大学時代、飲食店で宅配のバイトをしていた頃の話だ。
店が注文を受けてからバイクで料理を届けに行くのだが、一度だけラッキーな経験をしたことがある。
ある日、俺がいつも通りにバイトをこなしていた時のことだ。同僚から、
「ちょっと早く料理ができちゃったけど、もう届けてくれ」
と頼まれた。
店の混み具合によって、お客さんに届けるまでにかかる時間が変動する。
その時は予想よりもスムーズに店が回ったので、お客さんに伝えた配達予定時刻よりも早く届けられることになったのだ。
宅配が遅れるとクレームを言われることもあるが、早い分には怒られない。
俺は気分よくバイクを飛ばし、注文先のアパートに到着した。
ぴんぽーん、と呼び鈴を鳴らすと、部屋の中からバタバタした音が聞こえた。どうやら、俺が予定よりも早く来たので慌てているようだった。
足音がこちらに近づいて、玄関のドアが開いた。
「すいません、お風呂の入っていて……!」
出てきたのは、二十歳くらいの女性だった。小柄でくりっとした目が可愛らしい子だったが、それよりも彼女の格好に目が引かれた。
彼女は、バスタオル一枚のまま出てきたのだ。
俺のことを待たせてはいけないと思ったのだろうが、とにかく目のやり場に困った。なるべく彼女を見ないようにしながら、俺は料理を差し出した。
「こんな格好で、ごめんなさい……」
彼女は顔を赤くして謝りながら、料理を受け取ろうとしたのだが……。その瞬間、とんでもないことが起きた。
バスタオルの結び目が、はらり、とほどけてしまったのだ。
あっ! と俺が思ったときには、タオルは床に落下していた。俺の目の前には、可愛らしい女性の、全裸の姿があった。
「ひゃっ……きゃああああっ!」
彼女は可愛らしい悲鳴を上げてその場に座り込んだ。そして、急いでバスタオルを拾うと、くるりと後ろを向いてタオルを巻き直していた。
「うう……ごめんなさい、変なものを見せてしまってごめんなさい……」
涙目になって彼女は謝っていた。
謝られるどころか、俺にとってはラッキーな出来事だった。なので、素直にその気持ちを伝えることにした。
「いや、謝らなくていいですよ。俺にとっては嬉しいですし」
「えっ?」
「可愛い女の子の裸が見られてラッキーって思ってます」
「あうう……」
と、彼女はさらに顔を赤くしてうつむいてしまった。
裸を見たことよりも、彼女の可愛らしい反応の方が興奮した。気づけば、俺の下半身は痛いほどに固く勃起していた。
その場で彼女を襲ってしまいたい衝動に駆られたが、さすがにそんなことはできなかった。
俺は会計を済ませるとアパートを後にした。
それから彼女に会うことは一度もなかったが、今でもあの恥ずかしそうな顔を思い出しておかずにしている。