叔父が、死ぬ間際に人を殺した事を俺と父に告白した。
暴走族全盛期の頃、叔父の奥さんが強姦されて殺され、一緒にいた娘も鈍器で殴られて両眼を失明。
目撃証言から犯人は暴走族だと分かっていたけど、誰が具体的に強姦し、殺したのかが結局分からなかったらしい。
当時医者だった叔父は復讐を決意。
金を盛大にばら撒いて暴走族から情報を入手し、事件に関わった奴らを特定。
車と木製バットで武装して1週間で6人全員を、殺すか障害が残る状態にしたそうだ。
医者である知識をフル活用し、証拠が残らないようにして、障害も一生残らるように慎重にやったらしい。
復讐を終えた後は辞表を提出して医師を辞め、医療系の普通の会社で病気が発覚するまで働いていた。
叔父は棒状の物が持てない人だったのだが、その理由が頭の感触を思い出すからだったそうだ。
金属じゃなくて木製バットだと打撃がモロに伝わるらしく、その感触も手に伝わってくると言っていた。
暴走族を撥ねた感覚が忘れられないため車も乗らず、自転車も暴走族を思い出すという事で乗れなかったらしい。
父も俺もその話を聞いた時は衝撃的だったし、警察に通報するべきか散々悩んだ。
父が新聞などで調べたけど、抗争による死亡事件などがチラホラあるだけで本当かどうか分からなかった。
結局、事実かどうか分からないし、死に際だったし、理由があれだったので父と私も警察に届け出なかった。
叔父が死んでから結構な時が過ぎたけど、未だに忘れる事が出来ない。
先日1人ぼっちの暴走族のようなバイクに乗った若者を見かけて、こういう奴らが人を殺し、殺されたのかと考えてしまった。
墓まで持って行こうと思っていた話だけど、歳をとってから悩むようなってしまった。
ただただ吐き出したくて書いた。
叔父の復讐は正しかったのだろうか。
俺と父が警察に届けなかった事は正しかったのか。
今でもふとした時に考えてしまう。
そして、こないだ父と話をした。
そしたら父が警察に相談していた事が分かった。
ただ、何月何日の何時というのが分からなかったので捜査出来ないと言われたらしい。
叔父も何年前とか奥さんが殺されてからしばらく調べていたとか言っていたので、正確な殺害時期が全く分からない。
また、仮に叔父の話が本当だとしたら、殺人の時効が成立しているし、仮に時効が成立していなくても被疑者死亡となり、起訴できないらしい。
ただ、記録だけは残しておくという事で調書は取ってもらっているらしい。
法律的な事は分からないけど、叔父の罪は問えないという事らしい。
結局、叔父の罪は叔父の死とともに亡くなったのか、残されたものが負うべきなのか、よく分からなくなった。
娘さん結婚もされ、幸せな家庭を築いているのでこの話はしない。
叔父も、父と私にこの事を話す際に娘さんを病室から出したので、話されたくはないと思う。
叔父さんが私達に話した真意は、今となっては分からなくなってしまった。