俺は自分が他人より劣っていると感じる事があまりない。勉強にスポーツ、人間関係や家庭環境などどれを取っても恐らく平均以上だと思う。だから悩みもほとんどなくストレスフリーで日々の生活を送っている。
けれど1つだけ。悩みではないが出来れば直したい事がある。それは昔からの虚言癖だ。虚言癖という言葉を知ったのは高校の頃で、意味を知った時「あ、自分の事だ…」と思った。
出来れば治したいと思うのも、虚言癖である事で何か損をした事も無ければ痛い思いをした事も無いからだ。だが、虚言癖は一種の病として扱われる。だから俺は他人に自分が虚言癖であるもカミングアウトした事がないし、治らなければこれからも隠し通すつもりだ。
人は誰しも嘘をつく。嘘をついた事が無い人間はまずいない。なぜ嘘をつくかというと何かしらの理由があるからだ。
だけど俺の場合はひと味違って、何の理由も意味も無しに呼吸をするかの如く嘘をつき続けてきた。過去の記憶を遡っても嘘で覆い尽くされていた。思い返せば初めて彼女が出来た中学の時も嘘で自分を膨張させ彼女の気を惹いた。
当時俺の中学は近所でも有名なガラの悪い学校だった。それに俺は体格が良かったから入学後すぐ3年の先輩に目を付けられた。
「おい、てめぇ1年だろ?名前なんつーの?多少でかいからって調子乗んなよ」
「じ、陣内(じんない)っす。調子乗ってないっすよ」
「お前敬語もろくに使えねーのかよ!」
そして案の定俺は呼び出されたプール裏で3年数人に理不尽なヤキを入れられた。小学校を卒業して1ヶ月の俺はとてもじゃないが抵抗する勇気も無く、ものの見事にやられた。
3年は抵抗できない俺を丁度いいサンドバッグとし、実際の喧嘩ではまず使えない様な大技ばかりを繰り広げた。するとその光景を煙草を咥えながら黙って見ていた他の奴らよりふたまわりほどデカイ迫田(さこた)が言った。
「俺に代われ」
すると俺をたこ殴りにしていた奴らの手が止まった。ボロボロになりながらもそのやり取りを見てた俺は直感で感じた。
(この人が頭か…殺される)
俺を殴っていた3年は迫田に俺を引き渡すと、そこから迫田の怒涛のラッシュが降り注いだ。俺はすでに立っていられなくなりその場に倒れこんだ。迫田も肩で息をするほどバテていた。でも実際に迫田の攻撃を受けて俺は思った。
(この人の攻撃…意外と大した事無かった。他の奴の方が痛かったし、重かった。あ、そうか。この人は俺と同じで体がでけーからそれで頭になっているだけなのか?)
俺へのヤキ入れが終わり3年が立ち去った後、ボロボロの体で俺が教室に戻ると、友人達が掛けよって来た。
「おい陣内!大丈夫か?」
「いってー……」
「何があったの?」
「3年に呼び出されたんだ。で、ちょっとそこでやり合って…」
「やり合ったって…もしかして迫田くん達のグループ?」
「ああ、迫田ってあのでけーやつだろ?俺もキレちまってよ。先にボディー入れたら全員にリンチよ」
「まじかよ!お前すげーな、とてもじゃないけど俺はそんな根性ねぇよ。けどまぁ一対複数だと仕方ないよ。それに相手は3年なんだし」
それからすぐに1年の間でその話は広まって「陣内はすごい奴」という事になった。
もしここで迫田を半殺しにしてやったみたいな話をしていたら、ピンピンしてる迫田を見てすぐにバレただろうが、ボディーに1発としか言っていないから見た目では分からない事だし、誰もわざわざ3年に事実関係を求めなかった。
ただ理不尽な理由でヤキを入れられてボロボロになっただけなのに、1つの嘘で翌日からヒーローみたいに扱われた。この快感こそが俺の中に芽を出し始めた虚言癖を加速させた。そこからというもの俺はあることないこと吹かしまくった。ただ1つ自分を褒めるならば俺の嘘はバレにくい嘘だった。
だから誰も俺の話を疑わなかったし、教師や親も含め全員が信じた。
そして順調に緻密に計算された嘘を重ねて、自分達が3年になる頃には俺はついに一度も喧嘩をした事のない中学の番になってしまった。ここまで来ると何一つ不自由はない。この年頃の女の子から目立つ男はモテるし彼女も数人出来た。もちろん童貞も捨てた。
経験人数も1人だけだったが、回りには8人と嘘をついた。
受験シーズンで友達が塾へ通っている時も俺は塾へは行かず、代わりに家庭教師をつけられた。親に聞くとその方が何かと安心だという理由らしい。
だけど学校では家庭教師をつけているという話はせず、俺は何も勉強していない遊び呆けているろくでなしを演じた。
勉強している人間の邪魔はしなかったから避けられたりはしなかったが、テストの点数で僻まれる事が多々あった。
そりゃそうだろう、日々塾に通っている連中にしたら俺はただ何も考えず塾にも行かないでフラフラしているだけのろくでなしだ。しかしいざテストとなるとみんなの点数と俺の点数は遜色無かった。むしろ教科によっては俺の方が点数が高かった。
悔しくても結果が出ている以上周りは認めざるを得なかった。中には「実は隠れて勉強してんじゃねぇの?」という奴もいたが、仮に放課後に張り込みをされてもオートロックのマンションに住んでいる俺の家に訪れる家庭教師を見つける事は不可能だった。
そして俺はそこそこ学力の高い志望校へ無事合格する事ができた。周りの友達よりワンランク上の高校だったから俺の過去を知っている人間はここにはいない。それをいいことに、ここでも俺は過去の武勇伝を吹かしまくった。
そんな調子で俺はたちまち自分が所属する友人グループの中で人気者となり、次はクラス、学年の人気者へと成り上がった。そして中学の時と同様に無事3年間カースト上位の地位を守り抜いた。この頃になるともう何が真実で何が偽りの話なのか自分でも分からなくなりつつあった。
丁度これぐらいの時期に何かの拍子で虚言癖という言葉を知った。
そして時は流れ人生2度目の受験を経験して、俺は再び志望校へ合格する事ができた。大学も高校と同様にそこそこ名の通った大学で、学歴マウントを取る事ができるランクの大学に通う事ができた。
大学は県外だったので、また一からの友達作りが必要だった。さすがに大学は規模が大きいから探せば知り合いが1人はいたはずなんだが、そこまでするのが面倒だったのでまたお得意の虚言癖を駆使して少しずつ人間関係を構築した。
もう名前は忘れたが学籍番号が近かった奴にボランティアサークルに誘われ、俺はそこにはパリピばかりが所属していると知っていたので「何か楽しそうだな」とノリでサークルに入る事にした。
入ってから知ったのだが、そこはボランティアサークルとは名ばかりのイベサーだった。
「ま、いいか。面倒だったら適当に理由つけてやめればいいだけだし」
そんなこんなで数日が経ったある日。サークルで集まりがあると連絡が来た。要するに新入生歓迎会と称した飲み会だ。面倒だなと感じたが、これで参加しなければわざわざサークルに入った意味がない。俺は参加するとメッセージを返信した。
特段楽しみにもしていなかった飲み会だったからか、ダラダラ生活をしていたら体感的にすぐ飲み会の日が訪れた。
約束の時間に店に行くと、店の前に学校で見た事あ
る顔が2人いた。向こうもこちらに気付くと「歓迎会?」と聞いてきたので「あ、はい」と答えた。
「じゃあ中入ってて!座敷の一番奥の部屋だよ」
俺は中に入り、言われるがまま奥の座敷へと向かった。大手チェーン店だけあって夕方にも関わらず店内は賑やかで、席へ向かっているだけで耳が痛くなった。そして奥へ進むにつれて一層賑やかさが増した。
(まだ開始時間前なのにもうこのテンションかよ。まじで来たの間違いだったかも…)
溜め息混じりで部屋に入ると中には男女比が半々ぐらいで30人ほどの学生がいた。
(え、なに?多くね?普通こんなもんなの?)
どこに座ればいいのか周囲を見渡したが、俺をサークルに誘った野郎がいなかった。唯一の顔見知りのそいつがいないから俺はこの場で完全なアウェイが確定した。
(やっぱ無理だ、帰ろう。サークルなんて入るべきじゃなかった)
俺が踵を返すと、後ろから肩を掴まれた。振り返るとそこには街中でキャッチをしてそうな薄っぺらい男が笑顔で立っていた。
「何すか?」
俺が聞くと彼は驚いて「何すか?はねぇーだろ」と笑った。続けて「サークルの歓迎会来たんだろ?ほらそこ、空いてるから座りなよ」
「はい…じゃあお邪魔します」
俺は渋々席に腰を下ろした。俺を引き戻した男は俺の前に座った。その男の両脇には女、俺の両脇には男が座っていた。全員入学してからの数週間でまだ見た事無い顔だった。だからどれが新入生かも見分けが付かなかった。
俺が腰を下ろすと周辺の数人は簡単に自己紹介をした。だけど簡単すぎて緊張状態の俺の記憶には誰の名前も記憶されなかった。そして俺が頼んだ飲み物が到着したぐらいのタイミングで前に座っていたキャッチ風の男がグラス片手に立ち上がり、一旦場を静めた。
「はいはい!皆静かに!」
男が声をあげると場は静まり返った。多分こいつがサークルの長だろうと予測した。
「まだ来てない人もいるけど飲み放題の時間もあるから始めちゃうね!えーっと今日はお集まり頂いてー」
男はグラス片手にうだうだと挨拶を始めた。見た感じこの男の話をちゃんと聞いている奴が新入生で、そうでなく話を無視してコソコソ隣と話し込んだり、スマホを見ている奴はすでに所属しているサークルのメンバーだろう。
「それじゃあ、乾杯っ!!うぇーい!」
その男の長い話も終わり、皆酒を飲み出した。もはやただのサークル飲み会だったが、建前は歓迎会だ。だからサークルメンバーは席替えをすると言い出して新入生を固めて同じテーブルに座らせた。新入生は10人ぐらいいた。
そしてサークルメンバーによる新入生への質問タイムが始まった。内容はいたってシンプルで名前や出身、将来の夢などだった。俺の順番は4番目だ、隣で新入生が自己紹介をしているが、俺の頭は自分が話す内容の整理に必死で隣で行われている自己紹介の内容にはほとんど無関心だった。
「じゃあ次いってみよー!」
その声で顔を上げると、周囲のメンバーは全員俺の方を見ていた。
(あ、俺か)
「初めまして。陣内です、出身は千葉です。将来の夢は経営者になる事…かな?まぁ、これからの4年間学業と遊び両立して楽しんでやっていこうと思います」
この内容に嘘はなく、当時は本当に経営者になりたいと思っていた。すると先ほど乾杯の音頭を取ったキャッチ風男が聞いてきた。
「へぇー陣内くんは経営者になりたいんだ。ちなみにどんな会社にしたいとか何をやりたいとかはあるの?」
「いえ、それがまだ全然。だからこの4年間で何かヒントになるようなものを見つけられる様にしたいですね」
「そっか、両親はどんな仕事してるの?」
「両親ですか?母は専業主婦で父はー…」
ここで俺の虚言癖が発動した。
「父の仕事は一応ですけど芸能関係ですね」
俺が言うと周囲はどよめいた。そのどよめきが聞こえたのか端の方で自己紹介を聞いていなかった連中までもがこちらを気にし出した。
「芸能関係!?じゃあお父さんは芸能人?」
「いえ、父はタレントでは無いです。どちらかと言うと裏方…まぁタレントを扱う側に属する方です」
「それでもすげーよ!!誰か芸能人見た事ある?」
「ええ、そんなのしょっちゅうですよ。普通に家にも食事しに来るし」
「まじかよ!羨ましいなぁ。じゃあ陣内くんはボンボンかぁ」
「いえいえそんな事無いですよっ」
この辺りで一度周囲を見渡すと、歓迎会に来ているメンバーの全員が黙って俺の話を聞いていた。
メンバーの表情はさまざまで、俺の嘘を信じきって、まるで俺を教祖だと言わんばかりに見つめる女や、嫉妬に覆われた男の目。それに俺の事を良い様に使ってやろうと悪巧みをしていそうな目をしている者もいた。
もちろん俺の父はそんな仕事をしていない。印刷会社に勤める普通のサラリーマンだ。もちろん会社は大手でもないし、ただの下請け会社。役職も年相応でたしか課長代理だったと思う。
「ねぇねぇ、お父さんてやっぱ高級車とか乗ってるの?」
「俺あんま車に詳しくないから分からないけど、今乗ってるのはポルシェ911ですね」
「それ普通に高級車じゃん!」
父がポルシェを乗っているのは本当だった。というのも昨年祖父が亡くなって、一人っ子だった父がその遺産を相続した。母と相談して、家計が苦しくなった時はすぐに手放すと約束し遺産の余りを足しにして念願のポルシェ911を買ったのだ。もちろん中古である。
「じゃあ今度乗せてっ」
「全然かまわないですよ」
この時点で俺は完全に歓迎会の主役になっていた。無事歓迎会を終えると店の前ではサークルメンバーがこぞって俺と連絡先を交換したがった。
虚言癖の自分が言うのもおかしいが、俺はこいつらの薄っぺらさにただ呆れた。けど収穫はあった。サークルメンバーの中で俺の好みの女の子2人もそこに入っていたのだ。
1人は杏菜(あんな)といい、学年は俺と同じ1回生だ。杏菜は将来モデルを志望しているらしく、身長は少し低めだが、スタイルが良くお洒落な女の子だ。髪も明るめのセミロングで第一印象は結構遊んでそうなギャルだった。
もちろん顔は可愛い、というか俺の好みだ。今は読者モデルのバイトをしていると言っていた。真っ先に父のポルシェ911に乗せてと言ってきたのも彼女である。
2人目は円香(まどか)といい、杏菜とは対照的でいわゆるボーイッシュな女の子だ。円香は1つ歳上で現在2回生である。この日もずっとキャップを被っていたのが印象的だった。漫画が好きだからネカフェでバイトをしていると言っていた。
まだ彼女の内面は何も知らないから失礼だけど、俺はパッと見彼女をメンヘラ気質ではないかと推測した。もちろん根拠はない。けどなかなかの巨乳の持ち主だ。
その他も数人の女の子に連絡先を聞かれたが、大して魅力を感じない奴ばかりだった。だから名前も知らない。
歓迎会がお開きとなり、俺は寄り道せず真っ直ぐ帰路についた。意外にも誰からも声が掛かる事なく1人で帰る事ができた。だが自宅に到着する頃には俺のスマホにはかなりの数のメッセージアプリから通知が入っていた。
メッセージを確認すると全員がサークルメンバーで、それも上手い具合に全員が女の子だった。
その中には杏菜と円香も入っていた。メッセージの内容自体は全員「今日は楽しかったね!また皆で飲もう」的な社交辞令混じりの内容だった。俺は杏菜と円香には返信したがそれ以外は既読だけ付けて返信しなかった。
それほど頻度は多くないが杏菜と円香の2人とだけは連絡を継続した。2人とも学部が違った為、学内で出会う事はほぼ無かったが、とある日俺は杏菜をドライブに誘った。特にこれといって理由はないし、もしだめなら円香を誘おうと思っていた。
「え!行きたいっ!」
杏菜は俺の誘いに快く応じた。そして日程を調整して来週の日曜に日取りが決まった。俺は父にポルシェ911を貸してくれる様懇願し、無事承諾を得る事ができた。
そして約束の日曜日。杏菜が待ち合わせに指定した大学の最寄り駅に俺は向かった。駅前のロータリーに父のポルシェ911を停めて杏菜の到着を待った。チッカチッカというハザード音が心臓の鼓動と重なる。父の車は禁煙車なので車外に出て煙草に火を点けた。そして丁度煙草を吸い終わる頃に杏菜は現れた。
「ごめーん!待った?」
杏菜は身体の紫のニットセーターにレザーのミニスカート、それにショートブーツという格好で来た。スラッと白く、細い脚はただただエロかった。その太ももに顔を埋めたい。
「いや、今来た所。じゃあ行こっか」
俺達は車に乗り込んだ。
「で、どこ行きたい?とりあえず先に昼飯食べようか。何か好きなものある?」
「うーん…昨日カレー食べたからカレー以外だったら何でも良いよ!パスタとか?」
「じゃあパスタにしよう」
俺はスマホで近隣のパスタ屋を探し適当な店に向かう事にした。幸いにも店は混雑しておらず、待ち時間無しで入る事ができた。注文をオーダーしてから俺達は色んな話をした。
幼少の頃の話から大学に入るまで。今までのメッセージのやり取りだけでは伝わりきっていない事を互いに話し合った。ここで衝撃の事実が判明した。今現在杏菜には彼氏がいるとの事。
確認していなかった自分も悪いのだが、俺に連絡先を聞いて来た時点で勝手に彼氏はいないものだと思い込んでいたのだ。
「彼氏いるって、じゃあ俺と会ってるのまずくない?」
「いいのいいのっ。彼氏も陣内くんの事知ってるから」
「え?彼氏って誰?」
「真島くん。サークル同じだよ」
「まじま…」
俺がサークルのメンバーはをまともに見たのは前日の歓迎会が始めてだった。しかし俺の記憶には真島という名の男はインプットされていなかった。
「まだ全員の顔と名前が一致してないから正直誰かよく分からないな」
「あれ?歓迎会の日一緒に話してたじゃない。席も向かい同士だったし」
「向かい同士の席…」
杏菜の言葉を繰り返し口にする事で俺の記憶が徐々に戻った。真島とは俺がキャッチをしてそうだと印象を持ったあいつに違いない。
「もしかして、細身でフレンドリーな人?あの乾杯の音頭取ってた」
「そうそう!てか写真見せた方が早かったね」
彼女はそう言うとテーブルの上に置いたスマホを手に取り、真島と写るツーショットを見せてきた。
俺の予想は見事的中しており、あの日俺に話し掛けて来た馴れ馴れしいキャッチ風の男こそが杏菜の彼氏である真島だったのだ。真島は俺より2つ歳上の3回生だそうだ。
「その真島くん?は俺が杏菜ちゃんと会ってるのは知っているの?」
「知らない。だって言ってないもん」
「ダメじゃないか。もしこの事がバレて後々面倒な事になるのだけは勘弁してくれよ」
「大丈夫よ。陣内くんが誰にも言わなければね」
「そんな話をする仲の友人は大学にはまだいない」
すると店員がパスタを運んで来たので俺は話に区切りをつけ食事を始めた。味自体は可もなく不可もなくといった感じだった。多分もうリピートはない。食べ終わると俺が勘定を済ませ外へ出た。
その後は彼女がコスメが欲しいと言ったので近くの大型ショッピングモールへ行き各々買い物をした。少なくとも俺はデートしている気分だったし、第三者が俺達を見てもカップルに見えただろう。
もし今、真島と出くわせばどんな状況に陥るだろう?俺は何と言い訳をすればいい?言い訳をしている俺を彼女はどういう視線で見るだろう?
別に杏菜の事を好きになった訳ではないが、少なからず好意を寄せている事は事実だった。
「ねぇ、夜景見に行かない?」
「え?夜景?」
「うん、この近くに有名なスポットがあるの。まだお腹空いてないから夕飯はいらない。だからその代わりに夜景行こうよ」
「別にいいけど」
そして俺達はポルシェ911に乗り込むと彼女のナビを頼りにその夜景スポットへと向かった。時刻は18時を少し過ぎた頃だったが、5月の空はまだうっすらと明るかった。
「着く頃には暗くなってるといいね」
「そうだね」
そして俺達は1時間ほど掛けて車で山道を登り、ようやく目的地へ到着した。日曜だからか展望台のある駐車場にはすでにかなりの数の車が止まっていた。
そこは駐車場から出も夜景を一望できるスポットになっていた。外に出て夜景を見るカップルもいれば車内から眺めたいるカップルもいた。
「着いたけど…外で見る?」
俺が彼女に尋ねると彼女は首を横に振った。
「ううん、ちょっと肌寒いからここからでいい」
「そっか、じゃあここからで」
俺は窓を空けると煙草を取り出して火を点けた。彼女は終始無言で夜景を眺めていた。車内には俺が煙草の煙を吐き出す呼吸音だけが響いた。
(それにしても気まずい…何なら今から別れ話をするカップルの様だ。今は話し掛けない方がいいのかな)
俺は気まずさから内心ソワソワしながら煙草を吹かした。そして煙草を吸い終わり、吸い殻を携帯灰皿に押し込んだ時に彼女は口を開いた。
「ねぇ」
「ん?」俺は最後の一吸い分の煙を窓から外に吐きながら言った。
「私将来、芸能人になりたいの。モデルでも女優でも何でもいい。何でもいいから芸能界に入りたいの」
「お、おお。いいんじゃない?」
すると彼女は真顔でこう言った。
「なにその反応?そんなに変?」
「いや変とかじゃなくて…唐突すぎて少し驚いただけだよ。杏菜ちゃんにそんな夢があったなんて知らなかったよ」
「うん、だから私はまだ大学1回生だけど就活なんてするつもりはサラサラなくてさ」
「へぇ。じゃあ卒業と同時に芸能界入りを目指してるんだ」
「そうなの。むしろ在学中でもかまわない。芸能界に入れると分かった瞬間に大学も辞めるわ」
彼女はそう言うと「それでね」と続けた。
「陣内くんお父さんは芸能関係のお仕事してるんだよね?もし良かったらなんだけど……」
ここで俺は勘づいた。スティーブ・ジョブズ風に言えば点と点が繋がり線となったという具合に。
要するに彼女はコネクションが欲しいのだ。だから彼氏そっちのけでわざわざ俺に近付いたのである。
だが困った事に、俺の父親は芸能関係の仕事ではなく、しがない印刷会社に勤めているただの課長代理。会社はおろか、自分の課でさえ改革できる力はない。あくまで課長代理なのだから。
そんな父が杏菜を芸能界に押し込むコネを持っている訳ないじゃないか。自身の勤める会社にコネ入社させられるか?という事でさえ怪しい。
杏菜は俺からの言葉を待っている。返事次第で自身の人生に少なからず変化が訪れるからである。
俺は迷った。ここで「あぁ、その話は嘘なんだ」とカミングアウトする度胸も無かった。かと言って嘘を貫き通して杏菜の芸能界入りを後押しする力も当然無かった。
ここで正直に嘘を認め、杏菜に愛想を尽かされて元の日常へと戻るのが一番楽だし賢明なのは明らかだったし、仮にそれが原因でサークルに居心地の悪さを感じたならば抜ければ良いだけの話。
まだ大学生活は始まったばかりだ。今後の事は何とでもなる。
しかし頭で分かっていても俺に何年も前から根付いた虚言癖がその邪魔をした。
「うーん…どうだろうね。そういうのは親父に話してみないと分からないなぁ。けど確かに芸能界はコネクションが大切な世界だよね」
すると彼女は突然俺の手を握った。手を握りながら俺の耳元で囁いた。
「私は本当に芸能界に入りたいの。それが夢なの。だからどんな小さなチャンスにでもすがりたいの…」彼女はそう言うと握った俺の手を離して、自らの手で俺の股間を優しく撫でた。
「ちょっと、何してんの?」そうは言ったものの俺の股間は杏菜に少し触られただけで勃起した。
「私、本気なの。可能性があるなら何だってする。陣内くんの言う事は何でも聞くからっ」
「それほんと?何でも?」
「うん…何でも。私に出来る事ならね」
これ以上は絶対にだめだ、引き返せなくなる。
俺はそこまで馬鹿ではないから、もちろん頭では分かっていた。これ以上話が進んでもし嘘だったとバレた時に大変な事になる。
(これ以上は駄目だ!嘘だとバレたくなければ適当に話を逸らして彼女にこれ以上期待をさせるな!)
俺の中にいるジキル博士が脳内で言った。
そうだ、その通りだ。親父はそういうのはしていないと適当に誤魔化せばいいんだ。そして今後も芸能界と父親の話を避けながら過ごせば良いだけの話だ。それなら虚言癖はバレないし何の問題もない。
俺が彼女に適当な理由を付けて断りを入れようとした瞬間、次はハイドが脳内に現れた。
(おいおい、美女とこんなチャンス滅多にないのに自ら捨てるのか?別に適当に誤魔化せば嘘なんてバレやしないさ。彼女もお前が思うほど期待してねーよ。その証拠にさっきどんな小さなチャンスでも…って言ってたじゃねぇかよ)
確かに言ってた。どんな小さなチャンスでもすがりたいと。もう俺にジキル博士の声は聞こえなかった。いや、聞こうとしていなかったのかもしれない。それはハイドの誘いの方が己の欲望に沿っているからだと思う。こうして俺はゆっくりとジキルとハイドのハイドサイドへと向かう事になった。
(はっはっ!こんな美女がセフレになれば最高だぜ?見ろよあのスカートから出てる細く白い太ももを。セフレにすれば彼氏と同様にあれを好きなだけ触れるんだぞ。それにもう少しで見えそうな彼女のパンティも好きなだけ拝めるさ)
ハイドの言う通り、俺は杏菜の身体を性的な目で見ていたしセフレにできれば…と想像しただけで興奮した。
(別にセフレなんだし身体に飽きれば距離を取ったら良いだけの話さ。今日の彼女とお前の会話は2人だけしか知らないんだ。心配しなくても彼女がお前とセフレだった話は出回らないよ。そんな話をしても誰も得はしないからな)
そうだ、そうだよな。別にもし彼女の方からその話が漏れても俺が否定すれば良いだけだよな?
そして俺の思考はまんまとハイドに支配された。
「じゃあさ、フェラできる?今ここで」
彼女は一瞬だけ怪訝な顔をした。それは俺が本当にそういう要求をすると思っていなかったからか、それとも単純に洗っていないチンコを咥えるのに抵抗があったからなのかは分からない。
俺は真っ直ぐ彼女を見つめ、返事を待った。
「フェラだけ?」
「それは分からない。杏菜ちゃんにフェラをされて気分が上がればその先もしたいと思う。別に嫌なら無理にとは言わない」
杏菜は少し考えて言った。
「ゴムは持ってるの?それによる」
俺はゴムを持っていなかった。
「それによるって…それじゃあ何でも言う事を聞くという話に反してるよね?仮に俺が中出しさせてって言ったらさせてくれないと…そこまでの覚悟があって初めて何でも言う事を聞くと俺に言わないと」
「うん、そうだよね。いいよ、陣内くんが好きなようにして」
「わかった、じゃあ早速…」
そう言うと俺は運転席の背もたれを後ろに倒した。ベルトを外し、ジーンズを少しだけずらして後は彼女に委ねた。
彼女はまだ少し迷っている様だった。そしてしばらくしてから先ほどの様に俺の股間を優しく撫で始めた。彼女の温もりのある手が股間に触れた事で俺の性器は再び勃起した。今度はジーンズの上からではなく、パンツの上からだったので俺の性器の形を彼女はダイレクトに感じた。
「陣内くんの…おっきいね…」
そう言うと彼女は俺の性器を撫でるのをやめ、代わりにゆっくりと手で握った。
「真島くんとどっちが大きい?」
「そんな事聞かないで」
「いいじゃん、別に気にしないから教えてよ」
「んーもうっ……陣内くんの方がおっきい…真島くんはもう少し短いし細かったと思う」
「そっか」
それから彼女は俺の性器の形を記憶するかの様にゆっくりと触り続け、そして次はパンツの中に手を入れた。
「出しちゃっていいよ」
俺が言うと「うん」と彼女は頷いて俺の股間を露にした。
彼女がパンツをめくると俺の性器は反り上がった状態で露になった。緩やかな曲線を描き、剃り上がり亀頭が俺のへそに向いた性器を見た彼女は言った。
「可愛い…陣内くんのおちんちん元気だねっ」
それから優しく剃り上がった性器を手で掴むと、ゆっくりと上下にしごき始めた。亀頭から溢れ出た我慢汁が潤滑剤代わりになって、自慰行為をする時よりも滑からに皮が上下に滑り続けた。
彼女は我慢汁でベトベトになった俺の性器に自らの唾液を垂らしてさらにしごき続けた。
父のポルシェ911の車内には、我慢汁と唾液まみれの俺の性器を彼女がしごく「チュクチュク」というエロい音だけが響いていた。
「杏菜ちゃん…すっげー上手い。気持ちいいよ」
俺の言葉に彼女は優しく微笑み、「そう?」と言うと「ジュボッ」と音を鳴らして俺の性器を咥えた。
彼女の綺麗にウエーブの効いた髪が俺の腹の上にのし掛かり少しこしょばかったが、それ以上に彼女のフェラテクに驚いた。
彼女は俺が今までの経験した誰よりもフェラが上手く、弱い箇所を探すのも上手かった。後にも先にも彼女を越えた者はいない。それはとてもじゃないが18、9歳のフェラにしては完成度が高かった。
俺は彼女のテクニックを前に数分で絶頂を迎えそうなった。彼女にもそれが分かっていた様で、口と手の動きを徐々に加速し始めた。
このままではイカされてしまうと思った俺は身体を少しだけ起こして、空いた左手で彼女の太ももを触った。フェラに集中していたせいか、彼女のミニスカートからは薄紫のパンティが見えていた。
俺は太ももから徐々にパンティに向け手のひらをスライドさせ、彼女のパンティに触れた。そして手探りで彼女の陰部をなぞり、湿り気のある部分をすぐに見つける事ができた。
「んんっ、んっ!」
湿り気のある部分をしきりになぞり、その隙間から膣へ指へ入れた。
彼女の膣はすでにぐっしょり濡れていて感度も良く、指の第一間接が入っただけで「あぁんっ!」と声を上げた。声をあげると同時に身体をビクビクと反応させた。
それが演技では無いのは明らかだった。その証拠に俺が指を入れ愛撫を始めると、彼女のフェラはストップし、性器を握り顔を伏せたまま喘ぎ声を上げ続けた。
俺は感じる彼女を見て興奮が高まった。そして次は彼女の胸を揉んだ。彼女の胸は柔らかく、ブラの間に指を入れて乳首に触れると小さな突起が硬く勃起しているのを感じた。
「上に乗って」
俺が言うと彼女は黙ったまま俺の上に乗った。そして俺は周囲にの目をお構い無しで彼女のニットセーターをまくり上げた。
「いやんっ、もう!」彼女は周囲を気にしたが俺はそんなのかまいもせず、彼女のブラをずらして乳首にしゃぶついた。これでもかというぐらいしゃぶり、パンツを踝まで下ろした。
そして勃起した性器を上に股がる彼女の陰部に当て
「もう挿れるよ……?」と彼女に伝え、彼女からの返事は聞き取れなかったがゆっくりと挿入した。
彼女の膣はぐしょぐしょに濡れていたが思ったよりも狭かった様で、すんなりと挿入できなかった。
性器の先っぽが入った状態のまま、俺は再び目の前の彼女の乳首を吸った。
「ああっ、はぁんっ…んん」
すると亀頭が彼女の膣へゆっくりと挿入されていく感覚を得た。そのままゆっくりと押し込んで完全に性器が膣へ入ったタイミングで彼女はより一層大きな喘ぎ声を上げた。
それに驚いた俺はとっさに彼女の口を塞ぐ為、キスをした。すると彼女の方から俺に舌を入れ、口内をなめ回した。俺が舌を真っ直ぐ出すと彼女は舌をフェラする様にチュポチュポと音を立てて吸い、そのリズムに合わせて俺は腰を何度も振った。
「んっ!んんっ……!」彼女の唇を塞いではいたものの、彼女の喘ぎ声は静まる事はおろか一層激しく声を漏らした。
ここまで来ると俺も頭が真っ白になり、羞恥心を捨てて獣の様にガムシャラに腰を上下に振り続けた。それに合わせて彼女も腰を動かしているのが分かった。
そして彼女は口を離して言った。
「ああん!だめっ、陣内くんっ…!イクッ!イッちゃう!」
「イケやゴラァ!!」
俺も叫んだ。思い返すと頭がどうかしてたが、とにかくそれぐらい我を忘れて没頭した。そして俺もイキそうだったので最後にガンッ!と腰を突き出して思いっきり突いたら
「ああああん!!っんはぁっ!」と俺の射精と同時に彼女も絶頂を迎えた。
そして彼女は俺に抱き付く様にぐったりと倒れ込み、肩で息をしていた。
父のポルシェ911のシートは彼女の愛液でべちょべちょになり、窓ガラスは熱気で白く曇っていた。
互いに荒い呼吸を整える為に少しの間沈黙の時が流れた。
そして先に呼吸を整えた彼女は言った。
「私、陣内くんが望むなら真島くんと別れる覚悟もあるから。真島くんには悪いと思うけど、それでもやっぱり夢を叶えるのが先決だもん」
「いや、そこまでしなくていい。ただまたヤりたくなったらヤらせてよ。杏菜ちゃんの身体すごい良かった」
「それってセフレじゃない!?…けどまぁいいよ。その代わりこの事は絶対誰にも言わないでね」
「うん、言わない」
これでもう引き返す事はできない。今更ながらどうしたものか。俺が曇ったフロントガラスを眺めながら気を重くしていると彼女が言った。
「私今までのエッチで陣内くんとのエッチが1番気持ち良かったな。セフレってのは少し抵抗あるけど…」
「ありがとう。またガンガン突いてやるよ」
「もうっ、言い方!」
「ははっ、またびちゃびちゃにしてやるよ」
すると耳元でハイドの声が聞こえた。
(次はハメ撮りとかどうだ?そのデータさえあれば今後もしお前の嘘がバレても彼女は泣き寝入りするだろう。万が一の保険だけはさっさと掛けておけよ)
「ああ、分かってる」
「え?何が?」
「いや、何も!つーかそろそろ帰ろうか。俺、賢者タイムで眠たくなってきた」
「さいてー」
「うるせぇよ」俺はそう言いエンジンを掛けると片手で彼女の胸を揉んだ。彼女はもう抵抗はしなかった。それどころか自ら再びブラを外し乳首を触りやすくする為に配慮までしてくれた。こうして俺は大学に入ってすぐ性奴隷1号を獲得する事ができたのであった。