自宅前を流れる小さな清滝川のせせらぎが朝の空気をゆるやかに揺らしていく。川に浮いた落ち葉は同じところに留まらず流れていく。川底に沈みそこで溜まり塵芥となったもの、小川の所々で出来る小さな渦の中で同じ所をくるくると舞っているものもある。
いつものように、5時半に起きて、主人の朝ごはんとお弁当を用意し、朝ごはんをテーブルに並べる。
8時半。
いつもの朝。普段と何も変わらない朝。主人は朝ごはんをさっと食べ終えると、着替えて仕事場へと向かう。いつものように玄関で挨拶代わりのソフトなキスをして主人を送り出す。玄関を出て主人と一緒に駐車場まで歩き、門扉にある新聞を取ると、
「じゃあね。頑張って」
手を振り、主人の黒のプジョーが見えなくなるまで見送る。
落ち葉が風に乗って舞い、自宅の門扉や私の愛車の赤のプジョーのタイヤの周りに落ち葉が群がっている。自宅の庭の落葉樹の葉も地面にポロポロと落ち、庭に設置した日除け用のパラソルの上にも薄く積もっている。玄関横に立て掛けておいた箒を手に取ると、落葉を集め始める。
粗方、綺麗にするのに結構な時間がかかり、肌寒いという季節なのに身体がポカポカとしてくる。集めた葉っぱをビニール袋に目一杯入れ、それを門扉の外に置いてから、自宅へと戻る。
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自宅にはまだ主人がいるような感覚がある。いるはずはないのに、リビングのテーブルの上の主人の茶碗や皿を見るとそう思ってしまう。見えないようにさっさと片付けてから、シャワーを浴びる。さっきの落ち葉拾いで汗をかいたわけではなく、これから自宅へとお客が来ることになっているので、身体を綺麗にしておくつもりだった。
シャワーの水を下からアソコに当てながら、指先を入れて膣内を丁寧に洗う。デリケートゾーンの匂いがきつくならないようにするためには、長い間かけて適切な方法で洗ってあげる必要がある。
芳香剤の入ったソープでむやみやたらに洗うのはNG。私はきちんと洗っているので、アソコの匂いがほとんどないことを知っている。
シャワーを浴びて、浴室を出る。三面鏡の前に立ち、自分のプロポーションを確認する。年齢を取り、肌に艶と張りが無くなるのは仕方ない。衰えないのはお化けだけ。人間、どんなお金持ちでも絶対に若返りは出来ない。誰でも必ず衰えていく。だから、その衰えなをいかにゆっくりとするか、その調整がとっても大事。
ふと、職場から電話が入っているのに気づく。職場に電話する。
「おはようございます。大山です。どうしました?」
「先生…○○さんという患者さんから電話があって、……とのことなんです。これって、大川さんのことなんで、明日でいいんで処理してもらえますか?」
「分かりました。明日します」
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男は私の自宅でセックスをしたがった。たまに行くラブホテルよりも私の自宅のほうが良いらしい。男が私の家に来るようになってから、ベッドのシーツを5枚、主人には内緒で買った。男は私の身体を毎週のように求め、その男は主人との愛の巣であるベッドの上で私を求めた。
私の性格なのか…「君が主人と愛し合っている場所でセックスしたい」…という男の要求に強くノーと言えなかった。
本当は自宅のベッドで抱き合うことは嫌だった。男との会瀬の跡を残したくはなかったし、ましてや主人と毎週末にセックスするベッドで抱き合うなんて考えられないことだった。でも、私は男の言葉にしたがった。
その代わり、シーツを何枚も買い、男に抱かれ、行為が終わった後の生々しいシーツは、夜までには毎回取り替えた。シーツに染み付いた男の匂い、飛び散った私の愛液そして汗の痕跡を残すシーツは太陽の光、もしくは洗濯によって、その痕跡を跡形もなく消し去り、また白く生まれ変わっていった。
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ピンポーン
愛犬の柴犬がケージの中で頭をもたげ、その音に反応して数回吠える。
リビングのモニターで訪問客を確認してから、門扉の鍵をリモートで開錠する。
「おはよう、さあ、入って」