真夏の浜辺の優くん

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「お姉ちゃん誰?」

「わ、、私?私は、秀世、桂木秀世って言うのよ?」

「へ~、同じ名字の人って初めて!僕は桂木優!小学校三年生だよ!!」

「!、、(え、、優さま!?)」

これは、七里ガ浜で起こった夏のはじめのミステリー。

私は優さまと二人で、初夏の鎌倉をデートしていた。極楽寺坂から稲村ヶ崎へ抜けて、

「少し疲れたね!何か飲み物買ってくるから待ってて。」

優さまの優しさに感謝しながら、浜辺に腰掛ける。人はそこそこ多いのだけど、まだまだのんびりとした日差しの中。

つい、うとうととして、ハッと目を覚ますと、私の周りは真夏の太陽の下、海水浴客でいっぱいになっていた。

「(これは、、いったい?)」

途方に暮れていた私の前を、その子はキョロキョロといかにも迷子という、それでいてこのまま一人っきりになるなんて微塵も考えていない、愛されている自信に満ちた顔で歩いていて。

思わず『どうしたの?』って声を掛けちゃったんだ。

そしたらその子、何て言ったと思う?

「知らない人に声を掛けられても、答えたりついていったりしてはいけないんだって。でもお姉ちゃん美人さんだから別に誘拐されても良いや!」って。

マセガキ(笑)!!

「優くんって、どこから来たの?」

私は連れ添って、この子のご両親を探した(多分、若き日の三月お義父様と沙織お義母様なんだと思う)。

「ん~僕は東京の〇〇からだよ。お姉ちゃんは?」

「私は、横浜の〇〇からだよ」

「へえ~。でもおかしいね。いくら人が多いったってそんなおおきな浜辺でもないのにとうさんもかあさんもどこへ行っちゃったんだろう」

「、、、、」

優さまが昔お住まいだったところは聞いたことがある。優さまは保育園の途中からこの場所に引っ越してきて、そこで美幸さんに出会ったんだ。

「ん~、みんなどこに行ってんだろう、、」

年の割にはしっかりした印象の彼もやっぱり不安そうだ。無理もない、彼はまだ小学三年生。それにちょっと疲れてきているようだ。

「ねえ、優くん。お姉ちゃんも一緒に来た人とはぐれちゃったんだけどさ。ちょっと喉が渇いちゃった。少し休むの付き合って貰えないかな?」

優くんは、しょうがないなあという顔をしながらも、

「良いよ!こういう時は無理に動き回らない方が良いって、達也お兄ちゃんが言ってたし」

「うわあ!美味しいや!」

浜辺のカフェで、トロピカルドリンクに舌鼓を打つ優くん(まだ小さいから優くんで良いよね!)。

「お姉ちゃん、彼氏さんとデート?」

「、、、ませてるね、優くん」

「今どきの子はこれくらい当たり前だよ」

う~ん、私の想像通りなら、私は今から10年くらい後から来た人類なんだけど、人類は退化しちゃったのかな。

「デートだけと、彼氏とじゃないんだ。旦那さま」

「ええっ!お姉ちゃん、人妻なの?もったいね~」

「、、、どういう意味よ、マセガキ!」

テヘッと笑う優くん。反則級の可愛いさだ。

、、そうか、この頃の優くんって、今の優さまよりはるかに沙織お義母様に似ているんだ。

「、、、まさかと思うけど、実は40歳とか言わないよね?」

「どういう意味よ!!」

「ひえ~怒った~」

「、、ああ!おかあさまの見た目が若いの?それで私もって思ったの?」

「うん、、」

「私は18歳よ。それと、簡単に女の子に年を聞いちゃ駄目!」

「聞いてないよ?お姉ちゃんが勝手にしゃべったんじゃん!」

「うぐぐ、、」

口が回る!

まあ、沙織お義母様の見た目が実年齢とあまりに違うことについては、実は雪女の末裔か何かで年を取らないのではないかと疑っている。でも、そうすると優さまも年を取らないの?やだ!困る!!

「お姉ちゃん、若い身空を結婚で潰しちゃったんだね。慌てる必要無かったのに」

「何でよ」

「だって香緒里ちゃんなんか、23歳で出会った人と40歳で結婚してラブラブだよ?」

それはそれで極端な気がします。

あんまり「もったいね~」とか言うので、ちょっといたずら心が芽生えた私は、優くんに聞いたんだ。

「じゃあさ!私、旦那さまと別れるからさ、大きくなったら、優くん私を貰ってくれる?」

「ん~、僕は駄目だ。美幸がいるからね」

ズキン、心が痛む。

「美幸ちゃんって?」

「ああ!僕の隣に住んでいる女の子。生意気でさ~、最初は僕に”お前は子分だ~”とか言ってたんだけど」

「だけど?」

「あいつ、実は寂しがりやでさ、泣き虫でさ。でも、この間、遠足の日に僕が風邪引いたら、一緒に休んで看病してくれたからさ、代わりに僕が守ってやることにしたんだ!」

「一生?」

「うん、あいつが僕から離れて行かない限りね!」

うん、優くんはその言葉通り、美幸さんを守り続けて、中学生の時は大好きな空手までかなぐり捨てて、でも、その約束は果たされなかった。

どれほどの想いがそこにあったのか、どれほどの怒りが後悔が渦巻いていたのか。

そして、罪深いことに、私の幸せは、その約束の崩壊の上に実現したんだ。

「、、、、」

「、、お姉ちゃん?」

「、、う、、」

「泣いてるの?」

「、、泣いてないよ」

「、、でも、、」

「大丈夫だよ、、」

「何が大丈夫なの」

「何でも、」

「、、、めんどくさ」

「ひど!!」

「お姉ちゃん!」

「、、ん?」

「お姉ちゃんってかあさんに似てる」

「、、え?」

「僕はお姉ちゃん好きだな~」

そっか、優くんから見ると私と沙織お義母様は似ているんだ。

優くん、忘れないで。いずれ私は君のパートナーに、そして奥さんになるんだよ?

「あっ!と~~さ~ん!!」

「、、え」

「お姉ちゃん!こっち!も~どこにいたんだよ!!」

優くんが立ち上がって駆け出していく、、見えない、、、動けない、、、

「お姉ちゃん!僕のとおさんとかあさん!そして美、、、、」

美しい虹の中に巻き込まれるように、私は意識を失った。

「秀世、、、秀世!!」

「う、、、、ん、、、、」

「お~い、こんなところでうたた寝してると連れ去られちゃうぞ」

「あ、、れ、、優くん、、、」

「ゆ、、優くん!?」

「おやすみ~」

「まて!まて!まて!まて」

「秀世、、悪かった。体力欠落少女のお前を引っ張り回しすぎた」

「、、、一言多いです!!」

ちょっと早い時間だったけど、私たちは鎌倉のホテルにチェックインした。

優さまは「少し休んでから夕食を食べに行こう」って笑った。

「優くんか、、、」

「はい?」

「いや、、秀世にお願いなんだけど、優さまじゃなくて、優くんって呼んでくれないかな?これからは」

「でも、、、」

『優くん』は美幸さんが呼んでいた呼称。そう呼ばれたあなたは、少し苦しそうにするじゃない。

「もし俺が苦しそうに見えたならごめん。でもさ、お前の”優くん”呼びには、それに勝る暖かさがあるんだぜ!?」

「あなた、、」

「それに今だけなんだぜ?うちのバカップル夫婦だって、俺が生まれたらパパママ呼びに変わったんだから。」

「はい、、じゃあ、優くん、、、」

「うん」

「優くん!!」

「ああ!今後とも宜しくね?秀世、、」

私の旦那さま。

私の大好きな旦那さま!

目の前の優くんは、あの子より男っぽい、でも不思議とあの面影の漂う笑顔で私に笑いかけてきたんだ。

「、、、あ、あっ、、う、、うん、、ゆ、優くん」

「どうしたの?」

「あっ、あっ、、こ、これ以上は、、あっ、ま、まっ、、あっ!き、、休憩に、、ならな、、あ!あ!!」

「、、ここ?」

「ちが!、あ!あ!駄目!そこ、、駄目ぇ~

「うわぁ、相変わらず指一本がきつい」

「う!動かさな、、あっ!やっ!いっ、、逝く、、」

「逝きたい?」

「あっ!いっ!逝ったら、、許して、、くださいま、、あっあっ!!」

「うん、、逝きっぱなしかな?」

「やっ!だっ、、駄目、、おかしく、、」

「残念だな~」

「あっ!あっ!やっ!」

「逝きたい?」

「、、、、」

「逝きたい?」

「(逝きたいです)」

「そう!」

「あっ!あっ!あっ!いっ、やっ!逝く逝く逝く逝く、、、、、っくう~~はあぅ!!」

優くんは逝っても逝っても許してくれません。

「はあ、、はあ、、はあ、、はあ、、」

「秀世、、子供作ろうか」

「はあ、、はあ、、はい?」

頭が朦朧として良く分からない。

「うん、じゃはじめようか」

「え、、え!ま、、まってまって!な、、生は、、生は、、駄目、、あっ!やっ、、あ~~~!」

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