「違う。それは違んだってば・・・・。わたし達は初めから一緒になれない運命だった。そんなことは初めから分かってた・・・。」
シリーズ第28話である今回のストーリーは、下宿の娘であるふたばのこんな言葉から始まります。
時代は平成2年。北東北の小さな臨港都市の私立高校で共に教育実習中だったそんなふたばと私は、一緒に行った銭湯の帰り道に若者が運転するシルビアから逃げるようにこのラブホに入っていました。
そもそもこのラブホは、今一緒にいるそのふたばと過去何回か利用していました。しかも今居る3号室はその中でもお気に入りの部屋です。
そして今回、ふたばに押し倒されたことによってゴングの鳴った第1ラウンドで、返り討ちでKOしてしまったふたばが私の上で腰を抜かせてしまっていました。
今回はここから始まります。今回の話は少し長くなってしまいますがご容赦ください。それでは・・・
私は先程、性も根も尽き果てて私の胸の上で眠りに落ちているそんなふたばに自分の胸中を明かしていました。
そんなふたばがいつ目を覚ましましたのかは分かりませんが、眠りに落ちていたはずのそのカラダが急に起き上がって「違う・・・それは違う」と言いながら泣いています。
「でも・・・わたしが流産した後あなたは・・・そんなわたしにプロポーズしてくれた・・・・・。わたし・・・・もう、それだけで良いの。あの時わたしのことあれだけ想ってくれるあなた・・・いや、まどかがいてくれただけでいいの。」
「でも・・・結局僕って、ふたばを不幸にしているだけじゃないのかって悩んで・・・・」
「でもね・・・。こんな男勝りのこんなオオオンナをオンナにしてくれたのもあなただったし・・・女の悦びってモノを教えてくれたのも・・・そう、まどかなんだよ。自信を持って・・・。」
「でも、結局はふたばを妊娠させちゃってる訳だし・・・・」
「もう・・・それは言わないで。でも、最後に一つだけ言わせて貰えば、わたしのお腹にまどかっていうオトコの遺伝子とわたしの遺伝子が結びついて、あなたとわたしの遺伝子が2分の1づつ受け継いだ命いう証が存在したってことが凄く嬉しかったの・・・。」
「でも、それは・・・」
「いいの・・・これだけは言わせて。その時、日に日に育つお腹の中の小さな命がいとおしくって、これがオンナの幸せなんだって思ったの。・・・・・結局流れちゃったけどね。」
「でも・・・僕はふたばに十字架を背負わせているだけのような気がして・・・」
「ちょっと聞いて。わたしね・・・・まどかに初めて出会った年の夏、アンタのバイクの後ろに乗って自動車学校通っていたでしょ?」
「うん。そんなこともあったね・・・。」
「その時のアンタの匂いが凄く心地よくって・・・・いつまでも嗅いでいたいような気にさせられたの。わたし、そんなの初めてだった・・・。今思えば、人の匂い・・・・いや、異性の匂いって、自分ににとってその人がどういう人かって本能的に判断する材料だと思うの。性的に合うのか合わないのか・・・・」
「それって・・・言葉とか感情以前の本能的なもの?」
「そうでしょ?わたし達ってそもそも哺乳類。本能的に遺伝子を後世に残そうするように代々受け継がれている動物。わたしがアンタの匂いがいい匂いって感じた段階で、わたしとアンタの性的波長があっていたってことね。・・・・・サイズ的なものを除いては。」
「そうだよね・・・綺麗事をいくら並べても、オトコとオンナの関係って結局はそうだよね。サイズっていうのは・・・・ちょっと複雑だけど・・・」」
「まっ、本来すべき生殖という生物の目的を遮って避妊するっていう行為は人間だけの行為だけど・・・・」
「それでさ、実は僕もふたばの匂い・・・・」
「アンタが変態なのは百も承知・・・・。制服フェチとパイパンは置いといて・・・実は重症の匂いフェチ。アンタの場合、性的に合うかどうかっていう話じゃなくってただのフェチ。」
「あっ、覚えていたんだ・・・。付き合い初めの頃、いつもふたばの体臭嗅いでて怒られもしたっけ・・・。」
「でもね、それってある意味正しいと思うの。いや・・・そう思いたいの。人間が動物である限り・・・。今でこそ人っていう動物は言葉っていうツールを使ってコミュニケーションとっているけど、そんなモノなかった太古の昔は目で見るモノと触れるモノ。それに音と匂い・・・」
「ふたば、その他・・味ってのもあると思うんだ。例えばキスの味とか・・・アレの時のアソコの味とか・・・。感じてくるほどに味が濃くなって・・・甘い味になってくるとか・・・」
「アンタ・・・・バカ?何・・・・本人を前にしてそんなこと言う?・・・・で、オトコってそんな風に感じるの?所詮人間の分泌物だよ。自分で確かめようとも思わないけど・・・。」
「仕方ないだろ。だってそうなんだから・・・・。それは紛れもない真実。」
「それはコッチもそうだよ。精子の味ってアンタので覚えたんだから・・・溜まっててヤりたい時、体調のいい時悪い時・・・みんな味や濃さが違うんだから・・・。アンタのだったら自分で出しちゃった時とか浮気の後なんかすぐに解っちゃうくらい。」
「精子の味ってそんなに変わるものなんだ・・・」
「最初は生臭くって吐きそうだったけど・・・どう言うわけかソレが慣れてくるんだよね。そしてあの栗の花の匂いも・・・一人でムラムラしちゃった時とか、あの臭い匂い嗅いでみたいって思うこともあって・・・あっ、わたしも動物以前に変態ね。」
「それって、僕たち人間という生き物が動物である限り避けては通れないというか・・・」
「そうなの。わたしが思うのは、その匂いってものがその相手が自分に合うかどうかを知らしめる重要なファクターになっていると思うの。でも、最初は鼻につく生臭い変な臭いと思ったものも慣れるにつれいい匂いに変わったり・・・・なんか難しいね。」
「それって・・・やっぱり精子の話?」
「アンタ・・・バカ?人がせっかく真剣にハナシしてるのに・・・まっ、結局そうなんだけど。」
「なあ、ふたば。僕さ・・・その人の匂いってモノに関して、実は前に凄くショックなことがあって・・・」
「何よ。」
「うん。それって僕が小さい頃の話で母さんの匂いなんだけど・・・その中に凄く安心する匂いがあって・・・・」
「それのどこがショックなのよ!」
「うん・・・・・。その匂いの正体を知ったのは姉さんから悩みを打ち明けられた時なんだ・・・。」
「もう・・・焦ったいね。いったいなんなのよ!」
「その匂いって・・・・実は・・・・ワキガの匂いだったんだ・・・・。」
「えっ?そうなの?・・・・・それってショックだよね。」
「ふたばって脇の匂いなんてほとんどしないでしょ?」
「うん。そうだけど・・・・でも、夏場で汗かく時なんては消臭スプレー使ったりもするけど・・・」
「多分、母さんもそのスプレー使っていたとは思う・・・。でも、どうしても僕にとってはいい匂いのワキガの匂いって消し切れないんだ。姉さんもワキの匂いがキツくって部活で着てた剣道の道着が臭くなっちゃって、悩んだ挙句手術で治療したくらいだもん。」
「そうなんだ・・・。あの麻美子さん・・・・そんな悩みあったんだ。」
「それで、僕にとってはいい匂いだったその匂いが実はそうではなかったと知った時、すごいショックだったって訳・・・・。」
「まっ、でもさ・・・その匂いがいい匂いとかそうでないかは置いといて・・・。ひとつ訂正したい事があって・・・」
ふたばはそう言うと私のカラダの脇にカラダをズラして横から抱きついた格好になりました。
「今更何を訂正したいって?」
「うん・・・。この前ここに来た時、散々議論して導き出した答え・・・・」
「もしかして・・・言葉ってヤツ?」
「そう・・・。何でも言葉にすれば伝えることが出来るってヤツ。」
「僕もソレはちょっと感じていたところだったんだよね・・・」
「言葉って、言って見りゃ文化的な道具だと思うんだけど・・・・。カラダに触れる事なく匂いも嗅がず・・・。その言葉っていうモノだけで自分の意思を伝えられる素晴らしい道具だと思うの。あとは、その表情や仕草でその他感情もその見た目で補完できるし・・・。」
「うん。でも、握手とか・・・・外国だといきなりハグしたりして身体的スキンシップを図る文化ってものもあるよ。」
「そうなの。でも考えて見て?その方がその相手と親しくなるのが早いと思わない?」
「僕ってさ・・・握手とかハグって、自分のカラダの大きさを相手に知らしめて、戦わずして勝敗決めるような意味合いから始まったって勘違いしてた節があるんだけど・・・」
「まっ、確かに・・・手の大きさなんてその典型だもんね・・・特に生殖活動については。」
「なあ、ふたば。それって散々ふたばに言われ続けて来たぞ。アレの大きさと手の大きさは比例するって・・・」
「あっ、それは失礼・・・。でも、オトコってアレの大きさだけじゃないってフォローもしておいたけど・・・」
「う〜ん・・・・なんか複雑。」
「なんかいいね・・・。アンタとのこんなたわいもないピロートーク。」
「そ、そうだね。でも・・・僕の足を挟んだふたばの股間からいろんな液体出ちゃってるみたいだけど・・・」
「でもさ・・・。アンタってもっと量多くなかった?前なんて、逆流するのが分かったぐらいなんだから・・・」
「い・・・いや・・・まだ1回しかしてないからじゃ・・・」
「まだ、ってことは本番はこれから?それじゃ、第2ラウンド入る?」
「でも、ふたばって第1ラウンドKOで腰抜かしちゃってるから・・・」
「プルルルルルルルル・・・・・」
ふたばのそんな提案に答えたところで枕元の電話が急に鳴り出しました。そして、ふたばが私の上で体を伸ばすようにしてその長い腕でその電話を取り応対します。
「あっ・・はい。そうなんですね・・・ちょっと待ってください。」
仰向けになった私の目の前に受話器を持つふたばの乳房がその重量で垂れ下がっています。そんな乳房のピンクの乳輪に小さなホクロを見つけた瞬間ふたばが問いかけてきました。
「ちょっと・・・。あと10分で宿泊料金に切り替わるんだって。このまま居ると休息料金プラス宿泊料金になっちゃうっていうんだけど・・・どうする?」
先ほど入り口で見た看板に掲示してあったホテルの利用規約に、22時以降については宿泊扱いとなって、その時間以降については泊まろうが帰ろうが宿泊料金となるようなことが書いてありました。
ちなみに、私たちは思いがけず半端な時間に入ってしまっていて、既に宿泊以前のご休息料金が発生しています。
「う〜ん・・・。ここ入って1時間も経ってないけど・・・宿泊ってほどでもないし・・・。ふたば、ここは一旦出て下宿の食堂で今の議論の続きしないか?呑みながらでも。」
「うん。そうだね・・・流石にさっきのシルビアも引き上げていると思うし・・・」
ふたばはそう言うとその電話にチェックアウトを伝え、その後二人とも身支度を整えているところ玄関のチャイムが鳴りました。恐らくここの管理人と思われる人が料金徴収に現れたようです。
私が料金を支払おうとそのドアを少し開けたところ、そこにいたのはいつもの爺さんではなく、キチンとした身なりの女性でした。
更に、私がその女性の顔を見た瞬間その女性も驚いた様子です。その女性とは、先程銭湯の駐車場でふたばにサンダルを譲ってくれた女性だったのです。
「あっ、先程はどうも・・・・・。あんな高価なサンダル頂きまして・・・・。彼女、凄く喜んでいます。ありがとうございました。」
私がそうお礼を伝えると、その女性が意外な事を言い出しました。
「喜んでいただいてこちらも嬉しいわ・・・。あっ、ちょうど良かった。今、この施設の利用者実態調査をやってて・・・・できれば協力して欲しいの。協力謝礼金は1000円・・・どう?」
「い、良いですけど・・・それって・・・」
「あっ、ごめんなさいね。わたしこう言うものなの。今、ここの運営を任されていて・・・」
その女性は持っていた手提げから名刺入れを取り出すとその中から名刺を1枚名刺入れの上に重ねるように差し出しました。
その名刺には遠藤幸子いう名前で、さらにその名前の上に司法書士と記されていました。
私は見た瞬間この女性がソレなりの人ということは分かりましたが、その時その司法書士という職業がどのようなものかは全く分かりませんでした。
「あっ、ご丁寧にありがとうございます。あの・・・僕は・・・」
「ソレはいいわ・・・そこの工業大学4年生のまどかさん。いや・・・今はまどか先生かな?」
「なんでそこまで・・・」
「ごめんなさいね・・・。あの娘・・・チエから聞いたの。あの娘、友達いないから話し相手になってもらったのがよほど嬉しかったのね。」
「そんなことで喜んでもらって・・・」
「あっ、そうだ。それでさっきの続きなんだけど、ちょっとした聞き取り調査なの。1000円割引って利用時間1時間に満たないあなた達には悪い話じゃないでしょ?5分少々時間もらえる?」
この時ふたばに了承を得た私は利用状況調査と称した室内の調査に協力しました。するとその女性は管理棟に電話して部屋の清掃を少し待ってもらうよう指示すると室内の備品の配置や使用数量などを調べ始めました。
「あなた達は物凄く良心的な利用をしていると思う・・・。備品に手をつけず、布団なんかも畳んである・・・。もう・・ひどい部屋はひどいからね。追加料金取ってやりたいくらい。」
「褒めていただきありがとうございます・・・」
「あと・・・お風呂使ってないのは、さっき銭湯に行ったから?時間がなかったから?」
「はい・・・両方です。あと・・・まだ1回目だったんでそれほど・・・」
その時隣にいたふたばに思い切り背中を叩かれました。そのふたばの顔は真っ赤です。
「あれ?コンドーム1つも使ってないのね?もしかして・・・避妊なし?」
「はい・・・。」
「もしかして・・大丈夫な日だった?」
「まっ、そんなところです。」
この時ふたばは、教育自習が終わった後に生理が来るようにピルを処方してもらっていました。すなわちその期間中の避妊は不要となります。
「あと・・・ここの利用は初めて?」
「いや・・・結構利用してます。この3号室に至っては数え切れません。」
「ん?クルマ変えたりした?」
「ちょっと事情があって・・・・・」
「このクルマでは初めてってことか・・・・ソレじゃ、この3号がお気に入り?」
「はい・・・何となく・・・」
「あら・・・それは残念。このすぐ前の国道なんだけど、今、国の方で4車線化工事の準備してて、沿線地権者に対して用地交渉してるの。それで、ここの敷地の国道に面した1号から3号室と管理棟の部分が道路用地になっちゃうんだって・・・。この前調べたら、いつの間にかここが道路区域になったっていう官報告示もあったところなのね。」
「その、官報ナントカって言うのは分かりませんが、今いるここって既に道路の区域なんですね・・」
「うん。道路法上そうなっちゃうみたいなの。まだ、買収に応じた訳じゃないのにね・・・・。それでなんだけど、今後このホテルをどうしようか検討してるって訳・・・・。このホテルって意外にも稼働が良くて、本当は事業反対したいところなんだけど・・・・」
「あの会長の会社・・・・公共事業に携わってる感じですもんね。」
「あら・・・・よく知ってるね。それで今、役所とそのことで交渉中なんだけど、その中で提示された条件は構外再築って言うやり方で、つまりは他に引っ越せって言うの。結局は立退ね。でも、ここに半分くらい土地が残っちゃうし、土地代は道路が引っかかる分しか出ないから・・・・・それで前から国の役人となんとかならないかって交渉して来たんだけど・・・。」
「それって困った話ですね。降って沸いたような話ですし・・・・」
「うん、そうなの・・・。このホテルって、見てのとおり古いでしょ?国道の4車線化計画ができるずっと前からここにあるの。まっ、経営者は何人も変わっているけど・・・・。何やるにしても金額次第かな・・・・?まっ、補償額算定の物件調査は明日なんだけどね・・・・」
「半分になってもここに残るっていう選択肢は考えているんですか?」
「うん・・・。でも、管理棟の立て直しもあるし・・・・。2階建っていうのも検討したんでけどちょっと厳しいわね。しかも4車線になると中央分離帯ができるでしょ?すると市街地からのクルマが右折で入れなくなっちゃうの。」
「それは不便ですね。現に僕たちも市街地方面から右折で入って来ました。しかも、規模が小さくなっちゃうとなると・・・使いずらくなっちゃいますね。」
「うん。それでこの裏の畑を道路として提供してもらえれば裏の市道からも入れるからそれもいいかなって思って国の役人と交渉していたんだけど・・・」
「裏から出入りできればそれはそれで素晴らしいと思います。国道が渋滞する朝なんて・・・渋滞しているクルマに道譲ってもらいながら出るのがとても気まずいですし・・・・」
「やっぱりそうだよね。日中なんかも交通量が多いし・・・。この前なんかここ出る時事故起こしちゃったお客さんもいて・・・・。お忍びだったみたいだったんで気の毒だった・・・。」
「そうですね・・・僕も日中このホテルに出入りするクルマ、結構見かけます。」
「うん・・・そうなの。最近客層が変わって来て、昔はあなたたちみたいな大学生が健全に利用していたんだけど、最近では大学生向けの下宿が減るに従ってそれも右肩下り・・・。でも、最近はお忍びが多くなってきたの。しかも朝から。」
「朝からですか?その人たちって普通に仕事している人ですよね?」
「そうなんだよね・・・・。でも、なぜか午前中はきちんとした身なりの人が高級車で乗り付けるんだけど、昼を過ぎると営業系のクルマが多くなるの。面白いでしょ?」
「それって・・・昼下がりのアバンチュール?」
「それってなんかの雑誌で煽ってたやつね・・・この前美容院で読んだ雑誌にもそんなこと掲載されてた・・・。でも、主婦のアバンチュールならまだしも・・・・最近、未成年者連れ込むおじさんも増えちゃって・・・」
「それって・・・・エンコウ?」
「そういう娘もいると思う・・・。でも、施設管理者としてはそんなプライベートまでは関与しないから、見なかったことにしてるの。まっ、時々警察から問い合わせもあるけど。」
「そういえば、さっき・・・・それっぽいの見かけました。」
「うん。そうだね。」
「分かるんですか?」
「分かるよ・・・。防犯上、出入りする車は防犯カメラで録画してるから・・・」
「それって・・・警察なんかに見せたりするんですか?」
「要請があれば・・・。でも、ウチが絡むもの以外のモノは画像が荒いものを見せるの。クルマのナンバーなんかがやっと読み取れるぐらいのヤツ。」
「と言う事は鮮明のもあるんですね。」
「うんもちろん。ナンバーはもとより、人の顔なんかばっちり写ってるやつ・・・。」
「そんなに鮮明なのもあるんですね・・・・。もしかして部屋の中も・・・・」
「安心して。ここのホテルにはそんなのはないから・・・・」
「このホテルには・・・ってってことは、他のホテルには・・・・」
「それは業界的にノーコメント。御想像に任せるわ・・・・」
そこまで話したところで、私の後ろでその会話を聞いていたふたばが身を乗り出して話に加わりました。
「この前わたしの大学の講義で、教授がコレからの時代プライベートというか・・・多分個人情報なんかを守らなくてはならない時代になるという話を聞きました。多分世の中そんな風潮になると思います。」
ふたばは私の頭の上から見下ろす角度でそう伝えるとその遠藤という女性は少し考込んだ様子で目線を下げました。そして再び目線を上げてふたばを見ると・・・
「それじゃ、裏口入店っていうのも重要ね。」
と言いながら、なぜか何かが吹っ切れたような表情になりました。
「そうするとここの出入りって・・・お忍びで裏口からってのが主流になるかもしれませんよ。夜ならまだしも、日中の出入りって・・・・やっぱり人目が気になりますし、営業車で出入りってことになると会社の看板背負ってることもありますし・・・。」
「やっぱりそうよね・・・。それにこの入り口のお城もどうにかしようと思って・・・」
「そうですよね・・・・いかにもですよね・・・あのハリボテ。せっかくの戸建ての施設なんですから・・・・残った部屋も含めてリゾートのコテージ風にしちゃうとか・・・・」
「あっ、ありがとう。すごく参考になった。足止めしてごめんね。」
そんな風な聞き取りをされてからふたばとクルマに乗り込みそのホテルを後にしました。
まさか予定外に立ち寄ったラブホでそんな聞き取りをされるなんて思いもよりませんでした。しかし、そんな立ち寄る理由となったのは銭湯帰りに私のアルトを煽ってきたあのシルビアでしす。
そして、そのラブホのヒラヒラを潜って道路に出る時、まさかとは思って周囲を見回しましたが、やはり私たちが出てくるのを出口付近で待っていたあのシルビアの姿はありませんでした。やはり痺れを切らしてどこかへ行ってしまったようです。
その後下宿近くのコンビニで酒類を買い込み、下宿の食堂でふたばと激論を交わしました。
いつも思いますが、気の知れた人との議論は楽しいものです。お互いの考えの違いを摺り合わせて一つの答えに達した時の達成感ってなんとも言えない充実感があります。
その内容は、ホテルで交わした人の匂いとかという感性にまつわる話から、いつしかあのホテルの今後をどうするかという話に変わっていました。部外者である私たちがいくら激論を交わしたとしてもどうなるものでもありませんが・・・・。
そしてその激論の中、買ってきたアルコール類がどんどん消費されて行きます。途中1回、近くのコンビニまで買い出しに出かけて更に議論を重ねていました。
そしてそんな楽しい激論をしていたところ、あるところを境にして私の記憶がなくなっていました。ちょっと飲み過ぎたようです。
途中、ふたばが空き缶を片付けていたり、使ったコップなんかを洗っている様子を見ていたような記憶だけは断片的に残ってはいますが・・・。
そしてその翌朝、カーテンから朝日に気づいた私は、ギギッ・・とベットが軋む中何か温かいものに抱きついた状態で目を覚ましました。
「あっ、おはよ。アンタ・・・ちょっと飛ばし過ぎ。ここ、下宿なんだからちょっとは控えてもらわないと・・・・」
その時私が抱きついていたものとはふたばの腰の部分でした。しかもお互いハダカです。
「えっ?ふたば?なんで?」
「あら・・・失礼しちゃうね。あんなにわたしのこと激しく突っついたくせして・・・。そこのゴミ箱見てよ!」
私がふたばに言われようにそのゴミ箱を見るとたくさんのティッシュで山盛りになっていました。
「ふたば・・・ごめん!記憶がない・・・」
「そうだよね・・・あれだけ飲めば・・・・。でも、酒飲んでもアンタのアレって元気なんだね。まっ、いつものことなんだけど。」
「ベットは大丈夫だった?」
この時真っ先に心配したのは、以前ふたばに押し倒された時にフレーム傷んだこのベッドのことでした。それ以来、ベッドの上で身動きする度ギシギシを鳴るようになっています。
「アレ?覚えてないの?アンタあの時、コタツをドア開かないよう部屋の入り口に押し付けて・・・・ベッドはダメでも、ベッドの脇なら大丈夫って。だからココでって、わたしに言ったんだよ。」
「ごめん・・・・。記憶がない・・・・。」
「まっ、ベッドの上でも下でもやることは同じだからそんなのはいいけど・・・・。でも、アンタの本性見たのはこれで2回目。1回目は私が妊娠したアレの時。今回、ピル飲んでなかったら2人目デキちゃってたかも・・・」
「ふたば、僕・・・・何回ヤった?」
「何回も・・・・。じゃ、何回もアンタの液体注入されたわたしのアソコ見てみる?」
「いや・・・・ちょっと朝からそれはヘビーかな?見たらもう1発することになるし・・・」
「わたしは良いわよ何発でも・・・・。でも、アレだけヤっといてアンタのソレ勃つの?」
「いや・・・・・」
その時、私の目にティッシュ山盛りのゴミ箱が目に止まりました。しかもその量はとても1回や2回の量ではありません。全く昨日といい今日と言い・・・・いったい何回ヤったのでしょう?もう、自分自身が信じられなくなってきました。
もし、オトコ一人が生涯排出する精子の量が決まっていたとすれば、それが枯渇するのは間近であるような気すらしてきます。しかもここは下宿です。壁も薄く、入り口のドアなんていわばふすまです。こんな事をやってるなんて筒抜けであるのは百も承知でした。現に、隣の1年生がエロビデを見ながら発電しているのなんても気配で分かります。
わたしは急にそんなことが心配になってきました。
「隣りの1年は?」
当然ここは本来女人禁制の下宿です。幸いこの部屋は1階の一番奥でしたが、そこに至る廊下や向かいの部屋は全て1年生の部屋でした。
「うん・・・1階の1年生は、どうやらコンパか何かでどっか行ってて、アンタが寝鎮まった後に帰って来たから安心して。」
「よかった・・・。4年生と、しかも下宿の娘がこんなことしていたなんてみんなに知れたら・・・・」
「どうでもいいけど・・・コレどうしてくれんの?」
そう言いながらカラダを起こしたふたばの胸の周りには私の付けたキスマークがたくさんついていました。
「もう・・・・しばらく銭湯に行けないじゃない!」
「ごめん・・・そんなつもりじゃ・・・」
「じゃっ、どんなつもりだったのよ!でも・・・今回、私もお返ししておいたからオアイコね。」
この時私は、壁にかけてあった小さな鏡で自分の上半身を確認したところ、鎖骨のところに残る唇の形の赤い内出血を確認しました。
「うん・・・・本当にオアイコだね・・・・・。」
その時ふたばがパンツを履き終えるとコタツの上に無造作に置かれたスケッチブックを手に取りました。これは、私が教育実習の時に使う手作り教材の材料です。
「これさ・・・、アンタがビール片手に飲みながら描いたスケッチなんだけど・・・」
そう言いながら開いて見せたその厚手の紙には、あのラブホを建て替えたことを想定した鳥瞰図が描いてありました。
「えっ?これを僕が描いたって?」
「やっぱりね・・・・。これも覚えていないんだ・・・。」
今度はスカートを履き終えたふたばがタンクトップに腕を通しながらそう言っています。
「この絵って、散々私とアンタの意見をぶつけ合って出来上がった大作なのに・・・」
私がそのスケッチブックをパラパラめくると、その結論に至るいろんな意見をぶつけた様子が見て取れました。
それは何かの絵を描いてそれを消したり・・・鉛筆でバッテンが付いていたり、とにかくそんな書き損じ的な絵を描いたページが10枚近くはありました。
「アンタさ・・・最終的な結論に至った時、自分て言ったんだよ・・・議論って気持ちいいねって。そして結論に至ったこの充実感は爽快だって。・・・・・アンタ、これ忘れちゃうなんて、人生損してるよ。」
「自分でもそう思う・・・・。でも、コレ・・・・物凄く現実的じゃないか?あれ?しかも、9棟揃ってる・・・・あっ、道路で潰れる3棟を裏の畑に移動したんだ・・・」
短パンを履き終え、シャツを着ながら遠目に見た私がふたばにそう問いかけました。
「だって・・・それも自分で言ってたじゃん。実現可能なものじゃないとダメだって・・・。実現できないものはただの絵空事だって・・・」
私が描いたのそ鳥瞰図はきちんと遠近法を用いたもので、国道側から見下ろしたような絵柄です。しかも、ラフスケッチのような絵柄には国道も4車線化され中央分離帯まで表現されていました。
その鳥瞰図というものは、書いて字の如く鳥の目になってそれを見た場合どんなものになるのかを描いた完成予想図になります。今考えても、それを自分が描いたなんて信じられないような完成度でした。
その時です。下宿の玄関の引き戸が開く音が聞こえて来て、下宿のおばさんであるふたばの母親が食堂に入っていく音が聞こえました。
「やばっ・・・・もう、そんな時間?」
この下宿は土日食事が出ないのですが、金曜の夕食を片付けるために下宿のおばさんがやって来たようです。
その時、部屋の壁掛け時計の針は朝の6時を回っていました。
「でも・・・昨日の片付けは私がやっちゃったし・・・・」
ふたばがそう言った瞬間、廊下を歩く足音が近づいて来てドアがノックされました。
「ふたば・・・いるんでしょ?片付けありがとうね。」
それはまさしく下宿のおばさんの声です。どうしてか分かりませんが、ふたばの母親であるおばさんが直感的にふたばの居場所を突き止めていました。
「私に任せて・・・・」
ふたばはそう言うとドアに押し付けてあったコタツをどかし、先程のスケッチブックを片手に抱え空いた手で髪を整えながら部屋のドアを開けました。
「ねえ、ねえ・・・これ見て?。コレ、徹夜で仕上げたの。昨日、銭湯で知り合いになった人からこのラブホが道路の拡幅でひっかかちゃうっていう話聞いて、それをコイツの教育実習の教材にしようってことになって・・・・気がついたら徹夜しちゃってた・・・。」
ふたばはそんなことを言いながら、部屋の中を覗かれないように自分の母親を押し返しながら食堂まで引き返させました。今、この部屋の中を見られたら変な誤解を受けてします。
でも・・・誤解でもなんでもないその部屋は夜の激しさそのものを物語っていて、とても人に見せられる状態ではありません。
半渇きのティッシュ山盛りのゴミ箱に、乱雑な寝具類。それに、栗の花の匂いが充満した室内・・・。とてもこんな状況見せられません。
そして、二人の後を追うように少し遅れて行った食堂では、ふたばとおばさんが何やら議論をしていました。
ふたばの目の前で、おばさんはそのスケッチブックを手に取り遠目に見たり近づけて見たり・・・・。そして、そのスケッチブックを最初のページからペラペラ見始めました。
「へえ・・・コレって本当に授業で使ってるんだね・・・。」
そうです。このスケッチブックって教育実習で実際に使っているものです。授業中、教科書だけでは飽きてしまうのと、言葉だけではうまく伝えられないものを実際の事例などを題材に手書きでまとめていました。
「でも・・・コレって道路が広がって最終的にこうなるって言う・・・いわば想像図でしょ?これに至る過程なんかも高校生に説明するんでしょ?」
私はおばさんの言ったそんな素朴な質問でハッとしました。そうだ、コレを題材にすれば・・・。
恐らく、その道路事業にはやらなければならない理由とか、工事が終わるとこうなるとかそんな青写真があるはずです。コレを題材に私の担当する道路計画の事例として説明すれば、あの生徒たちも興味を持ってくれるかも・・・です。
そして工事が始まってから終わるまでの各段階には私たち一般人の知らないいろんなこともありそうです。しかも工事場所が学校近くなので現場見学なども出来そうな感じです。
でもその工事内容は自分でも分からない事ばかりでした。この時、この土日で何をどう教えることが出来るのか調べなければならないことを悟りました。場合によっては来週、役所に出向かないと分からないこともあるかもしれません。
そんなことを考えていた時、スケッチブックを見ていたおばさんがそのスケッチブックをパタンと閉じて椅子に腰掛けました。
「あのモーテルね・・・・、母さんが父さんと付き合ってた時良く使ってたんだよね・・・。」
その時、自分の娘を目の前におばさんが若い頃の思い出話を始めました。
今では死語になってしまったそのモーテルという呼び名は、その昔そういうホテルがモーターホテルと言われていた時代を知っている人が使う名称です。
「父さんね・・・・、うちの下宿生だったの。そしてこのわたしがあそこ(市内)の短大に入ったばっかりの頃出逢ってね・・・・。初めてはそこの3号室・・・・。まだその3号室ってあるのかしら・・・」
その短大とは、先日妊娠の発覚した私の友人の彼女、つまりマコトの姉さんであるアキラの卒業した学校となります。
「えっ?3号室って・・・・そのホテルの、ですか?」
「うん。あのモーテルのお気に入りは3号室だったけど、この下宿に住んでた大学生だった父さんも3号室だったのね・・・・。いや・・・こんなおばさんでもあのころは若かったんだね・・・・。いけないと思いつつ夜中にこっそりと通ったもんだ。」
そう言いながらおばさんが笑っています。ふたばの父さんは現在長距離トラックの運転手をやっていて滅多に会うことはありません。でも、チラッと見たことのあるその姿から高身長であることが伺えました。
「3号室って・・・このオトコの今の部屋?母さん・・・・今までそんなこと一度も・・・。」
その時ふたばが私を指差しながら驚いた様子でおばさんに詰め寄りました。
「まっ、親が親ならって話だね・・・・。ふたば、母さんさ・・・21でアンタ産んでるでしょ?それで父さんがこの下宿から一度も地元戻らないでここに婿入りしたってこと。」
「じゃ、父さんが大学卒業前に・・・・下宿の娘を妊娠させたってこと?その時わたしがデキちゃったってこと?」
「うん。そうなんだよね・・・。母さんが短大入学したと同時に大学入学のために父さんがここの下宿生になって・・・・。まっ、一目惚れっていうヤツ。アンタと一緒ね。」
その時私の目とふたばの見開いた大きな目がばっちり合いました。ふたばの顔は真っ赤です。
「母さん・・・ちょっと、いい加減なこと言わないでよ!」
「あっ、ごめんね・・・・。でも、アンタの場合は行き違いだったよね・・・」
私とふたばは同じ年に大学生になっていて、初めて出会ったのがふたばが引っ越しするで前日でした。それでふたばは私の実家近くの大学に入学しています。まさに行き違いです。
「でも、その・・・・赤ちゃんデキちゃったって時、お婆ちゃんってどうだったの?怒らなかった?」
「それがね・・・・こんな大きな娘を好いてくれる人がいたなんてって言って喜んでくれたの。しかも、父さんが農家の次男坊で婿入りしてもいいって話になっていて・・・」
「そう言えば・・・お爺ちゃんも婿養子・・・・」
「ウチって代々婿養子で繋がってるのね。でも・・・義父さんと母さんって仲の良い夫婦だったから、今でもあの世で仲むつましいでしょうね・・・」
この時私は、そのおばさんが遠くを見るような目でそんな事を言っている姿を見ながら背筋が寒くなる感覚に襲われていました。
まさに私のやっていたことがふたばの父親がやっていたことと同じだったことに他ありません。
私とふたばは大学1年の夏休みに付き合い始め、途中期間は空いたもののふたばの成人式の直前に再度付き合って、その時ふたばを妊娠させていました。もし、その子が流産せず生まれていたとすればそれはふたばが21歳の時になります。
でも、ふたばの母親が結婚に至った経緯と違ったことは2つ。
私とふたばが長期休みの間しか逢えないことと、そして私が長男であったこと。
現に、ふたばが流産したときに見舞いに来た私の母さんが言っていました。もし私が長男でなかったら、ふたばの実家であるこの家に婿入りさせても良いと・・・・。
このことが良かったのか悪かったのか・・・・単なる運命の悪戯だったのか、この後一生悩むことになります。
そしてこの後、ふたばとファミレスでモーニングを食べていました。なぜかふたばの母さんも一緒です。
「いや〜しかし、あのクルマって後ろの座席狭いのね。軽自動車ってみんなそんななの?」
下宿からファミレスまで10分少々の間後部座席に座ったおばさんがそう言っています。その時ふたばは助手席でしたが、シートを一番後ろまで下げていて、おばさんは私の後ろでした。
助手席に座るふたばは身長185cm。そして、軽ライトバン独特の小さな後部座席に小さくなっていたおばさんはどう見ても170cm以上はありそうな感じです。
ちなみに私は165cmでしたので、一緒にいるそんな状況を周りから見れば私のことがものすごく小さく見えると思います。前にふたばと私が並んだところを見た友人の織田からカボチャワイン(今から40年くらい前のアニメです。)なんて言われてもいました。
そしてその朝食中、おばさんの高校生だった頃の恋バナとかふたばの小さい頃のエピソードなんて聞きながら、なぜか居心地の良い気分になっています。
その中で、中学生だったふたばに下宿生がちょっかいを出して腕をへし折られた話が出て大盛り上がりしました。結局、発育の良かったふたばの胸を後ろから鷲掴みに触ったことがその本人の逆鱗に触れ、その手首を掴んで捻ったら骨が折れたという話です。
ふたばはそもそも空手をやっていて、どうすれば骨が折れるとかを把握していたかと思いますが、故意にやったのか偶然そうなったのかは怖くて聞けませんでした。
その下宿生は女子中学生を触った挙句、その女の子に腕を折られたなんて口が裂けても言い出せず、結局バイクで転んだことにしていたそうです。
その後3人で下宿に戻り、私は荒れ果てた部屋の片付けをしていました。その時冬物の服の中に、昔彼女だった理央のGパンを見つけました。以前、ひょんなことから持ち帰ることになってしまったそのGパンはサイズも小さく、ふたばのヒップとは比べ物にならないことに今更ながら気付かされていました。
ちなみにその理央という娘は中学校の時の同級生で、現在女性向けカー雑誌でアイドル扱いされている女性です。
さらにタンスの奥から出てきたのは、最近訪れてきた麻美子姉さんにも発見されてしまったマコトのセーラー服です。せっかくですのでハンガーに掛けて干しておくことにしました。
そのセーラー服を改めて見てみるとどこも傷んでいないようでしたが、一部スカートの左太ももの付け根あたりが何かに擦れて光っているような感じでした。でも、見れば見るほど見惚れてしまう理想的なセーラー服です。制服フェチである私は、コレだけでご飯3杯いけそうな感じです。
この時そのハンガーの上に掛けてあった時計を見ると9時半を回っていました。昨日、舞衣さんとお墓掃除のために10時に待ち合わせていたので、約束の場所である運動公園駐車場へクルマを走らせました。
すると既に約束の本人のクルマがボンネットを開けた状態で停まっていて、その脇に私が壊してしまったブルドッグを乗せた車載トラックが停まっていました。
私がその舞さんのEP71の脇にクルマを留めると、そのボンネットの陰から舞衣さんとその弟である良一さんが顔をのぞかせます。
「あっ、おはよう。どうだったこのアルト。」
開口一番にそう声を掛けてきたのは舞衣さんでした。
「はい。凄く速くって不思議なクルマです。このクルマの正体って・・・」
そう言う私の疑問に答えたのは、私の義父さんがちょっと面白いクルマと表現したこのアルトの事情を知ってると思われる良一さんでした。
「不思議だよね・・・・。やっぱり不思議だよね、このクルマって。何せ、サンコイチだから・・・・」
「ん?サンコイチ?」
「まっ、3台のクルマを掛け合わせているってこと。まず、車体のベースはウチ(小林車体)で使ってた代車なんだよね。2速オートマで・・・・」
「えっ、2速って・・・・3速じゃなくって?」
「うん、2速・・・・。メーカーも頑張って軽にオートマ載せようと頑張ったんだね。コストかけないで・・・とりあえずオートマって。」
「なんか信じられませんよね・・・・今じゃ、そのオートマも4速が出てきたって言うのに・・・」
「うん。オートマの技術の進歩って物凄いものもあって・・・・。スバルなんてECVTって言うものを世界初で実用化しちゃうし・・・・」
「ECVTって、金属ベルトで駆動してるんですよね。友達が乗ってて、初めて運転させてもらった時なんか異次元的な加速感でした。」
その時私は、以前バスガイドの夏帆が所有するレックススーパーチャジャーを運転した時の感想をそう伝えました。
「あっ、アレはね・・・・。あれはあれで技術的に素晴らしいんだけど・・・・クラッチが電磁クラッチで・・・。」
「そうですね。発進するときとか車庫入れみたいな時に少しギクシャクしました。それって、トルクコンバーターとそのECVTが合体したら劇的に良くなる感じがします。」
その時私は、この技術が20年後オートマチックトランスミッションの主流となることなんてこの時全く考えていませんでした。この時は、なにか変わった技術の出現という認識です。
そして、その良一さんが話を続けます。
「その代車のアルトなんだけど、オートマが2速のうえにエンジンの力が無くって・・・貸したお客からクレーム入るくらいでね。でも、そんなエンジンも無理が祟って調子崩してね・・・。調整はしてたんだけど、今度は貸した先でエンコしちゃって。」
「それで・・・・代車引退なんですね。」
「うん。そうなんだけど・・・・・」
その時、隣で話を聞いていた舞衣さんが話に加わりました。
「わたしさ・・・・、その話義父さんから聞いててね。代車のアルトをなんとかしなきゃって時に、お客さんでラリーやってた人がラリー中にワークスを谷に落としたって人がいて、それ引き上げたって話聞いてね。」
「うん・・・あった、あったそんなハナシ・・・」
隣の良一さんはそう言って相槌を打ちます。
「その時ね、わたし冗談で2台くっつけちゃえばって言ったんだけど・・・まさかそれを本当にやるとは・・・。」
「アレ・・・舞衣が父さんにけしかけたんだ・・・・」
「わたし、別にけしかけてないよ・・・・。ただそうすれば面白いかなって思っただけ」
「でもさ・・・・ここにもう一人マニアックな人が加わってこのアルトが誕生したんだ。」
「もしかして・・・・それって、僕の義父さんですか?」
「そうなんだよね。麻美ちゃんがぶつけたブルドッグの板金やってた時、様子見に来た麻美ちゃんの義父さんが谷から引き上げてひしゃげたワークス見て何か閃いたみたいで、次の日曜日車載車貸してくれって言ったんだ。」
「えっ?義父さん・・・・何か持ってきたんですか?」
「うん。それって、その時盛んにやってたワークスのワンメークレース車両。どこかのチューニングメーカーがテスト用にエントリーしてて最終的にエンジンブローしたヤツなんだって。そして、その車両にそもそも付いていた新車外しの内装一式も・・・。」
「良一・・・・。わたしさ、ニコイチって聞いていたけど・・・・サンコイチって本当だったのね。」
その良一さんの話によると、そのアルト3台をバラバラに分解して使える部品を掛け合わせて、車体の痛んでいない代車のアルトに集約する方法を選択したそうでした。しかし、タダでは済ますことのできない私の義父が、役所が半ドンとなる土曜日と次の日曜日に、今では理央がAE92を製作しているピットで数ヶ月作業したとのことです。
最終的には代車のアルトから車体とエアコン、ラリーで使っていた車両から足周りとエンジン。ワンメーク車両からミッションや排気系、またロールバーや新品の内装など頂いたようです。
また、ラリーで使っていたワークスはミッションのギア比がローギアになっていて街中での使用は少々厄介であるということで、2速と3速がクロスしているワンメーク車両のモノを使用したとのことでした。
さらに私の義父さんは、そのクルマが組み上がってからそのクルマを自宅車庫に移動させ、偽装とも言えるインタークーラーの移動や外装の仕上げやその他も諸々をやったようです。後で、その諸々が何かが判明します。
「それで、このクルマって最終的に誰所有なんですか?」
その時私は、まるで自分のおもちゃのようにそのアルトを改造する義父のことが心配になっていました。
「うん。名義は最終的に風谷さんだね。あの人って几帳面だから、クルマバラした時、その部品を綺麗にしてジャンル分けしてタグ付けしたんだよ。結局、その部品がそのまま売れて、綺麗だったんで値段もそれなりで・・・・結構おいしかったんだよね。」
「それで、クルマはお礼ってことですか?」
「まっ、そういうこと。スクラップにすればそれまでだったのに、部品にしたら金になって・・・おまけに残った車体も、ちょうどワンメークでクルマ潰したチームにきちんと売れたし・・・・」
「えっ?谷に落ちた方は?」
「アレは流石に解体屋に引き取ってもらったよ。しかし、ひしゃげた車から部品外すのって大変だった・・・アレはちょっとやりたくない作業だね。」
「すいません。義父が変態で・・・」
「まっ、ちょうど暇な時期でおまけに楽しかったんでよかったんだけど・・・。で、キミの義父さん、この大人のオモチャ一通りいじり終えた時にまた何か閃いたみたいで・・・このブルドッグもなんかヤルみたいで・・・・。」
「また・・・・なんか、企んでるんですね・・・」
「ちょうどそんな時、君からエンジンブローさせたって連絡もらったんだよね。その時なんかすごく嬉しそうだった。仕事増やしやがってって・・・ニコニコしながら。」
良一さんはそんなことを言いながら、車載車の荷台に積載されたブルドッグと呼ばれているシティーターボⅡを見上げました。
「仕事じゃないんですけどね・・・・。ただの趣味なんですけど・・・・」
「いや・・・あれは趣味の領域超えてる。昔、どこかのメーカーでテストにでも携わっていたのかな・・・?」
「僕も詳しくは分かりませんが、メーカー直系の研究所に友達がいるみたいで、部品なんかが廻ってくるようです。そもそも僕のハチロクに載っているAE92の後期型エンジンもそんなような感じでした。」
「でも、麻美ちゃんの義父さんって・・・・普段はごく普通の公務員なんだよね」
「はい・・・しかも、クルマとは全く関係のない事務作業やっています。」
するとその良一さんが何かを思い出したようです。
「あっ、そういえば・・・。このアルトのターボラグを消す何かを調べてて、海外用のラリーで実戦投入に向けて研究してる何かを、面白がってこのアルトに付けたって言ってたけど・・・なんって言ったけかな・・・?」
「またなんかやったんですね・・・・義父さんが・・・・」
「あっ、そうだ。なんとか失火システムって言って、アクセル戻した直後にブーストが下がらないようにエキマニ内で点火させるって言ってた・・・・」
「失火と点火って真逆じゃないですか?」
「うん・・・そうなんだけど・・・アクセル戻した時に何秒か点火プラグを失火させてそのまま生ガスをシリンダー通過させてエキマニ内に入れた2次エアで点火させるって言ってたけど・・・実際にどうなるかは知らないんだよね。」
「今もこのアルト乗って来ましたけど、ものすごいターボラグはそのままでした・・・」
「あっ、そういえば・・・どっかにスイッチがあるって・・・」
そう言いながら良一さんがアルトのドアを開け車内を覗き込みました。
「あっ、コレかな?まどかくん、エンジン掛けてこのスイッチ押してみて」
そう言われた私は運転席に乗り込みエンジンを始動させました。
するとエンジンは通常通り始動し、決して静かとはいえない排気音を奏でています。そして私は、ラジオの脇にある通常時計がある部分に何事もなかったかのようについているスイッチを押しました。
その途端排気音がボロボロボロ・・・・と言う音からバリバリバリバリ・・・・と言う音に変わり、試しに空ぶかししたところエンジンの回転が下がるタイミングでパンパン・・・と言うバックファイヤーのけたたましい音が轟きました。まるで、拳銃の発砲音みたいな音です。
するとクルマの後ろ側にいた舞衣さんが突然私の所に現れて息を切らせています。
「な・・・なんか、マフラーから火・・・・吹いたんだけど・・・」
「えっ?・・・・」
私と、助手席から覗き込んでいた良一さんの目が会い、お互い固まってしまっています。
「コ・・・コレ、やめとこうか?得体の知れないモノが出現するってことで・・・・」
「はい・・・義父さんに詳しく聞くまで封印ですね・・・・・。」
私と良一さんは、そのシステムについていろんな推測も交えた会話をしながら、舞衣さんの家のお墓を掃除するために道具を持ってお墓まで歩いて来ました。
すると、私たちを先導するように先を歩いていた舞衣さんが、どことなく他と雰囲気の違うお墓との前で立ち止まりました。
「えっ?お墓、綺麗・・・・。草、むしってあって・・・お花まで。」
小林家之墓と書いてあるお墓の前で舞衣さんがそう言いながら固まっています。両親の命日に来る度草が茂っていて、毎年草むしりから始めると聞かされていたので覚悟はしていましたが・・・その草が綺麗にありませんでした。
「良一・・・・もしかして、麻美ちゃんってこのお墓知ってる?」
「うん。この前、麻美ちゃんがこっちに来る時教えたかも・・・・。そんなつもりじゃなかったんだけど・・・。あっ、アレ・・・誘導尋問だったのかな?。」
この時答えた良一さんに何か心当たりがあるようでした。ということは、ここを綺麗にして花までお供えしたのが、先日この街を訪れていた麻美子姉さんであるのは合点の行く話です。
そしてその低めで横長の大理石で造られたその墓石の脇に、何かその場所にそぐわないオブジェのようなものが墓石の基礎部分にボルト留めされていました。
「これって・・・・エンジンのカムカバーですよね。」
「うん。これって父さんが大好きだったベレットGTの・・・・でも、エンジンがOHVだったから、正確に言うとタペットカバーだね。」
ISUZUと刻印されたそれは赤色に結晶塗装がされています。しかも30年近くそこにあったとは思えないくらい綺麗なモノでした。でも、所々に塗装のタッチアップの跡があって、それは恐らく舞衣さんの作業かと思います。
私は、ベレットGTというと1600のDOHCエンジンというイメージがありましたが、それは後期モデルのGTーRというグレードで、舞衣さんのお父さんのベレットは初期モデルのOHVエンジン搭載車だったようです。
「これ・・・わたしの義父さんが特注で塗装したんだって。そしてそこにボルト止めしてある。」
「それって・・・・」
「うん・・・。わたしの本当の父さんの形見。事故で潰れた車体の中で唯一無傷だったエンジンから外したものなんだって。大好きなベレGで、旅行好きの夫婦が揃ってどこにでも行けるようにって・・・義父さんが。」
私はその時、遠くを見つめるような表情の舞衣さんになんて言葉をかけていいのか見当もつきませんでした。
その後特に会話もなく作業が進み、3人でその大理石を磨き上げた時舞衣さんが囁きました。
「しかし、麻美ちゃん・・・よくこのお墓分かったね・・・」
「そりゃそうだろ・・・こんなタペットカバーついてるお墓なんて世界中探してもここだけだから・・・。」
使った雑巾を絞りながらそう言ったのは良一さんです。
全くその通りです。故人が好きだったものを石材でオブジェ風にしたものはたまに見かけますが、ホンモノをオブジェにしてしまうとは・・・。
そして最後に麻美子姉さんが供えた花に自分たちが準備した花を加えて、線香も供えてお墓を後にしました。
その後お墓から霊園出口に向かう途中、そのお墓を振り返るとそこだけに線香の煙が立ち込めていて、供えられた花によって一段と輝いているように見えました。まるで感謝でもしているかのように・・・・。
それから駐車場に戻るとそれぞれ3台の車に分乗し、大盛りカツ丼が評判の横綱食堂に寄ってそれぞれカツ丼を平らげ、これから高速を使って私の実家のある街まで約4時間近く運転する良一さんとブルドックを乗せたの車載車を見送りました。
「結構、2tの車載車って疲れるんだよね・・・・」
その遠ざかる車載車をみながら舞衣さんがそんな独り言を言っています。
「ねえ・・・これから海岸線走らない?それに、昨日紹介した教え子の店にも。」
それまで遠くを見ていた舞衣さんが急に私に視線を向けるとそんなことを言い出しました。
「いいですよ。舞衣姉さんのご所望とあらば・・・どこまででも。」
「それじゃ、わたしに付いて来て・・・」
舞衣さんはそう告げると自分のEP71へ乗り込みます。
そして私は言われるまま舞衣さんの運転するEP71に付いて行きました。
その海岸線に向かう道路は、地域的な地盤沈下の影響で所々道路下を横断する暗渠なんかが盛り上がったようになってました。しかもそれが所々ジャンプ台みたいになっていて、そんなジャンプ台をこのアルトが何事もなくクリアして行きます。
一方足回りがジムカーナ用になっていてる舞衣さんのクルマは、後ろで見ているだけでもその硬さが分かります。一見平坦な道路でも常に車体が上下に振動しています。
その後、舞衣さんに連れて行かれたのはフェリーターミナルの展望デッキでした。
「ねえ・・あのアルトって猫脚だね。段差で全然車体が暴れない・・・まるで路面に吸い付いているみたい。ミラーで見ててそんな感じだった・・・」
そう言う舞衣さんは、胸の高さの手すりに寄り掛かるようにして私に問いかけました。
「この足回りってグラベル用だそうです。だから車高も高くってストロークもあるからあんな感じだと思います。」
「うん・・・わたしのEP71ってジムカーナ用だから、その仕様ってそれと正反対だね。さっき、後ろ気にしててマンホールの段差踏んじゃって・・・クルマ壊れるかと思った。」
「それ、後ろで見てました。クルマが吹っ飛んで、とっ散らかってるところ・・・。でも・・・舞衣さんが以前やってたダートラのKP61もこのアルトみたいな感じだったんですか?」
「アレって、基本的にフラットダート用だからあんな猫脚みたいじゃなかった・・・。」
でもその時、そんな他愛のない無い会話の中で、その舞衣さんからどう言う訳か心ここに在らずという雰囲気が読み取れました。
「舞衣さん・・・・。どうかしましたか?」
私はそんな舞衣さんにそう問いかけました。
「ねえ、まーくん。あの日・・・・あの終業式の日、工藤さんをハチロクで学校から連れ去った後、ここまで送って来たんでしょ?」
舞衣さんは私の問いかけに、遠くの漁船を見ながらそう聞き返しました。
「はい。その通りです。今では早坂ですけど・・・」
「寂しくなかった?これから逢えなくなっちゃうんだよ。」
「そりゃ寂しいですよ。これからって時にですからね・・・・」
今から遡ること1年と2ヶ月前、私は母親の再婚により北海道へ渡るマコトをここで見送っていました。そして、フェリーが見えなくなるまで甲板で身を乗り出しながら手を振っていたマコトの姿を今でも鮮明に覚えています。
「工藤さんってバスガイドになって戻ってきたけど、もし・・もしだよ、ずっと逢えなくなっちゃったらどうした?遠距離恋愛ってヤツしちゃう?それとも自然消滅?」
「舞衣さん。答えとしてはどちらもハズレです。その時の僕の頭には再会することしかありませんでした。つまり、逢えなくなるってことは全く・・・・」
「それでずっと待ってたって訳?浮気とかしなかった?オトコって・・・・オンナいないとダメでしょ・・・いろいろと。」
「それは我慢してました。ちょっと誘惑に負けそうなこともありましたけど・・・・」
「本当に?」
「い・・・いや、マコちゃんが帰ってきてから1回だけしちゃってました・・・・」
私はこの時嘘をついていました。とても1回ではありません。でも・・・・待っている1年間だけはキチンと自重していましたが・・・。
「何?帰ってきてから外でしちゃったってこと?」
「安心しちゃったんですかね・・・・」
「でも、あの時・・・・工藤さんの2年生の終業式の日の人さらい事件って結構有名で・・・その人さらいの赤いハチロクも話題になって・・・・。」
「そんなに有名だったんですか?でも、赤いハチロクなんてゴロゴロいるんじゃないですか?」
「でも、それからチョット調べてみたの。そうしたら、それってどうやら大学生らしいって・・・・なんかバスガイドと繋がりがあるってまでは調べ付いたんだけど・・・・」
「僕の知らないところで僕を探していたんですね・・・」
「うん・・・。多分、元警察の麻美子さんだったらすぐにしっぽ掴んだんでしょうけど・・・一般人じゃそれが限界。でも、凄く後悔してる。大学行って聞いてみれば分かったんじゃないかって。今考えれば本当に詰めが甘かったわ・・・」
「でも・・・探し当てたところで・・・」
「うん・・・そうだよね。探しあててどうしようとしたんだろうね。多分、正体の分からないところが魅力的って言うか・・・・わたしってオトコ知らなかったでしょ?そんな誰もか分からないキミのことが好きだったのかも・・・」
「すいません・・・・正体はこんなオトコでした。」
「もし・・・・もし、だよ。その、工藤さん待ってる1年の間にわたしがまーくんを探し当てて誘惑したとすれば・・・・・どう?」
「う〜ん。負けちゃったでしょうね・・・・。そんなおっぱいで誘惑されたら、オトコなんてイチコロでしょ。」
そう言いながら私は手すりに乗った舞衣さんの乳房をチョンッと突っつきました。
「でも・・・運命のイタズラですよね。僕って、つい最近まで教育実習を地元の母校で受ける予定だったんです。でも、直前になってその学校から受け入れ拒否にあって・・・」
「何かあったの?」
「はい・・・。麻美子姉さんの・・・その・・・レイプ騒ぎの時、犯人を病院送りにしちゃって・・・その時、この手首に手錠かけられた身なんです。」
「なに?それって逮捕ってこと?」
「はい・・・そのとおりです。」
「まっ、僕も殴られて怪我してましたし、状況が状況だっただけにすぐ釈放はされましたが・・・どこまでもそのウワサってものが付き纏って・・・。」
「それで優子ちゃんの時・・・麻美ちゃんはそのウワサってヤツの対策を優先したんだ・・・。」
「本当に噂って厄介ですから・・・。麻美子姉さんはそのウワサってものに本当に苦しめられたと思います。僕はオトコですからいいんですが・・・。だから、麻美子姉さんには本当に幸せになってほしいと思っています。」
「ウワサってものは本当に厄介ね・・・。わたしも麻美ちゃんに幸せになってほしいと思ってるの。でも、麻美ちゃんって、自分のことより他を優先しちゃうでしょ?優子ちゃんの時のウワサ対策とか・・・」
「でも、その優子ちゃんの時のウワサってものをなんときゃしなきゃって真っ先に言い出したのは意外にもあのマコちゃんなんです。」
「えっ?工藤さん?」
「あの・・・・マコちゃんも・・・・その・・・そういう経験したみたいで・・・。」
「あ・・・の・・・工藤さんが?」
「そうみたいです。詳しくは話せませんが・・・。しかも、僕に今すぐフォローしろって。変な色に染まりかけてる優子ちゃんのカレシになって僕の色に染めてほしいって・・・・」
「そっ、それで・・・・まーくん、平気?自分の彼女でしょ?自分のカレシを他のオンナのカレシにしちゃうとか・・・」
「少なくともマコちゃんは僕の想像の絶する辛い思いをしたはずです。自殺まで考えたって打ち明けてくれました。そんな彼女を突き放すことなんてできません。彼女の身になにがあろうともマコちゃんはマコちゃんです。そんな彼女がそこまで考えたんです。」
「工藤さん・・・そんな・・・」
「マコちゃんがそんなことになって入院していた時、マコちゃんのお母さんは変なウワサが流れる前に学校にマコちゃんが婦人科系の病気で入院してるって情報入れたそうです。」
「そうして部活のみんなが身がねなく病院にお見舞いに来れるようになって、マコちゃん自身の気持ちが紛れたみたいです。しかもそのみんなが婦人科の先生に子宮頸がん予防の講義を受けたり、普段産婦人科ってなんか近寄り難い病院が身近になったって言われたって。」
「そうだよね・・・・産婦人科って言うと高校生にとって好奇の対象だよね。」
「その時、病院の先生からも感謝されたって・・・婦人頸がんのハナシなんかも真面目に聞いてもらったって。それがすごく意外だったって、マコちゃんが話していました。もう、その話聞いた時、僕がマコちゃんを幸せにしなくて誰がするんだ・・・なんて使命感が湧いてきました。」
「ウワサってそいうものなんだよね・・・・。全く否定したりすると勘繰られたり、全く違ったことを言うと信じてもらえなかったり・・・・。うまく情報をコントロールするには半分以上真実を混ぜ込まないと・・・・」
「そうですよね・・・・。全く関係ない人でも、違う人から同じ噂話聞いた途端に真実味が増しますから・・・たとえ、それが興味本位の尾びれがついたモノであっても・・・。」
「でも・・・まーくんの母校がそのウワサってものを嫌ってまーくんを拒否して、結果的にまーくんがウチの高校に来たって事でしょ?」
「なんか・・・提携校がどうのって話は聞いたことがあります。多分、それがあっての校長先生の配慮だったのかと思います。」
「それでか・・・・。最初聞かされていた実習生の人数と実際に来た実習生の数が合わなかったんだよね・・・」
「すいません・・・・僕のことで、学校をバタバタさせちゃったみたいで・・・」
「まっ、それはいいんだけど・・・。噂と言えば、あの工藤さんが2年生だった時騒然となったことがあって・・・」
「マコちゃんとその噂って・・・」
「工藤さんってさ・・・2年生の冬に、胸が急に大きくなっちゃったんだよね・・・・。それがどうしてかって、いろんな噂が飛び交って・・・。結局それってまーくんの仕業なんでしょ?」
「う〜ん・・・・。そうなんでしょうね。急に・・・・ですからね。マコちゃんに怒られました。ブラのサイズが合わなくなったって・・・。しかも、乳房に妊娠線も現れたって。」
「そうだよね・・・。あのまな板が・・・だもんね。急におっきくなれば皮膚も割れちゃうよね・・・・で、最終的にどのサイズまで行ったの?」
「僕が聞いたのはDカップだったと思います。今のサイズはちょっと分かりませんが・・・」
「あら・・・それは私の方が勝ちね・・・」
「えっ?そうなんですか?・・・・そ、そうですよね。でも、何と勝負してるんですか?」
「あらやだ・・・・。この前あんなにしゃぶっておいて・・・」
「すいません・・・・あの時は夢中だったもんで・・・。」
「まっ、そんなのどうでもいいんだけど・・・・」
「すいません。ちょっと・・・どう返していいのか分かりません・・・」
「それでさ、今・・・・凄く後悔してる。工藤さんが北海道行ってる時に、なんでまーくんのこと探し出さなかったのかって・・・・。そうすれば、運命変わっていたかもって・・・」
「正直言って、そのマコちゃんを待っている期間って心が折れそうでした。意味もなくこのフェリーターミナルに来て、いるはずのないマコちゃんの姿探したり・・・一種の変質者みたいだったかもしれません。」
「でも、その工藤さん・・・バスガイドになって戻って来た。」
「はい・・・もう、びっくりでした。まる1年経った時、流石に心折れるかと思った・・・・そんな時期でした。もう、誰でもいいかなって思ったことも・・・」
「そして、再会して・・・どうだった?サルのようにやりまくり?1年分だもんね。」
「いや・・・それが、再会後一回も・・・」
「あらやだ・・・それは可哀想・・・・。それで、あの時わたしとあんなことに・・・」
「そうだったのかもしれません。大学のオリエンテーリングの時に再会を果たしたものの、それ以降は教育実習が始まったり、マコちゃんのお姉ちゃんが妊娠しちゃったり・・・マコちゃんの仕事が忙しかったり・・・」
「なに・・・それじゃ、お預けってこと?」
「まっ、そんな感じです。」
「そんなんじゃ・・・ほかでしちゃうよね」
「すいません・・・・。その時、自分って・・・・やっぱりオトコなんだなって思いました。いくら正論並べても、結局のところ下半身は別物だって。オトコたるもの、いつでもどこでも誰とでもって・・・・・」
「まーくん。わたしだって・・・・いや、オンナだっておんなじだよ。誰とでもって言うのはごく一部だけど、この人とだったらって言うのはあるんだよ・・・。なんか、雰囲気とか匂いとか・・・・そんなのにビビッと来る時があるの。」
「それって・・・アバンチュールってヤツ?」
「モノは言いようだけど、そんなところかな・・・・・?でもね、オンナって、凄くオトコに抱かれたい時ってあるの。なんでかは分からないけど・・・。それで、昨日・・・・抱かれたの・・・・それはわたしからお願いして・・・。」
「えっ?それって・・・・良一さん?」
「う・・・ん。でも、中には出させなかったよ。中に出したのはまーくんだけ。」
この時、私はその舞衣さんがなぜ急にそんなことを告白したのか、それが嘘なのかそうでないのか、また、私を試すためにそう言ったのかはその時全く分かりませんでした。
すると、今まで遠くを見ていた舞衣さんが急に私の顔を見て驚いています。よほど不安そうな顔をしていたのでしょう。
「嘘・・・・嘘、そんなの。まさか兄妹でするわけないでしょ?義理だったらまだしも・・・」
「そ・・・そうですよね。」
「ねえ・・・勝負しない?今日1日、負けた方が勝った方の言うこと聞くってヤツで・・・・」
「まっ、その勝負の内容にもよります。」
「せっかくフェリー埠頭まで来てるんだし、2台あるんだから・・・・ゼロヨンで。」
「こんな昼下がりにですか?しかも土曜日ですよ。」
「一回だけだから・・・・ダメ?なんか、アクセル全開にしたくなっちゃって・・・お願い!」
そう言いながらその舞衣さんが私の鼻先で手を合わせます。
「はいはい分かりました。一回ですよ。舞衣姉さんの頼みとあらば仕方がありません。アルトでどこまでヤレるか頑張ってみます。」
その後、私と舞衣さんはそのゼロヨンコースの出発点にいました。その道路は片側3車線の直線で、出発地点に押しボタン式信号の横断歩道があり、次の横断歩道までが約400mとなっている絶好のゼロヨン会場です。
私と舞衣さんはクルマ2台をしばらく路肩に停め、車の流れが途切れるのを待ちました。そして、最後に観光バスが2台通過したところでクルマが途切れるのを確認すると、車から出て私が走ってその信号の押しボタンを押しました。
すると10秒程度経った頃信号がゆっくりと黄色、赤と変わります。
そして、舞衣さんのEP71が右側、私のアルトが左側という位置に移動し信号が青になるのを待ちました。
すると、先程信号が赤に変わる直前に対向車線を通過した車の運転手がすれ違い側に舞衣さんのことを2度見していたのが気にかかり、なんか悪い予感がします。
その後私の悪い予感が的中し、その車は後方の中央分離帯の切れ目でUターンして下品な排気音と共に舞衣さんのEP71の右側に停車しました。
私は、そのベージュ色のS13型シルビアとその排気音に覚えがありました。それはまさしく、昨日の銭湯帰りに私のアルトにちょっかいを出してきたあのシルビアです。
私がその舞衣さんを見ると、そのシルビアの助手席に乗っているヤンキー風の若者が窓を開けて舞衣さんに何やら話しかけていて、舞衣さんが困ったような表情をしていました。
こう言う時に限って信号がなかなか変わらないモノです。やはり6車線分の横断時間を考慮すると仕方がないことなんですが・・・・それにしてもイライラします。
そうしている間にも舞衣さんが絡まれて可哀想なことになっていました。
その舞衣さんのクルマの左側にいる私は、舞衣さんのクルマの助手席側のガラス越しにしかそのやり取りを伺う事ができませんが、次の瞬間舞衣さんがソイツに向けた指の形だけはハッキリ分かりました。
「ヤバッ。」
舞衣さんがソイツらに向けて中指を立てた瞬間、私は咄嗟にそう叫んでいました。舞衣さんがこのままヤツらを挑発すれば、最終的にクルマから引き摺り出されてしまうかもしれません。
私はこの時、そのシルビア野郎の気を逸らすためエンジンを思い切り空吹かしをしました。今でいうレーシングという吹かし方です。でも、排気音自体が舞衣さんのEP71と隣のシルビアにかき消されてあまり聞こえないような状況です。
そこで、私は封印していたはずのあのスイッチを押しました。すると私のアルトからバリバリバリバリ・・・と言う排気音轟き始め、そのシルビアのヤンキーが驚いています。
私が続けてレーシングをすると、私の後方からバリバリパンパン・・・というこの世のものとは思えない音が轟きます。
すると舞衣さんがそれに応えるように空ぶかしを始め、それに釣られるようにそのシルビアも空吹かしを始めました。
その時、やっとのことで歩行者用信号が点滅し始め赤信号となりました。その直後車両用信号が青になる瞬間、気を許した一瞬を付いて一番右側のシルビアがフライング気味の絶妙なタイミングでスタートしています。
昨日もそうでしたが、とにかくそのいやらしいスタートの仕方が慣れています。恐らく毎週金曜の夜に非公式に開催されているゼロヨン大会の常連のような雰囲気で、もしかすると昨晩も出場したのかもしれません。
その時、私と舞衣さんはそのシルビアに若干遅れて同時にスタートしましたが、舞衣さんのEP71はホイールスピンを起こしてタイヤから少し白煙が上がっています。
私のアルトは4WD車でしたのでホイールスピンはしないものの、慌ててクラッチを繋いだせいで一瞬エンジンをストールさせてしまったために発生したそのターボラグでロケットスタートとは行きませんでした。
その後2台は、先行するシルビアを追いかけるように猛ダッシュを掛けます。
そこはさすがライトウエイトのターボ車です。舞衣さんのEP71がみるみる車間を詰めて行きました。私も負けじとアクセルを全開にして加速させます。
私のアルトはシフトアップ時に1回づつ、パンッ・・・と音を立てながら加速しますがジリジリとEP71に離されて行きます。
でも私のアルトは一番右のシルビアよりは相当加速が良く、そのままそのシルビアを抜き去るという時、ギアを3速から4速へ変速させる際にシフトミスをしてしまいました。
その時アルトは一度タコメーターが1万回転まで振り切れレブリミッターが効いています。すかさずアクセルを戻した瞬間今度はマフラーからパンパンパン・・・・と、けたたましい発砲音が轟いています。
終いには、どこからか部品が外れたようなカランカラン・・・と言う音とともにその音が倍増しました。
ちょうど隣でそれを目撃したシルビアの助手席の男の表情が引き攣っているのが分かります。すると、今度はそれ以降アルトのエンジンが軽くなったようにブーストが効いて加速が強まり、あっという間にシルビアを抜き去りました。
でもその瞬間、1台分先行したEP71のブレーキランプが一瞬点灯しました。
ちょっと不思議に思った瞬間、前方左側の埠頭ヤードに置いてあったコンテナの影から白黒パトカーがサイレンを鳴らし回転灯をつけて顔を出し、しかも何かマイクで叫びながら私が通過した通過直後に道路に出て来ました。
しかし、前方のEP71は止まるどころか再加速を始めたため、その瞬間私は舞衣さんがそのパトカーを振り切るものと理解しました。当然、そのパトカーはゼロからの加速になりますので到底その何倍も加速しなければ追いつきもしません。
そこで標的になったのが3台の一番後ろをままならない加速で走行するシルビアでした。ブレるルームミラーからチラッとみたそのパトカーはフロントを高々と上げ物凄い加速をしていました。当然アクセルを踏む私の右足にも力が入ります。
その後私もEP71に引き続き加速し最終的に一番後ろのシルビアを振り切りましたが、今度は取り残されたそのシルビアがパトカーに追跡されています。
そしてどこかへ逃げようと右折したシルビアにパトカーが付いて行き、最終的にその姿がルームミラーから消えていなくなりました。
その後その流れで海岸線に出て、前を走る舞衣さんのEP71にしばらく付いて行く事になります。でも、その舞衣さんの速いこと速いこと・・・見失わないようにするのがやっとです。
自分のアルトといえば、排気音がうるさい上にシフトダウンやシフトアップ、またアクセルを戻した時バリバリ・・パンパン・・と強烈な音を奏でます。
やはり前方を走る舞衣さんの運転は慣れているというか、競技上がりの運転というか危なかしいところが全くありません。しかも、付いていくのがやっとの私との距離を測りながらの走行です。
そのうえ民家の前では減速したり、見通しの効かないコーナー前では対向車の確認を怠らなかったり、その逆に先の見通せるコーナーや直線では鬼のようにアクセルを踏んだり・・・・とにかくメリハリのある運転です。
そしてその舞衣さんの運転にやっと付いて行けそうになったところで、例の展望台までたどり着きそこでクルマを止めました。
そこでエンジンをアイドリングさせたままドアを開けると瞬間物凄く何かが焦げた匂いが立ち込めています。
その時私は改めて隣に停まっているEP71の運転席を見てみました。するとその舞衣さんがフルバケットシートの4点式シートベルトで拘束された状態で、腹を抱えて爆笑しているではありませんか。
「舞衣さん・・・・振り切るの慣れてますね。」
私はクルマを降り、舞衣さんに運転席の外からそう声をかけました。すると顔を引き攣らせながらその舞衣さんが答えます。
「それより・・・・それより・・・・さっきのシルビア・・・・」
「シルビアがどうしたんですか?ちょっと気の毒だったような・・・・」
「あのヤツら・・・わたしが信号で止まっていた時なんて言って来たと思う?」
「何か、からかって来たんじゃ・・・・」
「ち・・違うの。勝負しようって。俺たちが勝ったら3Pしないかって・・・・」
「舞衣さん・・・それでなんて答えたんですか?」
「アンタたち自信あるの?いいモノ持ってるの?って聞いてやったの・・・・そしたら・・・」
「それでどうなったんですか?」
「ヒーヒー言わせる自信があるって・・・笑ちゃうよね。」
「それで・・・・?」
「わたしが勝ったら?って聞いたら、ムチでもローソクでも良いって答えたの。アイツら・・・もしかしてマゾ?」
「それで、最終的にどうしたんですか?」
「そりゃ最後に・・・3Pでも4Pでもいいよって答えたよ。ただし・・・アンタが勝ったらねって。」
「売られた喧嘩・・・買っちゃったんですか?」
「うん。売られたケンカは買ってあげるのが礼儀でしょ?それで中指立ててやったら・・・オレのイチモツ・・・ケツにぶち込んでやるから覚えてろ。ですって・・・・」
「ヤツら、そんな事言ってたんですか?もし、勝負に負けたら・・・」
「そうね。まーくんも含めて4Pってこと?まっ、それでもよかったんだけど・・・・」
「舞衣さん。それでよかったんですか?」
「いや、良くない・・・・。けどヤツら今頃・・・交通機動隊のパトカーの後部座席で警官2人と4Pだよ・・・・。もしかするとヒーヒー言ってるかも。そう思うと、もうおかしくって・・・・。どうにかして・・・笑いが止まんない・・・」
その舞衣さんの笑いが収まるのに結構な時間が掛かりました。
そしてその舞衣さんを締め付けるようにしていた4点式シートベルトのバックルを外してあげました。更に笑いが収まるまでの間自分のアルトを改めて見回すと、排気音がアイドリングにもかかわらず初めに聞いた時と比べて格段に大きくなっています。
しかし、この時はそれが何故かはわかりませんでした。ただ・・・途中で何か部品が外れたような音がしたのは気になりましたが・・・・。
その後・・・・・私と舞衣さんは裸で抱き合っていました。
しかもその場所は因縁とも言えるあのラブホです。でも、今回入ったのは4号室ですが・・・。
それは海岸線の展望台で舞衣さんの笑いが落ち着いた後、濃霧のかかった海を二人で眺めている時でした。
「そういえばさっきの勝負って、飛び入りもあったけど・・・・わたしの勝ちってことで良いよね。」
それまでゼロヨンだったり、コーナーリングのやり方などの雑談をしていましたが、その雑談中何かを思い出したかのように舞衣さんがそんなことを言い出していました。
「そうですね・・・・結局僕が舞衣さんの前に出ることはありませんでした。でも、それって初めから分かって・・・」
「あら・・・そうかしら?わたし、さっきのゼロヨンでブースト1.5キロまで掛けたんだよ。」
「それじゃ、ブーストが普段通りだったら・・・・」
「だから・・・そうなの。」
「でも、勝ちは勝ち。それでわたし、社会勉強に行きたいところがあるんだよね。そこに連れて行って欲しいの・・・・。2台じゃ面倒だから、コレからアパートにクルマ置きに行きたいの・・・・いい?」
「はい・・・分かりました。仰せのままに・・・・」
その後、舞衣さんのアパートまで2台で移動し私のアルトに舞衣さんが乗り込みました。
「あのさ・・・・わたし、あのお城に入ってみたいの。」
今度はその舞衣さんがシートベルトを締めながらそう切り出しています。
「あ、あの国道沿いの・・・ですか?」
「もちろん。弘前城じゃないよ。」
これは土地柄的なお約束というか・・・
「なんでまた・・・・・」
「あそこってさ、通勤の時いつも通るでしょ?外からはいつも見てるけど塀に囲まれて中が見えない・・・なんかミステリアスなんだよね・・・・そう思わない?」
「そ・・・そうですよね。利用目的が限定される施設ですから、そういう目的で利用しないと中が伺えないっていうか・・・。舞衣さんって、ミステリアスが好きなんですね?」
「それでさ・・・・あの中見てみたいから、そういう目的でそのミステリアスな施設を利用してみない?」
「でも・・・僕たち義兄妹ですよね。舞衣さんがさっき兄妹じゃあり得ないって言ってたじゃないですか?」
「あら・・・その時、義理だったらまだしもって付け加えたはずなんだよね・・・」
「あっ、はい・・・・その通りでした。仰せのままに・・・・」
そうして助手席に舞衣さんを乗せてそのラブホへ向けアルトを走らせました。
そのアルトは排気音が尻の下から唸るような音となって二人の会話を遮りました。その間助手席の舞衣さんが運転する私に顔を近づけ上目遣いで話しかけてきます。
信号待ちの時話しかける舞衣さんを見ると、私の目線からその胸元の開いたポロシャツの胸元から胸の谷間がばっちり見えます。その時私は不覚にも自分の股間が反応しているのを感じていました。
そして何よりその舞衣さんの体臭がすごく良い匂いなのです。私は過去に母さんのワキガの匂いがいい匂いと勘違いしていて愕然とした経験を持っていましたので、それを警戒しながらその匂いを運転しながら頭の中で分析しました。でも、コレはどう考えてもワキガではありません。
その時私の頭の中で出した結論は「天然の媚薬と言われるモノの香りではないか?」ということでした。
そう思った瞬間から自分の股間に血液が充填されて行くのが感じ取れます。この香りと自分の股間が連動しています。本当にやばいです・・・この香り。
そして、ホテル入り口にあるヒラヒラを潜る時、私の隣では「夢の国へご入場〜」なんて無邪気でした。しかし・・・・
その夢の国へ入城した途端目に付いたのはその夢の国の管理棟に横付けしたライトバンでした。そして、その脇を通過するときそのドアに描かれた文字を確認するとそれはどこかの補償調査会社のようです。
それは良いとしてその先の空室を探すと、全部で9棟あるこのコテージのうち1号室から3号室のドアが空いていて何かの業者が出入りして何かを調べていました。
そこで仕方なくお気に入りの3号室を諦め、隣の4号室に車を停め舞衣さんの手を引いて玄関に入りました。
「へ〜、ここってこんななんだ・・・・」
こういうところに来たのが初めての舞衣さんは、その凝った部屋の造りに興味津々です。
いつも使う3号室は高級なホテルのような一室に総ガラス張りの大きな浴室を備える部屋ですが、この4号室は浴室は広くないものの丸い回転ベッドに総鏡張りの広い部屋でした。
「ねえ・・・まーくん。まーくんってこういうところ来たことあるの?」
「う・・・ん。何度か・・・・」
ここで私は真っ赤な嘘を言っています。ここは結構利用してますし、昨晩はふたばと隣の3号室を利用していました。
「なんか・・・ドキドキしちゃうね。これから何か始まりそうで・・・・」
今そこにいる舞衣さんはもう年上のお姉さんではありません。まるで女子高生のようです。
「舞衣さん。それじゃ、何から始めましょうか?」
そこで私はちょっとした意地悪も含めてそう尋ねました。
「ちょっと・・・改めて言われると、ちょっと照れくさいね・・・・・・。一般的にはどんななんだろうね?」
「それじゃ・・・一緒シャワー浴びましょうか?さっき、思い切り走って汗もかきましたし・・・・その前の冷や汗も・・・」
その時私は重要なことを忘れていました。それは、自分の鎖骨のところにふたばの付けたキスマークがあることに・・・
「じゃ、脱がせてもらおうかしら・・・」
舞衣さんはそう言いながらバンザイをしました。
「はい・・・喜んで。」
私は舞衣さんに言われるがまま舞衣さんの着ているポロシャツから脱がせ始めました。そして、その豊満な乳房を覆っているブラジャーを外すという時、舞衣さんを後ろ向きにしました。
それはふたばがプライバシーの侵害と言って激怒したそのサイズを確認するためです。
そしてそのブラの背中のホックを外した時そのサイズを確認しました。そこにあった小さなタグにはFという表記がなされていて、そのサイズというものがいつもブラウスのボタンが千切れそうになっているサイズであることを改めて再認識させられました。
そしてなぜかそのブラのカップからムワっと舞衣さんの体臭を感じました。でも、なぜかその匂いに違和感があります。
さっきまで媚薬の香りと思っていた香りとそのブラの中から香る香りが微妙に違っていて、どう言うわけかそのブラの中の香りから母さんに通じる何かを感じ取りました。
そして、それがどう言うわけかも考える間も無く舞衣さんのパンツも脱がせた時、ある事・・・・いや、ない事に気づきました。
「舞衣さん・・・・ココ、生えてこないんですか?」
それは、この前舞衣さんのアパートに泊まってしまった時、舞衣さんが自らツルツルに処理したワレメの部分です。それから日数が経っていますのでチクチク生えていてもおかしく無いのですが・・・
「う・・・ん。わたしって、元々ソコ薄いんだよね。高校の修学旅行の時バカにされたくらいだもん。みんなボーボーなのに・・・・わたしはチョロっとしか生えてなくって、しかも遠目に見るとほとんど分からないくらいに薄くって凄く恥ずかしかったの。」
舞衣さんはそう言いながら自分のワレメを覗き込んでいました。
でも、私の彼女であるマコトは生まれつきの無毛症・・・つまりパイパンです。そんなマコトは修学旅行の時、友達に羨ましいと言われたと話していたのを思い出しました。歳の差が約10歳・・・・これって時代の流れなんでしょうか?
そんなことを考えつつ、私も服を脱ぎ二人で浴室へ入りシャワーを浴び始めました。
「あれ?まーくん。おイタしちゃった?相手って・・・やっぱりふたば先生?」
舞衣さんはそう言いながら私の顎をぐいっと上げてその場所をマジマジと見つめています。
「えっ・・・・そ、それは・・・・」
「しかし、立派なキスマークだね。よほど燃えちゃったんだね・・・・」
「すいません。それって・・・実は覚えていないんです。ちょっと飲み過ぎちゃってて・・・・」
「あらあら・・・それじゃ無意識でヤっちゃったってこと?」
「はい・・・・そうなります。」
「余計な心配かと思うんだけど・・・・避妊とか大丈夫?」
「それは大丈夫です。ふたばって生理不順の治療でピルを処方してもらっていて、教育実習の後生理が来るように調整しているようなんです。」
「それじゃ心配なしってところだね。」
「そういえば・・・・この前舞衣さんとしちゃった時、その避妊っていうのしなかったじゃないですか?今になって心配になって来て・・・・」
「うん。良いのそれは・・・・過ぎたことだし。それにわたしは大丈夫。自信あるから心配しないで・・・・」
その時私はその言葉を全く疑いもしませんでした。でも、こればかりは・・・・
改めて見る舞衣さんのその裸体はやはりとてもグラマラスで、一言でいえば「いやらしい体つき」という事になります。
ふたばのようにすらっとした長い脚ではない代わりに、ややふくよかなお尻にキュッと締まったウエスト。それで何よりそのFカップの乳房は形も良くピンク色でやや大きめの乳輪に小さめの乳首が上を向いています。
それが身長160cmに満たない身体に凝縮されています。舞衣さんの元カレが、いざとなるとビビって勃たなくなってしまったのも頷けます。そんな舞衣さんは自分のことを時々30歳のおばさんと表現していますが、正確にいえばまだ29歳のお姉さんです。
私はそんな裸体を見るだけで股間のイチモツが破裂しそうなくらいカチコチになっていました。
「あれ?もうこんなになって・・・・」
そう言いながら舞衣さんが膝をついてソレをしゃぶり始めました。
「ちょっと待った・・・。ソレはあのベッドで・・・」
このままここでしてもらっても良かったのですが、自分としても舞衣さんの身体を隅々まで堪能したい衝動に駆られています。
そしてベッドの上。私は舞衣さんを仰向けにしてそのFカップをしゃぶっていました。そうしながら右手で舞衣さんのアソコを伺うとすでにヌルヌル状態です。
「ねえ・・・わたし、我慢できない。上になってもいい?」
胸をしゃぶられて感じてしまったのか、舞衣さんが物凄く色っぽい声でそう言っています。
すると舞衣さんは自らの身体を起こして、今度は私をそこに仰向けにさせると私の足元から這い上がるようにして身体を被せて来ました。
その途中、舞衣さんの乳首が私のそそり立つモノに触れ、その刺激に私のカラダがビクッとします。
「ねえ・・・オトコってこれに弱いんでしょ?」
そう言いながら舞衣さんは私のモノをその二つの豊満な乳房で挟み、左右両側から両手で圧力を加えました。
そしてソレを挟んだままその乳房を上下に揺らします。この感覚は初めてのものでした。コレは今で言うパイズリというモノです。
気持ちいいというより、その異常な光景に興奮を覚えます。
「あ・・・舞衣さん。ソレ・・・ちょっと・・・反則・・・」
私はたまらずそう訴えました。すると・・・
「じゃ、コレは?」
そう言いながらその状態で私のモノの先端をチロチロ舐め始めています。
「うっ・・・・・ダメです。出ちゃいます・・・・」
「あれ?なんか出てきたよ。その酸っぱい液体は何?」
そういう舞衣さんの口と私のモノの先端が粘液の糸で結ばれていました。
私はたまらなくなって、そんな舞衣さんを再び仰向けにして足を広げてその綺麗な一本筋を両手で広げました。するとそこはもうすでに舞衣さんから分泌された透明の液体で満たされています。
もう、ソコは神秘的というか芸術品というかとても綺麗なモノでした。高1の優子ちゃんのまだ未完成のアソコともこれぞ女性器の見本とも言えるようなふたばのソレとも違います。何もかもが繊細な造りをしています。
やはり女性のソコは千差万別。顔と同じようにアソコの表情も違います。でも、それを確認することが出来るのはその女性が心を許した限られたオトコだけです。
今、自分がその限られたオトコになっていることになぜか喜びを感じていました。
舞衣さんのソレは広げれば広げるほどピンク色の全く神聖なモノです。コレから自分のモノで汚してしまっていいのか?と思えるくらいのものでした。
私はすぐさまそんな綺麗なソコにしゃぶり付いていました。なぜか今すぐしゃぶり付かないと賞味期限が切れてしまいそうな感覚に駆り立てられます。
すると舞衣さんの太ももがビクッと反応しました。さらには今さっき広げたアソコがウネウネ動いています。
「ジュルルル・・・・」
更に私はソコの蜜を舌ですくい集めて吸い上げました。するとここでもなんともいえない違和感を感じます。ちょっと疑問に思いながらも今度はそのワレメの一番上で硬くなっている蕾をそっと舐めてみました。
「あっ・・・・ソレはダメ・・・・。ソレやったらすぐに逝っちゃうからダメ!。ソレより一緒に・・・・」
そう言いながら舞衣さんは身体を起こして、仰向けにさせた私の顔を跨ぎました。コレって言ってみればシックスナインの体位です。私はその時舞衣さんの股間の後ろの天井に目が行きました。
その部屋ま壁も含めて鏡張りになっていて、その鏡に映る私と舞衣さんがどんな体勢になっているのかが丸分かりです。
「舞衣さん・・・・こんなこと・・どこで・・・・?」
私はつい数日前まで処女だったそんな彼女に問いかけました。それに対して舞衣さんが真面目に答えます。
「レディスコミックっていうのかな?。昨日、クラスの委員長が持ってたそんなヤツを没収したの。ソレって委員長も誰かから没収して職員室に届けようとしてたみたいなんだけど、渡しそびれちゃったのね・・・・。ソレ読んだらこんな・・・」
そう言うと舞衣さんは私のモノを時折「ジュポ、ジュル・・・・」なんていやらしい音を立てながら頭を上下させています。そうしながら舞衣さんの垂れた髪の毛が私の足の付け根を刺激して、私自身も足がビクビク反応しています。
私は舞衣さんの取り止めもなく分泌される液体を舐め取りながら考えていました。
先ほど舞衣さんが言っていた没収したレディスコミックのことです。
前にその委員長と同じクラスの優子ちゃんが教えてくれました。その委員長は一見オトコ経験が豊富そうで、いろんな女子からオトコのこととか性に関する相談を持ちかけられる事を・・・。
しかし、その委員長本人は未だにオトコ経験がない真っ新な処女であることから、その回答はそのレディスコミックから得ていることも。
その委員長のセーラ服は短めのスカートになっていて、休み時間に机に座って足を組んで友達と話している時に見えるその健康的な太ももを、私は何度か2度見した経験があります。でも、そんな彼女の成績が良かったためそのスカートの長さについて指導が入ることはありませんでした。
でも、そこで更に思い出したことがありました。
ソレは昨日、ふたばとここに来た時すれ違ったクラウンの助手席に座っていた女子がその委員長に似ていたことに。ということだとすれば、昨日ここでその委員長が処女を喪失したという事になります。しかも、あんなおっさんと・・・・。
そう思った瞬間、私のアソコから限界を示すサインが脳内に現れました。しかも、私の舐めている舞衣さんにアソコの粘液の味も粘度変わってきてそろそろかなと思った瞬間です。
ソレはいきなり訪れました。
「あっ・・・・すいません・・でるっ・・・うっ・・・・うっ・・・・」
「んーーーーーーーーー!」
私は舞衣さんに限界を知らせたのですが、その舞さんが私のモノを咥えたままそう悶えています。
すると今度は、その舞さんまだ射精の収まらない私のモノからポンっと口から外し、自らのアソコを私の顔に押し付けて海老反りになっています。しかも今度はその身体がブルブル震えながらそこで固まりました。
さらにはその身体が固まる寸前に私の顔に舞衣さんのアソコから何かの液体が噴射されていました。ソレは至近距離からのものでしたので全く避けようがなく、その全部が私の顔にかかっています。
そしてその舞衣さんカラダは固まったまま、その喉から「ゴクッ、ゴクッ・・・」と喉を鳴らす音が聞こえた瞬間今度は大きなため息が聞こえその身体が崩れ落ちました。
私の上で、私と真逆の方を向いて私に覆い被さって息を切らせている舞衣さんは、息が切れて何も言える状態ではないようでした。
「舞衣さん、大丈夫ですか?」
「う・・・・ん。かろうじて生きてる。でも・・・・腰、抜けちゃった・・・・・。ごめんね。まだ入れてもないのに。」
「いいんです。時間はたっぷりあります。御休息の2時間に囚われず行けるところまで・・・・」
「でも、まーくん。ここで問題が発生してるの・・・・。目、開けられないの。さっきの・・・直撃受けちゃって・・・」
そんな舞衣さんは私の発射した白い液体を顔にも受けていたようです。
「舞衣さん。安心してください。僕も全く同じです。今手探りでティッシュ探しますからしばしお待ちください・・・。」
そして私は、手探りでベッドの宮にあるはずのティッシュを探しましたが・・・・ここで思い出しました。これが丸いベッドであることに。すなわち自分がどの方向を向いているのかが分かりません。
ソレでも手探りでそのティッシュの箱を探している時、その右手の中指が何かのスイッチに触れました。
すると小さくモーターの音が聞こえてきてそのベッドが回転し始めます。
「なに?・・・なに?」
舞衣さんは初めての体験にすごく戸惑っている様子でした。
「すいません。なんか変なスイッチ押しちゃいました・・・・」
その後、やっとのことでティッシュを見つけそれぞれ顔を拭きましたが、舞衣さんの髪にまで私の精液が付いていたのでもう一度シャワーを浴びる必要がありました。
「舞衣さん。今、湯船にお湯張りますので休んでいてください。」
私は舞衣さんを仰向けにさせ、肌かけを掛けてバスルームへ行き湯船の蛇口を捻りました。
そこでその湯船の脇に、通称スケベ椅子と呼ばれるゴールド色したそれを発見しました。これは3号室には置いていないものです。そこでこの部屋のコンセプトが見えてきました。
この部屋は思い切りスケベな非日常の閉鎖空間を目指しているようです。それに比べ、私がいつも使っていた3号室はおしゃれな開放空間というところでしょうか。
私がそんなスケベな部屋に戻ると、薄い肌掛け被せたの舞衣さんを乗せたベッドがゆっくりと回転していました。しかも、壁を見ても天井を見ても舞衣さんの姿が映っています。
そして私は、そんな舞さんにかけてあった肌かけに足元から潜り込みました。そこで、先ほどから感じていた違和感の正体がはっきりしました。ソレは、以前の舞衣さんの体臭とは少し違った匂だということに・・・。
この時の私は、自分自身を匂いフェチだと自覚するほど嗅覚が鋭いという自信がありました。
数日前、舞衣さんとこうなってしまった時は酔っていて状況が飲み込めませんでしたが、その匂いだけは鮮明に覚えています。ソレはどことなく甘ったるいというか、なんて表現したらいいのか分かりませんが、ソレはまさしく処女独特の体臭でした。
しかし、今の舞衣さんの香りはまさにオトナの女性の香りです。ふたばなんかは体臭がほぼ無臭でしたが、この舞衣さんは自分の存在をそのいい匂いで表現しています。
しかし・・・・この匂いの変化というものを私は全く勘違いしていました。この時はただ、いい匂いとしか思わなかった体臭の変化は、私の思いもよらないことの始まりに過ぎなかったのです。でも、それが判明するのはずっと先のことになります。
そんなバカで匂いフェチの私は、そのいい匂いを堪能していました。
「舞衣さん・・・・いい匂いする。凄くいい匂い・・・。」
そう言いながらも私は舞衣さんの首元や脇の下の匂いを嗅ぎ続けています。
「ちょっと・・・恥ずかしいよ・・・・。わたし、今日は香水なんかも付けていないし、さっきシャワー浴びたのに・・・」
「舞衣さん。舞衣さんって、汗そのものが香水です。これはオトコ共を惑わす危険なヤツです。」
「なに言ってんの!褒めても何にも出ないわよ・・・」
「なにも・・・・って、ここからもいっぱい出るじゃないですか?」
そう言いながら私は先ほどと同じように舞衣さんの股間に指を沿わせました。この時舞衣さんは足を開いて触りやすいようにしてくれています。
「でも・・・・次はお風呂入ってから・・・・。こんな精子まみれの髪じゃ・・ヤでしょ?」
そう促された私は舞衣さんの手を引いて再びバスルームにやってきました。そして、その泡ぶくのお湯に浸かった時です。
「ねえ・・・アレって何?」
舞衣さんはその変わった形をした物体を指差しながらそう言いました。
私はその時、やっぱり・・・と思いました。初めて見た人は絶対疑問に思うその物体。・・・・スケベ椅子。
先ほどのシャワーの時、何故か気づかなかったソレはまさしく非日常のものでした。
「舞衣さんってもちろんソレ見るの初めてですよね?。」
「うん。もちろんだよ・・・・。」
「それの正体って・・・・股間を洗いやすいように考えられた究極の造形品。そもそもは介護用品だったと思います。」
「なんで・・・その介護用のものがここに?・・・・あっ!」
「舞衣さん、勘がいいですね。舞衣さんが思ったその通りの使い方をします。」
「じゃっ、ソレ使ってみよっか・・・・」
私の隣にいた舞衣さんがそう言いながら私の目の前に立ち上がりました。そこで湯に浸かりながら見上げる私は、舞衣さんのそんな全裸を見て固まってしまっています。
「な・・・何?そんなマジマジ見ないで・・・恥ずかしいじゃない!」
「すいません。今、改めて舞衣さんに見惚れています。今思ったんですが、舞衣さんの身体って女性としての究極の造形品だと思っています。」
「ちょっと・・・今更・・・」
その時私は、舞衣さんを私の前に座らせました。その浴槽は長ヒョろく浅いもので、二人は寝そべったような感じです。
私はそんな舞さんの耳元で、その身体を後ろから抱えるような感じで問いかけました。
「すいません。最後まで聞いて下さい。舞衣さんて、女性としての特徴を理想的に表現した身体なんです。いや、ちょっと表現しすぎなんです。その形のいい大きな胸やソレに相対して細いウエスト。更にその魅力的なヒップ・・・・。それに色っぽいお姉さん顔・・・・。」
「でも・・・私って魅力がないって烙印押されたダメ女なんだよ。前に付き合ってたインポ野郎は、わたしに入れようとする途端フニャチンになっちゃうんだから・・・・」
「舞衣さん。前にも言いましたが、ソレって舞衣さんのその完璧なカラダにビビっちゃったんだと思います。僕には痛いほど分かります。しかも、ソレを自分が汚していいのかなんて、そのカレシが自問自答したのかも思うと・・・・もう勃つどころではありません。多分、その彼氏も初めてだったんじゃないんですか?」
「まーくん。そう言ってくれるだけでわたし嬉しい・・・」
「ちょっと勘違いしないでください。今、僕が言ったことは紛れもない真実ですから・・・。」
「そんなこと言われても・・・これまでわたしってオトコに誘われたことなんて全く無いんだよ。ソレって魅力がないってことじゃん・・・」
「オトコからすれば・・・そんな姿の舞衣さんには絶対オトコがいると思います。そんなの・・・見た瞬間そう思います。あんないいオンナが絶対フリーなはずないって・・・。」
「オトコってそんなもんなの?前に誰かがわたしのこと、夜の街で遊んでいそうな雰囲気だって言われた事はあったけど・・・・」
「オトコだったら大抵そう思います。よっぽどのバカか、鈍感なオトコじゃなければ・・・・」
「じゃ・・・・アイツって、相当鈍感だったのね。正義の味方・・・・でもその正体はインポ野郎・・・・」
「インポ野郎って・・・・舞衣さん、相当恨みがあるんですね。」
「うん、あるわよ。そりゃ、わたし頑張ったんだよ。手とか口とか・・・精子もいっぱい飲んだし・・・・でも、いざアイツが入れようとした途端にダメになるの・・・」
「何かきっかけとかってあったんですか?」
「う・・・・ん。最初の時かな?入れようとした時、初めてのことだから先っぽ押し込まれた時・・・・やっぱり痛かったの。その時痛い・・・・って言ったら、その途端ふにゃふにゃ・・・って。」
「舞衣さん。僕には分かります・・・そのカレシの気持ち。そのカレシって舞衣さんのこと本当に好きだったんです。舞衣さんに痛い思いして欲しくない・・・壊したくない・・・傷つけたくないって思ったんです。」
「でも・・・・わたしの心は傷ついたよ。」
「でも、オトコってそんなところがあって、好きな女の子と初めてスル時アレがいうこと聞かなくってヤれなかったって話は結構・・・・」
「なに?オトコってそんなに繊細なの?」
「じゃ、正直言います。昨日、僕はふたばと何回もヤりました。しかもふたばの胸は舞衣さんより大きいGカップです。」
「えっ、ソレじゃ・・・メロン2個?」
「はい。もしかするとスイカかもしれません。」
私はそう言いながら後ろから持ち上げるようにして、浮力で浮いている舞衣さんのFカップを少し揉んでみました。ソレは凄く柔らかく、と言ってもタレちゃってるものでもありません。
「しかも、そのふたばの脚ってものすごく長くって頬擦りしたいほど魅力的です。でも、その全身を見た時に舞さんほどの女性としての魅力が足りないんです。これは舞衣さんのせいです。舞衣さんって、僕の理想的なカラダをしてるんです。いや、ソレを超えてます。」
「でも・・・・・そんなわたしの身体に入れようとした途端に、アソコが萎えちゃうヤツとどう付き合えば良かったわけ?」
「ビビっちゃってアソコが勃たないなんてことは恐らく時間、いや回数が解決してくれると思います。そもそも僕は入れるのだけがセックスとは思っていないんでです。キスの時から・・・服を脱がす時・・・触っている時・・・・そんな時から始まっていると思います。」
「じゃ・・・さっきのも・・・・入れてないのに逝っちゃったさっきのも?」
「はい。もちろんそれもセックスです。」
「僕の同級生で、昔ちょっと彼女だった理央っていう娘がいるんですけど、そのカレシの妹が事故で亡くなっちゃったショックでカレシのアレが全くダメになっちゃったんです。でも、その彼女はその彼氏と別れないでかれこれ3年付き合っています。」
「ソレじゃ・・・・アッチとかどうしてんの?」
「挿入以外のありとあらゆることをしてるんだと思います。もしかすると道具なんか使ったりして・・・・。でも、前に1回その友達から頼まれたことがあって・・・・理央を抱いてやってほしいって・・・」
「それでどうしたの?」
「はい・・・もちろんヤりました。僕もオトコですから。でも・・・・やっぱりそのテクニックが凄いんです。僕は風俗って行ったことないんですが、恐らくその風俗を超えていると思います。でも、最後に膣痙攣なんてオマケも付きましたけど・・・」
「膣痙攣って・・・・そりゃ大変だったね。救急車呼んだの?」
「救急車呼ぶ寸前に偶然抜けて難を逃れましたが・・・・その彼女、久しぶりだったんでしょうね。生身のオトコを向かい入れることが・・・。その後、生理不順が改善されたって感謝もされました。」
「なんか健気だねその彼女。オンナってオトコのアレがダメでになった瞬間別れちゃうのが普通だと思ってたから凄い驚き。その彼女ってそのカレシのことがよっぽど好きなんだね・・・・」
「そのカレシって、建設会社の社長の息子で身体がとにかく大きいんです。アソコなんて僕の倍以上って聞かされました。中学、高校時代は不良の筆頭でみんなから恐れられてて・・・でも、そんなヤツが僕の友達だったんで、結構荒れた高校でも僕をいじめるヤツなんていませんでした。もう、それだけてありがたい存在です。」
その後しばらくして知ったのですが、その理央のカレシであるアベちゃんは自分の妹であるあおいが事故に巻き込まれる瞬間を目の前で目撃したとのことでした。それは、たまたま何かの用事でクルマで出かけた先で赤信号で停まっていた時だったそうです。
しかも、その事故現場に居合わせながら遠巻きにしか見ていない通行人に救急車の連絡を頼んだり、心肺蘇生を試みたりという修羅場を経験していました。更に、そこまでして亡くなってしまったのが自分の妹ともなればショックも大きかったはずです。
その時以前から彼女であった理央は、事故の時の自分の彼氏のそんな経緯を知っていたので、精神的ショックでアッチがダメになってしまった自分の彼氏と別れるという選択肢を捨てたと私は解釈しました。
その時です。私とバスタブに浸かっていた舞衣さんが右手を後ろ手に回して私のモノを掴みました。
「今まで散々オトコの繊細さについて語っていた訳なんだけど・・・・じゃ、コレは?」
しうい言いながらソレを掴んだ手を上下させました。
「すいません・・・ちょっと一部、僕には当てはまらない部分も・・・・」
「そうだよね・・・・そうじゃなかったらこんな白昼堂々、自分受けてる教育実習の高校の先生をラブホに連れ込むなんてできないよね・・・・」
「そ・・・ソレは・・・・。はい。参りました・・・・その通りです。」
「じゃ・・・今度こそそこにある究極の造形品とやらを使ってみよっか・・・・?」
舞衣さんはそう言うと私の前にザッと立ち上がりました。私はその舞衣さんのお尻を見上げました。改めて見るそのお尻の形もまた究極の造形品です。
「ま・・舞衣さん。そのお尻も・・・・・」
私はそのお尻も凄く魅力的だと言うことを伝えようとしましたが、ソレは後にとっておくとして私もバスタブから出てその究極の造形品とされるスケベイスをシャワーの前に出しました。
すると舞衣さんはソレに普通に座ってキョトンとしています。
「ん?どうした?初めてちょうだい・・・」
舞衣さんはそう言いながら背筋を伸ばして目を閉じています。こう言う時はどう始めればいいのでしょうか?
私はとりあえずお尻の下から舞衣さんの股間に手を伸ばしました。
「キャッ・・・・」
舞衣さんはそう叫んで急に立ち上がりました。
「なに?・・・なに?いきなりどうしたの?頭洗ってくれるんじゃ・・・・」
「あっ・・・そうですね。頭・・・ですね。すいません・・・」
舞衣さんはそのイスの使い方が全く理解できていないようでした。それのことをゴールド色のちょっと背の高い風呂の椅子程度にしか思っていないようです。
まっ、ソレでもいいのかな?って思いました。そんなのはいずれ分かることですから・・・。
そして備え付けのシャンプーで舞衣さんのセミロングの黒髪を洗い始めました。
「まーくんってなんか慣れてるよね・・・・。」
「そうですね・・・。ウチの家庭って、昔から家族一緒にお風呂入るのが習慣なんです。でも、母さんの帰りが遅い時なんかは麻美子姉さんと一緒でした。その時姉さんの髪洗うのは僕の仕事でした。」
「ふ〜ん、そうなんだ。それで・・・・。それって小さい頃の話よね?」
「い・・・いや・・・。僕が大学入るまでずっと・・・・」
「あらやだ・・・。でも、ある意味羨ましい・・・・。凄く仲良い兄妹で。」
「それに姉さんのあのレイプ事件の後は、しばらくトイレ以外の身の回りの世話は僕がやっていました。」
「トイレ以外って・・・・体洗うとか、着替えとかも?」
「はいそうです。」
「じゃ・・・わたしもそうしてもらおうかな?」
「却下です。その時は我が家に緊急事態宣言が出ていたもので・・・・その時はその時で必死でした。結局それも報われない結果になっちゃいましたけど・・・」
「それって、麻美ちゃんが前講習会で話してた電車に飛び乗ったって言う話?」
「そうです。置き手紙一枚・・・でしたから心配しました。でも、その紙の最後に一文、必ず戻りますって書いてあったんです。もう、それを信じるしかなくって・・・・」
すると二人の間に沈黙が続きます。そして私が舞衣さんの髪にリンスをしようとした時でした。
「しかし、あの精子って髪に付くと本当に厄介よね。うっかりそのまま乾かしちゃったりするともうパリパリで・・・・」
「そうですよね・・・しかも匂いも生臭くって・・・・」
この時私は、そんな舞衣さんがそういう経験だけはしているんだ・・・と改めて思いました。そしてものすごい後悔も・・・
この舞衣さんの処女を奪ってしまったのは紛れもない私です。しかしその瞬間は酔っていて全く覚えていません。舞衣さんとっては一生に一度のことなのに・・・
そこで私はそんな舞衣さんの初めてを奪ったモノとしての責任を果たすことにしました。それは、結婚とかそういうことではなく、私の出来る範囲で性に対する経験を積んでもらおうということです。
そんなことを考えていた時でした。
「ねえ・・・まーくんの髪、洗ってみたい・・・・いい?」
髪を洗い終えた舞衣さんがそう尋ねて来ました。
「は・・・い。お願いします・・・・」
本当は笑顔で満額回答したいところでしたが・・・・・私って、直毛家計にもかかわらず癖っ毛なんです。それで、ソレを誤魔化すためにパーマなんて当てていました。
その時舞衣さんは自らの髪をタオルで包むと、そんな私の事情を全く知らない私の髪を洗い始めました。
「あっ、まーくんってパーマかけてたんだ・・・・・。」
「すいません・・・・癖っ毛なもので・・・・。」
「いや・・・別に謝るほどのことじゃないよ・・・そんなの。ちょっと癖っ毛だなっては思ってたけど・・・。」
すると舞衣さんはそのあと特段変わったこともなく私の頭を洗いました。
「子供なんでできたら、子供の頭をこんな風に洗うんだろうね・・・」
どことなく寂しげに舞衣さんはそう言いました。
「もちろんです。でも、結婚相手がその楽しみを奪っちゃうかも・・・」
「ソレはそれで・・・・いいんだけどね。」
そんな話のあと私は舞衣さんの髪を乾かしました。
「舞衣さん。凄く惜しいです。」
「何が?」
「舞衣さんの濡れ髪って凄く色っぽいんですが・・・・」
「そんなのいつだって見せてあげられる・・・・」
「ダメです。こんな義弟とこんなことしてちゃダメです。卒業してもらわないと・・・・」
「え〜?卒業しちゃうの?」
「もちろんです。僕じゃ、舞衣さんを幸せにできませんから・・・・」
「留年でも・・・・・?」
「はい。そうです。」
「じゃ、これからスルことって・・・・・卒業試験?」
「そういうことになります。でも、勘違いしないでください。ソレは、僕が舞衣さんから卒業できるかってことも兼ねてます。」
「もしかすると・・・お互い、落第ってことも?再試験とかは?」
「う〜ん。ソレはその時考えますか・・・・」
そしてその後、微妙に回るベッドの上に二人で正座していました。
舞衣さんは胸までバスタオルを巻いて、私は腰にタオルを巻いて向かい合わせに座っています。
「それではこれから卒業試験を始めたいと思います。」
私がそう声をかけると、本来逆の立場の舞衣さんが三つ指を着きました。
「よろしくお願いします・・・・」
「こちらこそ・・・・」
そう言って二人お互いに挨拶を交わしました。もしかすると、これって新婚初夜に通じるものがあるのかもしれません。
「さっきはわたしからだったから・・・・今度はまーくんからで・・・・」
「ソレでは行かせてもらいます・・・・」
こうしてお互いの卒業試験が始まりました。
今回はここまでとなります。最後までお読みいただきましてありがとうございました。
やはり思い入れのある部分を表現しようとすると文面が長くそしてくどくなってしまいます。その辺は皆様の寛大な心で暖かく見守っていただければ幸いです。
まだまだ物語は続きますのでよろしくお願いいたします。
まことまどか