【前書き】
こちらのお話は、『体験談』ではなく『小説』となりますのでご注意ください。
投稿する際には『小説』を選択していますが、『体験談』として表示されるのはサイトの仕様なのでご理解ください。
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運命のざわめきによって解けていた二本の糸は、またお互いを求め、惹かれ、絡み合う。
たとえ気づかないうちに別々の道を歩んでいたとしても、またいずれ、二人は同じ目的地へと辿り着く。
だってその場所が、二人のはじまった場所なのだから……。
【25】
時刻は朝の六時。すでに外では、夏の陽光が島全体を眩しく覆っていた。
光は、ピンクのカーテンの隙間から零れ落ち、下着姿で眠っている杏花の身体を包み込みながら、ほんのりと、しっとりとした感触を肌に与え、額には汗の粒を滲ませた。
杏花はそんな感触を嫌うようにして、ゆっくりと目を覚ました。
無意識に腫れぼったい瞼を手で擦ると、そこには涙を流した後のような不快な余韻が残っていた。
杏花は大きなため息を吐いた。昨晩のことが脳裏に映し出されたからだ。思い出したくもない、消え去って欲しい記憶。
心が沈んで行く。目を瞑れば、暗くて深い海の底へそこへ、嫌悪という重りで縛られた身体と共に沈んでいく感じがあった。
杏花はすぐに邪念を振り払うかのように首を左右に振った。『らしくない』。こんな考え方をするなんてどうかしている。
後悔したのも束の間、杏花は自分の頬を叩いて喝を入れた。不器用なやり方だといつも思うけれど、これがもっとも慣れ親しんだ方法であるのも事実だった。
そしてもう一つ……。杏花は起き上がり、光が射す窓際に立ってカーテンと窓を勢い良く開いた。
入り込んで来たのは、風に乗る潮の匂いと砂浜の熱気だった。
鼻先が風に触れたとき、逃すまいと大きな胸をますます膨らませて思い切り吸い込んだのち、続いて今度は負けないように思い切り吹き返した。
杏花はこの瞬間がたまらなく好きだった。
毎年この時期になると、杏花は心身ともに疲弊していた。仕事、家事、さらに誠一のお守りと、嫌気が差す三重苦、投げ出したくもなりし、泣きたくなることもあった。
一方で、先日の道流宅での日々はまさに安息であった。
自分が招いたことの罰であったはずの日々が、終わってみれば嬉しいことや楽しいことばかり。
帰ってきた時の反動は、めまいが起こるほど凄まじかった。
でもそんな憂鬱にも負けずへこたれず、前へ前へと邁進(まいしん)出来るのは、この瞬間があったからこそで、杏花は知っていたのだ。この島にある不思議な力のことを。それは自然の力。
どんなに辛いことであっても、悲しいことであっても、はたまた仕事で落ち込むようなことがあったとしても、この風を吸い込むとどんな悩みも自然の壮大さに圧倒され、小さく呆気なく思えた。
もちろん昨晩のことであっても、そこに例外はないと信じている。たしかに腹は立つ。痴漢男にも誠一の態度にも。しかし自然を感じれば、それもまた『らしくない』と思うことが出来る。
杏花「よし、朝飯でも作るか」
そう呟き振り返った杏花の表情には、またいつもの、自信に満ちた輝きが戻っていた。
【26】
肌の湿りが気になった杏花は先にシャワーを浴びようと思い、寝室を出てすぐ横にある階段を下りた。
一階でふと台所のガラス戸が閉まっていることに気がついた杏花は、あれ?と疑わしげに眉をひそめた。
この家では普段からエアコンを使用していない。杏花も誠一も乾燥するのを嫌うからだ。そのため夏場の夜では常に部屋の戸や襖を開けっ放しにして風通しをよくしておくのが、この家の決まりであった。
こんな早朝に戸が閉まっていることなんて普段なら考えられない。もちろん誠一が閉め忘れたという可能性もあるけれど、今までそんなことは一度もなかった。
さらに言うなら、誠一は日頃から寝坊するのが『日課』だとでもいうくらい朝が弱い。それは休みの日でも仕事の日であっても関係なく、杏花が叩き起こさなければいつまで経っても起きて来ないほどだった。
だから今日にかぎって、わざわざ起きて来て戸を閉めるだろうか?
杏花は次々と思考を巡らせていった。
しかしすぐに、まさか泥棒?と不安がよぎった。
数ある選択肢の中で、一番可能性は低いけれど、もっともあり得りえそうな考えだったからだ。
この家には誠一と杏花の二人しかいない。こんな朝早くに誠一が起きていたことがないとするならーーー少なくとも結婚してからはないーーーそして不自然に閉まっている戸。現行を見られるわけにはいかない泥棒が、わざと閉めた……?
私の家で、泥棒だと?杏花の腸は煮えくり返っていた。拳に力が入る。
とはいえ、相手がどんな奴なのか定かではない以上ここは冷静にならなければいけないと自分に言い聞かせ、杏花は一度、深呼吸をして頭を冷やした。
忍び足でその場を離れた杏花は、玄関へと向かい用心のためにと傘立てに差しておいた木刀を取り出すと、再度、台所のガラス戸に近づいた。
曇りガラスになっているため中は見えないが、泥棒は今頃、きっとしめしめと犯行に及んでいるはず。しかも台所にあるテーブルには、よく財布などを置きっぱなしにしてしまう癖が二人にはあるから、尚のこと急がなければ大変なことになる。
杏花は焦るように、把手に指をかけた。
よくよく耳をそばだてると、中から物音が聞こえて来た。
こいつ、絶対ボコボコにして警察につき出してやるから!と、心中で決意したときだった。
次の瞬間、戸が音を立てて勢いよく開いた。
不意のことに、杏花はその場から跳び退いた。
杏花「きゃっ!」
か弱い声が響いた。しかし、開いた戸の向こうにいたのは、
道流「あっごめんごめん!驚かせちゃったね。おはよう杏花ちゃん」
なんと道流だった。
道流は柔らかい物腰で、笑顔を浮かべて立っている。けれどすぐに目を大きく見開いて、慌てた様子で顔を背けた。
杏花が唖然としていると、
道流「もう杏花ちゃん、服着てよ」
突然そう言われ、一瞬なんのことがわからなかったが、あっ、と自分の姿を思い出した。しかしそんなこと、今の杏花にはどうでもよかった。
杏花「いや、じゃなくて!なんで道流君がここに……こんな朝早くにいるのよ?」
無意識に口調が強くなる。
道流「それは……」
道流は杏花の気持ちを察してはいたが、何かを気にするような素振りを見せたあと一度言葉を切った。そして自分の後ろにいる誠一を見やる。
杏花がその視線を追うように身体を傾かせ、誠一の姿を見つけたとき、
道流「実はね、誠一さんに頼まれたんだよ」
意外な言葉に、杏花は、え?とすっとんきょうな声を上げる。
道流「誠一さんはね……昨晩のことを後悔していてね、どうしても謝りたいって言ったんだよ。でもね、今までのことを考えると、それだけじゃ駄目なんじゃないかって僕は思ったんだ。言葉だけでは絶対伝わらものじゃないし、心の底から謝っているかなんて、今までのことを考えたら信用出来ないでしょ?」
杏花は頷く。
道流「だからさ、まずははじめてみませんかって、誠一さんに提案してみたんだ」
杏花「何を?」
道流「行動で示すってことをさ。まずは、杏花ちゃんが日頃やっていることの大変さを知る。それこそ、最初の一歩目だと思ったんだよね。もちろん、謝罪ーーー」
と言いかけたとき、気恥ずかしいのか、誠一が頭を掻きながら声を割り込ませた。
誠一「ま、まあとりあえず……出来上がるまでには時間がかかるから、その間に杏花は風呂でも入って来なよ。汗かいてるでしょ?」
そう言われて、杏花は思い出したかのように自分の身体に見る。
何が何だかわからなかったけれど、杏花はひとまず言われた通りに脱衣場に向かうことにした。
道流はそんな杏花の背中を眺めつつ、大丈夫かなあ、という不安をため息に乗せた。
【27】
脱衣場にやって来た杏花はお揃いの白いブラとパンティを脱いで、木製のバスケットへ放り込んだ。裸になると、湿った肌を撫でる風が心地よく、でも少しだけひんやりと感じた。
先ほどよりも強い光が窓から射し込んでいる。それを眺めながら、今日は暑くなりそう、と杏花が思ったときだった。
ふと視界の端、隣にある民家で人影が動いた気がした。それは窓辺に立っていた影だった。
はあ、とまたため息が漏れた。その影の正体に心当たりがあったからだ。
また、今日もやって来る。一年前の今頃のように。
ただなんでそいつの素性を知っているにもかかわらず、今のいままで隠すことをしなかったのか、とあらためて考えてはみたけれど、その理由は自分でもわからなかった。
期待しているから?いや、そんなはずはない。そいつはこの世でもっとも嫌悪する種類の男なのだから。
それでも杏花は、一糸纏わぬ姿で浴室に入った。
浴室は、壁も浴槽も桶から椅子にいたるまで全て檜で作られていた。先祖のこだわりである。
密封されている空間なのに開放感を感じるのは、きっと檜の匂いのおかげ。この匂いは、昔から変わらず好きだった。
この空間にも、自然が満ちている。
縦長の、長方形の鏡の前に立ち蛇口をひねる。鏡の上にあるシャワーヘッドから注がれる湯に打たれながら、髪の毛の隙間へと湯を巡らせていく。絡み付いていた汗の感触が消えて、すっきりとした心地よい気分に満たされた。
ところが、突然空が機嫌を損ねるみたいに、胸の奥が厚い曇に覆われるのを感じた。
背後に気配があった。その気配から放たれる泥臭くねっとりとした視線が、背中と尻に向けられているのがハッキリと伝わって来た。
杏花は大きく息を吐いて、気怠く振り返った。
そこには窓が取り付けられているのだが、その窓の外には頭一つ分ほど小さい初老の男が、無様な表情で立っていた。丸顔で、ヨレヨレの白い肌着にベージュのチノパンを着ている。
合図するかのように、男が窓ガラスを中指の背でコンコンと叩くと、杏花は裸体を隠すことなく窓に近寄った。
窓は縦すべり出しの二段窓になっている。ちょうど杏花の臍辺りに仕切りがあり、上下に分かれている構造だ。窓枠のサイズは同じで、仕切りがなければひと一人簡単に通れる窓であった。
杏花は最初、窓の用途がわからなかった。万が一、緊急の時にすぐ外に出られるようにということで取り付けたのか。それとも庭園にアクセスするためなのか……。
だが庭園に行くためには、ここから出ても家をぐるっと迂回しなければならずかなり面倒だった。
その後も色々考えてみたけれど、次第にどうでも良くなり最後は設計ミスとして決めつけて、いつの間にか気にすることもなくなっていた。
けれどそんな考えが、今この瞬間の憂鬱へと繋がってしまう。
実はこの窓の表面には、目隠しになるようなものが何もない。下心があれば誰であれ、なんの苦労もせず外から覗けてしまうのだ。
一応、家の周りには石垣の塀はあるが、背の高さほどしかなく心許ない。つま先立ちでもしようものなら、上半身はおろか下半身まであっさりと丸見えになってしまうほどだ。
隣家は二階建てで、二年前の春まで品の良い老婆が一人で住んでいた。杏花も顔見知りで、よく挨拶を交わす仲だった。だから杏花も、同性になら見えてもいいか、と軽く考えていたのだ。
しかしその年の夏、老婆が亡くなっていたことを知る。その時にはすでに葬儀が終わっていて、遺品などの整理も済み、家の中には何も無くなっていたそうだ。
杏花と誠一は後日、たまたま老婆の家族と会う機会があったので、その時に別れの言葉を伝えた。そこまで深い仲ではなかったけれど、でも顔馴染みの人がいなくなるというのも、やはり寂しい気持ちになる。
それから家は売りに出され、一年が経った。現在から数えるとこれは去年の話になるのだけれど、夏のこの頃、帰省した杏花は知らなかった。その家に棲み着いていた男の存在に。
杏花は知らず知らずのうちに、男の眼前で痴態を晒してしまっていたのだ。開放的だからと言って下着姿で、時にはトップレスで。夜には裸で、何も疑わず浴室にも入った。
男はそんな杏花の姿を覗いていたのだ。血走った目を向け、熱く滾った身体で、幾度となくその人妻の裸体でマスタベーションに浸っていたのだ。
数日が経ち、男の存在に気づいた時にはもう遅かった。その時にはすでに、男の魔の手が肌に触れられる距離まで近付いていたのだから。
杏花は留め具を外し、上の窓を押し開いた。
男「へへ、相変わらずいい身体してるねえ杏花ちゃん」
男は痰が絡んだような掠れた声を出す。
杏花「いい加減、覗くのやめてくれる?」
耳障りな声を聞き流し、杏花は冷たく言い放つ。しかし男は、当然意に返さない。
男「まあまあ怒んなよ。俺とお前の仲だろ?それに去年は、乳を揉ませてくれたじゃーーー」
杏花「あんたがしつこいからよ!」
杏花は男の声をかき消すほどの怒号を飛ばしてしまった。男はすぐに、余裕綽々で、
男「おいおい、そんな声を出すと周りに聞かれちまうぞ?」そう言った。
杏花は顔を背けて、口をつぐんだ。
その瞬間男は窓の仕切り越しに手を伸ばし、杏花の腰を自分の方へ引き寄せた。
咄嗟のことに驚く杏花は抵抗しようとして、両の手の平を外枠の壁に付いた。けれどそれは悪手で、二つの乳房だけが外にハミ出す格好となってしまった。
羞恥を感じて、身体がかっとなる。
男はそんな姿を嘲笑いながら、
男「随分とサービスがいいじゃねえか。ええ?乳をこんな風に突き出してくれるなんて」
勘違いも甚だしい。杏花は顔を真っ赤にしながら否定するが、男は笑みを止めなかった。
男「さてそろそろ、いいよな?」
目前にある乳房に、男は舌舐めずりをする。
杏花「いや。ダメ……」
男「ふん、なにがダメだ。今までさんざん見せつけておいて。俺が知らないのは、お前さんのキスの味と、下半身にある二つの穴の締まり具合だけで、それ以外は全部知ってるんだぞ?あと、下着の趣味もな」
そう言って笑い、Fカップの二つの果実に指を食い込ませた。杏花が払い退けようと手を動かしたとき、
男「いいのか?お前さんだって本意じゃないだろう。変な噂を広められたら。この家の人妻の身体は絶品で、上手くいけば、でっけい乳も拝めるぞってな。そんなの御免だろ?」
ゲスな言葉だった。吐き気がする。
杏花が無言のまま俯くと、男はそれを良しと捉えた。
男「ならさっそく……」
男はゆっくりと、気色悪い息を吹きかけながら乳首を口に含んだ。生温かい感触が、乳首の先端から全身に広がる。
杏花「ん……」
舌がぬるぬると乳首を転がした。ときおり強く吸われ、なんとも言えない刺激が流れてきた。。
不快なことに、腹が立つほど男の舌技は上手かった。さらに、空いている手で反対の乳房を揉む。
乳房全体を包み込む男の手の平は絶妙な力加減で、そこに追い打ちをかけるように、人差し指の腹が乳首をこする。
杏花「んッ!」
杏花はすかさず口に手を当てて、声が漏れるのを防いだつもりだった。
でも、男にはわかっていた。杏花という女の扱い方を。
男は杏花の隠れた性癖が露出だと前々から決めつけていた。露出をする女は、大概M気質である。
だから、こうやって破廉恥な姿にさせるほど、誰かに見られるかもしれないという状況にさせるほど、杏花は背徳感から下半身を濡らせるのだ。本人が自覚してようがしていまいが、全く問題にならないくらいに。
男「ここに越して来たときは、本当に驚いたぞ?」
すかさず男は、言葉で責めはじめる。
男「隣家の人妻が、家ん中を下着で歩き回ってるんだからよ。しかもパンティはティーバックときてる。あの日の衝撃はすごかったなあ。尻はプルンプルン。腰はキュッとしてて、ティーバックがこれまた映えるんだよなあ」
杏花はその言葉に恥じらいを感じて、身体をよじらせた。男はニヤリと笑う。
不快。杏花はそう感じながらも、毅然と反抗心を表し男を睨みつけるが、それすらも意に返さない。
乳房を弄ぶ男の手と舌は、一向に止まらない。
杏花は無言のまま、男の卑劣な行為を必死に耐えてはいたが、秘部に感じる滴りはますます多くなるばかりだった。そんなつもりはまったくないのに。
でも認めたくないという気持ちは身体を焦らせ、より敏感に神経を昂らせてしまい、それが結果的に身体の熱を高めていくことに繋がっていることに、杏花は気づいていなかった。
男「たまによ、お前さんが寝てるときに近づいて、じっくり眺めたこともあるんだぜ?間近でその身体をよ。そこでのオナニーは快感だったなあ」
男はその光景を思い出したのか、身体を小刻みに震わせた。と、次の瞬間。乳房を揉んでいた男の左手が杏花の腰に回った。その手は、ゆっくり這うようにして下がって行き、尻を揉みだした。
男「へへ、ここは初めてだな。なかなかの感触じゃねえか」
下品な声で、男は耐える杏花の顔を見上げる。
そこからさらに男は、中指を尻の割れ目に上から滑り込ませていった。
杏花は身体をビクッと驚かせた。
杏花「つッ……そこはやめて」
言葉では拒絶するけれど、男のゴツゴツとした指の汗と尻の割れ目に滲んでいる汗が混ざり合い、やけに生々しい感触があった。それは胸を見られるより、尻を揉まれるよりも、なぜか羞恥を感じてしまい、ジワリとしたヌメリが秘部に現れた。
なんで?なんで感じているの?あり得ない!理解できない身体の異変を杏花はすぐに否定する。が、少し遅れて気づく。男の中指がアナルを探っていることに。
杏花「ちょっ……ふざけないで」
男「おうそうか。ならもう一つの穴にするか?俺は構わないぞ?」
もう一つ……。
それは絶対に……。
男の手が尻から離れた。その手の行き着く先を理解したとき、杏花はゾッとした。
指先が、恥丘の黒い茂みに到達する。
杏花「わかった。だから、そっちはやめて」
観念するしかなかった。
男「なっ、そうだろ。お前さんのような聞き分けの良い女が、俺は大好きだぞ?」
男は満足気に、また指を割れ目に戻した。そしてアナルに中指の先端を押し込んだ。
杏花「んぐっ……あっ……あん……」
味わったことのない感覚に戸惑いながらも、杏花は甘い声を出してしまった。
男はすぐさま反応する。ズボンと下着を下ろして、両足を強く踏みしめながら、いきり立つ肉棒を右手でしごき出した。
不意に男は、乳首を噛む。
杏花「アっ!……アッん……」
その刺激の余韻が、意思とは裏腹に口から甘美に零れ落ちた。
男は中指でアナルを弄り、舌で乳首を舐め回した。乳房には男の証のように唾液がべっとり着いている。
やがて、男は我慢できなくなったのか、
男「はあ……はあ……キス……キスだ、キスさせろ」
右手で杏花の頭を引き寄せ、強引に唇を重ねた。
舌が口内に入って来る。舌が舌を押し上げて舌の裏を刺激してくると、男の舌の動きになぜか自分の舌を合わせてしまい、アナルに入る指が、強く、深く、中を掻き回すたびに、知らないもう一人の自分が現るような気がして、脳が痺れていく。
次第に、男の動きがだんだんと速くなっていった。限界が近づいているようだった。
杏花「んッ……んっん……」
強引に、乱暴になるキスと指。杏花ももうそのときには、男の行為を受け入れていて、その快感に没入していた。
男が唇を離すと、肉棒をしごく手がスパートをかけた。
杏花は無意識に、さらに胸を突き出していた。男はそれを見て勃起している乳首に貪り付いた。
杏花「アん……あっん……ハアん」
あまりの気持ち良さに、杏花は恥じらいがなくなっていた。
男「うっ……ああ……出る!」
その瞬間、肉棒から白い液体が下の窓ガラスに放たれた。液体はドロドロと、ガラスを伝い垂れていった。
男「おう、悪い悪い、汚しちまったな。あとでちゃんと綺麗に拭いとくからよ、へへへ」
その声は、杏花には聞こえていなかった。
杏花の表情は、まるで夢でも見ているかのように呆然としていて、ただじっと虚空を眺めていた。
男「これで俺が知らないのは、お前さんのおマンコだけになったな」
杏花がハッとして、視線を泳がせた。
男「へへへ、次はおマンコ頼むぞ?いいな?」
そう言って、男は帰って行った。
感情の整理が全く追いつかない。私はいったい何をやっているの?頭の中に流れるのは、その言葉だけだった。
杏花はその後、男の痕跡を落とすように身体を洗い流した。脱衣場に戻って来ると、壁に掛かっている時計を見上げた。
あれほど長く永遠に続くかと思った瞬間が、ただの十分ほどだったことに、なぜか少しだけ安堵した。
【28】
廊下に佇む杏花は、一分、二分と、ただただ誠一の横顔を眺めていた。こんなにも真剣な表情を見るのは、いったいいつ以来だろうと思った。出会ったあの日の、上司に楯突いた瞬間だろうか。あのときは本当にカッコよかったな。
あれから数年。今の誠一はまた違った姿をしている。丸み帯びた背中、少し肉付きのいいあご、鍋を煮込んでいるだけなのに引けている腰。随分と不恰好な姿であった。
杏花はその姿に、心だけが近付いていく感じがした。多分、こういう人なんだ。普段から不器用でカッコいいところなんてほとんどないから、だからこそ映えるんだと思った。
このたった一瞬のときめきは、らしくない輝きのせい。その輝きは、今目の前にいる夫のせいであり、出会ったときの夫のせい。
杏花は思わず笑ってしまった。誠一が気付いて振り向く。
誠一「あー杏花。随分ゆっくりだったね。今用意するから」
そう言って、木製のお椀に汁をよそった。それをテーブルに置くと、あらかじめ作ってあったのか、小鉢も添えた。
見てみると、オクラの味噌汁と胡麻和えだった。杏花は椅子を引いて腰を下ろす。
杏花「私の二日酔いを心配してくれたわけ?」
上目遣いに問いかける。誠一は頭を掻きながら、
誠一「うん。杏花はオクラが好きでしょ?だからこれしかないって思ったんだ」
満足気に言う。
しかし、杏花は笑ってしまう。
誠一「え?変かな?」
杏花「ううん、ごめんごめん」
まあいいや、ととりあえず黙っておくことにした。
そういえば、道流がいない。
杏花「あれ、道流君は?」
誠一「道流さんは帰ったよ」
そう、と杏花が悲しげに声を出す。
誠一「いた方がよかった?」
悪戯っぽく笑いながら言うと、杏花はムッとして、
杏花「一言多いんだよ」
口調が荒くなった。
誠一はごめんと謝り、自分の分の味噌汁と胡麻和えをテーブルの上に置くと、向かいの席に座った。そして、一呼吸してから、
誠一「昨日のことを、謝りたいんだ」
今度は一転して、神妙な面持ちからで言った。
その一言は、杏花の胸に深く沈んで行く。
杏花「それで?」
けれど杏花は、冷たく突き放した。
杏花「謝って、また繰り返すの?いつもみたいに」
誠一「ち、違うよ!今度は……違うんだよ」
首を横に振って懸命に伝えようとするが、杏花は冷静に、再度突き放す。
杏花「違うってなにが?今度はってなに?そもそもさ、その言葉も毎度お馴染みじゃない。結局あなたは、なにも変わってない。たとえ一度台所に立ったところで、三日もすればまたいつものあなたに戻る。でしょ?」
誠一は顔を伏せてしまう。
間違ってない。今までの自分を鏡に写すなら、そう思われても仕方がない。
誠一「……確かに、杏花の言う通りさ。でも、本当に今回は違うんだ」
顔を上げて、杏花の視線に自分の視線を重ねる。そこには、ある種の決意が秘められていた。
二人の間に流れる空気が、さらに重くなった。
誠一「まず、謝らせて欲しいんだ。昨晩のことを。……本当にごめん」
誠一はテーブルに両手をついて、頭を低く下げた。
誠一「これでダメなら、僕を殴ってくれて全然大丈夫だからね。僕はそれくらい、本気で申し訳ないと思ってるんだ」
杏花「いやいや、そんなことするわけないでしょ。曲がりなりにも、とりあえずあなたは、ちゃんと謝ってるんだから」
誠一「ありがとう……本当にごめん。それで、実は……杏花、僕ね、隠してることがあるんだ」
杏花は眉間に皺を寄せて、疑いの目を向ける。
誠一「で、でもね、浮気とかそういうことじゃないよ」
慌てて否定すると、ほっとしたのか、杏花の息を吐く音が聞こえた。
それからの誠一は、躊躇っているのかそれとも怖いのか、なかなか話しを進めなかった。
時計の秒針が、三周くらいしただろうか。杏花は無言のまま待っていた。
そして、ようやく口を開いた。
誠一「性癖のことなんだ」
性癖?少し間を置いてから、杏花はおうむ返しに繰り返す。
誠一「うん。僕ね、君が他人の男に悪戯される姿が……姿に、すごく興奮するんだ」
杏花は理解できないのか、首を傾げる。
杏花「え、どういうこと?悪戯ってなに?上履きを隠されたり、机の中に食パンの耳を入れられたりしたら興奮するってこと?」
誠一「違うよ。ていうかなんでそうなるんだよ。しかもそれ、悪戯じゃなくてイジメだよ」
じゃあなに?と、杏花はふざけているつもりはないようだ。でもそのおかげで、さきほどまでの重苦しい空気が変わって、誠一の肩の力も抜けた。
誠一「君がセクハラされたり、痴漢されたり……他人の男に、君が弄ばれることに、僕は身体が熱くなって、胸が苦しくなって……ア、アソコが、大きくなっちゃうんだ」
言い終えると、誠一は目を逸らし頬を赤くした。
ただ、それは恥ずかしいという気持ちもあったけれど、それ以上に、ずっと胸の奥でつっかえていた本当の自分を言葉にすることができたという想いが強かった。
歪んでいるし、滑稽な性癖であることは重々理解している。でも、誠一は羨ましかったのだ。道流と亜樹の仲睦まじい姿が。
同じ性癖であるはずなのに、道流は妻である亜樹と、笑顔の絶えない関係を続けている。それが何を意味するのかは明白で、二人は性癖というもう一つの愛の形を互いに受け入れているということだった。
今まで自分が滑稽だと思っていた性癖であり、恥ずべきだと思っていた性癖なのに、二人はしっかりと理解し合い、それを乗り越えて、また新しい愛の花を咲かせていたのだ。
誠一はそれを目の当たりにして、凄く励まされたような気がした。
こんな二人のように、自分も杏花との愛を育んでみたい。誠一は、一歩を踏み出す勇気を二人からもらえたような気がした。
だから誠一は、伝えてみようと思った。等身大の自分を。等身大の言葉で。
もうこの関係に次はないかもしれない、今日が最後かもしれないから。
……沈黙が続いた。
開け放たれた戸から風がそよそよと流れて来た。秋の気配を含んだその風は、どこか優しくて、二人をどこか遠くの景色に運んでくれるような、そんな予感を届けてくれた。
【29】
杏花は、そのさ、と切り出し、
杏花「性癖は、いつ頃気付いたの?自分が変……じゃないか。そんな風に言ったら失礼だよね、ごめん。もう一人の自分の姿に気づいたのは」
杏花は言葉を選びながら言った。
誠一「……去年の夏」
その一言に、杏花はハッとする。去年の夏といえばちょうど隣家の男が迫ってきた頃だ。
顔から血の気が引いていく。杏花は誠一がそのことを知っていて、それがきっかけになってしまったのではないかと考えた。
あの男の卑劣な行為がこれまでの夫婦の日常に亀裂を生じさせたのだと考えたら、不愉快極まりなかった。しかし、杏花にも非があるのも事実。家の中だからという安心感から、下着姿で油断してしまった結果、それが呼び水となってしまったのだから。
杏花は申し訳なくなり俯いた。今のいままで強気だった心境に哀愁が漂う。
誠一は恐る恐る杏花の顔色を窺い、口を開いては閉じるを繰り返した。こんなにもショックを受けている杏花を見るなんて初めてだったからだ。
二人の時間が去年の夏に戻っている。けれど、記憶はすれ違っていた。
誠一が言う去年の夏とは昨晩の男のことであり二階堂のこと。誠一は、やはり気づいていた。二階堂の姿を見た瞬間、記憶の中の男が二階堂と重なり合ったことに。
でも、それを公に言い出せなかったのは、二階堂の行為を期待していたからであり、欲求に抗えない自分の弱さでもあった。
しかし杏花は、隣家の男を思い浮かべていた。
二人は相入れないまま話が進む。
杏花「そっか……。私こそ、ごめん。気付かなくて」
誠一「ううん、そんなこと言わないでよ。元はと言えば僕が悪いんだから。それでね……」
そこで誠一は一度言葉をとめて、あらためた。そして決心したように姿勢を正した。
誠一「……僕は、君のセックスが見たいんだ」
突然の言葉に、少しの間沈黙が流れた。
杏花「……は?」
杏花は一瞬、なんのことか理解出来なかった。誠一が一体何を言っているのか、それが何を示していて、何を求めているのかわからなかった。
誠一「君が、他人の男とセックスしている姿を見たいんだ」
杏花「なにそれ?」
誠一「だから……君が……」
杏花「いや、意味がわからないから。……ていうか、それってさ、私はあなたの願望を叶えるために、他人の男の前で裸になって股を開けってこと?」
誠一は、目を合わせることなく頷いた。けれどその印象が杏花の逆鱗に触れる。
杏花「ふざけないでよ。そんなこと言われて、はいわかりましたって言うと思う?筋が通らないでしょ。今まで何もやって来なかったあなたが、ここに来てまた私に要求するの?とんだご身分だね。しかもセックスしてくださいってさ、馬鹿も休み休み言えって」
誠一は手を強く握りしめ、杏花の一言一言を懸命に受け止めていた。
杏花「家事もろくにしないし、仕事も全然ダメ。面倒を見るのはいつも私。逆にあなたからはなんにも貰ってない。どうせこれだって三日坊主でしょ?今までだってそうだったんだから。たった一回台所に立ったくらいで自分の欲しいものをくださいって、虫が良すぎると思わない?」
その至極真っ当な言葉は、容赦なく誠一の胸を貫いて行く。
杏花「でも勘違いしないでね。私は見返りを求めてるわけじゃないから。何かが欲しくてあなたと結婚したわけじゃないの。私はね、あのときのあなたを素敵に思っていた。そしてあなたと同じ時間を過ごすうちに、それが愛に変わった。それからの私は、あなたが全てになったの」
誠一は、その言葉の数々をしっかり噛み締めながら思った。
ありがとう杏花。でもね、僕は決めたんだ。
今までも散々杏花に頼り、甘えて、求めてきた。そして、またそれを繰り返そうとしているけれど、でも、僕は決めたんだ。変わるためには、伝えなきゃいけないってことを。
とはいえ、本当に勝手だよね。ごめん。でも僕は本気なんだ。僕はもう一度、君に相応しい男になりたいんだ。
誠一「本当にごめん。けど、信じてほしいんだ。今回こそ、絶対に、何があっても、僕は杏花を裏切らないって誓う」
杏花「誓うって、具体的に何をするの?まさかと思うけど、神様にとか言わないでよ」
誠一「言わないよ」
否定してから、穏やかな表情で続けた。
誠一「昨日、道流さんに言われたんだ」
道流という名前が出た瞬間、杏花が興味津々に目を見開いた。
誠一「まず誠一さんは、なにもできないって決めつけている自分を変えるべきだって言ったんだ」
杏花が頷く。
誠一「僕ね、最初からずっと決めつけていたんだ。杏花ってさ、なんでも器用にこなすでしょ?仕事も家事も。それをまじかで見て来たから、僕じゃあこんなふうには到底できないって思っちゃって、だからその劣等感から、どうせ無理だしやったって失敗して怒られるのが関の山。そう決めつけて、いつの間にか甘えていたんだ。杏花の優しさに」
一つ息を吐く。
誠一「道流さんに怒られたよ。本当にだらしないですねって。杏花ちゃんは、あなたのベビーシッターじゃないんですよって。なんかそう言われたら、今までの自分のことに腹が立ってきて情けなくなったんだ。なんでこんなに馬鹿だったんだろうって」
呆れたように、誠一は首を振る。
誠一「でも僕には、何からはじめていいのかさっぱりわからなかったんだ。本当につくづくだよね。そしたら、まずは第一歩、知ることからはじめましょうって、道流さんが教えてくれた」
杏花はさきほどの道流の姿を、言葉に重ね合わせる。
誠一「なんでもいいから見様見真似でやってみて、杏花の日々の苦労を身をもって体験しましょうって言われたよ」
杏花「それで料理?」
誠一「うん。でも全然だった。台所に立つだけで、頭の中真っ白になっちゃって。そんな僕を見かねて、道流さんが実演しながら丁寧に教えてくれた。だから、今回のオクラの味噌汁と胡麻和えは、道流さんが作ったやつ。杏花が作るのと同じくらい美味しいよ」
杏花「そう……」
杏花は、義務講習で過ごした二週間を思い出していた。
会社では、優衣花や美雪、真琴がいて、仕事が終わったら道流と一緒に電車に乗って、家に着けば亜樹が迎えてくれた。
道流はお客だからと言って、杏花をキッチンには立たせなかった。だから見ていた。
道流は、不慣れな亜樹と一緒に毎日キッチンに立って手料理を振る舞ってくれた。料理はすごく美味しくて、頬が落ちてしまいそうだったのを、杏花は昨日のことのように覚えている。
それはとても短いけれど、楽しくて憧れた日々。いつかの自分が思い描いていた、未来の形だった。
杏花は自然に、口元が緩んでいった。
誠一「凄く手が込んでるんだなって感じた。簡単そうに見えて、色んな材料や調味料が使われているし、煮込んだり、和えたり、様々な工程があって作られてるんだってわかったんだ」
そう、大変なんだよ。杏花は胸の奥でつぶやく。
誠一「しかもこれをほぼ毎日、献立を考えながら作ってくれたんだって考えたら……なんていうか……凄いなって。それに加えて仕事もこなしてるんだから、もう尊敬とかそんな言葉じゃ表現出来なくて……僕、なんか崇めたくなったよ」
誠一は遠慮しながら笑った。
誠一「最初は足手まといかもしれないし、いっぱい迷惑かけちゃうかもしれないけれど、手伝わせてほしいんだ。杏花が今まで背負って来た苦労を、僕にも分けてほしい。だから、お願いします。もう一度だけ、君に相応しい男になるチャンスをください」
そう言って立ち上がり、誠一は腰を折って頭を下げた。
杏花は、大きく息を吐く。
杏花「頭、上げて」
誠一は恐る恐る顔を上げる。
杏花「……男らしくないね、本当に。男なら分けてじゃなくて、全部よこせくらい言いなよ」
誠一「もちろんそう言いたいのは山々だけど、それは僕のキャラじゃないよ。似合ってないでしょ?」
杏花「……たしかに。でもさ、私が嫌だって言ったらどうするの?」
杏花は、誠一の真意を確かめてみたくなった。言葉でならなんとでも言える。今までだって喧嘩はあった。そのたびに今回みたく話し合ってきたけれど、結果的に口約束で終わってしまったことが幾度となくあった。
だからこれが最後の譲歩。杏花の優しさだった。
誠一は一度顔を伏せて、話すべきことを考えているようだった。そして、意を決した表情で言った。
誠一「杏花、厚かましいことを言うね。これから僕は、勝手ながら君のお世話をします。拒んでもします。殴られてもします。杏花に拒否権はありません!」
誠一は胸を張って高らかに宣言した。
杏花は唖然とした。
は?しますって……え?
それから数十秒後、杏花は思わず吹き出してしまった。
私の優しさは無視かい!
杏花は呆れた。
ったく、本当にこの人は勝手だわ。昔からなんにも変わってない。そんで、これだけ重要な場面で、さらにしますときた。これはダメだ。もうお手上げだよ私は。
杏花は腹を抱えて笑った。
それからしばらくして落ち着いてくると、杏花は道流との一年目を思い出した。偶然なのかそれとも必然だったのか、知るはずもない事実を、誠一は今言葉にしたのだ。
それは道流君が初めて私を助けてくれた言葉だった。
入社してすぐだったっけ。私のことを気に入らない先輩達が仕事を押し付けてきて、大変なことになったんだ。
断ればいいのに私も意地になっちゃって。それから当然残業になって、結局深夜までかかっちゃったんだ。
あるときに突然、なぜか道流君がふらっと現れて、私の隣の席に座ったんだ。そしたら何も言わずに手伝ってくれて……。
でもプライドの高い私はそんなの許すはずがなくて、全力で拒んだんだけれど、道流君は全然引かなくて、挙げ句の果に、『これは僕が勝手にやってるお節介なの。だから君に拒否権はありません!』とか言い出して、頑なに人の話し聞かなかったんだよね。
さすがの私も、何この人?って思ってドン引きした。
でもそのあとに、ときどき優しい言葉もくれたんだ。
『もう少しだね、一緒に頑張ろ』とか『疲れてない?無理しないようにね』とか『気分転換に飲み物買って来てあげるね』とか……。
些細なことだったけれど、でもそんな小さな優しさがしっかりと数年経った今でも残ってるってことは、道流君の不器用な優しさが、心の底から嬉しかった証拠なんだ。
今にして思えば……素直じゃなかったな。
杏花は思い出し笑いをしてしまった。
一息吐いてから、
杏花「……わかった」
誠一「ほ、本当に?」
杏花「うん」
誠一「ありがとう杏花!」
杏花「けーれーど!」
誠一の鼻が伸び切る前に、一度間を作る。
杏花「これだけは言わせて。私だって日々変わっていくの。努力して、勉強して、日々自分の足で成長していくの。だからあなたがこれから先、そこらへんで甘えて腰を下ろすようなら、私はあなたを置いて届かないところに行っちゃうからね。あなたを待ってるのは、今回だけ。いい?」
誠一は、力強く頷いた。
とここで、杏花はふと気付いた。
杏花「あ、ねえ、セックスしてほしい相手ってさ、もう決まってるの?」
誠一「え?あ、うん。道流さんだよ」
杏花「……」
やっぱり。杏花は、薄々勘づいてはいた。
誠一が道流に相談したことの内容は、性癖の話しを聞いたときになんとなくわかっていた。
でも当然ながら、親友である亜樹に対する罪悪感は拭えなかった。
幻滅されたくないという、道流への思いもある。
それならいっそのこと、まったく知らない他人としたほうが何も後悔することなく思いっ切りセックス出来るだろうし、なにより道流とのセックスなら、こんな形ではなくて、もっと自然にがよかった。
杏花はいつかの遠い記憶に想いを馳せる。
否定と不安が交互に胸の中に現れては消えて、道流への期待と衝動が、その横からなだれ込んで来る。
結局のところ、したいという本音は変わらない。ああだのこうだの理由を作らずに、やりたいと、セックスしたいと認めればいいのに、その一言が喉から出て来ないのは、きっとそのあとのことが気がかりだからだ。
セックスをしたなら、受け入れることになる。きっとそのあとも、誠一は他人に抱かれてほしいと言うはず。自分は、そんな誠一の『愛』に付き合いきれるのだろうか。そう考えるのは、当然の流れだった。
でも不思議なのは、その性癖の片鱗を受け入れてしまっているということだ。こんなのあり得ない、絶対に嫌だ、そう思っていない自分が確かにいて、誠一の言葉に高揚感を感じてしまっている。
杏花は、大きく深呼吸をした。
あれこれ考えれば考えるほど、色んな感情が打ち寄せられては引いていく。そう、波のように。
どうしたいの?最後は、そう問うてみる。道流としたい。新しい自分を見てみたい。感じてみたい。
でもちょっとだけ腹が立つのは、不器用な誠一の頼みだということと、それに期待している、これまた不器用な自分だからだ。
杏花「ねえ、正直に答えて。道流君とセックスしたあと、私は、他の人ともするの?……ううん、してほしいの?」
誠一は大きく頷き、
誠一「僕は、本気だから」
視線が重なり合い、見つめ合った。でも、その視線は交差して通り過ぎ、お互いを透かしているような気がした。
二人の時間があのときへと戻っていく。
杏花は、目の前のことに囚われ過ぎていて、いつの間にか内に秘める欲求に目を逸らしていたんだとわかった。本当は、互いを求めていた。もちろん、形は色々あるし、は?とぶっきらぼうに返事をしてしまうこともある。
でも、それが本物なんだと思った。素直に受け止められないからこそ、葛藤が起こり変化がある。変化があるからこそ、道が変わる。道が変われば、未来が変わる。
杏花は、一言多く言ってみた。
杏花「私でいいの?もっと美人じゃなくて?」
すると誠一は胸を張って、
誠一「それってどういう質問?僕の世界には、杏花を超える美人なんて……いません!」
と言った。語尾の強さに、自信が現れている。
杏花「うん、知ってる」
言うと、二人はいつかの、仲が良かった頃の笑みに戻っていた。
杏花「あ、そうだ。オクラはね、二日酔いじゃなくて、お酒と一緒に食べるのが正しい知識ね」
誠一「……え?」
その頃にはもう、お椀から昇る湯気が無くなっていた。
……一方、旅館へと帰って来た道流は、
亜樹「もう、どこ行ってたの?」
さっそく問い詰められていた。
道流「いや、ちょっとね」
亜樹「起きたら道流がいなくなってて、私すっごい心配したんだよ?」
道流「ははっ。ごめんごめん」
亜樹「で、どこに行ってたの?白状しなさい。でないと、今夜お酒をいっぱい呑んじゃうからね!」
それは勘弁とばかりに、道流は浴衣姿の亜樹を後ろから抱きしめた。
道流「実はね、昨日誠一さんに相談されたんだ」
亜樹「何を?」
道流「いつかの亜樹と一緒だよ。不器用な迷える仔羊を……」
と、言ったところで、亜樹はおもむろに立ち上がり、
亜樹「ねえそれよりさ、お腹空いたからご飯行こ」
亜樹は道流の戯言を遮り、せっせと着替え始めた。どうやら、よほど腹が減っていたらしい。
道流「……そうだね」
聞いてきたのは亜樹でしょ?納得いかない道流は、なんだか悲しい気分になりながらも、亜樹の下着姿を眺めていた。
【30】
朝食を終えた道流と亜樹は、部屋に戻って最終日である今日の予定について座卓を囲みながら話していた。
道流「それで、優衣花と美雪は何て?」
道流が湯呑みに手を伸ばしながら言った。
亜樹「最終日なんだから、夫婦水入らずでどうぞ、てさ」
浴衣姿の亜樹が答える。
道流「ふーん、なんか気が利くんだか利かないんだかわからないね」
湯呑みに入っているお茶を一口飲んで、道流はふーっと穏やかな息を吐いた。
亜樹は座卓に顎を乗せ退屈そうに、なんで?と聞く。
道流「せっかくの旅行だからさ。僕と亜樹は、帰ってからいつでもどこでも二人で行けるけど、みんなでっていうのは都合が合わなきゃなかなか出来ないからね。特に杏花ちゃんや誠一さんはさ」
亜樹「それは一理あるけど……。ハァ、本当に道流は鈍いなぁ」
ため息を交えつつ、亜樹は顔を上げて言った。
道流「え、どうして?」
亜樹「優衣花や美雪ちゃんは、私達の楽しみ方を知ってるからだよ」
道流は首を傾げる。
亜樹「だってさ、私と道流って、島に来てから一度も揃って楽しめてなかったでしょ?初日は道流が仕事で、二日目は……まあ、隅に置いとーーー」
道流「ーーーきません。ちゃんと言ってください」
亜樹「はいはい。二日酔いで迷惑をかけたわけですが、そうすると今日を逃したら、この三日間の旅行で一度も私と道流はラブラブ出来なかったことになります。するとどうでしょう?私は冷え切った身体のまま都会へと戻ることになるのです。あ〜あ、寒い寒い」
亜樹は腕をさすりながら、何やら意味深な視線を道流に向ける。
楽しみ方だのラブラブだの言われたら、それはセックスを示しているということになるけれど……。それとも、もっと刺激的で熱い狂乱のことだろうか……。
道流は期待してしまう。想像する先には、他人の肉棒に喘ぐ亜樹の姿がある。
道流はむくむくと股間を大きくした。
亜樹「……変態」
それを見ていた亜樹は、当然のように蔑む。
道流「ありがとう」
しかしそんな言葉も、道流には褒め言葉となってしまう。
道流はスッと立ち上がり、亜樹の背後に回った。そしてゆっくりと浴衣の襟元を肩から剥いでいき、肌を顕にさせると、白いブラのストラップ部分を指でなぞる。
道流「凄く、セクシー。僕ね、亜樹の肩も大好きなんだ」
耳元でささやくように言うと、道流はそのまま浴衣を肘辺りまで下ろしていき、胸の谷間を晒した。
道流「亜樹が、誰か知らない男に脱がされて、ゴツゴツした指でこの柔肌をなぞられたら、それだけで僕は興奮する」
中指を谷間に上から差し入れていく。
亜樹は恥じらいながらじっと道流の指を見つめていた。
道流「亜樹のおっぱい、温かくて柔らかい」
谷間の中にあるムッとした湿り気が、指に伝わってきた。さらに道流は、うなじに舌を這わせる。亜樹は、その感触に身体を振るわせた。
亜樹「道流……」
と、そのときだった。座卓の上に置いてあるスマホが振動した。
道流が、誰だろ?と言って離れる。亜樹は身体からスーッと火照りが冷めていくのを感じながら、残念、と胸の奥でつぶやいた。
電話をかけてきたのは、どうやら誠一らしい。道流が敬語を使って話しているのを聞いてすぐにわかった。敬語を使う相手が、今は誠一しかいないからだ。
何の用だろうと亜樹は聞き耳をたてた。うんうんと頷きながら、道流は真剣な表情をしている。亜樹はなぜかその表情を見て、ドクンと胸が高鳴るのを知った。
それはただの予感であるはずなのに、妙な期待感が混ざり合っていた。身体がソワソワしてしまう。
でもその予感は、いつぞやの感覚と同じであるように思えた。一年前にも、二年前にも感じた、道流が望むあのセックスと多分同じ。
今まで何度も繰り返してきた望まれるセックスと傷つくセックス。けれど、こんな予感のするセックスはきっと間違いなく気持ちよくて、絶頂に達することの出来る至福であり至高のセックスであることを、亜樹は身を持って知っていた。
だから予感もソワソワも、期待から来るものであるとわかった。自分の身体の奥底で眠っていた色欲魔が、夏の特別な光に当てられ、悪戯をしようと目を覚ましてしまったのかもしれない。
この色欲魔はなかなか質(たち)が悪い。
自分でも上手く抑えられない姿だけれど、道流はそんな私を今回も喜んでくれるかな?
道流、私は待っていますよ……。亜樹はそう思いながら、一人意地悪く、秘部を湿らせた。
道流は電話を切って、スマホを座卓に戻した。そして亜樹の方に視線を向けて、電話していたときと同じ表情で話し始めた。
道流「亜樹、あのね……」
【31】
同日の夜。夕食も食べ終わった後だった。道流と亜樹は杏花の家を訪れていた。
居間の襖や障子は全て開け放たれていて、ときおり風に乗ってコオロギの鳴き声が聞こえてくる。亜樹はそんな声に秋の気配を感じながら、道流と誠一を見ていた。
道流「では、それでよろしいですね?」
誠一「はい、問題ありません」
二人は事前に話し合っていたらしく、どうやらカメラにセックスの一部始終を記憶するらしい。
誠一は部屋の隅に三脚を立てて、自前のカメラをセットした。そしてもう一つ、道流が真琴から半ば強引に渡されたハンディカメラを、さらに誠一に渡す。
一方の杏花は、緊張の面持ちで二人の作業を眺めていた。余裕がないのか、言葉数は少ない。
亜樹はそんな杏花を新鮮な気持ちで見つめていた。普段から強気で気さくな杏花が、こんなにも小さく、まるで少女のように膝を抱えて座っている姿に、なんだかキュンとした。
そこには自分が知っている杏花はいなくて、借りて来た猫のような不安を瞳に映している。
亜樹はそっと口を開いた。
亜樹「ねえ、ちょっと二人だけにしてくれないかな。私と杏花」
突然そう言われ道流と誠一は戸惑ったが、顔を見合わせてから席を外した。
二人が居間を出て襖が閉まるのを確認してから、亜樹はそっと杏花の背後にまわって後ろから抱きしめた。
亜樹「怖い?」
杏花は少し考えたあと、わかんない、と答えた。
亜樹「うん、それが正しい気持ちだよ」
杏花の頬に自分の頬を寄せる。
杏花「亜樹も最初はこうだったの?」
亜樹「ううん。私は状況が違うからそんなふうには思わなかった。私は道流に望まれる前から……うん、自分から求めた部分もあったから、こんな順序良くはいかなかったよ」
そう言って亜樹は照れ笑いをした。
自分から求めた部分……。杏花は、その言葉が不思議と胸の中にある隙間を埋めたような気がした。
亜樹「驚いた?」
杏花「うん。なんか……そんな世界があるんだって思った」
亜樹「そうだよねえ。先輩である私もそうだったもん」
杏花「いや、セックスに先輩も後輩もないでしょ」
二人は笑う。
亜樹「でも、今回のパターンははじめてだから、事情を聞いたときはちょっと複雑だったよ。だって道流と杏花だもん」
杏花「ごめんね亜樹。誠一のわがままに付き合わせちゃって」
亜樹「ううん全然。けど私ね、なんだか変なんだよね。ちょっとワクワクしてるっていうか、今まで見る側っていうのを経験したことなかったから、道流と杏花がどんなセックスするんだろうって……興味津々なんだよね」
杏花「こんな私だよ?本当に?」
亜樹「うん。だって杏花って美人じゃん?道流は美人が大好きだから、いつもより増し増しなセックスになるんじゃないかな」
そう言って笑った。
杏花「笑いごとじゃないよ。私いま凄く緊張してるんだよ?」
亜樹はそれを聞いて、杏花の胸に手を置いた。ドクンドクンと、杏花の緊張が伝わって来た。
亜樹「本当だ。杏花ってシャイなのね〜」
そう言って、杏花の頭を撫でた。
杏花「ちょっと、ふざけないでよ。……本当に、いいのね?」
亜樹「うん。昔好きだった人と、あの頃に戻った気分でセックスするといいよ」
杏花「……知ってたの?」
亜樹「もちのロン。当然よ。でもね、おかしな話なんだけど……杏花は私のために気を遣ってくれたでしょ?あのあとね、実は道流は優衣花のことを好きになったんだ。だから杏花がしてくれたように、私も優衣花に気を遣っちゃったんだよね」
杏花「ええ、そうなの!?まあたしかに優衣花は美人だもんね。道流君が惚れるのもわかる気がする。……でもそれってさ、私の苦労が水の泡になるところだったってことだよね?」
亜樹「まあまあ細かいことは置いといて、今夜のセックスを楽しんでよ」
杏花「うわ、流した」
亜樹「ふふっ、水だけにね」
そう言って、二人は笑い合った。
【32】
道流「では、よろしくお願いします」
道流は廊下で、カメラの使い方を教えていた。
誠一「……本当にありがとうございます。僕のわがままに付き合ってもらって」
道流「いえ、構いません。僕も興味はありましたし……いや、これだと語弊がありますね、ははっ。でも本音は、他の男とのセックスですけど。誠一さんも同じ気持ちなんじゃないですか?」
誠一「はい。でも、昨日の道流さんの言葉を聞いてからは、しっかりと考えをあらためましたから」
道流は正直残念に思ったけれど、そこは何も言わずに、誠一の言葉をそっと飲み込んだ。
襖が開き、亜樹がひょこっと顔を出した。
亜樹「いいよ」
その声と一緒に手招きした。
道流と誠一は同時に頷き、また居間に戻った。
道流は杏花の隣に座った。
杏花はえらく緊張していた。身体が小刻みに震えているようにも見えて、道流もはじめ不安になってしまった。本当にいいのだろうか、と。ましてや昨日の今日だ。あれだけ怖い思いをしたのに、もうまた次のセックスをしようとしている。
いや、すると決めたんだ。自分がそんなことでどうする。自分がリードしなければいけないんだぞ?道流は自分に言い聞かせて、杏花の肩を優しく抱きしめた。
道流「大丈夫。後悔はさせないよ」
杏花は頷いた。
誠一「じゃあ、お願いします」
カメラを構えた誠一が、すでに股間を大きくしながら言った。
亜樹「私は、襖の外から見てるね。近くにいると、たぶん気になっちゃうだろうから」
亜樹なりの気遣いだろうか、そう言って居間を出て行く。
襖がゆっくりと閉まった。
道流は杏花の後ろにまわり、そっと抱きしめる。身体から体温が伝わってくる。
杏花の白いシャツのボタンを、上から一つずつ外していくと、綺麗な肌をしていた。きめ細かくて、すべすべな肌。色は亜樹ほど白くはないけれど、健康的と言うのか、人間らしい肌色をしていると思った。
谷間が見えて、それからピンクのレースのブラが現れた。よく見ると、乳房には薄く血管が浮いていた。
道流「凄く大きいね。ここからの眺め、最高だよ」
山の頂上から麓を眺めているようでいて、杏花の顔が赤くなった。
道流はそんな反応を楽しみながら、ボタンをまた一つ外していった。全て外し終えると、肩からシャツを脱がした。
道流は脇の下から腕を通して、胸を下から揉み上げた。その重さと弾力に、感激した。
道流「凄いよ、この感触」
ゆっくり、ゆっくりとその感触を確認するように、下から上に、下から上に、指を食い込ませながら揉んだ。そしてそのまま耳に、フッと息を吹きかける。
杏花「あっん……」
その瞬間、杏花の身体の強張りが緩んだ。道流は見逃さなかった。さらに耳を甘噛みして、舌でチロチロとしつこく舐め上げた。
杏花「あっ……あん……」
声色が変わった。どうやら杏花は耳が弱いらしい。
道流はしばらく舐めたあと、そこから下りていき、首筋に這わせた。
道流「美味しいよ杏花ちゃん」
杏花「いや……恥ずかしい」
道流は杏花の顎に手を添えて、自分の方へ向かせた。
躊躇いはなかった。道流は唇を重ねた。はじめは緊張からどうしていいのかわからなかった杏花も、次第に受け入れてくれて、すぐに舌をヌルリと絡めた。
温かい唾液が行き交い、二人のムッとする吐息が混ざり合う。杏花もだんだんと、道流に身体を預けてすがりつくようなキスに変わっていった。
二人の世界が、甘い桃色に包まれていく。まるで慣れた男と、うぶな女、といった感じの絡まり方だった。
道流はブラのフロントホックを外し、カップをカメラに見せつけるように開いた。それは、生唾を飲んでしまうほど凄艷な乳房だった。
見るのは初めてではない。でも、こんなにも狂おしいほどの魅力だったなんて……。
道流は唇を重ねつつ、すでに尖っている乳首をコリコリとくすぐる。
杏花「う……んっ……アンっ……」
こもり声が色っぽい。
唇を離すと、ツゥーっと糸を引いた。
二人は見つめ合う。まだ十分と経っていないのに、すでに身体は熱く滾っていた。
もう激しく絡み合ってしまいたい。けれど、まだ理性がそれを留めた。まだ愛撫が足りない。道流はあらためて、乳首を人差し指で弾きながら、乳房を揉んだ。
杏花は気持ちいいのか、甘い声を出しながら目を瞑り天井を仰いでいる。
たまらない。道流はそんな杏花の顔を眺めながらより執拗に乳首を弄んだ。
杏花「アッん……んん……ハァん……」
ゆっくりと、杏花の身体を寝かせた。仰向けになった身体を、道流はじっくり眺めたあと青のジーンズのボタンとファスナーを下ろした。
ピンクのパンティの一部が見えた。道流はそこに向かって手を滑り込ませていった。フサフサの陰毛の感触がくすぐったい。そのまま進み、破れ目に到達した。
杏花の表情が険しくなる。
道流「杏花ちゃんの秘密の場所に、やっと触れられたよ」
杏花「そんなふうに言わないでよ……恥ずかしいから」
道流の中指が、杏花のおマンコにゆっくり侵入していく。すると、指先に滴りを感じた。
道流「もう濡れてるよ?杏花ちゃん、感じてるの?」
杏花「ぃやん……道流君が……いやらしいからよ」
道流「じゃあ、もっといやらしくしようね」
そう言って、道流はジーンズとパンティを一気に脱がした。
裸になった杏花を、道流はまじまじと眺めて、誠一もカメラを近づけて接写した。
道流は杏花の股の間に移動して、足を大きく広げた。綺麗なサーモンピンクのおマンコがとても艷美で吸い付きたくなるほど刺激的だった。
道流の興奮は、すでに高調していた。それから人差し指と中指でマン肉の合わせ目をひろげて、クリトリスを外に出してあげた。可愛らしい豆粒が、蜜に濡れて光っている。
道流「杏花ちゃんのクリトリス、凄く可愛い」
と言って、いきなり口を密着させた。
杏花「んッ……アァ!」
ビクンと身体を硬直させ、一度は喉に留めた声を弾むように放った。
道流はピチャピチャと音を鳴らして、蜜を掻き出すように舌を動かした。そして、チューと吸い上げる。
舌を押し込むようにしてとんとんと連打すると、ここでさらに杏花の身体がよがった。声にもならない息が、淫靡な音となって二人の雰囲気をより淫らな色に染める。
道流は責め手を緩めない。卑猥な水分を含んだ音が、尚も居間に広がっていく。それは、杏花の秘部から流れる蜜がどれほどのものかを示していた。
ジュルジュル……ジュルジュル……。
杏花「アッ……んん!……あンン!」
さらに強く。
杏花「アァ!……ッあん!……道流君……そこっ……いい!」
次の瞬間、道流は舌の先端でクリトリスを強く弾き上げた。
杏花「アァッ!!」
尖った声を天井に向けて発したあと、身体がビクビクと震えた。杏花は肩で息をしつつ、とろけた視線を道流に向けた。
杏花「……いじわる」
道流「ははっ、凄く可愛かったよ」
そう言うと、杏花は道流の腕を叩いた。そして顔をそっぽに向けると、足を大きくM字に開いた。
杏花「……道流君の入れて」
道流はズボンを脱いでゴムを着けると、チラリと襖の方を一瞥した。襖が数センチほど開いていて、おそらく亜樹はそこから覗いているはずだ。どんな思いなのだろう。道流は少し複雑な気持ちになりつつも、亀頭を杏花のおマンコに近づけた。
いつの間にか誠一も下半身丸出しになっていて、片手でカメラを、片手で肉棒をしごいていた。
改めて見るその状況に、道流は恥ずかしくようなこそばゆい気分になった。
道流「じゃあ行くよ。杏花ちゃん、いっぱい繋がろうね」
正常位のまま、ズブズブと肉棒を膣内に進めていった。
杏花「んんっ……」
中は温かくて、濃厚な蜜がたっぷりと肉棒に絡みついてきた。
道流「杏花ちゃんの中、凄く気持ちいいよ。キュッと締まってる」
道流はゆるりと腰を前後させた。杏花の顔が歪む。
杏花「アァ……」
クチュ……ズチュ……パン……パン……。結合部が奏でる音が淫らにこだまする。
道流「凄い……どんどん締め付けてくる。杏花ちゃんのおマンコ、僕のチンポが好きみたいだね」
杏花「ィヤん………そんなこと言わないで……アんッ……恥ずかしい……」
道流はさらに両胸に手を置きながら、腰を振るペースを早めた。指のすき間から胸の脂肪がはみ出し、ふるふると揺れている。
たまらなくなった道流は、肉棒で突きながら乳首が口に含んだ。
突起した乳首をチューと吸い上げた。
杏花「アァッ!……ダメ……アァん!……吸っちゃダメぇ!」
道流は同時に動きを強めた。
杏花「アァ!……凄くいい!……アァ!」
杏花は激しく身体をくねらせる。絶頂への波が押し寄せていた。
ここで道流が乳首を愛咬した。すると杏花の胸が反り返るほど腰が浮かび上がった。
杏花「ダメェェ!……噛んじゃダメ……アァ!……いいッ!気持ちいいぃ!」
その美貌からは想像もつかないよがり声が放たれた。道流は腰をグッと掴み持ち上げ、ここぞとばかりに角度をつけて強引に肉棒で突き上げた。
パンパンパンパン……パンパンパンパン。乾いた音とともに強烈なピストンが杏花を絶頂へと追いやっていく。
杏花「アンッ!アンッ!アンッ!……道流……君……イク……っ!」
道流「僕もだよ。一緒に……イこうね杏花ちゃん」
道流は打ち付ける速度を早めた。
杏花の喘ぎも、悦びの色へと変わっていく。
そのときだった。
杏花「アアァッ!!」
杏花は頭を反らせ喉を付き出すようにして声を張り上げた。ビクビクと身体を痙攣された。
ハァハァと乱れた呼吸を繰り返す杏花に、道流はつぶやく。
道流「見て杏花ちゃん、今の瞬間をしっかりカメラに撮ってあるからね」
その言葉で思い出したのか、杏花は誠一を見たあとに手で顔を覆った。恥熱が襲って来たのだろうか、あれほど健康的だった小麦色の肌が、紅色に染まっていく。
道流「可愛い。もっともっと見たいよ、杏花ちゃんのそんな姿が」
そう言って、道流は改めてゴムをはめると、杏花の身体を四つん這いにさせた。壮観な眺めだった。正常位のときとはまた違った杏花の身体を知ることが出来る。
真っ直ぐ横に伸びる肩、美しい肩甲骨、その背中はまるで、山の中に流れる一本の清流を感じさせた。
道流はそっと顔を近づけて、その水の流れに舌を這わせた。
道流「美味しいね」
杏花「……ァン……もう、恥ずかしいんだから早く入れてよ」
身体をもぞもぞと揺すった。
道流「本当にシャイなんだね」
道流はもう少しこの可愛い反応を楽しみたかったけれど、襖の奥から覗いているであろう亜樹のことも気になるので、ひとまず次のセックスへと移行した。
二人はその後も様々な体位で、誠一の待つカメラにセックスを残していった。
そしてどれくらいの時間が過ぎたか……。
道流は疲れた身体を引きずるように立ち上がると、襖に近づき開けた。けれど、そこに亜樹はいなかった。
道流「亜樹……?」
道流は静まり返る廊下を見回した。
【33】
波が寄せては返し、月が浮かぶ海へと帰って行く。
そこには誰もいない。周りにも誰もいない。音も聞こえない。波の音しか、聞こえない。
亜樹は一人、戻って来ていた。
砂浜で持ってきた水着に着替えた。誰の目もないし、自分しかいない。裸になったとしても、誰も自分を見ない。
亜樹は足跡を残しながら、海へと入っていった。
まだドキドキしていた。さきほどの光景が鮮明に残っていて、不思議な気分で、それは今まで経験したことのない感覚だった。
亜樹は浅瀬の水面を漂った。ゆらゆらと。でもここに来たのは、やけくそになったわけでも、自暴自棄になったわけでもなくて、なぜかはわからないけれど、ただ嬉しかったから。
だって道流はセックスをする私を見て、いつもこんな感じになっていたのだとわかったから。お腹の底がキュンキュンして、苦しくて、鷲掴みにされているような感覚。
こんな感覚、私は知らないよ。本当に道流はずるいよ。こんな刺激的な感覚をずっと内緒にしていたんだから。でも、聞こうとしなかった私も悪いのかな?
それに杏花にも、ちょっぴり嫉妬しちゃった。私のダーリンとセックスしたんだもん。あんなセックスを見せられちゃったら、興奮するし、嫉妬するよ。
けれど、今までも優衣花や美雪や真琴ちゃんともセックスしていたけれど、それとはちょっと違う感じがした。なんでだろう?たぶん、親友だからかな。もちろん、三人も友達だし、妹みたいな存在ではあるんだけれど、でも……なんか違うんだよね。
そう、でもこの嫉妬こそが、道流が求めている性の本懐で、感覚なんだろうな。亜樹はそう思った。
文字通り身に染みて理解した亜樹は、不思議と嬉しくて、思わず笑みをこぼした。ずっと解けなかったなぞなぞが解けたような、そんな子供心のようなスッキリした気分になっていた。
でも、これだけはちゃんと言っておかないと、
亜樹「杏花……道流に惚れたら、怒っちゃうからね」
夜空に向かって一人呟く亜樹は、したり顔で、とても穏やかな表情だった。
亜樹はゆらゆら浮かびながら、星を探した。幾千もの輝きの中で、とびっきりの輝きを放つ星を。
でも、それはすぐに見つかった。空に真っ直ぐ向けられた視線のちょうど中央に、それはあった。
きっと、あれが道流だ。亜樹は、フフッと笑いながらそう思った。
その周りには、ちょっと劣るけれど、優衣花と美雪と真琴の星も見つけた。よく見るとそのまた隣には、くっつき合う杏花と誠一の星もあった。
亜樹は満足していた。みんなの星がちゃんと近くにあったことに。
でも、肝心な自分の星が見つからなかった。欲張ってしまったからだろうか。道流よりも綺麗な満天の星を、一番輝いている星を、と思っていたのに。
亜樹「……ざ〜んねん」
そう呟きちょっぴりムッとした亜樹は、口を尖らせた。
しばらく漂ったあと、亜樹は底に足をついて立ち上がった。両手で濡れた髪の毛を掻き上げて振り乱し、ふう、と息を大きく吐いた。
視界の端から光がやって来るのが見えた。どうやら車のヘッドライトだ。車は次第に近づいてきて道路脇に止まると、プップーとクラクションが鳴った。
道流かな?亜樹はそう思った。
けれど、降りてきたのは意外にも誠一だった。亜樹は驚いて、
亜樹「あれ、なんで誠一さんが?」
と、腑に落ちない感じで質問すると、
誠一「元はと言えば、僕がきっかけですから」
そう言って、苦笑した。
亜樹はわからなかった。てっきり道流が来て、何も言わずに出て行ったら心配するだろ、と怒られると思っていたから。
誠一「でも、もちろん最初は道流さんが探しに行くって言っていたんです。けれどそれを止めて、僕が半ば強引にやって来たというわけです。……亜樹さんに対して、罪悪感があったものですから」
亜樹「罪悪感?いえ、私は別に……」
亜樹が言葉に詰まると、誠一はすぐに訂正した。
誠一「ああっ、ごめんなさい。罪悪感と言いますか、さっきのことで、もし気分を悪くさせていたり、不快な思いをさせてしまっていたらと考えたら、居ても立ってもいられなくなって、それで気づいたときには道流さんを押しのけて来てしまったというわけなんです」
そう言って、誠一は気まずそうに頭を掻いた。
誠一「ごめんなさい。本当なら、道流さんに迎えに来て欲しかったですよね?」
けれど亜樹は、その言葉に笑ってしまった。
誠一「え、何かおかしかったですか?」
亜樹「いえ……。本当に誠一さんは優しいんですね。でも、それならなんでしっかりと手にカメラを持ってるんですか?もうセックスは終わったんじゃないんですか?」
誠一はそう言われて、あらためて自分がカメラを持っていることに気づいた。しかも、カメラは録画のままだった。
誠一「あっ、ああ!ごめんなさい。そういうつもりじゃないんです。これは無意識で、違うんです」
あたふたと慌てながら、誠一はカメラを切った。
亜樹「ふふ……でも、撮ってもらっても構いませんよ?」
誠一「いいんですか?」
亜樹「誠一さん、私知ってるんです。車内でのことを」
誠一は戸惑いながら同時に、え?と返す。
亜樹「初日の夜、酔った私を介抱してくれましたよね?随分とえっちな感じでしたけど」
すると誠一は、いやいやいや、と身振り手振りで弁明しようとした。
亜樹「ふふ、落ち着いてください。私は怒ってませんから。むしろ、杏花みたいな美人がいるのに、こんな私を意識してくれたことが嬉しかったです」
そんな……。と返答に困る誠一を励ますように、
亜樹「きっと、道流が嫉妬してくれるから」
え?誠一は目を見開く。
亜樹「似てるんですから、道流と誠一さんは」
誠一は少し考えたあと、
誠一「……いいんですか?」
問うと、亜樹は微笑み、
亜樹「誠一さん、私、シャワーを浴びようと思うんです」と言った。
誠一「あ、はい。なら、シャワー室がありますよ」
亜樹「では、行きましょうか」
誠一は何も疑わずに、あとに続いて歩いた。
海の家の横にあるシャワー室に着くと、亜樹は手招きした。
誠一は恐る恐るカメラを構えながら、木造の個室に入った。
亜樹「ドアは開けたままでいいですよ」
誠一「え?あ、はい」
亜樹は電気を点けると、頭上に設置してあるシャワーを出した。そして躊躇することなく、水着を脱いでいった。
誠一「亜樹ちゃん……」
亜樹は振り返り、その綺麗な裸体を見せてくれた。
明かりに浮かび上がるその身体は幻想的で、見る者を惑わせる。綺麗な形をした、杏花ほどではないけれど、とっても大きくて柔らかそうな乳房に、大き過ぎず、小さ過ぎず、絶妙な乳輪と乳首は、ピンク色で上向きにツンと尖っていた。
誠一は生唾を飲んだ。味わってみたい、そう思ったからだ。
それに、引き締まったくびれは両手で掴んでバックから挿入したいと思わせるほど魅力的で、程よく生い茂った陰毛は、顔を突っ込んでしまいたいし、華奢な雰囲気からは想像出来ない脚線美は、淫心を掻き立てるほどの色気を惜しみなく放っていた。
誠一の胸の中では、風船が膨らんでいくように、興奮がいろんな臓器を押し潰していた。
亜樹はカバンからボディソープを取り出して、身体に塗りたくる。わざとらしく脇を見せつけ、両手で胸を揉み上げて、挑発するように股間を弄った。
誠一は夢中でカメラを構えた。ときおり画面をアップにしたりして撮った。
亜樹「誠一さん……いっぱい……見て」
誠一の心臓が、ドクンドクンと高鳴る。
亜樹は背中を向けて、自ら尻肉を揉んだ。指を食い込ませながら割れ目を広げたりして、しかも身体を折り畳むようにして上半身を前に倒した。
誠一は釘付けになっていた。亜樹のおマンコとアナルが、同時に視界に入っていた。
興奮は、すでに山の頂に到達しつつあった。誠一はズボンのファスナーを下ろして、肉棒をさらけ出した。
亜樹は頭に手を乗せて、シャワーの中に入っていった。水滴が亜樹の身体に付いている泡を流れ落としていく。
それは映画のワンシーンさながらだった。
誠一は片手でカメラを、片手で肉棒をしごいた。
すると、亜樹が近寄って来た。
亜樹「誠一さん……私、気持ちよかったんです」
その言葉に、誠一は動きを止める。
亜樹「もっと……触ってほしかったな」
まるであの瞬間に語りかけるように囁いた。誠一の脳裏に車内での光景が蘇る。
誠一「それって……」
亜樹「ねえ誠一さん。私、乳首が性感帯なんです。触ってください」
亜樹は自分で乳首を摘み、人差し指でクリクリと揺らした。口からは甘い音色が漏れている。
誠一は、しごいていた手を伸ばした。指先が、ぷっくりと勃起した乳首に触れる。
誠一「亜樹ちゃんの……」
そう思った瞬間、誠一の中で何かが弾けた。腰を抱き寄せて、乳首に吸い付いた。
亜樹「あンッ……誠一さん……アっ……んんっ!」
チューと吸いながら、舌で乳首をこね回す。
亜樹「アッ……アン……誠一さんの……温かい……感じちゃう」
亜樹は肉棒を掴み前後に動かした。誠一はあまりの気持ちよさに身体中の毛が一斉に逆立つのを感じた。
誠一「亜樹ちゃんの乳首っ……美味しい!」
亜樹「あん……嬉しい……もっと……舐めてください……アッんん!」
両手で揉みながら寄せて、左右の乳首を交互にしゃぶる。
そして、誠一は口を離すと、亜樹と見つめ合った。
亜樹「誠一さん……来て……キス……して」
その仕草と魅力は、まさに小悪魔的だった。しかし誠一はなんとか理性を働かせる。
ダメだ。僕には杏花がいる。亜樹ちゃんにだって、道流さんがいるんだ。軽はずみなことをしてはいけない。道流さんと杏花は、自分がお願いした合意の上でのセックスだ。でも、これは違う。これは合意でもなんでもない。自分で作り上げてしまったただのまやかし。みんなを裏切ることに繋がる、そんなことは出来ない。
誠一「だ、駄目です。ごめんなさい。これ以上は……道流さんに申し訳が立ちません」
ほんの少し前まで欲情していたはずの誠一が、我に返ったように真顔で言った。
亜樹「本当に……優しいんですね」
それは本音だったけれど、期待していた分の半分は寂しかった。
誠一「ごめんなさい。でも……亜樹ちゃんは魅力的過ぎますよ。もう少しで理性が吹っ飛んでしまいそうだった」
亜樹「ふふっ、初日に吹っ飛んでたじゃないですか」
意地悪く言うと、誠一は勘弁してください、といった表情で消沈した。
【34】
長閑(のどか)な波のさえずりに包まれながら、二人が海の家のデッキで話していると、
「あっ、いた!」
後方から、膜を破るような大きな声が聞こえてきた。亜樹と誠一が、ほぼ同時にそちらに振り向く。道の向こうから二人の影が歩いて来るのが見えたのだが、暗くてぼんやりとしていた。
次第にはっきりとしてくると、道流と杏花だとわかった。
誠一は腕時計を見やった。家を出てからすでに三十分が過ぎていた。心配で家を飛び出して来たというのに、結果的に道流と杏花に心配をかけてしまったかもしれないと思った誠一は、反省した。
杏花「こら誠一、なんで連絡よこさないの!心配したでしょ!」
誠一は、ごめん、と言って謝る。それに続き道流も、
道流「亜樹もだよ。一言だけでもいいから伝えてくれないと、みんな心配しちゃうよ?」と言った。
亜樹「ごめんちゃい」
しかし道流は、その身体に色っぽい余韻が残っているのを見逃さなかった。きっと誠一のことを、わがままボディで誘惑したのだろう。
そんな光景を頭の中で広げてしまったら、また熱い興奮が蘇って来た。ここでもう一人の道流が、猛然と姿を現した。
道流「杏花ちゃん、ちょっとこっちに来て」
目尻を下げた道流は、まるで悪代官のような顔をしていた。杏花は知らず知らずその言葉通りに、まんまと道流に近づいてしまう。
床に腰を下ろしてデッキの端から足をぶらんと投げ出した道流は、杏花の腕を取って強引に自分の膝の上に乗せたあと、白いシャツの中にスルスルと手を入れた。
杏花「え、ちょっ道流君!?」
驚いている杏花をよそに胸を揉む。さらに道流は、挑発的な眼差しを亜樹に向けた。しかしそんな挑発に発情してしまったのは、誠一の方だった。
誠一は隣に座る亜樹に意味深な視線を向ける。すると亜樹は応えるように頷き、道流に対する返答だとでも言わんばかりに、誠一の膝の上に乗り、手を胸に導いた。
誠一は息を荒くして、亜樹の乳房を包み込むように優しく揉んだ。
杏花「この、誠一!何やって……」
と、言ったところで、道流が不意に耳を舐めた。
杏花「ひゃん……」
声にならない声が口から漏れる。
道流はそんな反応を楽しむように、今度はホットパンツの脇から指を入れて、パンティ越しに秘部を刺激する。
それを横目に、誠一もさきほどはなんとか保っていた理性を開き直るように投げ捨てて、今度こそはと亜樹を振り向かせ口にキスをした。
一人状況が理解出来ない杏花は、
杏花「道流君……ぃやん……ダメ……誰かに見られちゃう」
道流「構わないよ。だってこんな美人なら、誰だって見たいと思うんだから」
まるで聞き耳を持たなかった。
道流はさらに指を奥へと進ませる。ようやく冷めたはずの火照りが一気に戻ってくる。
亜樹は、誠一の舌使いに感じていた。道流とはまた違う温かさが、舌に乗った唾液と一緒に伝わってくる。
そんな唾液を、亜樹はしっかりと味わい飲み込んだ。そして、その温かさは下半身へと流れていき、秘部から溢れた。
亜樹「誠一さん……下も……触って」
儚い声で囁かれ、誠一は我を失う。
すぐに胸を揉んでいた腕をシャツから出して、スカートをめくり上げる。それからパンティの両脇から指を同時に入れ込み秘部をまさぐった。
亜樹「あん……そこ……気持ちいいです……あっん……いい」
すでに洪水並に愛液を溢れさせていた亜樹は、指の動きに一喜一憂した。
感じている亜樹を一瞥したあと、道流も杏花とキスを交わした。誠一と亜樹に劣らないほど、濃厚なキスだった。
四人は次第に、お互いの関係など見境なく、さらにお互いを求めて深い情事を繰り返すようになった。
……それから少しして、海の家から離れた場所を缶ビール片手に歩く二人の男がいた。
ジョーと和夫だった。二人は今夜もターゲットとなりそうな女性を探していたが、前日同様に空振りに終わっていた。
二人は失敗した腹いせにビールを飲みながら、火照った身体を夜風に晒していたところだった。
しかしそんな二人の前に、海の家で人目も気にせず戯れに興じる男女が四人現れた。随分と軽はずみな奴らだ。二人は下卑た笑みを浮かべた。
車で来ているのにも関わらず勢いで酒を煽ってしまった都合上薫がいる廃校にはどう戻るべきか、なんてことも考えなければいかず途方に暮れるところだったが、それならもういっそのことあそこにいる四人を巻き込んで、乱交映像でも撮ってやろうと思い立った。
ジョーと和夫は、見合って笑って頷き、海の家に近付いて行った。
【35】
月の光がスポットライトのように、四人を照らす。生温かい風が潮を混じらせ、欲情している身体に心地よく染み入ってくる。
道流達四人は、カメラを構えたジョーと和夫に気付いていなかった。堂々と歩いてくる生殖器の気配は、光の影と化していた。
ジョー「ヒュー、盛ってんねえ」
口笛を吹きながら言った。その音に気づいたときにはすでに、カメラに亜樹と杏花の憐れもない姿が収められていた。
ジョー「お?なんだ、昨日の兄ちゃん達じゃねえか」
道流と誠一、杏花ははっとした。
和夫「あとの二人は一緒じゃないんですか?」
優衣花と美雪のことだろう。今夜二人は、島の港にある飲み屋へと出かけている。
道流と亜樹を気遣ってのことだった。
それを察したのか、和夫は残念そうに首を振った。よほど美雪が名残惜しかったのだろう。
ジョー「ま、いいけどな。今夜はこの二人と遊べれば」
そう言って、ジョーは杏花の腕を取って無理やり抱き寄せた。道流は止めなかった。するりと抜ける道流の手に、杏花は意図を感じ取った。
あー、そっか。道流君も期待しているんだ。誠一と同じく、見たいんだ。そう感じ取ったのだ。
和夫「なら、僕はこっちの子かな」
続いて、和夫も亜樹を引き寄せる。
ジョーと和夫は誰の言葉も待たずに、すでに彼女らの身体を弄り始めた。誰もそれを止めない。止めようともしなかった。おかしな空間だったけれど、これが求めていたことなのだ。
亜樹と杏花は、身体を触られながら、互いに夫の瞳を見つめていた。
どう?興奮する?心の奥で問いかける。
道流「最高だよ」
思わず口走ってしまった。亜樹が微笑む。
ジョー「そういえば聞いたぜ。あんた達寝取られ癖らしいじゃねえか」
その言葉を聞いた途端、一転して亜樹が疑いの眼差しを道流に向けた。どういう関係?そう言っている。
道流「ごめん亜樹、事情はあとでちゃんと話すから」
すると、
ジョー「お、その子が亜樹ちゃんか。毎日想像してたんだぜ、俺のチンポで狂っちまう姿を」
ジョーの目がいやらしくなる。しかし、
和夫「残念。僕が先だよ」
和夫が水を差した。
ちぇ、とジョーが舌打ちをしたあと、杏花のシャツの中に手を入れて胸を揉んだ。
誠一は横に置いておいたカメラを向ける。
画面には、大柄の男に弄られている妻の姿が生々しく映っている。これが、見たかった。誠一は密かに、何年も心の奥で燻っていた願望が叶ったことを痛感した。
これが、そうなんだ。この苦しみ、痛み、鷲掴みにされるような感覚。あのときと一緒だ。
誠一「杏花、愛してるよ」
いったい、いつ以来だろう、真っ直ぐに伝えられたのは。
杏花は、呆れたように微笑んだ。本音を言うなら、もっとムードを大事にして欲しかったけれど。
そしてジョーは、杏花を振り向かせて腰に腕を回しながらキスをした。杏花は拒まない。それはまるで、恋人のような濃厚なキスだった。
隣にいる亜樹と和夫も、同様に抱き合っている。
道流はすでにズボンから肉棒を取り出し、オナニーをしていた。
和夫はカメラを片手にキスをしながら、空いた方の手で尻を揉んでいた。スカートの中で、たまに見え隠れする指が亜樹の尻肉に食い込んでいる。
和夫が、亜樹の衣服を脱がし始めた。亜樹も従順に身を委ねている。
ここでするのか?道流の胸の中で、驚きと期待が交錯した。
間髪入れずにブラも外してしまい、亜樹はパンティ一枚だけの姿になってしまった。
しかしそのとき、
ジョー「和夫さん、ここじゃないっすよ。本番は」
その一言に、和夫はそうだったね、いけないいけない、と言って亜樹の身体を離した。
ジョー「でも、これはこれで面白いかもな」
そう言って杏花も亜樹同様に、パンティ一枚だけの姿にされた。
ジョー「なあ、あんた達に頼みがあんだ」
道流と誠一を見やる。
ジョー「実はよ、俺たち酒飲んでて運転できねえんだ。だからよ、昨日の廃校まで運転してくれよ」
何を言い出すのかと思って緊張したが、道流と誠一はそれぐらいならと承諾した。
もうここまで来てやめるなんてできるわけがない。この先には道流と誠一が望む、妻達の姿がある。それは特別で、至高な姿で、するセックスでは味わえない、見るセックスならではの快感。
ジョーと和夫は、パンティ一枚だけの妻達を連れて歩き出した。ときおり尻を揉み、胸を揉み、抱き寄せてキスをした。
道流と誠一は、あとをついていきながらオナニーした。
【36】
車は二台。誠一の車と、ジョー達が乗って来た車だ。
二台とも同じ車種の黒のワンボックスカーだったので、誠一と杏花、そしてジョーの三人がジョー達の車で、道流達が残りの一台に乗ることになった。
道流が運転席に乗り込むと、助手席に和夫が乗り、なぜかその膝に上に亜樹が乗ることになった。
和夫「どう亜樹ちゃん?もしかしたら、見られちゃうかもね」
と言って笑った。
そう、亜樹はトップレスだ。対向車線から車が来たら、そのヘッドライトに亜樹の上半身が照らし出されるだろう。
屈辱的だったが、それでも想像はより現実的に映し出され、道流はさらに股間を大きくさせてしまった。
道流「でも、シートベルトはしっかりしてくださいよ。それに……」
言いかけたところで、和夫が割り込んだ。
和夫「安心してよ。こんな綺麗な肌に傷なんてつけませんから。ふふふ、うふふ」
壊物を扱うように、和夫は亜樹を背中を指でなぞる。
信用していいのかわからなかった。そもそもこの男達は酔っている。まともな判断ができると思えなかった。道流は不安を感じた。
誠一の車では、杏花とジョーが真ん中の座席ですでに絡み合っていた。
誠一はカメラをダッシュボードに置いたあと、ルームミラーでその様子を見つめた。
ジョー「昨日の女もエロかったけど、お前もなかなかだな。こんな身体してるクセに……ていうかよ、お前慣れてないだろ?へへへ」
杏花「いや……言わないで」
事実、杏花は誠一を含めて二人しか経験がなかった。ジョーのような遊び人には、その恥じらいの仕草ひとつで容易に見抜かれてしまう。
誠一は、そんな二人を見て嫉妬していた。身体だけではなくて、妻の過去さえも知られていくようだったから。
すると、後ろにいた道流の車が、クラクションを一度鳴らした。合図だった。誠一は慌てて車を発進させた。
誠一は運転中も気が気でなかった。言い換えるなら、もうそれは拷問に等しかった。前を見ながら、耳は後ろへと向いている。
杏花は、ジョーの肉棒を咥えていた。
チュプチュプ……プッ……ププ……。肉棒を吸い上げる音だ。
ジョー「そうだ、上手くなって来たじゃねえか」
最初は全く聞こえなかったフェラの音も、ジョーのアドバイスでよりいやらしくなった。
ジョー「そうだ。そしたら、裏筋も舐めるんだ。上目遣いで、挑発するようにな」
腹が立った。そんなこと一度もしてもらったことないのに。ハンドルを握る指に力が入る。
杏花「あん……うっん……はぁん」
可愛らしい声が聞こえてきた。それても、何をやっているのか誠一にはわからなかった。
ジョー「たまんねえ声出すじゃねえか」
車のエンジンと振動がこれほど邪魔だと思ったこともなかった。もうすぐにでも車を止めて、愛する妻の痴態を見ながら肉棒をしごきたかった。
そのうちに、クチュクチュと卑猥な音が耳に流れて来た。
杏花「ア……あん……そんなとこ……んん……だめ……」
クチュクチュ……チュ……チュ……。
妻の女壺を掻き分けているのか?それとも……。誠一は必死に耐えていた。
一方道流の車内では、和夫の執拗で焦ったい責めに、亜樹は悶えていた。
亜樹「も……もう……入れてよ……アン……変になっちゃう」
和夫「ううん。もっともっと敏感な身体にさせてあげる」
助手席で繰り広げられる和夫による妻への愛撫は、数十分続いていた。
和夫の指は乳首を避けるように乳輪をなぞり、秘部を避けるように太ももの付け根をなぞり、そしてクリトリスを曝け出した状態で、その周りを円を描くようになぞっていた。
さらに耳を舐めたり首筋を舐めたり、うなじ、背中に至るまで入念に味わっている。
しかし、決して亜樹を逝かせはしなかった。すでに亜樹の秘部からは、おびただしいほどの雌のエキスが流れ出していて、その身体は渇望している。それでもなお、和夫は焦らせ続けた。
亜樹「もう……お願い……オマンコに……んん……オマンコにちょうだい」
和夫はニヤリと笑うだけで、責め手を変えない。
隣でそんな亜樹の姿を横目に興奮している道流は、肉棒の先端から汁を溢れさせていて、下着はべっとりと濡れている。
誠一同様に、道流も我慢していた。思いも衝動も二人は見事にシンクロしていた。
和夫がねっとりとした息を亜樹の口元にふきかける。亜樹は口を開けて舌を出し重なり合うのを待っているが、和夫はそんな亜樹を卑しめるように、頬を舐めた。
亜樹「違う……お願い……してよ」
消え入りそうな儚い声で、懇願する。
そんな声、出さないでよ。道流も声には出さないが、亜樹の声色のせいでもう限界が近かった。
廃校まではあと数分。
誠一の車内では、杏花とジョーによる交わりは激しくなっていた。
それは今まで、一度も聞いたことのない声だった。杏花は誠一の死角で、ジョーによる腰つきに悲鳴にも似た喘ぎ声を上げていた。
杏花「アアァ!……イイッ!……スゴイィっ!……アアァ!」
ジョー「だろ!お前もすぐに虜になるぜ。オラオラオラ!」
正常位の体勢で、ジョーの肉棒が杏花の膣深くに打ち付けられていた。
パンパンパンパンパンパン……。リズミカルに、でも屈辱的な、それは二人の身体が奏でる音だった。
ジョー「あああ!最っ高な穴だぜ!あんた随分といい女、物にしたじゃねえか」
腰を打ち付けながら挑発するように言った。
見たい……。
ジョー「どうだい?見たいだろ?けどよ、しっかり前は見ててくれよ。事故ったらシャレにならねえからよ。へへへ」
見たい……。
杏花「アン!……アン!……アアっダメ!……アタッテル!……アアア!」
見たい……。
ジョー「ははは!スゲーぜ!あんたの女、すげー顔してんぞ!たまんねえなあ」
杏花「もっと!……もっと!……アァ誠一!キモチイイ!」
見たい!見たい見たい見たい!杏花が犯されてる姿を……早くオナニーしたい……クソ!クソクソクソ!あー杏花、杏花!
誠一は、嫉妬で頭が狂ってしまいそうだった。見たいのに見れない。見れないのに、杏花の声だけが嫉妬させる。
ちくしょう!誠一は胸の中で叫んだ。
杏花「もっとォ!……アァアッ!」
【37】
闇が深まっていた。月の光の届かない森の中を、ヘッドライトの明かりだけが照らし続けていた。
しばらくして、昨晩に訪れた校舎に到着した。
校庭の一角に並んで停車すると、ドアが開き道流と誠一がほとんど同時に降りて来た。二人の表情には、すでに疲労の色が窺える。
続いて亜樹が、和夫にもたれかかるようにパンティだけの姿で降りて来た。誠一は亜樹の姿を見て、更衣室で感じたものとはまた違う色気を感じた。
あの可愛らしい亜樹ちゃんが、あの男に……。そう考えたら、更なる興奮が湧き上がってきた。
そして最後に、ジョーが全裸の杏花をお姫様抱っこのように抱えて出て来た。
杏花ちゃん……。道流は杏花の姿を見て、すでに何度も犯されているであろうことを理解した。
強気で、いつだって男勝りだった杏花ちゃんが、あの男に挿入され、喘ぎ、逝かされた。
想像したら、胸が締め付けられた。息が苦しくなり、呼吸が乱れた。
道流は、一度は落ち着いたはずの股間が、再び大きくなっていることに気づいた。
それぞれが校舎に入っていく。どこに向かっているのかわからないまま、道流と誠一は後ろからついていくが、その間にも、亜樹は和夫とのキスをやめない。ジョーは杏花を抱いたまま乳首を吸っている。ときおり杏花は、アン、と甘い声を出す。
道流「可愛い声だね」
囁くように言った。
それを隣で聞いていた誠一は、ドクンと心臓が高鳴った。
もうわけがわからなくなっていたのだ。妻が、杏花の身体が、たった一日で何人もの男に知られ、そして交わることになった。これから当然、和夫にも犯されることになるだろう。
頭も身体も、そんな状況に理解が追いついていなかった。
それに前を歩く亜樹。誠一は、亜樹の狂う姿も見たいと思っている。
こんなに華奢で、可憐で、そして何より道流の妻であるこんな女性が、いったいどんな声を出して、男のチンポに狂うのか、ワクワクが止まらない。
やがて、二階の教室へとやって来た。
ドアをガラガラと開くと、中には薫が苛立った雰囲気で立っていた。
薫「遅い!」
校舎全体に響き渡るような声だった。
ジョー「まあまあ、こうやって連れて来たんだから勘弁してくださいよ」
そう言って、ジョーはベッドのように並べられた机の上に、杏花を寝かせた。机は撮影用に準備された物なのだろうか、全体的に埃や傷は見当たらない。表面はやけに綺麗に磨かれていて、滑らかな感触が見ただけで伝わって来た。
和夫も、その隣に亜樹を座らせた。
ジョー「薫さん、準備いいっすか?」
薫「ずっと前から出来てるわよ」
どうやらこの教室にもカメラが仕掛けてあるらしい。道流と誠一が室内を見渡していると、ジョーと和夫が服を脱いで裸になった。
すでに二人のイチモツは反り立っていた。その大きさは、ただただ感服するしかなかった。
和夫が持っていたカメラは、薫が代わりに手に取った。それを合図に、ジョーと和夫はコンドームをはめた。
道流と誠一も、もう恥じらいはなかった。ズボンを脱いで下着を下ろすと、いつでもオナニーが出来るように、肉棒を曝け出した。
薫「じゃ、はじめて」
その声に、ジョーと和夫はニヤリと笑う。
早速、和夫は残った一枚の布を亜樹から引き離した。黒々と生い茂った毛が色っぽく、でもすでに湿り気を帯びて現れた
亜樹は、尻から下を投げ出すような格好で机に寝そべっている。和夫は亜樹の足を大きく広げて、オマンコに口をつけた。
焦らされ続け、燻っていた感覚がすぐに甦って来た。
亜樹「アァンっ!」
亜樹は腰を浮かせてよがらせた。和夫は亜樹の両脇をガッチリ掴むと、押さえ付けながら舌を膣内へとさらに進める。
ピチャピチャと、亜樹の恥音が教室の中に広がる。
ジョーもその音に充てられたのか、再び身体に熱を感じてきた。杏花の巨乳を両手で揉みしだき、乳首をしゃぶった。すると、
杏花「ンンっ!」
手で口元を抑えたが、くぐもった声が指の隙間から漏れた。
次に、片方の手を亜樹に伸ばして、左右の手で二人の胸を揉んだ。
ジョー「おいおい、こっちの女の胸も絶品じゃねえか」
そう言って感激したあと、今度は亜樹の乳首を口に含んだ。
亜樹「アンっ!」
ジョーは口内で、乳首を吸いながら舌で転がした。少しして満足すると、今度はまた杏花の乳首をしゃぶった。交互にそれを繰り返した。
次第に和夫も亜樹だけでは飽き足らず、杏花のオマンコに口をつけて、指で愛液を掻き出しながら味わった。
和夫「美味しい。なかなか美味だね」
ジュルジュルと、和夫が吸い立てる。杏花は、ジョーに突かれた余韻が残っているのか、すぐに全身に快感が広がった。
淫らな音が、女壺から愛液とともに溢れる。やがて杏花は和夫の舌使いと、ジョーの指先が奏でる快感に、頭の中が白くボヤけていくのを感じた。
もう堕ちているのね。薫がカメラを向けながら、フフっと笑った。
亜樹「……私にも」
杏花と違いずっと焦らされ続けていた亜樹は、道流の面前だというのに、自ら志願して腰をよじらせた。
ジョーの顔を、潤んだ瞳で見つめる。
ジョー「とんだ痴女だな。てか和夫さん、また焦らせまくって、そのまんまスか」
和夫「だって、可愛いからさ。ついつい遊びたくなっちゃったんだよね」
悪びれる素振りも見せずに、和夫はそう言って、杏花の股の間に身体を移動させた。
ジョー「仕方ねえなあ」
ジョーは、薫を見た。薫は何かを確認したあと、
薫「来るまでのことは?」
ジョー「バッチリっす」
薫「ならいいわよ」
そう言ったあと、ジョーは机をグルっと回り込み、亜樹の足元へとやって来た。
道流はその会話の意味に、なんとなく見当をつけた。確認したのは、時間だろうか。というより、動画としての尺……。
そう考えるなら、来るまでのこと、というのも限定的に絞れる。車内でのことだと。
ジョー「さあ、お待ちかねだぜ。亜樹ちゃん」
亜樹「来て……」
そう言って、亜樹は腕をジョーの首に回した。道流がゴクリと喉を鳴らす。
二人は舌を出して絡め合った。先端をチロチロと動かして、互いの熱を確かめ合っているようだった。
道流の肉棒が一気に大きくなる。薫はその様子を見ていたのか、手招きをした。
近づいたところで、薫はカメラを構えながら道流の肉棒を前後に動かし始めた。猛烈な快感が全身に広がり目眩がした。
道流「あっ……」
声が漏れる。
……和夫はよほど気に入ったのか、相変わらず杏花のオマンコに縋り付いていた。誠一も杏花の愉悦に浸る顔を眺めながら、肉棒をしごいている。
けれど、車内での興奮は少しずつ冷めてきていた。
もっと、もっと激しく犯してほしい。杏花を狂わせてほしい。誠一はそう思ってしまっていた。
とそのとき、薫も同じことを感じていたのか、ジョーと和夫に目配せをした。
やがてジョーと和夫は、亜樹と杏花をうつ伏せにして、机から下半身だけを下ろした。バックの体勢だ。そして、ジョー達は二人の小陰唇を指で広げた。
道流は突然、胸が苦しくなった。
薫は肉棒そっちのけでカメラを近づけて、なんと二人の膣内をライトアップして写した。
薫「あらあら、えっちな姿ね。どう?あなた達」
道流と誠一のことだ。
薫「あなた達の奥さんのオマンコ、奥まで見えてるわよ?それに可愛いお尻の穴も。これをいったい何人の男がオカズにするんでしょうね。あはは」
薫が嘲笑う。そこでさらに、ジョーが親指でめくり上げた。
薫「いやん、クリちゃんまで見ちゃったわ。二人の奥様のクリちゃん、いやらしいわあ」
そんな挑発的な言葉に、道流と誠一はまんまと興奮してしまう。亜樹と杏花の性器が、他の男達に晒される?まさか、と思ったときだった。
薫「当然だけど、モザイクはかけないわよ?」
見透かしたように告げると、道流達の胸が一気に騒ぎ躍った。
そして間髪入れずに、ジョーと和夫がバックから肉棒を挿入した。
「アアアァッ!」
亜樹と杏花の咆哮が、同時に響き渡った。
和夫「あ、この子キツいね。なーんだ、まだ女の子だったんだね」
その台詞に、誠一は腸をえぐられるような痛みを覚えた。バックから突き上げられる二人の顔を、誠一はカメラに写しているが、その表情は恍惚に満ちていて普段の強気な面影はない。そこにいるのは雌として自覚している二人、雄の肉棒を嬉々として受け入れている亜樹と杏花であった。
パンパンパンパン……。盛った男女が奏でる四重奏。亜樹と杏花のおマンコからは、雌の雫が溢れ、雄の肉棒から出る汁が絡まり合い、クチュクチュと淫靡な演奏に変わる。さらに、
亜樹「アァン!……ハァァ……アァ!……アッ!……アッ!……ハアァン!」
杏花「アっ!アっ!アっ!……イャァァ!……キモチイイ!」
狂おしいほどの妻達の叫び。この異質な空間で、道流と誠一の妻達は、二人の男根に喘ぐまくる。
和夫「いいねえその声!僕もノッて来たよ」
ジョー「今夜はとことん可愛がってやるからな」
そう言ってジョーは亜樹の尻を叩く。パン!
亜樹「アンッ!……もっと……」
ジョー「ハハハ。望み通りにしてやるよ」
パン!
亜樹「アンッ!」
パン!
亜樹「アンッ!」
ジョー「かぁぁ!たまんねえ声だぜ!」
和夫「フフフ。乱暴だなぁ」
腰を前後に打ち付けながら、和夫が呆れたように笑う。けれど穏やかな口調とは裏腹に、杏花を貫くスピードは徐々に凶暴さを増していた。
杏花「凄いぃ!……奥まで届いてる!……アァン!」
和夫「そうでしょう。僕のおチンチンは特別だから、君のような女の子には少しキツいかもね」
杏花「アッ!……アッ!……アッ!……アッ!」
和夫が腰を振る度に、杏花の乳房は大きく弾み、顔は歪み、喘ぎ声は生温く甘美に彩られた。
パンパンパンパン!……。
かつてないほど淫乱に、巨根に堕ちていく杏花の姿に、誠一はオナニーが止まらなかった。
杏花は膣内を肉棒で強烈に貫かれ、あまりの気持ち良さに背中が丸まったり反ったりを繰り返している。
ここでジョーと和夫は、薫と目を合わせた。
そして笑みを見せると、同時に亜樹と杏花の両手首を掴み、まるで手綱を操るように後ろに引っ張った。二人は身体が反り返るような体勢になり、よりいっそう卑猥な光景になった。
亜樹と杏花は快感に喘ぎ、身体を同時に紅色に染めた。
「アアァ!……アァ!……アァ!……アァ!」
二人は悲鳴にも似た声を振り絞りながら繰り返す。
ジョーと和夫がピッチを上げた。
乳房がリズミカルにグルングルンと跳ね回る。尻肉が荒波のように揺れ動く。
亜樹「イヤァ!……アァァ!……アッ!……アッ!……道流!……気持ちいいよぅ!」
杏花「アン!……誠一!……ワタシも!……アァァ!……ダメェ!……イッちゃう!」
喚き散らすように歓喜の喘ぎを吐き出す。
道流と誠一、ジョーと和夫は、二人の女体を必死に捉えながら一心不乱に絶頂へと向かった。
ジョー「アァ……スゲー!持ってかれちまいそうだ!ッくぅ……オラ!出すぞ!」
パンパンパン!
和夫「こんなおマンコ初めてだよ!感動だぁ!」
パンパンパン!
道流「亜樹!……亜樹!……亜樹!」
パンパンパンパン!
誠一「杏花!……凄いよ!……エッチだよ!……たまんないよぉ!」
パンパンパンパン!
亜樹「アァッ……道流!……ダメェ!……もう……イク!……逝っちゃうよぉ!」
杏花「誠一!……やめて!……見ないでェ!……アアアァ!」
その瞬間、教室内に張り詰めていた空気が、フッと消えた。
六人が全員同時に、ブルブルと身体を震わせて腰を折った。何重にも連なる息遣いだけが聞こえる。
そして間もなく、
和夫「うん、これはなかなかどうして……どんどん行っちゃうよ」
あれだけのセックスをしたというのに、すでに和夫は亜樹の身体を後ろから抱きしめている。臨戦態勢となった。
ジョー「和夫さんのチンポ、マジでいかついッスよ」
さすがのジョーも、マジかよ、という感じで和夫を見て、呼吸を荒くしている。しかし、あとに続けと杏花の身体を反転させた。
和夫「んんん〜……美味しい」
和夫は亜樹に唇を重ねて、舌を押し進めていた。亜樹も腕を回し、そして足を腰に巻き付けた。
和夫の背中が汗で光っている。カメラが横から覗き込む。二人の舌が、まるで蔓草のように絡み合っていた。
それからまもなくして、今度はジョーと和夫が机の上で寝そべり、その上で亜樹と杏花がまたがった。騎乗位の体勢だ。
女体を受け入れるジョーと和夫は頭の後ろで腕を組み、早くしろよとほくそ笑んでいる。亜樹と杏花はそんな侮蔑な態度を受けても意に返さず、再び法悦に浸るために肉棒を自分達の穴に導いた。
ゆっくり、スローな動きで二人は肉棒を深く沈めていく。
ぬちゃ……ぬちゃ……。身体が上下するごとに、蜜と蜜が混ざり合う音が聞こえる。
いやらしい……イヤらし過ぎるよ。道流と誠一は顔も合わさずに共感していた。
ジョーと和夫は二人の腰を掴み、無理やり上下させて少しずつピッチを上げさせていく。先端が子宮を刺激しているのだろうか、さきほどは打って変わり亜樹と杏花は苦痛にもがいている。
亜樹「ウッ……ハッァ……ウゥ……」
杏花「アッん……アッ……クッ……アァ……」
次は前後に揺さぶる。
亜樹「アァ!……そこ……アン!……イャン……気持ちいい!」
杏花「ウゥ!……ハァ…………アァ!……ダメェ!」
四つの大きな果実がゆさゆさと揺れる。そしてさらに、股の上で円を描くように、ジョーと和夫は女体を弄ぶ。
亜樹「イャ……凄いっ……中で……道流……掻き回されてるよ」
杏花「誠一……ごめんなさい……私……感じてる……凄く気持ちいいの!」
このたった数十分の間に、いったい何度射精したことか。でも、そんなこと遠い過去のように、もうなかったことのように、再び道流と誠一の肉棒は膨張していた。
心臓は破裂寸前。経験したことのない鼓動が、全身に熱を通わせる。興奮は呼吸を苦しくさせ、腹の奥をグッと鷲掴みにする。
苦しくて痛い。でも、たまらない快感。
道流は中腰になって、四人の結合部を覗き見る。
誠一は、正面から亜樹と杏花の全身をカメラに収めている。
薫「いいわあ、この感じ。久しぶりに満足のいく画が撮れてるわ」
感心したように、薫もカメラを向ける。
ジョー「薫さん、自分もですよ。このスケベマンコ、やめらんねっす」
そう言って、下から腰を突き上げる。杏花はとてつもない電撃が脳天に突き抜けるのを感じた。
杏花「アアアアァァ!」
それを見て和夫も感化されたのか、怒涛の勢いで肉棒を連続して亜樹に叩き込む。
和夫「僕のおチンポがお気に入りみたいですね。凄いですよ、締め付けが」
亜樹「好きっ!……気持ち良すぎて……あなたのおチンチン好きなの!……アァッ!」
再加速する肉のぶつかり合いに、また雰囲気が熱く卑猥に染まっていく。
和夫「ここが好きなんでしょ。亜樹ちゃん!」
亜樹「アン!……好きッ……好きィ!」
ジョー「マシでたまんねえ身体だな!生意気過ぎんだよ!」
ブルンブルン揺れている杏花の乳首を、ジョーは思い切り掴んだ。
杏花「アアァ!……ダメェ!……そこ気持ちいいのぉ!」
そしてそのすぐあと、四人は絶頂を迎えた。
しかし、終わらない。
亜樹と杏花は、その後も壁に押し付けられながら貫かれた。抱え上げられながら貫かれた。床に寝かされ貫かれた。
変わる変わる。交互に貫かれた。
最後は、献身的にフェラをした。幾度となく快感を味合わせてくれた、男達の勇ましいほどの肉棒を、まるで仔猫のような舌遣いで綺麗にした。
薫達が出て行ったあと、教室にはコンドームが散らばっていた。そのなんともいえない淫猥な匂いが、窓から入り込む風に乗って鼻に入って来る。
男と女の匂い。雄と雌の残り香。横たわる妻達。立ち尽くす夫である二人。
けれど、二人の肉棒はゆっくりと大きくなってきた。ようやくか、とでもいわんばかりだった。
道流は持って来たショルダーバッグから、ドリンクを二本取り出した。それは真琴から貰った精力増強剤だった。
一本を誠一に渡す。
それを虚ろな瞳で見ていた亜樹は、
亜樹「……来て」
今にも壊れそうな可憐な声で誘った。そして杏花も、自分から股を開いた。
道流と誠一は顔を見合わせて頷く。
次の瞬間、道流は杏花に、誠一は亜樹に抱き着いた。
誠一「亜樹ちゃん!亜樹ちゃん!ずっとこうしたかったんだ!」
亜樹「誠一さん!私も!」
二人はすぐに結合した。そして激しくキスをして、乳首を掴み合い、肉棒を締め付けた。
亜樹「アン!……アン!……アン!……誠一さんのおチンチン……熱い……スキィ!」
誠一「亜樹ちゃんの膣内、凄いグチョグチョだよ!僕のチンポにまとわりついてくる!こんなに凄い気持ちいいんだね!」
一気に沸騰した誠一と亜樹の身体は、待ちに待ったといわんばかりに、互いにとって待望の交わりだったようだ。
道流と杏花はそんな二人を見て苦笑いをする。そしてその場を離れた。
別の教室へとやって来た二人は、手を背中に回して抱き合いキスをする。
道流「杏花ちゃんがこんなにエッチだったなんて、僕知らなかったよ」
道流は、愛情に満ちた腕で杏花の身体を包み込んだ。杏花は頬を赤くする。
杏花「イヤ……もう言わないで……恥ずかしいんだから」
そう言って、顔を背けた。
道流はそんな杏花の頭に手を添えて、引き寄せる。
道流「今夜だけは、君と繋がっていたい。いっぱい、杏花ちゃんとセックスしたい」
杏花「……うん、私も」
杏花が頷くと、ありがとう、と道流は言った。しかしすぐに、
道流「でも、あとでちゃんと謝らなきゃね」
そう言うと、杏花はフフッと声を漏らして、
杏花「うん、お互いにね」
二人は笑い合った。
……その頃、校舎を出た薫達は、車の影で一服していた。
薫「いいわあこの子達。凄くいい。これなら再生数も稼げるわ」
薫は満足げに、撮った映像を確認していた。
薫「ただ一つ残念なのは、やっぱり素人感がなかったところね。こんなに弾けちゃうと、危うさが薄れちゃうのよねぇ」
ジョー「まあでも、久しぶりに四人揃って上玉でしたね。身体も、マンコの締りも申し分なし」
そう言って、フゥー、と煙を吐いた。
和夫「僕も久しぶりに満足だったよ。今もまだ高揚感が残ってるくらいで。今回の撮影は、凄くよかった。でも、先生は残念だったね。せっかくあの亜樹って子がいたのに」
薫「ま、仕方ないわ。今夜にかぎって飲みに行っちゃったんだから」
と言って、薫はスマホを取り出して電話をかけた。
コール音が三度鳴り、四度目でかかった。
薫「もしもし先生?どう、そっちは?いいお店見つかった?」
二階堂「はい、とっても。そちらは?お目当ての映像は撮れましたか?」
薫「はい、そりゃもう撮れ高バッチリですよ。早く編集してアップしないとって感じ。でもね先生、気の毒なお知らせ。先生のお気に入りの女の子、ジョーと和夫さんが先に食べちゃった」
そう言うと、ため息が受話器に当たった。
二階堂「ハァ……そうですか、それはとても残念です。……まあでも、こちらもなかなかに愉しんでいるんですよ?」
開き直るように言うと、受話器の向こうから喘ぎ声が聞こえてきた。
薫「あらあら、先生ったら本当に隅に置いとけないわね。相手は美人さん?」
二階堂「ええ、昨晩の美人なお二人ですよ。偶然にもお店で会いましてね」
薫「なら、今は三人でってことですか?」
二階堂「ええ、楽しんでいますよ。ですから、茶髪の子は映像で我慢して、今夜はこのお二人で発散するとしましょう」
薫「ふふっ、先生ったら怖い怖い。あ、でも……」
二階堂「はい、ちゃんとカメラに残していますから心配ありません」
すると薫は、さすが、と言って電話を切った。
ジョー「聞こえてましたよ。相変わらず血の気が……いや、雄の気が強いっすね」
和夫「ね、あの年齢で僕達よりも盛んだもんね」
薫「昔からそうよ。ただ……あの人は影が深いっていうか、悪い意味で壊れてるから、注意が必要」
唐突に、薫は真剣な表情で言った。
ジョーと和夫は、やれやれ、といった様子で、
和夫「以前にもあったからね。今頃、優衣花ちゃんと美雪ちゃんはいっぱい中出しされてるかもね」に続けて、
ジョー「羨ましいくらいに絶倫ですもんね」と言った。
薫「まあいいわ。とりあえずホテルに戻りましょうか。さっさと編集して、登録者増やすわよ!」
薫は気合を入るように腕を高く上げた。そして車に機材を積み込むと、自身も乗り込んだ。
薫「よし!さっ、早く出して頂戴!」
しかし、なぜかジョーと和夫は頑なに動かない。
薫「ん?なにしてんの?ほらっ!早く!」
突っ立ったままで、それでも動かない。
薫が疑問に思っていると、ようやく二人は申し訳なさそうに口を開いた。
和夫「凄くね……申し訳ないとは思ってるんだ」
薫「え?」
ジョー「薫さん……怒らないで聞いてほしいんスけど」
薫「は?」
二人は口を揃えて、
「酒……呑んじゃった」
そう言って、テヘッ、と舌を出した。
ジョー「いやーついつい。ね、和夫さん。ハハハ!」
和夫「うん。たまにはこんな日もあるよね。フフフ」
……翌朝、目を覚ましたジョーと和夫の記憶は、そのセリフを最後に途絶えていた。
【38】
その日の港には活気があった。太陽の光が燦々と降りしきる中、船を待つ観光客で溢れていて、あちらこちらから明るい声が上がっていた。
光はそんな人々を優しく照らしている。まるで島を去ることを知っているのか、祝福しているようだった。
しばらくすると、楽しげな雰囲気に誘われて白い海鳥達も集まって来た。大きな羽を広げて縦横無尽に人々の空を飛び回っているその光景は、とても優雅で勇ましく見応えがあった。観光客はそんな海鳥に向かって、カメラやスマホを一斉に構え出した。
時刻は朝の七時前。島に大型客船が着岸した。
船からタラップが渡ると、別れを惜しみながらも人々が続々と乗船していく。しかし、その中に道流達の姿はなかった。
……道流達は、寝坊していた。
直後、一台の軽トラックが港に颯爽とやって来た。
誠一「ああ!ほらっ、もう船来てるじゃないか!」
誠一が荷台に乗る杏花に向かって声を張り上げる。
杏花「ちょっと!なんであたしのこと見んのよ!」
誠一「だって杏花じゃないか、寝坊したの!」
杏花「はあ!?あんたが起こさなかったのが悪いのよ!このマスかき野郎!」
誠一「なに言ってるんだよ、自分だってさんざん喜んでたじゃないか!」
罵声が飛び交う間で、早朝から元気だなぁ、と道流は呆れながらに思った。
道流「まあまあまあ。とりあえず誠一さん、危ないから前を見ましょう」と言ってなだめる。
矛先を挫かれたように口を尖らせる誠一は、少し納得がいかない面持ちで顔を戻した。
次に杏花の方へ視線を向けてみる。けれど杏花は、なぜか誇らしげに胸を張っていた。
いやいや、あなたの勝ちとかじゃないから、あなたにも原因があるから、と道流は心の奥でツッコミを入れた。
優衣花「仕方ないですよね。昨晩はみんなお疲れでしたから」
美雪「ずいぶんと遅いお帰りでしたもんね」
道流がため息を吐いていると、優衣花と美雪が揃って苦笑いをした。
結局、道流達が旅館に戻ったのは日付を跨いだ深夜のことだった。部屋に入ると、余韻に浸る間もなく身体を寄せ合い布団に倒れ込んだ。それは誠一と杏花も同様であった。
一方の優衣花と美雪は一足先に旅館へと戻っていたが、道流達とは違い、二人の表情には疲れなど微塵もない。
円満具足の二人からは、そのセックスがどれほど気持ちよかったのかということと、相手の男性が巧妙で達者な技術を持ち合わせていたのだろうことを知ることができた。
道流は思った。きっと昨晩は、素敵な男性との出会いがあったのだろうと。
優衣花と美雪が骨抜きにされてしまうセックスか……。道流はその光景を想像しながら、ムフっと笑みを零してしまった。
亜樹「……変態」
それを横目に見ていた亜樹が、すかさず軽蔑した。
道流「いやいや違うよ!」
慌てて否定するも、内心では亜樹の的を得た洞察力に感服していた。
杏花「フフッ。これじゃあ隠し事は出来ないね」
まるで他人事のように言う杏花に、道流は余計なお世話だよ、とばかりに、
道流「ほっとけ」と言い放った。
直後、トラックが停止した。誠一が急かせるように言う。
誠一「急いでください。これに乗り遅れたら、次は夜ですよ」
それは大変とばかりに道流達はトラックからドタバタと降りる。
そして時を移さず、各々が別れの言葉を伝え合った。最後は、亜樹と杏花が抱き合い別れを惜しんだ。
道流「この姿も見納めかな」
誠一「本当に仲がいいですね。……道流さん」
はい、と道流が返事をすると、
誠一「ありがとうございました。道流さんや亜樹さんのおかげで、大事なことに気づくことが出来ました」
と言って頭を下げた。
道流「いえ、そんなこと。……でも誠一さん、気づくだけではダメですよ?しっかりと、これからを大切にしないと」
誠一「はい、わかっています。次に会うときまでには、テーブルいっぱいに料理を揃えられるようにしておきますよ」
頭を上げると、そこには自信に満ちた誠一の顔があった。もうはじめて会ったときのような面影はない。迷いはないようだ。
道流はそんな誠一を見て、ほっと胸を撫で下ろしていた。自分が伝えたことが、本当に二人を繋ぎ止めるための糸になれたのか不安だったからだ。
でも、誠一の表情が物語っているように、それは杞憂だったらしい。二人のこれからの未来は色鮮やかに広がっていると予感させてくれた。
亜樹「きっと、大丈夫だよ」
そこへ、目の赤くした亜樹がやって来て、一言添えてくれた。その予感は、確信へと変わった。糸は強く太く、しっかりと繋がっていると。
道流「そうだね」
道流は頷いた。
道流「亜樹は、もういいの?」
麦わら帽子のつばが、空に向く。可愛らしい瞳が見えた。
亜樹「うん、帰りたくなくなるから、もう大丈夫!」
強がっちゃって。道流はニヤつきながらそんな亜樹の頬を指で突っついた。
そろそろ、と誠一が言うと、それぞれ自分の荷物を持って、タラップを上がって行った。道流は最後に忘れ物などはないか確認したあと、よし、と誠一と杏花の方に振り向く。
道流「この度は、招待していただき本当にありがとうございました。とっても楽しい休日になりました」
今度は道流が、深く腰を折る。
誠一「久しぶりに賑やかな時間を過ごせましたから、こちらこそありがとうございました」
それに合わせて、誠一も今一度頭を下げた。
二人の堅苦しい挨拶に、隣に立っている杏花が焦ったそうに言った。
杏花「いや、こんな時までサラリーマンやらないでもらえる。せっかくの休日なんだから」
道流「あはは、たしかにそうだね。誠一さん、次は僕たちが招待しますので、二人で遊びに来てください」
誠一は頷いた。
道流「杏花ちゃん、あんまり怒っちゃダメだよ。家庭でも、職場でもね」
悪戯っぽく言うと、杏花はムッとして、
杏花「うっさいわね。早く行きなさい」
ふん、と鼻を鳴らした。
それを見届けたあと、道流はニコッと笑って踵を返した。と次の瞬間、道流君、という声が聞こえた。
ん?と道流が疑問に思って振り返ると、なんと杏花が抱き付き、キスをしてきた。
突然のことに、道流は頭の中が真っ白になった。
道流「え……ちょ、ちょっと杏花ちゃん!」
ハッとして身体を離すと、杏花は悪戯な笑みで、
杏花「またしようね」
小悪魔のようにささやいた。
【39】
軽トラックの車内には、秋の風が迷い込んでいた。風は、二人の間に漂う喪失感を優しく撫でてくれる。
家に着くまで、二人に会話はなかった。お互いに言わなければならないこと、聞かなければならないことがあったはずなのに、どうはじめればいいのかわからいというのが本音だった。
でも、別に気まずい雰囲気では決してなかった。マイナスな意味合いはまったくなくて、ただただ白く、喪失感でぽっかり空いた穴の向こう側が塗り潰してあるような、そんな感じだった。
トラックを家の敷地内に止めると、誠一はエンジンを切った。
窓から波の音と、賑やかな声が聞こえてくる。
杏花は助手席から顔を出して、後方に広がる海を眺めた。そして窓の縁に腕を組んで頬を乗せた。
こんな朝早くから、すでに砂浜には観光客の姿がちらほらあって、杏花は初日の亜樹達との思い出をまるでアルバムをめくるかのように、早くもその光景に照らし合わせていた。
誠一は、赤みがかった長い髪を風に靡かせる杏花の背中を見ながら、大きく息を吐いた。
随分と長くかかった気がした。ここまで来る間に、置いて来てしまった想い。少しでも男らしいところを見せたいと身体を震わせた勇気。愛する人を守っていこうと誓った決意。出会った頃は、多くの感情があった。それは誠一らしくないことの数々であったが。
でもいつの間にか、その多くを置いて来てしまった。それからは、自分勝手に劣等感を感じて、嫉妬と欲望に支配されていた。あまつさえ、妻を襲わせようなどと。あらためて考えてみても、とてもじゃないが正気の沙汰ではなかったと思える。
ただそれが本心であったことは否定しない。だって、それが誠一らしさだったから。間違っていたわけではなくて、少し不器用過ぎて、どう伝えていいのかわからなくて迷っていただけなのだ。
でも、もう大丈夫。光は見えている。ただちょっとエッチな色が混ざってはいるけれど。
杏花……今までごめんね。誠一は心の奥で、そっと杏花の背中に届けた。
誠一「杏花」
杏花「ん?」
杏花が不思議そうに振り返る。
誠一「愛してるよ」
誠一は少しトーンを変えて、カッコよく言った。しかし杏花は、
杏花「気色わるっ!」
と、即答した。
誠一「えぇ!?それはないよー」
あまりのショックに、誠一はハンドルに突っ伏した。プーとクラクションが鳴った。
杏花「ははは!ごめんごめん、わかってるよ。こちらこそ、よろしくお願いします。旦那さん」
白い歯を見せて、杏花は悪戯っぽくクシャりと笑った。
車内の雰囲気が柔らかくなった気がした。喉から出てくる言葉が軽い。そろそろ切り出してもいいかな、と誠一が思ったとき、それより早く杏花が言った。
杏花「ねえ、去年のことだけどさ」
その言葉の一端に、誠一はあらためて背筋を正した。自分の都合で、自分の性癖に付き合ってもらったのだ。なら筋を通すということは、しっかりとことの発端を説明して誠意を表すこと。杏花は昔から、筋という言葉を好んでよく使う。だからこそ、すぐに理解してもらうのは難しいかもしれないけれど、筋を通すということは杏花に認めてもらう第一歩になると誠一にはわかっていた。
誠一「うん。この性癖のきっかけだよね」
杏花「……ごめんね。私のせいでもあるよね」
誠一「え?違うよ!そんなことないよ!僕が止めなかったのが悪いんだ。だから、全部僕のせいなんだよ」
杏花「誠一……」
杏花は、誠一の言葉が胸に深く心地良く沈んでいくのを感じた。出会ったときのようなあの日の優しさに、また触れられたような気がした。
杏花は微笑みながら、身体を誠一の方へと向けた。
誠一「あの男……」
杏花「うん、わかってる」
しかし次の瞬間、二人の言葉が同時に重なった。
誠一「二階堂がーーー」
杏花「隣の男がーーー」
……ん?二人の頭の中に、聞き覚えのない名前とクエスチョンマークが並ぶ。それからしばらくの沈黙のあと、
誠一「隣の男?」
杏花「二階堂?」
……え?すると、二人は同時に言った。
「誰?」
二人の間に、なんともいえない微妙な空気が流れた。
【40】
目の前には、穏やかな青い海が地平線の彼方へと続いていて、空からは先ほどよりも、強い日差しが降り注いでいた。
道流は額に汗を滲ませながら、船のデッキで機嫌を損ねている亜樹の熱を必死になだめていた。
道流「ごめんなさい。もう許してよ」
発端はもちろん、別れ際のキスのことだ。
亜樹「イヤ」
亜樹は手すりに寄りかかりながらずっと顔を合わせてくれないので、道流はそんな身体を後ろから抱きしめる。けれど、
亜樹「残念でした。そんなことで私の機嫌は直りませ〜ん」
突き放されてしまった。
道流「どうしたら許してくれるの?」
それでもめげず、道流は耳元で優しく腫れ物に触るように囁いた。
亜樹「しらな〜い」
素っ気なく、亜樹はプイっと遠くに顔を向けてしまう。
道流は頭は掻いた。いくら不可抗力だとしても、突然目の前で親友と夫がキスをしたのだから、怒るのも無理はないかもしれない。しかも道流の性癖ならなおさら、亜樹が認める一線を超えてはいけなくて、常に神経を注がなくてはならないのも事実。
自分から感謝云々を語っていたというのに、目の前での浮気は以ての外だ。道流は反省していた。
そして悩んだあげく、これしかないというものを言ってみた。
道流「帰ったら、美味しいご飯テーブルいっぱいに作るよ」
亜樹はなにも言わない。
道流「じゃあ、美味しい日本酒買ってあげる」
まだそっぽを向いている。
道流「それなら……たくさんセックスしよ!」
それでも、亜樹は無言だった。
道流は諦めない。さらに強く、亜樹をギュッと抱きしめて、
道流「じゃあ……全部!美味しいご飯も、お酒も、気持ちいいセックスも、全部しよ!全部やろ!」
力強く言った。すると、亜樹が振り返り、
亜樹「ほんと?ちなみに、どんなセックスなの?」
瞳を大きく輝かせた。
道流「優しくて包み込んであげられるようなセックスだよ。僕らしくない、本心のセックスさ」
亜樹「ふふっ。なら、一週間くらい続けてくださいな」
道流「うん、これから一週間。愛を込めて、亜樹を全力で喜ばせたいと思います!」
亜樹「よし、それなら許してあげよう。これで一件落着!」
さきほどまでの態度はなんだったのか、というほど亜樹は清々しい笑顔を見せてくれた。道流は亜樹の頬に、そっとキスをした。
そのあとはしばらくの時間、二人は海を眺めていた。
時たま、風がワンピースの裾をひらひらとなびかせた。道流はハッとした。もう少しでパンティが見えてしまいそうだったのだ。
道流は広がる裾を抑えてあげた。
道流「亜樹、気をつけないと見えちゃうよ」
亜樹「えっ!?」
道流の言葉に、亜樹はおったまげたような表情を見せた。
亜樹「え……あの道流が……私のスカートの心配をしてくれるの?どうしたの!?熱でもあるの!?」
慌てて道流の額に手を当てるが、それを避けるように顔を離す。
道流「なんでよ」
亜樹「だって、普段の道流なら心配なんてしないじゃん。むしろ、見てもらいたいとか言ってさ」
道流「いやいや、それは失礼だよ。僕だって、ちゃんと節度は持ち合わせています」
よく言うよ、と亜樹は内心笑った。
亜樹「へえ、じゃあ今日のパンティの色は気にならないの?」
道流は少し悩んだあと、
道流「なる!」
ハッキリと答えた。
亜樹「ほらやっぱりね。いつもの変態だ」
道流「ハハッ。変態っていう言葉は、僕にとっての褒め言葉さ」
そう言って、道流はドヤ顔をした。それから腕時計をちらりと見て、
道流「さて、一旦部屋に戻ろうか。少し落ち着いたら眠くなって来ちゃったよ。昨日はあんまり寝てなかったからね」
そう言ったあと、道流は眠たそうにあくびをして、瞼を擦った。
亜樹「うん、そうだね。じゃあさっそく、道流の愛を感じようかな。添い寝で」
道流「ハハハ。うん、任せて」
亜樹「あっ、でももうちょっとここにいていい?もう当分は見納めだからね」
と言って、亜樹は遠くの彼方に視線を向ける。
道流「たしかにね。じゃあ、僕は先に戻ってるから」
亜樹「うん、ありがとう道流。……あ、でも眠かったら無理しなくていいからね。先に寝てて」
道流「うん、ちゃんと僕の隣は空けておくから。ただ、早くしないと後輩二人と寝ちゃうからね」
悪戯っぽくそう言うと、
亜樹「べーだ!」
亜樹は舌を出した。
そして、二人は笑い合った。
客室に戻って来た道流は、スマホが振動したことに気づいてポケットから取り出した。
メッセージを受信していた。送り主は優衣花だった。
「私と美雪ちゃんはカフェに行きますので、二人の時間を楽しんでください」
と、書かれていた。
楽しんでくださいと言われても、二人で添い寝するだけだからなあ、と道流はこそばゆくなり頭を掻いた。
部屋に入ると、ベッドに枕を二つ用意して横になった。亜樹が戻って来たらすぐ隣で眠れるようにと、スペースもしっかり空けてある。
次第に瞼が重く、徐々に身体が軽くなってきた。きっとこの、波の音のせいだろう。船体が海をかき分ける音がリズムよく聞こえてくるから、それがメトロノームのような役割になって眠気を誘ってくるのかもしれない。
やがて頭の中の空白に、なぜか亜樹との記憶が流れては消えて、流れては消えていった。
一年目、二年目、三年目……。幸せな記憶、辛い記憶。笑った記憶、怒った記憶。嬉しかった記憶、涙を流した記憶。そして、エッチな記憶。
ずいぶんと苦労をかけてしまった気がする。好きでもない、むしろ嫌いな男だっていたはず。いや、ほとんどが見知らぬ男か嫌いな男だった。そんな男達と、自分のわがままでセックスさせてしまっていることに、道流は記憶を辿りながら、深い悲しみに揺さぶられた。
もう、いいんじゃないか?これ以上愛する妻の身体を傷つけるのか?
いつの間にか、道流はもう一人の自分、欲望を纏った自分に語りかけていた。
今までに亜樹は、何度もしたくないと言った。それでも執拗にお願いしたのは、紛れもない自分。
亜樹はたくさんのことを僕にくれた。でも反対に、僕はいったい何を亜樹にあげられたのか。亜樹が願う物をあげることは出来たのだろうか。
色んな思いが、頭の中をぐるぐると回っていた。
道流はやがて、疲れてきてしまった。身体の力が抜けて、スーッと意識がなくなった。
……ふと気が付き、亜樹の匂いを感じた気がした。
隣で、亜樹が眠っている気がした。
でも、なぜか瞼が腫れている気がした。
(亜樹……。どうしたの?)
問いかけたつもりだったけれど、声は出ていなかった気がした。
道流は亜樹の髪を撫でて、鼻を近づけた気がした。
亜樹の匂いだった気がした。
夢じゃない、大好きな大好きな亜樹の匂いだった気がした。
(亜樹……。どうしたの?)
道流は、もう一度問いかけた気がした。
でも、やっぱり声が出ていなかった気がした。
視界がぼんやりと、また重く暗くなってきた気がした。
(亜樹……。どうしたの?)
道流は、もう一度問いかけたような気がした。
【41】
夢のような島での日々から、現実である都会に戻ってきて二日が経った。道流は早速ビデオカメラを持って、正午から真琴宅を訪れていた。
真琴はカメラを手に取ると、すぐに大広間に向かった。そして用意していた機材を使い大型のモニターにカメラの映像を流そうとするが、なかなか上手くいかず悪戦苦闘していた。
道流「手伝おうか?」
真琴の背中に助け舟を出すけれど、
真琴「ありがとうございます。でも大丈夫です。実は、モニターもカメラも最近買ったばかりで、まだ使い慣れてないんですよ。なので、もう少々お待ちを」
そう言って、あらためてコードを繋ぎ始めるのだが、道流はふとサイトのことを思い出したので、
道流「あ、そうだ。真琴、出鼻を挫くみたいで悪いんだけど、このサイト知ってる?」
と言って、真琴に名刺を見せてみた。
不思議そうに手に取る真琴は、すぐに驚きの声を出した。
真琴「ん?……みき……薫!?」
道流「知ってるの?」
訝しげに聞くと、
真琴「そりゃもう。薫ちゃんとは高校が一緒で、下着の趣味からスリーサイズ、性癖まで知ってる仲ですよ」
真琴は自慢げに語った。
道流はそれを聞いて、なぜあのとき薫の雰囲気が真琴と重なったのかを理解した。
類は友を呼ぶ。まさに、島での出会いも性癖が手繰り寄せてしまった運命だったのだ。
道流は確信にも似た予感を持ちながら、
道流「もしかして、その子も真琴と同じ?」
恐る恐る聞くと、
真琴「んー、少し違いますね」
あ、違うんだ。道流はなぜか安堵した。
しかし束の間、
真琴「私は自分が見たいがために好きな女性をセックスさせますが、薫ちゃんは好きな女性や気に入った女性を晒すことを快感としているんです」と加えた。
道流「……つまり?」
真琴「要は、私は私だけのおかずにするんですが、薫ちゃんはみんなのおかずになるように分けるんですよ」
そういうことね。だからか、と道流は納得した。
サイトに映像をアップすれば、不特定多数の人間がそれを視聴する。
真琴「なかなかに彼女も変態ですよ。学生の頃、薫ちゃんは友達をおじさんに貸し出して、その映像を撮って男子に見せておかずにさせたんですから。男子はみんな歓喜してましたね。薫ちゃんは、そんな男子達を見てオナニーしたそうです」
うわぁ……。道流はドン引きした。
なら今回の亜樹達の映像は、まさに視聴者のおかずになっているわけだから、薫は今頃、連日絶頂を迎えているかもしれないということだ。
真琴は、名刺に記載されているアドレスをスマホに打ち込んでいった。
真琴「実は私、以前スマホのデータを消失させてるんで、ずっと連絡が取れなくて困ってたんですよ。でもまさか、こんなところで繋がるなんて、本当に世界は狭いですねぇ」
嬉しそうに言った。
それが終わると、今度は閃いたとばかりに、真琴はノートパソコンを持って来た。
真琴「そのサイトって、薫ちゃんのですよね?なら先にアップされてる動画から観ましょうか」
しばらくして、真琴が今度はノートパソコンをモニターに繋ぎ準備を始めた。
エアコンの音、空気清浄機の音、アロマディフューザーの音。いろんな音が、沈黙を嫌うように部屋を満たしていた。
道流「そういえば、そっちはどうだったの?初日は災難だったみたいだけど、楽しかった?」
会話がないのもなんだか落ち着かないので、道流はたまらずライブのことを聞いてみた。
真琴「ほっ……んとに楽しかったんですよぉ!初日は散々でしたのでどうなることかと思ったんですけどね。でも行ってよかったなって、心の底から思いますね」
そう言って、真琴は振り向き満面の笑みを見せてくれた。
道流「そっか、ならよかった」
真琴「亜樹さん達はどうですか?帰って来てからすぐに土日ですから、私はまだ顔を見てないんですよ」
道流達が帰って来たのは金曜日の夕方だった。本当は、旅行の余韻が冷めないうちに真琴も呼んで、いつものお店で一杯ひっかけようかと思っていたのだけれど、思いの外身体が疲れていたので、その日は名残惜しい気持ちになりながら現地解散となった。
翌日はタイミングよく土曜日で、仕事は休みだった。そして今日は日曜日なので、真琴はまだ帰って来てからみんなとは会っていなかった。
早る気持ちがあるのだろうか……。それとも、これから観る映像のために、より身近にリアリティーを感じたかったのかもしれない。
道流「今朝電話したとき、たしか優衣花は人と会うって言ってたな。美雪はお兄さん……春雪さんが家に来てるから、二人で美味しいものを食べに行くんだってさ」
真琴「亜樹さんは?」
そこで道流は、一度言葉を詰まらせた。真琴が首を傾げると、
道流「最近さ……帰って来てから、亜樹の元気がないんだよね。どうしたんだろうってずっと心配してるんだけど」
と言った道流の表情に、翳りが出来た。
その時ふと、道流の頭の中にぼんやりとした記憶が浮かんですぐに消えた。その記憶は朧げで一瞬であった。思い出そうとするが、うまくいかない。
あれ、なんだったんだろう?記憶の中身が旅館でのことなのか船でのことなのかまるで定かではないけれど、とにかく何か、とても大事なことを忘れている気がした。
道流が考え込んでいると、
真琴「無理をさせてしまったんじゃないですか?きっと亜樹さんの身体にはかなりの負担がかかっていたはずです」
と言って、さらに続ける。
真琴「あと、これを軽視している男性は多いんですが、避妊薬は飲めばいいという物ではありません。副作用が出る場合があるんですよ。まあそれは当然だと思うかもしれませんが、その考えが間違いなんです。決して他人事ではありません。辛い思いをするのはあなたの大事な人!なんですから。ねっ、道流さん」
道流はその言葉に、後悔の念を感じた。わかってはいるんだ。でも、ふとして瞬間に置いてきてしまう。いつもいつも、亜樹には無理をさせてしまっているという自覚はあるんだ。これからは、といつもいつも気持ちをあらためて心に誓う。でもそれがいつの間にか、己の欲求に染められてしまう。
結局のところ、誠一に説教できるほど自分だって男ではなかったんだと痛感する。
いつになったら言葉だけではなく、行動で示せるようになるんだ?道流は、自分の胸に問いかける。
真琴「道流さん、私が言うのもなんですが、そろそろ身を固めるべきかもしれませんよ?以前、子供が欲しいって言ってましたよね?」
そう、亜樹は女の子が欲しいんだ。一緒に買い物行ったりしたいって言ってた。
真琴「そろそろ、ちゃんと未来の道筋を示すべきです。亜樹さんを愛しているなら」
その言葉に、ふう、と道流は大きく息を吐いた。
道流の表情は、晴れやかだった。
道流「そうだね……うん、そうだ。僕は亜樹のことを世界で一番愛してる。亜樹のことを誰よりも理解してる。そんな僕がこんなんじゃダメだよね」
真琴「はい!」
力強い純粋な肯定だった。道流は真琴に、思い切り背中を押された気がした。
道流「ありがとう真琴。ただ、変態の化身の真琴に励まされるなんて、なんか釈然としないんだよなあ」
すると、真琴は頬を膨らませて言った。
真琴「失礼なっ!私だって、人の心は持ってますよ!」
まったく、という感じで、真琴はまた作業に戻った。
道流「はは、ごめんごめん」
でもこれから、そんな亜樹や杏花、優衣花や美雪の鑑賞会をするというんだから、本当に情けない気持ちになる。
道流は、今日で最後にしようと思った。
これからは「二人」だけじゃない。未来のために「三人」の幸せを守って行こうと心に誓ったのだった。
真琴「さて、ではさっそく観てみましょうか」
そう言って、真琴はエアコンを切って下着姿になった。
【最終話】
サイトを調べていると、すぐに亜樹と杏花、優衣花と美雪、四人の動画を見つけることが出来た。
真琴「どれがおすすめなんでしょうね」
真琴はわくわくしているのだろう、動画のサムネイルとあらすじを見ながら身体を震わせていた。
そのとき、あれ?知らない動画がある?と僕は気づいた。
アップされている動画は、全部で六本あったのだ。
僕は確かめるように、島での記憶を辿った。
たしか島で撮った映像は、全部で四つのはずだ。二日目の肝試しで訪れた廃校での、優衣花とジョーのセックス。美雪と和夫のセックス。二階堂と杏花の絡みの三つ。
再生時間と見覚えのあるサムネイルなので間違いない。
そして旅行最終日に、亜樹と杏花、ジョーと和夫の四人でのセックス。この動画に関しては再生時間が他と比べてかなり長かった。おそらく車内での戯れから、廃校でセックスを終えるまでの一連の流れを一本にしたのだろう。
これも、記憶とサムネイルとあらすじを照らし合わせて間違いなかった。
とすると、なぜ五本目と六本目がある?しかもサムネイルとあらすじがなかった。
僕は妙な胸騒ぎがした。
真琴「道流さん」
急に呼ばれて、僕はハッとする。
道流「あ、ごめん。真琴、これから観ていいかな?」
それは五本目の動画だった。
もしかしたら、別の女性の動画かもしれない。
しかし、その杞憂は間違いだった。
動画は、見覚えのある家から始まった。
僕はすぐに杏花ちゃんの家だとわかった。
そして画面には家の、縦長の窓が付いた外壁に押し付けられている女性と、初老の男を映し出した。二人の顔には薄くモザイクがかかっている。
男「旨い!旨い!さすが〘ピー〙ちゃんの身体だ」
ピーの部分にはモザイクがかかっているので、薫の言う通り、名前はちゃんと隠されていた。
でも僕には、女性が杏花ちゃんであることがすぐにわかった。あの髪、身体、スタイル、むしろ見間違うことの方が難しかった。
真琴が確信を持った目で、僕を見上げた。杏花さんですか?その目は、そう言っている。
僕は答えを出すように、頷いた。
男は、杏花ちゃんの服を乱暴に脱がせると、体中を舐め回した。杏花ちゃんの口から、甘い吐息が漏れる。
男「ようやく、お前さんのここを味わうことが出来るんだな」
男はそう言って、杏花ちゃんのおマンコに口を押し付けた。おそらく舌が膣内に入ったのだろう。杏花ちゃんの表情が、モザイク越しでもわかるくらい歪んでいた。
杏花「あっ……アン……そこ……イイ……」
甘い声が脳髄に響いてくる。僕はすぐにズボンを脱ぎ捨てて、下着を下ろした。
たまらない。たまらないよ。鼓動が早くなり、肉棒はすでにギンギンだった。
隣に立つ真琴も、いつの間にか裸になって、自分の胸と秘部に指を当てていた。
杏花ちゃんのおマンコから、ジュルジュルと音が聞こえ始めた。
男は指で、入口を広げる。さらに流れてくる蜜を、一滴残さず吸い上げる。
杏花「アンっ!……イイッ!……アァっ!」
上半身を仰け反らせ、雌の音色を空高く放つ。
そして男は口を離すと、杏花を壁に押し付けて尻を叩いた。
パン!という音が静かな家々の光景に響き渡った。
杏花「んっ……もう……入れて……我慢出来ないの……」
なんて挑発的な声なんだと、僕は歓喜に震えた。
あんなに強気で、普段からカッコイイ姿を見せている杏花ちゃんが、こんなにも飢えた声を発するなんて。
男「へへへ。なら、生でいいのかい?」
杏花「中には……出さないで、お願い。口に……ならいいから」
すると男は、仕方ねえな、と言わんばかりに、もう一度尻を叩いた。
そしてバックの体勢から、肉棒を杏花ちゃんの体内に突っ込んだ。
杏花「アアァ!」
悦びの咆哮が響き渡った。
男は、一心不乱に腰を連打する。
パンパンパンパン!
杏花ちゃんはそのたびに男を、『男達』を興奮させる声を出した。
杏花「アン!アン!アン!アン!」
狂おしいほどの喘ぎが、連続して声になる。
男「杏花!これからもずっと、犯してやるからな!わかったな!」
杏花「アンッ!アンッ!アンッ!……はいッ……」
男「よしっ、いい子だ。そろそろ出すぞ、いいな」
杏花「アンッ!……出して!……たくさん飲むから……いっぱい出してぇ!」
男「ウッ…!」
男は、杏花ちゃんの口内に射精した。
杏花ちゃんが精子を飲み切る前に、男は次を促す。
強引に、開いている窓から風呂場に入って、今度は正常位で犯した。
そこで再生時間は半分だった。僕は真琴に言って、動画を停止させた。
もうそのときには、僕の手が精子でべっとりだった。
たったこれだけなのに、いったい何度射精したのか僕にはわからなかった。
そしてそれは真琴も同様らしく、立っていたはずなのに、今は床に座り込んでしまっている。
道流「真琴、次の動画をお願い」
身体が求めていたので、急がせた。次の動画こそ、さきほど感じた胸騒ぎの元凶であると感じていたのだ。
真琴が動画を再生した。
始まりは、船のデッキにいる白いワンピースを着た女性の後ろ姿だった。僕はすぐに、
道流「亜樹!?」
思わず大きな声を出してしまった。
僕と真琴が顔を見合わせると、二人の間に一気に緊張感と興奮が高まった。
潮風に、スカートがヒラヒラとなびく。そのうちに裾がふわりと広がり、純白のレースのパンティが見え隠れした。
この場面が、色んな男達に……。亜樹のパンティが、男達の目に触れる……。
ドクンと、心臓が高鳴った。
そして今度は、腰の上辺りまで裾が捲れ上がった。少し食い込んだパンティと、はみ出た尻肉が丸見えになったのだ。
亜樹……亜樹……。僕は、必死に肉棒をしごいた。
亜樹は気づいていないのか、それから何度もスカートが舞い上がり、パンティと尻が見えたけれど、裾を抑えようとはしなかった。
なぜ?そのとき、道流は気づいた。亜樹の後ろ姿にある特別な雰囲気に。
それは亜樹の、真剣に思いを馳せているときに現れる、道流だけが知っている特別な空気感だった。
そのときの亜樹は周りが見えなくなってしまうから、何度か道流が、危ないよ、と注意したことがあった。
やがて、撮影者であろう男の荒々しい息遣いが聞こえてきた。ハァ……ハァ……ハァ……。
同じだ。僕と同じで、興奮しているのだ。
そこでようやく、亜樹が振り返りその場から歩き出した。撮影者の方に近寄って来て、隣を通り過ぎて行く。
でもなぜか、その亜樹の姿がとても可愛いと思った。いつも見ているはずの妻の姿なのに、なぜかそのときだけは遠い存在のように感じたのだ。
男はすぐさま亜樹のあとに続いた。ときおりカメラをスカートの中に差し入れ、パンティを盗撮している。
亜樹は気付かない。
そして、予感していた瞬間は突如訪れた。
ある通路を曲がったとき、男は背後から亜樹を襲った。手で口を抑えて声を出せなくして、客室へと連れ込んだのだ。
そこはおそらく、男の部屋なのだろう。そして、待ってましたとばかりに、カメラの映像が切り替わる。
これは、前もって計画されていたことだったのだ。亜樹は獲物であり、欲望の皮を被った男達の生贄であったのだ。
僕は男の姿を見て唖然とした。まさか、二階堂?モザイクがかかっているので確信は出来なかったけれど、その佇まいには覚えがあった。卑劣で下卑た、真っ黒い埃の集合体のような男。紳士の面影はまるでなかった。
動画が進む。
男「やっと……やっとですよ。この瞬間をどれほど待ち侘びたことか」
亜樹「だ、誰……?」
亜樹の声は震えていた。
男「あなたにずっと、羨望の眼差しを向けていた者ですよ」
亜樹が理解出来ず、え?という声を出した瞬間、男は亜樹のワンピースを肩から脱がせ、そしてすかさず、両手首を持っていた結束バンドで締め上げた。
男「美しい。とても美しい」
独り言のように、男はぶつぶつと唱えている。
亜樹がなんとか逃げ出そうともがくが、男が身体に跨った。上から抑えつけられてしまった。
男「さあ、はじめましょう。私が、幸福を感じる時間です」
すると、男が亜樹の肩に噛み付いた。
亜樹「イャァ!痛いっ!やめてぇ!道流ー!」
突然の仕打ちに、悲痛な叫びを上げた。でも、船の客室は気密性が高く外には聞こえない。
けれど、その声を聞いて恍惚な表情を見せたのは男だった。
男「綺麗な悲鳴ですね。私な、あなたのその声を聞きたいのですよ」
男はさらに強く、顎に力を入れた。
亜樹の悲鳴が、ますます哀しみに彩られる。
男「あぁ〜!いい!いいですよぉ!その声、その声!」
今度は、もう片方の肩に噛み付く。
亜樹「イヤ!!やめてよ!イヤッ!」
すでに、亜樹の頬には涙が伝っていた。
男「違いますよ。そんな声じゃなくて、もっと泣いて叫んでください」
慈悲のない男は、亜樹の頬を二回叩いた。声を出していたはずの亜樹は、恐怖に慄いた。
男「ほら、叫びなさい」
もう一度……亜樹は打たれた。
亜樹の頬が、赤く染まる。
僕は立ち尽くしながら拳を握りしめていた。猛然たる怒りが全身に広がっていた。男を今すぐにでも殴ってやりたいという衝動に駆られ、自分を見失いそうになった。
息が苦しい。亜樹が泣いている。胸が苦しい。僕の妻が、泣いている。
男は亜樹のブラとパンティを無理やり引きちぎり、裸にさせた。そして事前に持っていたカメラで、その裸体を映した。
痛々しい跡が、くっきりと肩に残っている。
男「これは、まだ始まりなんですよ。あなたと私の、特別な時間の始まり。でも残念なのは、あなたが人妻だということ。あまり長くしてしまうと、旦那様が心配してしまいます。とても遺憾ですが、早めに進めましょうか」
そして男は、肉棒を取り出した。それは腹が立つほど、凄まじく逞しいイチモツだった。
男は躊躇することなく、亜樹の股の深くに肉棒をあてがった。
亜樹「お願いだから……やめてください……」
大粒の涙が零れていた。僕は、目をそらしたくなった。
男が……笑った。
男「もっと……聞かせてください」
濡れていない秘部。その痛みに亜樹の表情が歪んだ。それは強引にねじ込まれた肉棒によって、ヒダが望まぬ開口を強いられた瞬間だった。
亜樹「イヤァァ!!」
さきほどよりも大きな悲鳴だった。でも、男は意に返さない。むしろどんどん、歪んだ悦楽の表情に変わっていく。
男「素晴らしい!これがあなたのおマンコなんですね。気持ちいい!」
正常位の体勢で、男は腰を振る。
パンパンパン!止まらない。
亜樹「イャ……やめ……うッ……道流……」
亜樹は必死に訴える。けれど、声にならない声は口から零れるだけだった。
男はさらに、快感を得ながら肉棒を押し進める。
男「アァ!クソ、気持ち良すぎる!まったくなんてザマだ!もう逝きそうになってしまっているなんて!」
不甲斐ない自分に言っているのだろうか、狂ったように声を張り上げる。
男「まあいいでしょう!では、まず一発目です」
亜樹「イヤッ!やめて……やめてぇ!出さないで、お願いだから!助けて道流!」
その願いは、儚も聞き入れられなかった。
男「やめませーん!」
おちょくったような声で言う。すると身体をブルブルと震わせて天井を仰いだ。
亜樹の悔しがる表情が、映像に流れた。
男「快感ですねぇ。まるで空を飛んでいるかのような気持ちよさだ」
亜樹「もう……満足したでしょ……すっきりしたでしょ!」
涙声のまま、亜樹は怒りをぶつけた。
男「まだまだ。もっとあなたを味わいたいんです」
亜樹「ふざけないで!いったい何が目的なのよ!お願いだからやめてよ!」
男「目的?そんなの決まっているじゃないですか。あなたの身体ですよ。私はね、あなたのような可憐な女性をレイプすることにこの上ない快感を得るんですよ。ほほほ」
亜樹の表情が強ばる。
そのときの男の表情を僕が窺い知ることは出来なかったが、きっと男は、人間ではない悪魔のような顔をしていたに違いなかった。動画に映る亜樹の表情が、その恐怖を写し返していたから。
男は、フゥー、と息を吐いた。
男「次ですね」
亜樹は抵抗する間もなく、四つん這いの姿勢にされてしまった。もうその頃には、声すらなくなっていた。
助けを呼ぶことは出来ないのだと、観念しているようだった。
僕はそんな亜樹を見ながら、時が経った今更になって後悔していた。なんであのときついていてあげなかった!なんで一人にしてしまったんだ!自分自身を強く戒める。
でもいくら言葉を並べても、映像の中の妻は傷つけられていく。
そして悲しいことに、亜樹の心と身体が離れてしまうのは、時間の問題だった。
もう意志とは関係なく、蜜はとめどなく流れ続けていたのだ。そしてその蜜は、喉を通って男の幸福の源として吸収されていく。
男は亜樹と同じく四つん這いになり、その蜜を絞り出すかのように亜樹を責め続けた。もう欲しくて欲しくてたまらないからだ。
その蜜は至高の味。自ら犯したいと願った獲物だけが持っている絶品の蜜であった。
男「もっと……もっと出してください」
ジュル……ジュルジュル……ビチャ……ヌチャ……。
亜樹は、身体と心が完全に分離していた。今までなんとか抵抗していたが、ふとした瞬間に途切れた糸は、もう元には戻らない。
感じる身体と拒む心が一つの体内でぶつかり合っていたのに、一度目の絶頂を迎えた男の舌技と指技が、亜樹をさらなる快楽へと強引に連れ去って行く。
男「あ〜、凄いじゃないですか。こんなに求めてしまって」
男がおもむろに亜樹の口元で指を揺らめかせると、うっとりとした表情で亜樹はその指をしゃぶり、さらに舐め回した。
亜樹が、自ら求めた瞬間だった。
男は両手で亜樹の乳首を弄ぶ。乱暴に引っ張り、摘み、転がす。歪に変形する乳首が、生々しい。
満足すると、次は尻の割れ目を広げてその溝に沿って舌を這わせる。亜樹の身体はビクンビクンと反応した。
間もなくして亜樹の体内に、男の肉棒が二度目の快感を求めて入って行った。
バックから突かれると、亜樹の白い肌が波打った。乳房が大きく揺れて、尻肉は弾む。
髪の毛を振り乱して、亜樹は歓喜の声を漏らした。
亜樹「あん……あん……あん……」
男はまるで、蹂躙したような気分を味わっているのだろう。何度もカメラに向かって笑ったのだ。
この女は私のだ。この女は、私が犯しているのだ、と。
亜樹「あん……んっ……んっ……んんん!……ああん!」
男が亜樹の髪を乱暴に掴み、後ろに引いた。亜樹がくるしそうな声を出すと、男はその口元と首を舐め回した。
唾液が窓から射し込む光に照らされ、醜く輝く。
亜樹……。僕は、おかしくなりそうだった。
亜樹「アァ……あん……あん……ハァん」
亜樹……。ダメだよ。そんな声を、出しちゃいけないよ。
パンパンパン。
亜樹「あん……気持ち……いい……もっと……もっと……強く突いて」
亜樹……。もう、やめてくれよ。
パンパンパン!
亜樹「ハァン……出して……私の中に……いっぱい出してぇ」
亜樹……。
パンパンパン!
次の瞬間、
亜樹「アアァ!!」
亜樹の咆哮と共に、身体が痙攣した。男の身体が震えた。
男「フゥー、これで二発目。まだまだ時間はありますから。いっぱい注いであげますよ」
男と亜樹は、濃厚なキスを交わした。
それから、騎乗位で三発目。対面座位で四発目。立ちバックで五発目。
そしてまた、正常位……。
いったい、映像の中ではどれくらいの時間が経ったのだろう。
亜樹は襲われているのに、レイプされているのに、身体中が男を求めてしまっているようだった。乳房は張り乳首も勃起して、肌は赤みを帯びて、男に噛まれた跡、叩かれた跡が無数にあって、足は大きく開き腰は浮き上がって、声は僕が聞いたことのない音色に変わっていて……。
亜樹の裸身が艷やかな輝きを放ち、見る者を狂わせた。
喜悦の叫びが、幾度となく画面から聞こえてくる。
亜樹「アァン!……アァン!……アァン!……イクゥ!」
また総身を痙攣させた。これで亜樹は、四度目の絶頂を迎えた。
男「五発目」
男は手で絞り出すように精子を出した。さらに指で膣の奥深くに押し込んだ。
亜樹のおマンコからは、入り切らない精子がとめどなく零れていた。
それでも亜樹は、とろけた表情のまま、
亜樹「もっと……もっと気持ちよくさせてください」悲願した。
男はそれに応えるように、亜樹を抱いた。
僕はそこで、動画を止めるように真琴に言った。
真琴が怪訝な面持ちで振り返る。
道流「真琴……やっぱり僕には無理だよ」
僕は嗚咽を混じらせながら言った。
真琴「え?」
道流「出来ないんだ……こんな亜樹の姿を魅せられたら……興奮しないわけがない。……我慢なんて出来っこない……最後になんて……出来るわけないよ」
心中の思い、悔しいほどに沸き立つ思いを、僕は切実に吐露する。
すると真琴、そんな僕に笑いかける。
真琴「フフ、やっぱり道流さんはそうでなくちゃいけません!」
目を輝かせた。
真琴「うん、そうです。私にもわかりますから。好きな人、大切な人、愛する人が他人によって犯される姿は、私達にとって至高の興奮なんです。そしてそれが、本来の私達の糧になるんです。だから最後なんて言わずに、これからもたくさん楽しんでください、その不器用な愛情表現を。私はこっそり、お二人のことを覗かせていただきますから」
僕は何も言わずに、その場を離れた。
家のドアを開けて外に出たとき、真琴が、『また一緒に、オナニーしましょうね』と言った。
そのときの表情は、今まで見てきた中で一番真琴らしかった。
帰って来ると、僕はすぐに亜樹の近くに駆け寄り膝をついた。
亜樹は体調が悪かったのでベッドで横になっていたけれど、僕を見た瞬間に身体を起こした。
はじめは驚いていた亜樹だけれど、子供のように泣きじゃくる僕を見て察したようだった。
亜樹は僕の頭の上に、手を乗せてくれた。
亜樹「おうおう、どうしたどうした。なにがあった?」
知らないフリをする亜樹。変わらないいつもの優しさをくれる亜樹。それは僕の胸を締め付けた。
でも、逆なんだよ。本当は僕が示さなければいけなかった優しさだったんだ。
亜樹、ごめんね。ようやく追いつくことが出来た。
亜樹の身体にそっと手を伸ばして、その体温を感じた。
道流「ごめん……本当にごめんね」
その言葉に、亜樹は微笑む。
亜樹「遅いよ、道流……。二日も遅れてるよ」
亜樹も瞳に涙を浮かべていた。僕には、安心したようにも見えた。
道流「ごめん……本当にごめん」
亜樹「でも……追いついてくれたから許してあげる」
道流「うん……。辛かったよね……痛かったよね……僕を……呼んでくれてたよね」
亜樹「うん」
道流「亜樹……ごめんね守ってあげられなくて」
亜樹「うん」
道流「亜樹……愛してるからね」
亜樹「うん」
道流「ずっとずっと……一緒だよ」
亜樹「うん……ずっと一緒」
涙を流しながら想いを伝える僕は、きっと笑っていたと思う。きっと、らしかったと思う。
なんで……?
犯される君の姿が、とっても眩しかったから……。
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最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました。
いつもならここで後書きなんですが、それはコメント欄に記載させていただきましたので、そちらをご確認ください。