「みっちゃん」こと俺と、妻の沙織は、異業種の共稼ぎ夫婦。
沙織の転勤で別居生活を送っていた俺たち。
望まぬ暴力が沙織を、、、。
「妊娠、、、。」
最初に浮かんだのは沙織の泣き顔。
病院での沙織の関係者は、彼女の身に何が起こったのかをよく知っている。
俺は、悲しげな表情の看護師さんに尋ねた。
「、、、あの、、この事を妻は、、、」
「生理が来ないことを奥様、気にされていたので、、、」
そうか、、知ってるんだ。
この先の病室にいる沙織は、この事を。
「中絶するなら、早めの方が良いです。
ご夫婦で話し合ってください。」
「つっ!、、、ありがとうございます。」
看護師さんは、気遣わしげにお辞儀をして離れて行って、俺はこの場を動けない。
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俺は、、。
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「神様なんて本当にいないのかもな。」
A男「、、、、、」
沙織のところに行かなきゃいけないのに、行けなくて。
俺は、病院の公衆電話から、相棒のA男(親友。俺たち夫婦の実質の仲人)にすがり付いていた。
「どうすれば良かったのかな。やっぱり転勤なんか断らせて、沙織を手離さなきゃ良かったのかな?」
A男「お前が、土下座して頼んでたら、沙織ちゃんはきっと笑って会社辞めてたろうな。」
「、、、、」
A男「無理やり仕事辞めさせたら沙織が沙織じゃなくなっちゃうって、お前が言ってたセリフだぞ。」
「、、、、」
A男「沙織ちゃん守るんだろ?」
「うん」
A男「しっかりしろよ~、ついさっきまで、
沙織ちゃん守るために鬼になってたお前はどこいったんだよ~。」
「鬼か、、、やったな、一緒に。あのバカ潰しにいってきたな。」
A男「俺は沙織ちゃんの前には、一緒に行けないぞ?行ったら沙織ちゃん俺に惚れちゃうからな。」
「言ってろ、ぼけ!」
A男「今度はやさしい鬼さんやってきな。得意だろ?アクター。セールスマン!お前なら出来るよ。沙織ちゃん守るんだろ?何を言うのかはもう決めてるんだろ?」
「お見通しか、バカやろう。」
A男「そこは信頼してる。うまくやんな!相棒!」
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「みっちゃん」
外を見ていた沙織が俺を見て微笑んだ。
こんな時なんだけど、なんて綺麗なんだろう俺の奥さん。
「聞いたんだよね?」
「ああ」
「不思議だね。去年、旅行先であんなにエッチしたのに赤ちゃん出来なかったのに。」
「本当、ひどいエッチしてたな。」
「別居が決まってからは、みっちゃん、一年我慢だって、慣れないコンドーム頑張ってくれてさ。」
本当、生外出しくらいやっとけば良かったよ。
「慣れてないからきっと失敗したのさ。」
沙織がぶるぶると首を振る。
「中絶は、早いほうが良いんだよ。明日、お医者様に伝えるの付き合って。」
「沙織」
「ごめんね、赤ちゃん。駄目な親で。」
沙織が泣き出す。
「きっとバチがあたっちゃうね。もしかしたら、もう子供が出来なくなっちゃうかも。そしたら、そしたらさ、あたし、みっちゃんの赤ちゃん、産めなくなっちゃうのかな、そんなの、そんなのやだよ~。」
「沙織!!」
沙織が俺の胸で泣き続ける。
「みっちゃん、みっちゃん!みっちゃん!!」
神様頼みます、ここだけは、、ここだけは、うまく、アクターさせてください!!この後、営業成績はしばらくボウズで構いませんから。
「沙織、沙織、知ってるか?」
「え、、」
「俺はお前が大好きなんだぞ、、、。」
「ふぇ?」
「お前の言うことなら、何でも叶えちゃうんだぞ、、何でもだ!!」
「みっちゃん?」
「沙織、俺はお前が納得しておろすなら、全力で支える。それでもう子供が出来なかったらさ、お前を全力で守る。大丈夫!一生、二人で楽しく暮らして行けるさ。」
「みっちゃん、、」
「でも、でもさ、お前が少しでも産みたいなら、、それが赤ちゃんへの罪悪感でもさ、中絶への恐怖でもさ!」
「、、、」
「全力で支える。どんとこいだ!!」
沙織は呆気に取られたような、ポカーンとした顔を見せてから、突然、全力で首を横に振りはじめた。
「だ、だめだよみっちゃん、、そんなことしたら、、そんなことをしたら、、いつかみっちゃんが壊れちゃう。」
「この無神経男が?」(笑)
頼もしげに笑うんだ!俺!
「沙織、俺たちは、A型とB型の夫婦だ。子供が何の血液型でもおかしくない。」
「、、、」
「きっと安物コンドームがずれたのさ、ほら、俺って大きいからさ。」
「、、みっちゃん」
「勘違いするなよ。産めって言ってるんじゃないんだ。沙織が本当にやりたいことを考えるんだ。無理に選択肢を狭める必要はない。」
「、、、うん。」
「沙織は、いつものように、やりたいことを俺に伝えてくれれば良いんだ。そしたらさ、後のことはさ、俺が全力でプランニングしてやるよ、いつものようにさ!」
「、、うん、うん。」
「あ、、でも、女の子生まれたら、俺に名前をつけさせて欲しいな~。夢なんだよな~。」
「みっちゃん、、」(涙)
「沙織に似た女の子だったら、ハーレムだよな~最高だよな~。」
「バカ!バカみっちゃん!!」(涙)
沙織がまた泣き出す。
つられて俺も。
ひとしきり一緒に泣いてさ、沙織が言ったんだ、、考えるって、、、。
神様、俺、上手くアクター出来たかな?
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「でも、でもさ、みっちゃんのプランニングって、結構穴があるからさ、駄目出ししても良いかな。」
「、、そういうとこ、本当、沙織」(苦笑)
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もうすぐ退院のある日、沙織が言ったんだ。
産ませてくださいって。
それと、
「みっちゃん、退院したら、あたし、海を見に行きたいな!!」
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沙織の退院の日、俺は車で迎えに行ってさ、その足で、鎌倉の由比ヶ浜に向かったんだ。
産むって話になったから、本当は、安定期じゃないから医者は反対したんだけどね。
でもさ、沙織の心を守るのが一番大事なんだ!ってね。
由比ヶ浜なんだけど、一泊ホテル取ってさ、ゆっくり無理しないようにさ。
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海を見ながら、沙織が言うんだ、今夜抱いて欲しいな!ってさ。
でもお前?って沙織のお腹見てたらさ、あんにゃろう、汚れたあたしは抱けないのね?って泣き真似しやがる。
そう言われたらさ、もうやらない選択肢なんか無いじゃん。
だからさ言ったんだ。
お前、お前の入院中に溜まった俺のを舐めんなよって。
多すぎて赤ちゃん溺れさせちゃうぞ!ってね。
沙織は笑ってさ、赤ちゃん溺れちゃったら困るけどさ、
「でも、あたしがみっちゃんので満たされたら、この子はみっちゃんの子だよ!」
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やさしくしてね?って、沙織がベッドて微笑む。
悪りい今日ばっかりは自信無いって答える。
本当はあの日からずっと、沙織を俺色に染め直したくってさ。
沙織とのセックスはいつもワンチャンだからさ、何度も何度も寸止めしてさ、何度も何度もよがらせて泣かせて、いっぱいおねだりさせてさ、それで奥突いて沙織が絶頂しても、こっちももう止まらないからさ。
助けてって許してって、どんどん愛おしくなってさ。
うちの奥さん、世界一かわいいだろ~とか、叫び出しそうでさ。
一生やってろ~!、、って話なんだけどさ。
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由比ヶ浜から帰って数日、やっと本格的に復帰した仕事場に、切羽詰まった沙織の電話が来たんた。
「みっちゃん、みっちゃん!助けて!!お腹が痛い!なんか変だよう!!」
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あわてて病院に駆けつけたらさ、もう全てが終わっていて。
もう沙織の中には、命の痕跡は無くなっていて、医者が言うには、トイレに流れちゃったんだろうって。
何だよそれはって思った。
あんなに悩んだ日々は、流産で終わった。
当たり前だけど、沙織はひどく落ち込んで。
心配で心配で、ずっと隣で、大丈夫だよそばにいるよと言い続けて。
だけどある日、沙織が言ったんだ。
「みっちゃん、あたし、新しい仕事見つけたい!」
思い詰めるでなく、その笑顔は、ああ、沙織だ、沙織が戻ってきた、、って思ったんだ。
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【後日談】
沙織は、会社を辞めました。
そしてしばらくして、その会社は、倒産して外資に吸収された。
あの件が、直接原因とか言うつもりはないけど、そういう体質が根底にあったんじゃないかなって少し思う。
まあ、俺の会社も体質は似たようなものだけどね。
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そして沙織は、バリバリの外資系企業に転職して、また忙しく働きはじめました。
呆れる俺に、
「だって、外資系だったら、余計な飲み会とか無いんだもん。転勤も無いしさ~。」
すみません、最長二週間におよぶ海外出張が度々あるのはどうなんだよ!!と何度か叫びそうになった。
一緒にいるのに、この手に入っていないような感覚。
俺、一生、沙織追っかけて飽きないんだろうなあって。
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そして、時間はかかったけど、うちに幸せのコウノトリがやってきた。
男の子だったけど(笑)
燃え尽き掛けた俺に沙織がさ、男の子だけどみっちゃん名前つけて良いよって。
本当、沙織、愛してる。
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男の子、
かわいいよ!甘ったれでさ!!今は成人して独立しちゃったけどさ。
久しぶりに沙織と二人になってさ、長らく「パパママ」
呼びになっていた関係を昔みたいなラブラブに戻すべく思案中です。
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A男はさ、外資に吸収された会社でも、出世頭で頑張ってたんだけど、難病発症しちゃってさ、会社辞めて田舎に帰った。
でも、それで看護師の奥さんゲットしちゃうのが、転んでもタダでは起きないA男だなと(笑)。
たまに遊びに行ってたんだけど、奥さん紹介してくれないの。
俺、微妙に信用無いなあと(笑)。
相棒の奥さんには手は出さないよ!でも、よっぽど美人さんなんだろうなあ。
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なんだかんだあって、
Kさんも俺も転職しちゃったんだけど、でも俺たちは元気です。
沙織が隣にいてくれるからきっと大丈夫!では、またお目にかかれる日まで!