僕、川上勇斗。大学一年生だ。
親友と呼べる奴と一生懸命勉強し憧れの大学に入学できたのはいいけれど、その親友は落ちてしまい、あまり社交的でない僕は未だ友達ができない日々を送っていた。
そんな折、不意にスマホが鳴った。
画面には須藤亮平と表示されている。
(うわっ…須藤先輩だ…)
須藤先輩は僕と地元が一緒の2つ上の先輩で頭は良いけど、オラオラ系というか…ヤンチャが過ぎるというか…周りにヤンキーが集まるような人で、率直に言うと苦手人物であった。
なので、心のなかで疎ましく思いながら通話ボタンを押した。
「あっ、はい!川上です。」
疎ましく思う気持ちとは裏腹に、反射的に声を張って明るい声で電話に出た。
「おい!オレオレ!わかる?」
「はい!須藤先輩ですよね。勿論です!」
「お前、同じ大学に受かったんなら連絡くれよ!w」
「あっ、すみません。迷惑かなと思いまして…」
「はっ?遠慮するなって!…ところでさ…」
「はい…?」
「今度ウチのサークルで新歓コンパするんだけどお前来いよ!」
(うわぁ…行きたくねぇ…)
そんな気持ちを抱いたせいで少し会話に間が空いてしまった。
それが須藤先輩の癇に障ったのか声色が怒った様に変わり
「もしもし!!」
もう、断れる雰囲気ではなかった。
「はい!行きます!」
「おう。で、お前誰か女の子連れてこい!」
「えっ?」
「えっ?じゃねぇよ。お前、女の子連れてこなかったら他の奴が連れてきた女の子の分の金払うんだからな!」
「…」
「あっ、ちなみに女の子は無料だから。適当に声掛けて連れてこいよw」
「あっ、はい、頑張ります!」
(最悪だ…)
ただでさえ人見知りで男の友達すら未だに出来ていないのに、女の子に声を掛ける?
僕には甚だ不可能に近いミッションだった。
その日から数日はそのことで頭を悩ませた。
適当な嘘をついてキャンセルするか…無理でしたと言って女の子の分のお金を払うか…どちらもその後の学生生活を考えるとリスクが大き過ぎる。
悩んだ結果、ダメもとで綾香に連絡することにした。
綾香(藤野)とは高校からの知り合いで…簡単に言うと、僕が人生で初めて告白した相手。
告白の結果は惨敗だったが、今では友達付き合い出来ている唯一と言っていい女の子。
見た目は身長160cm程で胸もほどほどにあって、そして色白で顔も弘中綾香似と申し分ないスペック。
なのでここでは綾香(仮名)で呼ぶことにする。
LINEで「〇〇日の金曜日の夜って空いてる?」と尋ねる。
流石に直ぐに既読にはならなかったが、その日のうちに返信が来た。
「ん?どうしたの?」
「実はその日、先輩のサークルで新歓コンパするらしいんたけど…来れない?」
「えっ?勇斗くんもうサークル入ったの?」
「いや、まだ入ったわけではないんだけど…半強制的というか」
「ふ〜ん、大変だね」
「で、来れない?」
「なんで私?」
「先輩に女の子連れて来いって言われたけど、俺、まともに話せる女子って綾香さんしかいないからさ」
「何それ?w…そのサークル大丈夫?」
「ん…俺も分かんない。」
「えぇー、なんか行きたくないなぁ…」
「…だよね。無理にとは言わないから、いいよ」
「大丈夫と?」
「まぁ、謝って女の子の代金払えば済むかなw」
「えっ?大丈夫じゃないじゃん!…ん〜じゃあ、嫌になったら直ぐに帰ってもいい?」
「うん!いいと思う。その時は俺も一緒に帰るよ。」
「わかった。じゃあ…行くねっw」
(優しいなぁ)
高校の時から変わらない優しさに触れ、つくづく素敵な女性だと再認識した。
そのあとも少し僕は綾香と話をした。
綾香はもう友達も出来たみたいで大学生活も順調そうだ。
話の中で、新歓コンパへの参加は一人だとやはり何かと不安ということで、友達も誘って来るようになった。
僕は久しぶりに綾香と会えるの喜びと、先輩のノルマをクリア出来た事もあり安堵の気持ちでつい頬が緩んでしまう。
・・・
新歓コンパ当日。
綾香達とは事前にコンパ会場以外の場所で待ち合わせをして行くことにしていたので、少し早めに家を出た。
待ち合わせ場所に着くと、まだ綾香達は来ていないようだった。
待ち合わせの時間が近づくに連れ、僕が辺りをキョロキョロ見回していると、ジーパンのポケットに入れていたスマホが鳴った。
画面には綾香と表示してある。
(突然キャンセルとかやめてくれよ…)
そう思いながら通話ボタンを押下した。
「はい!もしもし」
「あっ、もしもし私〜」
「うん」
「勇斗くんって今日どんな服装?」
「えぇっと…白っぽいTシャツにジーパン…」
その時、トントン…誰かに肩を叩かれた。
振り返ると、綾香が満面の笑顔で僕の後ろに立っていた。
(すごくかわいい)
「久しぶりっ」
「あっ、久しぶり。」
高校の卒業式以来の再会だった。
制服姿の綾香も勿論可愛かったが、この時の私服姿は格別で、マキシ丈の薄いブルーのシフォンワンピース(ウエストベルトとフロントボタン付き)を纏った姿は正に天使と言っていいほど。
更に、ライトブラウンに染めたゆるふわパーマの髪と化粧が、高校の時とは比較にならないほど綾香を大人の女性にしていた。
そのため、気のせいかもしれないが行き交う男性の視線が、ことごとく綾香に向けられていたように感じた。
「なんか雰囲気変わったねw」
綾香からしても私服の僕は高校2年の修学旅行以来だった。
「そう?w」
僕は容姿のことを言われると何か小っ恥ずかしく、頭を掻いては視線を綾香から外した。
「あっ、この子が友達の春奈」
それを聞いてすぐさま視線を瞳へ移す。
綾香の右後ろで一歩下がった位置にいた春奈は、僕と目が合うと軽くお辞儀をした。
僕もつられてお辞儀をしたのだが、その子がまた可愛い。
芸能人?で例えるなら川口春奈似ってところだ。
「(新歓コンパが)どんな感じか分からなかったから、こんな服装で来たけど大丈夫かな?」
その言葉で再び僕は視線を綾香に戻した。
「すごく可愛いよ。似合ってるw」
咄嗟に出た僕のこの言葉に綾香もご満悦そうだ。
僕は綾香を見る傍らチラチラと春奈の方を見ていた。
バレずに視線を動かしているつもりであったが、綾香にその動きを気づかれ
「あっ、春奈の方を見てるーw」と笑われてしまう。
容姿のことを言われた以上に小っ恥ずかしかった。
「春奈、可愛いでしょw?」
僕が春奈を気にしていると思ったのか、綾香にそう聞かれ僕は困惑した。
なぜなら、まだ綾香のことが好きだったからだ。
僕は高校の時からずっと綾香に片思いし続けていた。
こういう時の正解の言葉は未だに分からない。
春奈は確かに可愛い、だが…(僕にとっては綾香さんのほうが…)という思いはあったものの、ここでそのことを伝えるのは場違いだと思い
「うん!可愛い」
と答えた。ただ、「流石、類友だね」という言葉は添えて。
それから、僕たち三人はコンパ会場に向けて歩いた。
その道中に綾香の仕切りでそれぞれ自己紹介を済ませた。
意外なことにそこでの春奈の印象は“物静か”で図書館が似合いそうってところだ。
ただ、僕と話す春奈の言動を見て綾香は“普段とは全然違う”と笑っていた。
確かに、服装を見るとデニムのショートパンツにオフショルダー程に襟が広がったブラウス。
髪もボブより短めで綾香よりも明るめのカラー、どちらかというと“活発”という言葉が似合う。
・・・
10分ほど歩くと新歓コンパの会場か見えてきた。
その会場は飲食店が入るビルの2階にあって、螺旋の屋外階段を登って行った先にある。
結婚式の2次会でも使われそうなお洒落なダイニングバーだ。
今日はそこを貸し切り。
どうも、その店の店長が大学のOBで毎年融通を利かせてもらっているようだ。
店の前の1階を見ると同年代と思われる人の群れができていた。
(うわぁ…なんか嫌だ)
これが、その群れを見た僕の第一印象。
ギャル、コワモテ、ゴリマッチョ…苦手なタイプの人間ばかりが目に飛び込んでくる。
当然、それ以外の人も多くいたが苦手なタイプの人間が気になるのだ。
前にも話したが、僕はあまり社交的ではない。
なので、出来るだけそれらの人種に絡まれないようその群れから少し離れたところで立ち止まり、開場はまだかと腕に着けた時計を見た。
僕の気持ちを察してか、時計はちょうど開場時間を示していた。
時計から目を離し先程の群れを見ると、ぞろぞろと螺旋階段に向かう動きが出来ていて、既に一部は会場内に入っていっているところだった。
(ふぅ)
僕は軽く息を吐き、意を決してその列の最後尾に並んだ。
僕の存在…というより僕の連れの女の子の存在が目を惹いたのだろう。
どこからとなく人の視線を感じる。
その視線は心地良いものではなかったが
、列の流れに身を任せお店の中に足を踏み入れた。
(うわぁ…)
予想を遥かに上回る人達が新歓コンパに参加していた。
テーブル席、ソファ席合わせて50〜60人は収容出来そうな空間が狭く見える。
僕は受付を済ませ会場全体を見回して座れそうな場所を探した。
(…ない。)
チラホラ空席のところもあるが、後の方で入店したせいか3人がまとまって座れそうな場所は無かった。
「どうする?」
僕は綾香に向かって問いかけた。
「え?ん…あそこは?」
綾香が示した先は窓際のカウンター席のようなところ。
席は外を向いていて疎外感があるが、僕にとっては丁度いいか。
「そうだね!いい?」
自然な流れで春奈にも聞いた。
「あっ、いいよ、どこでもw」
直接、春奈さんに話しかけたのはこれが最初だったが、笑顔で答えてくれてホッとする。
人とテーブルの間を抜け、最初に居た位置から半分ほど進んだところで僕の名を呼ぶ声が聞こえた。
「勇斗!!」
聞き覚えのある声に顔を振り声の主を探した。
すると、ソファ席の一角で手を挙げ僕の方を見る男と目が合う。
(須藤先輩だ!)
目が合ったところで僕がお辞儀をすると、手招きで自分のところへ来るように促された。
(あれ?なんか須藤先輩雰囲気変わった?)
須藤先輩と直接ちゃんと会うのは中学生ぶり、挨拶程度なら高校一年ぶりになる。
顔は相変わらず強面だが、当時のオラオラ感はなく、どこか清涼感が漂っていてなんか大人だった。
なぜ2つも学年が違うのに僕を気にかけてくれるのか疑問に思うかもしれないが、理由は僕の姉。
僕の姉と須藤先輩は同級生で、須藤先輩が姉に片思いしていた時期があり、僕を口実に自宅にまで遊びに来ていたりした。
・・・
開始の時間になると各々の前にシャンパンがグラスで用意され、幹事の乾杯の合図で新歓コンパが始まった。
どこの席も早々に盛り上がっていたが、この席は別格だろう。
きっかけはゲーム。
合コンや二次会にゲームは付きものだろうが、新歓コンパにもあった。
最初のゲームに選ばれたのが、ありきたりだが自己紹介ビンゴ。
須藤先輩に呼んでもらった席は三人掛けソファが2つ向き合った形で、僕たち以外にも先輩の友人とその人が連れていた女性もいた。
その女性も可愛くて桜井日奈子似のおっとりとした雰囲気が漂う人だった。
なので、3人の女性を目当てにうじゃうじゃ男が寄ってくる。
「えー、すごっ」
その綾香の声が気になり視線を向けると、一人の男が綾香に声を掛けていた。
「へぇ、藤野綾香さんか!みんなからは何て呼ばれてるの?」
「友達は綾香って呼ぶかな」
「じゃあ…オレも綾香って呼んでいい?w」
「えっ、あっ、はい。」
綾香に馴れ馴れしく話し掛けたその男は、ハッキリした目鼻立ちの俗に言うイケメン。
気になって須藤先輩に、その男の何がすごいのか思わず聞いてみた。
その男の名前は平井颯太。
ちっとも気取ったところがなく、忙しいのにこのサークルの運営にも携わってくれてる人らしい。
そして何より驚いたのは、その人の学部が医学部ってところだ。
(見た目はちょっとチャラい感じだけど、ほんとに凄い人だなあ…)
なるほど、どうりで綾香が驚いたわけだ。
もちろん、平井が声を掛けたのは綾香だけではない。
他の二人、春奈や日奈子にも声を掛けていた。
「アイツ、今日は誰をお持ち帰りするのかなw」
須藤先輩がボソッと呟いた。
「えっ?どういうことですか?」
僕は思わず先輩が呟いた言葉に聞き返した。
「あぁ、アイツあの顔で医学部だろ?それだけで、そこらの女は付いてっちゃう訳よw…あー羨ましっw」
(まじかぁ…綾香が付いてったりしないよな…)
「勇斗、お前どっちか好きなの?」
僕が黙ったことで須藤先輩が気にかけてくれた。
「あ、いや。春奈とは今日会ったばっかで、綾香とは単なる幼馴染みです。」
とても、綾香のことが好きだとは言えなかった。
「じゃあ良かった。彼女とか好きな人とかいるならアイツに近づけない方がいいぜ!」
「あ、分かりました。」
その言葉、この時の僕は単に“乗り換え”や“寝取られ”的な意味と思っていた。
・・・
自己紹介ビンゴで僕たちの席からビンゴ者は出なかったが、楽しい時間を過ごした。
新歓コンパ開始から1時間半程が経ち酒も進んで、みんないい感じに酔いが回ってきていた。
「会場も温まって来たようなので、ここで席替えをしまーす!」
幹事の男性の提案に会場の男子が沸く。
しかし僕は素直に喜べず、新しい女の子との出会いより綾香と離れるのが嫌だった。
それでも、席替え後の席が近かったのが救いだったが…
「彼氏はいるの?」
「好きな人は?」
「連絡先交換してよ!」…
などなど、聞きたくもない綾香と他の男性の会話が否応なしに耳に入ってくる。
それから閉会までの時間は僕にとっては苦痛だった。
それでも、なんやかんやで…無事に?新歓コンパという須藤先輩からのミッションはやり遂げた。
綾香は春奈の家に泊まると言っていたので、駅まで送って僕たちも解散した。
後のLINEで
「思ってたより、いい人達で楽しかった」
と綾香が言っていたので僕も一安心だ。
・・・
新歓コンパから数日後。
「なんですかコレ!?」
僕は須藤先輩の部屋に呼ばれ、パソコンのフォルダーに入っている画像を見せられていた。
画面に左右に二分割され、左側にはマキシ丈の薄いブルーのシフォンワンピースを着た女性が片手にお酒の入ったグラスを持って歩いているような全身像。
一応、顔には薄くモザイクが入っている。
右側にはその薄いブルーのシフォンワンピースを下から覗いているような角度で撮られている画像。
当然、右側の画像には二本の生足と、その奥で女性の大事な部分とお尻を覆うスカートの色より薄いブルーのパンティがそのシワまで鮮明に映っていた。
「スゲェーだろw」
須藤先輩は不敵な笑みを浮かべている。
「これって…」
僕は嫌な予感がしたが半信半疑で尋ねた。
「あぁ!綾香ちゃん…だっけw」
(えっ…どうして…)
「欲しけりゃやるし、原画もあるよw」
「えっ!?…」
僕は心は揺れた。
この時の気持ちは、好きな子が汚された感、先輩に裏切られた感、好きな子の見られたくないところを見た背徳感。
特に背徳感から来る興奮が強く、悪いことをしているという事実より“欲しい“”もっと見たい”という欲から先輩を警察に付き出そうとは思わなかった。
「知り合いのパンチラとかって興奮するよなw」
もう僕の目は画面に釘付けになっていた。
「他にもあるから見ていいぜ」
僕は画像を閉じた。
すると、そのフォルダには様々な名前のファイルがあった。
(里沙、優希、愛衣、由依…etc)
当然、その中には綾香の友達の春奈や当日同じ席だった日奈子の名前もあって、春奈のファイルを開くと…
ソファに座る春奈の姿が映し出された。
やはり、この画像も普通の人物像ではなく、短パンの隙間から白のパンティがバッチリ映っていた。
更に、春奈の画像はそれだけでなく前屈みになった際に肩越しに胸元を狙った画像もあった。
流石にバストトップは映っていなかったが、パンティとお揃いであろう白のブラが映っていた。
画像を閉じフォルダを戻すと別の日付のも出てきた。
どうも、常習的に盗撮を行っているようだ。
いつまでも画面に釘付けになっている僕。
「勇斗が協力するなら、もっと凄いのあるぜw」
(協力?凄いの?)
「えっ、何を?」
再び須藤先輩は不敵な笑みを浮かべた。
「勇斗ならそう言うと思ったよw姉ちゃんの時も協力してくれたしなw」
「いや…あの時は……」
・・・
姉との回想録へ続く
評価やコンメンを頂けたら嬉しいです。