2章〈僕の秘密〉
マンションの下を流れる清滝川という名の小さな小川の上には秋の風が舞い、水面には枯れ葉が落ち、流れては、流れの淀んだ所で沈んで塵芥となっている。土日早朝のランニングは続けているが、ここ最近、神社どころか道すがらも美香さんと出会うことができなかった。
ときどき、ベランダで洗濯物を干している美香さんを見るだけで、声が聞けない状況にストレスを感じていた。日は落ちて、外は既に暗がりが支配しようとしている。うす暗い部屋の中でコンドームをティシュに包みゴミ箱に捨て、パンツを履きながら開いたカーテンの隙間から窓の外を眺めた。大川家は1階のリビングの明かりがついているだけで、何の変哲もない光景が広がっている。
「ねえ、何見てるの?」。背中越しにベッドの上から全裸の女が声を掛ける。
「いや、何でもない。暗くなるのが早くなったなって」。
女は、そうね、と一言呟くとベッドの上のショーツとブラジャーを身に着け始めた。
「朋子さん、これチップ」。僕は女に5千円を渡した。
「ええ、どうしてなの?」
「いつもあげたいんだけど今日は特別。朋子さん、僕にいつも優しくしてくれるし、今日のOLのコスプレも良かったよ。これで何か美味しいものでも食べて。」
女は「ありがとう」とお金を受け取り、服を着ると、
「鞍田君、いつも指名してくれてありがとう・・あのね、お願いがあるんだけど・・今度、仕事抜きでプライベートで会わない?」
「今日、チップあげたから誘ってんの?」
「ううん、違うわ。チップは全然関係ない。いつか言おうと思ってたの。仕事を離れて鞍田君とゆっくりと会ってみたいってずっと思ってたの。ねえ、今度、食事でもいかない?」
「いいけど、店の外でプライベートでお客と会うのって禁止だろ。大丈夫?」
「大丈夫よ。バレたりしないし、もし見つかったら店、辞めたらいいだけだから。」
朋子さんは帰り際に「約束よ」と言いながら、いつになく唇を重ねて部屋を出ていった。部屋にはいつものように女の香水の残り香が漂っていた。
朋子さんとの逢瀬。これが僕の美香さんへの一つの秘密である。
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時はカレンダーを捲るように過ぎ去っていく。秋から冬へと季節は変わり、恋人たちの祭典クリスマスイブ。ただし、僕にとってはクリスマスイブも華やかな飾り付けも関係なかった、ただ、僕は会いたくて会えない美香という女の亡霊に取りつかれ、彼女を抱きたくてしょうがなかった。
その焦燥感ゆえに、この時期、僕はある一人の女性とも肉体関係を結んだ。会社のバトミントンクラブで一緒の葉子という女。黒木華に似たぷっくりした僕好みの顔たちの女性で、僕より2つ年上の女性。美人なのだが、どこか幸薄い表情をしているのが印象的だった。クラブの忘年会が終わり、みんなが三々五々に帰っていく中、僕と葉子は2人で賑やかな街中を歩いていた、
街には山下達郎の「クリスマスイブ」やマライアキャリーの「ホワイトクリスマス」が流れている。
2人とも酔いが良い感じに回って、腕を組みながら町の喧噪の中を歩いていく。乗車駅が近づいてくる。
「今日はこれから旦那さんと過ごすんでしょ?」
「ううん・・うちには子供もいないし・・それに主人は今夜は帰ってこないわ。」
「女のとこですか?」
葉子がその言葉を否定しなかったから、きっとそうなうなのだろう。
「ここから2駅乗ったら僕の家ですから、僕の家で飲みますか?」
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電気を入れればすぐに温まるような小さな炬燵に包まれながら、
「葉子さん、何飲みます?」と聞くと、
「わかってるでしょ、君がテキーラ好きなのしってるんだから、それ頂戴」と言った。
「飲み比べしましょうか?葉子さん」
「いいわよ。やりましょう。」
テキーラを以前の会社の退職祝いで貰った江戸切子に注いだ。葉子はストレートで透明の液体を喉に一気に流し込んだ。
「おいしいわ。すごく温まる。次は君ね。」と炬燵の中で一瞬、幸せそうな顔を浮かべた。僕も注がれたテキーラを一気に喉に流し込んだ。テキーラの一気が2,3度続いたころ、葉子の手が動いて、細く長い指が僕の指に絡まった。
「寂しいわ。」
葉子がポツリと言った。「寂しいの、今はどうしようもなくね。」。
葉子の瞳の奥にはその悲しみを湛えた潤いがあり、それを見た瞬間、僕の中にあった葉子への思いが堰をきったようにあふれだした。僕は彼女を横倒しにして、白いセーターの上から豊満な乳房を揉みしだき、セータを首まで持ち上げた。
白いブラジャーに包まれた乳房が露になる。背中のホックを外すとブラが外れ、メロン状の乳房がたぷんとゆれるように現れた、炬燵の外で乳房は揺れて、尖った乳首を含むと、ほどよい固さと冷たさを感じた。
僕は葉子のストッキングに指先を伸ばした、炬燵の中で温かくなったストッキングは徐々に湿ってきて、指先に遠赤外線の暖かさを感じた。僕は葉子を炬燵から出すと、ストッキングを脱がせ、ショーツも脱がせ、今、一番蒸れている蜜口へと素早く顔を埋めた。
ほんのりとした汗の匂いが漂い、クチュクチュと舌先を入れて舐めると、「ああっつ」といって葉子は顔をのけ反らせて、熱い吐息を洩らした。顔を寄せると熱気と湿り気が渦巻き、濃厚な女のフェロモンが漂っている。いつまで甞めてても飽きのこない臭い匂いだった。
僕はグイっと割れ目を開き、ピンクの割れ目を観察した。腰をあげて太ももの内側を舐めた。さらに足首を掴み、蒸れた足裏にも舌を這わせたが、指の間が汗と脂にまみれ、ヌルヌルとしいた。指の間を舐めると、うっすらとした塩味がし、舐める度指先がきゅっと縮こまった。
両脚の爪先を十分に舐めてから、葉子の足を左右に開き、その中心部に腰を進めていった。奥にはピクピクと息づく妖しいホールがあり、複雑に入り組んだ襞に囲まれていた。割れ目の上には包皮に囲まれていた肉芽が真珠の美しさのように姿を現している。
お尻も実に見事なポイントだ。僕は両の親指で谷間を広げ、何とも淫靡なピンクの蕾を観察した。鼻を押し付けると何かが少し焦げたような匂いがして、僕はそれに激しく勃起した。蕾の先端に舌先を這わせ、襞の感触を確かめてみたが、特に匂いを感じなかった。
存分に葉子の肛穴を堪能した後で足を広げ、開いた股間の暗がりに肉棒を押し当てていった、ワレメからは乳白色の腋体があふれ出ている。
「ねえ、鞍田くん、お願いだから、ゆっくり入れて」
「葉子さんって、入れる時、痛いんですか?」
「そうなの・・最初だけ・・自分でもいやになるわ」
僕は言われたままにゆっくりと肉棒の先端をじりじりと入れていった。
「ううん、痛い・・そう、そこ、もっと下、そこ・・きて」
葉子は挿入が痛くないように、自分で腰を動かしながら懸命にいい位置に肉棒をインサートささている。肉棒が半分まで入ったところで、
「もう、大丈夫、突いて・・奥まで」と自ら腰をズンズンと突きあげてきた、意外なほがどに葉子の膣内は肉棒をヌルっと押し込み、根元まで滑り込ませた、膣内はとても暖かく、内部の奥の方では柔肉がキュッとしまった。
「い。いきそう。」
僕の言葉を無視して、同時に
「あああああ、すっごい、い、いくっつ・・毎晩して」
激しく仰ぎ、僕を乗せているのを忘れたかのように、腰突き上げ、ブリッジするかのような恰好になりつつ、ワレメ内部をキュキュっと締め付ける。葉子の身体が硬直し、彼女がイッタことを示した。
葉子との逢瀬。これが僕の美香さんへの2つめの秘密である。
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ある日の土曜日の夕方、何気に外を見ていると、玄関から犬を連れた美香さんが現れた。僕は急いで服を着替え、外出した。わざとらしくないように、色々と仕掛けをしながら、道端で美香さんと出会った。
「あら、鞍田くん、久しぶりね。元気してた?」
「お久しぶりです。最近、朝に会いませんね」
「そうなの。最近、朝、寒いでしょ。うちのノンちゃん寒いの苦手だしさあ、私もダメだから、少し暖かくなってから散歩に行ってるの。」
「ご主人はお手伝いしてくれないのですか?」
「ええ、家の旦那はだめよ。朝起きる遅いし、寒いのダメ、それに面倒くさがりだもん。」
・・・そんな旦那はだめですよ。
と僕はちいさな声で言ったが、美香さんには聞こえていないようだった。
「じゃあ、今日はここで帰るわ。鞍田君は神社まで行くの?」
「はい、そうします。それでは」
僕はここで美香さんと別れた、久しぶりの会話に息を吹き返したような気がした。それからしばらくして、町内会で葬儀の寄り合いが行われた。町内会長さんのお母様が無くなられた。町内の関係者は寄り合いに集まったがが、僕はそこで美香さんの秘密を知ることになる。
(続)