また、今日もだった。
同級生の桃子はとにかく美人だけど、性格がキツくて高飛車なのだ。それに僕みたいなひ弱で目立たない、影を空気に潜めているような男はパシりとしか見ていない。
昼休みになると、桃子は僕の机の前に平気で立ち、パンとレモンティーを買って来いと当然のように言い放った。まるでそれが義務であるかのように。
しどろもどろに返事を返すと、桃子は目を細め鋭く睨み付けたので、僕はその姿に焦り教室を出た。
納得できないけど、言い換えればいつも通りなのだ。それに従っていればそれ以上は何もない。桃子みたいな学年一のアイドル生徒には反抗しない方が利口だということを高校二年の夏、今この瞬間にしみじみ感じていた。
「はい、お釣。君はいつも同じ物だね。もっと食べないと大きくならないよ?」
本当にそう思うよ。売店のおばちゃんは僕が欲してると思ってるんだろうけど、事実は違う。
教室に戻ると、桃子のグループが机を囲んで談笑していた。しかも桃子は僕の机に座っていたのだ。
「これ、買って来たよ」
皆が一斉に注目した。僕は胸が苦しくなり顔いっぱいに熱を感じた。
「あはは、なんで赤くなってんの?本当に聡は童貞だよね。キモいんだけど!」
関係ないだろ。だけどそう思っても口にすることはできない。
「要らないの?」
差し出しているのに、桃子はそれを受け取らなかった。
「やっぱり要らないや。今日は真帆のご飯もらうから。それあげる」
そう言って、桃子達は教室を出て行った。
いや、あげるって言うけどさ、これ僕のお金で買った物だし。……まあ、どうせそんなこと言えないけどさ。
席に着くと、桃子のお尻の暖かさが机に残っていて、女子の残り香が漂っていた。
放課後、僕は図書室に寄り本を数冊借りた。これは日課のようなもので、月曜日に借りて金曜日に返却する。学校での楽しみの一つだった。
「聡君、もう帰り?」
図書室を出たとき、同級生の真理亜ちゃんが声をかけて来た。
「うん。真理亜ちゃんはこれから?」
真理亜ちゃんは高校に入学したときに知り合った。そういえば、まさに今と同じタイミング、図書室を出たときだった。
「返却だけしようと思って。たしか電車一緒だったよね?一緒に帰らない?」
「う、うん。もちろんいいよ」
それは、最近気づいたことだった。僕は真理亜ちゃんが好きだ。今まで恋愛のれの字もなかった。むしろ僕みたいな奴が好きな女の子なんてとても夢物語にしか思っていなかった。
でも、彼女……真理亜ちゃんは、こんな僕に笑顔を見せてくれた。なんで?と悩んだことも一日や二日じゃない。もしかして罰ゲームか何かで近付いて来たんじゃないかってひねくれたこともあるけれど、やっとこの頃になって素直に認めることができるようになった。
「今返却して来るからちょっと待ってね」
長い髪がひらひらと風に舞うように靡いた。それに真理亜ちゃんの匂いは桃子みたいな香水女とは違ってどこか優しい。柔軟剤みたいな……。
しばらくすると、真理亜ちゃんが返却を済ませ戻って来た。
僕は鼓動を跳ね上がらせたがそれを隠すように毅然と見せた。
「そんなに熱い?変なの」
しかし、気持ちを抑えても額からは大量の汗が滲み出ていた。真理亜ちゃんはクスッと笑い、僕はその表情を見て火が吹きそうな羞恥を覚えた。
「はい。使って」
真理亜ちゃんは鞄から白いハンカチタオルを渡してくれた。
「え?え、いいの?汚れちゃうよ」
「ふふっ。何言ってるの?ハンカチは拭くための物だよ?こういうときのための」
真理亜ちゃんは意地悪く笑いながらハンカチを僕の額に当てた。
「あっ!大丈夫だよ!自分でやるから」
あたふたとハンカチを取り上げると、僕は眼鏡を外しぎこちなく拭った。
それを見て、また真理亜ちゃんはクスりと笑う。
暗い日常を照らすような太陽の光は、僕にとってこの瞬間、真理亜ちゃんとの一時だけだ。
別にいじめられているとは思っていない。そこまで気にしていないから。心と体には多少の矛盾はあるけど、高校生活ももうすぐ折り返しが来る。どうせ桃子達も、受験勉強が始まれば僕なんかに構ってる暇はなくなる。
「今日はどの本を借りたの?」
「うん。僕は歴史が好きだから……」
でも、真理亜ちゃんとはこの先も変わりたくない。
外は茜色の夕陽が綺麗だった。駅に向かう道で、二人並んで歩いていることがにわかには信じられなかったけど、夕陽が照らす真理亜ちゃんの横顔を見ると、夢や幻想ではない現実にいるんだと確かめさせてくれる。
多分、僕にとっては天使のような存在だけど、他の生徒からしたら、真理亜ちゃんの容姿は中くらいなんだと思う。それでも内面の明るさで、いくらでも注目の的になれるような女の子だと思っていた。
本当に、桃子みたいな外見だけの女とは大違い。
「ねえ真理亜ちゃん。変なこと聞いていい?」
「ん?いいよ」
真理亜ちゃんは何か期待しているのか目を見開いた。
「あ、いや、別に大したことじゃないんだけど……僕ってさ……地味だし、ひ弱だし……なんで真理亜ちゃんはこんな僕に声をかけてくれるのかなって思ったから」
すると真理亜ちゃんは、そんな言葉が意外だったのかすっとんきょうな声を出した。
「え?なんで?地味でひ弱だったら声をかけちゃ駄目なの?」
「いや……駄目じゃないけど」
「じゃあ何でそんなこと聞いたの?」
「……ごめん」
「ふふっ。変なの」
聞いてから馬鹿だったと気づいた。僕の日常は暗い。でも真理亜ちゃんにはそんなことわかるわけがないんだ。聞いてみたいと思った好奇心は所詮僕の一方通行の感情だ。それにいったい、聞いてどうしたいのかもわからなかった。
いや、もしかしたら巻き込みたくなかったのかもしれない。
それから電車に乗り込み、家路を急ぐ振動に体を揺らされながらも、僕は真理亜ちゃんとの一分一秒に心を傾けた。隣に座っている彼女は、本の話しになるとどうやら興奮して夢中になってしまうらしい。
「……凄い展開だよね!それで、その主人公がね……」
僕は相槌を打ちながら、白く綺麗な首筋や、紺のスカートからスラリと伸びる足を舐めるように見ていた。
前に一度、桃子達にからかわれてアダルト動画を見せられたことがあった。僕はその日から性的なことに興味を持ち始めた。
そんなこと考えたこともなかったのに、今となっては制服の下が気になるときがある。この瞬間のように。
「ん?顔に何か着いてる?」
その言葉にはっとして、僕は慌てて否定した。
「えっ!?ううん!何でもないよ」
「そっか、ならよかった。ずっと見てる気がしたから、何か恥ずかしかったよ」
真理亜ちゃんの頬がほんのり赤くなった。僕は外の夕陽を眺めた。
「最後はどうなったの?」
これ以上は嫌な気分にさせてしまうと思い、自分の気持ちを無理やり逸らせた。
「うん。最後はね、復讐しようとしてその女の人を男の人に売っちゃったんだ。でもその出来事が一線を越えちゃう原因になって、理性が効かなくなった主人公は、いつでも味方だった最愛の人も欲望のままに同じ目にあわせちゃって……面白かったけど、凄く怖い感じ」
「そうなんだ。僕だったら絶対そんなことしないのに」
「うん。私もそう思う。聡君は優しいからね」
「ありがとう真理亜ちゃん」
―――
翌日、僕の気分は晴れやかだった。
学生の火曜日なんて、本来なら憂鬱以外の何者でもない。でも、たった一日、昨日のようなことがあったら僕にはそれだけで十分だった。
駅のホームは通勤の人でごった返していた。僕はいつものように先頭車両の列に並んだ。
前にも後ろにも大量の汗をシャツに滲ませている中年の男性がいた。僕は鼻を刺す臭いに気分を害した。
電車に乗り込むと、案の定その二人に挟まれる形になり昨日の気分が台無しになった。
僕は窮屈なため息を吐いて、たかだか五駅ほどなのだから我慢我慢と自分に言い聞かせた。
しかしそのとき、僕はあれ?と見覚えのある後ろ姿に気づいた。もしかして、桃子?……最悪だ。
万が一、それでさえ嫌な空間なのに、桃子に見つかったらまたぐちぐちと嫌味を言われかねない。
あまり視線を向けないように、斜め前にいる桃子を気にしないようにした。
……真っ直ぐで綺麗な姿勢。長い艶のある茶色い髪。スカートから見える足は、真理亜ちゃんとはまた違った色気がある。気にしないようにと意識すればするほど、美人な雰囲気に引き込まれてしまう。
それは周りの男達も同じなのか視線を集めていた。
でも、皆は知らない。その女は外見だけで、自分より弱い立場を攻撃することになんの感情も持たない酷い女だということを。どうせなら、今この瞬間に、桃子が辱しめられて僕の鬱憤が晴れれば最高なんだけどな、と僕は卑劣な考えを思い浮かべてしまった。
額から汗が垂れてきたので眼鏡を外すと、視界がぼやけて見えなくなった。そしてレンズを布で拭くと、あらためてかけ直した。
え?僕は心の中で声を漏らした。焦点が定まった先には、なんと桃子が後ろにいる男性にお尻を撫でられていたのだ。
桃子は恐怖に体を抑え込まれているのか、ピクりとも動かない。あの強気で、口うるさい桃子がまさか怖がっているのかと、僕は唖然としてしまった。
その中年の太っている男は、桃子の様子を伺うように、円を描きながら感触を確かめている。満員の車内は身動きができない。それを利用するかのように、男は大胆になっていった。スカートの裾を少しづつ捲り上げていくとピンクのパンツが露になった。
僕は、いつの間にかその行為に夢中になって息を飲んでいた。
桃子のパンツ。あの美人の下着が、あんなオヤジに。
頭の中が混乱して理解が追い付かない。さらに、それに呼応するように下半身が反応していることに気づいた。
紺のズボンの股下、右側が不自然に膨らんでいる。一本の棒がそこにあるかのように。
恥ずかしい気持ちはなかった。むしろ、可哀想という感情さえ。僕はなんて薄情な奴なんだと思ったけれど、過去の記憶が蘇ってくると、桃子の背中にざまあみろと言い放ちたくなった。
やがて男は右手でパンツを食い込ませ引っ張り上げ、左手で尻肉を鷲掴みにして揉みしだいた。
柔らかそうな肌。どんな肌触りなんだろう。好奇心が疼く。頭一つ小さな桃子に対して、男は顔を首筋に近付けると、匂いを嗅いでいるのだろうか、呼吸が荒くなっているようだった。
止まらない。綺麗な肌を、太く荒々しい手が犯している。男の手は上からするするとパンツの中に入っていき、そのまま股下を潜ると、桃子の秘部を責め始めた。
男の興奮が伝わってくる。僕の心臓は高鳴る。
桃子はうつむき、ときおり体を震わせた。
僕は、さすがにこれ以上はと……罪悪感が興奮していた昂りを鎮めた。
そしてそれを合図にするかのように車内に次の駅のアナウンスが流れ、男が手を引くと、ほっとしたのか桃子が服装を直した。
僕も大きく息を吐き出しドアに振り返ると、窓に反射して見える桃子の姿は僕の背中に向いていた。
ただ、その今にも泣き出しそうな表情は、胸を抉るような痛みを僕に与えた。
電車が止まりドアが開くと、人並みに押されながらホームに降りた。階段を上がるときに列を成したのだが、そのとき桃子が僕の前に割り込んだ来た。
しかし僕は、こんなに近くにいるのに気づかないなんて、先ほどのことが相当なショックを与えたのだろうと思った。
でも、情けないことに、本能というか、今、目の前には桃子のお尻がある。そしてスカートの中はピンクであり、お尻の輪郭まで僕は知ってる。嫌でも、そんな光景と香水の匂いが鎮まったはずの興奮を再び滾らせてしまった。
自分がわからない。心と体は揺れ動いていた。それでも、桃子の表情を思い出すと、つられて涙が溢れそうになる。
こんな奴に情けなんて、今までさんざん僕をパシりにして嫌がらせをしてきたのに、いい気味じゃないか……そんなふうに思えばいいのに。僕はなんて愚かな人間なんだと、虚しさが胸いっぱいに広がった。
少し距離を取りつつ改札を出ると、結局桃子は僕に気づくことなく先を急いだ。
学校に着き教室に入ると、そこにはいつもと変わらない桃子がいた。友達の輪の中心で笑顔を見せている。
僕は安堵からか胸を撫で下ろした。だけど、もちろん矛盾は感じているし、今日も嫌がらせをしてくるのかと思うと、気分は落ち込んだ。
それから授業が始まり午前中は何事もなく過ぎていき、問題の昼休み。
桃子は僕の机の前に立った。
「ねえ聡君っ!」
その言葉と態度は、予想と大きく違った。僕が背中に緊張の汗をかくと、桃子は続けて口を開いた。
「ちょっと来てくれない?」
僕は重い腰を上げて後に続いた。どこに連れていかれるのかとびくびくしていると、そこは屋上だった。
「何の用?」
思いきって問いかけた僕に、桃子は振り向くことなく背中で理由を語った。
「実は、今度追っかけてるアイドルのライブがあって、ちょっとお金が足りないんだよね。それで聡君に支援してもらえないかなって思って」
「え!?嫌だよ!」
「聡は優しいからそれくらい余裕でしょ?」
桃子は切実な顔を振り向かせ、手を合わせて拝み倒して来た。
「……いくらなの?」
「二万円!」
金額とか、そういう問題じゃないだろ?と自分に言い放った。心の中の天秤は、先ほどのことで異常をきたしているのか正常な判断ができなくなっていた。
「……ちゃんと返してくれるの?」
「当たり前でしょ!私が酷い女じゃないって聡だって知ってるでしょ?」
どの口が言っているのか。でも、それでも、桃子が可哀想に思えてしまう。あんな目にあったのだから、少しでも力になれたらと。
僕はつくづく……。
「わかったよ。でも、さすがに今は持ってないから、明日渡すよ」
「さっすが!」
渋々承諾した僕に対して、桃子の反応は真逆で憎たらしいほどに満面の笑みを浮かべていた。
「じゃあ明日よろしくね!」
そう言って去ろうとしたとき、夏の涼風が桃子のスカートをさらった。ふわりと舞い上がると、白い肌にピンクのパンツが視界に入った。
桃子は気づいていないのか、そのまま何も言わずに横を通り過ぎて行った。
なぜかその瞬間、桃子があの男に犯される姿が鮮明に映し出された。胸が張り裂けそうなほどの興奮が僕を襲う。
すぐにトイレに駆け込むと、僕は一心不乱にオナニーした。
桃子……桃子……。見たい。桃子の裸。胸、腰、太もも、アソコ。あの男は触ったんだ。僕の目の前で。いったいこの感情がなんなのか、僕にはまったくわからなかった。
腹が立つ。可哀想だよ。あいつは僕に、でも報いを受けたよ。だったらいいのかよ?それでまた繰り返したら?
「あ、あっ……」
飛び出た白い液体と共に、今まで感じたことのない快感が体を突き抜けていった。
胸に手を当てて、乱れる呼吸を整えた。
―――
放課後。僕は授業の復習をしていた。今日は色々なことがあり過ぎたのだ。それに、女子生徒が目に入るだけで想像してしまう。桃子だけじゃない。他にも可愛い子や綺麗な子はいる。そんな生徒の体を嫌でも気にしてしまって、本来やるべきことにまったく身が入らなくなっていたのだ。
だけどもし今、保健の授業をやったら楽しいんだろうなとも思い自然と笑みがこぼれる。
壁に取り付けられている時計を見ると、針は十七時を指していた。空は昨日と同じく夕陽が綺麗だった。真理亜ちゃんと一緒にいられたら……そんな甘酸っぱい思いを抱きながら教科書とノートを鞄にしまい席を立った。
廊下に出ると、二つ隣の教室から声が聞こえてきた。
僕以外にもいたんだと何気無しに通り過ぎようとしたとき、ドアのガラス越しに中の様子が見えた。
そこには桃子と、その友達の四人が窓際にいたのだが、それぞれの面持ちは強張り、いつもの明るい雰囲気ではなかった。
「最低だね」
そのうちの一人が低く意味深に言った。言葉には怒りが満ちている気がしたことから、僕はおそらく朝のことだろうと予想した。
「ねっ!マジで憂鬱だったし。でもさ、そのあと良いことあったんだ」
桃子が握り拳を作りながらも表情を緩ませた。
「何々?彼氏でもできた?」
桃子の言葉に、今度は違う子が興味津々に問いかけた。
「違うよ。ちょっと金欠だったから、私の聡にお願いしたの。そしたら二万、援助してくれたんだよね」
「あははっマジで!?聡ってただの馬鹿じゃん!」
四人の笑い声が教室に響いた。
「でもさ、それってくれたの?貸すとかじゃなくて?」
一人が桃子に疑問を投げかけた。そう、僕はあくまで貸すだけであってあげたわけじゃない。
「もちろん。さすがにそこまで馬鹿じゃないでしょ。ちゃんと返してって言ってたけど、でも私が返すわけないじゃん!あははっ!」
……うん、そうだよね。わかってたような気がする。
胸に途方もない切なさが溢れていく。
聡君は優しいから……。真理亜ちゃんの言葉が頭の中でこだまして、僕は自分のことがわからなくなった。
可哀想だと思った。善意であり、別に特別な理由があったわけじゃない。桃子の悲しそうな顔が嫌で見たくなくて、ただそれだけだった。
つくづく、やっぱり桃子は桃子だった。
「ねぇ、もしかしてさ、朝のとき聡もグルだったんじゃないの?その痴漢に便乗してさ、日頃の鬱憤を晴らしてたのかもよ。だからあっさりお金くれたんじゃん?」
桃子の正面にいた真帆の信じられない言葉に、僕は愕然とした。
「マジ!?それだったら超キモいんだけど!……でも、そうだよね。いくら聡だからって、あっさり二万なんてありえないよね。もしかして私、あいつにお尻触られたの?うわぁ最悪!」
桃子は肩を落として項垂れた。
「絶対そうだよ!むしろ触ったお礼じゃない?はははっ!桃子のお尻柔らかくてすべすべだもんね」
「そう考えたら、なんかめっちゃ腹立ってきた」
すぐに否定したい気持ちだったけれど、僕は怖くなっていた。
「てかさ、知ってる?聡と仲いい奴のこと」
その言葉に胸騒ぎが起きた。僕のことはどうだっていいけど、でも、それだけはやめてほしいと願った。
「あぁ知ってる。この組の子でしょ?たしか、何とか真理亜だっけ?やけに聡といい雰囲気だよね」
「まさか……んなわけないか」
「ないない。ありえないって!」
桃子達の笑い声は、教室はおろか廊下の先まで響いているだろうぐらい大きかった。
「でも、聡は私の財布だから勝手なことしないでほしいよね」
桃子達の一言一言が、僕の寿命を縮めるかのように不安にさせた。
「財布とかウケる!でも、その子クラスでも人気あるよ。他の男子にもよくコクられてるし」
コクられてる?その言葉に、急に胸が締め付けられ苦しくなった。
「へぇ。じゃあ優等生なの?」
「みたいだよ。あっ!いいこと思いついた。紙に聡に痴漢されましたって書いて、その子の机に入れとけば?」
「あーそれいいじゃん!超面白そう。それで結果聡に幻滅してくれたら最高なんだけどなぁ」
え……?背筋がゾッとした。
びりびりと桃子がノートの一片を千切ると、何か書き始めた。
数分後、四人はにやにやと顔を見合わせると、真理亜ちゃんの机に紙を入れて教室から出て行った。
僕は桃子達に見つからないように、そっと隠れて逃れた。
窓から夕陽が差し込む教室には、夏の風がカーテンを優しく揺らしていた。音すらなく、ただ風が僕の肌に触れるだけだった。
呆然と立ち尽くしていると、何かがお腹の奥底にあることに気づいた。熱くて、煮えたぎるような何か。
僕は教室に入ると、真理亜ちゃんの机に近付いて椅子を引いた。そして、ゆっくり腰を下ろすと、中からノートの切れ端を取り出した。
「今朝、私は電車で三組の新山聡に痴漢されました。あなたの親しくしている人は、最低の男です」
その瞬間考えるより先に感情が爆発していた。その紙を無残に破き、三階である教室の窓から投げ捨てた。
桃子達が話していた周辺の机を手当たり次第に蹴ると、教室に打撃音が響き渡った。僕は怒りを撒き散らした。
どれくらいの時間が経ったかはわからない。怒りと興奮が鎮まってくると、机や椅子、机の中に入っていた教科書やノートが散乱していた。
従っていれば何もない。それは、昨日までのことだった。間違っていたのだ。
可哀想……本当に僕は可哀想だ。
―――
翌日。
昨日はまったく眠れなかった。結局家に帰ったあとも行き場のない怒りが体の中で暴れていたからだ。
僕は学校を休むことにした。それもそのはず、おそらく見るも無惨になった教室で犯人捜しが始まる。そしてすぐに見つかる。
桃子達は、たとえ犯人が僕でなくても僕だと言うだろう。弱くて目立たない僕みたいな人間は常に悪者にされる。濡れ衣を着せられるのだ。
ただ、たしかに犯人は僕だ。でも、本質はそこじゃない。重要なのは、なぜ僕がそんなことをしたのかだ。
原因はあいつ。そう、今目の前にいる桃子なのだ。僕がおかしくなったのは全部こいつのせいなんだよ。
ホームは暑苦しく人で溢れていた。しかし、それが今の僕にとっては好都合だった。もう関係ないんだ。優しくするのは終わり。優しくするから、こいつみたいにつけあがる奴が現れる。
僕は、朝から桃子の最寄り駅にいた。制服ではなく私服で、桃子の後ろに並んでいた。
今の僕には、こうするしか怒りを鎮めることはできないと思った。だったら、あの紙の通り、お前達の言った通りにしてやると誓った。
電車がホームに到着すると、僕は桃子の後ろに密着して乗り込んだ。そして、人混みの中で息を潜め、ゆっくり電車が動き出すのを今か今かと耐えた。
やがて、振動がスニーカーの靴底から体に伝わってくるのを感じると、僕は制服姿の桃子のお尻を鷲掴みにした。
桃子は驚愕の表情を窓に映した。それもそうだ。昨日の今日で今だ。驚くのは当然だろう。でも、もう僕にはお前に哀れみの気持ちを抱くことはない。
そのとき、意外だったことがわかった。桃子は僕より、背が高かったんだなって。
いい匂いがする。本当におかしい。嫌いだった昨日まではこの匂いが鼻を汚しているようで不快だったのに、今はお花畑にいるかのような優雅な気分になれる。
それに、たしかに柔らかくてすべすべなお尻だよ。
スカートを捲り、指を這わせて、尻肉に食い込ませると、なんて綺麗できめ細かい肌なんだと感動した。
今日のパンツは白なんだね。もっと黒とか赤とかなのかと思ったけど、昨日はピンクだったし、これも意外に、実は乙女なんだね。
匂いを嗅ぎながらお尻を揉んでいると、桃子の体が徐々に強張っていくのがわかった。
それでも、僕は手を緩めない。パンツを太ももの真ん中まで下ろすと、両手を前に持っていき、黒く茂った恥丘を漁った。
笑みが浮かぶ。こんな簡単にムカつく奴の恥ずかしい所を触り、そして晒すことができるんだ。怖がる必要なんてなかった。初めからこうしておけばよかった。
それから、右手を割れ目の中にゆっくり入れていき、左手はシャツの上から胸を包んだ。
すると、桃子は恐る恐る僕の左手を掴み退けようとした。しかし、その行動は悪手。
お前は今まで僕に何をしてきた?毎日のようにしてきた仕打ちは、本当に辛かったんだ。気にしないふりをしていた。何度も自分に嘘をついた。でも、もう限界だよ。それに、お前は真理亜ちゃんを巻き込もうとした。僕を優しいと言ってくれた人を。だから、お前にこの行為を止める権利はない。
僕は桃子の手を払うと、自分の方へ体を抱き寄せた。
顔がバレないように、細心の注意を払いながらも行動はエスカレートさせていった。
やがて、マンコを責めていた指にねちゃっとした水分が付着していることに気づいた僕は、桃子の耳に囁いた。
「変態女」
その低い声に、また桃子は体を震わせた。
次第に高まっていく興奮と疼きは歪んだ欲求に変わっていった。もっとしたい、めちゃくちゃにしてやりたい。触れば触るほど、僕は桃子を辱しめて犯したい衝動に駆られていく。
そのときだった。隣に見覚えのある男がこちらをじっと見つめていたのだ。
一瞬驚き、手を引っ込めようとしたが、よく見ると、昨日の、なんと桃子を痴漢していた中年の男だった。
悪魔の囁きが、耳元で繰り返し聞こえた。
僕は左手をそのままに、おもむろに携帯を取り出すと、中年男に見えるように文字を打った。
「この女は、僕をいじめている最低の奴なんです。昨日、こいつにあなたが痴漢をしているところを見ていました。僕の願いを聞いてください。この女を、犯してください!!」
男はかなり動揺していたが、僕は携帯をしまうと、不敵な笑みを浮かべて、あらためて胸を揉んだ。
どうですか?あなたは知らないでしょ?桃子の胸がどれだけ大きくて、どんな感触か。
まるで挑戦するかのように、そして挑発するかのように見せつけた。
その様子に、男はにやりと薄気味悪く微笑んだ。
「もう……お願いです……やめてください」
そのとき、桃子の悲痛な声が漏れた。その声は、今にも泣きそうなほど掠れていた。
だけど、そんなこと知ったことじゃない。
「許さない」
負の感情を込めた言葉に、桃子は硬直した。
すると、男が携帯を使って下から見上げるように桃子を撮影したのだ。
一瞬何をしたのかわからなかったが、しかし、男は僕に携帯の画面を見せつけてきた。
桃子の割れ目、そして陰毛と絶望に満ちた顔が写っていた。
僕は理解した。そして心の奥底で高笑いをした。
電車内に、次の駅のアナウンスが流れた。そこは学校の二つ手前の駅だった。
男と目を合わせ合図を交わすと、桃子の腕を掴んだ。その意味を桃子はどう感じているのだろうか。
僕はすぐに桃子の服装を直してあげた。それが、かすかに残っていた僕の、最後の情けなのかもしれない。
駅に着き、ドアが開くと、男と桃子は電車を降りた。その際、僕は顔を見られないように、キャップを深々く被っていた。
僕は二人の後を追った。
二人の後ろ姿は、親子とも知り合いとも思えないほど不釣り合いだった。おそらく、通り過ぎていく人達は、察しているだろう。そういう関係なんだと。
しばらくして、二人は古い雑居ビルに入って行った。
ほとんどテナントが入っていない幽霊ビルで、男はある階の一室の前に立つと、もぞもぞとポケットから鍵を取り出した。男はその部屋の持ち主なのだろうか。
ドアが開くと同時に、男は桃子を無理やり中に入れた。桃子の声が聞こえる。
「なんなんだよお前!いい加減にしろよ!」
桃子の怒声が響く。
しかし、男の返事は冷徹で無慈悲だった。
「やめないよ。さっき携帯で君の恥ずかしい姿を撮った。それが何を意味しているのか、わかるよね?」
ドアのガラス越しに見る桃子は、もう観念しているようだった。
「それにね。君を犯してくれって言う人がいるんだよ。君にいじめられているから、その仕返しがしたいってね」
「は?何言ってんの?意味わかんないんだけど」
「ほら!入って来なよ」
僕はゆっくりドアを開けた。そして、桃子は僕を見るなり、唖然とした。
「聡!?なんで?」
「全部お前のせいなんだよ」
「え?」
「お前が……」
感情が抑えきれない。過去の記憶が洪水のように流れてくる。拳を握りしめると、爪が肌に食い込む。
「もし、お前が僕だけをいじめるなら、それはそれでよかった。こんなことにはならなかったさ。でも、お前は絶対にしてはいけないことをした。わかるか?」
僕の言葉がまるで理解できないというような表情を浮かべた。むしろ、こんな状況だから真っ当な考えなんてできないのかもしれないけど。
「真理亜ちゃんを巻き込もうとしただろ!僕だけじゃなくて、なんの関係もない人を!ふざけんなよ!」
「あっ、あれは、ただの冗談で……ていうか、見てたの?」
「ああ。たまたま、昨日教室に残ってたらお前達を見つけた」
「……ごめん……なさい」
「は?」
「だから、ごめんなさいって」
その謝罪の言葉に、僕は毛という毛が逆立つほどの怒りが込み上げてきた。
「ごめんなさいってなんだよ!ふざけんなよ!お前が今まで僕に何をしてきたのかわかってんのかよ!さんざん汚い言葉を浴びせて、パシりにして、ずっと悩んできたんだ。それを今さらごめんなさいで済むと思ってんのかよ!」
その瞬間、頬をつたう涙に気づいた。悔しい。こんなことなら、もっと早くそうしてほしかった。気づいてほしかった。もう取り戻せない時間があることに、僕は猛烈に悔やんだ。
「おい。そろそろいいか?」
隣の立っていた男が、鼻息を荒らげながら言った。
「待って。やめて」
桃子の言葉は、虚しかった。
これから始まるのは、仕返しじゃない。ましてや復讐でも。ただ、痛みをわかってもらいたいだけだ。
「桃子。これは痛み分けだから、仕方ないんだ」
「え?」
「お願いします」
すると男は、何もない部屋の隅に立て掛けてあったマットレスを持ってきて、ばたんと倒すと、桃子を強引に寝かせた。
桃子はじたばたと抵抗したが、非力なために難なく抑え込まれてしまった。
「嫌っ!聡!お願いだから助けてよ!」
桃子の潤んだ瞳に、僕は何も感じなかった。それに、それならなんで、僕をいじめたの?と問いかけてみたかった。
僕はズボンのファスナーを下ろすと、チンポを取り出した。
「いっぱい桃子でオナニーするからね。あと、安心していいよ。終わるまで僕はずっとここにいるから」
僕は微笑んだ。
それを見て、男も笑うと、桃子の谷間に顔を埋めた。そして、乱暴に胸を揉みしだいた。
おそらくDカップぐらいだろう。男の汚い手の中で弄ばれる姿にたまらなく興奮した。
オナニーをする手が止まらない。
「早く見せてください!」
いつも想像していた。桃子の裸。その服の下にある裸体がどんなものなのか。興奮して眠れない日もあった。だけど、やっと、願いが叶うのだと思ったら考えるより先に言葉が漏れていた。
男はやれやれといった息を吐くと、桃子のシャツのボタンを一つずつ外していった。
その間も、相変わらず桃子はやめてと悲願したが、僕も男もまるで気にしていない。自業自得。僕にはすでに、気持ちの整理はついているのだ。
最後のボタンを外し終えると、僕は息を飲んだ。
男は見せつけるようにゆっくりシャツを左右に払った。
白いブラが露になる。
綺麗な肌だった。この体がもうすぐ汚れるのかと思ったらぞくぞくしてきた。
男は桃子の背中に腕を回すとブラが緩み、そしてブラがずらされた。
そこには、可愛いらしい小さなサーモンピンクの乳首があった。ほどよく大きな乳房。美人の桃子にふさわしいおっぱいだった。
僕はいてもたっても居られず、桃子に近づくと生の初めてのおっぱいをまじまじと見つめた。
桃子は恥ずかしいのか顔を真っ赤に染め上げた。
男は僕の目の前で、大きく、ゆっくり揉んだ。指が食い込む。さらに、寄せては上げて、寄せては上げてを繰り返した。
本や動画とは違う。リアルなセックス。眼前に行われている中年の男と女子高生のセックスは、とても現実とは思えないほど生々しいものだった。
目が離せない。僕は地面を這うように四つん這いの体勢で眺めた。
やがて、桃子の口から吐息が漏れる。
乳首がつんと勃起してきた。
男は、そんな乳首を口に含むと舌で転がした。
チュパ……チューっパ。卑猥な音が部屋に響く。
ふと桃子の唇が、艶かしく光っていることに気づいた。ふっくらとしていて、とても美味しそうだった。
僕はそっと顔を近づけて唇を重ねた。桃子はすぐに口を閉じて抵抗するが、それでも僕は優しく唇を舐めた。右から上に、左に下に。なぞるように舐めた。
桃子の顔が苦痛に歪む。それもそうだ。パシりに使っていた男に唇を奪われたんだ。
「ねえ桃子。どんな気分?」
屈辱だろう。
すると、胸を責めていた男が、桃子の足を大きく広げた。
桃子は驚き、目を見開いた。
しかし、その瞬間、僕はまた唇を重ねた。舌を桃子の口の中に入れて掻き回した。
桃子の唾液が舌に乗って運ばれてくると、僕はそれを味わった。
「美味しいよ桃子」
もう、その頃には抵抗することもなかった。
男の方を見ると、すでにパンツは脱がされ、上着のポケットに入っていた。
顔は桃子の股に埋まっていて、ジュルジュルという音を出しながら愛液を吸い出していた。
僕も勃起している乳首にしゃぶりついた。
二人で同時に桃子を責めた。
次第に、桃子の口から声が漏れ出した。
「あっ……あん」
たまらない。あの桃子を感じさせているということが、快感と達成感となって頭を突き抜けていく。
男も、色っぽい喘ぎ声に触発されたのか、指による愛撫が荒く乱暴になっていった。
「あぁあ……あっ」
喘ぎ声が一段と大きくなってくると、男はベルトを外してズボンとパンツを下ろした。
そこにあったチンポは、僕とは到底比較にならないほど大きくて太かった。
これが桃子の中に?そう思ったとき鳥肌が立った。
この綺麗な体に、あの汚い黒いチンポが入るなんて。
「いやっ!!」
悲鳴にも似た叫びとともに、桃子は平手で僕を殴った。
頬に乾いた痛みを感じると、それでも僕は冷たく言い放った。
「諦めろよ」
そう言って重なった桃子の瞳は、絶望の色で染まっていた。
「安心しろ。中には出さないでやるから」
突然口を開いたかと思ったら、気休めにもならない一言を、男は挨拶でもしたかのような軽さで言った。
男は先端が濡れに濡れたチンポを、桃子の割れ目に当てがった。そして、僕を見て、にやりと笑った。
そして僕は……頷いた。
「ああぁ!」
桃子は一気に貫かれた衝撃で、咆哮のような声を出すと、腰が浮かび上がった。
それでも男は躊躇することなく、前後に腰を激しく動かし、桃子を犯した。
「あぁぁ!」
その光景に、僕は腰が引けてしまい、先ほどまでの行為とは全く違うその激しさに、ただただ言葉を失った。
「あん!……あん!……いやぁ」
男と連動する喘ぎ声と、突かれるたびに上下する胸。目が釘付けになり、まるで金縛りにあったかのように体が動かなくなってしまった。
パンパンパンと二人が繋がっている音がいやらしく、まるでこだましているように響き渡ると、どこか遠くの方から吹いてきた風が心地よく肌に触れた。
やがて桃子の喘ぎ声も、男の汗の匂いも、全てが子守唄のように感じて、僕は自然と瞼を閉じていた。
視界を閉じると、なおのこと、五感が刺激されて、お腹の奥底から疼きが沸き上がってきて、自然とオナニーが進む。
「凄いよ桃子ちゃん!桃子ちゃんのおマンコ、きっつきつで、それに絡み付いてきて、オジサン大好きだよ」
「あん!……あん!……あん!」
どれくらいの時間が経ったのか。
目を開けてみると、そこには四つん這いで突かれている桃子がいた。
僕は桃子の正面に回ると、その表情を眺めた。
もうすでに、快感が体を巡っているのか、恍惚な表情で、喘ぎ声もいっそう色っぽくなっていた。
「可愛いね」
なんでそう言ったのかは、自分でもわからなかった。
「出るぞ!」
突然の言葉に、桃子ははっとした。
「やめて!中はやめて!」
必死に叫ぶ桃子に対して、僕と男は顔を見合わせて、再び、僕は笑いながらゆっくり頷いた。悪魔のように。
男は無言で腰を加速させた。
「いやぁ!」
もう、桃子の声は、どこにも、誰にも、届かない。
「ああ!」
男の雄叫びと同時に、乾いた音も止んだ。
桃子は力が抜けてしまったのか、四つん這いの体勢から前のめりに倒れた。
男は体を震わせ、それでもなお、執拗に精子を注ぎ込んだ。チンポを抜いたあとも指を何度もマンコに入れて、精子を奥へ奥へと深く送り込んだ。
しばらくすると気が済んだのか、一息吐くと男はすっと立ち上がり衣服を身につけた。
終わった。そう思ったとき、男は倒れている桃子の耳元に顔を近付けてボソッと言った。
「わかってるよね?明日も同じ電車に乗るんだよ」
男はそう言って部屋を出て行った。
僕は桃子の体を仰向けにすると、オナニーをした。
そして、汚された綺麗な体に射精した。
すっきりすると、僕は服を着て桃子の頭を撫でてあげた。
「あっそうそう」
僕はポケットから財布を取り出すと、僕の精子がべっとりと付いているお腹に、二万円を置いた。
「はい、約束のお金ね。でもそのお金返さなくていいよ。あげる。お前達が言ってたように、お礼、だから」
外に出ると、日差しが気持ちよかった。僕は帽子を脱ぐと、大きく深呼吸してから家路についた。
―――
あれから数日が経った。
桃子はあの男の言葉通り、連日電車で弄ばれていて、時々ビルに連れて行かれてセックスをさせられている。
後に聞いた話しで、桃子を犯したビルの一室は、やはり男の所有している物件だった。
男は、電車で気に入った女性がいると、そこで痴漢をしてそのままビルに連れ込む。さらに調教もしているらしい。
だから、桃子もおそらく……。
最近は、学校で顔を会わせることはほとんどなくなった。
もちろん僕は避けていない。桃子が故意に避けているのだ。稀に真帆や桃子の友達が僕をからかうけれど、気にしていない。それもそのはずで、もう解決方法がわかっているから。もし、その行為が目に余るようなら、桃子と同じく、犯してしまえばいい。
僕は教室の片隅でほくそ笑んだ。
そんなある日の月曜日。
放課後に毎週日課である、図書室に本を探しに行ったときのことだった。
「聡君」
本棚と本棚の間にいる僕に、横から声をかけてきたのは真理亜ちゃんだった。
相変わらず天使のような笑顔だ。
「あぁ真理亜ちゃん。真理亜ちゃんも何か借りに?」
「うん。前回は返しただけだったけど、今回は聡君のおすすめの本でも借りようかなって」
そう言って、少し恥ずかしいのか、頬を赤くした。
「はは。赤くなってるよ?」
「え?やめてよ恥ずかしいから」
「いいじゃん。本当なんだから」
僕達は笑い合った。
僕は真理亜ちゃんに本を紹介したあと、二人で貸出しの手続きを済ませ、図書室を出た。
ただ思いがけない異変が体に起こっていた。僕はなぜかそそられていたのだ。真理亜ちゃんの太もも、胸、そして、そのスカートの中に。
違う。真理亜ちゃんは桃子とは違う。いくら否定しても、隣を歩く姿に欲情していた。さらには、下半身まで反応していたのだ。
それは、ちょうど下駄箱で靴を履き替えているときだった。
僕が先に履き終えて、真理亜ちゃんの方に近づいたとき、バランスを崩した真理亜ちゃんが尻餅をつく形になった。
僕は凝視してしまった。そのスカートの中を。
真理亜ちゃんは急いで足を閉じて立ち上がった。
「ははっ。ごめんね。変なもの見せちゃって」
顔を真っ赤にさせて焦る姿はとても可愛いかった……でも、僕は怒りが込み上げていた。
赤?……赤のパンツ?何で真理亜ちゃんのような天使が、白じゃなくて赤なの?そんな色は桃子のような変態で、淫乱なビッチみたいな女が着るものでしょ?
「あっううん。とんでもない」
僕がそう言うと、なぜか真理亜ちゃんの視線は僕の下半身を見て驚いていた。
「ん?どうしたの?」
問いかけたあと、僕はゆっくり自分の下半身に視線を落とした。なんと勃起していた。不自然にズボンの一部分が棒状に盛り上がっていたのだ。
しかし、僕は隠すことなく、真理亜ちゃんに言った。
「ふふ。僕も真理亜ちゃんの赤いパンツ見ちゃったからお互い様だね」
真理亜ちゃんは、何を言ってるの?という表情で顔を歪めた。
可愛いかった。理解できないその表情が。
でも、やっぱり真理亜ちゃんには白が似合うと思う。
「真理亜ちゃんて、彼氏とかいるの?」
前から気になっていたことだった。
「え?あ、……うん。いるよ」
そう言って真理亜ちゃんはうつむいた。
「そっか。だと思ってた。真理亜ちゃんは可愛いし、優しいから絶対いると思ってたよ」
細胞の一つ一つから憎悪が溢れ、滲み出てくるようだった。
それに、彼氏がいるってことは、もうこの子は初めてではない。天使ではないんだ。
もしかして……。
「じゃあ、土日はデート?」
僕は笑顔であくまで軽い口調で言った。
「うん。買い物とか、映画館に行って楽しかったよ」
そんなどうでもいい内容を聞きたかったんじゃないよ。そのあとは?セックスはしたの?僕以外の男と?
「そっか。真理亜ちゃんとデートできるなんて、羨ましいなぁ」
「……なんか、聡君。変わったね。明るくなったっていうか、そんなこと言うタイプじゃなかったのに」
「そう?自分じゃあわからないよ。でも、本当にそう思ったから」
言い終えると、もう笑顔はなかった。結局は、この子も桃子と同じで、人の気持ちなんてわからない。こんなにも、僕は君を好きだったのに、どれほど君と話す時間や隣を歩く瞬間が愛おしかったか知ろうともしていない。
あまつさえ僕が辛かったときに彼氏を作っていたなんて。
「じゃあそろそろ行こうか」
学校を出ると、駅までの道で、僕は悪魔に身を委ねていた。彼氏がいるなら僕の物になることはない。だったら体だけでも、いいよね?
「ねえ真理亜ちゃん。明日の朝同じ電車に乗らない?」
「え?う、うんいいけど」
その不自然な言葉に、真理亜ちゃんは不信感を抱いているようだった。でも、それでも断らない真理亜ちゃんは、本当に、優しいよ。
「ありがとう。じゃあ時間は……」
―――
翌朝。僕は桃子のときと同じように、真理亜ちゃんの駅に向かった。
ホームで真理亜ちゃんを見つけると、何気ない、いつもの僕で話しかけた。今日は天気がいいねって。
話しがしたいだけで、わざわざ逆方向の駅に来るのだから、明らかにおかしい。真理亜ちゃんの表情は、そう言っていた。
でもね、もう遅いよ。君は桃子と同じなんだ。そして、僕は君とセックスがしたい。僕の初めては君がいい。
電車に乗り込むと、僕と真理亜ちゃんは向かい合う形で密着した。
混雑していて身動くがほとんど取れない。
そして、真理亜ちゃんの背後にはあの中年の男が立っていた。前日に連絡をしておいたのだ。
電車が動き出すと、さっそく男に動きが現れた。それにより真理亜ちゃんが何かに驚きうつむいた。
「どうしたの?」
僕は真理亜ちゃんの言う優しい笑顔で問いかけた。
「あっ、ううん何でもないよ。なんか熱いなって」
真理亜ちゃん、ごめんね。今お尻を触られてるんでしょ?それはね、僕がお願いしたことなんだよ。
一線を越えた痛みは、まったく新しい欲望に変化していた。
「どうしたの?」
顔を高揚させ恥ずかしがっている姿を嘲笑うかのように、もう一度問いかけた。
今度は無言だった。しかし、確かに、真理亜ちゃんの瞳は訴えかけていた。助けて、と。
可憐だと思った。
支配しているとも思った。
「可哀想だね。大丈夫、今助けてあげるからね」
そう言って、僕は真理亜ちゃんを抱き締めた。
「えっ?」
声が漏れた。
僕は首筋に顔を埋めた。
凄くいい匂いだった。まるで、母親の揺りかごの中にいるような安心感と幸福感に包まれた。
「残念だよ」
体を離すと、僕は落ち着いた様子で言った。
「聡……君?」
真理亜ちゃんの声は、電車の音にかき消された。
僕はゆっくり、真理亜ちゃんの太ももに手を這わせた。下からすーっと上にずらしていき、やがてスカートの中に入っていった。
温かい。真理亜ちゃんの体温が指から伝わってくる。
すでに、その頬には、涙がつたっていた。頭の中が真っ白なのだろう。優しいと思っていた聡君が、まさかこんなことをするなんてとショックを受けているのだろう。
でも、違うよ。君が知ってる聡君は、今目の前にいるよ。僕こそが本当の聡君なんだよ。
スカートを捲った。そこには、レースの白いパンツがあった。真ん中には小さなリボンが着いていて、とても、可愛いらしかった。
さらにそこから、躊躇うことなく、お腹の方からパンツの中に手を入れていった。
「やめて……聡君」
やめないよ。心の中で呟いた。
指が薄い陰毛を掻き分けて進んでいくと、先端が真理亜ちゃんのマンコに到達した。
中指の腹で、くりくりと刺激する。すると、真理亜ちゃんは僕の腕を両手で掴んだ。
しかし、何か忘れていない?悪戯しているのは、僕だけじゃないよ?
そのとき、真理亜ちゃんの両脇から、男の手が伸びてきて、シャツのボタンを上から外していった。
すぐに片方の手で、男の手を止めようとするが、今度は僕の手で、真理亜ちゃんの手を掴んだ。
「駄目だよ。僕は真理亜ちゃんの体を見たいんだから」
その言葉に恐怖を感じて察したのか、真理亜ちゃんは観念したように両腕を下ろした。
そう、それでいいんだ。ここに救いはないんだから。
シャツのボタンは全て外され、僕の前に、その体が開かれた。
透き通るような肌、桃子ほどではないけど、ふくよかな胸。その姿に、生唾を飲んだ。
男は、白いブラを上にずらし、大きな手で包み込むように揉んだ。
そして、ここからが本番。
僕はズボンのファスナーをじりじりと下ろし、チンポを取り出した。
真理亜ちゃんは僕のチンポを見て、彼女の瞳にもまた、絶望の色が宿っているのがわかった。
おそらく、僕は心底、誰かを支配したい性癖なのだろう。結局のところ、僕も同じだったのだ。
男は、僕がチンポを出すのを見て、真理亜ちゃんのパンツをずり下げた。
僕は、少し腰を沈め、マンコにチンポを近付けた。そこから、真理亜ちゃんの顔を見ることなく、一気に突き上げた。
「うっ」
真理亜ちゃんの声は、苦しみに彩られていた。
初めてのマンコは、とても言葉で言い表すことができないほど、気持ちよかった。
きつくて温かい。チンポに絡み付く真理亜ちゃんの愛液は、こんなにもいやらしい。
「あぁ、気持ちいいよ真理亜ちゃん」
僕が上下に突き上げていると、後ろにいた男が、我慢できなくなったのか、真理亜ちゃんの顔を振り向かせ、唇を奪った。
強引に開かせれた口は、抵抗することなく、男の舌を受け入れた。
桃子でさえそんな卑猥なキスはしなかったのに、僕は勘違いしていたようだ。真理亜ちゃんは、僕が思っていた以上に淫乱でエロくて、男を経験していたのだ。
僕は呆れ気味に二人の濃厚なキスを見ながら、腰の動きを早めた。
腰を掴んでいた腕でお尻を鷲掴みにしながら、一心不乱に突いた。
真理亜ちゃんは、男にキスをされ胸を揉まれながら、僕に突かれていた。
やがて、絶頂が近付いてくると、僕はさらにピッチを上げた。
無抵抗な姿に、僕はいいの?出しちゃうよ?と心中で嘲笑った。
しかし、男とのキスに夢中になっているのか、まったくこちらを見向きもしなかった。
僕は腹が立ったが、じゃあいいよね、とボソッと漏らすと、真理亜ちゃんのマンコに精子を注ぎ込んだ。その時間はかなり長いものだった。
僕は乱れた呼吸を整えるように、大きな深呼吸をして、ゆっくりチンポを抜いて、そして服装を直した。
そのとき、アナウンスが流れた。
次の駅は、男のビルがある駅だった。
男は、名残惜しそうに顔を離すと、真理亜ちゃんに耳打した。
「ここで一緒に降りて、オジサンと続きしようね」
真理亜ちゃんは何も言わなかった。
そして男は、真理亜ちゃんの服装を整えると、まるで恋人のように肩を抱き寄せた。
これから、本当のセックスが始まる。男による調教が行われる。
目の前にいる、僕が好きだった子、彼氏の大事な大事な彼女が、他人の中年男に汚され、調教される。
僕は、真理亜ちゃんの肩をぽんぽんと叩いた。
涙が溢れている瞳がこちらを向いたとき。
「ありがとう真理亜ちゃん。ばいばい」
電車のドアが開くと同時に、僕は笑顔で手を振った。
―――
―――
―――
《あとがき》
最後まで読んで頂きありがとうございました。
今まで書いてきた物とは、少し雰囲気が違ったかもしれませんが、少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
ゆっくりですが、機会があれば別のお話しも書いてみたいと思いますので、投稿した際には是非よろしくお願いします。
重ねて、最後まで読んで頂きありがとうございました。