僕と亜樹……白い世界に、二人の情熱。《完》

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その約束の日、目的地に着いたのは朝のこと。僕と亜樹は三連休を利用してスキーにやって来たのだった。

都会から離れ、レンタカーを北に走らせること数時間。九時頃だった。スキー場に到着すると、そこは見事なまでの銀世界。僕は車から降りると、繰り返し深呼吸をした。

山の空気は澄んでいて、呼吸をする度に体の中を浄化してくれるような気持ちよさを感じた。

しかもありがたいことに、天気予報では連休も含めて数日は晴れが続く見込みだった。

雲一つない真っ青な空と、キラキラと光がちりばめられた雪景色。そして、この世界のヒロインである素敵な妻。最高のシチュエーションだ。

僕は、ロッジの入り口横にある三人掛けのベンチに座りながら、一人でニヤニヤと待っていた。

しばらくすると、入り口のドアが開き、上部にぶら下がっている鈴がチリンチリンと音を鳴らすと、ロッジからヒロインの妻が顔を覗かせた。

亜樹「レンタルできたよ!早く中に入って!」

楽しみで仕方ないのか、亜樹は僕を急かした。

道流「はいはい」

やれやれといった雰囲気を醸し出していたが、そんな僕も、内心は亜樹同様にワクワクしていた。

僕は生まれも育ちも都会だったので、スキーを一度も経験したことがなかった。反対に亜樹は雪国育ち。スキーもスノーボードもお手のもの。今日は亜樹がコーチとなり、僕に手取り足取り指導してくれるそうだ。

亜樹「よっしゃあ。じゃあ行くか!」

ブーツを履き終えると、亜樹はスキーセットに手を掛けながら男らしい口調で言った。

白のニット帽とゴーグル。上着は白がベースで、ピンクや青、緑の花が細かくデザインされている。そしてズボンは黒。

今日のために、亜樹が連日デパートに赴き買って来たのだ。

道流「ねぇ亜樹、でもさ、なんでペアルック?ちょっと恥ずかしくない?」

何故か全身お揃いのペアルックとなった。

亜樹「なんで?だって夫婦なんだからいいじゃん。それに、端から見たらラブラブのアッツアツだよ?あっ、どうしよ!私達の熱で雪が溶けちゃったら……困っちゃう〜」

まだ一滴もお酒を飲んでいないというのに、亜樹は酔ったときと同じテンションになっていた。でも言い替えれば、それだけ上機嫌ということ。僕は少し恥ずかしいけど、亜樹が笑顔で楽しんでくれればそれでいいかなと思い、納得した。

道流「そしたら、二人で謝らなきゃね」

亜樹「違う、怒るんだよ。こんなにラブラブな夫婦にした神様に。溶けちゃったのはあなたのせいだよって」

道流「はははっ。ありがたいことにね」

亜樹「うん。よし!準備完了。ほら!行こう道流」

亜樹は照れた顔を見せながら、僕の手を取った。

―――

ゲレンデは、やはり連休ということもあってなかなかに混雑していた。

初級、中級、上級者とコースは分けられていたが、特に中級者コースは麓から見ただけでも人がごった返しているのがわかった。

幸いなことに僕達が滑る初級者コースは、さほど、といったところだろうか。

亜樹「初級者コースは道流みたいに初めてだったり、滑るのが怖かったりする人が行くところだから斜面もなだらかでゆったりしてるよ。最初は怖いかもしれないけど、安心していいからね」

リフトを待っているとき、僕が不安にならないように亜樹は励ましてくれた。

道流「うん。ありがとう亜樹。でも僕は全然怖くないよ。だって、亜樹が教えてくれるんだから」

僕は亜樹の顔を覗き込むように言った。

亜樹「ありがと。でも教え子が道流だから、覚えがなぁ〜」

まるで、僕の覚えが悪いみたいな言い方をして目を合わせた。

道流「失礼だね。僕は尻上がりなだけだよ」

亜樹「ふーん。じゃあ覚える前に日が暮れちゃうね」

亜樹は意地悪な笑みを浮かべた。

道流「ほっとけ」

僕はそう言いながらおかしくなって笑ってしまった。

順番が回ってくると、亜樹に教えられた通りにリフトに乗った。

高さは五メートルくらいだろうか、すぐ隣に中級者コースがあって、僕はその様子を見下ろしていた。

ゲレンデには冬の女王の曲がBGMとして流れていて、それに合わせるかのように、子供から大人までがコースを滑り下りて行く。

中にはカップルだろうか、彼女に手を引かれながら、恐る恐る彼氏が滑っている。僕はその様子が微笑ましくて、自然と笑みがこぼれた。

亜樹「これからの私達みたい」

隣に座っている亜樹が、僕の視線の先に気づいたのか声を漏らした。

道流「二人は微笑ましいけど、僕の場合は酷くて笑えないかもね」

亜樹「確かに」

道流「いやいや、否定してよ」

亜樹「いやいや、できないでしょ?」

そう言われ、僕は天を仰ぎ、

道流「……確かに」

僕達は笑い合った。

リフトに乗って数分。亜樹の合図で下りると、さっそく初級者コースに向かいスタート地点に着いた。

そして、僕達はその絶景に一つ、大きな白い息を吐いた。

亜樹「綺麗だね」

僕の気持ちを代弁するかのように、亜樹が一つ言葉を空に放った。

視線の先には、山々の隙間から街が見えていて、今日という澄んだ天気のおかげで、見事なまでの青と白の世界になっていた。

僕は、その吸い込まれそうな光景に感慨深くなった。

道流「本当にそう思う。なんか、ずっとここにいたくなる感じ」

見据えたまま言った。

亜樹「うん。私も感じる」

二人で顔を見合せると、照れ笑いをしてしまった。

亜樹「よし!じゃあゆっくり行くからね。まずは基本姿勢から」

道流「よろしくお願いします!」

―――

それから二人だけのレッスンが始まった。

スタート地点から麓までは、亜樹の言うようになだらかな斜面が続いていて、恐怖心はまったくなかった。

そのため、亜樹の一つ一つの動作や言葉に気兼ねすることなく集中できた。

亜樹「そうそう。八の字にして……」

亜樹は僕の進行方向を塞ぐようにして滑っていた。

確かに人はまばらだし、斜面はゆったりとしてはいるけど、前方に背中を向けながら、ましてや僕を見て指示を出し、後ろを確認しながら滑っているのだ。本当に亜樹は凄い。

亜樹「いい感じだよ。それで、もし危ないと思ったら、わざと体を倒して止まるのも大事だからね。こうやって」

僕を制止させると、亜樹は隣に来て周りを確認してから、板を揃えて横に倒れた。

亜樹「それで起き上がるときは、まず板の位置と角度を確認すること。ゆっくり落ち着いて、深呼吸してからでもいいよ。足を動かして直したら、板を横向きに立てて、前後に揃える。お尻を板に近づけて、手やストックを使いながら体を戻す」

亜樹は馴れた様子で体を起こした。

亜樹「どう?できそう?」

ウェアに着いた雪を払い落としながら言った。

道流「うん大丈夫だと思う」

亜樹「よし。じゃあ後少しで下に着くから、そしたら倒れてからの起き上がりを練習しましょう」

亜樹は麓に指を差しながら言った。

ゴーグルで隠れているけど、亜樹の口調からは楽しさが伝わってくる。

そのあと基礎練習を繰り返し、あらためてリフトに乗って、初級者コースのスタート地点に戻った。

一時間ほどの練習だったが、さっそく成果が出たのか、難なく下りて来ることができた。

道流「どう亜樹?もう完璧でしょ?」

僕はゴーグルを外すと、ドヤ顔をして問いかけた。

すると、亜樹もゴーグルを外して、

亜樹「ダメ!調子に乗らないの!そうやって勘違いすると怪我に繋がるよ。始めたばかりなんだから、まずは謙虚に基礎練!」

亜樹は強い口調で言った。

亜樹「怒るのはちゃんと理由があって、私だって気を抜けばすぐに怪我をするし、何よりも、自分の驕りで周りの人を巻き込む可能性もあるからね。だから気をつけないといけないんだよ」

亜樹の言うことは至極真っ当だった。

道流「わかった。あらためて指導をお願いします!」

僕は学生時代を思い出しながら、一礼した。

亜樹「よろしい!それじゃあまた、リフトに乗ろっか」

僕は亜樹の指導の元、ふたたび基礎練習に勤しんだ。

そして、かんかん照りの太陽が頭上に高くなってきた頃、お腹からグーと空腹を知らせる音が聞こえ、二人でロッジにあるレストランへと入った。

道流「うーん。やっぱりラーメンか……」

僕はテーブルに置かれているメニューを見ながら呟く。

亜樹「海に来てるんじゃないんだから。スキーって言ったらカレーでしょ」

亜樹はメニューの真ん中を指で差した。

道流「そうなの?でもやっぱり、寒いときはラーメンが一番だよ」

亜樹「じゃあ道流がラーメンで、私がカレーね」

しばらくすると、テーブルには料理が並んだ。

ラーメンのスープを一口すすると、冷えた体に染み入るようだった。

道流「あー美味しい。そっちのカレーはどう?」

亜樹「うん。美味しい。一口食べる?」

道流「食べる食べる!」

亜樹はカレーをスプーンで掬うと、僕があーんと開けている口に入れてくれた。

道流「……うん!美味しい!」

僕は目を見開き、興奮しながら答えた。

亜樹「ねっ、だから言ったでしょ?これだからスキー場のカレーはやめられないのよ」

僕達は至福の時間を、お互いに食べさせあいっこをしながら過ごした。

―――

午後になると、人々が三々五々ロッジから出ていった。

亜樹「ちょっとタイミングをずらさないといけないかもね」

亜樹はその人達を見ながら苦笑いをした。

道流「……ねぇ亜樹。少し雲ってない?」

僕は窓の外を見上げながら訊いた。

先ほどまでの快晴とは打って変わって、どこか怪しげな雲行きになっていた。

亜樹「あらら。まあ、山の天気って変わりやすいからね」

僕の言葉に、亜樹も窓の外を見てため息をついた。

道流「大丈夫かな?」

亜樹の顔をうかがった。

亜樹「今日じゃなくても、明日があるしね。それに、このあとはいっぱいお酒が飲めるし……楽しみ〜」

すでに笑みがこぼれていてヨダレが垂れそうだ。まるで魚料理を目の前にした美雪を見ているようだった。

道流「いつもならここでほどほどにって言う僕だけど、今日は大目に見てあげよう。それにきっちり付き合うよ」

亜樹「ありがとう。でも数日は晴れが続くから、今日はもう帰って早めにお酒を浴びようか?」

亜樹はおちょこを持つポーズをした。

道流「言い方。さすがにまだ早いよ。もうちょい様子を見ようよ」

亜樹「うん、それでもいいよ。それじゃあ中級者コースに気張って行こうか」

ロッジを出ると、僕達はリフトに乗り山を登った。

リフトの乗り降りも馴れたもので、すでに亜樹の合図を待たずに自分から降りられるようになった。

道流「ほら早く」

僕が振り向きながら亜樹に声をかけた。

すると、亜樹はゴーグルを外した。

亜樹「道流!気をつけないと……」

道流「ごめんごめん。気をつけるよ」

僕は話しを遮り、先回りするように謝った。

亜樹は不安そうな瞳を向けて、ふたたびゴーグルを着けた。

板を交互に滑らせながら移動して、先ほどとは違う所にやって来ると、景色は一変していた。あれだけ奥深くまで続いていた二色の様相も、空の天気の変化に一色となってしまった。

かろうじて街は見渡すことができるのだが、どこか味気なない。

道流「亜樹よろしくね」

このとき、僕は浮かれていた。

亜樹「初めてのコースだから、ゆっくり行くよ」

そう言いながら、亜樹は僕よりも三歩先を滑り出した。

亜樹「私の背中について来てね」

亜樹の言葉に続いた。

初級者コースよりも傾斜が鋭くなっていたので、気づかないうちにスピードが上がっていた。

僕は少し焦りながらも、とっさに板を八の字にして安定させた。

亜樹「そうそう。落ち着いてね」

亜樹は細かく振り向き、僕の様子を確認した。

しかし数十メートルも進むと、だんだん気持ちが昂ってきてしまい、僕は勝手にスピードを上げた。

道流「どう亜樹!もっと行けそうだよ!」

先を滑っていた亜樹に追い付くと、僕は自信あり気に言った。

亜樹「調子に乗らないの!」

道流「大丈夫だよ!」

周りのスキーヤーに触発されたのか、僕はさらに前に出た。

亜樹「あっダメ!その先は……」

亜樹の声が聞こえたときには、僕の体は宙に舞っていて、そのままコース横のロープをすり抜け茂みに突っ込んだ。

僕は何が起きたのか理解できず、ただただ唖然としていた。

亜樹「道流!」

亜樹が心配そうな声を出しながら滑り寄って来た。

亜樹「大丈夫!?痛いところとかない!?」

道流「うんなんとか。ちょっとびっくりしちゃったけどね。何がどうなったの?」

僕は上半身を起こすと問いかけた。

亜樹「数メートル先に一ヶ所だけ膨らみがあったんだよ。道流はスピードが出てたから、それに乗ってジャンプしちゃったの」

道流「そうだったんだ」

すると亜樹は、ゴーグルを外して、

亜樹「バカ!だから言ったでしょ!」

その声は、周りの人達の視線を集めた。

道流「……ごめん。調子にのって」

冷静になってくると、頭の中に直前の光景が蘇ってきて、自分の体が小刻みに震えているのに気づいた。

亜樹「本当に……。どのスポーツも同じだと思うけど、怪我って怖いんだよ?だからこそ、基礎をしっかり身に付けて、準備をしないといけないの」

道流「そうだね」

亜樹の言葉に恥ずかしくなった。

その後はあらためて、亜樹の指示に従いながら麓まで下りて来た。

しかしそのタイミングで、やはりというか、さらに雲行きが怪しくなった。腕時計の針が十五時を指したところだった。

亜樹「そろそろ、かなぁ」

亜樹は空を見上げながら、残念そうに言った。

道流「でも、これからコテージに向かえば、ちょうどいいんじゃない?お風呂入って、すぐご飯だよ」

すると、亜樹の瞳が輝いた。

亜樹「日本酒!熱燗!もう我慢できないっ!行こう道流!」

亜樹は僕の腕を掴むと、ロッジに引っ張り込んだ。僕はやれやれと思いながら、スキーセットを返却すると、車に乗り込みスキー場を後にした。

―――

車を走らせ一時間ほどが経った頃に、僕達は宿泊先に着いた。

外見はログハウスのコテージ。その建物が幾つかあってそれぞれに宿泊ができる。

僕と亜樹は車を止めて、さっそく受付を済ませると、コテージに向かいオーナーからの説明を受けた。

「では、ごゆっくり」

髭を生やした渋い顔のオーナーが、笑顔で軽く会釈をすると部屋から出ていった。

道流「いい雰囲気だね」

僕は十二畳ほどの部屋を見渡しながら、荷物を整理している亜樹に声をかけた。

亜樹「ね。でも、私は懐かしい気分だよ。小さい頃はいつもこんな感じだったから」

道流「え?家がってこと?」

亜樹「ううん。年に数回だけど、友達家族とスキーに行ってさ、それで別荘に泊まるの……楽しかったなぁ」

亜樹は自然と笑みがこぼれていた。

道流「友達って、女の子?」

亜樹「ふふ。気になる?」

道流「……まあね」

僕はいぶかしげに頷いた。

亜樹「女の子だよ。いつも三人で遊んでて、凄い仲良しだったんだ」

道流「家族ぐるみの付き合いってやつだ」

亜樹「そういうこと。さて、晩御飯まで時間があるから、ひとっ風呂入って来ようかな」

道流「一人で?」

僕はニヤニヤと笑った。おそらく亜樹は、そんな僕に呆れた気持ちを抱いているだろう。

亜樹「変態」

そう言うと、亜樹は僕を横目に浴槽に向かった。どうやら、今はそのときではなかったようだ。

僕は残念に思いながらコテージを出ると、体いっぱいに伸びをして、大きく息を吸い込んだ。

山の空気は本当に美味しい。

当たり前のことだが、都会にいれば嫌でも聞こえる雑音が、ここではまるで聞こえない。

耳を澄ますと、近くで川が流れているのか、水の音がヒーリングミュージックのように聞こえる。それに、周りの景色はコテージと森、そして雪だけだがとても落ち着くし、ここの時間は穏やかに進んでいる気がする。まるで僕と亜樹、二人だけの世界にいるのかと勘違いしてしまいそうになる。

しばらくの間、僕はウッドデッキで目を閉じながら、自然の中に身を委ねていた。

―――

夕陽が山々の影に落ちていく頃、コテージの中で僕は叫んだ。

道流「ああっ!」

その声に、亜樹は驚き体をビクッと動かした。

亜樹「何何っ!?どうしたの!」

道流「ご飯がない!」

亜樹「……え?」

亜樹はすっとんきょうな声を出すと固まった。

道流「亜樹、忘れてたよ!」

すると、亜樹は両手をパンと合わせて、

亜樹「そうだ!ここ自炊なんだ!」

道流「そうだよ〜すっかり忘れてた。はぁ、今から山を下りないと」

亜樹「えぇ!?どれくらいかかるの?」

僕は地図を開いて、ルートを指でなぞっていった。

道流「…………三十分から、一時間くらいじゃないかな」

亜樹「凄い誤差があるけど?」

道流「細かいことは気にしない!ほら、行くよ」

黒いソファーから腰を上げて促した。

亜樹「私、お腹が空き過ぎて力が出ないの」

道流「なにアン○ンマンみたいなこと言ってるんだよ。ほら、亜樹」

僕は正面に座っている亜樹を抱え上げた。

道流「はい、立てたよ。もうちょい頑張ろ。お酒いっぱい買ってあげるから」

その言葉に反応したのか、亜樹は目を見開いた。

亜樹「お酒!日本酒!行こう行こう!」

亜樹はダウンジャケットを羽織るなり、一目散にコテージから出て行った。

僕は、やれやれとため息をつきながら、その後ろ姿を追いかけた。

そして、僕達が車に乗ろうとしたときだった。

ちょうど隣のコテージから、ぞろぞろと三人の中年男性が出て来て、僕に気づいた。

男性「おうこんばんわ。こんな時間にお出かけかい?」

三人の中のリーダー各だろうか、のそのそと歩きながら、大きなお腹を揺らしていた。

道流「はい。実は、晩御飯を買い忘れてしまったので、これから買い出しです」

男性「ははは!奇遇だな!実は俺達もなんだよ。まいっちゃうよなーホントに。道は知ってるのかい?良かったら、後ろについて来な。案内してやるから」

男性は野太い声を出した。

道流「本当ですか!助かります」

僕は軽く会釈をすると、男性達に続き車を発進させた。

山を下りながらしばらく走ると、街の明かりが見えて来た。僕が予想していたよりも随分早く着いたようだ。

亜樹「お酒ーお酒ー!」

亜樹は隣で口うるさくお酒という単語を連呼していた。

遠くから見たときはわからなかったが、結構大きなスーパーだ。駐車場もかなり広く、停車位置は建物から離れてしまった。

男性「兄ちゃん!帰りは大丈夫か?」

車を降りるなり、男性が気遣ってくれた。

道流「はい大丈夫です!わざわざありがとうございました!」

再度僕が会釈をすると、男性はにっこりと笑い、連れの人達とスーパーに歩いて行った。

亜樹「なんか、元気な人だったね」

道流「多分亜樹と一緒で、このあとが楽しみなんだよ」

楽しみという言葉が亜樹をはっとさせた。

亜樹「お酒〜!」

あらためてわかった。今度から亜樹を怒らせてしまったときは日本酒を用意して、晩酌をしてあげれば万事解決できるだろうと。

さっそく店内に入ると、僕はカートを押して食材を探しに向かった。ちなみに亜樹はお酒コーナーにまっしぐら。素直な妻だとしみじみ感じた。

本来なら気合いを入れて豪華な食卓にしたかったが、あまり時間がかかると、亜樹が我慢出来ずにお酒に走ってしまうと思ったので、とりあえず程度にまとめることにした。

そのときにパッと思い浮かんだのがシチュー。僕は野菜と鶏肉、ルーをかごに入れた。そして、忘れてはいけない。お酒を飲むと言うことは、おつまみだ。

だが、僕が踵を返そうとしたとき、亜樹はすでに両手いっぱいにおつまみと日本酒を持って、後ろからやって来た。

道流「本当に?」

思わず声が漏れた。華奢な体に童顔な顔。可愛らしい見た目とは裏腹に、両手に持っている物は実に不釣り合いで不似合いだ。

亜樹「マジです」

ドヤ顔だった。

道流「……さすがですね」

ただただ苦笑いを浮かべるしかなかったが、ルンルン気分な亜樹の後ろに、さきほどの男性がやって来た。

男性「はははっ。お嬢ちゃん凄いね」

男性は亜樹の姿に驚いていた。それはそうだ。夫の僕でさえ驚愕なのだから。

そのまま視線は亜樹の顔へと向けられ、

男性「おっ!お嬢ちゃんえらいべっぴんさんだね」

亜樹の顔を上から覗き込むように見た。

亜樹「そうですか。ありがとうございます」

亜樹は恥ずかしいのか、うつむいてしまった。

男性「俺、お嬢ちゃんみたいな子タイプなんだよ。なぁお兄さん。良かったら晩飯食べたあと、一緒に飲まないか?うちは男だけで暑苦しいからさ、どうだい?」

僕は亜樹の顔を見たあと少し悩み、

道流「お誘いはありがたいんですけど、妻と相談してから決めさせていただきます」

男性「そうかそうか。そりゃ突然だから困るわな。じゃあ待ってるから、いい返事を頼むわ」

男性は、また野太い笑い声を上げた。

男性「おっそうだった。俺は五十嵐。よろしくな」

五十嵐は僕の返事を聞くことなく、そのまま振り返り行ってしまった。

亜樹「元気で愉快で、フレンドリーな人なんだね」

道流「話す度に、印象が増えていくね」

僕と亜樹は笑った。

そして、晩御飯の材料、お酒、おつまみ。目的の物が揃うとお会計を済ませてスーパーを後にした。

コテージに帰って来ると、僕はさっそく支度にとりかかった。

亜樹は寒かったのか、ソファーの隣に置いてあるストーブに両手を突き出して暖めていた。

亜樹「道流。まだ?」

道流「さすがにまだだよ。もうちょっと待ってね」

僕に鍋に野菜などを入れながら答えた。

亜樹「さっきのお誘いどうする?」

道流「僕は構わないんだけど、亜樹は?せっかくの二人旅だし断ってもいいよ」

僕の言葉に対して、亜樹はなかなか返事をしなかった。僕は鍋に蓋をして振り向くと、

亜樹「……ねぇ、変なこと聞いていい?」

亜樹はストーブの火を眺めていた。

道流「ん?いいよ」

亜樹「私、あの人ともセックスするの?」

突然の言葉に、僕は唖然とした。

亜樹「もし、道流が見たいなら……」

僕はすぐに、亜樹を後ろから抱きしめた。

道流「ううん、大丈夫だよ。今はそんなこと思ってないから。嫌ならしなくていいよ」

その言葉に嘘はない。僕は確かに、亜樹のセックスが見たいと思ってる。でもそれは、僕が願い亜樹がしてもいいと認めてくれることが前提だ。

亜樹「嫌なら?じゃあいいよって言ったら?」

亜樹の言葉は、まるで僕の心を見透かしたようだった。

道流「……亜樹、どうしたの?」

亜樹「なんか……なんだろうね。……私ね、今したいって思ってる」

道流「どういうこと?」

亜樹「ごめん道流。お酒飲みに行こ」

亜樹は振り返り、僕に瞳を向けた。

道流「それは……構わない、けど……」

情けないほどに曖昧な返事をしてしまった。

亜樹「それでね。私がすることを、私の姿をちゃんと見てほしいの」

僕は、亜樹の意図が理解できなかった。急にどうしたの?そんな思いでいっぱいだった。

道流「……わかった、約束する。でも、危険だと思ったらすぐに止めるからね」

亜樹「うん。ありがとう」

―――

晩御飯も食べ終わり、僕と亜樹は隣の五十嵐のコテージに向かった。

ただ、一つ気になったのは、亜樹が部屋を出る前に服を着替えたのだ。

胸元が開いているニットに、さきほどはパンツだったのをロングスカートに。

僕の頭が理解できないまま、体だけが反応して期待していた。それに多少だが、その期待の中に興奮も混じっている。

僕がドアをノックするとドアが開き、五十嵐が暖かい空気と共に顔を出した。

五十嵐「おぉ!待ってたぞ!さぁ、むさ苦しいところだけど入って来れ!」

部屋は僕達のコテージと同じ内装だった。

テーブルを中心にして、四方に四つのソファーが置いてある。どれも二人掛けだ。

五十嵐「じゃあ紹介するな。こっちのガリガリ眼鏡は安田。そんでもう一人のデブは後藤だ」

僕達も返すように名乗り、会釈をした。

後藤「うん。よろしくね。でも、ちょっと待ってくださいよ。デブって五十嵐さんもでしょ?」

五十嵐「俺はデブじゃなくて、メタボだ!」

安田「一緒でしょまったく。こっちこそよろしく」

三人の印象は柔らかくて、取っ付きやすいと思った。

五十嵐「何一人だけいい顔してんだよ!亜樹ちゃん、ちなみに安田はこんなオッサンだけど、童貞なんだよ」

すると、安田は顔を真っ赤にした。

安田「五十嵐さん!今そんなこと言わなくていいでしょ!」

五十嵐は高らかに笑った。

後藤「ごめんねお二人さん。こんな俺達だけど、楽しんでいって」

後藤がかしこまって言った。

道流「はい。じゃあお言葉に甘えて」

僕達はソファーに腰かけた。

五十嵐「俺は亜樹ちゃんの隣だ。ははは!」

五十嵐はすこぶる上機嫌だ。そんな様子に、安田と後藤はため息混じりの息をはいた。

僕達はさっそく乾杯をした。僕と亜樹が同じソファーに座り、斜め隣に五十嵐、そして僕の正面に残りの二人が座る形となった。

どうやら三人は仕事の同僚で、この三連休にスキーをしにやって来たのだとか。

五十嵐「へぇ、じゃあ亜樹ちゃんはスキーが得意なのかい?」

亜樹「はい。スノーボードもできますよ」

二人はグラスに入れた日本酒を飲みながら意気投合していた。

五十嵐「可愛い顔してるのに、なんか格好いいな!」

亜樹「ありがとうございます」

会話も弾んでいるようで何よりだった。

ちなみに安田と後藤は、あまりお酒が強くないのか、二、三杯飲むと口数が減ってきて目がトロンとしてきた。

五十嵐「ったく。眠いならとっとと寝ろよ!せっかく二人が来てくれてるって言うのに」

五十嵐が見かねたのか、亜樹との会話を止めて、二人に一喝した。

道流「いえ、気にしないでください」

安田と後藤の二人は、僕達にごめんねと言うと、ベッドがあるロフトに梯子をつたって上って行った。

五十嵐「悪いね」

道流「いえいえ」

亜樹「あまりお酒が?」

五十嵐「普段は強いんだがね、疲れもあるんだろうよ」

五十嵐はグラスを手に取ると、一気に喉に流し込んだ。

五十嵐「それにしても、亜樹ちゃんは可愛いね。一杯注いでもらえないかな?」

グラスを差し出すと亜樹がすぐに応じた。

亜樹「どうぞ」

五十嵐はありがとうと一言口にすると、お酒をまたグビグビと飲んだ。

五十嵐「二人はもう長いのかい?」

おそらく結婚してからという意味だと僕は思った。

亜樹「はい。と言っても五年ですけど」

僕は亜樹の横顔に視線を向けた。

五十嵐「ふふ。やっぱり女だな。俺は夫婦としてのことを聞いたつもりだったが、その感じだと、出会ってからだろ?」

亜樹「そうですけど……」

え?と亜樹は僕の顔を見た。

道流「僕も結婚してからだと思ってた」

亜樹「え?そうなの?私は出会ってからだと思ったから」

五十嵐「男と女は色んなところが真逆って言うからな。俺の別れた女房もそんな感じだったよ」

哀愁を漂わせる雰囲気に、僕達は言葉が出せなかった。

五十嵐「おっと、せっかく二人と飲んでるってえのに、しみったれちゃしょうがないよな。ほら、道流君も飲みな」

その後は、亜樹が期待するようなことも、僕が思い描いていたことにもならなかった。

亜樹はなんであんなことを言ったんだろうか。僕はなんで期待したのだろうか。

僕がいて、亜樹がいて、そして相手がいる。いつもなら、ここで亜樹が抱かれて僕がオナニーする場面だ。

ただただ楽しい時間を過ごしている自分が変に感じ……不思議な気分だった。

―――

僕と亜樹が自分達のコテージに戻って来たのは、飲み出してから二時間ほどが経っていた頃だった。

道流「亜樹、こっちを向いて」

僕は亜樹の背中に話しかけた。

亜樹はクルっと勢いよく振り向き、

亜樹「ごめんなさい!」

何故か謝った。

道流「え?違うよ。僕はそんな、何も思ってないよ」

僕があたふたとしているとき、亜樹は無言で僕の手を掴むと、自分の股に運んだ。

道流「亜樹?」

僕はすぐにロングスカートを捲って、パンティを避けて秘部に指を当てがった。

道流「……濡れてる」

その濡れ方は僕でさえ驚いた。

亜樹「ずっと想像してたんだ。私があの三人とセックスをしたら、道流は私に興奮してオナニーしてくれるのかなって」

道流「するに決まってるよ!……あっいや、それはそれでおかしいか」

僕は笑ってしまった。

その姿につられるように、亜樹も吹き出した。

亜樹「ははっ、本当におかしいよ。でも、ごめんなさい。浮かれてたのかな、なんか自分でも不思議な気分だったんだ。別に疼いてたわけじゃないのに、したいって」

亜樹の匂いには、普段とは違うお酒の匂いもほんのり混ざっていた。

おそらくそれだけが原因ではないだろうけど、浮かれているのは僕も同じ。スキーのとき、亜樹に怒られたことが何よりの証拠だったと思う。

道流「亜樹、今日はもう寝よ。それでさ、明日は思いっきりスキーやろ!もうセックスなんて考えられないくらいにさ!」

どこか矛盾している気持ちを隠して、僕は力強く言った。

亜樹「うん、そうだね。明日こそ上級者コースで滑ろ」

―――

翌朝、朝御飯を食べるとスキー場に向かった。

前日よりも早くに行って人が少ないうちに楽しもうという計画だったのだが、それが項を成し、駐車場に止まってる車もまばらで人の姿も数えるほどだった。

それに風がそよとも吹かないし、天気は快晴で雲一つない空が広がっていた。

僕と亜樹はさっそくロッジに行き、スキーセットをレンタルすると、大事な大事な基礎練習から始めた。

亜樹「ちゃんとストレッチもするんだよ」

亜樹の練習方法に、僕は学生時代の体育を思い出して懐かしくなっていた。

そして初級者コースを数回滑りながら、前日の勘を取り戻すように体を馴らしていった。

ほどなくして、

亜樹「じゃあそろそろ、行ってみる?」

僕のそろそろという気持ちを察したのか、亜樹は山にある一つのコースを指差した。

道流「大丈夫かな……」

それは上級者コースだった。せっかく来たんだし一度くらいはと思っていたが、いざそう言われると、茂みに突っ込んだ記憶が蘇り不安になってしまった。

亜樹「大丈夫。私もいるし、あんまり怖かったら、端っこをゆっくり下りてくればいいから」

亜樹の言葉は優しくて、凄く心強かった。

しかし、上級者コースのスタート地点にやってくると、その光景に息を飲んだ。

まるで断崖絶壁。亜樹が隣にいてくれなかったら、素人の僕には到底滑ることはできないだろう。

道流「亜樹、本当に?」

僕の体は小さく震えていた。

亜樹「その感じだとまだ早かったね。それじゃあ端っこからゆっくり行こ」

亜樹の背中に、僕は情けない気持ちになってしまった。

道流「ごめんね亜樹。僕がいなかったら、一人で楽しめたのに」

すると、亜樹はすかさず振り向き、

亜樹「バカ。二人だからこそ楽しいんでしょ」

一瞬、僕の心の中に後悔が生まれた。

道流「ごめん」

亜樹「ほら、早く行くよ!……あっ間違えた。ゆっくりね!」

亜樹は白い歯を見せて笑った。

いつもいつも、亜樹は笑顔をくれる。どんなときも、その笑顔に救われた。

僕が及び腰だったので、ある意味何事もなく麓まで下りて来れた。

昨日の段階で、もし調子に乗ってこのコースに向かっていたら、間違いなく怪我をしていただろう。恐怖があったからこそ身の丈をあらためることができた。

これこそ、失敗から学ぶの典型的な例かもしれない。

道流「ねえ、亜樹の本気で滑ってるところが見たいんだけど、ダメかな?」

亜樹「別にいいけど。でも上からだと見えないんじゃない?」

道流「いや、下から見てるよ。このままの調子だと亜樹の格好いい姿が見れないからね」

僕は苦笑いをして、亜樹に促した。

亜樹「わかった。ならちゃんと見ててよ?戻って来たら、その格好いい姿をレポートにまとめてもらうからね」

道流「ははっ。それは勘弁して」

亜樹をリフトに見送ると、僕は上級者コースのゴール地点で待っていた。

携帯にこれから下りるよ、というメッセージを確認すると、僕は自分と同じ服装を探したのだが、その矢先、亜樹の姿はすぐに目についた。他のスキーヤーをどんどん追い抜いて、右に左に板を滑らせながら、凄いスピードで下りてきた。

他の人達だって、素人の僕から見たら凄い。でも、そんな中での亜樹は、特別に異彩を放っているように見えた。

本当に速攻だった。瞬く間に、僕の目の前で雪を舞い上がらせ止まった亜樹の姿は、

道流「格好いい」

それ以上の言葉が思い浮かばなかった。

亜樹はゴーグルを外すと、

亜樹「だしょ?」

その返事も、たった一言だが雄弁に感じる。

道流「何かね、僕、亜樹のことがもっと好きになったよ」

亜樹「本当に?やったね。ありがとう」

道流「ねえ亜樹。もう一回だけ挑戦していいかな?自分の立場はわきまえてるけど、僕も滑ってみたい」

亜樹「……わかった。でも、二人でね」

道流「ありがとう」

だが、理想や意気込みだけで滑れるはずもなく、まだまだ時期尚早だった。僕は至るところで転び、無様な姿になりながら、亜樹の数倍の時間を要して下りて来ることになった。

道流「ハァハァ……もう少しで雪だるまになるところだった」

僕の全身には、その証のように雪がビッシリ着いていて、亜樹が払い落としてくれた。

亜樹「でも、格好よかったよ」

道流「え?嘘だよ。これじゃあダメでしょ」

僕がいぶかしげに言った。

すると亜樹はふふっと笑いロッジに向かった。僕は疑問に思いながらも、その後ろ姿を追いかけた。

―――

スキー場には時間の経過とともにたくさんの人が溢れていた。

そんな中、僕と亜樹はロッジ横の隅で、雪椅子を作り座っていた。

道流「混んできたね。……そろそろ引き際かな」

亜樹「いいの?私は満足できたけど」

亜樹は小さな雪の塊を作っていた。

道流「上級者コースで、もう一回だけ滑りたいかな。今度は自信を持って下りて来れそうな気がするんだ」

半分は意地を張ったが、もう半分は本当に素直な気持ちだった。

僕が亜樹の方に顔を向けると、亜樹は雪の塊を二つ作っていて、それを重ねた。

そして、目を描いて口を描いて。さらに、お腹のところにみちると名前を描いた。

亜樹「さっきの道流の成れの果てがこんな感じだよね」

完成した雪だるまを、嫌味ったらしく意地悪に見せてきた。

道流「うるさいよ。ていうか、それなら亜樹だってこうだよ」

僕は、すぐさまもう一つ小さな小さな雪だるまを作って、お腹にあきと名前を彫った。

道流「これが亜樹だよ」

僕も意地悪な笑みを浮かべた。

亜樹「そんな小さくないよ。ホントに失礼しちゃうね」

僕と亜樹は笑い合うと、お互いの雪だるまを雪椅子に並べて置いた。

亜樹「それじゃあ最後に、一回だけ滑ろうか」

道流「うん。行こう」

リフトに並ぶこと数十分、やっとの思いで乗ることができた。

しかし、登り初めてからしばらくすると、ガタンと大きな音が鳴り、異常が見つかったので少しの間停止するというアナウンスが流れた。

亜樹「たまにあるやつだから、大丈夫だよ」

道流「ありがとう。本当に亜樹は優しいね」

亜樹「馴れてるからね。でも初めてのときは不安になるから」

亜樹は右手を、僕の左手に乗せてくれた。

道流「亜樹の手は温かいね」

亜樹「それは心が温かいからだよ」

道流「はは。よく言うよ。お酒の力だろ?」

僕は悪戯っぽい笑顔を向けた。

亜樹「違います。私の心が満たされてるからだよ」

その笑った表情は、あどけなくて愛らしかった。

道流「でも、昨日は不満そうに見えたよ?」

その言葉に、亜樹はそっぽを向いて、

亜樹「そう……」

景色を見据えながら、にべもなく答えた。

それから少しの間沈黙が流れた。いつの間にかスキー場に流れていたBGMも止まり、コースを滑り下りて行く人達のたくさんの笑い声だけが聞こえてくる。

道流「なんか上手く説明できないけど、この状況も悪くないね」

亜樹「うん。私もそう思う」

涼しい顔をして答える亜樹の手を、僕はそっと握った。

道流「こういうのを、永遠に続けばいいって言うのかな?」

亜樹「……それは嫌だよ」

道流「え?」

亜樹「永遠なんて言葉はいらないよ。だっていつか必ず終わりが来るんだから。それだったら、私はこの一分一秒を大事にしながら胸に刻みたい。好きな人や家族、友達との時間を大切にしたいから」

亜樹は、足を振り子のように動かしながら言った。

道流「うーん。それだったら僕は……一分一秒無駄にしたくないから、皆の気持ちがわかるようになりたいな。そしたら、その人に会うたびに笑顔にしてあげられそうだから」

僕は誇らしい気持ちになりながら言ったが、次に返ってきたのは意に反して予想外の言葉だった。

亜樹「それなら、私は道流のこと嫌いになるよ」

道流「えっ…..どうして?」

亜樹「……とりあえず他の人は置いといて。もし、本当に道流が私の気持ちを知ってるなら、それは本当の道流じゃないよ」

言葉の意味がわからなかった。

道流「……なんか、全部否定されちゃうね」

亜樹「私のことわからなくなっちゃったでしょ?でも、それでいいんだよ。わからないから相手のことを考えて、悩んで、葛藤するんだから。何が好きなのかな?どうすれば喜んでくれるのかな?とかね。だから道流も私のことを否定して。そしたら、私も道流のことをいっぱい考えるから」

そのときハッとして、僕はようやく亜樹の話しの意味を理解して胸を打った。

葛藤して、間違えて、失敗して、怒られて、嫌われて、でもそれがあったから、僕は本当の自分を亜樹に見せられた。もし、亜樹の心を知っていたら、僕は装飾された仮面をつけて、豪華なマントを羽織、偽りの自分を見せていたんだと思う。好かれたいがために、格好つけて、本来持ってる弱さを隠してしまうことになっていた。

そう。亜樹が言うように、知らないからこそ僕は等身大の自分で挑戦できたし、だから僕は亜樹に愛されたいと思ったんだ。

道流「亜樹、ごめん。そうだよね。飾り付けたら見えなくなるもんね」

亜樹は微笑みながら、僕の目を見つめてくれた。

亜樹「今の道流なら、永遠も悪くないよ」

僕は溢れてしまいそうになった涙を隠すように、亜樹の頭を自分の肩にもたれかからせ、その上に僕も頭を乗せた。

そして、握った手はさらに強く。僕は瞳を閉じた。亜樹のぬくもりと、自然の音に耳を傾けながら、昨日とは違う、今度は二人で、この白い世界に身を委ねていった。

―――

僕達はスキー場を後にすると、そのままスーパーへと向かった。買い物を済ませて車に乗り込もうとしたときだった。見覚えのある車が隣に停車した。

五十嵐「おぅ!奇遇だな!今日はもう帰りかい!」

その車から降りてきたのは五十嵐と安田と後藤だった。相変わらず五十嵐の野太い大きな声は、広い駐車場でもよく通る。

道流「はい。もうどこも混んでると思ったので、コテージに帰って早めの晩酌です」

五十嵐「はははっ!いいねえ!実は俺達もなんだよ。良かったら今日も来なよ!今度は、五人でな」

そう言うと、五十嵐達はスーパーに向かって行った。

亜樹「昨日は寝ちゃったからね。あの二人」

道流「そうだね。でも、どうする?」

亜樹「……とりあえずコテージに戻ろう。それから考えればいいよ」

亜樹の言うとおりに、僕は車を発進させてコテージに戻った。

到着したときの時間はまだ午後の二時だった。僕は晩御飯の支度だけでもしておこうと思いキッチンに立った。

亜樹「今日は何?」

僕が食材を切っていると、亜樹が隣からひょこっと顔を覗かせた。

道流「寒いから鍋にしようと思ったんだ。豆乳鍋だよ」

亜樹「おーなんか美味しそう」

道流「そう言えば、作るの初めてだったっけ?楽しみにしてて」

亜樹「うん。……あっ、ねえそれだったらさ、五十嵐さん達も一緒に食べないかな?」

道流「あー確かにそれでもいいね。二人だけじゃ食べ切れないしもったいないから。その方がいいかも」

亜樹「オッケー。じゃあ後で聞いてみよ。そしたら、私はお風呂入って来ようかな。少し汗かいたから」

道流「……亜樹ちょっと待って。その前に」

亜樹「ん?」

僕は亜樹にキスをした。

道流「いきなりでごめん。本当は昨日から我慢してたんだ」

亜樹「……ううん。その気持ちにさせたのはこっちだから、私こそごめんね」

すると亜樹は、僕に抱きついてきた。

僕もそれに応えるように、両手を亜樹の背中に回して強く抱きしめ、さらに濃厚なキスをした。

亜樹も、自分でボタンとファスナーを下ろすと、ジーンズをストンと床に落とした。

ベージュのセーターから覗くように黒いパンティが見えると、僕には白い肌に相反して妖艶に映った。

僕は両手をお尻に下げていき、パンティの上から尻肉を大きく揉んだ。とても柔らかくて、弾力があって、温かい。

僕は亜樹を振り向かせて、キッチンに前屈みに手をつかせると、その温かいお尻に舌を這わせた。下から上になぞっていくように。

白くてスベスベな肌、まるで雪の上を滑るかのように舌がなめらかに動いていく。

道流「亜樹のお尻、美味しいよ」

亜樹「変態」

見えない亜樹の表情は、おそらく苦笑いを浮かべているのだろう。

するとそのときだった。ノックする音が聞こえたと思うと、ガチャっとドアが開いたのだ。

安田「突然すま……」

安田は僕と亜樹の姿を見て、文字通りフリーズしてしまった。

僕と亜樹も、何が起こったのかわからず、状況を理解するのに時間がかかった。

そして、安田は亜樹の体を見つめたあと、

安田「あっ、あっ、あぁ!ごめんごめん!ごめんなさい!」

てんやわんやになりながらドアを閉めた。

僕は亜樹にごめんと謝り、再度ドアを開けて、戻って行こうとする安田の名前を呼びながら近づいた。

安田「ご、ごめん!本当にそんなつもりじゃなかったんだ」

安田は何度も頭を下げて詫びた。

道流「いきなりドアを開けるのはダメですけど、でもそんなに気にしないでください。もう気持ちはわかりましたので。それに、何かご用があったんじゃないですか?」

安田「あっそうそう。晩御飯で鍋を作ろうと思ってさ、よかったら二人もどうかなと思って誘いに行ったんだよ。そしたら、お、奥さんのパンツが見えちゃって」

僕はそんな安田の姿が妙に可愛く見えてしまった。どこか初々しいというか、年上だけど、おそらくほっとけないっていう感じなのかな。

道流「そうなんですか。実は僕達も鍋を作ろうと思ってたんです。それに、皆さんとも食べたいなと。一緒に食べましょう」

安田はそんな僕の話しにホッとしたのか、強張りがなくなり、安堵した表情になった。

安田「それならちょうどよかった」

道流「安田さん」

安田「うん?」

不思議にも、僕は少し意地悪をしたくなった。

道流「よかったら、続き見ますか?」

安田は顔を真っ赤にさせて、

安田「いやいやいやいや!だ、大丈夫だから気にしないで!」

そう言い残すと、逃げるようにして安田は戻って行ってしまった。

その様子に申し訳なくなると、僕もコテージに戻った。

道流「亜樹、安田さん達も鍋をするんだってさ、だから一緒に食べに行こう」

ソファーに座っている背中に声をかけると、亜樹はまだそのままの服装だった。

道流「亜樹?」

亜樹「もう!本当にタイミング悪いよ!」

亜樹はプンプンと怒っていた。

道流「はは。さすがにあれは仕方ないよ。でも、見られてどうだった?安田さんがね、奥さんのパンツ見えちゃったって言ってたよ」

亜樹「……恥ずかしかった」

道流「それだけ?」

僕は亜樹の足を開かせると、指をマンコに入れた。

亜樹「あっ……」

やはり濡れていた。

道流「亜樹は、本当に見られるのが好きなんだね」

亜樹「うん。ねえ道流?」

亜樹は意味深な瞳を僕に向けた。

―――

それから一時間ほどが経ち、僕と亜樹は五十嵐のコテージに向かった。

ドアを開けて顔を覗かせた五十嵐は、亜樹の姿に驚いていた。

五十嵐「おっ?どうしたんだい?そんなミニスカートで、ええ?」

普段はその下にタイツを履いているのだが、今回は生足に白いミニスカートという明らかに挑発的な服装だった。

五十嵐は舐めるようにその白い足を見ていた。

僕と亜樹はお邪魔しますと言って、部屋の中に入る。

部屋は薄暗く、二つの窓から差し込む月明かりと、ストーブの火が艶かしく揺らいでいた。

持ってきた鍋をキッチンに置いてある五十嵐達の鍋の隣に置くと、僕はソファーに座って亜樹に視線をやる。

そして亜樹がソファーに腰をかけると、僕は三人の視線がミニスカートの奥に注がれていることに気づいた。

後藤「亜樹ちゃん、いい足だね。こんな冬にそんなミニでオジサン達を誘惑してるのかい?」

そう言われても仕方がない。これは僕達の自分勝手な欲望なのだから。

道流「すいません。実は、皆さんにお願いがあるんですけど」

僕がかしこまって言うと、三人の注目を集めた。

五十嵐「なんだい?そう言えばさっき、安田が亜樹ちゃんのパンツを見たって言ってたから、俺達にも見せてくれるのかい?」

五十嵐はニヤリと笑いながら言った。

道流「いえ、お願いというのは……僕達夫婦のセックスを見てもらえませんか?」

その言葉に三人は驚愕していた。その際、誰かの喉を鳴らす音も聞こえた。

安田「え?何を言ってるんだい?」

後藤「ははっ。凄いことを言うんだね」

安田と後藤は、五十嵐に視線を預けた。

五十嵐「変態かよ。まあでも、俺としちゃ亜樹ちゃんの裸が見れるんなら、それに越したことはねえけどよ。いいのか?」

僕は亜樹の顔を見てから、頷いた。

五十嵐「はははっ!よし!じゃあ酒だ。ワカメ酒ならぬ絡み酒だな!」

後藤「いや絡んじゃダメでしょ」

三人は笑いながら酒を出してきてグラスに注いだ。

そして、三人はそれぞれがソファーに座ると、その中央にある膝上ほどの高さの縦長テーブルに、僕は亜樹を寝かせた。

それほど大きくはないが、亜樹にはちょうどよかった。

亜樹の頭上には五十嵐、右には後藤、足元には安田が座っていた。

もうすでに、安田は亜樹のスカートの中を覗いている。

道流「亜樹、始めるよ」

亜樹「うん。でも、やっぱり恥ずかしい……」

亜樹は恥じらいの顔を見せながら、か弱くて繊細な声を出した。

僕は仰向けに寝ている亜樹の体に跨がると、ゆっくり上半身を倒していきキスをした。

チュ……チュ……と唇が重なり吸い付く音を出した。

道流「亜樹、舌を出して」

亜樹が口を開けて舌を出すと、僕も舌を絡ませた。

後藤「やべ。オナニーしてえ」

後藤がズボンを下ろしていくところが見えると、僕は安田に見えるように、スカートの裾を捲った。

おそらく安田はびっくりしているはず。そう、亜樹はノーパンだった。だから、安田からの光景は、亜樹の黒く生い茂った陰毛と割れ目が同時に見えている。

後藤「マジか!?」

後藤もそれに気づいたのか、思わず声を上げた。

僕はブラを着けていないセーターを脱がせると、乳首が勃起していて淫猥にシャツを持ち上げていた。

またここで、誰かの唾を飲み込む音が聞こえた。

僕は、左手でシャツ越しに乳首を弄りながら、体を半分捻るような体勢で右手をマンコに入れた。

亜樹も相当感じているのか、マンコからはいやらしい音が聞こえる。

乳首をコリコリと転がすと、さらに喘ぎ声も漏れてきた。

亜樹「はぁん……あん……」

夫である僕が言うのも変な話しだが、亜樹の喘ぎ声は本当に可愛い。この声を聞かせるだけでも僕は嫉妬が溢れてくる。

道流「亜樹、可愛いよ」

亜樹「はん……あっ……あん」

僕は一度、亜樹の体から下りると、シャツとスカートを脱がした。

妻の美しい雪白の裸体が露になり、男達の視線を集中させた。

僕はそのまま、亜樹の体に触れることなく羞恥にまみれる表情をただ眺めていた。

亜樹は次第に我慢できなくなってきたのか、体をモゾモゾと動かし潤んだ瞳で僕を見つめた。

亜樹「……道流……意地悪しないでよ……恥ずかしい」

その言葉にゾクゾクした。そして、三人も一緒だったのか体を震わせた。

五十嵐「たまらねえな」

ここで五十嵐と安田もズボンからモノを取り出して、上下にシゴキ始めた。

僕は亜樹の隣に跪くと、勃起した乳首を指と舌で入念に愛撫した。

乳首は性感帯。それを三人に教えるかのように、執拗に。

亜樹「あん……あっあっ!」

亜樹は伸ばしていた足を落ち着かない様子で動かしていた。

道流「亜樹、そんなに動かすと安田さんにマンコが見えちゃうよ?」

その言葉にハッとしたのか、亜樹は手で顔を覆い隠した。

そんな反応が僕を刺激したのか、わざと亜樹の膝を立たせてM字のように開かせると、安田は亜樹のピンク色のマンコを食い入るように見つめた。

安田「綺麗だ」

独り言のように安田が囁いた。

僕はさらに、安田のその目の前でマンコに指を入れた。グチョグチョになっているマンコの中は、ほんの少し出し入れを繰り返しただけで、指に愛液がべっとりと着いていた。

僕は見せびらかすようにして、その愛液を舐めた。

道流「亜樹、凄いよ。グチョグチョになってる」

亜樹「……道流、もう入れて……我慢できないよ……」

今までに経験したことのない異様な状況に、亜樹は通常以上に感じていたのかもしれない。

でも、それは僕も同じだった。僕自身も見られるという興奮が押し寄せていて、体は欲情して滾っていた。

僕は亜樹を起き上がらせると、あえて騎乗位の体勢になった。感じてる妻の姿を、より見てもらいたいと思ったからだ。

仰向けに寝ている僕のモノに、ゆっくりと亜樹がマンコを下ろして行く。

また誰かの喉が鳴ったことに気づくと、モノに熱を感じた。

亜樹が一気に腰を下ろしたのだ。

亜樹「ああぁ!」

亜樹は天井を仰ぎ、顎を突き出しながら快楽の海に入っていった瞬間だった。

亜樹「あん!….あん!……あん!」

亜樹の胸がリズミカルに弾み、そして喘ぎ声も一段と大きく可愛くなり、僕はもっと聴かせたいと思った。この声が体を熱くさせて、胸の奥を強烈に刺激する。

僕はそんな亜樹を、三人と同様に眺めていた。

左には後藤、頭上には五十嵐、そして移動したのか、右に安田が座っている。

全員が妻の体を隅々まで凝視してオナニーをしている。妻をオカズにさせているという歪んだ思考に、さらに頭がおかしくなりそうだった。

道流「亜樹。亜樹のこと皆が見てるよ。亜樹の可愛い顔も、大きなおっぱいも、エッチな体も全部」

後藤「亜樹ちゃん……いいよ」

安田「……」

五十嵐「本当に興奮させる体だな」

僕は、亜樹の体を繋がったまま反転させて、そのまま自分の方に倒した。俗に言う撞木ぞりの体位。

亜樹の体をどこからでも見てもらいたいし、突かれ、そしてよがる姿をもっと感じてもらいたかった。

道流「亜樹。亜樹大好きだよ」

僕は突きながら、両手で胸を揉みしだいた。

亜樹の髪の毛が、僕の顔を覆い隠す。乳首、お腹、陰毛、体の前面が突き出されるようになっているはず。

まだ、もっとだよ。亜樹の体を、この淫乱で変態な妻の体を目に焼き付けてほしい。

亜樹の体温を体全体で感じながら、とにかく、とにかく辱しめたい。

もっと、もっと感じて、三人の前で破廉恥で卑猥な姿を晒してほしい。

亜樹「あん……あん……あん!」

道流「亜樹。亜樹!もっとだよ!亜樹の体、肌も匂いも!」

亜樹「あっ……あん……あぁ道流!いいよぉ!気持ちいい!」

道流「まだ!もっと!」

亜樹「いやぁ!もう恥ずかしいよぉ!いっぱい……あぁん!見られてるよ!」

もう周りの三人も、一心不乱にオナニーをしていた。

道流「そうだよ!皆亜樹でオナニーしてるんだよ!」

亜樹「して!私のエッチな体で!……あん!あん!あん!……オナニーして!」

道流「あぁ!亜樹!もうイキそうだよ!」

僕は腰のピッチを早めた。

亜樹「あぁ!私も……あぁ!ダメ!イッちゃうよ!」

道流「亜樹!」

亜樹「道流!……ああぁ!」

僕と亜樹は、同時に絶頂した。

僕に迷いはなかった。亜樹の中に注いだ精子には、僕の思いがたくさん込められているような気がするから。

道流「愛してるよ亜樹」

亜樹にキスをした。

そして、僕が亜樹から離れると、三人は物欲しそうな目で亜樹の体を眺めていた。

道流「もしよかったら、もっと亜樹を感じさせてあげてください。ただ挿入はなしですけど」

その言葉を聞いた三人は、返事をする間もなく亜樹の体を貪った。

五十嵐はキスを、後藤は胸を、安田は中出しした直後のマンコにしゃぶりついた。

僕はその光景を見ながら、オナニーをした。

亜樹の体が、触られて、舐められて、吸われて、僕はたまらなかった。

三人はまるで、ローテーションのように責める部分を変えていった。

食べられてる亜樹の姿は、とても素敵だった。

亜樹「安田さん……」

当然亜樹が声を出した。

安田「え?」

不意をつかれたような声を漏らした。

亜樹「初めてなんですよね?……私のマンコでセックスしませんか?」

安田「えっえぇ!?で、でも!」

安田はあたふたとしながら、僕に視線を向けた。

道流「亜樹、ゴム……」

すらと、五十嵐がバックの中からコンドームを出して来た。

五十嵐「この旅行で童貞卒業させるつもりだったけど、まさかこんなことになるなんてな。ははは!」

安田はすぐにゴムをはめると、判断をあおぐように僕の顔色をうかがった。

亜樹「いいの、安田さん……私のマンコに入れて」

亜樹は大きく足を開き、安田を誘った。

その光景は、普段の亜樹とは考えられないくらい妖しくて色っぽい誘惑だった。

安田「いいんだね?亜樹ちゃん!」

亜樹「来て……」

その儚げな言葉に、体から脳天に向けて電気が駆け巡っていった。

安田がマンコにモノを当てがうと、

亜樹「ここです」

亜樹は自分のマンコを大きく広げた。

安田「い、行くよ」

亜樹「はい……」

その瞬間、安田はモノを奥深くに押し込んだ。

安田「あぁ……これがマンコの中なんだね。凄い暖かい。それに、亜樹ちゃんキツイ」

亜樹「あっ……安田さん……早く……私を感じさせて」

安田はぎこちない動きだったが、徐々にピッチを上げていった。

亜樹「あん……あん……あん」

安田「亜樹ちゃん……どう?僕のチンチン」

亜樹「あっ……気持ちいい……安田さんのおチンチンいい」

安田「やった!やったよ!亜樹ちゃんありがとう!」

亜樹「あん、気持ちいい……安田さんのがほしい、キスして」

安田「う、うん。もちろんだよ!」

安田は正常位の体勢のまま、上半身を倒していき、亜樹を抱きしめるようにキスをした。

亜樹が導いたセックス。そして、安田を求めるキス。

長く果てしない口づけ。その瞬間だけは、安田が亜樹の心を奪っている気がした。

さらに舌を密着させ絡ませてる。安田の唾液すらも、亜樹は愛おしそうに飲み込んでいた。

僕はたまらなかった。興奮して、嫉妬して、この内臓を鷲掴みにされる感覚。

亜樹……愛してるよ。

安田「はぁ、美味しい。亜樹ちゃんのキス美味しい。あと、唾液もいっぱい飲んだよ」

亜樹「私も……いっぱい……美味しかった」

安田「亜樹ちゃん、一緒にイこうね」

亜樹は微笑みながら頷いた。

そして安田は、ラストスパートと言わんばかりに無我夢中で腰を振った。

亜樹「あん……あん……あん!」

安田「あぁ!凄いさっきより絞まってる」

亜樹「あぁ!……安田さんいいよ!もう!……あん!……安田さんのおチンチンでイッちゃうよ!」

安田「俺もだよ亜樹ちゃん!亜樹ちゃんが可愛い過ぎて……あぁ!」

亜樹「あっ……あん……あん!」

安田「あぁ出る!!」

亜樹「ああぁぁ!!」

次の瞬間、安田はビクビクと体を震わせたあと、スッと力が抜けたのか、そのまま倒れるように亜樹に覆い被さった。

僕の手の中には、いつの間にか生温い汁がべっとりとついていて、しばらくの間、全員が余韻に浸るように、無言で一点を見つめていた。

五十嵐「フゥ!」

静寂の中、たまらず五十嵐が息を強く吐いた。

五十嵐「よし!終わりだな!お疲れさん。道流君に亜樹ちゃん、今日は素敵なもん見せてもらったよ」

五十嵐の顔は、どこかハツラツとしていた。

後藤「本当だよ。俺、何回射精したかわかんねえもん」

後藤は自分の手のひらを見て、眉間にシワを寄せた。

安田もやっと落ち着いてきたのか、ゆっくり亜樹のマンコからモノを抜いて立ち上がろうとしたが、腰が抜けて床に崩れ落ちた。

五十嵐「はははっ!まあそうなるよな!童貞の安田には、亜樹ちゃんの刺激は強すぎるわな!」

安田「亜樹ちゃんエロ過ぎるよ」

亜樹もゆっくり起き上がり、僕と瞳を重ねた。

亜樹「道流……」

道流「亜樹、凄く……素敵だったよ」

その言葉に、亜樹は満面の笑みを見せてくれた。

五十嵐「よし!じゃあ全員シャワー浴びて来い!そしたら、あらためて飯だ!」

五十嵐の声を合図に、僕達はいったん別れた。

その後、お酒はほどほどに楽しい五人の夕食を過ごした。

セックスのことはどこへやら、という雰囲気で話しは弾み、それからの時間はあっという間だった。

最後には、またスキーに来たら一緒にご飯を食べようという約束を交わし、僕達は名残惜しい気持ちになりながらも、五十嵐達と別れ、自分達のコテージへと戻って来た。

僕は隣に亜樹を座らせると、恋しくなり抱きしめた。

道流「亜樹。否定されるかもしれないけど、言わせてほしい」

亜樹「いいよ」

道流「僕は亜樹と永遠がいい。終わりたくない、ずっと一緒にいたい。ダメかな?」

亜樹「……うん。私も道流と一緒なら、永遠も悪くないと思った。でも、一分一秒大事にしながらね」

道流「ありがとう亜樹」

亜樹「……いつまでそうやってるの?」

僕は亜樹を抱きしめながら、匂いを嗅いでいた。

道流「ずっとしていたい。亜樹の匂いが好きだから」

亜樹「道流好きだもんね、変態の匂い」

道流「なんでよ。ていうかそんな匂い嫌だよ」

亜樹「ふふっ。はぁ、明日はもう帰らないと行けないんだね。残念」

道流「仕方ないよ。それに、皆待ってるよ。優衣香も美雪も真琴も。亜樹がいないと寂しくて泣いちゃうよ」

亜樹「モテる女はつらいね。しょうがない、ちょっくら帰るか」

道流「言い方。それにもう少ししたら、仕事も忙しくなるし、また残業の日々だね」

亜樹「そっか。春になると真琴ちゃんが先輩になるんだ。ははっ。何か面白いね」

道流「笑い事じゃないよ。僕もそうだけど、美雪の負担も三割増しだよ多分」

亜樹「あぁそれはあるかも。美雪ちゃんは頑張り屋さんだからね。それに比べて真琴ちゃんはダメだろうな、仕事よりもセックスしか考えてないから。エロに関しては秀才なのに」

道流「優衣香も大丈夫かなぁ。心配」

亜樹「大丈夫だよ。優衣香は出来る子だから、亜樹イズムの継承者だからね」

道流「カッコ悪〜」

亜樹「え?何?何か言った?」

道流「言ってません。……亜樹、また少し……帰って来るの遅くなるけど、頑張ってくるからね」

亜樹「うん。私も道流が帰って来るのちゃんと待ってるから」

道流「……お腹空かせちゃったらごめんね」

亜樹「そんなこと心配しない!大丈夫!道流なら出来る!」

道流「うん。そうだね!頑張る!」

亜樹「……道流」

道流「ん?」

亜樹「ヨシヨシ」

頭を撫でてくれた亜樹の手は優しくて、とてもとても、温かかった。

―――

―――

―――

《あとがき》

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけましたら、光栄に存じます。

そして、今回の投稿を持ちまして、僕と亜樹シリーズは完結となります。

「僕と亜樹……心には熱を、体は穏やかに」を投稿したときから、ここで終わりにしようと決めていました。

亜樹、優衣香、美雪、真琴、そして道流と、とりあえず全員のテーマでお話しは書けましたが、僕自身も所々納得できない部分がありましたので、もっと勉強して、次回に生かしたいと思います。

ただ、今のところ次回の投稿は予定していません。

続編なのか、それとも新しい話しなのか、色々と試行錯誤して考えましたが満足するものが浮かびませんでした。

そのため、申し訳ありませんが「未定」です。

自分でも不甲斐なくて、非常におこがましいと思うのですが、また良きアイデアが浮かぶまで、今しばらくお待ちください。

重ねて、今までたくさんの評価とコメントをありがとうございました。

そして、今まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました。

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