保育園で大きな積み木をしまう押し入れみたいな場所があった。
いつもみつひろとみゆきがその中に入って引き戸を占めてかくれんぼしていたので気になっていたけど、なんとなく近寄りがたくて一緒に入ってみたり暗い中で何しているのか尋ねたりすることができなかった。2人だけでいけないことをしてるんじゃないかという予感は最初からあった。
みつひろは運動神経もよくかっこよかった。みゆきはおしゃれでかわいかった。おうちが大きな病院だった。
みつひろは誰にでも優しい子だった。みゆきはあまり社交的ではなくて女の子同士でお話しすることも少なくて、ちょっとお高くとまっているような雰囲気だった。よく白いレースのワンピースのドレスを着ていて、それがとても似合っていてお人形のようだった。
大きな積み木を出したあと、光が差し込む空いたその押し入れみたいな場所を見たことはある。奥のほうにまだ出していない大きな積み木の残りが見えるだけだった。天井までの高さは園児が入れる程度しかないがありふれた収納場所だった。
普段の先生がいなくて代わりの先生が受け持った日、大きな積み木を重ねてみんなで基地を作っていた。またみつひろとみゆきの姿がなかった。きっと積み木をしまう場所でかくれんぼしてると思った。
いつも気になっていたけど開ける気持ちになれなかった引き戸がそのときは少し開いていた。ぼくはみんなに気づかれないよう一人何気なく近づいてこっそり覗いた。
薄暗がりの中でもみゆきの白いレースのワンピースの背中がすぐに見えた。みつひろがどこにいるのかはすぐにわからなかった。かすかに嗅いだことのあるにおいがした。
みつひろはみゆきの陰にいた。何をしているかはわからなかったけど、みゆきの向こう側で頭をこっち向きにしたうつぶせの姿勢でいることが分かった。
足を開いてこちらに背中を見せているみゆきとその向こうにいるうつ伏せのひろみつが薄暗がりのなかでなにをしてるか確認はできなかったけど、なにか2人でいけないことをしていると思った。
いつもいっしょに妹とお風呂に入っていたので、妹がぼくとちがうことは知っていたけど、みゆきちゃんはお姉さんしかいないし、みつひろは一人っ子だから、お互いに見せっこしてたんじゃないかとピーンときた。
本当は違うかもしれないけど、絶対そうだと思った。みつひろのはいいけど、みゆきちゃんのはちょっと見てみたかった。でもかっこいいみつひろには見せてあげても、ぼくにはきっと見せてくれないと思った。
そんなこんなを一瞬で考えて、同時に自分がのぞいていることをみつひろに気づかれてしまうと思ったぼくは、すぐさま引き戸の前から離れて、みんなのいる大きな積み木の基地に戻った。
みゆきちゃんは別にお高くとまっているような子ではなかったことは、小学校になって同じクラスになったときに知った。もっと早く仲良くなっておけばよかった。転校するぼくにみゆきちゃんが書いてくれた手紙は、ほかの子たちと同じように優しい文面だった。