お読みいただきましてありがとうございます。
皆様のお陰で続けさせて頂いております本シリーズは第22話を迎え、教育実習編3日目のエピソードに突入いたします。
教育実習2日目の夜、ひょんなことから舞衣先生のアパートに泊まってしまいました。
その帰り際、アパートに停めてあった舞さんの車を見て驚きながら朝帰りした私は、下宿の玄関で鉢合わせした下宿のおばさんと鉢合わせした時にもらった二日酔いの頭痛薬を飲んで自室まで帰って来たところです。
そしてベットに腰掛け、さっきまで一緒にいた舞衣さんとの事を考えていた時、不意に横になった瞬間、意識を失ったように眠ってしまいました。その舞衣さんという女性は、教育実習でお世話になっている高校の先生のことです。
今回のストーリーはここから始まります。
朝、一度私と顔を合わせた下宿のおばさんが、なかなか朝食に姿を見せないことから昨日と同じく娘のふたばに声をかけたようです。そのふたばという女性は私と同じ教育実習生で下宿の娘です。微妙なところですが元カノと言ったところでしょうか。
今日も朝からいきなり部屋のドアが開いたかと思うと、そのふたばがドカドカ部屋に入ってきました。昨日と全く同じ展開です。
「あ〜。まだ寝てる。しかもパンツ1丁で。でも、スーツはハンガーに掛かってるからいいけど・・・」
「アレッ?アンタなんかいい匂いするよ。ねえ。アンタどこ行ってたの?聞いたよ、さっき帰って来たんでしょ?どこ泊まったの?なんでこんないい匂いするのよ!」
と、私のカラダの匂いをあちこちクンクン嗅ぎながらふたばが朝から鬼のような剣幕で怒っています。
しかもうつ伏せで寝ていた私をひっくり返すと、今日も昨日と同じように朝勃ちをグリグリ回しはじめました。すると、パンツからその朝勃ちが飛び出してしまい、さらにその匂いをクンクン嗅ぐと
「なんかここもいい匂いする。しかもオンナもののボディーシャンプーの匂いがする。アンタ。あの後、彼女のところ行ったの?ねえ、何回やったのよ!」
と言いながらソレをふたばの長い指で弾きました。
「うっ・・・・・・・!」
私はこれで目が完全に覚めましたが言葉が出ません。
そしてやっと、「ヤったよ・・・・。1回かな?」と、サラッと嘘をつきました。
もちろんヤった相手は自分の彼女でもなく、回数なんて数え切れません。
「本当に?それじゃ確かめてやるか・・・・・」
と言いながら、私のカチカチの根元を指で押さえるとその先っぽを舐め始めました。しかもネットリと。
すると、今度は先っぽを舐めながら掴んだ指を上下に動かし刺激します。
ふたばの学習能力は物凄く、もう私のツボは押さえてあるようです。
「ふ・・たば。そんなことしたら、朝から口の中生臭くなっちゃ・・・・・」
「ウッ・・・・」と言った瞬間、ふたばの口の中に放出してしまいました。
しかし、それは自分でも量が少なく空砲に近いものがあることが分かりました。しかも、何度も空砲を発射してもふたばはそれをやめてくれず、寝起きの脳みそをかき回すように刺激します。
「ふ・・ふたば。分かったから・・・もう、まいった・・・」と言いながら全身ビクビクしてしまいました。
するとふたばは私のソレから「ポン」と口を離し、その生臭いものを「ゴクン」と飲み込むと・・・
「アンタ・・・・。さっき嘘ついたね。コレ1回じゃないね。ちょっとしか出ないじゃない!。」
「もう、味も匂いもしないくらい薄くって、ほとんど空砲だよ。ねえ、本当は何回出したのよ?」
「何回だっていいだろ!彼女となんだから・・・」
「ふ〜ん。一昨日は彼女でもないわたしとも何回もやったのに、そんなこと・・・どの口が言うのかね〜?」
そして続けて「まっ、どうでもいいけど。今度はきちんとトイレに流れていってね。」と言っています。どうやら私は、今回もトイレに捨てられてしまっているようです。
すると「これ。」とふたばが私に手渡したのは昨日の朝ふたばの部屋に忘れてきた私の下着でした。
「ありがとう。きちんと洗濯までしてくれて。てっきり、生ゴミ扱いで帰ってくるのかと思っていたから少し驚いた。」
「・・・・アンタ。わたしのこと、どういうふうに見てんのよ!」と言いながら、ふたばはティッシュで口を拭いています。
その後着替えを済ませた7時前、下宿の食堂でふたばと並んでおばさん特製のお粥を食べていました。
すると、他の下宿生の朝食を作っていたそのふたばのお母さんが振り返り、ふたばに問いかけます。
「ねえ、ふたば・・・。今からでも風谷さんに乗り換えない?実はあのお婿さん、大き過ぎて母さん付き合う自信ないの。風谷さんだったらちょうど良いっていうか、小さくってなんか安心でしょ?ソレにアンタたちなんかお似合いなんだよね・・・・。それにウチの家系にそんなにおっきくない人の遺伝子入れて貰ったほうが・・・母さん、ちっちゃい孫抱きたいな・・・」
「母さん。何言ってんの。もう決まってるんだからいい加減諦めてよ。わたしコイツと一緒になっちゃったら貰われて、ここからいなくなっちゃうんだよ。後継いなくなっちゃうんだよ。」
「そうよね。そうなんだよね。なんでふたばがオンナなんだろうね。こんなに大っきく育ったのに。オトコだったら何の問題もなかったのに・・・・。朝から変な冗談言ってごめんね。」
なぜか下宿のおばさんは前から私のことを気に入っていて、今でも諦めきれない様子です。ちなみにそのおばさんは身長こそふたばより低いのですが、私より大夫高くいつも見下ろされていますし、さらにふたばのお父さんもふたばを超える大男です。
そうしている時、食堂すぐ脇の玄関から「すいませ〜ん。小林です。マドカ先生いらっしゃいますか?」と言う声が聞こえました。
そして玄関に近かったふたばが玄関に行くと
「あっ、小林先生。おはようございます。あれっ、先生雰囲気変わりました?」
「化粧品変えたせいかな・・・・」
「でも、なんでこんな朝早くからここに・・・?」という会話が聞こえて来ました。
私もふたばに続いて玄関まで出ると、今日は昨日と違って胸元を隠すようなブラウスと黒のスーツに身を固めた舞衣先生がいました。
そして膝丈のタイトスカートの黒ストッキングの右膝には、朝に私が巻いてあげた包帯が透けて見えています。
そして私と目が合った小林先生は、照れたようにチョット視線を逸らしました。
「ゴメンね。今日マドカ先生に迎えに来てもらうことにしてたんだけど、学校から緊急招集かかっちゃって・・・・直ぐ送って欲しいの。」
「あっ、いいですよ。そのケガ、僕がさせちゃったようなもんですから・・・」
「何?アンタがケガさせた?昨日、何があったの?彼女と一緒だったんじゃないの?なんで小林先生にケガ?」
「アンタ。まさか先生にワルサしたとか・・・・」
「違うの。これは昨日タクシーで送ってもらった時、アパートの階段踏み外しただけだから・・・」
「本当に?じゃ、何?先生送った後彼女と逢ってた訳?」と、コソコソ言いながら私を睨むふたばの目が怖いこと怖いこと・・・・。
そして急遽準備して3人でハチロクに乗り込むことになりましたが、ここで問題が・・・
「なあ、ふたば。ふたばって後部座席に乗るの無理だよな。先生は足ケガしてるから前の座席にって思ったけど・・・」
「何言ってんの。私のカラダ、後ろに収まる訳ないでしょ。そんなの当たり前じゃない。」
「あっ、ふたばさん。わたし後ろでいいよ。」
「でも先生。その足大丈ですか?」
「大丈夫、大丈夫」と言って小林先生が運転席のシートを前に倒して乗り込もうとしましたが、やってしまいました。初めてこのハチロクに乗る人の儀式を。
「先生。ロールバーに気を付けて、頭・・・・・」まで言ったところで
「イタッ」と言って小林先生が後部座席に倒れ込むように座って頭を抱えています。そして今度はそれをとっさに覗き込んだ私とふたばがお互い頭をブツけ、3人それぞれ頭を抱えています。コレって今でいうカオスな状況というのでしょうか?
私のハチロクには義父が着けたRECAROというメーカーの、ヘッドレストの内側がメッシュになっているセミバケットシートがついていました。
このシートは、前倒しする時純正のシートと全く違うところにレバーがついていたので、大抵初めての人は倒し方が分からずアタフタしますが、小林先生は全く動じることなく普通に倒しています。
やっぱり、この人はその辺を普通に知っている人だと思いました。
そして後部座席で頭を抱えていた小林先生が「ハチロクってこんなに天井低かったんだ・・・これ、薄いウレタン巻いてあるけど、ヘルメット無しでモロにぶつけるとやっぱり痛いね。」
「すいません。ハッチバックなんでなおさら低くって。」
その後落ち着いた頃学校へ向けて発車しました。毎度のことながら背の高いふたばはシートを倒して半分寝るような体勢で助手席に乗っています。
しばらく走った頃、運転席後ろの座席の小林先生がふたばに問いかけます。
「気を悪くしたらゴメンなさい。ふたば先生っていつもそんな格好でコレに乗ってるの?」
「はいそうです。最初はキツかったですけど大分慣れました。ソレに私も最初に乗った時、頭を強打しました。」
「でも成人式の時、頭造ったうえに晴れ着着てコレに座った時は流石に身動き取れませんでした。シートなんてほとんど寝ちゃってましたし・・・帯潰さないようにするのが大変で・・。」
この会話を運転しながら聴いていた私は、その時の状況を思い出していました。
成人式のその時ふたばは妊娠初期で体調が思わしくなく、とても辛そうだったのでした。なんでその時気づいてあげられなっかったのかと今でも後悔することがあります。
そんな私の思い出はさておいて二人の会話は続きます。
「そうよね〜。私のEP71にもコレついてるけど、天井高いからさほど気にならないのよね。」と言って私の頭の脇に張り巡らされているロールバーという鉄パイプを掴みました。
「先生。普通に喋っていますけど、先生の車、さっき帰る時ちょっと見せてもらいました。先生のクルマって普通の人が見れば普通に見えるけど、僕は騙されませんよ。」
この時「さっき」という言葉にふたばが反応したのが分かりましたが、あえて気づかないフリをして話を進めます。
「あれ?、話してなかったっけ?わたしの実家って昔っから自動車板金やってて、最近弟が整備工場を併設したんだけど、そんな感じだからその流れで趣味がジムカーナになっちゃったの。過去形だけどね。」
すると、今まで黙って話を聞いていたふたばがハナシに割り込みます。
「あっ、先生。わたし、クルマのこと疎くって全然分かんないんですけど、さっき言ってたEP71ってなんですか?」
「ごめんなさいねふたば先生。EP71っていうのはトヨタのスターレットのこと。わたしのはターボが付いていて、とてもオンナの人が乗るヤツじゃないんだけど・・・」
「スターレットなら大学の友達が乗ってます。でも、なんかそれって女性仕様車って言ってました。」
「そうよね。スターレットって色んな人が乗ってるよね。それに合わせて仕様もいっぱいあるんだよね。」
「そのわたしの趣味のクルマもなんか最近あまり乗れなくなっちゃってね・・・。最近部活が強くなっちゃったでしょ?。それで休みもほとんどなくなっちゃって、自分の時間もなくなっちゃったんだけど・・・。バイクも尚のこと・・・。」
「あっ、そうなの。今なんて言ったっけ?・・・あの娘。あっ、あの早坂さんが来てから、なんか部活強くなっちゃったんだよね。まあ、嬉しいことなんだけど・・」
この時、信号待ちをしていた信号が青に変わり、私はハチロクを加速させました。
今、私のハチロクに搭載されているエンジンは、そもそもメーカーの試験機で同級生の理央がリビルドしたエンジンです。さらにそのエンジンは義父の好みでチューニングされており、思いっきり高回転高出力型のエンジンです。
そんなマニアックなエンジンは低回転域ではトルクが薄く、3人乗車の状態で加速するには高回転まで引っ張る必要がありました。
私はハチロクを加速の際に、デジタルバー表示のタコメーターのレッドゾーンまでエンジンの回転を引っ張りました。すると後部座席から・・・
「コレ、凄いね。ねえ、まーくん。コレすごくいい音する。お尻の下から響いてくるね・・・ちょっと感じちゃうかも・・・。でもこのクルマって、外見は全くノーマルだけど中身って全然ノーマルじゃないね。それにこのエンジンって、吸排気系は全部変わってて多分4連のキャブってところ?」
この時、ふたばがその「まーくん」という単語に反応して私の顔を見ましたが、コレも気づかないふりをして平静を装います。
「それで、4-1のエキマニからマフラーまでは、オールステンってとこかしら。そして、さっきのアイドリングの時の排ガスの匂いからすると触媒レスってトコかな?」
「先生、やはり詳しいですね。整備工場の娘ですもんね。あと付け加えるとしたらエンジン自体もハチロクのものじゃありません。AE92の後期型の開発用エンジンを地元のオンナ友達が組んで義父が仕上げました。」
「あと、吸気はキャブじゃなくって4連スロットルのインジェクションで、マフラーは特注のものを目立たないように、見える部分を黒塗装してます。ちなみに、触媒はメタルのものが付いてますけど、排気温が低いと効きが悪くて、アイドリングの時結構臭いです。」
「あとエンジンは1万くらいまで回るって聞かされていますが、タコメーターがこれなもんで、表示されている回転までで抑えてはいます。」と言いながらデジタル表示のメーターを指さしました。
「なんでデジタルメーターなの?なんでアナログメーターのにしなかったの?ハチロクの中古なんて腐るほどいっぱいあるから選び放題でしょ?」
「そうなんですが・・・このクルマってそもそも姉さんのなんです。そして、当時高校生だった僕が新車の頃からメンテナンスしてました。今じゃコレ以外考えられません。あと、姉は今、恐ろしいくらい速いブルドッグに乗ってます。」
「義父がコソッと教えてくれましたが、最大ブーストは1.8キロだそうです。」
「あっ、ブルドッグってシティーターボのⅡの方ね。そのクルマ出た時、あのブリスターフェンダー見て、ホンダやっちゃったって思ったよ。」
「しかし1.8キロって凄いね・・・。わたしのEPね、前にVVC回し間違っちゃってブースト1.5キロ掛けちゃって。そしたらインテーク側のパイプが思いっきり抜けちゃって・・・。」
「その後、抜けちゃったところをステンのパイプで作り直したんだけど、あの抜けた嫌な感覚がどうも抜けなくって、今はEVCで1キロに抑えてるのよね。それでも170馬力くらい出てるんだから、ターボってやっぱり大した物よね・・・。」
するとハナシについていけないふたばが再度割り込みます。
「先生。わたし、そのVVCとかEVCっていう単語っていうかその記号初めて聞くんですが、それなんですか?」
「またまたごめんなさいね。VVCっていうのはターボの過給圧を調整するバルブで、工業用の圧力弁を流用したやつ。あとEVCっていうのは電気的に調整するものでこれはターボ用の専用品。なんか最近出た新型には、初めからそんなの付いてるみたいなの。」
「なんか、ターボってなんか麻薬的なところがありますよね。僕って自然吸気しか知らないんでなんて言ったらいいか・・・」
「そうよね。ターボってやっぱり理屈を超えてるところがあって・・・小排気量でもあんな加速しちゃうんだもん。理屈から言えば、あんな小さい車に2000CCくらいのおっきなエンジン積んでるのと一緒でしょ?そんなの一回知っちゃうともう後戻りできないっていうか・・・。」
「どう表現したらいいか分かんないけど、一度いいオトコ知っちゃったら、もう普通のオトコには戻れないって感じ?」
その時ふたばが後ろを振り返るように「先生。それってどういう例えかわたし分かんないんですけど・・・」と尋ねました。
「ふたば先生、わたし知ってるよ。ふたば先生のフィアンセって物凄く大きい人なんだって?それに対して、聞こえないふりして運転しているこのまーくんがターボってところかな?・・・そうでしょ?・・ふたばさん。」
「えっ、先生、ターボがどうしたんですか?よく聞いてませんでした。でも僕ってやっぱりターボはよく分かりません。僕は根っからメカチューン好きです。回して振り絞るようにして出るあのパワーの出方が好きです。
「まーくんって、根っから機械っていうかメカニカルなところが好きなのね。それでこのハチロクのエンジン組んでくれた女の子って、まーくんの地元の彼女だったりした?」
「中学校の時はそんな感じでしたけど、今じゃ友達の彼女でいい友人ってところです。」
「ウチって実家が整備工場やってるって言ったでしょ?その父さんの知り合いのショップがあって、最近その娘さんがエンジン組んだって言う話聞いたことがあるよ。なんか最近カー雑誌の取材受けてるって。・・・。最近の女子って凄いね。」
「そうですね。ウカウカしてるとオトコの価値なんて大暴落ですよ。」
「ウチがそんななんで、わたしなんて女子大時代にダートラやってて、調子こいたらその時乗ってたKP61転がしちゃって・・・。」
「そうしたら、ダートラは危ないからってジムカーナ勧められて・・・。オレの車やるからって父さんから貰ったのが今乗ってるEP71ってところ。でも、あれって最初エアコンも付いてなかったの。」
今度も、助手席で話を聞いていたふたばが
「なんか専門用語がいっぱい出てきてよく分かんないけど、人って見かけによらないんですね。なんか小林先生って、そんな汗臭そうなことなんて興味なくって、夜の街に繰り出しそうな雰囲気ですよね。」
「それに先生ってコレのことまーくんって呼んでますけど・・」
と助手席で半分寝そべるようにして座っていてふたばでしたが不思議そうな顔をしています。
「なんか昨日の夜、わたしがこのまーくんのお姉さんってことになったらしいの。それでわたし本当のお姉さんと同じくまーくんって呼んでるの。そうよね、まーくん。」
「先生。それ恥ずかしいんでちょっと・・・」
「あれ、昨日キミのゲロ片付けたの誰だったかな?マーライオンのまーくん。」
「すいません。お姉さんには逆らえません・・・・。」
「ねえ、ふたばさん。ヒトって見かけじゃ何にも分からないのよね。どこにターボ付いてるか分からないし・・・・」
「でも、先生。そのターボってヤツは効かせすぎると壊れちゃうんですよね。」
「そうよ。ターボってヤツは諸刃の剣と一緒で、制御を誤るといつブローするか分かんないっていうヤバめの魅力はあるよ。」
すると助手席のふたばが私の左頬を指で突っつき「ほれ、効かせすぎるとブローしちゃうんだって。ちょっとは自重しろよ。」と言っています。
今度は私の後ろの小林先生が「ふたばさん。コレのどこにターボついてる?」とふたばに聞いています。
するとふたばが「多分、いやおそらく下の方・・・」と答えると一瞬の間を置いて二人が爆笑しています。この時話について行けなかった私は、恐らく何かの下ネタなんだろうなってことだけは分かりました。
そういう会話をしているうちに学校に到着しました。
私は昇降口にハチロクを横付けし、ふたばと二人で小林先生を引っ張り出し、ふたばに「小林先生を職員室まで・・」と頼んだ瞬間、背負うこともなくいきなりお姫様抱っこをして昇降口から入って行きました。
そうしている間にハチロクを駐車場に停め、私は2人の荷物と小林先生のローヒールを持って職員室まで追いかけて行きます。
すると職員室前で、ふたばが何か不安そうな顔をして私を待っていました。
そんな中私が廊下側の窓からガラス越しに職員室を覗くと、教頭先生が数人の先生を前に何か説明をしています。そして何かを説明された小林先生が驚いたような表情もしています。
そして、事情を知らない私が小林先生に荷物を届けようと職員室に入ろうとすると、そこにいたふたばが私の手を取り私を制し首を横に振りました。
どうやら昨日の夜、私が酔っ払っていろんなことをやらかしていたとき、別のどこかで何かとんでもないことが起きていたようです。
この時ふたばは「所詮私たちは大学生でただの実習生。学校の問題に首突っ込めるものでもないし、実際何もできない。私たちは今やるべきことをやるだけだから・・・」と言って、掴んだ私の手を引っ張り実習生控え室に行こうと促しました。
「そうだね。僕たちにできることって多分何もないよね。学校の問題はプロの先生じゃないとどうしようもないんだよね・・・」
「そういえば、アンタ午前中フリーだったよね。」
「うん。午後は習得があるけど、授業は明日だから・・・多分午前中は他のクラスの立ち合いとかかな・・・」
「もしかすると忙しくなるかもよ・・・」
「ソレって、さっきの・・・」
「うん。その対応で自習のクラス出るはずだから・・・」
その日、ふたば予想が当たり実習生全員フル稼働で自習のクラスを見て回ることになりました。ただ、その中に平野の姿がなかったのが気がかりです。
そして昼前に自習の監督を行った1年6組で、あの「優子ちゃん」と呼ばれていた生徒が欠席していることに気づきました。
私が出欠を取る際、「小笠原さんは休みなんだね・・」と呟くと・・・
「なんか朝から先生たちがバタバタしてるのってその優子ちゃん絡みって噂があるんですが・・・先生も知らないんですね・・・聞こうと思ってたんですが。」と委員長に言われました。
「ごめんなさい。先生も全く知りません。というか蚊帳の外です。」
私は生徒たちの自習している姿を教壇脇で椅子のパイプ椅子に座りながら見ていましたが、さすが進学校の普通科です。土木科みたいな変な緊張感はありません。
そんな中、小林先生から渡されていた出欠簿が挟まっているバインダーに生徒たちの出身中学や生年月日が記載されている名簿を発見しました。
暇に任せてソレを見ていると、先ほど話題に出た「優子ちゃん」と言われる生徒は小笠原優子という名前で3月生まれの15歳であることが分かりました。
また、入学直後に行われたであろう共通テストの順位も備考欄に記載されており、ソレを見ると相当優秀なことが伺えます。
しかも住所が2段書きになっていたことから、どこかに下宿などで親元を離れていることが分かりました。しかも、出身中学校も車で何時間も掛かるようなところにある学校です。
そしてその時間が終わった後職員室に戻ると、出欠簿を渡すべき小林先生の姿がありませんでした。
私が近くにいた教務主任の先生に小林先生の所在を確認すると、教頭先生と生徒宅を訪問しているとのことでした。場所が遠いようなことも言っていましたので、あの「優子ちゃん」の実家に行っているものとピンと来ました。
私はとりあえず1年6組の出欠簿を教務主任に渡し実習生控え室に戻ってきましたが、控え室はそのことで話題が持ちきりです。
実習生があちこちで聞かれたり、逆に情報をもらったりして情報が錯綜していました。そしてその真相について、昼休みにご飯も食べず議論されています。その中で浮かんできた有力な情報が
「平野先生が優子ちゃんをラブホに連れ込んだ」
というものでした。
私は何かの情報にオビレがついてそんなハナシになっているんだろうと思いました。でも、なんか嫌な予感がします。さらにさっきまでその議論に混ざっていたふたばが不吉なことを言っています。
「対応誤るとセカンドレイプになっちゃう・・・。」
そう言われた私はその意味が理解できません。そうしているうち、「失礼します・・・」と言って控え室に昨日の昼休みにやってきた放送部長が姿を見せました。
「あっ、マドカ先生。ちょっといいですか?ちょっと相談がありまして・・・」
と言われ連れて行かれた先は放送室の部室でした。
「相談って・・・」
「あの。ちょっと騒ぎっていうか、噂が飛び交ってる優子ちゃんのことなんですが・・・」
「昨日の夜遅くにその優子ちゃんから電話があって、泣きながら言ってたんです。」
「平野先生に・・・ホテルに連れて行かれたって。」
「なんか、わけ分かんないうちに気がついたらそこに居たって・・・。」
「そこで何かされたの?って聞いたら、服脱がされるまでは覚えてるけどあとは怖くって何されたか分からないって。」
「そして最後に、お前はオレのオンナだって言われたって・・・。」
「ソレでその後そのホテル出た時、私服警官に職務質問されて近くの交番に連れて行かれて・・・援助交際じゃないかって疑われたって、泣いてたんです。」
「あの娘、ついこの春まで中学生だったんですよ。処女だったんです。エンコーなんてするわけないじゃないですか。何もわかんないうちに平野先生に言いくるめられてホテルに連れて行かれちゃっただけなんです。」
「なんでこんなハナシ、マドカ先生にするかって言うと、一昨日の夕方優子ちゃんがマドカ先生のこと好きになっちゃった。って言ってたんです。一目惚れだそうです。」
「ソレで、本当は昨日マドカ先生と話がしたくって昼休みに伺ったんですが、どういう訳か平野先生と話すことになっちゃって・・・・。マドカ先生、なんとかしてください。なんとか優子ちゃんを救ってあげてください。」
と訴える放送部長の矢萩さんの表情は泣く寸前です。
レイプにエンコーに補導。どれをとっても最悪なフレーズです。エンコーではないにしろラブホに行って補導。ソレは事実です。
でも、ソレらのそもそもの発端は私にありました。
私は昨日、平野のことで相談をしてきたその女子生徒に対して真剣に話を聴かず、問題を先送りにしていた自分に腹が立ちました。その平野というオトコのことをよく知りもしないで、「非常識なことはやらないはず。」と自分の中で勝手に性善説に基づいたヒトの見方をしていたことに。
高校生の時、自分っていう男は、姉さんをレイプしたオトコを感情に任せ半殺しにしたこともあるのに・・・・。私はその時骨折した左手の中指を右手で握り締めながら猛烈に自分を悔やみました。
「曲がりなりにも自分は今先生なんです。」コレは昨晩、懇親会で先生方を前に言った私の言葉です。言った本人が一番分かっていませんでした。
この時悟ったのかも知れません。自分が生身の人間を扱う先生という職業に向いていない人間であるってことに。
そして午後。なんとなく落ち着いた風に見えた職員室は表面上いつもの様子と変わりませんが、あちこちで電話対応をする慌ただしい先生の姿がみられる一方、やっぱり教頭先生と小林先生の姿が見えません。
この後の私のカリキュラムは午後は2時間続けて、工業科の授業手法の習得と言うものでした。
その授業はプロの先生が行う熟練の授業です。生徒が寝てようが何かやっていようが大して気にせず自分のペースで淡々と進めています。
私が教室の後ろで見ていることもあり、たいして荒れた感じではありませんでしたが、後ろから見ている生徒の一部は落ち着きがなく明らかに授業と関係のないことをしていました。
もちろんそうでない生徒も沢山いましたが、やはり進学という目標を持った普通科の生徒との温度差が感じられる時間でした。
その放課後、私はようやく学校に戻ってきた小林先生に呼ばれて職員室にいました。
「マドカ先生。わたしこれからちょっと会議があって、部活の方お願いしたいの。今日のスケジュール表は部長に渡してあるから大丈夫かとは思うけど、マネージメントよろしくね。」
と気持ち力のない口調で小林先生はそう言うとグッタリとして疲れた様子です。
「小林先生。昨日がアレだったんでカラダ辛くないですか?無理してカラダ壊さないようにしてください。」と私が言うと、小林先生は私の耳を引っ張り顔を近づけ小声で囁きます。
「昨日、キミから元気の素いっぱいもらったから大丈夫だよ。素が切れちゃったら、もう一回お・ね・が・い」と言って、手の甲で私の股間をポンと叩きました。
「先生、勘弁してくださいよ。」
「元気ないのはキミの方だよ。あれっ?約束忘れちゃったかな?今度の休みどうだったんだっけ?」
「はい。仰せのままに・・・舞衣さん。」
私はその後吹奏楽部の部室に立ち寄り、部長と今日のスケジュールを確認しました。するとその中に私の指揮についての記述もあり、「マドカ先生に指揮の振り方について教えてやって欲しい」と言うことも書いてありました。
そしてその部室で指揮について簡単なレクチャーを受けました。曲自体は4分の4拍子で、指揮をするのは特に難しくはなかったのですが、最後にその部長が言ったことがあまり理解できませんでした。
「自分がこの曲をどうしたいか。どういうイメージにしたいかって言うのは指揮者次第。私たちは基本的に譜面の中の限られた情報でしか曲を進めることはできないけど、ソレ以外の味付けは指揮者のさじ加減。」
「譜面というレシピどおりにやればそのレシピ通りにはなるけど、部員という料理人の実力を見ながら自分のイメージした料理の味付けもって行くのが指揮者という料理長。」
と言うものでした。私といえば、曲というものは譜面通り進めて、指揮者はテンポを測るくらいにしか考えていなかったので意味がわかりません。でも演奏と料理の味付けという関係性自体はなんとなくイメージ出来た感じです。小林先生があえて内容のイメージしやすい曲を課題に選んだということだけは、その意図が見えてきたような気がします。
そしてその部活は部長の指示のもと予定通り進みました。私は腕時計を見ながらその進み具合をそれとなく見ていましたが、時よりこんなことがあるようで特に心配することもなく、それぞれのパートリーダーが課題に取り組んでいるようです。
しかし、私の手元にあるスケジュールの最後に「合奏練習」と言うものがありました。でも(先生が間に合ったら)と言うものが書き添えられています。
そして「小林先生、間に合うかな?」なんて考えていた時、息を切らせながら何か黒いケースを持って現れたのはおさげ髪のマコトでした。その姿は、チェック柄のシャツにデニムのオーバーオールという幼い格好で、見ようによっては現役高校生より若く見えます。
「エンちゃん。頑張ってる?昨日、急に帰っちゃってごめんね。コレからお姉ちゃんと織田さん、忙しくなりそうで・・・・。後で詳しく話すね。」
と言いながら持ってきた黒いケースを私に見せます。
「これなんだと思う?」
そのケースを見るとあちこち傷だらけで物凄く古そうです。また、取っ手の下にYAMAHAのステッカーが貼ってあり、さらに下の方に旭川〇〇高校吹奏楽部のステッカーが貼ってありました。またよく見るとさらに下の方に小さくNIKKANというアルミの赤いプレートがリベット留めしてあります。
「ソレって楽器?その大きさと変な丸い出っ張りは楽器のベル?あっ、これユーフォだ。」
「あっ、たり〜。エンちゃん凄いね。吹奏楽部の副顧問はダテじゃないね。」
と言いながらマコトはその黒いケースの留め具をパチンパチンと外しました。そしてケースを開けると、ソレはアチコチ凹んていてラッカーが剥がれているけどキラキラ輝いたゴールド色のユーフォニュームでした。
そしてマコトがそれをケースから取り出すと、教室の蛍光灯にYAMAHAの刻印がキラリと反射します。
「マコちゃん。これって・・・?」
「うん。コレ、わたしが旭川でお世話になっていた高校の吹奏楽部から預かっているヤツ。」
「預かってるって・・・、いつか返しに行かなきゃならないってこと?」
「そうじゃないの。コレ、吹奏楽部の顧問の先生から廃棄処分頼まれて・・・。処分するのに一生かかっちゃうかもしれないけど・・・」と言いながら、楽器についている3本のピストンをカチャカチャ押しています。
「廃棄って・・、全然そんな雰囲気じゃないけど・・・」
「多分、先生が餞別がわりに持たせてくれたんだと思う・・・。内地行っても忘れないでねって。それで一応廃棄ってことになってるからケースがすごく古いやつに変わってて、逆にニッカン(ヤマハ楽器の前進)のケースの方がレアになっちゃってる感じ。」
「なんかその先生、廃棄ってことにするの頑張ってくれたんだね。それじゃ旭川にお礼に行かなきゃなんないね。」
「そうなの。実は、お姉ちゃんと織田さんね、ちょっと旭川のお母さんのところに行かなきゃなんない用事ができちゃって・・・。それで、わたしも旭川の高校行ってコンクールの応援したいし、エンちゃんとのことで改めてにお母さんにキチンと挨拶したいと思うんだけど・・・いい?」
「マコちゃん。ちょっと待った。ここまでで確認したいことがあるんだけど・・・・。それは、織田とアキちゃんのこと。」
「もしかして・・・デキ・・ちゃった・・・とか?」
「うん・・・。3ヶ月なんだって。なんか、最初生理が遅れてるってお姉ちゃんから聞いてて、そのうちなんか体調悪いってハナシになって、思い切って婦人科行ったらそうだって・・・もう少ししたら母子手帳もらいに行くって言ってた。」
「なんだ織田のヤロウ、順番ひっくり返すの好きじゃないって言ってたけど、結局これかよ。でも、とりあえずおめでとうってところかな?。でも、そうすると出産予定日って・・・・・えっと1月か2月ってこと?あれ?しかも、僕って生まれてくる赤ちゃんの叔父さんになっちゃうってこと?」
すると目の前のマコトが顔を赤くして「エンちゃん・・・出来ればその子の叔父さんになってくれる?それでその叔父さんになってほしくて北海道のお母さんのところに一緒に行って欲しいってことなんだ・・・・・だめ?」
「マコちゃん。ちょっと待った。それって聞き様によってはプロポーズにも聞こえるんだけど・・・就職決まった織田はいいけど、僕はコレから公務員試験受ける身で、今は教育実習生だよ。物凄いフライングになってるような気が・・・」
すると目の前のマコトが今までにも増して顔を真っ赤にして「あっ、アレ?わたし、今プロポーズしちゃった・・・?でもちょっと飛躍しすぎだよね。コレってエンちゃんからしてもらうのが本当だよね・・・」
「そうだよマコちゃん。ちょっと焦りすぎだよ。前に、マコちゃんのお母さんから、生活基盤が出来たらって言われているように、その時が来たら僕の方からキチンとするから・・・それまでちょっとだけ待っててほしい。」
「うん。そうだね。わたしは逃げも隠れもしないから、エンちゃんのタイミングでいいよ。」
「ありがとう。僕も逃げたりしないからその時まで待っててほしい。僕は今やっている教育実習のすぐ後に公務員試験が控えていて、2次試験まで合わせると結果がわかるのは9月頭になりそうなんだ。」
「でも、民間企業から内定も出てるから一般教養以外は勉強するつもりないけど、白紙回答だけはしたくないから試験の直前くらいだけはその勉強に専念させてほしい・・・。」
「うん。分かった。それって、わたしたちが一緒になれるかそうでないのかに関わってくるもんね。逢えない期間はちょっと寂しいけど、わたし応援するね。」
「ありがとうマコちゃん・・・」
「あっ、そうだ。織田とアキちゃんって、いつ北海道に行くの?」
「昨日の夜お母さんと電話で話した時、もう決まっちゃったハナシだからカラダ落ち着いてからでいいよってこと言われたんだけど、そのあとお姉ちゃんに電話したら織田さん焦っちゃって、どうにもこうにも落ち着かないって。」
「それでも早くキチンとしたいって言って、結局7月に入ったらってことになって・・・」
「それでね、わたしもついて行くことになったんだけど、実はわたし旭川にあんまり行きたくなくって・・・吹奏楽部のみんなには逢いたいってのはあるんだけど、あの家に行きたくないんだ・・・それでね。わたし交通費みんな持つから・・・その時、正式な挨拶じゃなくっても良いからエンちゃんについてきて欲しいの。」
いつも、ものごとをハッキリ言うマコトでしたがこの時のマコトは歯切れが悪く、旭川のその家で何かあったのではないかと感じました。
「うん。いいよ。でも自分の分は自分に出すから心配しないで。その頃ってちょうど1次試験が終わって結果が気になるころだけど・・・。一度はあのフェリーに乗って行ってみたいと思ってたんだ。みんなで北海道に行こう。」
「エンちゃんありがとう。早速、うちの会社のほうからフェリー予約するね。クルマはお姉ちゃんので良いよね。」
私はこの時、マコトが北海道から戻ってくると言っていた1年満了の時期に、マコトが帰ってくるのではないかと思いから、当てもなく頻繁にフェーリー埠頭に通っていた頃を思い出していました。
やっとというかようやくというか、北海道から帰ってくるマコトを待つのではなく、マコトと一緒にそのフェリーで北海道に渡れる日が来るなんて夢のようです。
その後マコトは低音パートの練習する教室に行って指導を始めました。低音パートはユーフォニアムとチューバが合同でやっています。
私はその練習風景をぼんやり見ていました。そのマコトは何か聞かれるたび「口で説明してからやって見せて、それからやらせて見て、さらにもう1回やって見せる」と言うやり方で指導しています。しかも、驚いたことに自分のカラダと同じくらいあるんじゃないかっていう大きなチューバも普通に吹いています。
そして何より、マコトは一緒に悩んで一緒に考えるということを自然にやっています。コレって、昨日ふたばと議論したうえでやっと辿り着いたやり方です。もしかすると、僕やふたばなんかよりマコトの方が先生によっぽど向いているのかも知れません。
小林先生が言っていました。「あの娘が来てから部活が強くなった。」って。なるほど合点が行きます。
そうしているうちに部長が見回りに来て、指導をしていたマコトに向かって合奏練習の相談を持ちかけました。
「えっ、わたし?前の学校でそれはちょっとやってはいたけど、現役引退しちゃってるし、耳も遠く(音感を忘れている)なっちゃてるし・・・それで良いのなら・・・。」
ということで、本日最後の予定となる合奏練習が顧問不在の中行われることになりました。
そうとなると準備が早いのも吹奏楽部です。あの大きなチューバという楽器の大きなケースや、さらに大きいコントラバスという弦楽器を軽々と運ぶ女子生徒が合奏の会場となる多目的ホールに集結しました。
そして、その全員を前にして指揮台に登ったマコトはみんなに伝えます。
「わたしは顧問でもなんでもありません。今、みんなが練習している曲は小林先生の味加減になっているはずです。わたしはそれを変えることはしません。ただ、作曲者が譜面に残した意図は伝えることはできます。」
「指揮棒は使いませんので、わたし言いたいことをその指揮から感じ取ってください。」
「それでは課題曲の頭から行きます。」
というとマコトの指揮でその曲が始まりました。
私はホールの脇でマコトの指揮を凝視していました。そのマコトは時に大きく、時に小さく手振り身振りで何かを伝えるように指揮をしています。
その指揮をする手は時に何かを指さすようにしたり、グーだったりパーだったりとてもバラエティーに富んでいます。
そして、その曲が最後まで終わりました。するとマコトは今まで自分の見ていたスコアをペラペラ何枚か戻してそれを見ながら指摘を始めました。
「えーっと。ちょっと気になったところから言うよ。もし先生と違うこと言われても気にしないでね。目指すところは一緒だけど見る角度がちょっと違うってところだから・・・。」
「それじゃ行くよ。4小節目の頭のトランペット、ちょっと入りが甘いよ。15章節のトロンボーンの2番。ちょっと気合い入りすぎかな?譜面記号よく見て。それと28小節目のチューバ、二人で同じく吹くところってで二人同時にブレス(息継ぎ)してるよね。ちょっと音が切れちゃうから、それぞれ前後にずらしてみよっか・・・・。」
など、マコトは目の前のスコアを指でなぞりながら事細かに1曲分の改善点を伝えました。よく、ここまで覚えていられるものです。
すると前の方に座っていたクラリネットの1年生が
「あの〜、前にちょっと聞いたことがあるんですが、この吹奏楽部って昔何度か全国まで行ったって聞いてたんですけど、その後しばらく鳴かず飛ばずになっちゃってたけど、たった2年で強豪に盛り返した伝説の先輩がいたって聞いたんですが・・・その人って先輩ですか?」
「何それ?伝説なんて聞いたことないよ。確かにわたしがいた頃急に強くなったけど、私は何にもしてないしやっぱりそこまで引っ張って行ったのは小林先生だよ。」
とマコトが答えと、今度は急に手をパチンパチンと鳴らして「はい。噂話は良いとして今言ったところ注意してもう一回行ってみようか?でも、言われたところだけ気をつけても、他のところ気抜いちゃだけだよ。」
と言った後、マコトは先程質問してきた1年生を見て
「あと、クラリネット。音、よく出てるよ。指回しの大変なところがあるからリードミスは今の段階では気にしないで。ただ、リードミスを恐れて消極的になっちゃダメ。でも、どうすればミスしちゃうのかってことだけは考えて・・・。それじゃ頭から。」
と言うとその曲がもう一回始まりました。すると、吹奏楽なんて全くの初心者である私が聞いても、先程の合奏と違うことがわかります。なんか雑味が消えたっていうか、芯が通っているというか、まとまりが出てきました。
でも、先程マコトが指導したことって何か一昨日小林先生が指示したことと被っている所もあります。やはり、聞く人が聞けば気になるところって同じくなるのでしょうか?。
そんなマコトは指揮をしながら時に「もっと、もっと」というゼスチャーだったり「そこは押さえて」みたいなゼスチャーをカラダ全体を使ってしています。
そんなマコトを見ていた私はハッとしました。それは今日の部活の初めに部長から言われていた「指揮者のさじ加減」と言う件でした。ヒトに何かを伝えるのには「言葉」しかないと思っていた自分にとって晴天の霹靂的な衝撃です。
するといつの間にか小林先生が私の隣に立っていました。
「これぞ、マコトマジック。あの娘がいた時っていつもこんな感じ。結局わたしの吹奏楽って、あの娘の色なんだよね・・・。」
「こう見えてもわたしって、高校の時トランペット吹いてたんだよ。でも、2年生の定期演奏会の時その時の部長と意見が食い違って、頭きて部活辞めちゃったの。本当はトランペット吹くのが好きだったのに・・・」
「それでその後すごく後悔したの。でも、部活には戻れないし、モヤモヤしたままそのまま卒業しちゃって・・なんか物凄くやり残した何かがいつも喉の奥に引っかかってたの。」
「そんなことで地元から離れたくってこっちの大学に来て、ダートラなんかやって気が紛れてはいたんだけど、その後先生になってからそのやり残しを思い出しちゃって・・・、そのやり残したものをやりたくって吹奏楽部の顧問をずっとやってきたんだけど、どうもうまくいかなくってね・・・。」
「昔、顧問やってた先生が全国まで引っ張っていったこともあってすごいプレッシャーでね。そんなのもあって、実績もないわたしは自信もないから、わたしの言った言葉がうまく伝わらないの。生徒たちが聞いてくれないっていうか・・・・完全に行き詰まっちゃったの。」
「そんな時、たまたま近くの中学校でやっていた定期演奏会をフラリと見に行ったら出逢っちゃったのね。あの娘。そう工藤さん、いや早坂さんに。」
「本来ならユーフォって楽器は目立たなくって、縁の下の力持ちっていうか、料理で言えば調味料的な感じで、それ自体味がついていないものだと思ってたの。でも、そのユーフォは違った。鳥肌が立つくらい艶っぽい味を出してたの。ユーフォは一人しかいないのに、あの音響の悪い体育館の中でもはっきり分かるくらいに。」
「それからそのユーフォを吹いていた生徒が欲しくって欲しくって、校長に直談判して当時吹奏楽部にはなかった特待制度を急遽割り当ててもらって、中学校にまで押しかけて。あっ、お酒飲まなきゃ良い先生なんだよ。あの校長・・・。」
「そしたら部活がメキメキ強くなっちゃって・・・。でも、最初はそんな早坂さんのやり方に反発していた上級生も多かったんだけど、あの娘自身も実力があったし、すごくものを教えるのに長けてるっていうか、自分と同じ1年生のレベルをグンと上げちゃったの。」
「そうしたら上級生も認めざるを得なくなって・・・・。そこでやっとわたしのやり残したものがスッと消えて、心が楽になったのよね。すごく感謝してる。早坂さんに。そして実績も何にもないわたしに耳を傾けてくれた校長先生にも・・・。」
懇親会の時、ふたばは校長先生のことを無能だとバッサリ切り捨てていました。でも、その校長はやっぱりその立場まで上り詰めた人です。その立場のとおり、人を見る目はあるヒトなんだなと改めて思いました。でも、お酒が入ると下衆な人に成り下がってしまうところが残念なところですが・・・。
小林先生の話は続きます。「それでしばらくグングン強くなる部活を目の当たりにしてたんだけど、次はその早坂さんに部長やってもらおうとした時断られちゃったの。おかしいなと思っていたら、ある時その早坂さんに転校の話打ち明けられた時は目の前が真っ暗になっちゃって・・・。でもその時早坂さんが言ったの。」
「わたしは何にもやっていない。ただ、みんなが持ってる上手くなりたいって想いを後押ししただけ。やればやっただけ上手くなれる。壁にぶつかった時は、その壁を乗り越えた先に待っているのは今とは違う自分がいるっていうことを感じてもらっただけ。」
「後は小林先生が目標を決めて引っ張るだけだよ。みんなきっとついて来てくれるから自信持って・・・。て面と向かって言ったんだよ。わたし、その目を見て確認したんだ。この部活、もっと強くなれるって。」
「早坂さんにはみんなには黙っててって言われてたからその通りにしてたんだけど、転校先の高校と連絡取り合って、早坂さんのこと伝えておいたの。本人は自覚してないけど物凄い娘が行くよって。」
「多分、行った先の高校でも活躍したんだね。あの娘の顔に書いてある。しかも前にも増して、いう言葉に重みが加わってる・・・・。」
そしてその合奏練習が終了した時小林先生が部員の前に出て、部員のみんなに問いかけました。
「は〜い。みんな聞いて。今指導してくれた先輩はみんな薄々勘付いていると思うけど、その早坂さんが伝説の先輩です。コレぞマコトマジックです。」
「みんな知ってると思うけどこの先輩は実習生のマドカ先生の彼女で、そんな繋がりでここに来てもらっています。コレからの話になるんだけど、偶然にもこの早坂先輩の職場と寮はすぐ近くですので、そんな早坂さんに外部指導の先生お願いしようと思ってるけど、みんな良いかな?」
すると先程から何か言いたそうにしていた部長がそれに応えます。
「良いに決まってるじゃないですか。みんなもマコトマジックって言葉聞いたことあるとは思うけど、小林先生に早坂先生が加われば全国も夢ではないと思います。地方大会では常連になって、みんな訪問演奏なんかじゃ物足りなくなってます。」
「それにみんなも、もっともっとたくさんの人に演奏を聞いてもらいたいと思っています。」
「先生。・・・・・そろそろ行きましょう全国に。全国で私たちの演奏を聞いてもらいましょう。」
と、部長が「全国」という言葉を口にした途端に部員たちは騒然となりました。そして、あちこちで「普門館」と言う言葉が飛び交っています。当時は高校球児の目標が甲子園であったように、吹奏楽部の最終的な目標は普門館という時代でした。
今度はマコトがみんなの前に出てみんなに伝えます。
「わたしは伝説でもなんでもなくって、ただユーフォを吹くのが大好きなごく普通の女子高生でした。マコトマジックなんていう小林先生の冗談はさておいて、今後こうして皆さんと吹奏楽を通じてお付き合いさせていただければ良いなって今思っています。」
「わたしは以前、ここの部活で2年間部員としてお世話になっていましたが、家庭の事情で転校してしまいました。」
「その時、なんか部活のみんなを裏切るような感じがして、いつか恩返しができれば良いなって思っていたので、わたしが必要だって言われるとすごく嬉しいです。わたしもみんなと一緒に行きたいです。全国を目指して頑張りましょう。」
もう、そうなると部員一同大盛り上がりです。しかし、後々この事が私とマコトが一緒になるうえで悩みの種になろうだなんてこの時は微塵も思いませんでした。
この後の学校からの帰り道、ハチロクに小林先生とふたばを乗せ下宿の近くに出来たファミレスに送っていきました。どういう訳か小林先生とふたばが意気投合しており、女子のお話にオトコはおじゃまという雰囲気です。そして小林先生が足をかばいふたばに寄りかかるようにしてその二人はファミレスに消えていきました。
でも私は部活の終わりにマコトと夕食を一緒に食べる約束をしていたのでちょうどよかったと思っています。というのも、この後マコトと待ち合わせていたからです。
その後私は着ていたスーツを着替えるため下宿に寄って着替えました。そして、いつも夕食の後カップ麺を食べているような大食漢の後輩の部屋に寄って夕ご飯を食べてくれるよう頼んで、玄関まで来たときに下宿のおばさんに呼び止められました。
「日中、風谷さんの義父さんから電話があって、何か荷物取りに妹さんがこっちに向かったとか何とか言ってたんだけど・・・電話してやって。」
「ん?妹?のどかがこっちに向かってるって?のどかってまだ幼児だよな・・・姉さんならまだしも。」
私は何がどうなったかわからないままそこにあるピンク電話から義父に電話しましたが、何回コールしても不在です。そのとき「後でまた電話すればいいや」と思っただけで深くも考えませんでした。
そして今度はハチロクで女子寮までマコトを迎えに行ましたが、寮と高いブロック塀で隔てられた道路脇には当時ハイソカーとして流行っていたレパードやソアラなんかがずらっと停車しています。
私はそれまでマコトを迎えに来るたびこんな風景を見ていましたが、この春女子寮が会社の敷地に引っ越したこともあり、その車列が目立つようになっていました。しかも、何故か最近バブルの波に乗った人たちが良いクルマに乗り換えたりしているようです。
このクルマってそうです。バスガイドの彼女の出待ちのクルマ達です。
そんな、それをかき分けるように駐車している赤いハチロクはまさにガキのクルマを彷彿しています。私は今まで自分のハチロクに引け目を感じたことはありませんでしたが多数に無勢です。早くマコトが出てきてくれないかってことだけ考えて待っていました。
そしてちょっと待った後マコトが私のハチロクを見つけ、手を振りおさげ髪を左右にブルンブルン振りながら走ってきました。そして、そのハイソカーの運転席でなかなか姿を表さない彼女を、イライラしながら待っているカレシ達がマコトの姿を目で追っているのが分かります。
その後逃げるようにその場所からハチロクを発進させると、向かった先はいつかマコトと行ったことのある大盛りが評判の横綱食堂でした。お腹を空かせたマコトは花より団子。おしゃれなレストランよりも盛りのいい大衆食堂というタイプです。
その時のマコトは食欲旺盛で、以前生理の直前はたくさん食べちゃうと言っていたその日であることが伺えます。そして、大盛りのカツ丼を食べ終わる頃そのマコトが急に神妙な面持ちになりました。
「エンちゃん。わたしね。エンちゃんに話さなきゃならない事があって。ごめんなさいしなきゃなんないこともあるし、それにお礼も言いたい。エンちゃんの元カノのあおいさんにも・・・」と小声で囁きます。
そのマコトの表情からなんか深刻な話であることが感じ取れたました。そして、そんな話を大衆食堂でさせるわけに行かなかったので、とりあえず食堂を後にしてハチロクを夜景の綺麗な沖防波堤に走らせました。
「マコちゃん。沖防波堤でいい?。」
「うん。エンちゃんの行きたい所ならどこでも・・・。なんか、エンちゃんと前に1回行った事があったね。前に寮の先輩も沖防波堤からの夜景ってとっても綺麗だよ。って言ってたんだよ。」
「でも、ガラの悪いヤンキーもいっぱいいるから女の子だけで言っちゃダメだよって言われたところだけど、今日はエンちゃんと一緒だから大丈夫だね。」
そしてハチロクは港の工事用の道路をしばらく進み、沖防波堤の先端近くにあった大きな重機の脇に港の方を向けて停車しました。そこから見る港の灯りはとても綺麗で、港の近くにある大きな製鉄所の明かりも加わり幻想的です。
ハチロクを停車させてから二人でしばらくその夜景を眺めていました。
すると助手席のマコトが胸に秘めたことを話し始めました。声が上ずっていて、マコトの緊張が伝わってきます。そしてそれは私の想像を超えた次元の話でした。
「わたしね・・・、わたし、旭川で死んじゃおうとした事があったの・・・。」
私はある程度重い話になることは想定していましたが、まさかそこまで・・・という思いでした。そう打ち明けられた私はショックで思考停止状態となっています。
「そしていよいよって思った時、離れ離れになる時フェリー埠頭で言ったエンちゃんの言葉が頭をよぎったの。」
「死んじゃダメだよ。何があっても。死んじゃったら一緒になる夢が叶わなくなっちゃう。っていうエンちゃんの言葉。」
「もう、二度とあんな辛い想いはしたくない。好きな人が死んじゃうっていう絶望は二度と味わいたくないっていう言葉・・・。」
「その時思ったの。エンちゃんが彼女のあおいさんを失ったうえにわたしまでいなくなっちゃったら、エンちゃんどうなっちゃうんだろうって。」
「そしてわたしね。その言葉で思いとどまったの・・・。だから、エンちゃんとエンちゃんの元カノのあおいさんは、今となっては命の恩人・・・。その2人がいなかったら、わたし・・・もう、ここにいなかったんだと思うんだ・・・。」
この時私の頭の中は思考停止しながらも猛烈に混乱していました。でも、なんかその話の中で物凄く引っかかるものがありました。それは、そうなる前に「マコトに何があったか」です。
私はやっとの事で「マコちゃん。何があったの?マコちゃんの身に何があってもマコちゃんはマコちゃんだし、マコちゃんのことだったらどんなことだって僕は受け止める自信だけはあるから・・・」と伝えました。
「わたしね。もう、エンちゃんに命救ってもらったお礼言えたから、もうエンちゃんに捨てられちゃってもいいの。話さなきゃ分かんなかったかもしれないけど、そんなのエンちゃんを裏切ることになるからそんなのもできないし・・・。」
「エンちゃん。わたし汚れちゃったの。エンちゃんだけの綺麗なカラダじゃなくなっちゃったの・・・。エンちゃんゴメン。」
「わたし、旭川で・・・・・・犯・・・され・・・ちゃったの・・・。」
「しかも、中学1年生の義理の弟に・・・。知らないうちに睡眠薬飲まされて・・・・。」
「エンちゃん以外の遺伝子・・・・わたしのカラダの奥底に入っちゃったの。」
そこまで聞いた私は頭の中が更に混乱して何も言えません。私は知っています。レイプというのは女性の人格を無視してカラダを弄ぶ卑劣な行為です。
私は高校生の時、レイプされた後廃人のようになってしまった姉を見ています。姉の場合は同じオトコに2度調教まがいなことをされてしまって人格崩壊に陥り、立ち直るのに相当な時間を要していました。
しかし、ここにいるマコトそこまで酷くはないものの、私の想像を絶するような辛い思いをしているはずです。しかし私のこと想いながら自力で立ち直って、再び私の前に戻って来てくれました。
たとえマコトの身にどんなことが起きようとマコトはマコトです。私がそんなマコトを捨ててしまうなんてことは微塵もありません。
「マコちゃん。僕はここにマコちゃんがいてくれるだけでいい。そばにいてくれるだけでいい。マコちゃんが僕のことを想ってくれている限り、僕はマコちゃんを離さない。」
「エンちゃん。やっぱりごめん。せっかくそこまで言ってくれてるのに・・・でもわたし、そばにいるだけなんてだなんて・・・やっぱりイヤ。わたし・・・わたしね。いつまでもエンちゃんとおんなじもの見て、いつまでもおんなじことやって感じて・・・エンちゃんといつまでも一緒にいっぱいいろんなことしたいの。」
「それと、楽しいことを二人で楽しんでその楽しさを2倍にしたり、苦しいことを二人で悩んだり助け合ったりしてその苦しみを半分にしたりしたいの。・・・・。」
もう、ここまでマコトに言わせてしまったら腹を決める以外に何もありません。
「マコちゃん・・・・。まだマコちゃんを幸せにする自信はないけど、幸せにしたいって、二人で幸せになりたいって気持ちだけは、世界中のどんな輩よりもあるって自信はある。」
「だから・・・・・一緒になろう。結婚しよう。家族になろう。」
「今すぐは無理だけど。ちょっと待たせちゃうけど。マコちゃんの名前と僕の名前を役所へ届ける紙に並べて書きたい。そして一緒に届出したい・・・。婚姻届ってっていう紙を。」
すると今まで俯いていたマコトがこちらを向くと、その大きな瞳から涙がボロボロ滝のように流れ落ちていました。
「わたし、すごく嬉しい・・・そう言ってもらえるだけでも。エンちゃんのこと信じてはいたけど凄く不安だったの。でも、あんな辛い経験しちゃったから、もうそれ以上はないって自分に言い聞かせていつか打ち明けようとしてたんだけど・・・。」
「言おうとするとどうもいつも怖気付いちゃって・・・。でも、本当にごめんなさい。本当なら、綺麗なカラダで戻ってきたかった・・・ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい。」
と言いがら、マコトは両手で顔を押さえて泣いています。
「マコちゃん。そんなことはない。マコちゃんは自分の身に起きてしまった不幸なことを受け入れて立ち直ってここまで来ている。僕は知ってる。立ち直るまでにどれだけマコちゃんが大変な思いをしたかって。」
「僕の従姉妹で看護婦していた芽衣子姉さんって人が言ってたんだ。過去を受け入れないと先には進めないって。それって僕があおいを失って自暴自棄になって事故を起こした後、魂が抜けちゃった時に僕に言った言葉。」
「マコちゃん。人がそれを受け入れるのにどれだけ辛い思いをするかも知ってる。僕の姉さんはレイプされちゃった後、廃人のようになって失踪しちゃったんだ。それでも日本一周の電車旅をしながら時間をかけてそれを受け入れたんだ。それくらい時間がかかることもあるっても知ってる。」
すると、マコトは涙でグショグショになっている顔で私を見つめました。
「エンちゃん。わたし凄く嬉しい。」
と言いながらマコトが涙を拭くと、靴を脱いでその小さなカラダで助手席に正座しました。
そして「こんなふつつかものですが、末永くお願いします。」と言うと三つ指をついて頭を下げました。
この時私はハンドルが邪魔して身動きが取れないままそれに応えます。
「こちらこそよろしくお願いします。」
するとマコトの表情が明るくなるのが分かりました。
「わたしたち結婚しちゃうんだね。でも、順番的には婚約ってヤツが先だよね?」
「マコちゃん。僕さ、順番守る自信ないんだけど・・・。織田に続いちゃダメかな?」
「いつ追いちゃうの?」
「今から・・・」
そう言いながら私は座っているシートを一番後ろまでスライドさせ、マコトを抱き寄せました。
するとマコトが赤くなって「今からって、ここで?」と震えた声で尋ねました。
そこで私が近くのそれらしいクルマを指差し、「あの揺れてるクルマもそうみたいだよ。」と答えると、腕の中のマコトが震えながら答えます。
「いいよ・・・エンちゃんがそうしたいなら・・・」
それを聞いた私はますますマコトのことが愛おしく感じています。
「あっ、マコちゃんコメン。驚かせちゃって。流石にそれはないから安心して・・・」
「やっぱり北海道に行ってきちんと挨拶したい。それでいいかな?」
「うん。そうしよう。そうしてもらえるとわたし嬉しい・・・。そして次はわたしがエンちゃんのウチに行って挨拶する番。」
「それは、試験の結果が分かってからでいいかな?」
「わたしはそれで構わないよ。エンちゃん。わたしね。ちょっとやきもち焼きで・・・結婚したら浮気は許さないよ。結婚したらね。」
「そうだね。結婚したら完全に浮気ってことになっちゃうもんね。結婚したら・・・」
なぜかこの時、前に小林先生が言った言葉が頭をよぎりました。
「生徒には手を出しちゃダメ。生徒には・・・・」
という件です。
もしかするとマコトは私に執行猶予を与えてくれたのかもしれません。
私は最近思うことがありました。それは自分の「アッチ」って物凄くだらしないって事です。もちろん「アッチ」というのはアレことです。
マコトを待っていた1年間はさすがにありませんでしたが、ここ最近夏帆との1件を皮切りにふたば、舞衣さんと立て続けにしちゃっています。でも、本当の彼女であるマコトとは未だしていませんが・・・・。
この後、1年3ヶ月ぶりの熱いキスをしました。そして、これからクルマ以外のどこかゆっくりできる場所で・・・とも思いましたが、どう考えても女子寮の門限に間に合う時間がなく、泣く泣く門限前にマコトを女子寮まで送り届けハチロクを下宿に向け走らせました。
すると、下宿の駐車場で私がいつもハチロクを停めている場所に、ブルドックと呼ばれているホンダのシティーターボというクルマが停まっています。
私はハチロクを駐車場の隅っこの砂利の上に停めるとそのブルドックを舐めるように、上から下から見て回りました。
そのクルマは、通常ボディー両サイドに大きく「TURBOⅡ」と書かれていますが、ここにあるクルマにはソレを含めステッカー類が全く貼ってありません。当時の走り屋風のクルマには必ず何かしらのステッカーが貼ってありましたがこのクルマにはそれを含め全く装飾といったものがありません。
その代わり、ワイドタイヤとブレーキ冷却用のエアロカバーに大きくVOLKRACINGと大きく描かれたホイールが物凄い存在感を放っています。しかもそれがブレーキダストで汚れていて、その汚れ具合からよほど高速を飛ばしてきたことが伺えます。また後ろに回り込んでマフラーを見ると、その出口なんかは拳が余裕で入るくらいの大口径です。
そして、最後にそのクルマのナンバーを見た瞬間これは私の姉である麻美子姉さんのものであることが分かりました。そこで、今日の夕方下宿のおばさんがそれらしいことを言っていたのを思いだしました。
「しかし、なんで急に姉さんがこんなところまで・・・・?」
なんて疑問に思いながら下宿の玄関の引き戸を引いて入ろうとしたとき、玄関脇の食堂から複数の女性の話し声が聞こえてきました。
そして「あっ、お姉さん。まーくんが帰ってきたよ。」と言ったのは何故かほろ酔いの小林先生です。
そして、私は食堂に入ると3人が座っていた食堂のテーブルの隅っこに座り、改めて3人を見てみました。すると、3人はなぜかスッピンで、姉さんと小林先生なんかは眉がすごく薄くほとんど「マロ」です。でも、唯一ふたばだけはいつもと変わりませんでした。普段から薄化粧のようです。
そしてそのほとんどマロの小林先生が驚いた様子で話し始めました。
「まーくん。すごい偶然だね。麻美ちゃんってまーくんの姉さんだったんだね。実習生の名簿見たとき、出身高校が実家の近くだったんでまさかとは思ったけど、そのまさかとは・・・」
すると、こちらもほとんどマロの麻美子姉さんが「良ちゃんが、こっちの高校で舞衣姉さんが先生やってるから会えるといいねなんて言ってたんだけど、まさかまーくんが実習でお世話になっている高校の先生だったとは・・・」と、ハナシを続けます。
私は全くそのハナシについて行けません。
「姉さん。ちょっと待って。その良ちゃんとか舞衣姉さんとか、その関係性が全く掴めないんだけど・・・」
すると、今度は普段とほとんど変わらないふたばが「アンタって、本当に状況掴めないオトコだね。つまり・・・、アンタの麻美子姉さんのカレシが良ちゃんで、そのお姉さんが小林先生ってこと・・・。分かった?」
そう説明された私はなんとなくしかも理解できません。あと、それ以上になんで3人がここに集合しているかってことが全く分かりません。
「うん。ふたば。それはなんとなく分かった・・・。世の中狭いってことだけは・・・。でも、なんで3人一緒に・・・」
すると、ビール片手に麻美子姉さんが説明を始めます。
「それはわたしが豊浜下宿が分かんなくってウロウロしてて、そんなとき二人並んで歩いている女の人見つけて道聞こうとしたらその人が舞衣さんだったってこと。もう、ビックリしちゃったのなんのって・・・。」
すると、今、舞衣さんと名指しされた小林先生がハナシに割り込んで来ました。
「なんかすごい太いタイヤ履かせて、ズ太い音立ててヤバそうなブルドッグがウロウロしてて私たちの隣に止まったの。この時はどんなヤンキーがナンパしてきたのかって思ったけど、窓開けて声かけてきたのが女の人なんだもん。もう、驚き。あっ、その後送ってもらってありがとうね。」
「えっ?わたしのクルマってそんなふうに見えるんですか?」
そう驚く麻美子姉さんの笑顔は、本当に久しぶりに見た明るい表情でした。そして、「こんなカラダじゃ、もう結婚なんて・・・。」などと言っていた姉さんにカレシが出来ていたとは凄い驚きです。そして、私の心のどこかにいつも引っかかっていた何かが溶けて行くような気がしてきました。
そして麻美子姉さんはハナシを続けます。
「そして、さっき3人で銭湯行ってきたんだけど、3人揃って毛のない集団だし、2人は胸にはタオルで隠し切れないほどアザがいっぱいついているし・・・。でも、3人揃えばへっちゃらだったよね〜。」なんて麻美子姉さんが言って、それに釣られるようにみんなで笑っていましたが、私をチラッと見たふたばと小林先生の目は笑ってはいませんでした。
そして、「ホレ、マーくん。ビール切れた。買ってきて〜。ついでにつまみも。」なんて麻美子姉さんが言っています。すでに出来上がっているようです。
その後私はシャワー浴び、その後再びしばらく4人で雑談していました。すると、下宿の1号室脇のピンク電話のベルが鳴りました。いつもだったら電話に出る私の部屋の隣の住人は留守のようです。
仕方なく私が電話に出ると、その電話の主は先ほど寮まで送って行ったばかりのマコトでした。
「エンちゃん。こんな遅くにごめんね。なんかエンちゃんの高校で大変なことが起きちゃってたみたいで・・・。エンちゃんも守秘義務あるからしゃべれないとは思うけど、その大変なことになっちゃってる1年生って、同期の洋子ちゃんの妹なんだって。」
「なんか、その後オトコの人が怖くなっちゃって、お父さんが近づいただけでカラダが震えちゃうくらいの男性恐怖症になっちゃったみたいなの。でも、勉強遅れるのが嫌だから学校には行きたいって言っているんだって。その娘、学校の先生になるためにわざわざ遠くのコッチの高校に入って、〇〇大の教育学部目指しているらしいの。」
今、マコトが口にした〇〇大と言うのは奇しくもふたばが通ってる大学でした。と言うことは、その優子ちゃんはふたばと同じ道に進もうとしていることになります。
しかも、そのふたばは小学生の時、当時の下宿生にお城に連れて行かれて性的イタズラを受け、その幼さから具体的に何をされたかを理解しないままオトコという生き物の存在自体を否定してしまっていました。そんな最中ふたばが起こしたのが、伝説的事件の「サッカー部長の睾丸踏み潰し事件」でした。
私はそんなふたばとそのお城で処女喪失をやり直すことをした時からの付き合いです。何か合い通じるものがあるような感じを受けましたが気のせいでしょうか?
そんな事情なんて全く知らないマコトは話を続けます。
「わたしの時もそうだったんだけど、学校に出回ってる噂をそのままにしておくと、優子ちゃん学校に居れなくなっちゃう。学校に早く公式見解出してもらうのはもちろんなんだけど、何もありませんでした。なんて見解だとますます怪しまれるから、半分は本当のことを織り交ぜたことにして欲しいの。」
「わたしの時は産婦人科に入院してて怪しまれたから、お母さんが病院の先生と相談して卵巣の病気で入院してるってしてもらったの。これですごく助かった・・・。そうじゃないと、学校に戻った時セカンドレイプになっちゃっうかもしれないから・・・。」
私はこの時、前にふたばも同じ「セカンドレイプ」と言うことを言っていたのを思い出しました。この聞き慣れない言葉の意味はなんとなく分かっていましたが、どっちにしろ早く手を打たないといけないことだけは理解できました。
するとマコトは予想外のことを言い出しました。
「チョット聞いて欲しいの。これって、わたしが自分のカレシにお願いすることじゃないってことだけは重々知ってる。でも、お願いしたいの。エンちゃんに・・・優子ちゃんをきちんと抱いて欲しいの。」
「えっ?ソレってどういう?」
「ごめんなさい。最後まで聞いて・・・。エンちゃん。さっき夜景見ながらわたしに、起こったことをきちんと受け入れないと先には進めないって。立ち直れないって言ったよね。」
「でも、優子ちゃんは自分に何が起きたのか理解できてないみたいなの。それじゃ、受け入れようにも受け入れられないよね。それって先にも進めないし、立ち直れないってことだよね。」
「優子ちゃんはエンちゃんのこと好きだって言うことだから、嫌な思い出をエンちゃんとのことでいい思い出に上書きして欲しいの。それで優子ちゃんが望むんだったら彼女にしちゃってもいい。」
「わたしはいつまででも待つから。最後にエンちゃんと一緒になるのはわたしだから。わたしは大丈夫・・・・。今は優子ちゃんを救って欲しいの・・・。」
と言うところまで話したマコトは、涙声になっていました。多分、自分が経験した辛い過去とその優子ちゃんを重ねているのだと思います。
そして最後に、「わたし、明日から急に3泊の乗務に割り当てられちゃって。生理痛のひどい同期の代打なんだけど、それって夏帆先輩とのペアなんだけど・・・、今回、カレシできたばっかりの夏帆先輩が生理遅れてて落ち込んでるから、わたしがサポートしなきゃなんないの。変なこと頼んじゃって、エンちゃんごめんね。」
と言う力のない声を最後に電話が切れました。
私は電話の最後に「うん、分かった。小林先生とも相談して頑張ってみるよ。」と応えたまでは良かったのですが、どこまで相談して良いものなのか見当もつきません。
私は混乱していました。また、最後にマコトは何か夏帆についても何か言っていましたが、私の耳には入りませんでした。
その昔姉さんがレイプされた時は、婦人警官である姉さんが不倫相手を家に招き入れた時に弟とその不倫相手が鉢合わせになって、逆上した弟がその不倫相手に重傷を負わせたというような噂が流れていました。
結局警察から出された、強盗に押し入られて脅されていた時に帰宅した弟と鉢合わせになり、もみ合いのうえ強盗犯が重傷を負ったと言う見解が遅かったため、先行して面白おかしく脚色された噂がまことしやかに流れていました。
その後しばらく従姉妹の芽衣子姉さんのところにお世話になっていたため姿が見えなかったことから、世間の噂では責任を感じた姉さんが弟を道連れに投身自殺したってことになっていました。否定しても無駄なのが分かってたので放っておきましたが、人の噂なんてそんなもんです。ただ、タチが悪いのは、噂がひとり歩きを始めると多くの人たちがそれを真実だと思い込んでしまう点です。
しかし、今回は相手が学校の生徒です。どこまで相談するかはさておいて、やはり、一義的に担任である小林先生に相談するのが最善かと思いました。
そして、先ほどまで雑談をしていた食堂に戻ると、その小林先生は上機嫌でふたばと楽しそうに話をしています。今相談しても無駄と思う一方、姉さんはその側で酔い潰れています。
結局、なぜその姉さんが急にやって来たのか肝心なことを最後まで聞き出すこともできませんでした。やはり、長距離の運転で疲れていたようです。
「下宿は女人禁制だけど親族は別だから・・・」というふたばの言葉でお開きになった後、麻美子姉さんを自室へ担ぎ込みました。そして着ていた何かの制服みたいな服を脱がせて上下スウェット姿にしてベットに寝かせました。
どうやら姉さんは、職場からまっすぐこちらに向かって来たような感じです。
そして着替えさせるときに見たのは、久しぶりに見る姉さんの裸体です。風呂上がりでブラジャーはしていませんでした。
それに姉さんを着替えさせるなんてことは、姉さんがレイプされてしまった後、付きっきりで面倒を見ていたとき以来です。それは私が高校3年生の時のことです。
そして私がコタツをどかして、長座布団にごろ寝しようとしたとき麻美子姉さんが私に囁きました。
「マーくん。一緒に・・・・」
姉さんと逢うのは久しぶりです。そんな私も、なんか麻美子姉さんとくっついていたいような気がしていました。
「うん。それじゃ・・・」
と言いながら、蛍光灯からぶら下がっている紐を引いて電気を消しました。
すると、カーテンから差し込む街路灯の灯で麻美子姉さんの顔が白く浮き出ています。
私は肌がけ布団をめくって姉さんの隣に潜り込みました。すると、その布団な中からムワっと出てきた空気に混じって、石鹸の香りとどこか懐かしい姉さんの匂いがしました。
そして私が肘をついた当たりでそのベットがギシッと軋みます。
すると姉さんが私の右腕に絡みつくように体を寄せて、右肩に顎を乗せました。私の右腕に姉さんの体温と心臓の鼓動が伝わってきます。
「まーくん。ちょっと相談したいことかあって・・・」
この時、以前起こしたバイク事故の後、私を看病していた当時看護婦だった従姉妹の芽衣子姉さんから同じような状況で相談を持ちかけられたことを思い出しました。確かそれは見合い相手と結婚しようと考えているけど、その相手が白衣フェチの変態だったと言うことでした。
私は、まさか姉さんのカレシが変態ってことはないだろうと思いつつ話を聞きます。
「まーくん。お姉ちゃんね・・・今、迷ってるの。さっきハナシしていた良ちゃんって人にプロポーズされてて・・・・。その良ちゃんって姉さんの同級生なの。」
「でも、まーくんも知ってるようにお姉ちゃんの・・・わたしのカラダって悔しいけどアイツにいろんなこと教え込まれちゃってて・・・。多分、結婚しても普通の夫婦生活はできないと思うんだ・・・。」
その「アイツ」というのはもちろん姉さんをレイプした犯人のことです。そのオトコは、母さんの経営する建設会社の元従業員でしたが、会社の金を横領したため会社を辞めてもらっていました。
ただ、家族もあることだからと言って依願退職扱いにしたうえ、きちんと退職金も出していたのですがなぜか逆恨みを買っていて、たまたま交通違反の切符を切ったときに出会った麻美子姉さんに矛先を向けて、レイプしたうえ調教するといった形で復讐を果たしていました。
「それで、姉さんこんなだからさ。その良ちゃんに諦めてもらおうとして全部打ち明けたの。でも、良ちゃんはそれでもいいって。麻美ちゃんに何があったとしても、それも全部ひっくるめて好きだって・・・。高校生の頃から好きだったった麻美ちゃんがそばにいてくれるだけで良いって言うの。」
「わたしも高校の時、なんかまーくんに雰囲気が似ていて気になってはいたんだけど、当時は剣道に夢中でそれどころじゃなかったの。でも、告白されて凄く嬉しかった・・・。」
「でも・・・付き合ってるうちはそれでもいいかもしれないけど、わたしキズモノだよ。しかもそれで堕胎(おろ)しちゃってるオンナだよ。結婚ともなるとね・・・相手の家に入るってことだよ・・・慎重にもなるよ。」
「良ちゃんってさ、板金屋の後継ぎなの。姉さんね、前にあのクルマぶつけちゃったことがあって。左の後ろのフェンダーのあのブリスターの所。そして義父さんに相談したら小林車体っていうところを紹介されたの。なんか、まーくんが乗ってるハチロクの車体をスポット増し(溶接による車体補強)したのが小林車体で、腕は確かだからって言われて・・・、そこ訪ねてみたの。」
「そうしたら、高校の時の時一緒に剣道やってた良ちゃんの家だっていうんだもん。道着着てる良ちゃんのイメージしかなかったからビックリしちゃって。」
「しかも、お父さんのやってる板金工場の脇の畑だったところに自分の整備工場立ち上げたっていうの。表向きは一般整備だけど実は改造もやるっていうヤツ。そうしたら最強よね、車体も造れる改造もできるって・・・。」
「それでそれが評判になって、なんか最近カー雑誌の取材も受けるようになって・・・・。」
「あっ、そうそう。今日ここに来たのは、まーくんの乗ってるハチロク借りに来たの。その小林車体を取材している雑誌の姉妹誌で女子向け走り屋の雑誌ってのがあるんだけど、その雑誌で理央ちゃんのクルマをホワイトボディー(真っ新な車体)から作り直すって企画になって。」
「それは、小林車体の取材の中で過去に造った(補強した)車体の中にハチロクがあって、そのハチロクの経緯を説明するうちにそのエンジンを組んだのがカーショップの一人娘だってことが話題になって。」
「そこから企画が始まって、小林車体の工場で理央ちゃんの車が丸裸になって、車体の補強からやり始めたんだけど溶接作業ばかりで作業が地味でしょ。最終的には、今流行りの車検対応のパーツ使っていろいろやるみたいなんだけど・・・」
「なんか、そんな時義父さんがまたどこからかエンジン調達してきて・・・。ソレってなんかハチロクと同じ4AGみたいなんだけど、今度のヤツはヤマハがバイク用に開発したものを応用した20バルブヘッドって言ってた。」
「それに、なんか分かんないけどそれって次世代4AGだっても言ってたんだけど、次に出るトイチってクルマなんかに載るヤツっだって。最初はソレも取材してもらうってことにしたかったんだけど、まだ試験中のエンジンだからしばらく伏せておいて取材の後に載せ替えすることになって・・・・義父さん残念そうだった。」
「それでその地味な記事が続いて溶接ばかりで読者が飽きちゃうって時、その理央ちゃんが前に組んだ4AGがすごいって話題になって・・・それで、今度はそのハチロクを取材したいってことになって・・・。シャーシダイナモなんとかって言うのも使って馬力までチェックするって。」
「だからそんなこんなで、忙しい理央ちゃんの代わりにわたしがハチロク借りに来たの。」
「あのハチロク運転するの何年ぶりかしら・・・アレってわたしが新車で買ったヤツだよね。」
「姉さんそうだよ。車検証の名義も姉さんのままだから今でも姉さんの所有物。ソレで僕ね、姉さんに言われた通りアレから大事に乗ってたんだよ。でも、その後エンジン載せ替えちゃったりしてるけど・・・そのことが知らないところで凄いことになってたんだね。」
「でもあのハチロク、エンジンも凄いけどセッティングしたのは義父さんだよ。しかもその他も何かと手を入れて、今じゃぱっと見ノーマルだけど中身は別物・・・。アクセル踏み込んだら姉さん失神しちゃうかも・・・。」
「ねえ、まーくん知ってる?わたしのブルドッグも凄いよ。スクランブルブーストかけたら、まーくんちびっちゃうかも・・・よくてムチウチかな?。義父さんは自分のレガシイは家族の車だからって改造控えていて、ターボ車改造するのはこれが初めてって言って悪ノリしちゃって・・・わたしにブルドッグ勧めたのはこれだったのね。」
「乗ると分かるけど、あの車に履かせてる205幅のナナイチ(ポテンザRE71というハイグリップタイヤ)は伊達じゃないって分かるから。」
「ん?さっき言ってたスクランブルなんとかって?」
「あっ、スクランブルブーストのこと?それって、加速の時アクセル全開にすると10秒間だけフルブーストになるっていう魔法みたいな機能だよ。後でブースト計見てもらうと分かるけど、その時ブースト計の針が1.8キロまで振れるの。」
「あと、その時のトルクステアがすごいから覚悟して・・・」
「姉さん・・・・。ヒト変わった?姉さんってこんな話する人じゃなかったよね。警察官だったときは改造ご法度じゃなかったっけ?」
「まーくん。それは昔のハ・ナ・シ。あなたの姉さんは今じゃただの人だよ。でも、交通安全協会に勤めてはいるけどね。でも、あのブルドッグ、元の職場の北署の駐車場に止めてるからちょっとは気が引けてはいるの。いくら警察と安協の建物が別と言ってもね。」
「あっ、姉さん。話の途中だけど僕からも伝えたいことがあって。偶然だけど、僕さ・・・・一緒になりたい彼女がいて、そのうちウチに連れて行くから、その時正式に紹介するね。」
「えっ?まーくん。その彼女何歳?まさか年上?」
「年上じゃなくって・・・。彼女は誕生日が秋だったからまだ18かな?」
「まーくんちょっと、そんな焦んなくたって・・・。いくらヤりたいからって、急ぎすぎだって。舞衣さんやふたばさんじゃないんだから・・・。銭湯であんなキスマーク見せられたら二人のカレシがどれだけ情熱的かって分かるけど、見てるコッチが恥ずかしかったよ。まっ、それくらいヤりたいってのは分かるけど・・・。」
「姉さん。ちょっと聞いて欲しいんだ。僕の彼女はマコちゃんっていうんだけど、そのマコちゃんとはマコちゃんの家庭の事情で去年1年間離れ離れになってたんだけど、その間にそのマコちゃんが・・・・・」
「まーくん。そのマコちゃんがどうしたのよ。」
「マコちゃんが犯されちゃったんだ。それで命絶とうとしたんだって。でも、頑張って立ち直って僕のとことに戻ってきてくれた・・・・。もう、そうなったら今度はそのマコちゃんを守ってあげる。安心させてあげるのは僕の使命じゃないかって・・・。おかしいかな・・・?」
そこまで言ったところで姉さんが起き上がりました。
「まーくん。そのマコちゃんのこと守ってあげなよ。姉さん応援する。」
そう言われた私も起き上がり、姉さんの手を取りました。
「姉さん・・・。その迷ってるプローポーズ受けなよ。その良ちゃんの気持ち、今の僕にはすごく分かる気がするんだ。多分、すごく悩んだうえでのことだと思うよ。でも勘違いしないで欲しいんだ。決して姉さんのこと憐んでそうしているってことではないってことを。」
「多分、一生分の辛い思いをしちゃった姉さんを放っておけなくなっただけ。それを感じ取ったオトコの本能が姉さんを幸せにしたいって思ってるだけ・・・・。それだけ姉さんのこと好きだってこと。」
「まーくん。でもね・・・、姉さんさ。その良ちゃんとまだセックスってモノしてないの・・・。前にそういう流れになった時があったんだけど、いくら触られても優しくされてもカラダが反応しないの。でも、ココロは感じてるんだよ。ムラムラもするの。でも、感じないし濡れないの・・・。」
「それでね・・・、姉さんね。その良ちゃんのオトコのプライドってヤツ・・・傷つけちゃったの。」
「でも、それでもいいから結婚したいって言うんだ・・・。セックスだけが夫婦じゃないって言うんだよ。とっても嬉しいけど、セックスっていう夫婦の営みってやつは結婚生活につきものでしょ。子供も作んなきゃなんないし・・・・。良ちゃんいい人だから余計に傷つけたくなくって・・・・」
「ねえ、まーくん。ひとつ聞いていい?さっき言った姉さんのことが好きっていう件のことなんだけど・・・」
「ソレって良ちゃんがわたしに対して思ってることを、まーくんが代弁してるってこと?」
「まーくん自身がわたしに言ってること?」
「それとも、まーくんがそのマコちゃんに対して思ってること?」
姉さんは、聞きたいことを矢継ぎ早に聞いてきました。でも、私の答えは決まっています。
「姉さん。当たり前じゃん。ソレはもちろん・・・・・・・・。え?」
そこまで答えた私は、その言葉を口にしながらいろんな疑問が湧いて出てきたのを感じ取っています。
それは、姉さんのカレシと自分の想いを重ねて姉さんに言った言葉なのか、また、姉さんとマコトを重ねて自分の想いを伝えた言葉なのか、もう分からなくなってきました。
でも、その言葉に嘘偽りはないという確証だけはあります。でも、自分が誰に対して想ってのことかは、正直自分でも本当のことは分かりません。
するとそれを察したのか、姉さんがちょっと微笑みました。
「ほら。分かんなくなっちゃった?」
そして姉さんは、今日やってきた経緯を話し始めました。
「今日ね、実はハチロクを取りに来るのは誰でもよかったの。母さんでも、義父さんでも、理央ちゃんのところの店の人でも・・・。」
「でも、母さんがね。まーくんにいろんな相談したいことあるんでしょ。ハナシすればスッキリするかもよ。って言ってくれたの。それでわたしが来たってこと。」
「母さん知ってたのね。わたしが昔からまーくんのこと好きだったってこと。でも、そんなまーくんにあんな犯されちゃったところ見られちゃって・・・。」
「でも、その後まーくんが必死に看病してくれたのすごく嬉しかった。そしてその後まーくんとアレしちゃったでしょ。それもすごく嬉しかった・・・・」
「でもそれって、良くても悪くても誰が見てもやっちゃいけない近親相姦ってこと。嬉しかったけど後悔もしたんだ・・・。」
「そしたら、またアイツが現れて・・・。姉さんバカだから、あの日学校に行ったはずのまーくんがなんか忘れ物かなんかして戻ってきたと思って不用意に玄関開けちゃったの。そしたら押し入られて・・・。」
「その後はまーくんに発見されたあんな感じ。もう、思い出すのも嫌なんだけど、時々思うんだ・・・。」
姉さんはそこまで一気に喋ると俯いて黙ってしまいました。そして、私を見つめ直して深呼吸したかと思うと再びハナシを始めました。
「調教ってこういうことなんだなって・・・・。アイツはお前を調教してやるって、いろんなことしたり、させられたりしたんだけど、確実にわたしのカラダに一つ一つ刻むようにそういうことを教え込んだの。こっちは完全に拒否してるのに・・・、でも、悔しいけどカラダがそういうのを覚えちゃうの。」
「姉さんね。良ちゃんとセックスしようとしてダメになっちゃた時思ったの。わたし普通のセックスができないオンナになっちゃてるって。なんか普通じゃないことじゃないとカラダが反応しない変態になっちゃてるって。」
「前に看護助手やってた時、一度まーくんとしちゃったでしょ?その時姉さんすごく感じちゃったの。でも、それって姉さんが白衣の看護婦でまーくんが患者。しかも近親相姦でしょ。どう見ても異常よね。そのやっちゃいけないっていう異常さに興奮しちゃったのよね。」
「まーくん・・・。まーくんの麻美子姉さんさんはもうダメです。普通に生きていけないオンナに成り下がっちゃったみたいです。うん、決めた。一生独身貫くよ。」
姉さんは、何かが吹っ切れたように落胆の表情をしています。そこで、私も舞衣さんという年上の女性とお酒を呑む中で、なんかその舞衣さんの中に麻美子姉さんの雰囲気を感じ取っていたのかも知れなかったと思い、小さい頃から絶対に打ち明けてはいけないと自分の中に仕舞い込んでいたことを話そうと決心しました。
「姉さん。なんか虫の知らせっていうか、昨日の夜姉さんの夢見たんだ。その中で僕が姉さんを抱きしめて、姉さんが望むんだったら一生姉さんと一緒にいるって泣いてるんだよ。そこで思い出したんだ・・・・。」
「僕も姉さんのことが好きだったって。」
「多分、物心ついた頃から多分好きだったと思う。従姉妹たちと一緒にお風呂入ってみんなから僕がイタズラされてた時もちょっとも嫌じゃなかった。姉さんがいたから。」
「それから、イタズラされているうちにそれが気持ちいいってこと覚えちゃって・・・・。恥ずかしいけど全部言うね。その後いつも姉さんのハダカ思い浮かべてたんだ。」
「みんなでお風呂入った後なんか特に。姉さんにしてもらったらどんなに気持ちいいか。姉さんとエッチなことしたらどんなに気持ちいいか・・・。そんなことばっかり考えてた。」
「そして、自分でも気が付いていたんだ・・・・。姉さんが治療するまで気にしてたワキガの匂いもすごく好きだったって・・・・。結局僕って変態なんだよ。」
すると、それを黙って聞いていた姉さんが意外な告白をし始めはした。
「まーくん。ごめんなさい。姉さんも同じ。姉さんも実は性欲っていうヤツが昔から強くって、小学校の低学年には一人でするの覚えちゃって・・・・。それで・・・ごめんね。まーくんが多分小学校5〜6年の頃だったと思うんだけど・・・」
「母さんが忙しくって、代わりに姉さんが家の掃除してたとき、まーくんの部屋のゴミ箱に捨てられてたティッシュから栗の花の匂いがするのに気が付いたの。今度はそれを部屋に持ち帰って匂い嗅ぎながらするようになっちゃって・・・。」
「カレシもいないのになんでソレが精子の匂いだって分かったかその時すごい不思議だったの。味だって知ってるような気がした・・・。」
「ただ、その決していい匂いじゃないその生臭い匂いをいつまでも嗅いでいたくって・・・しかも、それを嗅ぐとなんかムラムラしちゃって・・・。」
「それって、姉さんが高校生のころだと思う。姉さんって、そもそも変態なのね・・・。」
「それで、だんだんまーくんのことがただの弟からオトコに見えてきちゃって・・・。それに、大好きだった父さんの生き写しみたいにそっくりで・・・・。」
私も、姉さんに謝らなければならない秘事がありました。
「姉さんこっちこそごめん。僕も姉さんの下着でしたことある・・・」
そこまでお互い打ち明けあってお互い驚いていました。私は姉さんの下着を時々オカズにしていたので、そのことに関してものすごく罪悪感がありました。
そして姉さんは私の目をじっと見て、何度か瞬きをしました。
「何?お互いそんなことしてたってこと?それって驚愕の事実だよね・・。でも、それって男の子がやりがちだよね。当時、姉さんの友達はお兄さんに下着使われてたって言ってたけど・・・・。」
「さすがに姉さんさ、女子がそれじゃいけないって思って、その頃自分に何か枷(かせ)をつけないとダメになっちゃうと思って警察官を目指すようになったんだよ。そこから部活以外の大会にも出るような本格的な剣道をやり始めたの。」
「するとその剣道にのめり込んじゃうっていうか、要は興味の方向が変わったのね。それからはどうやれば強くなれるかったことばっかり考えることが多くなって、それからやっと一人ですることは少なくなったんだけど・・・。やっぱりね、一緒にお風呂入った時、どうしてもまーくんのアレ、気になっちゃって見ちゃうのね。」
「小さい頃はシシトウみたいだったまーくんのアレが、だんだん大きくなってきて皮なんか剥けてきちゃって、何かオトコらしくなってきたのが分かって、そんなの見ちゃうとその後はやっぱり一人でしちゃうの・・・・。」
「まーくんのアレって、本当に死んだ父さんそっくり。まーくんはあまり覚えていないかもしれないけど、小さい頃仕事から滅多に早く帰らない父さんが早く帰ってきた時は決まって家族みんなでお風呂入ってたの。それで姉さんね、父さんにカラダ洗ってもらうのが楽しみだった・・・。」
「まーくんが生まれる前だったと思うの。父さんとたまに二人っきりでお風呂入る時があって、その時の父さんってわたしのアソコを丁寧に洗ってくれるの。それが気持ち良くって・・・お返しにって父さんのアレを洗ってあげるとやめなさいって言いながら嬉しそうだった。」
「その時、オトコのアレは触ると硬くなって、擦ると気持ち良くって、最後に白いおしっこが出るって。その時そのおしっこが栗の花の匂いがするって分かったのね。それでその後お風呂上ってから部屋に駆け戻ってその続きを自分でしちゃったの。」
「姉さんね。小さい時から父さんのことが好きだったのね。父さんが帰ってくる時聞こえるサバンナロータリークーペのパン、パンっていうバックファイヤーの音が聞こえてくるといてもたってもいられなかった・・・。」
「この時姉さんはね、父さんが喜ぶんだったらなんでもしてあげたかったし、父さんがすることだったらどんなことでもイヤじゃなかったの・・・。」
私は驚きました。姉さんが死んだ父さんにそんなイタズラをされていたことに。その父さんは姉さんが中学1年の時に事故で亡くなっていましたが、いつまでそんなイタズラが続いたのか、それがどんなことだったかは知るよしもありません。でも偶然か分かりませんが、姉さんは父さんが亡くなったと同時に剣道を始めたような気がします。
でも、当時の姉さんの素振りからはそんなことは一切感じることはできませんでした。逆に今まで姉さんは潔癖症じゃないかってほど、浮いた話はこれっぽっちもありませんでした。
「姉さん。僕って、姉さんは完全な潔癖症でオトコを避けてるとばかりだと思ってた。」
「まーくん。それは違う。姉さんだって生身のオンナなんだよ・・・・。本当は今だって・・・」
と言いながら、目の前の姉さんが迫ってきました。
「姉さん。ちょっとまずいよ。ここ僕の下宿だよ。いつ誰が入ってくるかわかんない部屋だよ。」
実際、あのふたばがいつ何時いきなりドアを開けるかも分かりませんでした。
「そうよね。ちょっとそんなのもドキドキするよね・・・でも」
と言いながら今度は服を脱ぎ始めました。
「まーくん。姉さんね、さっき良ちゃんに触られても感じないって言ったでしょ。多分ね、原因はこれ。」
そう言いながら姉さんは全裸になると、ベットの上に仰向けになって足を広げました。
「ねえ、マドカ。さっきアンタは良ちゃんの代弁したけど、その良ちゃんになってわたしの全てを見て。わたしが知らないオトコに初めてを奪われたあげく、色んなこと教え込まれたわたしのココをよく見て。」
「そこの紐引っ張って。電気つけてよく見て。」
そう言われた私は蛍光灯の紐を引っ張り電気を灯しました。するとそこには、以前も見たことのある姉さんのハダカです。首から下にはいっさい毛髪もなく、さらに染みひとつない綺麗なカラダです。
張りがあり盛り上がった乳房、ピンク色した小さめ目の乳輪に乳首。ウエストから腰のあたりの女性的なラインを含め、当時としては結婚適齢期を少し過ぎた27歳のその裸体は非の打ち所がないとても綺麗なカラダで魅力的でした。ただ一点を除いては・・・・。
「姉さん・・・・。」
「違う。姉さんじゃない。今あなたは小林良一というオトコ。わたしに求婚しているオトコ。その立場でわたしを見て。風谷麻美子っていうオンナのハダカを・・・。」
「決してカレシにしか見せないこの姿を。」
「・・・・うん。」
私は迷っていました。見て感じたままのことをそのまま具体的に言えばいのか。ソレとも、何か抽象的に伝えればいいのか。
でも決めました。自分に正直に感じたままに伝えようと。
「麻美ちゃん。すごく綺麗だ。麻美ちゃんのこんなカラダ見ることができて僕は幸せだ。首から肩にかけてのライン。ウエストからヒップにかけてのライン。胸だって、形もいいし綺麗だ。太ももだって。袋はぎだって。指の先まで・・・・。」
「こんな綺麗な女性のハダカなんて滅多にお目にかかれない。僕にはもったいないくらいだ。今すぐにでも抱きたいくらいだ・・・・」
そこまで言ったところで姉さんは怒った声で言いました。
「嘘。そんなの嘘。わたしの一番大事なところ外している。そこが肝心なの・・・・。自分でも分かってるの。こんなグチャグチャになっちゃってるオンナのアソコ。汚いったらありゃしないって。」
「お尻の穴だってそう。あんな太いの入れられちゃったんだよ。あんなおっきくてグロテスクで・・・・。あんなの刃物とおんなじ。そんなのいきなりアソコに刺されたんだよ。もう、殺されるくらいに痛かったのに、お尻なんてそれの何倍も・・・・。もう拷問だった。いっそひと思いに殺してくれればよかったのに。」
「でもアイツは、殺さずにわたしのカラダを弄んだ・・・。初めからわたしの大事なところぶっ壊そうとしてたの・・・・。もう、他のオトコに抱いてもらえないようにするために・・・・生き地獄味わえって。」
「もう、それからは本当に生き地獄だった。本当に死のうとも思った。でも、家飛び出しちゃった時ちゃんと帰るって置き手紙してきちゃったから、最低でもいつか帰ろうとだけ思ってた。・・・でも。」
「帰ってきたあと、好きになったひとが抱いてくれようとしているのに、わたしのカラダがそれに応えてくれない。心から抱かれたいって思ってるのにカラダが反応してくれない。」
「これって、オンナにとってまさに生き地獄・・・」
と言って、肌掛け布団を自分の顔に押し当てて泣き始めました。
確かに姉さんが泣いてしまうのも無理がありません。やはり姉さんのソコは、生き地獄を味わえと言わんばかりに壊されていました。
姉さんはソレを汚いと言っていました。確かにそうかもしれません。でも何を持ってこれを汚いと言うのでしょうか?言ってみれば他の女性と見かけ上チョット・・・だけ違うだけだと思います。いや、思いたいです。
本当であれば、恐らく最近じっくりと見たばかりの夏帆の綺麗なソレと似ているはずです。でも、姉さんのアソコはちょっと肉付きの良い大陰唇の中に収まるべき小陰唇が明らかに飛び出しています。
しかも、ほとんど黒ずみは無いもののソレは左右非対称で、ビラビラの形は不正形でとても形をなしているような感じではありません。
さらに、その上にある本来包皮に包まれているべきクリトリスはすでに中身が飛び出し、小指の先ぐらいのものが露わになっています。こういうソレを目にしたのは初めてです。
しかもパイパンです。余計にソレらはハッキリ見ることができます。足を閉じていてもソレらははみ出しているに違いありません。
恐らくその良ちゃんという姉さんのカレシは、姉さんとセックスしようとした時これを見ているはずです。また、見ないまでも触れば分かるはずです。
多分、ソレらを目にしたその良ちゃんという人は驚いたことでしょう。でも、ソレでもそんな姉さんと結婚したいと言ってくれています。
私は確信しました。これは本物です。
その良ちゃんと言う人は、姉さんのアソコなんて、カラダなんてどうでも良いと思っています。姉さん自体が好きなんだと、いや愛しているのだと思いました。
「麻美ちゃん。最後までハナシを聞いて欲しい。麻美ちゃんが気にしてることって僕にとってはどうでもいいことだよ。正直なところ僕は今まで何人も女性のソコを見てきたけど、みんな顔の表情がが違うようにソコの表情も違うんだ。大きさや色や形なんてみんなさまざまで、正直なところどれが正解なんて分からない。」
「でも一つ言えることは、ソレがその女性のモノだってこと。僕にとってはソレはその女性の個性でしかないってくらいにしか思わない。しかもソコってカレシだったり旦那にしか晒さないところでしょ?そのカレシなり旦那がそれが良いって思えばそれが正解なんだよ。」
「ここからは弟としての意見だけど、高校生の頃剣道していた姉さんがすごく気にしていたワキガだって、僕にとっては良い匂いだったんだ。姉さんは気にしてたけど僕にとっては至福の香りだったんだ。」
「姉さんにとっては嫌な匂い。でも僕にとってはそうじゃないその匂い。しかも、その匂いが好き・・・・。」
すると、顔に肌掛け布団とかけたまま姉さんが手を伸ばしてきました。
「良ちゃん。抱いて・・・。」
姉さんの中では私は良ちゃんになっています。このでキチンと抱いてあげる事が出来れば、本物の良ちゃんともうまくで出来るかもしれません。
私は先ほど引っ張ったばかりの紐を引き蛍光灯を消しました。
すると姉さんの裸体が白く浮き出てとても綺麗です。
「麻美ちゃん、行くよ・・・」
「うん。来て・・・」
私は服を脱いで先ほどと同じようにベットに上がりました。今度は膝をついたところがギシっと軋みます。
そして、姉さんを跨ぐように姉さんの右隣に横たえ、左腕を姉さんの首の下に入れてカラダを抱き寄せた瞬間、部屋の外から話し声が聞こえてきました。
部屋のドアはそもそも襖みたいなもので造られていて物凄く薄く物音が筒抜けです。
そして、その話し声がなくなると隣の部屋のドアがバタンと閉まり、ちょっと間をおいた後音楽が聞こえてきました。どうやら外出していた隣の部屋の1年生が帰ってきたようです。
気を取り直して右手で胸を揉みは始めました。姉さんの肌は本当に白く、すべすべしています。しかもその乳房は弾力があり揉み応えがありますが、何か中にしこりのようなものが確認できます。生理が近いのかもしれまません。
そして、乳房の上にちょこんと乗った乳首を少し舐めてみました。すると、その乳首が硬くなってきました。今度は、乳首の周りの乳輪を舐めてみましたが、そこも段々とつられるように硬くなっていくのが分かります。
そして、右手の手のひらで姉さんのアソコ触れました。やはり、いろんなビラビラが飛び出ているのが手の平で感じ取れます。
そしてその手で姉さんのそこを温めるように手で覆いました。姉さんは触れられても感じないことを気にしています。焦りは禁物です。
私は、右手を姉さんのアソコに当てたまま左手で姉さんのカラダをさらにを引き寄せたました。そして首元にキスをした時、姉さんが顔にかかっていた肌がけを退けて私の顔を両手で挟んで目を閉じたままキスをしてきました。
「良ちゃん。ごめんなさい。今回もわたしダメかも・・・。でも、それでもずっと肌と肌触れ合っていたいの。強く抱きしめて欲しいの・・・・。わがまま言ってごめんなさい・・・。」
その後、姉さんを強く抱きしめながら何回も何回もキスをしました。時に舌を絡ませて、時には舌を吸ったり、また唾液を舐め合ったり・・・。
そしてどれくらい時間が経ったか分からなくなってきた頃、ずっと姉さんのアソコを抑えるようにしていた私の手のひらから何かヌルッとした感じが伝わってきました、
私は恐る恐る人差し指と薬指で姉さんのアソコを広げて中指を中に入れてみました。その中は見た通り複雑な形をしていましたが濡れています。確かに姉さんの分泌物で濡れていました。
そして、人差し指と中指で膣口からクリトリスまでの部分を優しく何度も何度も指を往復させると姉さんの鼓動が早くなってきて、息が荒くなってきたのが分かります。
すると、その姉さんが小さな声で囁きました。
「良ちゃん・・・・来て。やっと良ちゃんと一つになれる。だから・・・」
「うん。僕も麻美ちゃんとこうなるの心待ちにしていた・・・」
と言って姉さんの足を開いて、自分のカラダを割り込ませました。そして、自分のものを掴んで姉さんのアソコに入れようとした時、窓の外からパラパラパンパンパンパン〜と2サイクルバイクのチャンバーの音が聞こえて来て、そのエンジンが止まると、窓の外のすぐそばにあるバイク小屋にバイクを停めている気配が伺えます。瞬時に、これは2年生のRZ250であることがわかりました。
この時窓を少し開けて網戸にしていたので、その外の音は筒抜けです。
大学の友人の中には、アパートの窓をわざと全開にしてセックスをして喘ぎ声を外まで聞こえるような楽しみ方をしている強者もいましたが、私はその足元にも及びません。
しかもここは女人禁制の下宿の一室で、一緒にいるのは実の姉です。そんなことやっているなんてバレるわけにはいきません。
そこで小心者の私は自分のアレが萎えて終わってしまうのではないかと思った瞬間、意外にもますます自分のアレが固くなっていくのが分かりました。多分、そんな異常な状況に興奮してしまったのかもしれません。
そして、気を取り直して今度は姉さんの足を担ぐようにしてカラダを進め、自分のアレを姉さんの中にゆっくりゆっくり沈めていきました。
姉さんのソコは見た通りで、私のアレがいろんなもので複雑な何かで刺激を受けています。そして一番奥まで入った時に思いました。
「僕の長さと姉さんの深さがピッタリだ」
さすが兄妹です。同じ遺伝子から造られています。でも、決してこうなってはいけない二人です。
「まーくん。いや、まどか。もう、良ちゃん役は終わり。今から私の弟として私を抱いて。兄妹でするのはこれが最後。姉さんはもう大丈夫。今度はちゃんと良ちゃんに抱いてもらえる思うから・・・。」
「でも、今は・・・今だけは・・・私の大好きな弟として私を抱いて・・・。」
「僕も、大好きな姉さんを・・・麻美子姉さんと一緒に・・・一緒に・・・」
とまで言ったところでベットがギシギシうるさい事に気づきました。これでは、隣の1年に怪しまれてしまいます。
すると姉さんが「気が散るから下で・・・」と私を促します。
ソコには先ほど私がコタツを退けたスペースがあります。私が一旦姉さんから離れると、今度は姉さんがそこに私を仰向けに押し倒しました。
すると姉さんが私の傍に正座をして、私の股間で硬くなって勃っているモノをマジマジと見て呟きます。
「やっぱりあんまりおっきくないよね。看護助手やってた時、患者さんのいろんなの見たけど・・・。手術前の剃毛の時、硬くなっちゃう患者さんも結構いたけど・・・。」
「でも自信持って・・・。たとえチョット皮が被ってても医学上何の問題もないし、これを包茎扱いしてるのは日本人だけ。あと、実は全然皮が被ってない人なんかほんのひと握り・・・でもまーくんのは形が良いし、それと・・・・」
「姉さん。それと何?」
「ここはおっきいの。」
と言いながら右手で髪をかきあげ、私のソレに顔を近づけると先っぽの周りを一周ぺろりと舐めました。
「肉厚・・・。」
そして口の奥まで私のソレ咥えると再びその形を確かめるように舐めました。
「わたしってこんなに濡れるんだ・・・」
そう一言だけ言うと、今度は私の腰に跨って狙いを定めとヌルッした感じと同時にとそのまま腰を落としました。
すると姉さんは、何かを振り払うかのように私の腰の上で自分の腰を押し付けるように前後に動かして何かを我慢しているような表情をしています。それを見ていた私も何かまとわりつくかのように複雑に締め付けられている自分のアレからの快感に耐えています。
しかも、深く刺さるたびその奥底に微妙に触れるその刺激がたまりません。もう、すぐにでもイってしまいそうですが必死に耐えます。この感覚は全体的に締め付ける夏帆のものでも、上下に挟むように締め付けるふたばのものとも、奥行きが浅く先端部が物凄い刺激となるマコトのものとも違います。
やはり兄妹です。サイズがピッタリです。しかもその複雑に締め上げる姉さんのソレは名器と言っても過言ではない感じです。
そして姉さんの呼吸がますます荒くなってきました。その姉さんがカラダを倒し、乳房を顔に押し付けてきます。私は押し付けられた右の乳房を揉みながら乳首を吸い上げました。
すると、姉さんの締め付けが強くなってきて、耐えきれなくなった私が下から腰を突き上げげました。
「まどか・・・・姉さんイきそう・・・一緒に・・・」
私は腰を突き上げるペースを早めます。姉さんが何かに耐えるように「うっ、うっ、うっ」とだけ声を出します。隣の1年に喘ぎ声なんて聞かれたらとんでも無いことになります。姉さんが一緒です。エロビデオを見ていたなんて言い訳もできません。
「まどか・・・一緒に・・・」
と姉さんが言った瞬間、姉さんが私のカラダを強く抱きしめてカラダが硬直したことでイったのが分かりました。私は腰を引いて外に出そうとしましたが、そうはさせずと姉さんが上から腰を押し付けた瞬間、奥底の子宮口に先端部を押し付けるようにして何度も何度も弟の精子という遺伝子を、決して目指してはいけない実の姉の子宮目掛けて胎内に送り出してしまいました。
これは、生物学的にも道徳的にも決してやってはいけない行為です。姉さんの胎内に放出してしまった瞬間から後悔してしまいましたが、ソレを打ち消すには十分すぎる快感が私を支配しています。
そうしている間にも姉さんの中は、私から精子を絞り出すような動きをして刺激を続けます。射精後敏感になっている私のアレからものすごい刺激となって頭の中をかき回しました。
その後、姉さんに抱きしめられたまま繋がった状態で深い眠りについてしまいました。その夢の中で、幼い自分がどこかへ遊びに行く姉さんを追いかけて家の周りを走っています。
そうです。私はいつも姉さんを追いかけていました。離れたくなくって・・・。
その夢の中の私はおそらく3〜4歳と言ったところでしょう。小学生の姉さんを追いかけて走っていますが、いつの間にか振り切られてしまいます。これはいつものことでした。
でも、その後遊び疲れて帰ってきたはずの姉さんは、その小さな私ともきちんと遊んでくれます。
私はそんな姉さんが大好きでした・・・。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます。今回も4万字を超えてしまい、読むのが大変だったかと思います。申し訳ありませんでした。
今回もいろいろありました教育実習のエピソードを誇大表現でまとめております。また、過去のエピソードなどとの絡みもあり、話自体複雑になってしまったことお詫び申し上げます。
年末に向け執筆時間が厳しくなってきましたが、皆様から評価いただける限り続けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。