背の高い後輩の劉ちゃんは、彼氏持ちのくせに処女だった

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「バカやろう、ヒューズが切れてるだけじゃないか!どこさわってんだ!!」

「ひええ~」

「いいから、どけ!大女!」

「な!なんですか!部外者は黙ってください!先輩~放送室に変な人が入って来た~」

「あ~もう、こんなにしやがって」

「触っちゃ駄目です~私がやります!」

「こ、、この大女!」

「あ~また大女って言った!!あなたがちびなのが悪いんじゃないですか~」

「いいからどけ!このままじゃ、このままじゃ今日の放送番組がぶっ飛ぶぞ!!」

こいつとの出会いは、もうこれ以上ない修羅場だった。吊り橋効果で惚れたのかって?

最初は殺意しか湧かなかったよ!!

明けて高校二年生の春、何故だろう?俺は除籍したはずの放送委員会に入り浸っている。

俺の名は桂木三月(かつらぎみつき)

まあ、これはもうすぐ60歳の親父の思い出話だ。

放送委員会は衰退した。放送委員会の連中は「大喧嘩して悪名を流したお前が悪い」とか言っていたが、何のことは無く元々放送委員会自体が人気が無いんだ。そもそも花の高校生が、毎日昼休みと放課後をぶっ潰されるこんな委員会に興味を持つのがおかしい。

それでも昨年までの三年間、曲がりなりにも人が集まって華やかだったのは、、。

桂木先輩がいたから、、、。

多分、アナウンスが大好きだった美貌の桂木先輩の存在が大きかったんだと思う(学年トップクラスの人気者だからね)。

俺自身は、桂木先輩の失踪については訳分からないなりにも責任感じているところはあるが、三年生だった先輩はどちらにせよいなくなる訳で、衰退は必然だったんだ。

まず一学年上の先輩たちが、三年生になるのを待っていたかのようにいなくなった。

顧問の竹田先生(名物先生ね)も説得に動いたが、受験を盾に取られると強くは言えず、残ったのは、俺と同学年のアナウンサーの平田(女)と成井(男)だけ、、、。

これに新入生が三人では、どうにもならず、特に主力の二年生に機械屋がいないのは致命的で。

平田「桂木くん、お願い!戻ってきてよ!!」

こいつが俺と同クラスになったのが最悪のはじまり。

二年初日の放課後から、機械の調子が悪いとか言われて引っ張り出されて逃げられなかった。

いや、逃げようとしたんだよ?

ただ、こいつが典型的な女子で、友達軍団で囲んでくるんだよ「平田ちゃんかわいそう~」とか言ってさ。

俺の最も苦手なタイプなんだよね、、、。

で放送室に連れて来られた俺は、冒頭の修羅場に遭遇する羽目になった。

はっきり言って最悪火災が起きてもおかしくない惨状だった。

帰りに竹田先生とはサシで話したんだ。例によってラーメン奢って貰いながらだけど。

もちろん先生は俺に戻って来て欲しいと。

俺は、先生にだけは、先生にだけは桂木先輩のこと全部話したんだ。そして俺の気持ちも伝えた。けじめとして、とても委員会には戻れないって。

先生は俺の気持ちには寄り添ってくれて、委員会に戻らないことには理解を示してくれたんだ。

だけどさ、、、

先生「桂木、、一つだけ良いか?」

「はい、、、」

先生「お前、、今まで俺のラーメン何杯食べた?」

「、、、、(汗)」

先生「そのままって訳にはいかないよなあ(笑)」

「(大人って汚い!)」

結局、俺は委員会に席は戻さず、でも作業には携わると言う、摩訶不思議な立場になった。

なんのこっちゃ?

放送室は学校公共施設。そんな立場じゃ入れないでしょう!?と言ったんだけど、何とかする!と。

竹田先生、何か学校の弱みでも握ってるんかな?

と、言うことで俺が何とも中途半端な立場に追い込まれてすぐ。

今年の物好きな新入生のお三人。その新人歓迎会で事件は起きたんだ。

放送室ってのは一種の治外法権でね。生徒はもちろん先生だってめったに入ってこない。

何かの設計ミスなのか何故か余裕があってね。

簡易ベッドや運動器具、そして打ち合わせ用には大きすぎる円卓まであってね。

俺たちはその円卓を使って、新入生の歓迎会をやっていた。

まあ、俺も事実上の再加入なんで歓迎される側に入れて欲しいのだけど、そんな我が儘は通じず。

歓迎する側は、

成井(男)アナウンサーで部長。

平田(女)アナウンサーで副部長。ちなみにこいつらカップル。

それと俺。何でも屋?部外者?説明がつかん。

新入生たちも?マーク。

ちなみに歓迎される側は

山田(男)機械屋。但し電気部と相乗り。

錦野夕子ちゃんアナウンサー、小柄で眼鏡っ娘。きゃっぴきゃぴ。

そして、もう一人、大きな身体を折り曲げて、ジュースをにこやかに注いで回っているくだんの女の子がいた。

劉(りゅう)秀美ちゃん中国籍日本生まれ。

身長167cmとか言ってたな。

悔しいが俺より少し上。

あ、全然太ってはいないんだよ?

むしろ身長とのバランスでえらいスレンダーに見える。

ショートカットで遠目には男っぽいんだけど、近寄ると目鼻立ちが整って美人顔。

女の子は二人とも中学校からの彼氏がいるとかで、山田はがっかり顔。

こいつ、委員会への出席率が下がるんじゃないかな?

「え~と、先輩、、で良いのかな?ジュースまだ要ります?」

「先輩違う!部外者。あ、、ジュースは欲しい」

「じゃあ、部外者先輩ですね。私は秀美。劉秀美です。あの時は失礼しました。だけど私、機械屋志望なんでいずれ部外者先輩から全てを吸収してあなたを追い出します!」

「その心意気は良い!!でもな、、一週間見てたんだけどさ、お前、機械屋の適性乏しい。成井が勧める通りアナウンサーのほうが良いと思うな」

「ひど!たった一週間で何が分かるのですか!?」

「、、、いや、初日で分かったんだが、それでも我慢して一週間見ていたんだが」

「私のどこが適性無しなんですか!」

「お前、初日、何を壊したのかもう忘れたの?」

「、、、、(汗)」

危うく、その日の放送番組がパー。

「し、しかしそれは”弘法も筆の誤り”というか」

アホが!諺(ことわざ)になっておらん!!

「おい!山田!!お前、さっさと機械のこと全部覚えて、俺をオン出せ!」

山田「いや~、俺は電気部あるっすから」

「私を無視しないでください!」

「劉ちゃん、お前さ、アルトの声がはっきりしてて綺麗なんだから、良いアナウンサーになれるんだよ」

「な!何言って、、わ、私を口説いてるんですか!」

口説いてません!!

「と、ともかく私はこれからも機械屋志望ですから!」

あ!バカ!そんなところで足元気にしないで動くから、、、

「きゃああ!」

足を線に引っかけ、悲鳴を上げて、彼女が倒れ込む。

俺はこいつより、引っ掛けた接続線の先の機械の方を気にしてとっさに動いたんだけど、その時見えちゃったんだよね。彼女の足首が一瞬、曲がってはいけない方向に曲がってしまっていたことを。

気がついたら身体が勝手に動いていた。

「え?」「え!?」まわりの驚愕。

「平田!扉を開けろ!こいつの荷物持って着いてこい!」

「いたた、、、え?きゃああ!」

問答無用。俺はこいつをいわゆるお姫様抱っこにして、保健室に走り出した。

実のところ、桂木先輩には申し訳ないが、俺は高校時代の桂木先輩の顔って、良くは覚えていないんだ。あれだけのことがあったのにね。本当に俺、ガキだったんだな。

劉ちゃんとは、高校以降は会えなくなるんだけど。

それでも劉ちゃんの顔は覚えている。

今でも鮮明に思い出せるんだ。

「大女ってなんですか~」

「知らんわ!お前が重かったでしょうって聞くから素直に答えただけじゃん!」

「わ~ん気にしてるのに~、先輩のばか~」

気がつくと保健室で罵り合ってるバカ二人。

後に夕子ちゃんは語った。

「誰よりも早く、劉ちゃんを抱き上げて保健室に走った桂木先輩本気でカッコ良かった。保健室で劉ちゃんと言い争ってる桂木先輩クズだと思った」

俺の株、乱高下中(汗)

「ほえ~、デッカイ家だな~」

「、、、、(プイッ)」

こ、、、こいつ、全くしゃべろうとしやがらない。

保健室の見立て「最悪骨まで行っている」は、整形外科でのレントゲンで回避された。

ただ、重度の捻挫につき松葉杖が必須になった劉ちゃんには、誰かがカバン持ちで付き合わなければならない。

あ~そうだよ!全員一致で俺に押し付けられたよ!

この不機嫌女をさ!

「じ、じゃあな。」

「、、、7時」

「は?」

「明日のお迎えは7時希望です。それじゃ」

「待て!おま、!、」

ぎ~~、ご立派なお屋敷の門は劉ちゃんを飲み込み、荘厳な音を奏でなから俺を閉め出した。

「先輩、昨日はありがとうございます。先輩のおかげで本当に助かりました。感謝しています。」

「、、、明後日の方を見ながら言うな!」

翌日、出迎えた俺へのたったの一言。

可愛くね~とか思ったけど、どうも照れて真っ赤になっているらしい。

ほんのちょっと、かわいいところもあるじゃん、と思ったのは内緒だ。

放課後、劉ちゃんを送って行った俺を、劉ちゃんの家族全員が迎えてくれた。

遅ればせながら事情を知ったのだろう。

、、、しっかし、中も大きな家だ。

そもそも女の子の家なんて、桂木先輩の家以外入ったことないし。

ふと気がつくと、少し離れておじいさんがニコニコとこちらを見ているのに気がついた。

直感的にこの人がこの場で一番偉いのだと思った。

「桂木三月と申します。この度は我が委員会にて、大切なお嬢様を傷付けてしまい、申し訳ごさいません。委員会を代表してお詫び申し上げます。」

体育会系スキルを駆使して深々と頭を下げる俺。

びっくり顔で知らない生き物を見るような目で俺を見てる劉ちゃん。

「ふむ、今度の子は一味違うようじゃ」

「お、おじいさま!?」

「桂木さんとおっしゃったかな?丁寧な謝罪痛み入ります。こちらこそ孫を助けてくれてありがとう。今日から君は私たちの身内だ。困ったことがあったら遠慮無く相談しなさい」

そう言って、ニコニコとその場を離れていくおじいさん。

正直、何を言われたのか良く分からなかったんだけど、隣で劉ちゃんが尚更びっくりした顔で固まっていた。

それからは、劉ちゃんを送って行くと必ず夕飯に誘われるようになった(いや、最初は固辞してたんだよ)。

それはまあ良い(良くないけど)。

問題は朝夕の送り迎えで劉ちゃんと未だにまともな会話が出来ていないことだった。

それどころか。

「噂になってます」

「ほえ?何が?」

「先輩と私の仲がです!最悪!」

悪かったな!

でも、確かにこいつ目立つんだよな。

背が高くてスタイル良し。顔も良い。一年生の中でもトップクラスなんじゃないだろうか?

山田「先輩、ご自分のこと舐めてますよね。先輩も目立つんですよ?良くも悪くも。大体、喧嘩で停学になった生徒なんかうちの学校じゃめったにいないんですから」

それって単なる悪目立ちじゃん!

送り迎え一週間。双方の利益の為に送り迎えは今日までにしよう、との見解で俺と劉ちゃんは一致した。

「いつもすまないね」

「いえ、こちらに責任があることですので」

「ところで秀美の怪我だがね。君の正直な見解はどうかね?」

「、、、そうですね。お医者様の見解では、松葉杖は一週間程度とのことでしたが、彼女は初めての松葉杖で決して使い方が巧くはない。それは当たり前のことなのですが。」

「現状、逆の足への負担が高い状態に見えます。このまま松葉杖を離すと別の怪我を呼ぶ可能性があります。後一週間ほどは松葉杖を使ったほうが良いかと思います。」

「ふむ、適切な判断だ。では今しばらく孫を頼みます」

「はい」、、、あれ?

バフン!劉ちゃんが後ろから俺の背中を叩いた。痛いっての!

「ったくもう!送り迎えは今日までって言う放課後の打ち合わせはどこに行ったんですか!」

「仕方ないだろ!お前のじいさん何か怖いんだよ!とても嘘がつけない雰囲気でさ」

初めての劉ちゃんの部屋。落ち着かんわ!

「、、、私の足、まだなんですね」

「正直な。俺、怪我人は結構見てきちゃったから分かる」

「、、、ありがとうございます。ちゃんと見てくださって」

そ、、そういうこと真顔で言うな!

俺は思わず目を反らし、、て?

「、、、HF帯のアマチュア無線機?」

「え!?先輩、詳しい!」

女の子の部屋に似つかわしくないそれは、おじいさんからの譲り受け品なのだと。

これでアマチュア無線局を開設して世界中の人と話すのが夢なんだと劉ちゃんは嬉しそうに話した。

なるほど、放送委員会で機械屋にこだわる訳だ。

「まだ電話級も落ちちゃうんですけどね」

「うん、この機種ならW(ワット)数を落として電話級からはじめられるもんな」

「、、、何でそんなに詳しいんですか!?」

「二級」

「は?」

「俺、アマチュア無線二級免許持ち」

「神童!?」

うん、高校二年生で二級ならそうでもないけど、中学で取ったときはそう言われた。

「お!お!教えてください!!」

飛び付かんばかりに距離を詰めてくる劉ちゃん。

近い!近いって!!

「教えるのは良いが条件がある」

「?」

「まずは、放送室の機械の熟知だ」

「私、機械屋チームにいて良いの?」

「ああ。気持ちは分かったからな。ただし先は長いぞ~?」

「先輩~!!」

こいつ本当に抱きついてきやがった!

重い重い重い!良い匂い、、、

「重いっつの!」

「!また重いって言った!先輩のばか~!!」

目標が出来た劉ちゃんは頑張った。

夏休み前には、メンテも含めて、山田と劉ちゃんには教えることが無くなってきた。

俺は約束通り、夏休みを使って、劉ちゃんの家に電話級試験の家庭教師に行くことになった(家に行くのはどうかと思ったが、劉ちゃんの家族、特にじいさんに押しきられた)。

さすがにその頃には、劉ちゃんとは普通に会話出来るようになっていた。

彼女が女子同士で群れるタイプの女の子ではないこと、彼氏持ちの女の子であることも大きかった。

気軽に話せる後輩の女の子。

俺は楽しく彼女の家に行けるようになった。

、、、やっぱり、俺はガキで甘かったんた。

「、、何とかなりそうだな」

秀美「本当ですか~!?」

劉ちゃんの無線の知識は日に日に充実している。

、、、最初は正直どうしようかと思ったけど(汗)。

これなら電話級アマチュア無線従事者試験くらいなら、何とかなるだろう、やれやれだ。

秀美「先輩~、来週のホームパーティー、忘れないでくださいね!私がおじいさまに怒られちゃうんだから!」

「、、いや、あのじいさん、最近は遠慮無く俺に言ってくるぞ。俺はあんたの孫じゃないっつうの!」

秀美「、、、、」

「まあ、じいさんの話、面白いから良いんだけどさ。何か最近は自分たちの挨拶の仕方とか一族の証?とか、俺、関係無いと思うんだけど。」

秀美「おじいさま、先輩のこと、本当の孫みたいに思ってるんですよ。うち男の子いないから。先輩が嫌じゃなければ付き合ってあげて?ね?」

「あいよ、ああ、来週って身一つで良かったんだよな?ドレスコードとか平気だよな?」

秀美「うん!それは大丈夫!(こっちでね)」

「?」

「なんじゃこりゃ~」

パーティー当日、念のため学生の正装である学ラン(当時は制服だったの!)でお邪魔した俺は、到着早々待ち構えていたメイドさん(今となってはみんな顔見知り)に捕まりよってたかって、、、。

気がつけば、タキシード着こんだ見知らぬ男の出来上がり。

でもさ、それよりも驚愕の、

「り、り、劉ちゃん!?」

そこには、名前以外は別人と思われる、深窓の超絶美少女ご令嬢が出現していた。

「い~~っ!」

思い切り足を踏まれた。

秀美「、、いつまで呆けてんですか!」

「良かった~中身は劉ちゃんだ。」

秀美「どういう意味ですか!先輩、今日のパーティーの未成年は私たちだけなんですから、しっかりエスコート頼みますよ!」

「つ、、疲れた」

秀美「す、すみません、、まさかおじいさまがここまでやるとは、、」

劉ちゃんのエスコートの話はどこいった!

俺は会場に入り次第、じいさんに連れ回されて挨拶回り?に奔走させられた。

今日ほど、自分が中学時代、体育会系野球部にいて良かったと思った日はない。

じゃなきゃ礼儀作法もさることながら、体力不足で絶対ぶっ倒れていた。

取り敢えず解放された俺のところに、心配そうに劉ちゃんが駆け寄って来るんだけど、この劉ちゃんの令嬢姿がまた心臓に悪い。

「お願い!何かしゃべって!劉ちゃんらしく」

秀美「どういう意味ですか(怒)」

秀美「先輩、ど~ぞ!」

劉ちゃんが、飲み物と立食のオードブルを持って来てくれた。

「悪い~。生き返った」

クスリと劉ちゃんが笑う。その笑顔、本当に心臓に悪いよ。

秀美「パーティーももうすぐ終わりです」

「本当?良かった~」

秀美「先輩」

「ん」

秀美「踊っていただけませんか?」

劉ちゃんは本当にご令嬢のように、ドレスの裾を押さえてすっと頭を下げた。

「、、踊れないぞ、俺は」

秀美「手を合わせて歩くだけで良いです。本当は殿方が誘うんですよ!!」

「わかりました、お嬢様」

俺は慇懃無礼に手を差しのべて

「私と一曲いかがですか?」

片手を劉ちゃんと合わせ、片手を劉ちゃんの腰に回して、俺たちは音楽に合わせる。

劉ちゃんは本当に別人みたいだ、いや、劉ちゃんは本当にお嬢様、こちらが本当の姿なんだろうな。

なんとなくシンデレラ姫の話が頭に浮かんできて、そのシンデレラ姫の顔が一瞬桂木先輩の顔に重なって、俺は不安になった。

「どこにも行かないよな?劉ちゃん」

秀美「はい?」

「二学期になっても学校に来るよな」

劉ちゃんは一瞬ぽかんとした顔をしたあと、花のような笑顔を見せて、

秀美「当たり前じゃないですか!今後ともよろしくお願いしますよ、せ~んぱい!!」

「ごめん、もう我慢出来ない」

夕子「桂木先輩」

平田「桂木くん」

成井「桂木、委員会代表で行って来てくれよ」

「ああ」

10日我慢したんだ。もう良いだろう!!

お約束のように、劉ちゃんは二学期になって登校して来なくなった。

最初は、竹田先生が劉ちゃんの担任の先生に確認して、「風邪らしいよ」と教えてくれていたのだけどね。

後で成井に聞いたら、俺の顔色は相当酷いものだったらしい。

まあ成井も平田も目の前で桂木先輩のときの顛末を見ているからね、気が気じゃなかったろう。

お休みも5日も立つと、竹田先生さえ「風邪」という理由に疑問を持ちはじめていた。

何かがある。

たださ、みんな、劉ちゃんが明るく元気に登校してくることを信じたかったんだ。

10日目、俺は何としても彼女の家に行くと言い、竹田先生からは「劉ちゃんは入院しているかもしれない」と告げられた。

劉ちゃんの家は、暖かく俺を迎えてくれた。

俺は訪問が遅くなったことを詫びた。

じいさんは、俺を見て「秀美はもうすぐ香港の病院に行く」と教えてくれた。

じいさんの目には涙が浮かんでいた。

秀美「先輩、来てくれたんだ!」

一見変わらない劉ちゃんが、自室のベッドにいた。

俺はやっぱりガキだ。

こんなときに、何を言ったら良いのかなんて分かる訳がない。

「、、、、」

俺はやっぱりガキだ。だけどね、劉ちゃんはさ、

秀美「先輩ごめんね」

「何がだよ」

秀美「色々だよ」

「何が色々だよ、わかんないよ」

秀美「うん、私も分かんないや」

「わかんないことで謝るなよ」

秀美「でもさ、二学期学校に行けなくなっちゃったから」

病名を聞いちゃいけない。泣いちゃいけない。

取り乱しちゃいけない。困らせては、、いけない。

最悪を想定したとき、それだけは思っていた。

だったらさ、

「劉ちゃん、俺、何か出来ることないか?」

秀美「え?」

「今なら何でもやってやる。裸で街中走ってこいって言われてもやる。」

秀美「そんなことお願いしないけど、じゃあさ」

「うん」

秀美「抱いて欲しいな。夢だったんだ、好きな人に抱いてもらうの」

何でだよ。何で俺の好きになった人は、、!

このとき初めて自覚した。俺、劉ちゃんが好きなんだ。だけどさ彼女は彼氏持ち。

「劉ちゃん、彼氏どこにいる?」

秀美「、、え?」

「俺が何としても連れてきてやる」

秀美「あはは」

「、、、なんだよ」

秀美「とっくに別れてるよ」

「え?」

秀美「じゃなきゃ先輩をパーティーなんかに誘わないよ」

「な、、」

秀美「私は今、フリーだよ?」

なんだよそれ、、、

「劉ちゃん」

秀美「ん?」

「劉ちゃんが好きだ」

秀美「うん!」

「わかってなかったんだ、でもわかった、君が好きだ」

秀美「嬉しい、待ってたんだよ?」

秀美「私も先輩が大好きだよ」

秀美「う、、、う~!!」

「大丈夫か?止めるか?」

秀美「だ、大丈夫~」

俺たちは一つになった。

秀美「は~は~、先輩がいっぱいだ」

「頑張ったね、劉ちゃん」

秀美「で、でも先輩のまだ余裕だよね」

「俺はいいんだよ」

秀美「全部入れて欲しいな」

でも、君の中はこんなに狭くて、今だってそんなに痛みを堪えて。

秀美「お願い、先輩」

「、、、、」

秀美「もしかしたらもう、、、」

「!!、、わかった」

秀美「あ!!ああっ!!」

俺は一気に押し込んだ。俺の全てを。

秀美「あ!ああっ!ああ~~っ」

劉ちゃんは痛いけどしあわせだと泣き笑った。

劉ちゃんは初めてだと言った。

前の彼氏には許さなかったのだと、先輩のために取っておいたんだよ~って笑った。

俺は、ごめん初めてじゃないと謝った。

劉ちゃんは、ちくしょう!先輩の童貞はもらい損ねたか~と笑った。

秀美「先輩の身長、いつの間にか私を越えたね」

「、、、、」

秀美「先輩はきっと、カッコ良くなって、私の自慢の彼氏になるんだ」

「、、、、」

秀美「そしたらさ~私は無線で世界中に発信するんだ。私の彼氏は世界一カッコ良いんだぞ~って」

「身内の贔屓目だって、恥ずかしいな」

秀美「あはは!そうだ身内って言えばさ~、私先輩にどうしても伝えておかなければならないことがあるんだ。先輩は私の身内だよ?それはね?世界中の華僑のグループが先輩を助けるってこと。凄いことなんだよ?」

「そんなの関係無いよ。俺は俺だ」

秀美「うん、先輩はそう言う気がした」

「秀美」

秀美「な、、名前呼びはずるいよ」

「戻って来いよ?」

秀美「うん、、うん!!」

「そしたらさ、結婚しよう」

秀美「、、、、」

「な?」

劉ちゃんはこれだけは返事をしなかったんだ。

劉ちゃんが眠りにつくのを見届けて、俺は部屋を後にした。

一つはっきり分かったのは、劉ちゃんが帰って来たら、俺がどこにいようと必ず連絡が来るってことだ。

だって、俺は「身内」なんだから。

だから俺は待ち続けられるんだ、劉ちゃんが元気に帰って来るのを。

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