その日、起きたのは昼前。
(今日は土曜日か)
千春の本命の彼氏が遊びに来る日のはずだ。今は出向?で道東に行っているらしい。そして、“本命”ということは、他にも彼氏はいるわけで。
筒抜けになっている会話を考察すると、本命は今日来る予定の国税局職員。サブは以前やっていたバンドの後輩らしい。
そして俺は単なる遊び相手。隣の部屋に彼女がいるのに、彼氏とかオコガマシイです、はい。
そんな彼氏2人と千春とのセックスも当然のように丸聞こえ。千春は本命の彼氏の不満しか俺に言ってなかったが、もう1人の男のセックスも、まーまーまーまー情けない。
2人とも早漏すぎる。
彼らには「早漏は長時間のオナニーで鍛えろ」と声を大にして言いたい。一回のオナニーで最低1時間はかけろ。出そうになったら止めて、それを繰り返せ。たったそれだけで射精コントロールが身に付く。俺のように小学5年生から始めていれば、20歳になるころにはその辺のAV男優なんか屁でもない状態になる。
…
ま、それはさておき、携帯の不在着信を何とかしよう。
「おはよ」
「…あんた、昨日どこにいたの」
「家だけど、疲れ果てて寝てたよ」
「…ふーん」このあたりで心拍数は100くらいだっただろうか。声が裏返らないように気を付ける。
「今日は来るの?」
「仕事の続きでもしようかと思ってたけど」
「うちでやればいいじゃん」
俺は施工管理技士で、休みの日にはいつも彼女の部屋で図面の仕上げをしていることを言っているのだろう。
「そうだな。じゃあ夕方行くわ」
「もっと早く来れない?今日夜仕事だから」
「ああ。じゃあ明日にしようか?」
「は?なんかアタシのこと避けてない?」
「え?どういうこと?」このあたりで心拍数は120くらいか。
「まあいいよ。今日来て。少し話あるから」
…とりあえず、寝るか。
…
駐車場から彼女の部屋を見上げる。これから始まるのが修羅場になるのか、ただの牽制で終わるのか…さてさて。
それはそうと、アパート前には1台の路上駐車。例の千春の本命の国家公務員様の車だ。毎週末はこんな感じで違法駐車を一晩中してくれる。
邪魔くせえ。まぁ、事を荒立てる必要もないから通報はしない。
それよりも、彼女、ケイをどうするかだ。
…
「早かったね」
「お前が早く来いって言ったんだろ」
部屋に上がり、彼女と共有のノーパソを立ち上げ、書きかけの図面を仕上げていく。製図CADは脳味噌を使わずに手が勝手に図面を仕上げてくれる感覚になるから嫌いじゃない。
それを知っているケイが話しかけてきた。
「昨日ね、隣の女に新しい男が来てたわ」
「へえ。どんなやつ?」…ちょい白々しいか?
「顔は見てないけど、アンタと同じような背格好」
「今来てる奴もそんな感じだったっけ」はい。運よくそんな感じです。
「アンタみたいなセックスだったから絶対違うわ」
「俺みたいって…どちゃくそ上手くてパワー系ってことか?」自分で言うってのもなかなかです。
「腹立つわぁ…。けどそんな感じで女が逝かされまくってた」
「まぁ、そんな男、そうそういないよな」
「アンタとは連絡取れないしね」
「あーだから俺だって疑ってるってことか」
「違うっての?」
「アホか」違うともそうだとも言わないってのがポイントです。
「…はぁ…次やったら殺すから。アンタも、女も」
本気で言ってそうだから怖いんだよなぁ…。
…
「どうしたのよ?休むのか?」
職場に電話していたケイ。欠勤するんだとか。
「いま酒飲んだら倒れそうだから」
「そうか。横なっとけ」
「うん…。こっち来て」
「どうした?」ええと…凶器は持っていないようですね?
「わたし、あなたのこと褒めたことないよね。カッコイイとか言ったら、すぐに調子に乗りそうだったからさ。ごめんね」
「でもあなたのこと褒める女は信じないで。あなたのことちっとも分かってない女だから」
…まぁ、1つの真理かもしれない。
…
「今日は10分超えるかな」
「は。無理でしょ」
隣では本命彼氏が頑張っているようだ。千春も大変だ。将来の安泰のために、ロクに良くもない男の相手をしないといけない。毎回不完全燃焼とか、俺なら気が狂ってしまう。
(…二物を与えず、か)
そういえば俺にはセックスしか自慢できるものはなかった。一度チンコを入れてしまえば、入れずとも触らせさえすれば、ほとんどの女は落ちたし食いついた。
…そういや、横でこちらを見ているケイもそうだった。
キャバクラで隣に座ったケイとセックスの話になった。明るくセックスを語るケイだったが、俺の常套句である“小学生から鍛えている”“20秒から3時間まで自由自在”そして最後に“直径6センチ”…これで掴みは十分だった。
それがどうやら本当のことらしいと、ズボンの上から確認したケイ。引っ張り出し、驚きながら暇にしていた同僚のキャバ嬢を呼び集めた。俺のモノを5、6人の女で囲んで見世物にするために。
「うっそ!なにこれ!?こんなの見たことないよっ!!ちょっとみんな、ね、見てこれ!すっごいよ、すっごい!うわなんでここがこんな硬いの!?笑」
…
その後すぐ、ケイとはその場で交尾することになる。
ススキノのキャバクラは全国のそれに比べてハードらしく、男の上で女が腰を振るというサービスが普通にあって、照明も落とされる。すっかり俺に発情させられたケイは、あまり長くもない時間で黒服の目を盗み、生で自分へ挿入させることに成功したばかりか、その短時間で完全に逝ってしまう。
そしてその場で射精に至らなかった俺へのアフターは、当然、ホテルへの直行となった。
(2時に終わるから必ず連絡して。こっちもするから)
俺の耳を甘噛みしながらケイからはそんなセリフ。渡された名刺には携帯番号と本名が書かれていた。
…
朝までの数時間、有言実行とばかりに徹底的にケイを満足させた。その日から俺はケイを自分の彼女にした…とは言っても、この時点でケイは7番目の女でしかなかったし、他に女がいることはケイにはすぐにバレてしまう。
まぁ…その後、ある出来事がきっかけで他の女全員と別れを宣言し、ケイ一筋となるのだが、それはまた別のお話。
…
「ねえ…、して?」
5分が経過し、隣ではそろそろ終幕となりそうな気配だ。短いとはいえ、他人のセックスは良い刺激になる。
「体調大丈夫なのか?」
「うん」
昨夜俺に抱かれた千春は、今、隣で本命だという彼氏に抱かれて喘いでいる。元から演技臭いなとは思っていたけれど、実際の千春のイキっぷりを目の当たりにしたら、あれでは演技というよりお遊戯だ。
あれほど千春を満足させたのだから、彼女の気持ちの上では、本命彼氏よりも俺は上位にランクインしているはずだ、と信じたいものだ。
(それじゃあ、千春には昨夜のことをちょ~っと思い出してもらおうか)
そんな外道なことを考えながらケイに体を重ねていく。
…
「ゴムの味とかしないんだね。したら噛み切ろうと思ってたのに」7人の争いに勝った女は怖いことを言う。
俺の好きなしゃぶり方を1年間みっちり叩き込んだケイ。あっという間に全開にさせられてしまう。
「ふーん。いつもと同じ硬さかぁ…」ガチガチになった先端に歯を立てながら、まだ言っている。
「あの女、こんなことしてくれないでしょ?」
余分な皮を強めに根元に引っ張り、裏筋に吸い付きながら軽く噛み歯先を滑らせるケイ。弱いところばかりを責められ続け、思わず声が漏れる。
「…ねえ、もう入れて?」
キャミ姿のケイは自分からこちらに尻を突き出す。Tバックが食い込んだソコは、触れると十分に整った状態になっている。
突き出された様子が、千春を犯した昨夜の映像と重なり、同じように左にズラシただけで挿入してしまう。腕も極めようと思ったが、それはさすがにやめた。
「あああっ!!!」
入れた時点でおかしかった。ケイも犯されるようなセックスが好きとはいえ、いつもの倍の音量とか普通ではない。
隣の部屋の千春に聞かせたいのか?こいつの女は自分だと、主張したいのだろうか。
なんにせよ、千春と彼氏に聞かせてやりたいのは俺も同じこと。そのままペースを上げて、それを維持する。
ケイは途中から演技できなくなり、何度か絶叫を響かせることになった。最後は軽く意識を失い、ただピクピクと痙攣を繰り返す人形のようになってしまう。
千春はこれを聞いて(バレなかったか、上手く丸め込んだ)と思って安心しているに違いない。ついでに昨夜のアレを思い出しただろうか。一緒に聞いている彼氏に対して、さらなる不満を感じてくれただろうか。
…さて、次はどうしようか。
…
1時間くらいたっただろうか。隣がバタバタしている。ケンカでもしている感じだ。ドアが強く閉じられた音と振動。
(…うるさいな…何をして…るんだ…)
…
時すでに遅しだが、この時起きて千春の様子を見に行けば、少しは違う結末になっていたかもしれない。
…
翌日、ケイは実家に用事があるらしく、車で30分の実家まで送っていけと言う。送り届けたあと、俺は昨夜のドタバタが気になり千春に連絡をしてみた。だが返事がない。
(アパートに戻ってみようか)
車はあるのだが、隣にいるはずの千春の気配がない。電話も出ない。一抹の不安を抱えつつ、連絡も取れないまま、それから1週間がたった。何度か連絡していたものの、あまりしつこいのも…と思い、後半は放置状態だったと思う。
…
仕事中に着信があった。知らない番号だが末尾が110。すぐに分かった。
(警察…?)
折り返すと、聞きたいことがあるから出頭しろという。電話で答えると言っても聞かない。来ないなら令状を取る、とまで言い出す始末だった。
その高圧的な態度に苛立ち、少し虐めてやろうと決めた俺は仕事帰りに警察署に寄ることにした。
…
刑事は千春との関係について聞いてくる。プライベートなものに答える必要はないと回答は拒否。
(千春…?まさか強姦されたとか言い出したんじゃないよな)
長時間の押し問答の末、掴みかかる刑事を4人、力で捻じ伏せて退室。あくまで退室させない連中の手を払い除けるだけに徹したが、公務執行妨害を取られてもおかしくなかった。
警察署内で1人相手にそれをやるのは、連中の恥になるらしいとは後で知った。
…
翌日早朝、ケイの部屋にて逮捕状の執行。罪名は脅迫。
ここから1年にわたる警察、検察との闘いが始まった。取り調べや裁判の経緯はエロとは関係ないので省略するが、結果的に判決は無罪。無罪となるものをなぜ逮捕、起訴したのか。以下に簡単に説明しようと思う。
…
千春からの被害届
千春は椎名に肉体関係を迫られたが、婚約者がいるからと、それを拒否。なおもしつこく迫る椎名は、ありもしない浮気相手を作り上げ、それを元に千春に対して
「俺とも関係を持たないなら彼氏に浮気をバラす」
と申し向けた。無視していると、婚約者の車へ
「お前の彼女はバンドの後輩と浮気をしている」
などという手紙を残した。何をされるか分からなく、恐ろしい。椎名を逮捕してほしい。
…
婚約者男性の調書
千春の部屋に遊びに行き、車へ戻るとワイパーに手紙が挟まっていた。内容は千春が浮気をしているというものだった。それが原因で喧嘩にもなったが、今は仲直りをしている。無理やり肉体関係を迫り、ありもしないことで私たちの関係を壊そうなどと、椎名容疑者は絶対に許せない。千春は浮気なんかしませんし、信じています。
…
俺とホテルに行っていた日時における千春の証言
その日のその時間は、友人と初めて行ったカラオケ屋さんで歌っていた。だから椎名容疑者の言うことは全て嘘です。
…
その友人の証言
その日その時間、千春とカラオケに行ったのは間違いありません。久しぶりだからよく覚えているし、手帳にメモも残しています。これが証拠です。
…
そのカラオケ店の店長の証言
常連様でないとお客様の顔は覚えていないが、その日その時間に私が会員証を作ったという記録があり、被害女性が訴えているとおりに来店されたことは間違いない事実です。か弱い女性を脅して関係を迫るなど、容疑者は絶対に許せません。
…
他にも証人や証拠は多数あったが割愛する。
これらを覆すのは困難を極め、勝率はゼロだと言う弱腰の弁護士。罪を認めないと執行猶予も危うい、と逆に冤罪を受け入れるように提案する始末だった。
…
ポイント1
脅迫として犯罪を問われているのは、千春本人に浮気をバラすと申し向けた、ということのみ。手紙は単なる事実の公開であり、脅迫とは関係がない。
ポイント2
手紙はケイの仕業だったが、問題となる脅迫とは関係がなく、また、ケイにそこまでさせてしまったことを反省する意味も込め、何も言うなと弁護士を通して指示を出した。
ポイント3
居酒屋での千春との会話で、以前住んでいた所も近かったというものがあったことを覚えていた。互いに住所を言い合い、ほんとに近いと笑っていた。
ポイント4
証人のカラオケ店店長の調書にある現住所が、1年近く前に千春と居酒屋で話した住所と、私の記憶の上で合致。店長は千春を初めて見る女性だと証言していた。
ポイント5
3条特権の行使を弁護士に指示。カラオケ店店長と千春の、過去における同棲期間の存在が明らかになった。
ポイント6
証人に、証言台に立たせた上で証言をさせ、それら全てが記憶の間違いではないことを確約させた。
ポイント7
3条特権で取得した、千春とカラオケ店店長との同棲期間の証明を証拠として提出。
…
あとは、彼らは自動的に潰れていった。芋づる式に次々と、千春側が用意した証人と証拠が無意味どころか完全にマイナスになったからだ。
見る見るうちに青ざめていく検察官の顔は、痛快そのものだった。私を犯人だと決め付け、私の人格すら否定した女性検察官。その間抜けな顔は一生忘れることができないだろう。
そして無罪判決。そしてその判決の確定。ここまで約1年。
その後の彼らへの追い込みは、ここでは書けません。
…
拘置所から出たときに、ケイに対しては、こう言いました。
「心配かけてすまなかった。だが、必ず勝つと言っただろ?あー楽しかった。国との勝負に勝った。本当に楽しかった。本当にだ。だから、お前は何も気にするな。分かったな。でも、待っててくれて、あ…ありが……」
やっぱり1人で闘うのは辛かった。怖かった。何もしていないことで犯罪者になってしまうこと。もしそうなったら、その後は、必ず、連中の命で償わせてしまうこと。俺を信じてくれている人たちを落胆させてしまうこと。それらがみんな、怖かった。
その思いが溢れ、最後まで言い切ることができなかった。
…
このままゴールインとなれば話的には上手くまとまったと思う。
しかし2年後、美尻すぎる19歳JDと俺は出会ってしまう。同じくして、ケイはキャバの客に結婚を申し込まれ、私たちの関係は終わりを迎えることになってしまう。
…
なお、千春の本当の職業は公判で明らかになった。
ルポライターは嘘で、実はSMクラブの女王様。
女王様が待ち合わせですっぽかされた挙げ句、俺にレイプされてしまったこと。
しかも、あろう事かそのレイプで人生最高の絶頂を、何度も何度も食らってしまったこと。
その翌日、見せ付けるように彼女とのセックスを聞かされたこと。
それらによって、女王様のプライドがズタズタにされてしまったこと。
それに加えて、そっちは何もかも上手くいってるのに、こっちの浮気をバラシて邪魔するなんて許せないと思ったこと。
彼氏も心配しているし、ついでに、冤罪ではめてやろうと思った。
無罪放免になったあと、千春と会うと、こんな話をしてくれた。
…
そんな話を聞くより、私は、1年溜めたザーメンで千春の子宮を埋め尽くすつもりで会いに行ったのだけど、なんだか警戒心MAXで、そんな雰囲気にならずにとても残念。あーあ残念。
…
……
今回は、そんなとても残念なお話、でした。