迷える獣に愛の手を

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※エロなし注意※

前回を投稿し、俺だけかもしれないが書き手のメンタルというのは、如実に文章に出るもんなんだなと痛感した。

前半部分の鬱さ加減と言ったらもう…己の鬼畜な所業と向き合う作業キツい。

リッちゃんを書くのに手は抜けない為、テンションの低さをなけなしの表現力でカバーという無茶な仕上がりになっている。

さらに早く進めたいあまりに見事にすっ飛ばしたくだりがあった。

いなくなったリッちゃんを探しに出る前なんだが、スマホに電話して留守番電話になっているのを確認している。これを書き忘れてしまった。今回に少し関わってくるのでここで付け加えておく。

いやもう一つあった。いらないと思うが俺、自分のパンツ脱ぐとこ書いてない。

さて、あの後だが。

ホテルはレオの交渉のおかげと幸運に恵まれ、一泊延長できた。さらに俺の部屋だけ時間延長して17時にチェックアウトとなった。

結果的に、滞在を延ばしたのは大正解だった。

昼過ぎになんとか回復したリッちゃんを送っていくと、自宅では父親が乱心しかけていてちょっとした騒ぎになっていた。

リッちゃん曰く、外泊をぼかして家を出た上、親から電話掛かってくるのを気にして、俺の部屋へ入る前からスマホの電源を切ったままにしていたんだそうだ。

電話が通じないせいで事件に巻き込まれたんじゃと心配していたわけだが、そこへ俺を連れて帰ってきた、と。

俺はすかさず結婚を前提にお付き合いさせて貰っている、と両親に挨拶しつつ、前日急遽泊めたことを詫び、連絡はスマホの充電切れということで許してもらった。

酔って気分が悪くなった為仕方なく泊めたことになっている。

いきなり宣言されてリッちゃんは慌てていたが、強敵の父親に認めて貰った俺は満足している。

ちなみにレオは家族に会うのに自分がいるとややこしくなるから、と別行動している。

そして今。

リッちゃんの母親と妹に興味深々で引き止められ、リッちゃん宅で歓待を受けた俺はホテルに戻ったところだ。すっかり夕方になっている。

リッちゃんは明日また部屋へ来る約束だ。暑い最中に外で会うにはリッちゃんの体が万全じゃないので、レオが俺の部屋のチェックアウトを延長してくれたというわけだ。

レオに部屋に戻ったことをLINEで知らせ、ヤツが帰ったら夕飯行くか、とどこに行くか考えだした時だった。

すっかり忘れていたハメ撮り浮気のアイツから、着信があった。

もうはっきり別れなくては、と思いながら出る。

『エイト?あのね、急に実家に帰省することになってね、私も忘れて電話しなかったけど、全然連絡くれないんだもん、どうしたのかと思ってぇ』

どうしたのかも何もあるか。

いきなり喋り出したので俺は黙ってため息をついてやった。

この調子だとどうやらすっとぼけることにしたらしい。

元恋人がアレをどう誤魔化すつもりなのか、言わせる気満々で俺は先を促した。

「…で?」

『確かエイトの会社のお盆もウチと一緒でしょ?月曜までだからまだ2日あるし、どっか行こって誘おうと思ったの!』

「…。いや、無理だ」

『ええっどうしてよぉ』

こんな話し方する奴だったかなあ。

とりあえず、なかったことにするつもりなのはわかった。

残っていた情がどんどんゼロに近くなっていくのを感じる。

「お前は趣味の合うお友達と行けば。俺は無理。お前とはもう終わりだ」

『…なによそれ』

おお、話し方が普通に戻った。気持ち悪いからそっちで喋ってくれ。

「理由はお前が一番知ってるだろ」

『あっ、わかった!ノーパソのコラのことでしょ!よくできてたでしょ!』

コラだと…?

「そんなわけねーだろ!鏡の歪みが入った写真をどうやって完璧にコラージュ加工するんだ!」

立ちバックで2人仲良く顔まで全身映ったやつのことである。

『ちょうど合う素材があったのよ!』

あの崩れた表情が別の写真だと?

「ふざけんな!とにかく俺はもうごめんだ。電話もこれっきりにしてくれ。じゃあな」

元々アイツの部屋には歯ブラシしか置いてない。

『ま、待ちなさいよ!』

問答無用で通話を切る。

すぐまた着信になったがマナーモードにして放置した。

「えっ、証拠写真のこと言わなかったわけ?」

お通しの漬物アラカルトをいい音させて食べながらレオが訊いてきた。

電話のあとしばらくして戻って来たんで、そのまま連れ出して居酒屋に来ている。

ホッケの一夜干しの塩焼きが美味い。

本日は生ビールだ。

「言い訳が酷すぎて早く切りたかったんだ」

「まあな、もうちょいマシな言い訳あるよな」

あんなおかしなやつじゃなかったはずなんだが…。

レオが俺のスマホの例の写真見ながら、ホッケをつついている。コラ説が気になるらしい。

よくそんなもん見ながら食えるな。

情がゼロゲージになったせいか、わざわざ見ようとも思わないが、思い出すだけで吐き気するのはなくなった。完治だ、めでたい。

とりあえずこれで身辺も綺麗になった。

「あれで誤魔化せると思うのがわからん」

「結婚相手としては上物だからな、お前。惜しくなったんじゃないのか」

「昨日まで連絡なかったのはなんなんだ」

「あっちの男に会いに行ってたと読む。で、どっかアラが見えてお前に逆戻り〜」

箸でビシッ、と指してくる。

「やめてくれ。願い下げだ」

付き合い続けて結婚に至ったかは謎だが悪くは思ってなかった。

あの時ハメ撮り画像見つけなかったら、と思うとゾッとする。

「一生ネタになるな、これは」

「頼むから俺は匿名にしといてくれ」

おう、まかせとけ、と画像見ながらいい加減な返事をしている。絶対そういう画像好きだよな。

ほとぼり冷めたら消してやる。

「ま、明日はリッちゃんとゆっくり別れを惜しみな。俺はチェックアウトまで遊んでくるわ」

「すまん」

「いや、久しぶりのツレがまだいるんだ。気にすんな」

嘘かもしれないが今は好意に甘えておこう。

久しぶりに余裕のある精神状態で、馬鹿話しながらこの夜は更けていった。

翌日11時。

リッちゃんがやってきた。

目元の腫れもなくなり、顔色も良くなっていて安心する。

今日は動きやすそうな水色の開襟のブラウスに、藍色のフレアスカートだ。

「どうぞ。待ってたよ」

部屋に入れるなり抱きしめた。少し驚いたようだが抱き返してくれる。はあ、幸せだ。

こっちの方に座ろう、とベッドに誘導して、並んで座る。

テーブルだとくっつけないんだ。

今更なんだが緊張する。

互いの間の手を握り、もう片方の手で髪を撫で、頬に触ると、手を重ねてきた。

あの時と同じ、手のひらに頬を擦り寄せる仕草。

少し冷えた、なめらかな肌。

じっと俺を見る猫に似た大きな目に見入る。

俺はリッちゃんの唇に吸い寄せられるように口づけた。

ダメだ、どうも大人しくしていられない。

必死で誘惑に打ち勝って、軽いキスに留める。

「身体の調子はどう?」

「もう大丈夫です」

リッちゃんは俺から身を離し、俺の目を見ながらそう言って安心させるように笑った。

「酷くしてホントにごめん」

おまけに出したら寝落ちとか男として最悪だ。

早くも逃げられそうになってるし。

「これからは、優しくしてくれるんでしょう?」

少し首を傾げて困ったように微笑んでいる。

「うん。リッちゃんが嫌なことはしたくない。…だから、教えて欲しいんだ」

昨日探し回った時、思った。

俺たちはきっと言葉が足りてない。

「何を教えたら…?」

「君が俺にされて、嫌だったこと、全部。もう俺とそういうことするの自体が嫌かもしれないけど、俺は君が嫌でなければ、君に触りたいから」

えっ、と小さく声を上げて、見る見る間に顔が真っ赤になった。

白い肌は綺麗にピンク色になる。

握った手を放して、肩を引き寄せてしっかり抱きしめる。

「俺が間違えないように、君がどう感じてたのか教えて?」

背中を繰り返し撫でていると、少しずつ力が抜けて体を預けてきた。頭が肩に落ちる。可愛い。

「あの…あの時は、そういうことになる覚悟もして来たつもりだったんです。ただ、私がどういうものかあんまりわかってなくて…」

「でも、辛かったんだよね?何度も逃げてたし。君がいいようにしたいんだ」

リッちゃんは考えているのか黙り込んだ。

俺は撫でる範囲を広げ、頭を撫でたり肩を撫でたりと触り放題だ。華奢な骨格や柔らかい肉質を自分と比べ、同じ人類とは思えない、と感嘆する。

おまけにいい匂いがして、重みといい抱き心地が最高に良い。

ずっと触っていられるし、いたい。

リッちゃんが黙り込んでいた時間は15分くらいだろうか。その間俺はひたすら撫で心地を愛でていた。細いのに柔らかいとは、骨はどこにあるんだとかくだらないことを考えていた。

「あの、…上手く説明できないと思うけど…」

すっかり力が抜けて体を預け切ったリッちゃんが、ポツポツと話し出した。

「あの…嫌なわけではなかったの。痛かったのは、その、ホントにすっごく痛かったけど、嫌じゃなかったの。ホントなの」

気を許してくれたのか、甘えた感じに口調がくだけたのが嬉しい。少し眠気もきてるのか、とろんとした声になってる。

「うん。嫌じゃなくて良かった。…つらくないようにしたいんだ」

ゆっくり、髪を梳きながら背中を撫でる。

俺は恋愛の回数だけはこなしていると思う。

それなのに人の体温が、こんなに優しい気持ちになるものだとは知らなかった。

リッちゃんが、俺の肩に頭を少し擦り付けてきた。俺の言葉に頷いたようだ。

…可愛いなあ。好きだ。

「痛いのもだけど、…怖くて」

怖いと言われ、油断し切っていた俺は狼狽した。

「俺、怖かった?ごめん、怯えさせちゃった俺が悪い」

ケダモノになってました。反省する…。

「あの…あのね、違うの。怖かったのはね、気持ちよくなるの…怖いの。勝手に体がどんどん変になって、どうにもできなくなるの。待って、って思ってもすごい力で引きずられてく感じで」

「そうか…」

俺に怯えたのもあったと思うけど、言わないだろうな。

「俺が触るの、嫌かな」

「…嫌じゃ、ないの。ゆっくりな時は、気持ちいいって思うの。でもすぐ、追い立てられてるみたいになって、体が変になって、何も出来なくなって、私が、私じゃなくなるみたいで…」

最中は間違いなく追い立ててるな。

身体の反応に心がついて行けてない感じだろうか。

「ごめん、それじゃあんなにしたらつらかったね」

「ううん…」

いいの、と言うように頭を肩につけたまま身悶えする。首を振ったようだ。

よしよしするように頭を撫でると満足そうに頷いた。

リッちゃんの体温で俺が汗ばんでくる。やはり眠気が来ているのか全身ポカポカだ。

眠りに落ちないうちに、俺は質問することにした。

「次はだいぶ痛くなくなってると思うけど…俺とするの、嫌?やっぱり怖い?」

ギリギリ許容範囲だったけど、かなり慣れないと痛いと思う。

「え…、あ!あの…、痛いのは怖いけど、その…それは、嫌じゃなくて」

途中までぽやんとしていたが、理解したらしく固くなっている。

子供をあやすように、ゆっくり背中を優しく叩く。

「わかったよ。嫌だったり痛かったら、やめよう」

俺だっていつもやめる余裕がないわけではない。

あの時は…心の余裕がなかったんだ。

「うん…」

「リッちゃんは、俺にして欲しいことない?」

「私も、エイトさんに触りたい、です…」

敬語が戻って来た。目が覚めちゃったか…。

触りたいなんて言われたら喜んじゃうよ。

「どうぞ。好きなだけ」

パッと顔を上げて俺を見た、瞳がなんかキラキラしている。すごく前のめりなんだが。

…え、なに、そんなに触りたかったの?

リクエストで俺たちはベッドの上で向かい合わせに座り直した。

この、今から触りますって感じ、なんか緊張する…どこ触られるんだろ。いや変な期待はしていないから。

「…触ります」

恐る恐る、手を伸ばして頬をちょっと触って引っ込める。次は両手で顔を挟んで、少し撫でる。

指先で撫でてくる感じだ。細い指でそっと触るから、うっかりすると変な気分になりそうな。

それから、膝立ちになり、俺が膝を立てた間に入り、大胆にもぎゅっと首に抱きついてくる。残念ながら胸は当たらない。

しばらく抱きついて背中とか肩をナデナデし、満足したら、次は頭をナデナデしてくる。

犬になった気分だ。…悪くない。

柔らかい手の感触。口をつけて舐めたくなるが我慢だ我慢。

俺はちゃんと待てをする犬だ…!!

「髪の毛、少し硬くてサラサラ。一度撫でてみたかったの」

「いつでも触ってくれていいよ」

頭ならね。意外と苦行で消耗した…。

「うん。嬉しい」

そうか、この笑顔が、ご褒美ってやつか。…わん!

こんなことで喜んでくれるなら、いくらでもしてくれ。

「私、時々エイトさん可愛いって思って、触りたかったの」

俺は壁際に行ってもたれると、リッちゃんを引き寄せて自分にもたれさせた。

沈黙が多くても苦にならない。

…少し、わかった気がする。

俺がリッちゃんを触りたいのは必ずしもセックスに行き着く為じゃない。したいはしたいが、結果的にもつれ込んでるだけで、ソレ目的じゃない。

可愛くて可愛がりたくてしょうがないから触りたくて、触ってたらそうなってる。多分、その可愛いって気持ちと同じ。

快感に明確な終わりのある男はどうしても射精という終わりを目指して急ぎがちになってしまう。

だが男と違う身体構造の女の子には、その可愛い、可愛がりたい、という気持ちをもっとたくさん与えられることが最も重要なのかもしれない。

その中でもさらにリッちゃんの場合は、身体に心がついていけてないということだから、もっと前の段階からゆっくり始めないといけないのだろう。

考えてみれば、ただでさえ奥手なタイプに対して、たった2回の経験の中で俺は散々なことをしている。

腕の中でうとうとし始めたリッちゃんを撫でながら、彼女にできる限り合わせよう、と改めて誓った。

俺の部屋へ荷物を移動して先にチェックアウトし外出していたレオが、昼飯を差し入れてくれた為、俺とリッちゃんは一歩もホテルを出ることなく、そのまま夕方まで過ごした。

リッちゃんは身体が休息を求めているのか、ずっと俺にもたれてうとうと眠っては起き、俺と話してはうとうとする、といった具合だった。

その眠気で遠慮が飛びがちだったのが良かったようで、リッちゃんの心の距離がかなり縮まったのは嬉しい誤算だった。

そして、自分達の街へ帰る時間がやってきた。

戻って来たレオと、ホームまで見送ると言うリッちゃんの3人で、新幹線のホームにいた。

「できるだけ会いに来れるようにするから」

「顔見て話だったら、スマホで毎日できるよ、リッちゃん!」

黙ってしまったリッちゃんに、代わる代わる話しかけてるんだが…。

話しかけると目を向けるけど、少し微笑むだけで口は開かない。

いつもより目が濡れた感じがして、涙を誤魔化してるようにも見える。

こういう反応は初めての経験で、俺はどうしていいかわからない。

レオも似たようなものらしく、珍しく必死で話しかけている。

…そろそろ時間だ。

この状態で1人で残して行くのが心配で仕方ない。

「リッちゃん、お風呂上がるの何時?」

「は、8時くらいです…」

やっぱり我慢していて喋れなかったらしく、涙がこぼれ出してしまった。

「じゃあ、9時に、自分の部屋でスマホ持って待ってて」

「はい…」

最後にぎゅっと抱きしめる。離したくない。

「毎日掛けるし、またすぐ来るから!」

「はい。…待って、る…から」

ギリギリまで手を握っていたが、もう離さないと。

「行くね。気をつけて帰るんだよ?」

手を振るリッちゃんの声は、発車ベルで聞こえなかった。

俺たちは車内で荷物を床に置き、ドアにもたれて立ち乗りである。

俺たちの住む街とこの街の間は2時間、これくらいなら立ちっぱなしでもさほど苦ではない。

「はあ、俺はお前の気持ちがちょっとわかったわ…」

レオが珍しく意気消沈している。

「なんだ?」

「リッちゃんさ、あの子が泣くとすげえダメージくるな」

「やっぱり俺だけじゃないのか」

ああ心配だ。悪い虫が。

「普通にしてたらそこまでキたりしないと思うけどさ…妹持ちの俺にあの泣き顔はキツいわー」

「なんだそれ」

「妹が小学校低学年くらいにさ、よく約束破って泣かせたんだよ。未だに罪悪感あってさ」

なんか純粋な感じ?が被るんだよね、とぼやくように言って下を向いている。

いつも飄々としたレオでさえこの反応か。

子供並みに保護欲掻き立てるってめちゃくちゃヤバいやつじゃないか!

「俺もう会社辞めて引っ越そうかな…」

「無職になったら親父さんに結婚反対されるぞ」

「…それは困るな」

窓から見える空はまだ明るい。

何事もなく帰れてるといいんだが。

「いや俺はお前をストーカー予備軍だと思ってたけど、あの威力には勝てんわ」

「お前ね…」

ストーカー素養を否定しきれない自分がいる。

これからまた来る日まで、毎日の夜の電話を楽しみに生きよう。

とりあえず、家に着いたらリッちゃんに電話だ。

この時の俺はまだ甘く考えていた。

今回はここまで。

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