ほぼ1か月ぶりに、続きを書いてみます。
待ってくれた皆さん、本当に、ごめんなさい。
あれから、週に3~4日くらいのペースで、彼女がメールをくれるようになりました。
男性とメールをするのは初めてらしく、緊張感を感じでいました。
とはいえ、35歳も離れていることもあり、話がかみ合わないことも、しばしばありました。
思いがけない悲劇に見舞われ、落ち込んでいた彼女です。
少しずつ、過去の悲しい話も始めました。
どちらかと言えば、私は聞き役に専念していました。
「じゃあ、あの時はこんな感じだったのかな」
私自身も、手術経験者です。
当時の記憶などありませんが、たぶん、こんな感じだったのかな。
そんな気持ちで、返信していました。
すると、
「どうして、そんなことが分かるんですか?」
という返信が続くようになりました。
当然、お互いに結婚願望などありません。
私は年齢のために。
彼女は、心臓疾患を経験したために。
だから、心をフラットにし、雑念を払うことができました。
だけど、6月に入り、話がかみ合わないことが増えました。
35歳も離れています。
考え方や、感じ方の違いは、当然あるでしょう。
ましてや、男女の違いもあります。
そんなことが続き、私は彼女とお別れすることに決めました。
彼女のふるさとは、広島戦東部にあります。
尾道市と、愛媛県の今治市をつなぐ、しまなみ海道が通る島です。
彼女とお別れする前に、一度だけ、彼女のふるさとに行こう。
そう決めたのでした。
6月の中旬。
その日が、やってきました。
片道2時間あまりを使って、彼女のふるさとになる島を、初めて訪れました。
穏やかな海。
隣の島との間に架かる、橋の遊歩道を歩きました。
時折、大小さまざまな船が、北へ。
そして、南へと向かいます。
だけど、ここは。
二度と来てはいけない場所です。
彼女とお別れする以上、そこは永遠に来る場所ではないのです。
島をゆっくりと回り、帰路につきました。
彼女のふるさとを離れ、尾道市に戻ります。
夕方。
家に戻りました。
22時になり、彼女が久しぶりにメールをくれました。
だけど、
「ごめんね。もう終わりにしようと思うんだ」
と、メールを送りました。
ところが、彼女は激しく抵抗しました。
何度かやり取りが続いた後、彼女はこんなメールを送ってきました。
「私は、あなたのことを、一度も嫌いになったことは、ありません」
意外な返事が、きました。
(何を考えているんだろう。私には、分からない)
そう思いました。
その日から、再びメールでのやり取りが復活しました。
ところが、この後、思いがけない事態に出くわすことになるんです。
あれから少し離れた、ある日の夜。
彼女が送って来たメールに、私は。
しばらく、言葉を失うこととなります。
それは、
「お願いします。私と、結婚してください」
まさか、と思いました。
どうして、と思いました。
心臓疾患で急遽手術となり。
命は取り留めましたが。
女性からすれば、宝ともいうべき体に、傷跡が残った。
あれから、何度も自殺を考えていたことを、私に話してくれたことがありました。
中学生の時から、休憩時間になるとらいつも教室の片隅に、ポツンと立っていたそうです。
「女性として、生きることは、もうできない」
そう思い、制服はスカートから、ズボンへと変わっていきました。
体育の授業の実技は、当然できません。
毎日が、針のむしろだったそうです。
高校生になり、すったもんだがありましたが、心を許せる友人が何人かでき、少しだけ、心が楽になったことも。
その友人のひとりに、恋人ができ、一緒に並んで帰っていく姿を、何度も見ていたそうです。
いいことばかりではありません。
友人が失恋し、泣き出したことも。
それを、みんなで励ましたことも。
だけど、彼女からすれば、
(私には、所詮、かなわないこと)
と、ずっと思っていたそうです。
そんな彼女が、私に突然のプロポーズです。
ものすごく、悩みました。
ましてや、私はバツイチです。
(私には、結婚する資格なんてあるのか?)
そう思うと、どうしても、彼女の気持ちを受け入れることは、できませんでした。
3日くらい、ずっと悩みました。
そして、彼女に、お断りすることを伝えようと決めました。
ところが、その直前になり、ある日の出来事を思い出し、お断りする予定を、受け入れることに転換することにしたのです。
それは、今から36年も前のこと。
まだ、時代が昭和だった頃の話です。
当時、人気だったアイドル歌手が、東京にある所属事務所が入っていたビルの屋上から、身を投げたことがありました。
当然、即死でした。
まだ、彼女は18歳。
短い生涯を、自ら閉じたのです。
自殺の要因はというと。
どうやら、彼女はある年上の俳優さんに、恋をしてしまったみたいです。
ところが、その俳優さんには、婚約者がいました。
当然、恋はかなわないですよね。
だけど、彼女はそれを、忘れることができなかった。
自殺の前日には、彼女がその俳優さんの家の近くまで行ったことも、判明したそうです。
そして当日の朝。
彼女は、一人暮らしの部屋で、手首を切り、自殺を図ります。
彼女が芸能事務所に来ないことに、マネージャーさんが彼女の部屋を訪れ、その現場を目撃したそうです。
病院に緊急搬送され、なんとか命だけは取り留めました。
芸能事務所に運ばれた彼女は、ずっと泣いていたそうです。
そして、周りの目が離れた僅かな時間に、彼女はビルの屋上に向かい、そこから身を投げたのです。
実は、彼女は、はるか年上の男性を好きになる傾向があったみたいです。
当時、私はまだ25歳でした。
奇しくも、自殺したアイドル歌手と、今の彼女の姿が重なることになりました。
実は、私もまた、彼女のファンのひとりでした。
そんなことがあり、私は、彼女の気持ちを受け入れました。
彼女は、何度もありがとうと伝えてくれました。
あまりの衝撃に、彼女のプロポーズがいつだったのか。
二人とも、記憶がありません。
たぶん、7月か8月のことだったと思います。
その日から、彼女は元気を取り戻すことになります。
まるで、ふさぎ込んでいた過去が、なかったように。
ところが、この話は、一筋縄では行きませんでした。
その話は、次回で話そうと思います。