いずみさんとの肉体関係という念願を叶えた翌日。もちろんシフトどおり早朝からバイトに出た。ホテルレストランでは早朝から朝食ビュッフェを開いているのだから仕方がない。昨夜のことはあまり現実感はなく、なんだかふわふわとした感覚で開店準備をしていた。
(初めての年上女性。ちゃんと満足させられただろうか。いずみさんの反応を見る限り、私のセックスは気に入ってもらえたはず。次はいつさせてもらえるかなぁ)
体のどこからか、いずみさんの香りが漂っているような気がする。昨夜あれだけ出したのに、たったの数時間で満タンになっている感覚だ。いずみさんの身体のすみずみを思い出しながら、午前中は常に8割ほど勃起させていたと思う。
長い朝の営業が終わり、ランチの時間が近づく。いずみさんが出勤してきた。
「おはようございまーす」
いつもとまったく変わらない声。態度も、雰囲気も、全然変わらない。私に対しても、それは同じだった。そのあまりの変わらなさに、もしかすると一昨日よりも他人行儀に見えるその表情。追い掛けても追い掛けても合わせようともしない目線。そんな彼女の態度に私は強くショックを受けてしまう。
カウンターに入って作業をしていると、いずみさんが別の作業で隣に並ぶ。自分から微かに漂っていたいずみさんの香りが、今は本人から流れてくる。
(パロマピカソ…だったっけ)
彼女がお気に入りの香水で、少し派手な雰囲気のいずみさんにはとても似合っている気がした。私から目線を合わせようとしなくなったことに気付いたのだろう。少し近付いた彼女が口を開いた。私の方を見ないようにしたままで。
「さっきからわたしの方を見過ぎだよっ。あんなに見てたらバレるから!ね、まだ私たちのことは誰にも言っちゃ駄目だよ?分かってると思うけど」
そうか。彼女は彼女で意識していたんだ。営業スマイルに見えた私へ向けた冷めた笑顔も、彼女なりの配慮だったんだと、ようやく理解した。
「分かった。なんか、ごめん」
理解はしたけれども、自分の子供臭さに、彼女の大人の気配りに気付いてしまった私は、さらに気落ちした声しか出すことができなかった。こんな私では彼女を落胆させてしまっただろうか。なんだか少しいらいらした雰囲気を残しながら、彼女はその場から離れて行った。
平日とはいえ、ランチはそこそこ客が入る。まずは仕事だ。だが、私の目は無意識に彼女を追ってしまう。客に向けるその笑顔よりも冷たく感じたことが、何よりも、彼女に物わかりの悪さを知られてしまったことが、私の胃に重くのしかかる。
なんだか、疲れてしまった。
…
平日のホテルは客室が空いていて、フロントに声をかけると仮眠室として使うことができる。ベッドメイクもプロがやってくれるから、そのまま退室して良いという、至れり尽くせりのシステムだった。
ランチが終わり、ディナーの時間まで休憩…というよりも一度退勤して、再度夜に出勤するパターン。それまで寝不足の体を休ませることにした。
…
ドアをノックする音がする。閉じていた目を無理に開ける。急いでドアを開けた。
「おーい」そんないずみさんの声が聞こえたからだ。
いきなり飛び起きたせいか、心臓がバクついている。
「ごめん、寝てた?」
「や、だいじょうぶ」
「入っていい?」
周囲を見渡しながら、答えを待たずに彼女は背中でドアを閉めた。
「フロントに聞いたら、いつものここが使えないって聞いたから」
なるほど。私がいる部屋を聞いたら怪しまれるから、ということか。(今日の変則出勤は私だけだし、頭がいいな)と少し驚くと同時に、バレないように全力を尽くす彼女の姿勢に不満を感じてしまう。
「上手い聞き方だね」
「ね、なんか、怒ってる?」
「怒ってないよ」
「そう?それならいいんだけど」
「ごめんね。仕事しづらくなったら困ると思って…」
「いいよ、気にしないから」
返事をしながらベッドに倒れ込む。
「お願い…怒らないで」
倒れ込んだ私の顔の横に片手を突き、泣きそうな顔で覗き込む。
「怒ってないよ…」
彼女の長い髪をかき分け、そのまま彼女が唇を重ねやすいよう、引き寄せた。
長い、長いキス。
(大丈夫。俺は彼女の特別になれたんだ)そんな安心感が少しずつ私を包み込む。
彼女はそのまま私の上に跨り、キスを続け、次第に息を荒くしていく。
背中に回していた手を胸に腰に移動させ、私はそのまま昨日の感触を確認していた。
「ん、む、ふぁ、んっ、んっ」
彼女の舌が私の中で暴れると、すぐに私は臨戦態勢になる。でも、今から彼女とセックスができることより、彼女との距離がゼロになっていたことが嬉しかった。嬉しくて、嬉しくて、ただ、嬉しかったことをよく覚えている。
「やっと笑ってくれた。よかったぁー」
「泣くなよ…」
「だって、こんなに好きになったのに、嫌われたらどうしようって…」
真っ赤にした目で見つめる彼女。そこから溢れる涙が互いの誤解を溶かしていく。
彼女に覆い被さり、泣き止むまでキスを続けた。泣き止んだ彼女は真っ赤なままの目を蕩けさせ、しっかりと言葉にした。
「抱いて…」
制服に包まれた彼女の胸だけを露出させ、顔をうずめる。明るいところで初めて見る彼女の胸。美しく盛り上がり、めり込ませる指の形に合わせて自由にその形を変化させる。指の間からはみ出す彼女の乳は握り込みに合わせて光を反射し、その存在感を絶え間なく強調してくれた。
先端はすでに硬く尖り、周辺の柔らかさと強烈な対比を見せてくれる。舌を這わせ、吸い、舐め、歯を立てる。そのたびに表情を変え、私の頭を優しく抱え込んでくれる彼女。乳首の硬さを変形させるたびに、嬉しそうに喘ぎ声を上げる。
「ね、もう入れて?」
胸を私に与えながらスカートを外し、ストッキングと下着を一緒に脱ぎ去っていた彼女。
シャワーも浴びていない仕事終わりの身体をあまり弄らせたくなかったのだろうと、今考えれば分かるが、当時は(そんなに我慢ができないのか)などと能天気なことを思っていた。
「ああう…ん…」
その言葉を受けて一気に根元まで打ち込むと、その細い腰と背中をのけ反らせる彼女。胸の膨らみが強調され、自然と吸い寄せられる。乱暴に揉みしだきながら強く弱く吸い続ける。
深く、浅く、角度を変える。彼女が悦ぶ場所を探す。体位を変え、四つん這いにさせる。素直にケツを高く上げる彼女は、レースカーテンからの柔らかな日差しに照らされながらヌラヌラと私を誘っていた。
昨日もそうだったが、彼女は腕を引っ張られながらのバックが好きなようだ。これをやると自然と突き上げは乱暴になり、肉の音が弾ける。
「ねぇ、手ぇ、ばってんにしてぇ…」
リクエストどおり、背中でクロスさせた両腕を掴んで抜き刺しを続ける。
(ああ、前の彼氏にやられて好きになったんだろうな、これ)
そんなことを考えてしまい少し悲しくなりなったが、今は彼女の昔のことなんか忘れよう。そう思いながら私は突き上げの激しさを増していった。
グバンッ!グバンッ!バングバンッ!バン!バン!グバッン!
「あああああーすごい!すごい!すごいいいいいっ!!あ!だめ!イクっイクよ!?イクよ!?いいの?あ!だめえ!イックぅぅぅっ!ああ!!」
逝ったことを確認して手を緩めると、顔面からシーツに突っ伏した彼女。
「はぁっはあっああぅぅうー…ひどい…痛いよぅ」
謝りながら彼女の脚を開き、そのまま今や最大に興奮したモノで貫く。のけ反る彼女。そこに追撃を加えるべく、彼女の両脚を肘の内側でロックし、全体重を腰に乗せて撃ち込んだ。
さっきまで笑顔で喘いでいたはずの彼女は、歯を食いしばり、顔を左右に振り回す。拒否の叫びも聞こえないことにして、そのまま彼女の奥を抉り続けた。
「だ!め、だ、めっ!あっ!も、いった、いった、いったから、あ!だ、め」
昨日痛めた腹筋が限界を迎えそうだ。彼女の脚を下ろし、自由にさせた。挿入したまま彼女にキスをする。腹筋のことを伝えると、「無理しないで」と、息を切らしながら笑ってくれる。
十分彼女を満足させただろうと思う。あとはこのまま射精していいだろう。
「出していい?」それを聞く前から速めていた出し入れを感じていた彼女。返事ができないほどの喘ぎのまま、その手を背中に、その脚を私の腰に回した。
「あっぐうっ!ぐ!が!あ!すごい、すごいのぉ!ああ!ああ!!んっぐっふうううぐうううう!!」
このまま中に射精したいのをギリギリで堪える。最後の絶頂の瞬間、本能のまま全力で私を離すまいとした彼女。その緊張が解けるのを確認し、彼女のヘソから胸にかけて勢いよく7本ほどの筋を描いた。ブシュッと音がするような迸りは美しく彼女を汚し、次第に流れ、集まり、溜まっていった。
(意外と余裕を持って耐えられたことには理由があったのだが、今は、まあ、いいだろう)
「あー凄かった。やっぱりすごいよ…」
「近頃の童貞はこんなもんです」
「…まだ言ってる」
彼女を汚した液体を拭き取りながら笑う2人。こうした時間は楽しい。好きな人と心も体も通じ合ったような気がするから。
腕枕をしながら少しうつらうつらしていた私。人差し指を私の胸に這わせながら口を開いた彼女。その言葉で私は心を鷲掴みにされてしまう。…それはきっと、今も、そのまま。
「素敵…」
…
その日、彼女はランチの時間だけのシフトだったため、私だけがディナーの仕事の準備を始めた。シャワーを浴びて、着替えて、きがえ…
「え!?どうしたのそれ!!え、大丈夫なの!?」
彼女が大声を上げる。見られないようにするのは無理だったようだ。最初からそんなに出血はしていなかったはずだから問題はないと思うが。
「え…もしかして、わたし?」
自分の伸びた爪を見る彼女。削った私の背中の一部が残っていたようだ。
「ごめん、間違いなくわたしだよ、これ」
「一瞬、ほかの女にやられたのかと思ったよ」
申し訳なさそうに笑う彼女。何も問題はないし、この痛みは嬉しいだけだ。彼女がそれだけ夢中になって悦んでくれた証なのだから。
なんともないことを告げ、仕事に向かおうとする私に彼女が口を開いた。
「今日マネジャーにも誘われてるけど、ちゃんと断るから」
「そうなんだ。分かった。また聞かせて?」
「うん、いってらっしゃい」
なんだか、後ろめたいような、泣き出したいような、そんな表情の彼女。しっかり言ってくれたし、なんともないだろうと、仕事に向かう。
だが、問題は、そこ、ではなく、
マネジャーに「も」誘われていることだったと私が気付くのは、もっと時間がたってからのことだった。
…