道流と優衣香……成長と後日談。

Hatch コメントはまだありません

新幹線の車窓から見える景色に、もう桜はなかった。初夏の匂いというのか、そろそろ季節が変わる。優衣香はそんな予感を抱きながら目的地に向かっていた。

道流「はい、どうぞ」

道流は車内販売の女性から、ホットコーヒーを二つ買って、そのうちの片方を優衣香に渡した。

優衣香「ありがとうございます」

車内には、程よい冷風が流れていた。道流と優衣香はコーヒーを冷ますようにフゥーと息を吹きかけ、立ち昇る湯気を散らしてから一口飲んだ。

緊張していた体が穏やかになっていく。

優衣香「ふふ、道流さんもですか?」

見透かしているかのように問いかけた。

道流「はは。そうだね、さすがに初めてだから緊張してるよ」

二人にとって出張は初めての経験だった。しかも本社からの応援である。道流は重圧を感じていた。

優衣香「でも、あくまで業者の方のお手伝いですよね?」

道流「まあそうなんだけれど……。僕達は本社の人間だからさ、勝手に期待されてるみたいだよ?迷惑なことにね」

道流は怪訝な顔をして窓に視線を移した。

優衣香「たしかにそれは嫌ですね」

優衣香は短い苦笑いを浮かべた。

優衣香「今回の詳しい目的は?」

道流「ああそっか、話してなかったね」

今回、道流達の会社では近畿地方に支社を立ち上げる案が出ていた。そのため、各地にある支社や営業所から、数名又は数十名の応援を求めた。期間は二週間から一ヶ月。業者のサポートをしつつ支社として機能させることが目的だった。

道流「ていう感じかな。でも、僕達は専門家でも何でもないからね。さっき優衣香が言った通りで、お手伝い要員てところだよ。ただ……」

道流は表情を曇らせて、鞄から一枚の紙を取り出した。

道流「これ見てみて」

優衣香は差し出された紙を受け取ると、上から視線を下げていった。それはスタッフや業者のリストだった。

しかし、優衣香は疑問に思った。道流の表情の意味がわからなかったからだ。

道流「やけに女性が多くない?何か引っ掛かるんだよね。……それに僕達だって適材適所じゃないし。ましてや、いくらでも秀でてるスタッフはいるのにさ」

道流は今回の人選に不満を持っていた。これなら、応援という形ではなく、暇な人を数名呼べばいいだけだ。こんな大げさにする必要などまったくない。深く考えるなら、この人選はただの消去法。人事が都合良く決めた、ある意味侮辱ともとれるやり方だ。

優衣香「道流さん、あまり考え過ぎないでください。たとえ不満があるとしても、私達は与えられた仕事を精一杯こなすだけですよ。それに、普段とは違う土地での仕事です。前向きに考えるなら、それはそれで楽しめると思いますよ」

優衣香の言うことは、至極真っ当な気がした。たしかに考えても誰も答えなどわからないし、杞憂ということもある。

もしかしたら重圧と緊張のせいもあって、それに、道流は先輩でもある。優衣香、そしてさきほどから隣で気持ち良さそうに寝ている真琴。二人に道を示さなければいけない。二つの重圧が余計な幻想を抱かせ、横から茶々を入れてしまっているのかもしれない。

反対に、優衣香はこの機会をチャンスと捉えていた。今まで亜樹に助けてもらい、道流に頼ってきた。美雪や真琴のように、何か特別に優れているわけでもない。今回の仕事は、道流に自分の成長を見てもらいたいという強く明確な目的があった。

寄り添ってもらいたい。優衣香にとって道流は、今でも特別な存在なのだ。

そのとき、車内アナウンスが流れた。二時間ほどの乗車も、そろそろ目的地に着くようだ。

道流「ほら真琴。もう着くよ」

膝を抱えて寝ている体を、道流は強く揺らした。しかし一度は目を開けてキョロキョロと周りを見渡したが、真琴は再び瞼を閉じた。

道流「こらっ!」

そんな二人のやり取りを見ていた優衣香はクスクスと笑った。

どうやら真琴は今回も、相変わらずの平常運転のようだ。

駅のホームに到着すると、道流達はキャリーケースを転がしながら新幹線を降りた。

その日は日曜日ともあって、観光客だろうかホームには同じようにキャリーケースを持つ人達が目立っていた。

道流達は、期間中ビジネスホテルに泊まることになっている。そのホテルは、駅から徒歩数分の距離にあり、大通りに面していた。

八階建てで、黒が基調のモダンな外観。ビジネスホテルにしてはお洒落なのかもしれないけれど、街の雑音が少し気になるところだった。

三人が自動ドアをくぐりエントランスに入ると、一人の男性がフロントで声を荒らげていた。

「この私がシングルの安部屋だと!?私を誰だと思ってる!冗談も大概にしてくれ!」

フロントの女性は、男性の態度に困っているのか、顔を赤くして必死に対応している様子だった。

女性「ですが、そのように承っておりますので……」

男性はそれでも食って掛かるように女性に迫っていた。三人は呆れた様子で二人の会話を聞いていたが、さすがにいたたまれなくなってきて道流が声をかけようとしたときだった。三人の横を一人の赤みがかった髪の女性が通り抜けて行った。

「オッサン!気に入らないんなら駅の近くにたっかいグランドホテルがあるからそっちに行きな!ここはあんたのような勘違い野郎が来るところじゃないんだよ!」

その女性は男性の隣に行き、睨み付けるように言葉を投げた。女性の威圧感は鋭く、男性はいきなりのことに尻込みしてしまった。

「くっ。な、なんだこの女は」

すると男性は一目散にエレベーターに乗り込んだ。エントランスには、一瞬の静寂が訪れたあと、フロントの女性が感謝をするように一礼した。

女性は、別に構わないよ。というように手を振って事を収めた。

そのとき、ふと女性の横顔が見えて道流は驚いた。

道流「あれ?杏花ちゃん?」

その声に反応して、女性は振り返った。

杏花「え?あっ!道流君!?マジ!?えぇー久しぶりじゃん!」

道流は杏花に近付き、挨拶を交わした。

真琴「二人はお知り合いなんですかね?」

真琴が優衣香に問いかけていると、杏花が優衣香の方を向いて、

杏花「あー思い出した。あのときの美人新入社員」

優衣香は苦笑いをして会釈をした。

優衣香「杏花さんは道流さんと同期で、亜樹の友達なんだ」

真琴は、へぇと頷いた。

杏花「ねえねえ亜樹は?元気にしてる?最近全然連絡くれないんだよね」

道流「あの亜樹だよ?もちろん元気にやってるよ」

杏花「あはは、たしかにね」

そのとき、優衣香が一歩前に出てきて、

優衣香「ひとまず受付をしませんか?ここで話していても仕方ないので」

優衣香の言葉に、道流と杏花は頷き、

杏花「あの子、何かたくましくなったね」

ボソボソっと道流の耳元で囁いた。

道流「いっぱい努力したからね。今では亜樹イズムの継承者だから」

杏花はその言葉に、なるほどね。と頷いた。

三人と杏花はそれぞれチェックインを済ませて三々五々部屋に向かった。

そのあと、道流は杏花を部屋に呼んで亜樹と三人でビデオ通話を使い昔話しに華を咲かせた。

道流と亜樹と杏花は同期で入社した。のちに、亜樹と杏花は友達となり、よく飲みに出掛けていた。それに、杏花は亜樹とよく似ていたと思う。明るくてムードメーカー。とくに職場では、部署は違うが亜樹と並んで仕事をこなし、すぐに一目置かれるようになった。それに杏花は、道流と亜樹、二人の恋を近付けるために一役買ったこともあった。

その後、二年目になると優衣香が入社して来て、しばらくすると転勤となった。転勤先が地元だったこともあり本人もその申し出にはすぐに承諾した。ただ、別れ際に居酒屋で「嫌だー!離れたくないー!」と二人で大泣きしていた姿は、道流の良き思い出だった。

道流と亜樹にとって、杏花はちょっとした恩人なのだ。

亜樹「東京来てよ!部屋に泊めてあげるからさ」

杏花「もちろん行きたいんだけどね。私にもダーリンがいるからさ。なかなか忙しいのよ」

道流「あーそっか。名字が変わってるからリストを見ても全然気づかなかったよ」

杏花「あれ?前に亜樹に連絡したよね?結婚したよって」

亜樹「うん、もらったよ。ちゃんと道流にも言いましたよ」

道流「でも、そのとき名字は聞いてなかったからさ。遅ればせながら、杏花ちゃん結婚おめでとう!」

杏花「大分経ってるけどね。ありがとう道流君。御祝儀は週末でいいよ」

道流「はは。いいね。じゃあ週末一杯行こうか、二人で」

亜樹「ちょっと!私は?」

亜樹は怪訝な顔をして、今にも画面から飛び出して来そうなほど前屈みになっていた。

杏花「あらら。まぁここにいないんじゃあしょうがないよね。亜樹、残念」

杏花は笑いながら意地悪く言った。

道流「亜樹、残念」

亜樹「嫌ぁー!」

このあともしばらくの間、三人の笑い声が部屋に響いていた。

杏花「それじゃあね亜樹、ちゃお」

亜樹「ぼんじゅ〜る」

道流は通話を切った。

道流「あーそうだ、思い出した。二人の挨拶は前から変だったよね。フランス語だっけ?」

杏花「ううん。ぼんじゅーるはフランス語だけど、ちゃおはイタリア語だよ。ただ、変なのは亜樹ね。ちゃおはさようならって意味もあるから私は間違ってないよ」

道流「はは、そうなんだ。なんか亜樹らしいな……。杏花ちゃんも、明日は朝から?」

杏花「そうだよ。でも、私は外回りらしいから支社には行かないかな。道流君達はお手伝いでしょ?」

道流「うん。じゃあなかなか会わないのか……。まあとりあえず週末。約束だよ?」

杏花「りょ〜かい」

名残惜しい思い出を残しながら、その日の一日は終わった。

翌朝、最初にホテルのエントランスに姿を見せたのは道流だった。紺のチョークストライプのスーツを纏っていて、その出で立ちは華やかで、出来る男の風格を感じさせた。

道流にとってこのスーツは特別な物で、初めての出張だったこともあり、亜樹がプレゼントをしてくれたものだった。そして亜樹は、「第一印象が肝心!」とアドバイスをしてくれたので、道流は今日という初日に、このスーツで出勤することを決めていたのだった。

入り口横のソファーに腰を下ろすと、一つ大きな深呼吸をした。前日はよく眠れたと思う。だけれど、やはり緊張していた。本社からの応援、そして、優衣香や真琴の先輩であり、一お手本として、二人を助けていかなければいけない。

道流は一人、自分の置かれている立場を再認識した。

そのとき、エレベーターのドアが開き、黒のパンツスーツの優衣香がやって来た。

優衣香「おはようございます」

優衣香の表情も、いつもより引き締まっているように感じた。

道流「おはよう。今日から一ヶ月、よろしくね」

優衣香「はい!」

そして、次に現れたのは杏花だった。前日はあれだけ男勝りな姿を見せたというのに、凛とした姿、グレーのパンツスーツに、テーラードジャケットを着こなす様はまさにキャリアウーマンのそれだった。

杏花「よっ!」

腕を立てた軽い感じの挨拶だった。

道流「ははっ、まったく杏花ちゃんらしいね。おはよう」

優衣香「おはようございます」

杏花「優衣香さん、慣れてない土地での仕事だから少し大変かもしれないけど、頑張ってね」

杏花は優衣香の肩に手を乗せて言った。

優衣香「はい、ありがとうございます」

杏花「何かあったらすぐに言うんだよ?飛んで来るからさ。それじゃあ、私は先に行くね」

杏花はそう言ってホテルを出ようと、自動ドアが開いたときだった。

杏花「道流君。そのスーツ、カッコいいね」

杏花はそう言って、ウェーブのかかった長い髪を靡かせてホテルを後にした。道流はその一言がとても嬉しくて、はにかんだ笑みを溢した。

優衣香「杏花さんて、カッコいいですね」

道流「ね。それに杏花ちゃんは変わらないよ。でもね、僕から見たら優衣香だってカッコいいんだよ?」

意外だったのか、優衣香は遠慮がちに驚いた。

優衣香「そんなこと……」

顔には出さなかったけれど、内心は照れていた。それに、今まで道流からそんな言葉を聞くことはなかったから、不思議と心が弾んだ。女性としてではなく、仕事、同僚として優衣香は初めて誉められた気がした。

優衣香「道流さん、今度の仕事は私を頼ってくださいね。頑張りますから」

道流「うん、もちろんだよ。頼むね」

優衣香の心は、道流の笑顔に包まれた。

それから少し遅れて真琴が現れた。

真琴「おはようございます。もうお二人は早いですよ」

道流「初日だからね、気合いが入ってるんだよ」

優衣香「そうだよ真琴ちゃん」

二人は視線を重ねて笑い合った。その様子を見て、真琴は不思議そうに首を傾げた。

会社はホテルからさらに数分程度の所にあった。六階建ての白い建物だ。

道流は一つ大きく深呼吸をして、

道流「じゃあ、行こうか」

優衣香と真琴。二人の背中を押すように、そして二人に示すように、道流は先輩としての背中で会社に入って行った。

ところが、気合いを入れたのも束の間。余裕を持ち過ぎたのか、予定よりかなりの時間が余ってしまった。

真琴「ほらやっぱり。お二人共早すぎますよ」

優衣香「真琴ちゃんの言う通りだったね。でも、時間があるので中を見て回れるんじゃないかな」

優衣香はそう言って、入り口の右手にある受付の女性に声をかけた。

そして戻って来ると、

優衣香「大丈夫みたいです。それに、二階に喫煙所があって、その横に休憩スペースがあるそうですよ」

道流「じゃあとりあえず時間までは自由行動で。あ、でも受付……」

話しを遮るように優衣香が答えた。

優衣香「私がしておきますよ」

道流「わかった。ありがとう優衣香」

真琴「ありがとうございます!それじゃあ早速行って来ます!」

真琴はそう言い残し、左奥にある階段を上って行った。

道流と優衣香は顔を見合せ、まったく、という苦笑いを浮かべた。

その後道流は、休憩スペースにある自動販売機で缶コーヒーを買うと、ソファベンチに座って一息ついた。

隣の喫煙所には、ガラス越しにスーツを着たスタッフと業者の方達、数人の男女が煙草を吸っているのが見える。

道流は携帯を取り出すと亜樹にメッセージを送った。

[おはよう。今日は亜樹のアドバイス通り、プレゼントのスーツをビシっと決めて来たよ。それで、今さっき会社に着きました。建物はそんなに大きくなくて、広い部屋がいくつかと、会議室があるみたい。ただ、中は新築さながらで、匂いで噎せ返しそうになりました。あまりこの匂いは好きになれそうにないよ(笑)あとで写真送るね]

前日のこの時間に、道流は寂しい気持ちを隠すように家を出た。

いつもは明るい二人だけれど、やはり離れ離れになるという事実はなかなかに辛いものだった。

亜樹も、普段なら冗談の一つや二つあるものだが、表情は硬く、余裕がなかったのだろう。

お互いがお互いに毅然と振る舞いながら、亜樹は送り出し、道流は出発した。

その後道流は悩み、亜樹が少しでも寂しくならないようにと、毎朝と毎晩、一言でもいいからメッセージを送ろうと思ったのだった。そしてこのメッセージが第一回目である。

一方その頃、優衣香は各フロアを見ていた。会社という物を角度を変えて見ると、自分達が働いている本社がいかに大きいのかがよくわかる。

本社と同様に、この支社もこれから何人ものスタッフ達の手が加わり大きく立派になっていく。そんなことを考えると優衣香は感慨深い気分になった。そして、この支社の第一歩が自分達の手で始まる。

緊張と同時に嬉しくもあった。優衣香は胸にそっと手を当てて、高揚感を落ち着かせた。

そして六階、最上階に上がって来たときのことだった。

左奥の部屋から低い大きな声が聞こえてきた。各部屋の扉は風通しをよくしているのか全て開いていた。そのため意識せずとも、嫌でも耳に入る。

優衣香は、あれ?とその声に聞き憶えがあるのを感じた。歩みを進め部屋に近づいたとき、一人の中年の男が突然出て来た。

優衣香は驚き、

優衣香「あっ、お、おはようございます」

男は、ん?と疑問の表情を浮かべて、優衣香の顔をジロジロと眺めた。

その視線に優衣香が戸惑っていると、

「来なさい」

男は優衣香の腕を掴むと部屋に連れ込んだ。そこにはデスクと椅子が数個、片隅に置いてあるだけだった。

男はドアを閉めた。

「今回はお前か?」

優衣香「え?」

質問の意味が理解できなかった。

優衣香「応援ということですか?」

「その様子だと違うみたいだな。だがまあ、お前でも構わないな」

優衣香「え、どういうことですか?」

すると、男はいきなり優衣香のお尻に手を伸ばした。

優衣香「止めてください」

すぐにその手を振り払ったが、

「黙れ!!」

男の怒号が部屋に響いた。優衣香はその低く鋭利な声に体が硬直してしまった。

「私を誰だと思ってる!!」

その言葉を聞いて優衣香は思い出した。ホテルのフロントで騒いでいたあのときの男だった。

男の風貌は醜く、眼鏡をかけていて、たるんだお腹と脂ぎった醜悪な顔が、男の人格、まさに悪の部分を表しているようだった。

男は正面から優衣香のお尻を両手で鷲掴みにした。

「ほほぅ。いい尻じゃないか。パンティは何色だ?」

優衣香はひきつった表情のまま何も答えなかった。

「答えなさい!!」

怒号が響くたびに、優衣香の心には恐怖心が生まれていた。

優衣香「……白です」

声が震えた。

「ふん。見た目とは違って可愛いらしいじゃないか。ズボンを脱いで私に見せなさい」

その言葉の意味、根底には、優衣香を人間として扱っていない。ただの女。この男からは欲求を満たしたいという支配観念しか感じなかった。

優衣香の胸の奥から何かが込み上げてきた。

「言うことを聞きなさい!」

男は、優衣香のズボンのファスナーに手をかけた。強引に脱がそうとしたが、優衣香はその手を思い切り振り払い急いで部屋を出た。

道流はまだ休憩スペースで亜樹とメッセージのやり取りをしていた。しばらくすると、そこに満足気な真琴がやって来た。

道流「探検はどうだった?」

真琴「はい、よかったです。美人さんや可愛いらしい方が沢山いて」

いや、違うだろ。というツッコミを心の中でいれた。

道流「はぁ。真琴は本当に相変わらずだね」

真琴「ん?道流さん。常日頃から言っていますがそれは心外ですよ。それじゃあ私がまるで、いつも変態なことを考えてるみたいじゃないですか」

その通りだろ。というツッコミを再度いれた。

道流「じゃあ何を考えてたんだ?」

真琴「先ほど綺麗な女性スタッフがいたんですが、そのスーツスカートにはパンティラインがなかったんですよ。実におかしいと思ったんです。あれだけ体にぴったりフィット、タイトですから、見えないはずはないんですが……。あっ、もしかして、彼女はエッチなTバックを?……はたまたノーパン?あはっ、いいですねぇ!」

結局かい!というツッコミを強烈にいれた。

道流「まったく……」

道流が呆れ果てていると、そこに優衣香もやって来た。

優衣香「そろそろ時間ですよ?」

道流は腕時計を確認した。

道流「本当だ。じゃあ集まる部屋は一階だから下りようか」

まず真琴が部屋を出て、続いて道流が出ようとしたときに、優衣香の背中にそっと手を置いて促した。

道流「行こう」

道流の手はとても温かくて、心の中の思慕が募っていく。先ほどの悲しさが浄化されていくように。

道流「どうしたの?」

優衣香「いえ、何でもないです」

優衣香は穏やかに笑った。そして気持ちを切り替えた。自分のすべきことは悩むことじゃない。落ち込むことでもない。道流や真琴と一緒にこの数日間を乗り越えること。それに……道流に頼ってもらうことだ。

二人は真琴について行くように一階へと下りて行った。

そこは広々とした空間だった。窓からは日射しが入り込み、部屋の照明など描き消すように明るく燦々としていた。ただデスクや椅子、機材なども一切なく、少し寂しい気もする。

中にはすでにスタッフ達が数十名いて、所々から雑談の声が聞こえる。

道流達も中に入り、後方から部屋の正面を眺める形となった。

その後、地味な雰囲気の男性、おそらく課長クラスだろうか。あらためて挨拶と仕事の内容の説明があった。このての話しは長期戦と相場が決まっている。道流は早く終わらないかなと思っていたときだった。

課長の紹介で、一人の男性が前に出て来た。

道流と真琴は顔を合わせて驚いた。

神田「紹介に預かった神田だ。私は今回の件の統括部長としてここに来ている」

真琴「あのオッサンですよ。最悪ですね」

真琴はボソボソっと囁いた。

道流「はぁ。先が思いやられるよ」

道流と真琴は同時にため息をついた。

でも、道流は杏花のことを思い少し安心した。ここにいたら喧嘩が始まるところだが、杏花は支社には顔を出さない。とりあえずは神田と会うことはないだろう。

道流は二人がまた出会ったらと考えたら身震いした。

道流「ん?優衣香?」

視線を向けたときの優衣香の横顔はどこか儚げで、遠くを見つめているようだった。

優衣香「え?は、はい。何でしょう?」

道流「いや、何か……体調が悪いのかなって思って」

優衣香「いえいえ、大丈夫ですよ」

優衣香は首を振って言った。

道流「そっか」

それからの神田の話しは冗長で大層迷惑だった。とくに自慢話しなどが多く聞いていて不愉快極まりない。けれど、そんなスタッフの思いなど知る由もなく、神田は力んでいるのか、顔を赤くして熱弁している。

道流は項垂れた。その熱をほんの少しでもいいから仕事に向けていただきたいものだと呆れながらに思った。

ようやく、神田の話しが終わった。スタッフや業者の顔にはすでに疲労の色が見える。

課長「それでは、よろしくお願いします」

もう疲れたよ、と道流達は思った。

その日の夜。仕事の疲れからか、それとも神田の自慢話しの疲れからか、三人はホテルに帰って来るとそうそうにベッドに入った。

それからの一週間は何事もなく、静かに淡々と過ぎていった。

週末になると、優衣香は喫茶店巡りを、真琴は自身の変態探求に余念がなかった。そして道流と杏花は約束通り二人で飲みに出掛けた。

出張初日に感じた重圧と緊張はどこへやら。優衣香もあの日のことを徐々にではあったけれど忘れていった。

翌週。また新しい月曜日が始まった。

朝、優衣香は会社に出勤すると、スタッフから呼び出しを受けた。そこは、初日に神田に迫られた部屋だった。

優衣香は、またなのかな。と切なく思ったが、その考えが神田のセクハラをどこか認めているようで、自分の性格に腹が立った。

エレベーターに乗り込み、六階のボタンを押した。永遠に着かなければいいのにと、優衣香は思った。

ドアが開くと、フロアは静寂に包まれていた。何故だかわからないけれど、最上階である六階は、今だ手付かずでそのままにされていた。

優衣香は重い足取りで、左奥の部屋に歩みを進めた。

女性「あん……」

その声に、優衣香は立ち止まった。

女性「あっ……嫌……」

甘い声が、卑猥に聞こえる。体全体に、憔悴の色が広がるのを感じた。

優衣香はそっと部屋を覗いた。そこには、神田ともう一人。眼鏡をかけた小柄な女性がいた。淡い水色の、髪留めのリボンが似合っている可愛らしい容姿だった。

神田は、その女性のスカートの中に手を差し込み、モゾモゾと動かしながら、首元に舌を這わせている。

女性「もう……ダメ……あん」

神田「ん?何がダメなんだ?これはお前のためなんじゃないのか?」

女性「あっ……でも……でも」

神田「なら止めるか?いいんだぞ?私だって好き好んでやっているわけじゃない。お前が望んだから仕方なくやっているだけだ」

女性「うっ……して……ください」

神田「はは。そうだ、素直になりなさい」

神田は舌を上に伸ばしていき、女性の唇に重ねた。ねっとりと舐め回し、見ていて不快だった。

神田「ふむ。なかなかに美味だな」

そう言って、神田は腕時計を確認した。

神田「もういいぞ」

女性は服装を整えて、早足で部屋を出て来た。そのとき、あっ、と二人は顔を合わせてしまった。優衣香は見てしまったと、気まずい雰囲気の中、どうしていいのかわからなかった。女性はそんな優衣香を見て、顔を赤くして早々と離れていった。

すると突然腕を掴まれた。

優衣香はビクっと体を強張らせた。しかし、すぐに部屋に引き込まれてしまった。

神田「来なさい!!」

神田の力に、優衣香は成す術もなく、声を出すことも出来なかった。

神田「そこに立て」

部屋の片隅に追い込まれ、壁を背に押し付けられた。

このままでは、と危険に思い、優衣香は必死に声を振り絞った。

優衣香「や、やめてください」

か弱い。だけれど、それが精一杯の反抗だった。

それでも神田は意に介さず、優衣香の体を舐め回すように吟味した。

優衣香「これは……どういうことですか?」

神田は返事をしなかった。

無言。その瞳はとてつもなく気味が悪い。杏花に一喝されたときの面影はまったくなく、今の神田の目は爬虫類のように獲物を狙っていた。

神田「うむ。やはりいい体をしている。お前はスカートを穿かんのか?」

理解ができない。優衣香はただただ理解に苦しんだ。

神田「答えろ!」

まただ。人を恐怖で抑制する。その怒号は理性を心の奥底に監禁してしまう。

怖い。ふたたび、優衣香は動けなくなってしまった。

優衣香「穿きます」

神田「今日のパンティは何色だ?」

優衣香「青……です」

神田「ふん。結構」

神田は優衣香のズボンに手を伸ばし、フックを外しファスナーを下げた。

青いレースのパンティが、かすかに顔を覗かせる。

神田「脱げ」

言われた通りにするしかなかった。誰もいないフロア。声を上げたとしても、届くはずなどない。

優衣香はズボンに手をかけゆっくり下ろした。足元に落ちると、美しい綺麗な足が、神田の眼前にある。

神田は息を殺して顔を近づけた。足首、脛、膝、太もも、さらに足の付け根。まるで蛇が体を這っているようだった。

じっくりと見つめ満足すると、あらためて足首に戻る。そして、舌を出すと、優衣香の肌に押し付けた。

右足から脳天に悪寒が走る。生ぬるい感触が伝わってきて優衣香はとっさに顔を背けた。

神田はそんな優衣香をお構い無しに、足首を入念に舐め、次は脛全体、膝に上り、太ももへ到達した。

表を舐め尽くすと、今度はそのまま裏に回った。神田の舌がべっとりと張り付き、一時も離れない。

目を閉じて、脂ぎっている顔で太ももを舐め続けている。

下から上へ、幾度となく繰り返される不快な感触。やがて優衣香の白い太ももは、まるで拒否反応を起こしているかのように赤くなっていった。

神田「うむ。お前も美味だな。お次は……」

神田は、優衣香のパンティの正面から顔を埋めた。両手はお尻に回し、自分に引き寄せるように力を込めた。

もう、やめてください。そんな言葉が胸の奥で木霊した。

パンティが湿ってきたのか、神田の唾液が恥丘に漏れてくる。

優衣香「嫌……」

今までこんな感覚になったことはなかった。鉛のついた体。憔悴する心。嫌悪感が全身を突き抜けていく。

どうして、どうしてこんなことになってしまったのか。自由の利かない頭で思考を巡らせるが、どう足掻いても答えなど出ない。ただ目の前に神田がいて、その欲望の矛先が優衣香に向けられただけ。それだけなのだ。

優衣香の太ももは赤みを帯びて、パンティは神田の唾液にまみれた。汚らしい匂いが鼻を刺す。

神田「はぁ、堪能した」

顔を離し優衣香を見上げた。神田はゆっくりと立ち上がり、さらに体を抱き締めた。

胸が苦しくて息が出来ない。物理的なことだけではなく気持ちの有り様でもあった。神田の呼吸する音が聞こえる。匂いを嗅がれていて、裸体という秘密まで知られてしまったかのような羞恥と虚無感が優衣香を襲う。

そのあと、当然のようにキスをしてきた。拒めたはず。でも神田の舌を導いてしまった。やめてほしいのに、出て行ってほしいのに舌を絡めてしまう。優衣香の唇が神田の唾液で淫らに光り、さらにその唾液はお互いの喉を通り欲求を昂らせる。

優衣香はもう全身の力が抜けていた。

神田の口が離れると、腕時計を確認した。

神田「もういいぞ」

その言葉に優衣香は我に返った。自分は一体何をしているの?と後悔の念が広がった。

すぐにズボンを穿き、服装を整えて足早で部屋を出た。

しかしそのとき、また一人の妖艶な女性がそこに立っていた。

優衣香は驚くと同時に、強烈な恥じらいを感じた。

そして入れ違うように、女性は部屋に入っていった。

神田「次はお前か。では裸になりなさい」

にわかに信じられない言葉だった。優衣香は早くその場から離れたかったが、踵を返すように部屋を覗いた。知りたかった。あの男が何故こんなことをするのか。それに、何故女性が次々とこの部屋を訪れるのかということを。

―――今回はお前か?

おそらく、これは前々から行われていたことなのだろう。あの男は慣れていると優衣香は思った。

中では、女性が一枚一枚服を脱いでいき全裸になった。若くて綺麗な人だ。

女性は神田のズボンからモノを出し、口に加えフェラを始めた。

女性「今回もお願いしますね」

神田「ふん。なら、しっかりと奉仕するんだな」

女性はいやらしく音をたてて、勢いよく頭を前後させた。

神田は統括部長……。優衣香は悟った。

あの女性は、自分の地位か評価かはわからないけれど、何かを良くしたいのだろう。そこに神田の利害が一致して、二人は体の関係になった。

優衣香の前にいた女性も、もしかしたら同じ理由かもしれない。

……私は違う。優衣香はそう強く思った。

ほどなく、優衣香はその場を離れ階段を下りて行った。

二階の休憩スペースに行くと、そこには真琴がいた。

真琴「あっ、優衣香さん。どこに行ってたんですか?道流さんが気にしてましたよ」

優衣香「そうなんだ……」

真琴「ん?大丈夫ですか?顔色が優れないようですけど」

真琴は心配そうな表情で優衣香を見つめた。

優衣香「ううん大丈夫だよ。慣れない場所だから、まだ体が追い付いていないのかもね」

咄嗟に出た言葉が苦しかった。その様子に真琴は不信に思った。

真琴「そうですか。でも、何かあったらすぐに言ってください。道流さんだけじゃなくて、私にも頼っていいんですからね」

真琴はドヤ顔で言った。

純粋で真っ白い言葉。ピュアと言い換えてもいいほどに、優衣香の心に鮮やかに響いた。

優衣香「うん。ありがとう真琴ちゃん」

そんな一言が嬉しかったのか、真琴が満面の笑みで喜んでいると、そこに道流がやって来た。

道流「あっ!いたいた!優衣香、ちょっといいかな?手伝ってほしいんだよね」

しかし、真琴がそれに異議を唱えるように、

真琴「道流さん!私にはないんですか?」

道流「ん?無いよ」

真琴「はっ!?……道流さん、私という頼りになる後輩がいるのに、そんな私を疎かにするんですか?」

道流はきょとん顔で、

道流「……どうした?」

真琴「道流さん、もっと私を頼ってください。力になりますよ」

真琴はそう言って、可愛らしくウィンクをするが、

道流「……あーそういうことか。好みの女性がいたってことね」

真琴「もぅー!違いますよ!なんでいつも変態キャラにするんですか!私は……」

そんな二人のやり取りを見ていた優衣香に、自然と笑みが溢れた。

その日から、神田の呼び出しは毎日続いた。キスをされ、足を舐められ、胸を揉まれ、フェラをさせられた。

でも、優衣香の気持ちは沈まなかった。この数日の仕事で、多くの人達の支えとなれたし、道流と真琴を助けて、優衣香自身も目的としていた成長を見せることができたと思っていた。むしろ、とても嬉しかった。

何も不満はない。神田のことなど取るに足らない、一瞬だけの悪戯に過ぎない。

それに、私は彼女達とは違う。優衣香はそう強く思っていた。

あと少しの辛抱。優衣香は今夜もベッドに入り、道流と真琴の笑顔を思い浮かべながら瞳を閉じた。

この土地での仕事も三週目に入り、残りは一週間と数日となった。

その日は、翌日が休みだったので、仕事終わりに皆で夕食でも行こうということになり、道流達三人と杏花でホテルの近くにある飲食店にやって来た。

杏花「お疲れちゃーん」

杏花の一声で、皆がグラスを鳴らした。

真琴「なんか亜樹さんみたいですね」

杏花「そりゃそうよ。亜樹は私のマブダチだからね」

道流「はは。たしかに。亜樹と杏花ちゃんは怒るときも泣くときも一緒だったしね」

杏花「ちょっと!道流君、それは無しよ」

真琴「道流さん、あとでこそっと教えてください」

優衣香「私も是非」

道流「もちろん」

杏花「やめなさい」

四人の笑い声が響いた。

お店に入って二十分ほどが経ったとき、真琴の携帯が鳴った。

真琴「もしもーし……うん、もう集まってるよ……うん……そうだね、じゃあすぐだから迎えに行くよ……はーい」

真琴は通話を切り、

真琴「ちょっと迎えに行って来ます」

道流「誰か呼んだの?」

真琴「はい、最近仲良くなったんです。せっかくなのでご紹介したいなって思いまして。では行って来ます」

そう言って、真琴はお店を出た。

優衣香「もしかして、初めてですよね?」

道流「うん、そうだね」

杏花「初めて?」

道流「真琴はああ見えて一匹狼なところがあってさ、なかなか会社でも友達を作らないんだよね。だから、亜樹や優衣香、それに美雪っていう子がいるんだけど、三人が友達でお姉さん代わりなんだ」

優衣香「道流さんはお兄さんですもんね?」

道流「はは、どうだろうね」

杏花「へぇ。真琴ちゃん可愛いし明るいから人気者なのかと思ってたよ」

道流「まあ素直になればってところかな」

そうこう話しているうちに真琴が戻ってきた。

しかし真琴の隣にいる女性に、杏花と優衣香は驚いた。

優衣香「あっ」

杏花「あれ?なんだ英里じゃん」

そこにいたのはあのときの、眼鏡をかけたリボンの女性だった。

真琴「ご存知でしたか。はい、彼女は私のマブダチの英里ちゃんです」

英里「よ、よろしくお願いします」

英里は緊張しているのか、声が上澄って片言のようになってしまった。

そのとき、英里は優衣香の顔を見て顔を赤く染めた。

真琴「ん?優衣香さんも知ってるんですか?」

優衣香「あ、うん。会社で何回かすれ違ったくらいだけどね」

優衣香の言葉に安心したのか、英里は表情を和らげた。

もちろん言えるわけもない。真琴の友達。その関係を壊したくなかったし、それに優衣香自身も鎖で繋がれている身。そのことを表沙汰にしたくないと思っていた。そして何よりも、優衣香は道流に知られてしまうのがたまらなく嫌で怖かった。

英里「杏花さん、お久しぶりです」

英里は深く頭を下げた。

杏花「うん、久しぶり。でもね、そんなかしこまらなくていいんだよ?」

英里「いえ、でも……」

杏花「終わったこと!ほらっ。早く座んな」

杏花の言葉に、英里は緊張が解けたのか笑顔を見せた。

それからは五人での席となり、自然と真琴と英里の出会いの話しになった。

真琴「そのときに話したんですけど、たまたまハマっているアニメが一緒だったんですよ」

英里「はい、それに真琴ちゃんとは好みも同じで」

道流「そうだったんだ。だから最近僕や優衣香の所にいなかったんだね」

真琴「ずっと英里ちゃんといました」

そう言って二人は視線を重ねて、恥ずかしそうに笑った。

道流はそんな二人を見て、いや、真琴を見て本当に嬉しかった。

杏花「真琴ちゃん。英里はね、おっちょこちょいだし天然だし、少し手間がかかるんだけれど、凄く優しい子だから、これからも仲良くしてあげてね」

真琴「はい!もちろんです」

道流は、今までにないほど真琴の笑顔が眩しく感じられた。

そしてそれは、道流の隣に座って眺めていた優衣香も同様だった。

二人にとっては妹のような存在。道流と優衣香もそっと胸を撫で下ろした。

優衣香「すいません、ちょっとお手洗いに」

優衣香が席を立つと、

英里「私も」

英里もそれに続いた。

トイレは店の奥にあった。暗い照明だけれど意外に広々としていた。

優衣香がトイレを済ませて、手を洗っていると、隣に英里が来て、

英里「すいません。あのことは言わないでいただけますか?」

あのこと。優衣香は言葉の意味をすぐに理解した。

優衣香「うん、大丈夫、安心して。でも、止められないの?」

英里「……はい」

英里の表情は、照明とは別に暗く陰っていた。

優衣香「よかったら聞かせてくれる?」

少し悩んでから、英里は話し始めた。

英里「神田さんは、私の最初の上司でした。当時からその横暴な態度は、社内でも問題になっていたんですが、でもやり手で、実際には大きな実績を持っていたんで、誰も何も、見て見ぬフリをしていたんです」

優衣香は真剣な眼差しで、英里の話しを聞いていた。

英里「そのうちに、言うことを聞けば昇進させてやるとか、金を上げてやるとか言い始めたんです。普通そんなことあり得ないじゃないですか?でも、その大言壮語の口振りに騙されてしまった人もいて」

英里の瞳は潤んでいた。

優衣香「じゃあもしかして、英里さんはそんなつもりはなかったのに……」

英里「はい。無理やりでした」

その言葉に、優衣香は自分を重ねた。同じだったのだ。優衣香も神田に、半ば無理やり鎖を繋がれた。それと同様のことを英里も受けていたのだ。

優衣香「辛かったね」

優衣香は英里の頭に手を乗せて慰めた。

英里「でも……一度は杏花さんが助けてくれたんです」

優衣香「え?」

英里「杏花さんがある日、一ヶ月ですけれど、私の会社に来たことがあったんです。それでたまたま仲良くなって。ですがその間に、私辛くなって仕事に行けなくなってしまったんです。そんなとき、杏花さんが心配して相談に乗ってくれて。でも話しをしたら、杏花さんが怒っちゃって、その日のうちに職場で神田さんの顔を殴ってしまったんです」

その話しを聞いて、優衣香は亜樹を思い浮かべていた。二人はマブダチ。その言葉の通り、やり方は違えどそっくりだな。と優衣香は思った。

しかしそのとき、優衣香はある疑問が浮かんだ。

優衣香「あれ?でも、ホテルのとき……」

英里「え?」

優衣香はホテルのフロントで、杏花と神田が顔を合わせたことを話した。

優衣香「そのとき、お互いに気づいてなかったよ?」

英里「おそらく、二人共外見が変わっていたからだと思います。杏花さんは、知的に見えるからって理由で当時は眼鏡をかけていましたし、それに髪の色も黒でしたから。反対に神田さんは、かなり細身だったんです。私が見ても全然気づかなかったくらいに」

優衣香「そうだったんだ」

英里「ですが、その一件で杏花さんは降格処分になってしまったんです。私のせいで……。本来なら、もっと上に、雲の上の存在だったはずなんです。でも、私が……」

英里は大粒の涙を溢した。

優衣香「話してくれてありがとう。偉かったね」

優衣香は慈愛に溢れた優しさで英里を包み込こんだ。

英里の気持ちが落ち着いたところで、二人は席に戻った。

でも、優衣香は皆が談笑している中、一人悩んでいた。

おそらく、杏花は英里の現状を知らない。英里は話していないだろうし、話せるわけもない。だから一人で抱え込んで、今も辛い思いをしているはず。

真琴が無邪気に笑っている。あんな顔を見てしまったら、どうにかして解決してあげたいと思うけれど……。

その日の夜は更けていった。

翌日、優衣香はホテルの、ある部屋の前に立っていた。鼓動が騒いでいる。体には恐怖心もある。それに、このドアを開けたらどうなるか予想もついている。つくづく自分の不器用さと不甲斐なさに、情けない気持ちになった。

しかしそれでも、どうにかしてあげたかった。自分も今まで助けてもらってきた。亜樹と道流に、美雪や真琴に。だからこそ、今回だけは、自分の力で英里を助けてあげたかった。

優衣香はもちろん、自己満足に過ぎないことはわかっていた。別に英里に頼まれたわけでもないし、本来なら、道流に相談すべきことだ。

でも、失望させたくない。

優衣香はドアをノックした。中から大きな足音がドンドンドンと近付いて来る。そして、ゆっくりドアが開いた。

そこには腰にタオルを巻いた、裸の神田がいた。

優衣香「突然すみません」

優衣香が軽く会釈をするように挨拶をすると、いきなり神田は優衣香の腕を掴み、部屋に引きずり込んだ。

優衣香「ま、待ってください」

その声をかき消すように、

神田「黙れ!」

神田は一喝した。

覚悟をして来たというのに、その強い意志は、無情にもたった一言で崩れ去った。

神田「そこに立て」

部屋にはシングルのベッドが二つあり、優衣香はその前に立たされた。

そして神田はタオルを外し放り投げ、全裸でベッドに腰かけた。

神田「何の用だ?」

言葉とは裏腹に、神田のモノは、すでに大きく反り返っていた。

優衣香「少しお話しを聞いて頂きたいんです」

神田は無言だったが、優衣香は続けた。

優衣香「英里さんに対しての……セクハラを止めてもらえませんか?地位とか名誉とか、そういうことではなくて、彼女は違うんです。そういうことを望んではいないんです」

神田「止めないと言ったら?」

優衣香「……どうすればいいですか?」

神田「なら、お前が代わりに奉仕するしかないな」

優衣香「それをすれば、止めてもらえるんですね?」

神田は頷いた。

優衣香は神田の大きく広げている股の間に跪き、モノの裏筋を舐めあげた。ゆっくり丁寧に、下から上に、上から下に。左手で握ると、上下に動かした。

その間に、優衣香は上目遣いで神田の顔を見上げた。神田は感じているのか、口を半開きにして、あぁという声を出した。

亀頭を口に含み、舌で転がすように舐めると、我慢汁が溢れてきて、不快な味が口に広がる。さらに手をシワ袋に添えて揉んだ。

モノが大きく膨張していくのがわかる。

優衣香はカリを舌先で刺激した。すると、神田はいきなり優衣香の頭を掴み、モノに押し当てた。

限界なのか、モノを口に含ませると、強く頭を前後させた。

モノが喉の奥に当たる。苦しい。そのとき、口の中に大量の精子が放たれた。

優衣香「ゴホっゴホっ……」

あまりの多さに噎せてしまった。神田はフゥーと大きく息を吐いた。

優衣香が少し落ち着いてくると、

神田「脱げ」

言うとおりに立ち上がり、スーツとシャツ、スカートを脱いだ。

上下お揃いの、白いレースの下着がいやらしく晒されると、神田は鼻の穴を膨らませ呼吸を荒らげた。

優衣香が股の間に立つと、神田はあのときと同じように、太ももを舐め始めた。

どうやら、神田という男の好みは舐めることらしい。気持ち悪くて執拗で、それに、まるでマーキングをしているかのように赤い痕を残す。

そういえば、全裸になってフェラをしていた女性の身体にも、所々赤みが帯びていたのを思い出した。

やっとそれが退いたというのに、また汚されていく。

神田は優衣香を振り向かせ、手でパンティを割れ目に食い込ませると、今度はお尻に舌を這わせた。

神田「旨い」

そう言うと、パンティをずらしアナルに口を埋めた。

優衣香「あっ…..」

舌先が入り込んで来た。卑猥な感触が全身に広がる。恥ずかしい部分を見られて、弄くられて、辱しめをうけているというのに、感じてしまう自分が薄情で嫌気が差す。

でも、これが嫌いじゃないもう一人の自分もいた。無理やり犯されるのが……。もしかしたら、認めたくないだけで、本当の自分はそこにいるのかもしれない。

神田はパンティを下ろして、優衣香の体を抱き寄せた。そして、自分の股の上に座らせた。

それから優衣香の首元に、その証を残すようにキスマークを付けていった。

優衣香「あん……あっ……」

一つ二つ、その間に後ろからスルスルッと手を伸ばしてきて胸を揉んだ。

ブラの下では、すでに乳首が勃起していて、早く触ってほしいと悲願しているようだった。

神田の舌が、肩やうなじを彷徨いながら、しつこく優衣香の味を堪能している。

神田「こっちを向け」

その言葉に、優衣香は顔を向けた。その先には醜悪な顔の口づけが待っていた。

舌を絡めたディープキスが始まった。優衣香も拒まない。もう体は滾っていて欲情していたが、必死に抑えて隠した。

チュパチュパと吸い付き合い、音を鳴らす。またその音が、卑猥に神経を刺激する。神田も言葉や表情はあくまで冷静さを保っているが、顔は真っ赤になっていた。

二人はそのままベッドに横になった。

優衣香が背中で覆い被さるような体勢となり、神田の左手は胸を、右手は陰毛を掻き分け、マンコに入っていった。

優衣香「あっ……んん……はぁ」

我慢できない。声が意志に反して口から漏れる。

優衣香は足を左右に大きく広げた。破廉恥な格好だった。むしろ、もっと激しく、もっといやらしく触れて、何も考えられないくらい感じさせてほしい。

神田も左手を胸から離し、両手でマンコを弄くった。

優衣香「あん……もっと……あっん」

クチュクチュと音が響く。神田の指の付け根にまで愛液がたっぷりと付着している。

優衣香「ダメ……あっ!」

淫らな声がいっそう大きくなる。

神田は優衣香の苦しそうな顔を凝視しながら、指を交互に突っ込み前後させた。

優衣香「あぁ!……そんな……ああぁ!イクっ!」

その瞬間優衣香の体がビクビクと震えた。

神田は窓辺に行き、まるで休憩とばかりに煙草に火を着けた。

優衣香は肩で息をしながらそんな神田を眺め、不自然に身に付いていたブラを外した。

勃起した乳首が、まだ余韻を残してツンと立っている。

そんな乳首を、優衣香は指で摘まみ転がした。そして、神田の視界に入るように、挑発的に足を広げマンコを見せつけた。早く続きを、と心の中で願ってしまったのだ。

窓からの日射しが優衣香のマンコを照らす。淡いピンク色で、蜂蜜のような愛液が滴っている。恍惚な穴。実に旨そうだ。神田のモノはすぐに膨張し反り返った。

すぐに煙草を灰皿に押し付けると、優衣香の股の間に座った。

優衣香「……早く入れてください」

壊してしまいたくなるような、弱くて細くて、繊細な声。甘美な表情。

神田も我慢できなかった。

勢いよくモノをマンコの奥深くに突き刺した。

優衣香「ああぁ!」

雄叫びにも似た声が出た。

優衣香「あん……あん……あん」

神田は一心不乱に腰を振った。その度に、優衣香の口から喘ぎ声が上がる。

優衣香「あぁ!……あん!……んんっあん!」

神田「素晴らしいな。これほどとは」

熱いヒダの感触が心地好い。膣の壁が包み込むようにモノをぬるぬると擦る。

優衣香「あん……あぁ気持ちいい……もっと」

神田「何だ?聞こえんな」

優衣香「気持ちいいです!もっと激しくして!」

神田は不敵に笑った。さらに動きを早め、優衣香のマンコを突き上げた。

小ぶりな胸が上下に弾む。神田は見下ろしながら、優衣香の全てを征服した気になっていた。

たまらない。今まで何人もの女とセックスをしてきた。ホテルで、家で、会社で、数えきれないほどに。

神田の楽しみは、女が悲願してくる、まさにこの瞬間だった。

止められない。

神田「どうだ?最高だろ?」

優衣香「はい……最高です……もっと欲しい!」

優衣香の思考は止まっていた。英里の力になりたくてここにやって来たはずなのに、もう今では、快楽に抗えなくなっていた。

優衣香は神田の首に腕を回し、抱き合いキスをしながら突かれた。

優衣香「んっ……んん……あっ!」

次に、神田は優衣香を起き上がらせて体勢を変えた。

今度はバッグから貫いた。

優衣香の長い髪が振り乱れる。白い背中に肩甲骨が浮き上がり美しい。

神田は突きながら、優衣香のお尻をパンと甲高く叩いた。

優衣香「あっ!……あん!……あぁぁ!」

神田の全身にも快感が走り抜けていた。若くて美しい裸体に鞭を打つ。

神田「まったく。これだから止められん。ほら、もっと喘げ!」

優衣香「うっ!あっ……ん!……はぁん」

神田はクビレを掴み、強引に前後させた。

優衣香「あぁ凄い!おかしくなる!」

パンパンパンと音が連続して鳴り響く。

優衣香「ああぁ!ダメ!もう……またイッちゃう!」

神田「いいのか?中に出すぞ?」

構わなかった。今日というタイミングなら。もう優衣香には、選択する余裕などない。

優衣香「いいから!お願い!中に出して!」

神田「ははっ。本当に最高な女だな」

神田はピッチを上げた。

優衣香「あん!あん!あん!」

神田「ほら、もっと声を出せ!」

再度お尻を叩いた。

優衣香「あぁ!」

神田の顔が険しくなった。

神田「そろそろだ」

優衣香「いっぱい出して!私のマンコに……ああ!イッちゃう!」

神田「うっ!出すぞ!」

優衣香「ああぁ!」

その咆哮と同時に、神田の熱い精子が優衣香の奥深くに放たれた。

神田のモノが、優衣香の体内で脈打つ。下腹の奥が熱い。

優衣香はそのまま前のめりに倒れた。モノが引き抜かれると、糸を引いていた。そして、白い精子が滴っている。

神田「ふん。明日も頼むぞ」

優衣香はそっと頷いた。

ドアの閉まる音が途方もなく悲しく聞こえた。

優衣香は神田の部屋の前で動けずにいた。

自分のしたことの意味、価値の無さ。今一度優衣香は自分に問いかけた。

―――私は違う。

でも、結局は一緒だった。つくづく薄情。今のこんな姿を見たら、きっと道流は嫌いになるだろう。優衣香は自分のことがわからなくなっていた。

杏花「ん?あれ?優衣香さん?」

そのとき、白のTシャツと短パン姿で大きなビニール袋を持った杏花が階段を上がって来た。杏花は優衣香を見つけると大きく手を振った。

杏花「いやー丁度良かったよ。ちょっと買いすぎちゃったんだよねー!」

優衣香は誘われるがまま、杏花の部屋にやって来た。

杏花は袋を逆さにして、ガサガサとテーブルにお菓子を出した。

次々に落ちてくるお菓子の量に、優衣香は言葉が出て来なかった。

そして、最後に落ちて来た物を見た瞬間、優衣香の緊張の糸が切れた。それは、亜樹が大好きなホワイトチョコレートだった。

優衣香の涙が頬を伝う。

杏花「えっ!?ちょちょ!どうしたの!?」

杏花は慌てた。でも、それは無理もない。

杏花があたふたとしていると、

優衣香「ごめんなさい。そのお菓子を見たら……」

杏花「え?これ?これがどうしたの?」

優衣香「亜樹が好きなお菓子だなって思って」

杏花「……何かあったの?」

内に秘めておけるほど、自分は強くなかった。

優衣香は、英里のこと、神田のこと。それに、道流に成長した姿を見せたかったことを話した。

杏花「……あなたは馬鹿だね。本当に」

否定できなかった。

優衣香「はい。本当に薄情なんです」

杏花「でも私。そんなあなたを嫌いじゃないよ」

優衣香「え?」

杏花の言葉が意外だった。てっきり嫌われると思っていたから。

杏花「私も過去に何度も馬鹿なことをしたからね。あなたみたいに自分を犠牲にしたこともあったし」

優衣香は、英里の話しを思い出した。

それに杏花は、昔の、若かりし頃の自分が優衣香とダブって見えた。

杏花「でも……まあ細かいことはいいや。面倒くさいし。知りたかったら亜樹か道流君に聞いてよ。私が言いたいのは、ときにはその子に、自力で這い上がらせなきゃいけないってこと。助けたいからって、簡単に手を伸ばしちゃダメだよ」

優衣香はその言葉に、色々な感情が込められているような気がした。

杏花「あとそう、これは大事なことね。英里は自分から神田の元に行ったんだよ」

優衣香「え?でも……」

理解出来ずに頭の中が真っ白になった。

杏花「もちろん最初は違ったけれど、また会って疼いちゃったんだろうね。忘れられないんだよきっと」

その言葉に、先ほどとは全く違う脱力感が全身を覆った。

杏花「ねえ優衣香さん。唐突だけれど、亜樹のこと好き?」

優衣香は頷いた。

杏花「そっか。じゃあもっと、自分を大事にしなきゃね」

そう言うと、杏花は優衣香の隣に来て、

杏花「ヨシヨシ」

頭を撫でてくれたその手の温かさに、優衣香はまた涙を溢した。杏花もそんな優衣香の愛らしさに、そう言えば私も、亜樹にしてもらったなあと懐かしく感じた。

そのとき、部屋のドアがバタンと開き、道流が鬼気迫る形相で入ってきた。

道流「優衣香大丈夫!?何があったの!?」

優衣香がポカンとした顔をしていると、

杏花「ははっ。ごめんごめん。さっき道流君にヘルプを頼んだんだ。私一人じゃ無理だと思ったから」

道流「本当に心配したよ!いきなり杏花ちゃんから、優衣香が泣いてるってメッセージが来たから」

優衣香「心配かけてごめんなさい」

道流「それで何があったの!?」

道流は身振り手振り、激しく問いかけた。

杏花「道流君何その動き。おっかしい。優衣香さんはね、このホワイトチョコレートが食べたくて仕方なかったの。でも、私の分しかなかったから。あげないよーって言ったら泣いちゃったの。優衣香さん、ごめんね意地悪しちゃって」

優衣香「え?」

道流「は?」

二人がすっとんきょうな声を出すと、

杏花「ささっ。これ皆で食べようよ。あっ!真琴ちゃんも呼ばないといけないか。仲間外れはダメだからね。ほら道流君!連絡して!」

道流「いやいやちょっと!どういうこと?」

杏花「男のクセに細かいこと気にしない!早く!」

道流と杏花の姿に、優衣香は声を出して笑った。

そして、渋々道流が電話をかけると、

杏花「優衣香さん。出来る奴はさ、ちゃんと頼れるんだよ」

杏花の言った言葉が、優衣香の心臓を強く鳴らした。過信して、自分のことしか見えていなかったのかもしれない。頼ることが出来るのは、お互いに信頼し合っているからこその証。

優衣香「……杏花さん。ありがとうございました」

杏花「うん、よろしい!」

優衣香「ははっ。その感じ、亜樹そっくりですね」

杏花「もちのローン!マブダチだからね!」

その日以降。優衣香は神田と体を重ねることはなかった。

そして何より、優衣香はもっと自分を大切にしたいと思った。これからも悩んだり悲しんだり、辛いことはたくさんあるだろうけれど、一人で抱え込んで重荷を背負うことはもうない。だって、いつだって下ろしていいんだから。

優衣香は、道流と亜樹、美雪や真琴。それに杏花。皆の顔を思い浮かべながら、今日もベッドの上で瞳を閉じた。

そして後に聞いた話しでは、英里も神田との関係を解消したらしい。どうやら、杏花が引き離したとか。やり方はもちろん穏便に?だ。

ただ、真琴と英里の関係はこの出張の間だけであった。

真琴は週末に弾丸帰省を果たすのだが、それからはやはり亜樹が一番に。真琴にとって友達よりも、自身の欲求の解消が何よりも最優先だったようだ。

ある日の夜、道流と杏花は二人で一杯やっていた。

道流「ありがとう杏花ちゃん」

杏花「ん?何のこと?」

道流「優衣香のことだよ。助けてくれたんでしょ?詳しくは知らないけれど、この前の優衣香を見て何かあったんだなって感じたから」

杏花は缶ビールを一口飲んで、

杏花「さぁどうだったっけ。最近物忘れが酷くてねぇ」

惚けた顔をして、視線を逸らせた。

道流「はは。杏花ちゃんらしいね」

杏花「亜樹は?連絡してる?」

道流「毎日してるよ。今日も、寂しいから早く帰って来いって言ってた」

杏花「亜樹は昔から寂しがり屋だよね。そろそろ一升瓶抱いて寝るんじゃない?」

道流「もう抱いてるよ」

杏花「マジ!?あはは!さすが亜樹」

道流「でもやっぱり、僕も早く会いたいよ」

杏花「わかる。私もダーリンがいないから寂しくなるもん」

道流「……あと一週間か」

杏花「うん、あと一週間」

二人は、窓の外に見える街の夜景に、最愛の人を重ねた。

―――

―――

―――

【あとがき】

最後まで読んで頂きありがとうございました。

今回のお話しでは、ずっと前から書いてみたかった人物を登場させてみました。突然の登場だったので、不思議に思われたかと思いますが、僕にとって凄く思い入れがある人物です。

そして、おそらく次回で、何度目かの最後になると思いますが、今のところまったくのノープランなので、もしかしたら、一度、新しい別のお話しを投稿するかもしれませんがよろしくお願いします。

投稿するまでしばらくお時間がかかると思いますが、そのときには是非、また読んで頂けましたら幸いです。

重ねて、最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。

Categories
未分類
Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です