ずいぶん前の話になるが、親元を離れ、とある都市の大学に入学直後、バイト先のおばさんたちに連れられて、初めておかまバーに行った。
おばさんたちは急な呼び出しもあり、すぐに帰ることになった。
僕も一緒に帰ろうと思っていたが、せっかくだからゆっくりしていくといい、といくらかお金も持たされ、半分仕方なく、初めてのおかまバーにいることになった。
高卒すぐの18歳の僕には敷居が高く、気後れもしたが、ミスターレディーなどとテレビで取り上げられたこともあって、若干倒錯的なイメージも抱いていて、妙なテンションになっていたかと思う。
実際、おかまバーのママはきれいに化粧していて、体型も女性っぽく見えた。スタッフはきれい系といかにもおかまタイプの人がいた。
お客もそれはそれはかなりの個性派ぞろいで、ずいぶんと下ネタ発言なんかもあり、場は盛り上がりつつ、そのノリに今一つついていけない僕は、雰囲気に圧倒され、どこかアウェイ感に浸っていた。
そんなとき、きれい系のスタッフの愛さんがあれこれと話しかけてくれて、お客で来ていたOL風のお姉さんも加わり、どう立ち回っていいかわからずにいる僕をいじり始めた。
他愛のない話から、
「ちょっとこの子、意外とかわいい顔立ちしてるんじゃない?」
と愛さんが言い、
「そうよね、化粧映えしそう」
と、OL風のお姉さんも言い、抵抗はしたものの、そうこうしているうちに、その場で化粧をさせられることになってしまった。
「色白だし、素肌もきれいよね、ナチュラルな感じで・・・」
などと愛さんやお姉さんが、キャッキャとしながらファンデーションやらアイラインやシャドウ、ライナー、チークにブラシまで使い、
「コーラルピンクがいいわよね」
と、リップで仕上げ、店にあったウィッグをつけてくれた。
他のお客たちもちらちら気にしながらこちらを見ていたが、やがて歓声が上がり、僕の気持ちは、いつの間にか嫌々感から期待に代わり、胸が高鳴るのを感じてしまっていた。
そして鏡を見せられて、一瞬のうちに興奮に似た高ぶりを感じた。
「女子じゃん・・・」
色白丸顔で特に凹凸もないような顔立ちの自分が・・・。
何か自分の中の固定観念のようなものが崩れる瞬間だったかもしれない。
しばらく呆然としたかと思うけれど、そこからはお店の中でもかなり話題の中心というか様々なきわどい話を振ってこられ、自分の立ち位置が混乱してしまっていた。
その後は慣れないお酒のせいもあり、どうもソファーにもたれ寝込んでいたらしい。
気が付いたときは閉店で、お客は誰もいなくて、店には愛さんだけになっていた。
「あら、起きたわね。気分はどう?」
初めての化粧や慣れないお酒のことを気遣われつつ、これまでのいきさつを思い起こして鏡を見直し、もう一人の自分を確認し、僕は
「どうしよう・・・」
とつぶやいていた。
結局、愛さんの部屋に行き、化粧を落としてもらうことになった。
ただ化粧を落とす前に、せっかくだからと、ファッションショーをすることになり、愛さんの服をいろいろ着せ替え人形のように着てみては姿見に映していた。
「これかわいいと思う、うん、似合う」
愛さんに言われ、どこか気分は女の子寄りになっていた。
「じゃあ、もうちょっと本格的に、下着もこれつけてみて」
もう、そういうモードのスイッチが入った気がした。いわれたように、ブラをつけパンティーを履き、もう勃起していた僕のものははみ出ていて、かわいいといわれたワンピースを着たものの、隠せる状態ではなかった。
ドキドキしながらドアを開け、愛さんの前に出た。
「うん、かわいいー。このままお出かけしても全く違和感ないよ」
と言いながら近寄ってきて、
「でも、ここ、こんなふうじゃあねえ・・・」
「いや、だって・・・」
と答える間に、愛さんの手が僕の股間の固い部分に触れてきた。そして耳元で、
「お化粧して、かわいくなって、女の子に見えるのに、まりん君のここはこんなふうになっちゃってるんだ」
服の上からとはいえ、愛さんは男なのに、と思ってはいても、股間に触れられ、なすがまま。もう、抗えない。
なんだか言葉で責められ興奮している自分にますます刺激されてく感じがした。
「どんな恥ずかしいことになってるのか見せてもらおうかな、ワンピース脱いでみて」
愛さんの前で、レースのブラとパンティだけの姿で、そのパンティーから勃起したものをはみ出させたままの格好で立たされた。
股間の前で両手を組んで。
「手で隠さない。まりん君のそのままを見せなさい」
命令口調も言いようもなく気持ちを高ぶらせる。
女の子が下着姿で衆人の前で立たされている気分になってくる。
愛さんは僕の前に身をかがめ、レースのパンティーを下ろし、暴発しそうな僕のペニスを咥えてくれた。
「あ・・・」
とは言ったものの快感に身をゆだねる以外の選択肢はすでになくなっていた。
愛さんの唇に僕のペニスが出入りしている、舌が絡みついている、そのまま腰や背中に腕を回したり、ブラをずらして乳首をいじられたり、童貞だった僕には目くるめく体験だった。
「もう、出ちゃう、ああ」
情けない声を出し、そのまま愛さんの口の中にものすごい量の精液も出してしまったと思う。
愛さんはそれでも飲み干してくれた。
愛さんも裸になり、勃起したものが目に入ったけど、流れのまま抱き合い、顔が間近になり、見つめあった。
僕の瞳はきっと虚ろで潤んでいたと思う。
愛さんは、
「まりん君、かわいいわ」
と言いながら唇と唇を合わせた。
そのままベッドに移り、寝かされた僕に愛さんが重なり、また自然とキスから始まった。
「まりん君、もっといっぱい感じたいでしょ?」
頷くだけの僕に、愛さんの唇は首筋から脇、胸、乳首を愛撫していった。
特に乳首は念入りに、唇が他の場所を這っているときも愛さんの指先がいじるのをやめなかった。
乳首を噛まれながら股間をしごかれたり、フェラチオされながら乳首をいじられたり、僕の腰はうねり、時に愛さんの頭を僕の胸に押し当てながら快感に落ちていった。
「乳首感じるの?どうして欲しいの、いってごらん」
「乳首、噛まれたいです」
こんなことをいう自分に興奮したし、どこかMっぽい自分を意識し始めた。
そして、たぶん、そうなるだろうと思いながらも、抵抗感もなく、愛さんの勃起したペニスを口に含み、愛さんの言われるように、感じてもらうことだけ考えながら頭を前後にゆすっていた。
昨日まで、まさか人のペニスを口に含むなんて思ってもみなかったのに。
69の形になり、愛さんより僕は先に放出してしまったが、それでも愛さんに感じてもらいたくて、いかせたくて、内頬や唇、舌を、言われたことを意識しながら、顎がしびれるほど使っていた。
「まりん君、いいわ、いいわ、私もいく、いく、いい、ああ」
愛さんは僕の口の中で果ててくれた。愛さんがしてくれたように、しばらく咥えたまま、吸い上げるように残りも飲み干した。
人の精液を飲むなんて、という思いが、苦いようなしょっぱいような味とともに脳裏をよぎっていったが、鏡に映ったもう一人の僕を見ると、また別のスイッチが入ったような気がして、快楽の波間に引き戻されていった。
もう、たぶん戻れなくなるかもしれないと思いながら。