない。
顔も知らない女王様に対しての。
「ハァ、、、。ウンッ、ンッ」
口を塞いでいた手のひらにヌルッとした感触を感じる。圧迫していた口元から少し手を浮かすと、ユキの舌が指先に絡みついてくる感覚に襲われた。
彼女はフェラでもするかのように、不自由な身体をくねらせて夢中で俺の指をしゃぶってた。
人差し指、中指、指の間。
まんべんなく舌を這わせたかと思うと、口に含み口内で舌を転がしながら夢中でしゃぶってた。
「女王様にもやってんの?」
ふいに出た言葉。
自分でもよくわからないこの挑発的な発言に、ユキは少し困惑したように視線を泳がせる。
「ごめん、、、」
彼女を追い詰めるつもりなんてなかった。
「この先どうなるかはわからないし、ぶっちゃけ気持ちの整理もついてない。ただ、この先も一緒にいたいって今は思う。ご主人様って聞いて正直無理だって思った。けど、女性だって聞いたらちょっとエロいって思っちゃったんだ。ぶっちゃけな」
へへって笑って見せると、ユキも釣られてか若干表情が緩んだ気がした。
「ごめんな。乱暴なことして」
ブラを元の位置に戻し手首の拘束を解いてやると、ユキは泣き笑いの顔で俺に飛びついてきた。
秘密をぶっちゃけて少し気持ちが軽くなったのだろうか。
ただ、俺には漠然とした拭いきれない気持ちがあるのも事実だった。
「なぁ、その会ってる相手って一人?」
答えを聞くのが怖かった。
だけど聞かずにはいられなかった。
ユキの身体がピクッと反射的に反応し、俺の身体に巻いた腕の力が少しばかり強くなった気がした。
「そうだよ。SMってお互いの信頼関係がすごく大事なんだ」
微かに聞こえる街の雑踏に負けてしまうくらいか細い声だった。
「拘束もされるじゃない。男の人は正直怖い。男の人とそういう関係になったことないし彼女以外とも無理かもしれない。彼女、プロだから」
「プロなの?」
「風俗の人だよ。〇〇市の〇〇丁目で働いてる。サトミさんて言うんだ。知ってる?」
知るわけない。
そこは県民には名の知れた風俗が乱立する歓楽街だった。
ユキは店の名前も口にしていたが、そこは話半分で俺の記憶からはすぐに消えた。
もっとしっかり聞いておくべきだったんだと後悔するのはずっと先。
全てが手遅れになってからだった。
さっきからとんでもないダメージばかり喰らっていた俺の心は、ユキの告白で少しばかりラクになった。
なにもいい方向になんて行ってないのにな。
相手は女性。
仕事でもSMをやってる。
男とは会ってない。
ユキの発言から心がラクになるワードばっか探した。
「そっかそっか。男の人も〜とか言ってたらさすがに帰ってたかもな」
幾分元気の戻った俺に安堵したのか、ユキもまた少しばかり声のトーンが戻っていた。
顔は相変わらずよくわからない複雑なもんだったけどな。
「でも嫌でしょ?無理しないで幻滅したなら帰ってもいいんだよ?」
「ぶっちゃけ気持ちが追いついてない部分はあるよそりゃ。だけどさ、女同士ってなんかエッチじゃん」
「バカ」
俺たちはようやく笑いあい、少しの雑談をした。
この時の雑談の中にひとつ忘れられない話があるんだ。
きっかけは俺の一言だった。
「でもすげーよな。行動力がさ。興味があっても実際にパートナー見つけるまでするかな。欲望の探求者かよ」
「えっ?なにそれ」
ユキはカラオケボックス以降一番の笑顔で笑ってた。
劇的ビフォー・アフターの匠みたいだってな。
この番組は家をリフォームする際に担当する建築士を匠と呼んで通り名をつけるんだ。
何がそんなに面白いのか俺には未だに理解できないけど、どうやら欲望の探求者っていう通り名がえらく気に入ったようだった。
俺が前回の回想を投稿する際、ふと思い出したこのエピソードがタクミっていう仮名の由来だ。
今日は色々あった。
お互いに本心をぶつけ合った俺たちは、時間も忘れてずっと話をした。
外はすっかり暗くてなっていたけれどリビングの時計は止まっていたため時間の感覚はない。
そもそも、そんなのどうでもよかった。
「ところでさ、その女王様と何やってんの?」
話を切り出したのは俺だった。
女同士のプレイってやつがすごく気になる。
男子高校生だぞ。当たり前。
「えっ、、、。その話する?嫌な気分にならない?」
「もう割り切ることにした。その為にも知っておきたい。やっぱ一人になったら考えちゃうと思うから」
「んー、、、。わかった」
しぶしぶ見せてくれたのはパートナーとのLINEのやり取りだった。
いきなり自分の口からはキツいかもな。
俺はユキの手元を覗き一緒に画面を確認した。
*ユキちゃん今日は電車で来てね。車はダメよ。
いきなり意味不明。
イベント事のアナウンスでたまに目にする文言だ。
混雑が予想されます。公共交通機関をご利用ください。
それに対しての返信は、”はい”のみ。
*指定した衣装は下に着ておくんだよ。
なんだかやたら上から目線だなコイツ。
最初の印象はこんなもんだった。
エッチなワードなんて一個もない。
「指定した衣装って?」
なんてことない疑問だった。
なのにユキの反応がおかしい。
「その衣装って今ある?見たい」
「えっ、、、。あるけど、、、」
もじもじしてるユキを見て唐突に理解した。
これ、エッチなヤツなんじゃって。
「俺には見せらんないのか。そうか、、、。女王様には見せるのに俺はそれ以下なのか」
自分でも酷いことしたなって思う。
俺はユキの良心をゆさぶりにかかったんだ。
「そんなっ!、、、わかった。待ってて」
錆びたロボットみたいにぎくしゃく歩くユキの背中を見ながら少しばかりの罪悪感。
◇
しばらくして戻ってきたユキは別に何も変わりはなかった。相変わらずの黒ニット。
強いて言えば長ズボンに変わったくらいか。
逆に露出が減ってる。
「んっ?」
別に誰に言ったってわけでもないけど、自然と疑問符混じりの反応。
なんてことない格好なのやたらおろおろしてた。
俺にしてみりゃ初めて会った日のニーハイの方がよっぽど刺激的。
ユキはおもむろにズボンをゆっくりと降ろした。
そして、裾から足を抜くのと一緒に履いていたスリッパを一緒に脱ぐ。
俺の視線はユキに釘付けだった。
つま先から太ももまでを覆っていたのはギラギラと蛍光灯の灯りを乱反射する黒光りしたストッキングだった。
丈の長いニットとそいつの隙間から覗く白く張った太もも。
それは1ミリの隙間もないんじゃないかってくらいに、ピッタリと彼女の脚に張り付いていた。
ユキは顔をふせていた。垂れた髪で表情は読めなかったけど、下唇を噛んでニットの裾を握り肩をすくめてた。
「これね、ゴムで出来てるの」
ユキが言う。とんでもなく小さなかすれ声。
「へ、へぇ〜。そうなんだ」
間抜けな返答しか出来なかった。
俺は若干照れていたんだ。
ユキの変身は更に続いた。
ニットは被ったまま腕だけを抜いていく。
てるてる坊主みたいになった彼女はそこから先の決心がなかなかつかないようだった。
「タクミくん。いいよって言うまで見ないで」
「わかった」
言われるまま目を閉じる俺。
ニットから首を抜くだけなのにやたら時間がかかる。
「いいよ」
ようやく声がかかったのはしばらくしてからだった。なんだか俺も緊張してた。
視界の向こうのユキはスク水みたいなカタチをした、やっぱり黒光りするコスチュームを着てた。
素材はストッキングと同じだと思う。
ユキは相変わらず下を向き、ラバーに覆われた自分の身体を抱くように腕をまわしてた。
少しでも見える範囲を狭くしようとしてる。
そう感じた。
「服の下にそれを着てろって命令されるの?」
俺の問いにかすかに首が縦に揺れる。
俺の股間は既に限界まで大きくなっていた。
「こっち来て」
そんな俺の股間事情なんて知らないユキは唐突に俺を呼び出した。
男なら経験あるだろ?立ち上がれないよな。
俺は少しばかりの抵抗で聞こえないふりをしたけど股間が言うことを聞くはずもなく、しかもユキがじっと見てくるもんだから渋々立ちがった。
「わかった。いまいくよ」
ポケットに手を突っ込んで近寄った俺に唐突に差し出された物。それは何かの送信機のような小さなガジェットだった。
リモコン?いつ取り出した?
思わず受け取ってしまったけどこれって、、、。
マジマジ見たそれはスマホのエロ動画で見たシチュエーションを思い出させた。
これがなんなのか確証もないまま、なんの断りもなくスイッチを入れる。
「やんっ!」
その瞬間にユキが仔犬みたいに甲高く鳴いた。
びびった俺は思わずスイッチ切っちゃったけど、言いようのない感動に震えてた。
「す、すげぇ」
もっかいスイッチを入れてみた。
「ンッ!クッ、、、」
あっ。耐えた。
2回目ともなるとユキも構えていたようで、俺の手元でタイミングを見てた。残念。
女王様の気持ちが少しわかった気がした。
「これも着けていくの?」
今度は首を横に振る。
「これはサトミさんと一緒に出かける時だけ」
「そうなんだ」
ちょっと嫉妬した。話がリアルすぎるんだよ。
「マジか。街でいきなり震えるってこと?てか、バレない?それ。そもそもコレどこに着けてんの?中に挿れてるの?奥に入って取り出せなくなったりしない?」
「落ち着いて!」
ユキがちょっと声を張り上げて言う。
聞きたい事は山ほどあった。
どっちからなんて覚えてない。俺たちは流れで寝室に向かった。
前を歩くユキ。
ケツを覆うラバーに部屋の景色がうっすらと浮かび、人工的な灯りを受けてヌラヌラと波打つようにギラついてた。
以前のナース服やブーツなんかとはまた違う異質な物。
それはまるである種の生物のようにも見える。
着ているというよりも、ユキと一体化してピッタリと肌に吸い付いているような感覚。
ここで再び俺の好奇心。
ユキの背中を見ながらバイブを最大にしてスイッチを入れてみた。
「イヤッ!!ちょと、、、。アンッ!!」
意地悪してリモコンを高く掲げてみたけれどユキの身長デカいからさ、高く上げたはずの手首は簡単に掴まれてしまった。
そして、そのまま勢いでベッドに倒れ込んだ。
「ンンッ、、、。アンッ!ウゥ、、、。イヤッ!」
しばらく耐えて時折声を上げる。
ユキは時折り身体をビクつかせて俺の上で四つん這い。
胸から上を俺に預けて硬直した下半身を空に突き出し感じていた。
俺の耳元に顔を埋めてたから表情は分からなかったけど、下から見るその様は見えない何かにバックから犯されているようだった。
その光景と耳元で喘ぐユキの声に言いようのない興奮を覚えた。
「ウゥぅ。イッちゃう!アッ!だめっ!!止めてっ!!」
その言葉で反射的にスイッチを切ったが手遅れ。
ユキの腰がビクッ、ビクッと痙攣し、ベッドが軋み彼女の下半身が俺の上に崩れ落ちた。
ユキが呼吸を整えている間、俺の横でぐったりするユキの頭を抱えるように撫でてやった。
身体を丸めて俺の胸元に頭をうずめながら、ネコみたいにやたら頭を擦り付けてくる。
それがたまらなく愛おしかった。
そして、腰に回したもう片方の手から伝わるラバーの感触は言いようのないものだった。
肌に吸い付くそれは表面が少しヌルついてて、脇腹のたるみひとつひとつにまでしっかりと絡みついてカタチを形成していた。言いようのない粘りと肉の感触。
ユキの体温をゴムを通して確かに感じ、衣装だけをつまむのが困難なほどにユキの肉体と同化してた。
しばらく無言の時間が続き、俺がラバーの感触にボーッと浸っていると胸元のユキが言う。
「信じらんない」
震え声。
最初は泣いているのかと思った。
しかし、それは俺の勘違いだったようで顔を上げたユキはすっかりそっちのモードだった。
「バカ。変態」
俺の首に絡みつく腕。
そのままぐっと身体を引かれ俺は上体を起こした。再び馬乗りになるユキ。
対面座位のポジション。
「ねぇ。ここ開けてよ」
口にしながらユキは脚をガッと広げ、腕を後方に上体をそらす。
股の部分にジッパーが見えた。
ただ、俺が気になるのは上体をそらすことにより強調された胸だった。
ラバー越しなのにプルっとしててやたら生々しい。
普通の衣装は胸の部分に多少の隙間が出来て山なりに盛り上がるよな。
しかし、ユキのラバーは乳房をコーティングするように綺麗にカタチを保っていた。
ブラみたいに衣装自体にカップが作られ、そこに胸を押し込んでいるようだ。
乳首の突起とヘソの凹みが黒光りする衣装にかすかに浮かんでた。
そんな光景を前にし、俺は思わず手を胸に伸ばしてしまった。
ふにっとした生乳の感触。
それでいて無機質な肌触りのそれは言いようのない感覚だ。
「んんっ、、、。アッ、、、」
ユキの息が漏れる。
上下左右。
こねてみたり揺すってみたり。
どんな角度から責めてみても密着していない部分なんてなかった。
とんでもないコスチューム。
これもまたどっかの誰かが欲望を探求し続けた産物なのだろう。欲望の探求者ばんざい。
一通り胸を愛撫し、本来の目的であった股のジッパーに手をかけた頃にはユキの息も再び上がっていた。
スライダーを引きゆっくりとジッパーを開いていく。
顔を見せたのはさんざんユキを犯したリモコンの片割れだった。
ラバー越しにくっきり浮かんでいたから分かってはいたけど、実際に目にするとなんだかとてもエロい。
ナプキンみたいにぴったり陰部からクリまで覆うソレは、なんだか寄生するエイリアンみたい。
ユキが取ってと言うからソイツに手をかけてみたけど、予想に反してソレを剥がす際に若干の抵抗感を感じた。
俺はてっきりコスチュームと陰部の間に板状の物を挟み込んで固定しているもんだと思ってた。
ただ、実際はさらにその先に棒状の物が成形されていて、ユキの膣内も満たしてたんだ。
クチュッ、クチャ。
膣壁を絡ませ、体液にまみれたバイブがゆっくりと抜けていく。
独特のニオイが鼻をつく。
俺はこのニオイが苦手だ。
クンニなんて滅多にしない。
ただ、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
ユキのだけは特別だった。
体液まみれのバイブを手に持ちやり場に困っていると、おもむろにユキはそいつをくすね取りベッドの端へ放り投げた。
「あんま見ないで。ねぇ、脱いでよ」
俺のベルトに手をかけてユキが言う。
下はユキに任せ、俺は着ていたシャツから頭を抜いた。
「さっきは色々ありがとう」
ニッと口元を歪めて意地悪に笑うと、俺と向かい合うように膝立ちになり亀頭の先を自分のアソコにあてがった。
先端が少し触れただけでアソコがぐしょぐしょなのはわかった。もうなんていうかフカフカだった。
ユキのアソコは俺のペニスを易々と飲み込み、フカフカの壁に包み込まれるような感覚で、俺の身体はピンと硬直した。
これだけでイッてしまいそう。てか、また生だ。
肩で息をしながら俺をじっと見つめるユキ。
特に腰を動かすでもなく、膣の奥へとペニスを押し付けるように重心を沈める。
ハァ、ハァ、と呼吸を整えるようにユキは言う。
「中で出してもいいんだよ?」
同時に俺は腕ごとがっちりホールドされ、膣のなかでペニスを思い切りこねくり回された。
俺の体重は平均を少し割るくらいには痩せてる。
身長を含めて体格差のあまりないユキに乗られると、形勢を逆転するのは困難だった。
女子に無理やり抱きつかれて挿入されてるって感覚は言いようのないものだった。
これはマジで中に出るかも。少しの抵抗を試みるも意味はなかった。
なんたって肩から下はホールドされて自由になるのは肘から下だけだからな。
くねるユキの腰を押さえるくらいしかできなかったんだ。
否応なしに押し付けられるラバー越しの胸元は柔らかく、俺の裸体にピチピチと張り付くように擦れて独特の音を発してた。
抵抗こそしていたものの、俺はこのシチュエーションに興奮していたのかもしれない。ピークはすぐにやってきた。
「マジでイクッ」
「いいよ!ピル飲んでるから平気」
ピルがなんだっていうんだ?そんなのが避妊の根拠になるのか?
込み上げる射精感を必死に抑えてそんな事を考えていると、ふいにユキの動きがピタッと止まる。
しかし、今の俺には膣の圧だけで射精には十分だった。
「ヤバい。そこに力入れないで。イキそう」
ようやくホールドを解いてくれたユキは、射精と必死に戦う俺をしばらく眺め、ふいに口元を耳に寄せた。
少しの体制移動だけで精子がぐっと動き出しそうになる。この隙にペニスを引き抜こうかとも思ったが、動いたら抜く前にイキそうだ。
「さっき意地悪したでしょ?アタシに」
囁きながら俺の耳を舌でなぞり、ユキは言葉を続けた。
「仕返ししないと。キミはアタシの中でイッちゃうよ」
ぐっと膣の圧が上がり、ユキは押し付けるように腰を数回くねらせた。
それはイクというよりも搾り取られるような感覚だった。
意思に反してじわぁっと溢れた精子は、やがて脈動して全てをユキの体内に放出した。
必死に耐えながら迎えた限界の射精はいつもとは違う感覚。背徳感と快感がめちゃくちゃに入り乱れたような言いようのないものだ。
全身が小刻みに震え、気づけば俺は渾身の力でユキにしがみついていた。
俺は彼女の胸に顔を埋めてしばらく呆然とした。頭が上手くまわらなかった。
一連の出来事が繰り返し脳内に浮かんでは消え、ようやく俺が言葉を発したのはしばらく経ってからだった。
「、、、抜いて」
「抜かない」
感情の読めない声。片手で俺を抱き、もう片方の手で頭を撫でるようにしてユキは動こうとしない。膣の中でペニスが萎えていくのがわかる。
不思議な気分。
中でイッたことや避妊のことなんてどうでもいい、言いようのない気持ち。
◇
どのくらいの時間が経過したのだろう。相変わらずの姿で俺はずっとユキの胸に顔を埋めて頭をなでなでされてた。
「ごめんね、、、」
ふいに頭上から聞こえた謝罪の言葉に我に帰る俺。
「なにが?」
「こんな無理やり中に出させて。アタシ、歳上なのに、しっかりしないといけないのにレイプみたいなマネしてごめんね」
「、、、うん」
シリアスな場面なんだろうけどヤバい。
そうか、俺はお姉さんに犯されたのか。
そう解釈した途端、ユキの中でふにゃふにゃだった息子が反応してしまったのだ。
次第に膣を満たしていく息子さん。
これにはユキも少しうろたえて、そして喘いでた。
「ンッ、、、。な、なんで?、、、アンッ」
「ごめんなさい」
「もう一回したいの?」
その一言で俺のスイッチが再びONになったのは言うまでもないよな。
歳上のお姉さんにもう一回したいの?って言われて断れるかよ。多感な高校生だぞ。
形勢逆転で今度はユキを下に寝かせ、ラバー越しに乳首をなぞった。
「やっ、、、」
甘ったるい声が部屋に響く。
ようやく主導権を得た俺はさっきよりもじっくりとラバーに包まれた乳房を観察し、表面を舌でなぞった。
ツルッとした舌触りは人工的。
なのにユキは素肌をなぞられているかのような感度で身体をくねらせてる。
それがたまらなくエッチだった。
「ンッ、、、。光沢剤塗ってるから舐めない方が、、、。アンッ!」
ユキは何やら俺の心配をしてくれていたけど、そんなのどうでもよかった。
胸から脇腹、ヘソ。
黒光りする全身をリップしてジッパーの間から性器の割れ目を舌でなぞった。
さっきも言ったけど俺はクンニがあんま好きじゃない。
それでもユキから溢れる液を舐め取りたくてたまらなかった。
誤算があったとすれば直前に中出ししてたってことかな。おえっ。
流石にタンマしてティッシュで綺麗に拭き取った。これはしばらくふたりの笑い話のネタだった。
俺は何度も割れ目を舌ですくい、止めどなく溢れてくる液を舐め取った。
舌にからみつくほど濃いそれは、不思議と気持ち悪くなんてなかった。
「挿れてよ」
ユキは弱々しい声でそう言う。
俺はペニスを再び挿入し、ユキに身体を重ねたんだ。
俺たちは繋がったまま深くキスをした。
今日の一連の出来事が頭を駆け巡る。
ユキは俺の下でゴムに身を包み特殊な格好してるけどさ、この時ばかりはそんなの忘れて、ただただ愛おしかった。
何も「愛してる」だとか「好き」って言い合うのが愛情の全てじゃないよな。
激しいピストンや過激な言葉なんて今の俺たちに必要なかった。
キスをして、ゆっくりとペニスを動かしながら俺は欲望や快感とは違う幸せを感じてた。
絡み付く膣壁の中をペニスで探り、ユキが感じてキュッとペニスを圧迫して吐息混じりに声を漏らす。
「ンッ、、、。アッ、、、。アッ、、、」
とても静かなSEXだった。
「中でいいよ、、、」
ユキはそう言うけれど、流石に2回目は躊躇した。
1回も2回も変わらないのかもしれないけどな。
「いや、外に出すよ」
「じゃあ口でイッて」
「ベチャベチャだし洗ってくるよ」
「洗わなくていいよ。ほら。抜いて」
ペニスを抜くと案の定、カリの裏に溜まるほどユキの液にまみれていた。
ポジションを変えて俺の脚の間に割って入ってきたユキは、それを丁寧に舐めとって上目に俺を見ながら舌を這わせる。
竿の根元から亀頭の先まで、舌を絡めてゆっくりと舐め上げ、限界まで張ったペニスを喉の奥まで押し込んだ。
こんなに深いフェラは初めてだった。
ゴブッ、ゴポッ。
唾液まみれの舌が口内で絡みつき、聞いたことのない音が、静かな部屋で唯一の音として空間を支配していた。
「ヤバい!イキそう」
しゃぶり出されるような射精感に腰を引くが、ユキはそれを静止して言う。
「口の中で出して」
再び絡みつく舌の感覚と根元まで咥え込むフェラに俺はもう限界だった。
「出る!」
ベッと出したユキの舌の上にペニスを乗せ、おれは射精した。
驚くくらいに量が多くて、精子はユキの口の周りにも飛び散った。
俺はこれで終わると思ってたけど、彼女は精子にまみれた舌を引っ込めるのと同時に再びペニスを咥え込んで、口の中で舌を転がすようにしゃぶり続けた。
不思議と賢者タイムやくすぐったさはなく、俺は例えようのない気持ちでそんなユキを見てた。
ゆっくりとペニスを抜き、口元の精子を指ですくい、指をしゃぶりながらユキは言う。
「ごちそうさま」
このあと俺がラバーの沼に落ちていったり、女王様に会いに行ったりとエピソードはまだありますが、長くなるのでここまでにしときます。