高校の女子トイレから出ていく彼女の足音

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高校の女子トイレから出ていく彼女の足音

1,女子トイレでの出来事

俺の卒業した高校が少子化で今年度末に閉校になることになったらしい。そのニュースを聞いた時に思い出した出来事があったので、ここに書くことにする。

俺が高校三年生の夏休み。もう30年以上前になる。

夏休みの補習授業があった日のことだ。

補習授業は、国公立大進学コース、私立大進学コース、一般(専門学校または就職)コースと頭のレベル別に分かれていた。

頭の悪い俺はもちろん一般コース。別名「赤点コース」

赤点を免れて、とりあえず卒業できればOKというコースだ。

授業が終わって、廊下を歩いていたら、女子トイレの前に彼女がいた。

この文中では俺の名前は、B男としておく。

彼女は俺と同じクラスだが、補習授業のコースは、国公立コースだ。俺とは違い成績優秀だ。

「B男くん。授業終わったの?」

俺を見るなり、話しかけてきた。

「ちょっと来て」

といきなり俺の手を取り、女子トイレの中に連れ込んだ。

「ななっ何?何?」

トイレの個室に連れ込まれて何のことだかわからない。

「ねぇ。キスってしたことある?」

突然のことでびっくり。こんなことをする子とは知らなかった。

同じクラスとはいえ、話したことは数えるほど。

「B男くん。キスしよっか?」

彼女は俺の肩に手をかけて個室の壁に押し付けてくる。

ドギマギして何も言えない俺

「目つぶって」

その通りにすると。やがて唇に熱いやわらかい肉が押し付けられる。

「私、初めてなんだ。」

そうなんだ・・・。

「俺も初めて・・・。」

正直に言う。

再び、唇に彼女の唇を感じる。

俺の口の中に、彼女のあたたかい唾液が少し入ってきた。

2度目のキスが終わった。

「B男くん。おっぱいさわったことある?」

目を開けて、首を横に振る。

彼女は、俺の手を取って、胸のふくらみに導いた。

セーラー服の上から感じる胸の感触は・・・水ふうせん・・・いや、やわらかめのスポンジ・・・?

なんとも言いようがない感触。

少し指を動かしてみた。

「エッチ!」

そう言って、俺の手を振りほどき・・・

「じゃあね!勉強がんばって!」

と言ってトイレから出て行った。

俺もその後に続こうとしたが、

『ここで、女子トイレから出る所を他の人に見られてはまずい』

と思って、女子トイレの入り口で、耳をすまして人の気配が無いのを確かめてから、そっと女子トイレを出た。

その夜、モンモンとして眠れない。一人エッチをして紛らわす。

『明日、どんな顔をして彼女に会えばいいのか?もしかして、俺の彼女になってくれるのか・・・?』

そんなことを考えて・・・眠れない。

2,それから

翌日、彼女は学校に来なかった。

その翌日も、その次の日も、そしてずっと・・・。

行方不明

1週間ほどして、クラス全員、一人ずつ校長室に呼ばれて事情聴取。

俺の番。校長と教頭からいろいろ聞かれた。

あの女子トイレでの出来事なんか言えるわけはない。

知らぬ存ぜぬで通した。

というか、彼女のことを俺はほとんど知らない。三年生になってから同じクラスになった。

髪の長い、成績のいい、色白で清潔そうな女子。

おとなしい感じだが、クラスのみんなとは仲良くしている印象。

俺みたいな落ちこぼれとは正反対。

でも、彼女の最後のひとこと。

「勉強がんばって」

その言葉通り、毎日、1時間は復習するようにした。

おかげで、ぎりぎり卒業することができた。

卒業の日まで、彼女の靴箱には、彼女の名前のプレートと、上靴が残っていた。

3、追憶

あの時、たぶん、彼女は、誰でもよかったのだろう。ただ、キスしたかっただけ。

たまたま、そこに来たのが俺であったというだけ。

もしかしたら、あの時、彼女に言われるがまま女子トイレについていったのは、彼女のことが好きだったからかもしれない。

あれから30年以上たった。

この空の下、どうか彼女が元気で暮らしていますように。しあわせでありますように。

彼女の初めてのキス。

俺の初めてのキス。

今、思い出す。

あの夏の日

遠くでセミの鳴き声が響く廊下。

夕日が長く差し込む赤い廊下。

パタパタと彼女が女子トイレから駈け出ていく。

リノリウムの廊下を彼女の上靴がこすっていく足音。

足音は少しずつ遠ざかり、小さくなっていく。

それを俺は耳を澄まして、女子トイレの扉のかげで聴いている。

おわり

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