【それからのこと】達也と香緒里と直哉 ときどき早見先輩

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※エロくないです。ごめんなさい(汗)

【香緒里サイト】

人生なんて本当に分からない。

あの忌まわしい早見先輩の薬物強姦事件から、早10年以上が過ぎて。

私こそが沢山の人に迷惑を掛けて。

秋山先輩は体調を崩して地元に引きこもり、三月さん一家は突然姿を消して、私は重度のうつ病を発症して結局直哉さんとは別れることになった。

そんな絶望のどん底から、たっちゃん(達也さん、今の旦那様)が、優君(三月さんと早見先輩の一人息子)が私を引き上げてくれて。

やっと平穏を手に入れた私は、たっちゃんと探偵事務所を盛り立てている、そんな時代。

、、、でもさ?たっちゃん!私、経理だよね!?

「報告、追跡対象者は、ほぼ同年代と思われる男性と喫茶店アマンドから貴金属店に移動」

「追跡担当に質問。追跡対象者は一種の化け物で見た目が20代なんだけど、男性の同年代って見た目?実年齢?」(電話)

「実年齢だよ、細かいなあ!たっちゃん!」

達也「、、、たっちゃん言うな、所長だ!!」(電話)

私の名は、国見香緒里。私って国見達也探偵事務所の単なる経理なはずなんだけど、何でこんな探偵みたいなことやってるんだろう?

【一時間ほど前】

「た、、たたた、たっちゃん~一大事!」

達也「何~?請求書の桁でも間違ってた?」(電話)

「そんなことしないよ!たっちゃん私のこと舐めてるでしょ(怒)」

達也「め、滅相もございません!でも、今日は請求集金で外出中だよね?」(電話)

「うん!それはつつがなく終わったんだけどね、六本木のアマンドで書類整理してたら、早見先輩が男の人と一緒に入ってきた!」

早見先輩、前の会社での私とたっちゃんの一年先輩。清楚な立ち振舞いで「鶴姫」とまで言われた人。私たちの恩人の三月(みつき)さんと未だにラブラブ(もうすぐ中学受験準備に入る息子さんの優くんが、呆れたように言ってる)なはずなんだけど。

達也「あのさあ!早見先輩だって未だにバリバリ働いてるんだからさ~取引先の人じゃないの?」(電話)

「で、でも私服だよ?天然年齢詐称みたいな。何で早見先輩ってあんなに若く見えるのかな~。しかも、何か相手の男性、先輩に、、何か馴れ馴れしい感じで嫌だな!」

達也「、、、香緒里に渡してる電話って、望遠機能が普通じゃないんだけど、写真撮れる?」(電話)

「らじゃ」

達也「、、嫌な気配がするな」(電話)

「さすが、写真一発で分かるんだ」

達也「いや、この人、多分、早見先輩の大学時代に破局した元婚約者だ」(電話)

「、、、」

達也「元婚約者同士が、20年近い年月を経て40歳超えて二人きりで会ってるって普通じゃない」(電話)

「あの~それよりさ~、写真一発で、早見先輩の元婚約者だって分かるたっちゃんが怖いんだけど、、、」

達也「、、、、(汗)」(電話)

「早見先輩が三月さんと婚約する前さ~たっちゃんが早見先輩のストーカーやってるって噂があったんだけど、、、まさか?」

達也「いや、、その!、」(電話)

「あっ!動き出した。何であの人早見先輩の手を引っ張ってんの?何で先輩振り払わないの!?」

達也「香緒里ちゃん追ってくれ!三月さんに借りを返せるかも!」(電話)

「え~!!」

達也「至急、中田(うちのエージェントさん)を行かせる(え~なんで!?うるせえ、さっさと行け!)それまで頼む!」(電話)

「姉(あね)さん」

「ひやっ!、、む~む~」

中田「頼みます!叫ばないで!」

「な、中田さん、、」

中田「はい!、、あとこのうるさいの黙らせて下さい」

達也「中田、てめえ香緒里に触りやがってあとで覚えて、、」(電話)

「たっちゃん、黙って!」

達也「、、はい、、」(電話)

中田「お二人はお揃いの指輪を見てますね」

「早見先輩、なんであんなに嬉しそうに」

中田「それは、女性にとってはやっぱり指輪って特別では?」

「そういえば、指輪、たっちゃんからは貰ってないなあ」

中田さんは、無言で携帯電話を差し出してきた。

達也「(中田、てめえよけいなことを言うな!)」

「よけいなことって何?たっちゃ~ん?」

中田「ターゲットが移動を開始しました。追跡します。私の位置がわかるように姉さんの携帯のマップアブリにGPS受信をセットしましたので、後からゆっくり来てください。」

「お願いします」

早見先輩たちの追跡を一旦中田さんにお願いした私は、しばらくたっちゃんと電話で話すことにした。

「よっぽど早見先輩が好きだったんだね」

達也「またそれ~?勘弁してよ!」

「だって探偵の今ならともかく、あの頃の早見先輩の元婚約者の顔がわかるなんて相当だよ」

達也「あ~もう、そうです!あの頃の早見先輩が好きでした!」

「うん、知ってた(笑)」

達也「香緒里~(涙)」

「綺麗だったもんね。先輩。確かに端正な容姿なんだけど、それ以上に立ち振舞いが」

達也「そうなんだよな。確かに端正なんだけど、それよりも仕草の一つ一つが艶やかだったんだよね。」

「きも!!」

達也「ぐさっ(笑)。それでいて口は悪いくせに優しいわ。妙に陰はあるわ」

「本当に鶴の恩返しの鶴さんみたいだったよね。油断すると山に帰っちゃいそうな」

達也「まあ、三月さんと結婚してコロッと変わっちゃったんだけどね。幸せそうに(笑)」

「ねえ、たっちゃん。あの頃、私のことはどう思ってた?」

達也「面白味の無い日本人形みたいだなっと」

「ひど(笑)」

達也「まあ、それは、俺の勘違いだったんだけどね」

「、、、、、」

達也「香緒里の闇が気になって、香緒里がどうなるのか気になってずっと見てた。お前が田仲と結婚しても。そんで見続けてるうちにいつの間にか香緒里が好きになってた」

「うん」

達也「まさか出会って20年近く経って、香緒里とこうなるなんて、あの頃は思いもしなかった」

「!、、、、!」

達也「ち、ちょっと!もう少し何か言ってよ~」

「中田さんから連絡。二人は都ホテルに入っていったって」

達也「!、、良くないな、、このホテルで地下のバーから客室への連れ込みはセレブの定番だ。俺もそっちに向かう!」

中田「姉さん」

私は中田さんに合流した。たっちゃんももうすぐ合流する。

早見先輩たちは今は、ラウンジの喫茶店。

中田「元婚約者さんは、早見さんをバーに連れていきたいみたいですね。で、うまく躱されていると」

「、、、」

中田「盗聴器の会話聞きます?」

____

沙織「たかしさん、私、人前ではお酒、、ううん基本飲食はしないの。ごめんなさい」

「え~僕ってそんなに信用なかったんだ」

沙織「信用とかじゃないの、これは誓い」

「君の旦那さんは、そんなに君を縛り付けるんだ」

沙織「それも違うわ。これは私の誓いだから」

「わかった、、今日はありがとう」

沙織「いえいえ」

「しかし沙織は変わらないな」

沙織「何よ!もうすぐ中学生の子供がいるおばさんだよ(笑)」

「全然そうは見えない。あの頃と変わらない」

沙織「、、、、」

「なあ沙織、僕は今でも」

____

「まずい!」

達也「香緒里!行け!!」

合流したたっちゃんが私の背中を押した!

____

「早見先輩!」

沙織「か、香緒里!?こんなところでどうしたの!?」

「私は仕事帰りなんですけど、たまたまお見かけして、あの、、お声掛け不味かったですか?」

沙織「ううん?あ、この方は、新羽たかしさん。元大学同窓生でね、恥ずかしながら私の元婚約者なんだ。普段は大阪にお住まいなんだけど、たまたまお会いして奥様へのお土産を一緒に見て欲しいって」

「ごめんなさいお邪魔して」

沙織「もう終わったから」

「じや、ちょっと時間あります?実は、、優くんがこの間事務所に来て」

沙織「優がどうしたの?」

「中学受験したくないと」

沙織「な!ちょっと香緒里!詳しく聞かせなさいよ!」

「で、、でも?」

沙織「たかしさん、今日はありがとう」

たかし「う、うん」

沙織「元気でね?また縁があったら会いましょう。奥様とお幸せにね。」

たかし「あ、、、あ、、」

沙織「ほら!香緒里!さっさと行くわよ!」

【達也サイト】

「あてが外れましたかね?新羽さん」

たかし「何だね君は!?」

「悪者ですかね(笑)あなたには」

「新羽さん、奥様へのお土産ですか?つい先頃、DVが原因で離婚されてますよね?」

たかし「、、、、」

「早見先輩をバーに連れていって、そのまま予約している上の客室に連れていく、そんな目論見でしたかね?」

たかし「、、、、」

「あ~でも、早見先輩がお酒強いのは良くご存知ですよね」

たかし「、、、、」

「薬でも使う気でした?」

たかし「何を言っている!失礼な!警察を呼ぶぞ!」

「、、あんたの会社が、悪化した業績の穴埋めに、組織と組んで薬の横流しをしている証拠は上がってるんだよ。あんたのバックひっくり返してみるか?」

たかし「、、、、」

「な~んてね(笑)」

たかし「、、、、」

「行けよ、さっさと。もう二度と早見先輩には近づくな」

たかし「あ、ああ」

「さもないと、今度は俺みたいな小鬼じゃない、、竜の逆鱗に触れて喰われるぞ!」

「さて、あの男は放っておくにはちょっとヤバめだな、、三月さんに報告しない訳にはいかないな。でも、そうすると、早見先輩、元婚約者との密会?が三月さんにバレて、きっと強烈な折檻セックスで虐められる羽目になるな、、面白い(笑)」

三月さんの前でアワアワ言ってる早見先輩が思い浮かぶ。

「まずは香緒里に合流して、一緒に早見先輩をからかってくるか!!」

早見先輩に元婚約者没落のよけいな情報を与えて悲しませないようにしつつ、三月さんにいかにしっかり伝えるか、俺は思案しながら香緒里たちの元に向かった。

まあ、香緒里も慣れない仕事頑張って貰ったから労わないとな、ありがとうな香緒里。

中田「ところで僕の存在忘れてませんか!?所長~(涙)!!」

その2

____

かたや「裏切って不倫した張本人」

かたや「寝取った張本人」

かたや「夫婦別居を主導した張本人」

かたや、、、なんにもしなかった人?

達也「、、と、言うことで三月さんが行くのは確定なんですけど、だけって訳にもいかないですよね。」

むこうのほうで「いや、そもそも俺はお前の探偵事務所の所員じゃないんだが」って声がするけど、本件については誰も聞いちゃいません。

だって、後のメンバーは、ターゲットに対する業があまりに深くて、、、。

【香緒里サイト】

「相続の件があるので、失踪した直哉(私の元旦那)を探して欲しいんです。出来れば一度は戻って来るよう説得して欲しい」

、、と、いう、田仲のお姉さんからの依頼は、実はいただいた時点で半分終わっていたりする。

私の今の夫のたっちゃん(職業探偵)がライフワークとして既に直哉さんの行方を探し出しているから。

ただ、今までこちらからなかなか会いに行けなかったのは、前述の通りこちらの業が深いのと、もう一つ。

達也「田仲のやつ、内縁の奥さんがいるみたいなんだよな」

、、、それは、、尚更会えないよ、、、

、、、夢を見ていた。あれは、そう直哉さんとの結婚式。早見先輩が自分のことのように泣き笑いをしていて、たっちゃんも自分のことのように祝福してくれて、二次会では三月さんがギターの弾き語りを披露してくれた。

大学三年時の半年間、私は屑の彼氏の巨根セックスに墜とされた。快楽から離れられなくなるまで犯された。

「お前は俺の道具だ」が彼の口癖。

呼び出されては当然のように中出し。

計三度の堕胎は、私の生殖機能を完全に破壊した。

その後、屑彼氏の薬物逮捕で解放された私。

でも、自分にはもう結婚の資格なんか無いと思っていた。

それを同じ大学出身で噂を知らないはずの無い直哉さんがあっさりと覆してくれた。

幸せだった。

こんな日々がいつまでも続けば良いと思っていた。

思い出した。そんな日々を跡形もなく壊したのは私なんだ。

達也「ん~、香緒里、おはよう~」

私はいつものようにたっちゃんの腕の中で目覚めた。

アラフォーとはいえ、私たちはまだまだ新婚気分が抜けていない。

そう言えば、三月さんと早見先輩のところは、新婚の頃から、平均すると週に一回ペースらしい。信じられない。毎日やっててもおかしくないと思っていた。早見先輩曰く「これ以上やったら過労死する!」、、まあ、あのセックス(私も喰らって何度か死にかけた)を毎晩やられたら確かに過労死するかもしれない。

達也「どうした?何か変な夢でも見た?」

たっちゃんの優しい言葉に、再び泣きそうになりながら、私はたっちゃんの胸にすりすりする。

「夢でたっちゃんがゴキブリの群れに食べられそうになってた~(嘘)」

達也「お前、俺になんか恨みでもあるの!?(涙)」

「私が、バシバシ退治した~感謝して~」

達也「お前、現実じゃゴキなんか触れられない、、、あ~ありがとうございました~痛い痛い痛いってば!!」

涙隠しに、たっちゃんの乳首に歯を立てて、たっちゃんがアワアワしたふりをしながら笑いかけて来るのを感じながら、私は決断した。

達也「反対だ!」

沙織「絶対反対!!」

三月「、、信用無いのね、俺(涙)」

事務所に三月さんたちにも集まって貰って、私はみんなに伝えた。離婚の際にうつ病で伝えられなかった謝罪と感謝の気持ちを直哉さんに伝えに行きたいことを。

、、、そうしたらこれである。

同行するのが三月さんなのが不味かった。

ん~私たちは信用が無い(涙)。

三月「いや!香緒里ちゃん抱かないよ!本当だよ!」

「私もごめん被ります。三月さん私のそば2m以内には近づかないでください」

三月「あっ!そ~言うこと言っちゃうんだ」

「、、、三月さん、、、そう言うこと言うから信用無くなるのでは、、」

三月「真面目な話、香緒里ちゃんが行くなら達也が付き添うべきだろう?」

達也「俺もそうは思うんですけどね、万一田仲と修羅場になった場合、止めてくれる人がいないんですよ。」

三月「、、、、、」

沙織「じゃ、じゃあさ、、、」

打ち合わせの結果、結局四人で行くことになった(汗)

その3

____

【三月サイト】

「田仲か、、、?」

直哉「!三月さんですか、、!?ご無沙汰しています」

田仲へのアプローチ。

はじめは俺(三月)が一人で行くことにした。

偶然を装って田仲に接触して、連絡先を交換して、俺たちは喫茶店で相対した。

田仲の新しいパートナーが、伊香保の小ぢんまりとした温泉宿の女将さんなことは、だいぶ前から分かっていた。

明るくハキハキとした若女将さん。

先代の女将さん親子と婿養子の旦那さんと仲睦まじくやっていたらしい。

普通なら田仲との接点なんて無さそうだったが、数年前に不慮の事故で、若女将さんは旦那さんと先代の御両親を同時に失ったらしい。

その時、既存の予約のお客様だけはおもてなしをしよう(女将さんは宿を畳もうとしていた)と頑張っていた女将さんの最後のお客様の中に、離婚後地元の会社を退職して傷心旅行中の田仲がいたらしい。

「元気か?だいぶ痩せて精悍になったな」

直哉「まあ、宿屋の仕事なんて肉体労働が中心ですからね!三月さんは老けましたね」

「まじ!?結構若く見えるって、会社の女の子たちには言われるんだけど」

直哉「ええ、30歳くらいには見えるようになりましたよ、童顔の三月さんも」

「なんじゃそりゃ(笑)」

直哉「三月さんが会社の女の子に若く見られて鼻を延ばしている話は、早見先輩に言ったら楽しそうですね(笑)」

「!!おま!!」

直哉「そうですか、、姉さんが」

「ああ、どこかで会えたら伝えて欲しいと言っていた。連絡してやってくれ」

直哉「不義理をしちゃったな。分かりました、連絡します。ちょっとすぐにはこちらから会いにはいけないけど、慰労を兼ねてうちの温泉宿に招待してみますよ」

ここまでが、達也の仕事の義理事、ここからはプライベートだ。

「その温泉宿の慰労って、俺らも行って良いの?もちろんお金払うけど」

直哉「勿論!!優くん入れて三名様お待ちしております」

「達也たちも?」

直哉「、、、、」

直哉「三月さん、、」

「ん?」

直哉「香緒里の病状はその後、、」

「ああ!そこからだよな。彼女のうつ病は完治したよ。達也が最後まで頑張ってな。今は達也と暮らしているよ」

直哉「そうですか、、」

安堵の表情に少しだけ複雑な、、今の田仲の素の感情なのだろう。

直哉「きっと達也が必死に三月さんを探したんでしょうね」

「どうしてそう思う?」

直哉「俺も達也も、三月さんに会わせるしか香緒里を回復させる方法は無いって思ってたから」

「田仲、それは違う。達也は、それは最初はそう考えていたかも知れないが、途中からは自分が背負うと決めていた。俺たちが香緒里ちゃんに再び関わったのは本当に偶然で、たまたま優の遠足が香緒里ちゃんの入院先に被ったからだが、その時は達也の努力で香緒里ちゃんはほとんど回復していたんだ」

直哉「、、、そっかあ、、、」

直哉「あいつ香緒里を俺の元に戻しに来たとき、最初は香緒里と身体の関係が出来たことを言わなかったんですよね。」

「、、、、」

直哉「卑怯だなあと思いましたよ。正直思ったんです。中途半端な達也と香緒里がこのまま苦しめば良いって。でも今は二人が落ち着いてくれたことを知って嬉しいです。」

「それは今の奥さんのおかげかな?」

そうかもしれませんねと田仲。

直哉「頑張っちゃう奴なんですよ彼女。何でどうして?って思うんですけどね。ありとあらゆることに後悔したくないんですって、上手くいってもいかなくても」

「そっか、、、」

直哉「三月さん、最初の問い(達也たちは)って言うのはですね。面と向かって来られると、彼女が達也や香緒里に何を言うかわからないのでやめておきましょう」

「愛されてるじゃん!お前(笑)」

直哉「俺も頑張りましたから(笑)」

「そっか(笑)」

「じゃあ、お前だけが会うのは?」

直哉「それも彼女に悪いです」

「そっか、、、、でもさ?」

俺はことさらにニヤリと笑った。

「俺たちがお客で行く分には止められないよな」

直哉「まあ、、そうですね、、仕方ない。その時は赤の他人のお客様として、おもてなしいたしますよ」

田仲は「相変わらずしょうがない人だなあ」という苦笑で俺を見た。

その4

____

【達也サイト】

「よん、じゅう、、いっ、、さい?」

三月「ぷぷっ」

沙織「、、、なによ、パパ」

伊香保のこじんまりとした温泉宿。

三月さん夫婦に「ご新婚さんですか~良いですね~」とかにこやか営業スマイルを振り撒いていた女将さんが、早見先輩のチェックインカードの記載を見て固まっている。

香緒里「まあ、見慣れた光景だよね、早見先輩の天然年齢詐称。久しぶり、、というか今でも?って感じだけど」

「あの人、俺らが入社した頃でも、馴染みの飲食店員さん以外だと(社会人になっても未成年はお酒駄目ですよ)とかしょっちゅう言われてブンむくれていたよな」

香緒里「本人はお酒大好きだわ強いわだからなおさらね」

さすがの営業力で復活した女将さんが、俺と香緒里、三月さん夫婦をお部屋に案内してくれる。居間+和室+洋室(ツイン)の大きな部屋。

三月さんの提案で、部屋は男女に別れて使うことにした。

その5

____

(その少し前の話)

三月「、、、と、言うことだから、香緒里ちゃんも達也も沙織も、今回は田仲への謝罪とか感謝は無しだ」

香緒里「、、、、、、」

三月「ここでそれを強行するのは、俺たちの自己満足だよ。香緒里ちゃん、悪いな、、」

「、、うん、、そっかあ、、、」

「香緒里、大丈夫か?」

香緒里「、、うん、、分かってる、、安堵もしているんだ、、そんな人が直哉さんの近くにいてくれるんだって思ったらね、、でも、、、(涙)」

俺たちは香緒里の心の整理を、、待った。

沙織「あ~もう、分かった。私はそれで良いよパパ」

突然の横から納得発言!

ここは香緒里待ちでは!?

こ、、この人は本当、自分勝手。

香緒里「、、はい、私も。今の気持ちを抱えて生きていくのも贖罪なのだと思います。受け入れて行きます」

「、、、」

香緒里「大丈夫だよ、たっちゃん。私は大丈夫!」

三月「で、どうする?田仲は、お客としては受け入れる覚悟は決めていたけど」

「そうですね、、俺としては田仲の今の姿を見ておきたいですね」

香緒里「私は、その女将さんに会ってみたい」

沙織「そっか~、じゃここでお別れだね。頑張って~」

「え?」

香緒里「え?」

三月「いや、達也の依頼は果たしたし、俺たちはここまでで良いかなと」

「待って!待って!ここで俺たち見捨てるのは無責任~」

香緒里「と、までは言いませんが付き合ってくださいよ~」

「宿代は経費で落としますから~」

三月・沙織「え~~」

その6

____

【達也サイト】

甦った女将さんが、にこやかに俺たちをお部屋に案内してくれる。いや「パパとか、、パパ活?」とか、ぶつぶつ言ってるから完全復活じゃないな。

三月「噂ではご家族に色々あられたようですが、おくびにも出さない、さすがの接客ですね。失礼極まりない話ですが。」

女将「いえいえ(汗)もう何年も経ってますし、お客様にも暖かく支えていただいてますし~」

三月「新しい旦那さんにも暖かく支えてもらっているし?」

女将「え~そんなことまで最近のSNSは出てるんですか?」

三月「女将さん、人気者だから(笑)」

女将「、、でも、そうですね、、旦那には感謝してますね。私、このお宿畳む積もりだったんですよ。でも、今思うと、畳んでいたら、私死んじゃっていたかも、、、」

「、、、、」

女将「あの時の旦那には結構酷いこと言われたんですよ(君とこのお宿を慕って来る人の為に死んだ気で働け)とか。」

女将「それで私切れちゃって(そんなの一人じゃ出来ない!)って、そしたらあの人(一人じゃないだろ!なに言ってるんだ。ここにいるみんなが君を心配している。それで足りないって言うなら、俺がやってやる)って」

女将「最初はね、従業員のみんな(素人が突然出来るわけない)ってあの人のこと、冷ややかに見てたんですよ、それがいつの間にかみんなの中心。今じゃ銀行交渉までやってくれてます」

女将「なんでここまでやってくれるの!?って聞いたんですよ。そしたら、(俺もここに来る前に死んでたから、死ぬ気でやった)って笑ってました」

そして女将さんは俺たちを見回して、、、

女将「だから、あの人は返しませんよ(笑)、香緒里さん!」

まあ、いくら田仲が頑張りを見せたにせよ、周りからみたら田仲はまごうことなき不審者で女将さんの周りを飛ぶ悪い虫。

女将さんを守るべく、かなり早い時点で田仲の正体は常連客手配の興信所のレポートで女将さんの手元に届いていたらしい。

その中には、元妻の香緒里が重度のうつ病だったことも入っていて、

女将「香緒里さん、回復して本当に良かった

ですね」とにっこり。

三月「なんだ田仲、完全に杞憂じゃん」

でも、、と女将さん、香緒里を寝取りにいった俺のことは絶対許さないそうな(汗)。

とりあえず、俺たちの正体は、チェックインカード記載の時点で、女将さんには完全にバレておりました。

ちなみにこのお二人の馴れ初めは、やっぱり女将さんからで「やってやるって言ったんだから、責任持って一生やってよ!」だったらしい。

田仲、、相変わらず決まんないのな、、、

【達也サイト】

沙織「国見、お疲れ~」

「あれ?香緒里はどうしたんですか?」

宿、到着後、男女二手に別れての入泉。

居間には早見先輩が一人で本を読んでいた。

湯上がりの浴衣姿がちょっと艶めかしくて、目のやりどころに困る。

沙織「パパは?」

「あの人お風呂長いです、置いてきました」

沙織「それは激しく同意。あ~香緒里はね、女将さんと一緒にお風呂入ってる。」

「そんなのありなんですか~!?」

沙織「こじんまりとした温泉宿だし良いんじゃないの?女将さん休憩時間だって言ってたし」

達也「で、でも!二人っきりで、置いてきちゃったんですか~?」

沙織「大丈夫じゃない?思ったよりも和気あいあいとしてたし」

沙織「国見様、粗茶でございます」

「そんな、先輩手ずからのお茶なんて」

沙織「珍しくもないでしょ?昔は3時に会社にいたら、女子社員で手分けして出していたわよ」

「そんな時代でしたね。懐かしいな」

沙織「ね~達也?」

「な、なんですか、名前呼びは気持ち悪いですよ」

沙織「あんたさ~、入社直後しばらくは、私のこと好きだったでしょ?」

「、、、、、(汗)」

沙織「(に~~っ)」

「はいはい、分かりました!昔の話ですが、確かにあなたに惚れてました!」

沙織「やっぱり~(笑)」

「ったく、若気の至りだ!」

沙織「はは!、、ねえ~達也?」

「も~なんです?」

沙織「あの頃さ~、私あんたのこと、結構気に入ってたよ?」

「、、、な!」

沙織「本当だよ?」

そう言って浴衣姿に艶やかな黒髪を後ろで纏めた早見先輩は、「鶴姫」と言われた、無二の清楚さに今は人妻の妖艶さも醸し出していて、、、。

沙織「本当だよ?」

「、、、、、」

沙織「達也が入社した頃は、私、支店の同期と付き合っていたけど、飲み会の後ホテルに連れ込まれそうになって、引っばたいて別れたから、その後パパに会うまではフリーだったし、あんたが本気で口説いてきてたら、墜ちてたんじゃないかな~」

そう言って先輩は楽しそうに笑う。

くそ~負けっぱなしはやだな~。

俺は精一杯の反撃を試みる。

「先輩、俺が会社辞めた直接の原因はね?」

沙織「うん?」

「先輩の転勤後のレイプ事件を聞いたからなんですよ」

沙織「、、、あ」

「あれで会社に失望しましてね、三月さんたちが奮闘してるのも見てたんですけどね。制裁が甘いようなら俺の手で直接当事者を潰してやろうかと」

沙織「、、、達也、、、」

「でも、三月さんたち、凄かったですね。当事者の課長や課員はもちろん、役員三人バッサリ解任でしたもんね」

沙織「ん~、そのあたり、パパに任せちゃったから良くわからないんだよね~。私、あの時妊娠しちゃってさ~」

「え、ええっ、優くんってもしかしてその時の!?」

沙織「違うよバカ!年を考えろ!!」

「あっ!そうか」

沙織「その子は天国に行っちゃった。流産でね。でもパパがね~中絶が心配なら産んでいいよって言ってくれて嬉しかったな~。背負ってくれる旦那って良いよね」

「で、女将さんも田仲に惚れたと」

沙織「香緒里もだよ、カッコ良かったんじゃない?あんた」

「そうなら良いんですけどね、、、」

沙織「(ところでさ~あんた気がついてる?)」

早見先輩から、いきなりのブロックサインだ!

俺と早見先輩は、結構長い間、ツーマンセルで仕事していた。その交渉ごと用のブロックサインは、かなり複雑なことを伝えられる。

「(なんか二人が出歯亀やってますね?)」

沙織「(いやだな~あたしたち、なんか疑われてるのかな?)」

「(面白がってるだけじゃないですか?)」

沙織「(腹立つな~、あの二人のほうがよっぽど疑惑のカップルなんだけど)」

「(まあ、昔ですが、やることやってる二人ですからね)」

沙織「(ごめん、あれはお膳立てした、あたしが悪かった)」

「(しかしこのまま声掛けるだけじゃつまんないですね)」

沙織「(ちょ~っと、演技入れちゃおうか(笑))」

「早見先輩、俺、今でもあなたが好きです!」

沙織「達也、、、」

(ガラッ!)、

三月「達也、てめ~ふざけん、、、な?」

香緒里「た!たっちゃん!今更な、、に、言って、、、?」

冷ややかに見ているジト目の沙織と達也。

達也「いつから出歯亀やってるんすか(呆)」

沙織「パパ!?(怒)」

三月・香緒里「すみませんっした!(汗)」

達也「で?女将さんとの話は?」

香緒里「うん!良かった!本当に良かったよ。もうこれで帰っても良いな!」

沙織「田仲とは話さなくて良いの?」

香緒里「女将さんも気にしてくれたんだけど、無理に話さなくても、このままで良いかな~と」

三月「そっか」

香緒里「女将さんにお願いして手紙だけ渡して貰った」

達也「そうか」

【香緒里サイト】

翌朝、私たちのチェックアウトを見送る女将さんの横には、直哉さんの姿もあった。

田仲「お元気で」

女将「またいらしてください」

香緒里「元気でね!」

田仲「君もな!」

最後に、最後に、一言だけ、、、でも万感の思いを込めて。

そして私たちの恋は終わったんだ。

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