テレビは野球中継を放送していた。
ビール片手に見ている振りをしながら心は菜都の事ばかり考えていた。
消しゴムを借りに入った菜都の部屋で感じた微かな石鹸の香り。
きっとお風呂上がりの菜都の身体からだろう。
私の脳はその心地好い余韻に浸っていた。
「ねぇ、最近気になってるんだけど、菜都が夜遅くまで起きてるの知ってる? 」
妻が髪の毛を梳かしながら聞いてきた。
「菜都の事か?」
私は自分の悪巧みが妻に知られていないかの方が気になっていた。
「そうよ。最近自分の部屋に居てばかりよ。」
「まぁ、勉強してるんだろ。いい事じゃないか。」
娘に対する気持ちを悟られないようにナイターに集中しながら答えたのだが、私には部屋で何をしてるか薄々感づいていた。
翌朝、食パンを食べていると洗面所から菜都が出て来て私に聞いてきた。
「どう、お父さん。似合ってる?」
菜都は私の前で後ろ向きになった。髪を後ろで結び赤いリボンで留めてある。
ドキドキしながら素っ気なく答えるのが難しい。
「まぁかわいいんじゃないか。リボンがかわいいよ」
振り向いた菜都は少し不満顔ながら時計を見て慌ててランドセルを背負い玄関に向かった。
「行ってきま~す」
ドアを開けると通学中の同級生の声が聞こえる。
「ナッツ、おはよー」
私もそろそろ準備しないといけない時間に気がついた。店を開ける時間だ。
父親の代から続く写真屋だ。
免許センターやら旅券事務所が近くにあるのでそこそこ店は繁盛していた。
シャッターを開けながら私の脳裏にはさっき見た菜都のうなじやウエスト、そしてお尻を思い浮かべていた。