翌朝、私は家から未使用のカミソリをくすねて持っていった。姉がストックしていたものである。
その日は部活は休みで、午後4時を回る頃にはもう雪の家に上がり込んでいたと思う。
学校での出来事などの他愛もない話を、出してもらったコーラを飲みながらした。
そうこうしているうちに本題になり、前回見せて貰ったときと同じように脱いでもらった。
「じゃあ、脱ぐね…」
雪が制服を脱いでいく。まだ9月で暑く、雪も私も少し汗をかいていた。
しかし1枚1枚脱ぐ度に、ふわっと甘いような香りが漂ってきた。これが女の子の香りなのかと興奮したのを覚えている。
「凄い……」
「あ……汗……ごめんね……腋、匂いするから……」
石鹸のような香りの中に、ほんの少しだけ道端に生えてる草を潰したような匂いがした。雪の言う匂いとはこの事なのだろう。ただ、不思議と嫌な匂いとは思わなかった。
「臭くないよ。雪は良い匂いやから…」
そう言いながら、雪が用意してくれたボディソープを手にとって右側の腋の下に塗った。
「あっ!こしょばいよ!あはは!」
毛が生えている分、雪の腋はよく石鹸の泡が立った。
「じゃあ、じっとしててな……」
剃刀を当てて、切らないように刃を肌に滑らせる。
「…っ!…んっ…!」
といった吐息を雪は漏らしている。その様子が感じているような声に思えて興奮した。
そうしていると、泡と腋毛が混ざった固まりが剃刀に付いてゆき、それをティッシュで拭き取った。その作業を繰り返してるうちに、右の腋が終わった。
「はい、右側はこんなもんかな?」
「凄い、綺麗になった……つるつる。凄い……!反対側…うち自分でやっていい?」
「自分の身体なんやから、やったらええやん。切らんようにな。横に動かしたら切れんで。気ぃつけや。」
「うん。怖いから、遥、見てて……」
そう言って、左側の腋にカミソリを肌と並行に滑らせる雪を私は固唾を飲んで見守った。幸いなことに、左腋も切ることはなく全て剃れた。
それにしてもこの状況は……
第三者から見ると、いつも一緒に泳いでいる同級生の13歳の女の子が、今こうして目の前で鏡を見ながら夢中で腋を剃っていて、それをちゃんと見るよう求められているという状況である。
勃たせるなという方が無理だと思った。
私は悶々としていた。すぐにでも抜いてしまいたい気持ちを抑えるので必死だった。
「あげるよ。これ雪専用な。気いつけて使って。」
「うん、出来たらまた見せる……!」
雪はまた見せてくれるらしい。それは嬉しかった。秘密を見ているような気がしたからだろうか。
いずれにしろ、女の子の体毛を処理した事も、カミソリなんて物騒な代物を誰かにあげた事も、人生で後にも先にもこの時だけである。
(続く)