美佳と”契約”をしてから半年近くが過ぎたある日のこと。
同じ市内にある本社にいた6つ下の知子という、美佳と同い年で同期の子が家業を継ぐため急きょ退職することになり、送別会を僕がいる支所で行うと、幹事役の美佳から聞かされた。
知子とは部署の関連も薄く、話などあまりしたことが無かったが、猫のような顔立ちでそこそこ可愛く、明るく元気な子だなとは思っていた。
送別会当日の夜、出張先から帰ってくると、何をしているのかギャーギャー騒がしくて、「鬱陶しいなあ」と思いながら、気付かれないように着替えをして事務所へ入った。
しばらくテレビを見ていると、美佳が事務所へ入ってきた。
「ああっ!岩田さん居たの~?ヒマそうじゃん。送別会入って!」
「オレ関係ないからいいよ」
「そんなことないって。食べ物もあるし、ほらほら」
美佳に腕を掴まれて立ち上がると、美佳に続いて大広間へ入った。
大広間には15人くらいいて、人間が椅子の役もする椅子取りゲームをやっていた。
後輩の一人から
「あ!岩田さんお疲れです。もうちょっと疲れてくださ~い」
と、無理やりゲームに参加させられてしまった。
ゲームの輪に入ってしばらくすると、僕は知子の膝の上に座ることになった。
「お疲れさまで~す」
「重いけどごめんよ」
「大丈夫ですよ~」
なるべく体重がかからないよう膝に近い位置に座り、まわりの様子を伺った。
輪の反対側では何かで揉めているらしく、ゲームは中断状態に。
すると、突然知子が背中に寄りかかってきた。
頭をピッタリくっ付けて、両手が腰に添えられている。
僕は後ろを振り返ろうとしながら知子に話しかけた。
「どうした?」
「エヘヘ、大丈夫です。ちょっと背中貸してくださいね」
よく分からんけどまあいいかと、僕は動かずにいたが、まもなくゲームが再開し、僕は知子の脚から離れることになった。
やがてゲームは終わり、みんな思い思いに話を始めた。
僕は居場所がなくなった気がして、食べ物を少しもらって事務所へ戻り、再びテレビを見ていた。
しばらくすると送別会はお開きとなったようで、事務所の壁の向こうを参加者が帰っていく音がして、やがて知子と美佳が事務所へ入ってきた。
「おつかれ~」
「すいません、お邪魔しちゃって」
「いいのよそんなこと気にしなくて」
「岩田さんてここに住んでるんですよね?」
「そうだよ~」
「居心地はいいんですか?」
「通勤しないからメリハリが無いかな。でも基本夜は人来ないしあんまり気にならんよ。うるさかったら屋上にも逃げられるし」
「屋上上がれるんですか?」
「上がれるよ~、行ってみる?」
「行きたいです~」
日頃めったに開けることのない、少し錆ついたドアを力づくで開けて、僕が先に、知子が続いて上がった。
美佳は会計があるとかでついては来なかった。
僕は階段から最も離れた辺りの手すりに寄りかかった。
「高い所じゃなくても、屋上ってだけでなんか解放される気がして好きなんですよ~」
「ああ、それなんとなく分かる」
と、辺りをうろうろしていた知子が僕の目の前で立ち止まった。
「岩田さん、バンザイしてください!」
「え、なんで?」
「いいからバンザイ!」
おもむろに両手を上げると、間髪入れず知子が胸元に飛び込んできた。
胸に顔を埋め、腕を背中にまわし、力を入れて僕を抱きしめている。
知子の髪はほんのりと柑橘系の香りがした。
胸がみぞおちの辺に当たっている。
大きくはないが、十分な感触。
「おいおいどうしたんだよ」
「さっきの続き~」
「彼氏いるのに何やってんの?」
「もう別れました!」
「ふ~ん」
何と言えばいいのか言葉が見つからず、僕は知子の頭を撫で、背中をさすった。
服ごしにブラジャーを触ってしまい一瞬手を離したが、何の反応も無かったのでそのままさすり続けていると、知子が話し出した。
「私、伊藤さん(元彼)て全然タイプじゃなくて、どっちかというと苦手だったんで、ずっと断ってたんですね。でも美佳とかから色々言われるし、伊藤さん押しが強いけどすごい優しくしてくれるんでなんとなく付き合ってたんです。でも、とても遠距離では続けられないから」
「女は自分を大切にしてくれる人と一緒になるのが幸せっていうけど、好きになれないのはどうしようもないよなぁ」
「私ね、岩田さんのこと、すごく好きだったんですよ、というか、好きなんです」
「ええ?なんでこんな奴?どこがいいの?」
「初めて見たとき、岩田さん誰かに怒ってたんですよ。何かやり方がおかしいとか言って。それがすごい怖かったんですけど、そのすぐあと話しかけてもらって、とてもニコニコしてて、そのギャップにやられたというか」
「騙されちゃったんだ」
「そんなことないです!私、岩田さん情報を集めたくて、美佳や色んな人にそれとなく聞いたりしてたんですけどね、しばらくして同期の綾ちゃんが、『鈴木さんが”岩田には地元に長い付き合いの彼女がいる”って言ってた』って教えてくれて、こりゃ無理かなって思ってた時に伊藤さんが現れたんですね」
「幸太かよ。いい加減なこと言いやがって」
「あの~、その彼女と今も続いてるんですか?」
「幸太はその後を知らないんだよねぇ」
「別れちゃったんですか?」
「確かに長いこと付き合ってたし、当時は『一生この人と一緒にいたい』って思ってたけど、今となってはだな。色々ありすぎたし」
「切ない恋だった?」
「知らず知らずお互いに傷つけ合ってたっていうか。・・・好きだって思いだけでも簡単にはいかないな。縁が無かったんだろうなあ」
「じゃあ、今彼女はいないんですね?」
「まぁね。もう何年になるかなぁ」
「え~、実家帰るのやめようかな。・・・そうはいかないかぁ」
「ところでさ、いいのか?こんなことしてて」
「美佳はたぶん分かってると思う。せっかく岩田さんと二人きりになれたんだし、もう少しお願いします。迷惑ですか?」
「迷惑ではないよ。っつうか、結構トキめいちゃってるかも」
「あの・・・、キスしてください」
「付き合ってもいないのに、いいのか?」
「もう何日かで実家へ帰らなきゃならないし、好きな人との素敵な思い出が欲しいんです」
ゴクリとつばを飲み込む。
知子のあごに手を添え、僕の方を向かせる。
知子は猫のような目でじっと僕を見上げ、そっと目を閉じた。
「か、可愛いじゃないか」
ゆっくりを顔を近づけ、唇を合わせる。
2~3秒して、唇を離す。
すぐに知子は目を開け、「もっと!」再び唇を合わせ、舌を唇の間にねじ込むと、知子は口を開いた。
口を大きくあけ、舌をからませる。
とても柔らかい知子の舌。
「んっ」
時折小さく悶える声が出ている。
何秒過ぎたか、息苦しくなって口を離すと、知子はまた僕の目をじっと見つめ、「好き!」と言って背伸びをし、両腕を僕の首にまわし、自分から僕にキスをしてきた。
僕は動いていないのに、自分から舌をからめてくる。
「ああ、なんか、すごい、愛されてるって感じ」
そう思った途端、みるみるペニスが勃起してきた。
ペニスは知子のへそ辺りに当たっているので、知子もすぐに気付いたようだ。
知子は唇を離すと、濡れた瞳で僕を見つめながら、
「さっきから、お腹に何か当たってますよ」
「知子ちゃんのキスで感じちゃった」
知子は首にまわした腕を下ろし僕から離れると、下の方へ視線を向け、小さな声でため息をつくように呟いた。
「あっ!」
抑えのきかないジャージがテントのように三角錐(すい)を作っている。
「触っちゃう。岩田さんの・・・」
また小さな声でつぶやくと、左腕で僕の腰を抱き寄せ、右の手のひらででテントの頂点を何回か撫で、指先でそっとつかんだ。
「なんか、すごい、固い」
知子はハァハァと肩で息をしながら、僕のペニスの固さを確かめるかのように、何度も亀頭の辺りを指先で揉んでいる。
「ちょい、ヤバいって」
「いやですか?」
「止まらなくなっちゃうよ」
「私は構わないですよ」
知子の背中に回した手を脇から入れて、胸に触れる。
知子は一瞬ビクッとなったが、拒否はされなかったのでそのままモミモミと感触を味わう。
そして、乳首がありそうな辺りを指でこすってみる。
知子は「アッ!」と声を出して、肩をすくめたが、時折身体を震わせながらも愛撫を受け入れていた。
そして、生乳に触ろうと知子の服の裾に手をかけた時だった。
「ギギッ」という音が響いた。
屋上へ上がるドアが開いたらしい。
続いてカンカンと鉄の階段を踏む音。
「美佳だ!」
僕はあわてて手を離し、股間が見えないように階段と逆の方を向いた。
知子も僕から少し離れ、階段の方を向いてフェンスに寄りかかった。
ペニスがあっという間にしぼんでいく。
美佳は階段から顔だけを出した。
「邪魔して悪いけどさ~、いい加減にしろよな~」
「ごめ~ん、すぐ降りる」
美佳は階段を下りていき、ドアが大きな音を立てて閉まった。
知子は僕の正面に立ち、真剣な眼差しで僕を見つめる。
「私、明々後日帰るんです。明日か明後日時間ありませんか?」
「明日は遅くまで仕事があるけど、明後日は振休だよ」
「思い出づくり、したいです」
「オレでいいんだったら」
知子は満面の笑みで
「うれしいです。何時くらいからいいですか?」
「朝からでもいいよ。○○○でも行く?」
「絶叫系苦手だなあ。あ、でもしがみつくから大丈夫。行きます!」
「オレの車、分かる?」
「シルバーのRX-8ですよね。乗ってみたかった~」
「じゃあ、8時に郵便局の前でいいか?」
「はい」
「OK、じゃあ行こうか」
急いで階段を下り、事務所へ入った。
美佳は何か言いたげな表情をしていたが、
「岩田さん、課長がすぐに電話くれって」
「何だこんな時間に。まあいいや」
課長と電話で話していると、美佳は
「さあ、帰るぜ~」
と言ってカバンを持ち立ちあがった。
「じゃあね~」
スタスタと事務所から出ていく美佳。
知子も後を追うように、僕に手を振って出て行った。