何時の頃からだったか、こんな真似を始めたのは。
思い返せば切っ掛けは、自宅屋根裏の収納スペースに備え付けの小窓から外を覗いた時だ。
その小窓はおそらく、明かり取りと風通しの為に付けられていたのだろう。何のことはない、ごく普通のガラス窓だ。
それを彼は――ウェブ上でデバガメと名乗ることになる中年の男性は、何の気もなしに押し開け、外を覗いた。
気持ちの良い風が吹き込み、収納スペースの埃っぽい空気を一掃する。そして外の景色が目に入った時、彼は息を飲んだ。
隣の家の二階ベランダ。そこに面した一室が丸見えになっていたからだ。
そして、そこに居たのだ。
艶やかで長い黒髪をなびかせる、目が覚めんばかりの美少女が。高校の制服と思しき紺色のブレザーと同色のスカートを、いま正に脱いで、無防備な下着姿になろうかというシーンが、そこにあったのだ。
「ウソだろ……」
呟き、目を瞬かせて、再び凝視する。夢や幻ではない。その景色は現実に存在していた。
ブレザーを脱いだ少女はネクタイも外し、カッターシャツのボタンを上から順に外して肩を開ける。すると小ぶりな双丘を覆う桃色のブラジャーと、ギリシャ彫刻もかくやという白磁の肌がお目見えした。
「おぉっ!ブラはピンク、サイズはBカップってトコか?良い感じの大きさだ!」
最初は長々と覗くつもりなどなかった。だが差し込む陽光を照り返して輝く肢体は美しくも幻想的で、彼の目を釘付けにして放そうとしない。
「さぁ、次は……」
様子を見守るデバガメの胸が期待に膨らむ中、なにも知らぬ少女は、彼の望み通りにスカートのホックへ手を掛ける。
パチ、と音がした……ような気がしてスカートが緩むと、あとは一瞬だ。紺色の布地はストンと足下へ落ち、ブラジャーと揃いのショーツが姿を表す。
「ピンクの上下!いかにも女の子らしい、可愛い下着じゃないか……」
薄笑いを浮かべるデバガメ。その間も少女は下着姿のまま、脱いだ制服を整えてハンガーに掛けて行く。
「それにしてもあの娘、丸見えなのに全然気が付いてないな。もしかして、こっち側は壁だけだと思ってるのか?」
直感で語るデバガメであったが、彼の予想は概ね当たっていた。
少女の部屋が面しているのは彼が住む家の横手側であり、見える一面は壁でしかない。そしてベランダから繋がる少女の部屋へは壁が視線を塞いでおり、周辺からは見えない位置関係となる。
だが唯一。いまデバガメが覗いている屋根裏収納の小窓。そこからは視線が通るのだ。
「小さな窓だからな、外からだと通気口にでも見えるんだろ。誰にも見えないと思ってカーテンも開けっぱなし。警戒心もゼロで堂々と開放感抜群のお着替えか……」
目の前の光景を脳に焼き付ける傍ら、彼の手は自然と自らの股間へ向かっていた。
既に大きくテントを張っていたズボンをずらすと、待ちかねたとばかりに勃起したペニスがバネのように飛び出す。
「我ながら業の深い性癖だ」
苦笑しつつ、普段の何倍にも熱り立つ股間を、自らの手で慰める。
これまでは覗き趣味はない、と自分を誤魔化してきた。だが現実に直面し、いよいよ認めざるを得なくなってきた。
こっそりと隠れて他人のプライベートを覗き見るとき、緊張感と背徳感が合わさって、得も言われぬ高揚感と性的興奮が股間を直撃する。
「――っ!!」
びくん、と全身を震わせて、早々に果てるデバガメ。右手に残る白濁液は、これまでにない量と濃度であった。
「ははっ……良いじゃないか。明日から若い娘の私生活が覗き放題だ!」
薄く笑い、明日からの日々に心躍らせる。退屈な毎日に潤いがもたらされた気がした。
「あ、そうだ」
思い立ち、デバガメがそそくさと屋根裏を後にする。しばらくして彼が戻った時、その手には望遠レンズ付きの立派なデジタル一眼が握られていた。
「無駄な買い物になったと思ってたけど、転ばぬ先の杖になったってことだな」
このカメラは以前、望遠盗撮を試みようと購入したものだ。
学校や海水浴場の更衣室、個人宅の寝室を何十倍ものズームで遠距離から覗き、撮影してやろう!と考えたものの望遠撮影は技術的に難しく思うように行かない上、バレるリスクが高いと気付き早々に諦めていた。それがまさか、こんな形で日の目を見ることになるなんて。
「神の配剤ってヤツか」
興奮を抑えながらファインダーを覗き込み、震える指でシャッターを押す。これまでカムフラージュ用の風景写真しか入っていなかった記録領域に、瑞々しい少女の飾らない下着姿が次々と収められて行った。
「心配しなくて大丈夫だよ、名も知らぬお嬢ちゃん。この写真は誰にも見せたりしない……俺のオナニー用だ」
一方的に誓いを立てるデバガメであったが、この誓いは程なくして破られることになる。彼は後日、ウェブの盗撮画像共有サイトに、黒髪美少女の盗撮画像をアップするようになった為だ。
元々彼はこのサイトの常連だった。といっても他のユーザーがアップしたものを見る方が専門で、ハンドル名も持たず、自分での投稿も行っていなかった。
しかし誰に見せても恥ずかしくない盗撮画像を手に入れたことで、同好の士と喜びを分かち合いたいという欲求が生まれ――ウェブ上にデバガメなる存在が誕生するに至ったのだ。
投稿された盗撮画像は、顔こそボカされていたが、若い娘特有の未成熟な肢体と、自室でのみ見せる無防備で物憂気な仕草が同好の士から大いに評価された。そして毛穴が見える程の高解像度画像が瞬く間に拡散されていったのだ。
被写体の新たな盗撮画像を求める声は次第に大きくなり、デバガメは少女を私室以外でも撮影し、公開していった。その中で彼女の名前や年齢――○○さや香、高校三年の十八歳だ――を知ることになったが、身バレのリスクを回避する為に個人が特定出来そうな要素はなるべく排除し、アップしないように心掛けた。
そんな生活が数ヶ月ほど続き、気温が下がり空気の乾燥してきた某日。
何時ものように盗撮画像投稿サイトを巡回していたデバガメの目に、一つのコメントが飛び込んでくる。それは彼が撮影した、さや香の画像に付けられたコメントだった。
『このアングルならライブ配信イケるんじゃね?』
「はぁ?なに言ってんだ、ド素人が。そんなリスキーな真似するワケが……出来る筈が……?いや、もしかしたら……」
出来るかもしれない。
天啓の如き閃きを得て、彼はまた新たな一歩を踏み出し……また一歩、人の道を踏み外したのだった。
ライブ配信の機材は、思いのほか容易かつ安価に揃えることが出来た。動画配信全盛の現状が、彼の行動を後押しした形だ。
「よし、映ってる?俺が喋ってるの聞こえてるか?」
手にした動画配信用の小型カメラを掲げ、ヘッドセットのピンマイクに語りかける。するとスマホに表示された盗撮画像投稿サイトのライブ配信ルームにデバガメの撮っている映像と声が流れ、その後、次々と閲覧者のコメントが表示される。
『OK、大丈夫!』
『良い声すぎワラ』
『ガチのヤツだったとは……てっきりサクラだとばかり……疑ってスマソ』
それを確認したデバガメはホッと息を吐き、カメラを構え直してマイクへ囁く。
「もうすぐ、さや香ちゃん帰ってくるから。悪いけど気の利いた実況とかは出来ないから、期待しないでくれよ」
そして何時もの屋根裏収納に身を潜め、小窓からカメラを覗かせる。
映し出される映像は、夕暮れの一軒家。何の動きも音なく、動画か静止画か判らない画像が流れ、誰かが『ラジオなら放送事故』などと茶化した……その直後だった。
「――ただいまぁ」
『キタ-----!!』
『可愛い声!期待、大!!』
玄関ドアの開く音と共に、うら若い少女の声をマイクが拾った。
「よぉし、ここからだ……!」
額に滲む汗を袖で拭き取り、姿勢を正す。何時もであれば彼女は自室へ直行し、部屋着に着替える。そのシーンを抑えることが出来れば……!
「……よしッ!!」
願ったり叶ったりとはこのことだ。デバガメが望んだ通り、少女は――さや香は自室に姿を現し、カバンを置いた。
『いまから着替える?もう脱ぐ?』
『完璧過ぎるタイミングwAVでもこんなご都合主義ないwww』
『今日はモザなしか。凄く可愛い娘だな、想像以上だ』
流れるコメントを横目でみやり、デバガメは微かな懸念を覚える。ライブでは普段のように、さや香の顔にボカシを入れることが出来ない。閲覧者に顔見知りがいたら一発で顔バレして、芋づる式に自分のこともバレて――。
『お、脱ぎ始めた』
「……っ!」
いや、いまはともかく撮影に集中しよう。
そう思い直したデバガメは、頭を振って悪い予感を振り払い、精神を研ぎ澄ます。
『今日のブラは……良く見えないぞ』
『もっとアップで頼む』
「わかってる、ちょっと待て」
デバガメは機材の倍率を操作して、カッターシャツのボタンを外すさや香に映像を寄せる。光学ズームを搭載したハイエンドのカメラは音もなく映像を拡大させ、忍者の如く少女の痴態へ忍び寄った。
「悪くないアングル……!」
デバガメが呟く。さや香は窓の方向へ半身を向けて制服を脱いでいた。
衣擦れの音さえ聞こえそうな鮮明な映像の中、少女はカッターシャツを脱いだ後、薄いキャミソールの裾に手を掛ける。そして両腕をクロスさせながら布地を持ち上げ、頭から抜き取った。
「よっ、と……ふぅ」
脱衣によって乱れた髪を、さや香は軽く手ぐしで背中へ流す。スラリと整った上半身を隠すのは、いまや黒のブラジャーのみとなった。
『お?いまの声って彼女?』
『そうみたいだ。あんな小さな声も拾うのか、良い機材使ってる』
「そりゃどうも」
デバガメは機材にはコストを惜しまないタイプだ。かけた費用は、ブラジャーに施された細やかな刺繍の映像や、少女の微かな息遣いの音といったモノに形を変えて還元されている。
『スカートもいくかな?』
『さっさと脱げ』
『確か彼女、〜〜高等学校って話だよな。確かにスカートの腰の所に校章が入ってるの見える』
皆の注目が集まる中、少女は普段通りスカートのホックを外し、脱ぎ落とす。そしてフワリと風をはらんで床に広がったスカートの下からは、黒いショーツに包まれた尻と、微かに布地が食い込む股間であった。
『脱いだ!本当に脱いだ!!』
『上下セットかよ、カマトトぶってんなぁ』
『パンツの皺が、割れ目に見えるんだが幻か?』
盛り上がる閲覧者たち。気が付けば接続数は当初の倍以上に膨らんでいた。
「んっ……」
大勢が見ているとも知らず、さや香はショーツの縁に指を掛けて食い込みを直す。その瞬間、指によって広げられたショーツの隙間を限界まで拡大した閲覧者は相当数に及んだ。
しかし、盛り上がりもここまでだ。
彼女は取り出したスウェットの上下を無造作に着込み、カバンを開け始める。宿題にでも取りかかるのだろう。
『ああ、ここまでか』
『空気読め!もっとサービスしろよ!!』
『綺麗な字を書く娘だな。ノートの内容からすると二年か?』
一時は大きく膨れ上がった熱狂も、風船から空気が抜けるように収束し、閲覧者数も徐々に下降して行く。
普段この辺りで盗撮を切り上げることが多いデバガメも、少し後ろ髪を引かれる思いを感じつつ、ライブ配信終了の流れを作る。
「よし……短い時間だったけど、ここまで見てくれてありがとな。じゃあ、そろそろ……」
そんな時だ。付けっぱなしだった集音マイクが、微かな声を拾ったのは。
「えぇ、お風呂ぉ?もうお湯溜めてしもたん?」
その声に、閲覧者の誰もが耳を峙たせた。
『いま風呂とかいった?』
『相手は親か?誰かと会話してるけど、さや香の声しか聞こえん。マイクの感度、もっと上がらんのか?』
『いけ!いけっ!入るって言え!!』
そして、全員が注目する中――。
「わかった。ちょっと早いけど、入っとくわ」
その台詞をマイクが拾った瞬間、サイトのコメント欄は『キターーーーーー!!』の大合唱で埋め尽くされる。
「マジかよ……」
デバガメとしても信じられない思いだった。たまたまライブ配信をスタートさせた当日、普段とは異なる入浴イベントが発生するだなんて!
だがそれは同時に、彼に重い責任を負わせることにもなった。
『デバガメ、当然、風呂も盗撮してくれるんだろ?』
「うぇっ!?そ、そりゃ……あ、当たり前だろ!」
彼にはそう答える以外に、道はなかったのだ。
孫子曰く「兵は拙速を尊ぶ」とのことだが「作戦は慎重に行動は大胆に」とも伝え聞く。デバガメは、どちらかといえば後者を採用したかったと考えながら、視聴者の期待に応える為、何の作戦もないまま撮影機材と共に隣家との間を仕切る植え込みに身を潜めていた。
これから行おうとしている風呂場の盗撮。そのリスクは普段の盗撮とは比べものにならない。十分な準備を整え、安全圏から一方的に視姦していた先ほどまでとは違う、行き当たりばったりの勢い任せで、いつ見つかるとも知れない危険が常につきまとう。
だが、それ故にであろうか。デバガメは、異様な興奮を覚えていた。取り返しの付かないリスクを背負っての盗撮は、彼に単なる性的興奮とは異なる新たな扉を開かせようとしていたのだ。
「よし、ここだ……!」
蚊の鳴くような声で呟き、男は音もなく薄く開いた窓の下へ身を躍らせた。頭上に見える窓は脱衣所のそれだ。ここで待ち構えていれば、おそらくは……。
「ビンゴぉ!!」
窓の隙間から覗き込むカメラのレンズが、バスタオルを抱えて脱衣所にやってきたさや香の姿を捉えた。
彼女は聞き覚えのある何某かのフレーズを口ずさみながら、手慣れた様子でバスマットを敷いて入浴準備を整える。
盗撮位置は今度も絶妙で、部屋着を脱ごうとするさや香の姿を、斜め前方から余す所なく映し出していた。
『いよいよだな』
『さや香の全てが、いま明かされる!』
『マジでガチのヤツなんだよな!?学生だぞ?リアルタイムで見えちゃって大丈夫なのか!?』
混沌としつつも盛り上がるコメント欄。そのボルテージは彼女が部屋着を脱ぎ、下着姿になると更にヒートアップしていった。
『細っこい娘だ。素っ裸に剥いてみないと真の価値はわからんが』
『黒い下着、セクシー。頼んだら一発くらいヤらせてくれないかな』
『頼まなくても、ヤりたきゃヤれば良いのでは?』
そんな会話が繰り広げられているとはつゆ知らず、さや香は背中に手を回してブラジャーのホックを外す。
プチン、と本当に音が聞こえ、ブラジャーが緩んで肌から離れる。そしてブラジャーの跡だけを残して肩紐がはらりと滑り落ちると、緩やかな曲線を描く少女の乳房が大勢の前で公開されたのだった。
「……っ!!」
窓の外に潜みながら、デバガメは喝采を上げそうになる自分を必死に押し殺していた。
初めて見たさや香の乳房は、サイズこそ特筆する程でないものの、色や形に優れた彼女に似合いの逸品だった。
ほっそりとした胸板にあって、身を捻る度にプルプルと揺れ動き、成熟の一歩手前にあるハリと弾力を兼ね備えた青い果実――それがさや香の乳房だ。瑞々しい双丘の頂点には薄い色合いの乳首が、恥ずかしげにチョコンと上向きに尖り、抓ってくれとこちらを挑発しているようですらある。
それが手を伸ばせば届く距離にある……デバガメの胸に宿る興奮は、想像を遙かに超えていた。
だが胸にばかり気を取られてはいられない。半裸となったさや香が、ショーツに指を掛けたからだ。
『さや香の、さや香が!!』
『もっと寄せろ!下から覗き込め!!』
『女神降臨!!』
見られているとは知らない彼女は、普段通り無造作にショーツを降ろす。まずは側面が引き下ろされ、背面が尻の丸みに沿って脱げ落ちる。それに引っ張られる形で中央のクロッチ部が続き、全員の注目が股間の一点に集まっている間に、黒の布地は足首から抜き取られた。
『おおおおおおおおっ!!』
『さや香のマン毛、大公開!』
『ボーボーだwwww処理してねぇのかよwwww』
『未処理でこれなら普通だよ。童貞は知らないだろうけど』
沸き立つコメント欄の通り、彼女は恥毛を処理していなかった。股間の盛り上がりに沿う形で、柔らかく細い毛が寄り添うようにして生え揃っている。特異な点はなく、極めて一般的な陰毛であったが、視聴者もデバガメも、彼女に似つかわしい恥毛だと心より感じていた。
「よし、いいぞ……良い映像が撮れてる」
一糸纏わぬ姿となったさや香をカメラに収め、感慨に耽るデバガメ。のぞきを始めてからずっと見たかった姿がいま、すぐ近くにある。想像で補間していた彼是が現実の映像で埋められ、さや香はいま、本当の意味で男たちによって丸裸にされたのだ。
しかし、このライブ配信はまだ終わらない。視聴者も、デバガメ自身も、ここで終わって良いとは考えていない。
「いくぞ……浴室だ!!」
力強く宣言し、デバガメは脱衣所の隣にある浴室の窓へとカメラを移動させたのだった。
デバガメは最初、浴室の窓へカメラを近付けた時、これでは盗撮は無理だと諦めかけた。吹き出す湯気でレンズが曇り、映像がまったく見えなくなってしまったからだ。
しかしそこは高級機材。レンズの曇りを検知すると自動でヒーターを稼働させ、見る間に鮮明な映像を復帰させた。
「助かった……高いものには、高いだけの理由があるんだな」
安堵し、窓枠から微かに浸入させたカメラを浴槽へと向ける――と、レンズがお目当てのモノを映し出す。
「はふぅ……あちち。一番風呂やと、ちょっと熱いんよね」
それは独り言ちながら湯に浸かる、全裸のさや香であった。
「ふあぁ……くふぅ……っ!」
肩までを沈める彼女は、大きく伸びをした後、クッタリと浴槽へとしな垂れる。
揺れ動く湯に乗って、手頃なサイズの乳房と恥毛がユラユラと揺らめき、その柔らかさを遙かに増して見える。もし手に取ったなら、その蕩けるような柔らかさと熱さは如何様であろうかと、誰もが無意識に妄想してしまう。
熱めの湯に温められた肌は上気して火照り、汗がじわりと滲んでしっとりとした湿り気を帯びる。呼吸も深いものとなり、その様はベッドで一戦終えた後のようであった。
「さて、と……」
そうこうする内、波を立てながら、さや香が浴槽から上がった。慌ててカメラを引っ込めるデバガメ。気付かれたか!?と気を揉んだのも束の間、彼女は全く気付いた様子もなく、洗い場に立つとボディーソープをスポンジに取って泡立て始める。
その隙にデバガメは、さや香の美しくも艶めかしい背中と尻の割れ目を映し出す。
カメラの映像は下から順にティルトして行き、しなやかなふくらはぎとムッチリとした太股。そして極上の丸みを帯びた尻から連なる腰のくびれを撮影し、無垢な背筋を舐めるように移動した後、首筋の小さなホクロと、濡れた黒髪とうなじを映し出した。
「これでさや香ちゃんの背中側は制覇したわけだけど……」
こうなれば当然、身体の前面だって見たいと思うのが心情だ。既に先ほどじっくりと穴が開く程に見てはいたが、入浴シーンは別腹であろう。
幸いにも「」#ピンク浴場には、洗い場の正面に大きめの鏡が据え付けられており、背中側からでも鏡の反射を利用して前面を盗み見ることが出来た。
「うん。良い泡!」
閲覧者の視線を誘導するかのように、さや香は細やかな泡の立ったスポンジで肌を撫でて行く。
首筋から鎖骨を通り、脇の下から両方の腕へ。柔らかな二の腕を洗った後、スポンジは乳房を少し持ち上げるようにしながら丁寧に洗って行く。瑞々しい乳房は負荷の掛かる度に柔軟に形を変え、その様は何者かに揉みし抱かれているようでもあった。
『サイズの割りに柔らかそうなオッパイだ』
『揉みたい!』
『頼めばヤらせてくれるって本当?』
コメント欄も次第に異様な熱を帯び、じゃれ合い、ふざけているような雰囲気から、本気なのかどうかと正気を疑うような投稿が増え始める。
そんなコメントを横目で確認した後、デバガメが視線を戻すとスポンジはさや香の下腹部を泡に包んでいる所だった。
白い泡は腰周りから可愛い臍。太股とふくらはぎ、爪先までを隠すように包み込み、覆い隠す。そして最後に――。
「……んっ」
両足の隙間、股座へとスポンジが滑り込むと、さや香は小さく息を飲んでその身を震わせた。そして心なしか他の部位よりも慎重に、遠慮がちに、乙女の割れ目を清めて行ったのだ。
『内側まで広げて洗わないのか』
『せっかくキレイになったのに、すぐ濡れ濡れになっちまうんだぜ』
『現地に行けば実物が見られるんだよな?』
不穏なコメントが続く中、さや香の入浴が終わりを迎える。
シャワーの水滴が白い肌で弾け、泡が洗い流されると、再び閲覧者たちの前で少女は生まれたままの姿を晒した。穢れを落とし、より一層磨き上げられた乙女の裸体はこの上なく美しく、濡れた肢体は輝いて見えた。
「今日はこの辺で切り上げるか」
さや香が脱衣所へと移動し、ドライヤーの音が響き始めると、デバガメはカメラを引っ込めた。
想定以上に上手くいった。素人が碌な計画もなく、突発的に行った風呂盗撮としては空前絶後の撮れ高ではなかったかとさえ思える。
こんなに簡単にできるなら、もっと早くからやっておけば良かった。それに今後も定期的に続けられそうだ。次はもっと凝ったアングルで、もっとプライベートな瞬間を、大勢の前で詳らかにしてやる――そんな感情がムクムクと鎌首をもたげてくる。
「そうだ、最後に……」
退散する直前、最後のオマケにと脱衣所の窓から中を覗き込む。するとそこでは髪を乾かし終えたさや香が、ショーツのみを身につけて化粧水を付けながら鏡を覗き込んでいる所だった。
窓から香るシャンプーと化粧水、そして歳若い少女のニオイ。風呂の湯気で加温されたそれらは、得も言われぬ情欲の香りとなってデバガメの鼻腔へと吸い込まれる。
この場にいる自分だけが感じられた臨場感。配信では決して伝わらないリアルなニオイ。それを意識した時、彼の右手は思わず股間へと伸びて――。
「……ん?」
瞬間、さや香が不意に振り返った。慌てて身を隠すデバガメ。
一瞬だけ彼女と目が合った気がしたが、それを確認することなど出来る筈もない。
薄暗がりの植え込みに素早く潜り込み、まんじりともせず、ただ只管に息を潜めて時の過ぎるのを待つ。
先ほどの興奮から一転、冷や水を浴びせられたかのように頭は冷え冷えとし、実際に水を浴びたかの如く全身から汗が噴き出す。自分の鼓動がやけに煩く感じられ、他人に聞こえてしまうのではないかと心配になる程だ。
そうして、どれほどの時間が過ぎただろうか。
「……そこに、誰かおるん?」
集音マイクがそんな声を拾い、さや香が窓から身を乗り出す。
このままでは見つかる――そう考えたデバガは、彼女の目が薄闇に馴染むまでの刹那、植え込みを飛び出して脇目も振らず逃げ去った。
「ひぃっ!はぁっ!はひぃっ……!!」
そして彼は走った。振り返った瞬間、そこに追っ手が迫っているのでは……そんな強迫観念に追い立てられ、一心不乱に走った。家から離れ、Wi-Fiの電波が途絶え、道路を渡って橋を越え、訪れたことのない隣町の標識が見え始めた頃……・
「はぁっ、はぁっ、はぁ……かはっ、げふっ……!」
デバガメは足を止め、道ばたの電柱にもたれかかって、全身のチカラを抜いたのだった。
「はぁ、ふぅ……さ、さっきの……見つかってた……か?」
心臓は早鐘のように鳴り響き、粘っこい汗がどっと噴き出す。
逃げ切ったか?それとも気付かれただろうか?もしかすると後ろ姿くらいは見られたかもしれない。だとしたら彼女は通報するだろうか?それとも……。
ネガティブな想像が出ては消え、消えては出る。バレていたら、どれほどの社会的制裁を受けるだろう。それを思うだけで激しいストレスが胸を締め付け、胃の中程がキリキリと痛んだ。
「こんな危険な真似、もう二度とするもんか……!」
そう誓うデバガメ。だが本人も気付かない無意識の裏側で、こうも考えていた。
絶体絶命の危機も乗り越えられた自分なら、もっと凄いことが出来るのではないか。
彼の中でその想いは、日に日に膨らんで行くのだった。