今日は、とても暑かった。
三日前、このマンションへと引っ越して来た。
突然の出張で、慌ただしいなかで探したのがこの六階建ての古い建物。
たたみで、六畳程の小さな部屋で殺風景だし、家具などはおろか、日用品、食料などの買い出しも満足に出来ていない。
まだ建物の周辺に何があるのかわからなかったし、探す時間も無かった。
引っ越して来てすぐ、翌日から仕事で、さらに残業も重なり帰りも遅かった。
この仕事に就いてから二十五年。
出張など経験したことのない私は、ある日突然告げられ、いきなり都会の真ん中に放り出されたのだ。当然憤りを感じていた。
せめて、心の準備が出来るくらいには前もって言ってもらいたかったなと今更嘆く。
この三日間で、自分の体の中に異常なまでのストレスが溜まっているのがわかる。
ちょっとしたホームシックのようなものになってる気がするが、帰り道にある酒屋で、二本のビールを買ってきて、家にはベランダが無いので、出窓を開けて浴びるように飲む。
仕事終わりにはやっぱりこれだ!体の奥底で言った。
夜になっても気温が下がって来ない。生暖かい湿気混じりの風に当たっていると、地元を思い出す。
ただ景色が良くない。目の前には、このマンションとは似ても似つかないほど綺麗でオシャレなマンションがある。
あんな所に住んでる人は、それこそオシャレな人なんだろうなとため息を吐いた。
すると、一つ目線を下げた階の正面の部屋で明かりが点った。
時計の針は夜の十時を回ったところだった。
距離は結構あるしハッキリとは見えないが、ドアを開けた時、風が抜けていったのか、ピンクのレースのカーテンがなびいてゆらゆらと舞っているのが見えた。
すると、奥から一人女性が現れた。
長身でスラリと伸びた足、黒いロングヘアー。
いかにもって感じのオシャレで美人そうなオーラを漂わせている。
独身で中年の自分には、まさに高嶺の花だった。
一度でいいからあんな人と付き合ってみたかったな。そう思っていた時だった。
不意にその女性が服を脱ぎ始めたのだ。
「えっ!?」
思わず声が出てしまった。
仕事帰りなのか、スーツのジャケットをベッドに放り、スカートのファスナーを下ろして、ストンと落としてしまった。
レースのカーテンは確かに閉まっていたが、透けて見えた。
いや、これはいかん。
そこに天使が囁く。
「これは覗きだよ。犯罪だよ。だから今すぐに見ることを止めるんだ」
心の中で理性が働こうとした。
だが、ここで悪魔がひょっこり顔を出し言った。
「これはあくまで偶然だよ」
たまたま窓を開けてビールを飲んでる男と、たまたま窓を開けて着替えてる女の偶然の一致じゃないか。
天使と悪魔が口論している中、女性はシャツも脱いだ。
そして白い下着が露になった。
私はその瞬間、光の速さで悪魔に身を委ねた。
目が離せない。その美しい姿に、周りの一切の景色や音が無くなって、私から女性まで白いトンネルが一直線に続いているように見えた。
出来ればその中身も…当然のように好奇心も大きくなった。
そんな思いとは裏腹に、女性は奥に消えて行った。
私はそこで、思い出したかのように呼吸をした。
まったく、私は何をやってるんだ!もしかしたら娘くらい歳の離れた女性に対してこんなことをしているのかと自分を罵った。
手に握られていたビールを一気に飲み干し、カーテンを閉めた。
今日は、とても暑かったのでごさいます。
朝方からすでに、三十度を越える猛暑だった。
通勤に見るそれぞれの顔は皆険しく、ピリピリとした表情だった。
その反面、私の体は軽かった。正確に言うなら心が弾んでいた。
もしかしたら、今日も見れるかもしれないと思っていたからだ。
荒んだ日常に突如現れたオアシスを見つけたような気分。思い出しただけでも血流が下半身に集中して反応しそうだ。
お昼時間、私は売店に飲み物とサンドイッチを買いに来た。
ふと列に並んでいると、入り口の自動ドアが開き見覚えのある長い髪の女性が入って来た。
私はあまりの可憐さに目でその姿を追ってしまった。
視線が外せない。吸い込まれるような魅力だ。
すると、その女性が私と同じお茶とサンドイッチを持ってすぐ後ろに並んだ。
私は内心嬉しかった。
はっきり言ってたかが二品だけの偶然。その細い指が私が持っている物と同じ物を持っている。
どうしてしまったのか。反対に考えれば、こんなことでも興奮してしまうくらいに、私は日常から楽しみや刺激を失くしてしまったのかと項垂れてしまった。
しかし、その時。
「お揃いですね」
突然後ろから声をかけられた。
私は驚いて手に持っていたお茶を落としてしまった。
その時、お茶に慌てて手を伸ばすとその女性の手と重なるように触れた。
暖かい。一瞬だけだが体温を感じた。
「あっごめんなさい」
女性が申し訳なさそうに謝った。
おそらく、不意に声をかけたことが原因だと思ったのだろう。
「いっいえ、こちらこそとんでもない」
私はすぐに、お茶を拾いあげると、順番が回って来てレジに向かった。
支払いを済ませるとそそくさと売店を離れる。デスクの椅子に座ると、急に心拍数が跳ね上がった。
仕事がまるで手に付かなかった。
先ほどのことが頭から離れず、動揺している。
いつからこんなにも免疫が無くなってしまったのだろう。昔からそこまでモテるような男では無かったが、人並みに及びはしないが、恋愛はしてきた。
決してこの程度で動揺するほどではないはず。
しかし、この数年で明らかに衰えていたのかも知れない。
仕事一筋で、恋愛をしなかった。いつしか結婚に憧れていた光輝く理想も無くなってしまった。
それどころか、異性と話したりすることもまったくと言っていいほど機会を失っていた。
ふと、笑みがこぼれそうになった。
こんな些細なことが、ある意味人生で、男としての大事なことを思い出させてくれた。
もう手遅れかと思う年齢だけど、たまには甘酸っぱくて届くことのない夢を見てもいいのかなと思ったのだった。
しばらくして、冷静になってくると、あることが気になりだした。
それは、あのマンションの女性と雰囲気が似ている気がしたのだ。と言っても、ハッキリ顔を見たわけではないから確信は持てなかったけど…でも、もしあんな可憐な女性の裸が見れたら…
また残業だった。
今日の帰りも、定時とはだいぶ異なる時間になってしまった。
こんな時は、もちろん酒屋でビール。
帰った所で何もやることもないし、誰がいるわけでもない。
ほんの一時の楽しみである。
そして、時間は昨日と同じで夜の十時。
私は窓際の端にビールを置いて、カーテンを少しだけ開けて彼女の帰りを待った。
部屋はまだ暗い。
妄想が膨らむ。もし何か奇跡が、人生の手違いが起きて彼女のような美しい女性とお近づきになれたらと考えたら、自然とニヤけてしまった。
それに、恥ずかしい話しだが、そんなことで勃起してしまった。
すると、部屋の明かりが点いた。
「来たっ」
思わず口に出してしまった。
またスーツ姿だ。
ん?やはり、あの時の彼女ではないか?いや、似たような色のスーツは山ほどある。
確信を得るには、やはり顔を見るしかない。
しかし、ここからではボヤけていて…
突然その時がやって来た。
彼女が、ジャケットを脱ぎベッドに放る。
ブラウスに手をかけて一つ一つボタンを外していき、脱いだ。
今日は青い下着だ。スカートに手をかけ、こちらも下ろした。
美しい。私が今まで出会った女性を底の深くまで掘り進め思い出したが、まるで比較にならないほどだった。
すると、彼女は部屋の奥に消えて行った。
クソ!私は心の中で言って、拳を作った。
もっと詳しく、明確に、ハッキリと見たい。
そして、私は悪魔の囁きに耳を貸してしまう。
歪んだ好奇心はやがて醜い欲望となる。
翌日は土曜日。
私は、充血した目をこすりながら起き上がった。
彼女の姿が焼き付いてしまい、一睡も出来なかったのだ。
私はすぐに、双眼鏡を買いに出掛けた。
一度灯った火は、強烈な炎となり、欲望のままに理性を燃やしていった。
もう、彼女の憐れもない姿を見なければ鎮まることはない。そう断言出来るほどに私は滾っていた。
今日は、とても暑い!
テレビでは例年には無いほどの気温だとも…正直、今の私にはそんなことどうでもいい。
時計の針は夜の八時を回った所だった。
窓際で、前日に買ったビールを片手に待って重く腰を据えていた。
今の私は決してテコでも動かないだろう。彼女の産まれたままの姿を見ないうちは絶対に許されない。
彼女は朝から出掛けているようだった。
今だに明かりは点かない。
その時、私は何故か喪失感を感じた。
もしかしたら、恋人と会っているのでは?
いや、あんな美人なのだ。恋人の一人や二人いても当然だ。
…今頃彼女は恋人と愛しあっているのではないか?
いやいや!何を考えている。私は別に恋をしているわけじゃない。ちょっと素敵な女性がいたから覗いているだけだ。
そう、そうだ。
「よしっ」
誰に言っているのかもわからない一言を発して気持ちをリセットした。
おや?…明かりが点いた。
すると、彼女の友達だろうか。茶髪のショートカットの可愛いらしい子も一緒に入って来た。
さすがにあのレベルだと、友達も可愛いのだな。
私は感心してしまった。
その光景を見た後に、一つため息をついた。
この様子だと、今日は見れないかな…それに、妙に罪悪感に包まれている自分がいることに気付いた。
まったくだ。私はなんてことをしようとしたんだ。
自分勝手な好奇心や欲望の為に、見ず知らずの女性のプライバシーを覗こうなどと、言語道断である。
私はそっとカーテンを閉めた。
「待て!」
私はそう言った。
待て待て。せめて顔だけでも見なければ。あの時声をかけてくれた女性なのか、それともまた違う女性なのか、それだけでも確かめないと。
カーテンを捲った。
間違っても、彼女達にバレてはいけない。
あくまでそっとだ。そっとだぞ。私は心の中で何度も言った。
双眼鏡に恐る恐る目を近づけ、一息、深い呼吸をしてから覗いた。
部屋の主である、黒い髪の女性はこちらに背を向けてしまっていた。
はぁ…また一つ年齢を重ねてしまいそうなため息をついた。
仕方ないので、その斜め左に座っている可愛い女性を見た。
可憐だ。とてもキュートだ。
綺麗に染まってる明るい茶色の髪。パーマの感じも可愛いらしい。
その時、私は目を疑った。
二人が急に密接して、黒髪の女性が茶髪の女性の太ももに手を這わせている。
次第にその手はタイトスカートの中に入っていき、太ももを開かせた。
私はすかさず、着ていたハーフパンツを下着ごと下ろして、勃起したモノを擦り始めた。
茶髪の女性はこちらに向いて座り直して、スカートを腰まで上げて、ピンク色のパンティを見せてくれた。
こんなことがあっていいのか?私はいったい何を見ているのか?
「止めろ!止めるんだ!こんなこと許されない」
天使が口調を強め私を止める。
ここで、悪魔が椅子に足を組んでふんぞりかえりながら偉そうに言った。
「偶然だよ」
私は思考を停止させ、目の前の理解不能な遊戯に全身全霊を持って眺めることにした。
いつの間にか、茶髪の子はスカートを脱いで、大きく足を開き、パンティと生の太ももを惜しみなく出していた。
黒髪の彼女は、アソコへと指を這わせて上下に擦る。
茶髪の子は顔が真っ赤になっていて、今にも湯気が出そうなほどだ。
ふと目線をテーブルに向けると、そこにはお酒の類いだろう物が数本置いてあった。
なるほど。やはりそうだよな。お酒の酔いのせいであんなことが行われていたのかと、ようやく理解が出来た……そんなわけない!
いくら酔いの勢いであっても、麗しい若いおなごがそんな遊びを。
私の頭の中は、二人の行動を理解し解決させようとする思いが錯綜し渋滞していた。
二人はどんどんエスカレートしていく。
そして、私のモノも膨張していった。
茶髪の子は、シャツを脱がされ、ついにブラを取られてしまった。
私は凝視した。
大きく綺麗なおっぱい。とても豊満で柔らかそうだ。触ってみたい。
私は首を左右に振って、バカ野郎と言った。
それは絶対ダメだ。あくまで、覗くだけ。
茶髪の子はおっぱいを大きく揉まれ、感じている。
ピンク色の乳首が、気のせいか少し硬くなってる気がする。
止まらない。私の手がモノをしごきにしごいている。
しばらくすると、二人は急に立ち上がり、奥に消えて行った。
私はその瞬間、生暖かい物が手に発射されたことを感じた。
いったい…なんだったのか…
今日は、とても暑い…のか?
私は放心状態のまま、新しい一週間を迎えていた。
この地に来て初めての休日は、あの二人の女性に乱され翻弄されてしまった。
いや、私のせいなのはわかっている。そう自業自得。
朝、私は売店にコーヒーを買いに行った。
その時、私は目を疑った。
「道流。これもよろしく」
あの茶髪の子だ。
「はいはい」
私の体の中を電流が駆け巡った。
「今日は終わったら道流の家に行くから何か作って」
茶髪の子は微笑みながら催促している。
「はいはい。亜樹の好きなオムライスにするよ」
おそらく彼氏だろうか。男はやれやれといった感じで答えている。
まさか、同じ会社の子だったとは。
思わず鼻で笑ってしまった。
彼氏には申し訳ないが、私は君の彼女のおっぱいを見させてもらったよ。とても素晴らしいおっぱいだ。
どこか、優越感に似た気分になった時。
「次の方どうぞ」
店員からの一声で私はレジに向かった。
部署に戻ろうとした時、ふと思った。ということは、やはりあの黒髪の子も同じ会社にいるのでは?やはり、あの時、触れ合った彼女なのでは?私の胸は高鳴った。
いつかの昔、あの初恋の時に似た鼓動を感じる。
私の足どりは軽やかだった。早く仕事を終わらせ帰りたい。
その一心で、戻ろうと階段を上っていると、上から妖艶なオーラを醸し出した女性が下りて来た。
私は視線を顔に向けた。
ゆっくりだった。スローモーションのように時が流れる。
彼女だ。私は確信した。
スラリと伸びた足、黒いロングヘヤー、美しい姿。
すると彼女は微笑み会釈をした。
心臓が爆発するかと思った。強烈な衝撃が襲う。
やはり…彼女だったんだ。
時刻は、夜の八時。また残業だったのだ。
帰り際、同僚の方達に一杯どうですかと誘ってくれたが、丁重に断った。
私には使命があるからだ。いやこれこそ天命であると思う。
私はこの天命を全うする。
酒屋でビールをケースで買った。
窓際に置いて、下着一枚で構え腰を据えた。
今日こそは全てを見たいと思った。
予感がする。第六感のようなものが働き、今日は何かあると思わせてくれた。
私は待った。心を無にして。
ビールの空き缶が二本、床に転がった時だった。
時刻は十時。部屋の明かりが点る。
私は唖然とした。
「いったいあいつはどこの誰だ!?」
なんと、六十か七十代くらいのジジイが一緒に入って来たのだ。
いや待て。もしかしたら祖父かもしれない。
…そうだ間違いない。
私はなんて早とちりをしてしまったのか。
あいつなどと言ってしまったことを後悔した。
双眼鏡から見える二人は仲良くお酒を交わしている。
しかし、見れば見るほど似ていないし、その老人は鼻の下を伸ばしてデレデレとニヤけている。
私はまた唖然とした。
彼女と向かいあっていた老人が隣に座ると、キスをしたのだ。
何故?
私がいの一番に思いついた言葉であった。
老人は貪るように、彼女の唇に襲いかかっていて、両手はブラウスの上から胸を鷲掴みにしていたのだ。
無性に腹が立ち、そして敗北感を感じた。
何故その老人なんだ?その老人の何が君のハートを射止めたんだ?
考えれば考えるほど、体の力が抜けていく。
老人はブラウスを脱がすと、一気に黒いブラも外した。
あれほどまでに見たかった、彼女のおっぱい。
でも…悔しさが込み上げてくる。
綺麗な形だ。この前の茶髪の子と比べると小ぶりだが、乳首が上に向いていて、まるで目の前の老人を誘っているかのようだ。
老人は、舌を入れながら彼女を味わっている。乳首を転がし、片手はスカートの中に入っていった。
そんなところまで知ろうと言うのか。
もう充分じゃないか?それ以上はいいじゃないか…いつの間にか私は、老人に悲願していた。
私の遠い、遠い憧れの彼女を汚さないでほしい。
老人は乱暴にスカートを脱がせると、仰向けにしてアソコに顔を押し付けた。
私の方に頭を向ける彼女は、口を開いて、おそらく喘いでいるのだろう。
聞こえるはずのない声が、幻聴としてリアルに聞こえてくる。
あん…あん…と。
可愛い声なんだろうな。
羨ましい。どうしたら、あんなふうにお近づきになれるのだろう。
そして、黒いパンティに手をかけると、ゆっくり下ろした。
彼女は産まれたままの姿になった。
陰毛は濃いのか…意外だな。
マンコに吸い付く老人。それを覗いてオナニーをする中年。
失恋というか、なんというのか。
今のこの気持ちは過去に味わったことがある気がする。好きな子を、ブサイクな同級生に取られた時の、あの何とも言えない嫉妬心。
下腹の奥の方がキリキリと痛む。
彼女は、老人のモノを咥えフェラを始めた。老人は仁王立ちで頭を撫でながら、見下ろしていた。
私にも…してほしいな。
やがて、老人は窓に彼女を押し付けるとバックから犯した。
突かれるたびに、顔が険しく、苦しい表情になり、胸が上下に弾む。
本当に壮観だった。このマンションから見える絶景だ。
突かれている。ただ突かれている。
彼女のマンコはどんな感触なのだろう。やっぱりキツくて締まりが良くて、それに、あの老人から見る後ろ姿はどれほどにそそられるのか。
背中の反り具合、最高だ。ここからでは見えないが、突くたびに、お尻が波うってるはず。
もう限界だ。
私のモノが、早く逝かせてくれと主張している。
二人のピッチも早くなってきた。
その時だった。
老人はスッとモノを抜き、口の周りに精子をぶっかけた。
同時に私の手も精子まみれになってしまった。
老人は彼女を支えながら奥に消えて行った。
おそらく、一緒にお風呂に入るのだろう。そこでまたセックスをするのだと思う。
はぁ…ため息をついた。
しかし、このため息は残念とかそういう意味じゃない。
素晴らしい眺めだったという意味だ。
むしろ、本来こんなことはしてはいけない。絶対ダメなことだ。
私は心の中で、今日で終わりにしようと誓った。
すると、彼女が裸のまま窓際までやってきた。
その姿を疑問に思っていると、不意に彼女が私の方を見てニコっと笑った。
ビックリして、とっさに頭を引っ込めた。
「バレた!?」
そっと、頭を上げると、そこには彼女はいなかった。
私は胸に手を当てて、深呼吸をした。
ふぅーと安堵の息を吐くと、私はカーテンを閉めて、お風呂場に向かった。
私はその後、一切覗くことは無かった。
もちろん、体が疼いて双眼鏡を手にすることはあったが、最後まで悪魔が現れることはなかった。
そしてある日、突然上司に呼び出され、業務完了を告げられた。
え?終わり?私は拍子抜けしてしまった。
今日は、とても暑い気がした。
お昼休みに、また売店に向かい、お茶とサンドイッチを持ち、列に並ぶ。
すると入り口から、茶髪の子とあの彼女が現れた。
「ひどいでしょ?道流の奴一人でサッカー見に行ったんだよ」
茶髪の子が顔を膨らませながら言った。
「ちゃんと連れて行ってって言わない亜樹もダメだよ」
「だって急だったんだもん。今度ご飯おごってもらお」
「本当に亜樹は食いしん坊だね」
彼女が笑いながら言っていた。
その笑顔は、とてもあの日の彼女とは思えなかった。あの老人とセックスをしていた姿は本当に彼女なのか?今更、私は自分の目を疑った。
ふと思い出したかのように、せめて、名前だけでもと思った…
「次の方!次の方どうぞ!」
「あっああすいません!」
私は自分の番になっていたことに気付いていなかった。そそくさと支払いを済ませて外に出ると、彼女達を待った。
別に声をかけるつもりは無い。ただ…
その時、二人が出て来た。
「今日も一緒で、お茶とサンドイッチだね」
「うんお揃い。この前ね、道流さんとも一緒だったから、お揃いですねって言ったんだ」
二人は会話をしながら、私の目の前を通り過ぎていった。
私は手に持つ物をしばらく眺めると、トボトボと肩を落としながら部署に戻った。
この日、ようやく最終日にして、私は定時で帰れた。
酒屋でビールを買い、晩酌をする。
いつも通りだ。一つだけ違うとすれば、もう双眼鏡は無い。
先日捨てた。二度と使うことは無いだろう。
家に帰って荷物を置くと、たまにはと思い、私は一人街中に出て、美味しいディナーを食べることにした。
不思議だ。彼女にときめいてから、自然と足が軽くなった気がする。
部屋に籠るなんて勿体ない気がしたのだ。
外に出れば、もっと良いことがあるかもしれない。
私の第六感がそう告げている。
地元に帰ったら、私も少し積極的になろう。
あの老人みたいに、私も夢を見たい。
翌朝、この地に来てから一ヶ月が経った。
思えば心に残る感慨深い日々だったと思う。
私は身支度を済ませると、時計は十時を回った。
大きなスーツケースを転がしながらドアを開けようとしたが、一度止まった。
そして振り返り、頭を深く下げた。
その意味は、何事もなく平穏に過ごせた部屋に対してなのか、向かいのマンションの彼女に対してなのか、自分でもわからなかった。ただこうしなければいけない気がしたのだ。
満足すると、ドアを開けた。
すると、ドアと壁に挟まっていたのか、一枚の紙がヒラヒラと舞いながら落ちた。
私は少し不信に思いながらも、紙を拾い上げた。
その紙には、こう書いてあった。
「お揃いですね」
今日は、とても暑くなりそうだ。
―――
―――
―――
《あとがき》
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回の話しは番外編となりますので、少し視点と書き方を変えてみました。楽しんでいただけたなら幸いです。
気ままにという形ですが、次回の話しも完成したら投稿したいと思いますので、是非、読んでいただきたいと思います。
重ねて、ありがとうございました。