波乱の教育実習が続きます。そして人生二度目となるレイプの犯行現場に遭遇しました。

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この物語は、シリーズ第23話で教育実習4日目のエピソードとなります。

今回のストーリーも前日からの続きになります。

前回私は、下宿の自室で実の姉さんと思いがけず結ばれ、重なるようにして眠ってしまいました。

そして、その夢の中では幼い私が、小学生の姉さんを追いかけています。そんな幸せな夢に包まれながら朝を迎えました。

今回のストーリーはそこから始まります。

私と姉さんはどうやら繋がったまま眠ってしまったようです。そしてそのままどれくらい時間が経ったかは分かりませんが、姉さんの決して軽くはないカラダの重みと温もり、そして食堂でおばさんが食器を洗う「カチャカチャ」という音で目が覚めました。

また、隣の1年生の部屋からは夜に聞こえたのと同じ音楽が聞こえていて、カセットが何度もリピートしていたようです。その1年生はステレオを消さずにそのまま寝てしまったのでしょう。

いつの間にか姉さんに肌掛けがかかっていてカラダを冷やすことはありませんでしたが、二人が繋がっていた部分がヌルヌルしていて夜に行った行為を証明しています。

そして姉さんも目を覚まして「おはよう。まーくん。やっちゃったね。」と言いながらキスをしてきました。

そしてソレを受け入れ、舌を絡ませ終わると私の舌と姉さんの唇が瞬間的に唾液の糸で結ばれました。その時私のアレから、それがサヤに収まっていて何か包まれていてあたたかい感覚が伝わってきました。

そうしながら姉さんがゆっくり上半身を起こすと、私のアレが姉さんのアソコの奥底に深くにヌルッと突き刺さります。

昨晩何時までそういうことが行われていたかは分かりませんが、どうやら繋がったまま寝てしまい、今は朝勃ち状態で突き刺さっているものと思います。

そして姉さんがもう一度私の前にカラダを倒して耳元で囁きます。

「もう一回いい?」

すると姉さんは私のモノをその胎内で複雑に刺激します。姉さんのカラダは動いていないのに、アソコだけがどう表現したらいいのかわからないぐらいにウネウネしています。そこで確実に言えるのは、姉さんの中で2箇所ぐらい強く締め付けられているところがあるということでした。

その気持ちいい刺激は寝覚めの脳みそを覚醒させるには充分のものです。ソレは、尿意を我慢しているのか射精を我慢しているのか分りません。

そして、再び姉さんが体を起こした時、その勢いで先端部が姉さんの一番奥にめり込むと、その先端部が何かに吸い付かれたようになりその刺激でいきなり発射してしまいました。

「あれっ?もう出ちゃった・・・?仕方ないね・・・」

姉さんはそう囁きながら立ち上がりました。

その瞬間、偶然が意図してなのか分かりませんが、強く締め付けられたまま引き抜かれたようになりものすごい刺激です。

「うっ・・・」

今日今まで繋がっていた姉さんのアソコを見ると、私の先端部と姉さんのパイパンのアソコが粘液の糸で結ばれ、二人のアソコ同士が離れたくないと言わんばかりです。

そして二人の粘液から作り出されたその糸がカーテンから薄く差し込む朝日に反射して光りました。

姉さんは硬さを失わない私のソレを確認するとちょっと照れたような顔をしています。

「一回じゃおさまらないよね。若いんだもん・・・。姉さん、責任とってあげる・・・。」

そういうと、左手で髪をかきあげ右手で私のソレを掴みました。

「本当に父さんそっくり。この先っぽなんか特に・・・・」

姉さんは再度左手で前髪をかきあげゆっくりソレを口に含むと、最初はゆっくりその顔を上下させました。すると、急に何かで吸い込むように顔の角度を変えながらを上下させ、時々「ジュポッ、ジュポッ」といういやらしい音を立てています。それにしても、もの凄いテクニックです。

この音は、以前、先輩の部屋で見せてもらったエロビデオの1場面でAV女優がしていたバキューム何とかと同じ音です。てっきり、そのビデオでは効果音としていやらしくそんな音を効果音として挿れていたのかと思っていましたが、こんなところでそんな生音が聞けるだなんて驚きです。

そうしてる間にいきなりイきそうになってしまい、私は姉さんの肩をトントンして知らせましたが、やめる様子はありません。むしろだんだんそのバキュームが強くなってきました。

「姉さん・・・ちょっと・・・ダメ・・もう・・・わかったから・・・」

我慢の限界に達したその瞬間、本日二度目となる精子を今度は姉さんの口に放ってしまいました。ソレでも止めない姉さんの前でまなすすべもありません。私は「うっ、うっ、うっ・・・」としか言えず、右足の太ももなんか痙攣を起こしています。

それが終わり、口をティッシュで拭きながら立ち上がろうとした姉さんが一瞬その動きをとめ、自分自身のアソコを触りました。

「いっぱい出て来ちゃったよ。これって夜の?それとも今の?」

そう言いながら立ち上がると「どうするこれ?」と、私に問いかけます。

そんな姉さんは、今度は屈むようにしてもう一回自分の股間を1回触って、その指をVの字にしてそのネバネバの糸を確かめています。

私はそんな姉さんを見ながら「新婚さんの朝ってこんな感じなのかな?」なんて自分勝手に幸せな感じに耽っていました。

すると姉さんはおもむろに押入れを開けて中のタンスをゴソゴソし始めました。

「これとこれかな?」

姉さんは小さく囁くと、その手にはTシャツと短パンが握られています。

「コレ借りるね。あと、もうちょっときちんと畳んで入れなさいね。それに、奥にあるクルマの部品なんとかしなさいね。」

そう言いながら姉さんは、ハダカの上にそれをポロッと着てさらに干してあったタオルを手に、ドアの前に寄せて置いたコタツをどかして部屋から出ていきました。

それを見ていた私は違和感を感じました。それは姉さんが自分の部屋のように何がどこにあるか分かるかのような動きをしていることにです。

私もトイレに行こうとして適当なシャツを探していると、廊下の奥で「キャッ」という悲鳴に近い声と誰かと出会ったような会話が聞こえてきて、バタバタと誰かが走って来たかと思うと隣の部屋のドアがバタンと閉まりました。

どうやら姉さんは、洗面所かどこかで隣の部屋の1年生と出会ったようです。しかも、その隣の部屋からはどういう訳かベットがギシギシ軋む音が聞こえて来てきました。

さっき出て行った姉さんはもちろんノーパンノーブラです。そしてしばらくした後、隣の部屋のギシギシが激しくなってきた頃、濡れタイルを持った姉さんが戻ってきました。

「洗面所の水道、調子悪いんだね。捻った途端これなんだもん。」

そういう姉さんの格好を見ると、さっき着たばかりの白いTシャツがびしょ濡れで、ノーブラの胸が張り付いてピンクの乳首まで丸見えです。しかも、急に水がかかったことからその乳首なんて立っちゃっています。

さらにグレー色の短パンまでびしょ濡れで、パイパンの割れ目が食い込んでいるのがはっきり分かります。

下宿の洗面所にある水道の一番端っこの蛇口は、隣にある洗濯機に繋がっていて、その分技のところについている蛇口の調子が悪く、触ると水が吹き出すため下宿の住人は触らないようにしてました。

でも、結局そこが場所的に一番使いやすい場所になるため、時々知らない人はそのトラップに引っかかっています。

朝からこんなものを見せられた隣の1年生はたまったもんではなかったと思います。それで、現在発電中というところかと思います。

その姉さんはそんなことなんか全く知らない顔をしています。全く罪つくりな人です。しかも私を見て微笑んでと「コレ」言いつつ手に持った濡れタオルを私に渡しました。

「これ使って。ソコ吹かなきゃ。」

姉さんは再び全裸になりながら私の股間を指さします。さらに

「姉さんはシャワー使うから・・・。それとも一緒に浴びる?」なんて言い出しました。

自分としては一緒に浴びたかったのですが、流石にここは下宿です。昨日の朝一緒にシャワーを浴びた舞さんのようには行きません。

「姉さん、ここ下宿だよ、ダメだって。でもタオルありがとう。助かる。」

私は凄く残念な気持ちでこの申し出を断ったと同時に、隣の部屋からのギシギシ音が止みました。どうやら充電満了を迎えたようです。

すると、姉さんはなんか鼻歌なんか歌いながら私が着ようとしていたTシャツを羽織り、椅子にかかっていたバスタオルを手にして風呂場に向かいました。

通常、下宿の朝のシャワーは禁止だったのですが、その時姉さんはおばさんに頼んで特別に使わせてもらったようです。

その後、部屋に戻った姉さんが「この部屋乾物臭かったからちょうどよかった。」と言いつつブラウスに袖を通しながら、壁に掛かっていた鏡を外してコタツの上の雑誌を土台にしてセットし直すと、ペタンとあぐらをかくように座りました。

すると先ほどクルマから持ってきたという化粧ポーチを開いて化粧を始めるとたちまち部屋の中が化粧品の匂いで充満しました。そして元々色白だった姉さんの顔がみるみるファンデーションとマスカラで顔色が整えられています。

そしてちょうどその姉さんが眉を描いている時、私がワイシャツを着ながら「昨日、学校で大変なこと起きちゃって。今日も大変かな・・・?。」と私が独り言を言うと、姉さんがそれに反応しました。

「何、それって不純異性交遊とか?」

と言いながら、今度はマロではなくなった姉さんが目を押さえながらアイシャドーを引いていて、鏡と睨めっこしています。

「ソレくらいならまだしも、実習生が1年生に手、出しちゃって・・・」

そう言っている間に姉さんの目がキリッとした二重目になりました。

「その二人って付き合ってたの?」

そう聞かれた私が姉さんを見ると今度は口紅を塗っています。

目力の戻った姉さんがそう言うと、なぜか私が怒られているような錯覚に囚われます。

「出会ったばかりで全然そんな関係じゃないんだ。なんか、実習生の方が一方的に迫って言いくるめて・・・ラブホ連れ込んでヤっちゃったらしいんだ。」

「その後その1年生はどうしたの?そのフォローはどうなってんの?」

「学校休んじゃってる。その娘放送部なんだけど、その部長のところに電話があったみたいで、この娘怖くって何されたか分かんないって。そして、その実習生とラブホ出てきたところを補導されたって。」

「えっ?、補導されちゃったの?」

そう言いながら姉さんはシュッといい匂いの香水を手首に吹きかけ両手首同士擦り合わせています。この時姉さんはなぜかその「補導」と言う言葉に反応しました。やはり元警察官です。そして、姉さんの付けた香水の甘い匂いが部屋中に充満しました。

「うん。なんか初めはその娘、僕と話したくって実習生の控え室に来たんだけど、別の実習生が割り込んで着て僕と話出来ずじまいだったんた。そこで僕がキチンと話聞いていればこんな事に何なかったって凄く後悔・・・・。」

「その娘、なんでまーくんと話したかったの?分かる?」

「どうもその娘、僕のことが・・・・・。」

「まーくんのことがどうしたの!」

「好きになっちゃったみたいなんだ。その部長曰く一目惚れだったって言うんだ。でも、僕がキチンと話聞いてやれなかったばっかりに・・・・。凄く責任感じてる。」

この時、なぜか取り調べを受けているような錯覚に陥りました。私は、高校3年生の時傷害事件で警察から取り調べを受けていて、その時の警察官と姉さんの口調がとても似ているような錯覚に陥ります。

「まーくん。なんか女子高生が教育実習の先生を好きになっちゃうなんてありがちな話だけど、本当にあるんだね・・・。」

「姉さんがその娘に逢うことってできるかな?ちょっと話してみたいの、手遅れになる前に。」

「姉さんゴメン。もう僕がどうこうできる話じゃなくなっちゃって・・・・。でも、担任の小林先生に相談はできるかな?」

「それじゃ、今日も学校に行く時小林先生を送って行くことになっているから、僕の代わりに小林先生を姉さんのクルマで送ってくれるってのはどう?。そのことは車の中で話すればいいんじゃないかな?」

そう話が決まり、今日も他の下宿生の朝食時間前に食堂で朝食を摂っていました。今日はいつものふたばに加え姉さんと3人揃っての朝食です。

私が塩鮭の骨を外すのに苦労していると、私の右に座っていたの姉さんが器用に塩鮭を箸でほぐしながら、ふたばの母さんである下宿のおばさんに声をかけました。

「すいません。いきなり来て泊めていただいたうえに朝ごはんまで・・・」

すると、何か洗い物をしているおばさんが作業を止めることなくソレに答えます。

「いいのいいの。料金前払いでもらってるから・・・。ふたばのこといつも送ってもらってるでしょ?本当ならバス代かかるところ乗せてもらってるからね」

すると、ご飯を飲み込んだ姉さんが神妙な面持ちで答えました。

「どちらにしてもありがとうございます・・・」

そんなハナシの最中、私の向かい側ではふたばが味噌汁のお椀を片手に姉さんの顔をじっと見ていました。

「あっ、お姉さん。なんか化粧のノリいいですよね。ファンデーション何使ってます?」

今度はそんなふたばが姉さんに化粧品のブランドなんか聴きながら味噌汁をすすっています。

すると姉さんは一度箸を置いてソレに答えます。

「これね。わたしの母さんの同級生がやってる薬局からモニターで提供されてるヤツなの。なんか、メーカーの新商品なんだけど、これ、メーカー名も何にも入ってないでしょ?それで、その何かわかんないの使わされてんの・・・。」

姉さんはそう言うと、傍に置いた自分のバッグから何かを取り出した姉さんが何かのケースを見せながら説明しています。

そして、そのバッグから化粧ポーチを取り出しその口を開くと、透明なビニール袋に入った試供品がいくつか入っていました。

「もう、わたしの母さんね。コレ全部試せって言うの。わたしのことなんだと思ってるんだろうね。」

そんな女子の会話が続くと、その説明がメイクの方向に変わってきました。

「なんかこのアイシャドーちょっと濃いと思わない?。今日初めて使ったんだけど・・・」

姉さんがふたばにそう問いかけた瞬間、今度は流し台に向かって何か作業をしていたふたばの母さんが振り返って話に割り込みました。

「ねえ、ふたば・・・。麻美子さんにお姉さんになってもらいなよ。アンタたち見てると本当の姉妹みたい。母さんね、ふたばに兄妹いなくって寂しい思いさせちゃったから、なんか申し訳なくって・・・・。」

すると、ふたばがたった今まですすっていた味噌汁のお椀ををテーブルに置くと立ち上がり、自分の母親を約10センチ高い身長から見下ろしました。

「母さん。それって、遠回しにコイツと一緒になれって言ってるのと同じだよ。全く、自分の親ながら諦めが悪いっていうか、本当にいい加減にして!」

ふたばはそう言いながら私を指さしながら激怒しています。

するとそのおばさんが麻美子姉さんの後ろにさっと移動すると、両肩に手を置いて姉さんの耳元で囁きます。

「麻美子さん。ふたばって本当に怖いの。おばさんね、何年か前の夏休みにふたばが弟さんの横っ面引っ叩いて、弟さんが吹っ飛んでいくところ見ちゃったの。それから、なんて言っていいか本当に申し訳なくって・・・・」

「本当だったら、この大きいの差し出してお詫びしなくっちゃならないんだけど・・・」

と言いながらふたばを指さしています。

すると今まで黙って話を聞いていた麻美子姉さんが「コホン」と咳払いして振り返るとそのおばさんを見つめました。

「あっ、気にしないでください。お詫びだなんて滅相もありません。多分、わたしの弟がふたばさんにものすごく失礼なことをしたに違いありません。」

「謝らなければならないのはこちらの方です。本当にこんな変態弟をここに置いていただいて申し訳ありません。実はこのオトコ制服マニアでして、わたしが警察官だった時、その制服姿を見る目がいやらしいと言ったらありゃしない程でした。」

「しかも今、どこで入手したか分からないどこかの女子高生のセーラー服を今も隠し持っているくらいですので・・・。しかも、ものすごく小さいヤツだったんでもしかするとロリコンっていうやつかもしれません」

姉さんは、いつの間にか押し入れに中に置いてあるタンスの奥底に大事に保管していた「ブツ」を発見していたのでした。

コレってもちろんあのマコトのもので、そのマコトが北海道に渡る間際に預かったモノです。

忘れていました。麻美子姉さんが元警察官だったことに。現役の頃は交通課勤務でしたが、痴漢の捜査だったり女性がらみの事件や風俗店などの家宅捜索があると別な課の警察官と行動を共にしていることがあると聞いたことがありました。

そんな話のついでに、その時「大好き」と話していた特殊警棒の使い方なんて聞かせられていて、「剣道一筋だった姉さんらしいな」なんて思ったことを思い出しました。

今の状況を分析すると、私の部屋がいつの間にか家宅捜索を受けていたと言うことになります。

「姉さん。いつの間に・・・。人の部屋、勝手に粗探ししないでよ。」と私が抗議すると姉さんがサラッと答えます。

「母さんから、捜索差し押さえ令状もらってるから・・・。」

するとふたばが椅子に座ってお茶を飲んでその湯飲みを「トン」とテーブルに置きました。

「あっ、お姉さん。わたし知っています。コイツの彼女ってものすごく小さくって、お人形様のようでした。」

そう話すふたばは「その小さくって」という説明の時、その身長が自分の胸くらいだと言うゼスチャーも加えました。改めて考えると身長差が40センチはあると思います。何せ、このふたばの身長は185センチです。

「しかも、今バスガイドをしていて、一度見たことがあるんですがその制服もとってもかわいいヤツです。」

今までふたばを見つめて話を聞いていた姉さんがゆっくり視線を変え、私を見てため息を吐きました。

「すいません。本当に筋金入りで・・・・。でも、県の青少年育成条例や他の犯罪に走らないようにだけはキツく言い聞かせますので暖かく見守ってやって下さい。」

もう、姉さんには敵いません。年も離れていて小さい頃から体力的にも勝ったことなんて一度もありませんが・・・。そんな時、姉さんの他にも身近に敵わない女性がいることを思い出しました。

しかも、その人の弟と麻美子姉さんが付き合っていて、プロポーズを受ける受けないの話をしたばかりです。

もし、姉さんがその弟さんと結婚しようものなら、その人は私の義理の姉さんになってしまいます。なぜか、背筋に寒いものを感じました。

そうこうしていると今日もまた玄関から「すいません。ふたば先生いらっしゃいますか?」と言う聞き覚えのある声が聞こえました。

そうです。その声の持ち主は、私の義理の姉さんになってしまうかもしれないその小林先生です。

今日もふたばが玄関まで出ると「ゴメンなさい。今日も早く行かなくっちゃならなくって・・・明日からは自分で行けそうなんだけど今日だけ一緒にお願いできる?」と言う会話が聞こえてきました。

すると麻美子姉さんが玄関まで出て、「わたしが送りますので大丈夫です。」と言って、手早く朝食を済ませると、誰かのサンダルを履いて外に出て行きました。

すると、「キュキュッ、ボボッ、ボーーーー」とブルドッグが始動した排気音が聞こえて来ました。そして、低重音の音圧で玄関のガラス戸が「ビリビリ」と振動しています。

その後、姉さんは私の部屋に戻って手荷物を抱えると、玄関で待っていた小林先生を誘導して再び外に出ました。すると今度はドアが閉まる音が2度続けて聞こえた食後、小林先生を乗せたブルドッグが一足先に高校へ向けて出発しました。

駐車場から道路に出た姉さんのブルドッグは、その図太い排気音に加え「キューン」と言うタービン音とシフトアップの時の「ブシュー」という音を残してその姿が消えて行きました。

その後を追いかけるようにして私とふたばを乗せたハチロクが学校へ向けて発車し、その車中で助手席のふたばが昨日よりちょっと早い時間帯の車窓を見ながら口を開きました。

「麻美子さんって、なんかいいね。自由っていうか、束縛するものがないっていうか・・・。母さんが言うとおり麻美子さんがわたしの姉さんっだったら良かったのに・・・。」

ふたばがこんなことを言い出すのは意外でした。しかも、あんな悩みを抱えている姉さんも、他から見ればそんな風に見えるなんて意外でした。でも・・・。

「なあ、ふたば。麻美子姉さんがふたばの姉さんになるってことは、おばさんが言ってるように僕たち結婚しちゃうことが前提だけど・・・」

私が話し終わる前にふたばがそれを遮りました。

「それはない!」

「そりゃ、母さんはそれを望んでいるみたいだけど、アンタとね〜・・・。」

「どう考えても今となってはやっぱりムリ。」

「そんなちっちゃいのでわたしに挑もうだなんて10年早いわね。」

そう言うふたばに、私はちょっと意地悪な反撃をしてみました。

「あれっ?アノ時はそんな感じじゃなかったような・・・・」

「バカっ!アンタって人はこんな朝からそんな下ネタ・・・」

「それって、ふたばが始めた話じゃん。」

「アンタって本っ当にバカね。こんなバカでデリカシーのかけらもないヤツ初めて見た。」

するとふたばは何かを思い出したかのように急に黙り込んでしまいました。そして、何かを決心したように再び口を開きます。

「でも、これこそこんな朝からする話じゃないけど・・・・。このハナシ、5分で忘れてね。恥ずかしすぎて死にそうだから・・・。」

「わたしね、アンタを諦めるのに凄く苦労したんだからね・・・いろんな理由かき集めて自分を納得させるの大変だったんだから・・・」

「あの時なんで流産しちゃったのかって、今でも思うの。これまで何度も考えて整理ついてるのにね・・・・。でも、それがなかったらわたしとアンタ・・・学生結婚してたんだよね。」

「まっ、どちらかが学生辞めていたとは思うんだけど・・・。」

「でも、結果オーライなんじゃないかって思うようにしたの。わたしもアンタも収まるべきところに収まりそうで・・・」

この件は以前にも話し合って整理はついているはずでした。

でも私は、今でもふたばを妊娠という辛い思いをさせてしまっていたことを気にしていました。多分、これから一生こんな想いをするのだろうと考えていたところです。

「ふたば。本当にごめん。実は、成人式の時ふたばが体調悪そうにしてたの気づいていたんだけど、どうもそれが妊娠ということと結びつかなくって・・・。その時気づいていれば、ふたばに辛い思いさせずに済んだのかもしれない・・・」

恐らくふたばも同じだと思います。

「わたしだってそうだよ。生理が来なくって焦ってはいたんだけど、その妊娠ていう現実を受け入れなかったの・・・。自分のことなのにね。」

「生理が来なくってだんだん体調が悪くっなって来て、2ヶ月過ぎた頃やっと妊娠検査薬で調べてみたの。生理なんていつも気まぐれで来てたし、今回もそんな感じだと思いたかったのね・・・。そして妊娠検査薬も多分陰性って出ると思って調べたら陽性の印出ちゃって・・・。」

「その印を何回も何回も見直したの。間違いじゃないかって・・・。」

「でも、それが現実だった・・・。アンタの精子とわたしの卵子が出逢って・・・受精して・・それが子宮に着床して・・・わたしの遺伝子情報とアンタの遺伝子情報が組み合わされて、それで細胞分裂しながら一人の赤ん坊になろうとしているっていう現実。」

「アンタと出会う前まではさ、小学生の時自分の身に起きたことはソレ自体意味がわからないことだったから、自分の身に起きたことを受け入れることが出来なかったけど、今はもう大人でしょ?しかもあれだけヤリまくった後でしょ?。」

「何をしてそうなったかは明白なのにね・・・。哺乳類として、お互いの遺伝子を後世に残すっていう行為をあれだけしたのにね・・・。」

「なかなかその現実受け入れられなかったの。いや、受け入れたくなかったの。」

「でも検査薬で結果出ちゃったらもう目の前が真っ暗になっちゃって・・・アンタに相談しようとして受話器まで持ったんだけど・・・・結局指が震えて短縮ダイヤルボタンさえ押せなかったの。そしてその日は何も考えられなくなっちゃって・・・。」

「その後、ご飯食べるのさえ忘れて1日ぼーっとしてたらいつの間にか部屋の中暗くなってて時計見たら夜中になってて・・・。そこでなんか食べなきゃって思ってカップ麺食べようとしたら、無意識にこんなの食べちゃダメってカラダが言うの。」

「お腹の子守んなきゃって・・・。」

「その時自分に起きたことを受け入れたのね。そしてその次の日に、鏡見るたび自分は妊娠してるんだって自覚するように、小さい頃から伸ばしてた髪をバッサリ切ったの。」

「美容院で本当に切っていいんですか?って3回聞かれて、ハサミ入れる瞬間本当に切りますよって聞かれて・・・・。バッサリ行って下さいって答えて切ってもらったんだけど、何せ切ったのが4〜50センチあったもんで美容師がビビッちゃって。」

「それから自分でも自覚して来たのが分かって来て・・・それまではよかったんだけど、まっ、よくはないけど・・・ソレからだよ・・・悩んだの。」

「お腹にいるアンタの子に愛着湧いて来ちゃってるけど、アンタに喋ったら絶対に結婚するって言うの決まってるし、でも、今大学出ておかないと、この後一生迷惑かけちゃうし・・・。」

「堕胎そうか生もうか本っ当に悩んだの。そしてわたしの中で一つの結論に達したの・・・。」

「私生児として産んでなんとか頑張ろうって。とりあえず、母さんには後で打ち明けようって。父さんには話す勇気はなかったけど・・・。」

「それから何日かたったその朝、トイレに行ったらなんか少し出血してたのね。まだ安定期に入るまで期間があったから不安には思っていたんだけど・・・。学校行こうとして歩いていたら急にお腹痛くなって来て・・・・気がついたら知らない男の人に抱えられてたの。」

「そして次に気がついたら病院の診察台の上で・・・残念でしたって。」

「そうこうしているうちにアンタの従姉妹の芽衣子さんにお世話になって・・・その後はアンタの知ってるとおり・・・。」

「泣いたよ・・・・その夜。もう、一生分の涙流して枯れちゃうんじゃないかって言うほど・・・」

「ソレは、お腹の子がいなくなっちゃったってことはもちろんだったけど、自分のことが怖くなっちゃうようなことも分かって・・・コレが一番ショックだった・・・」

「お腹の子と一緒にアンタがいなくなっちゃったって・・・。アンタの子が生まれていればいつかアンタと一緒になれたんじゃないかって、心のどこかで思ってたのね。ショックだった・・・その時、本当にわたしって女々しいオンナなんだなって思ったよ。」

「大学生になってアンタと出会うまではオンナ捨ててて、高校生に時はオトコの睾丸握り潰しちゃうようなオンナだったのにね。アンタに出逢ってオンナ取り戻して、ますますオンナってモノになっちゃったのね。」

「でも・・・・全部過ぎたハナシ。もう、全部時効。私はいずれその時助けてくれた武田っていうオトコのモノになって、子供産んで年取っていくの。」

「アンタもそう・・・。あのちっちゃい彼女と一緒になって家庭築いて生活するの。いずれあの小林先生だって、麻美子さんだって・・・。」

「しかも、アンタとこの前一緒にどっか行ってきたあの彼女にも彼氏ができたし、いっつもつるんでたあの織田っていう友達もそうなんでしょ?みんな丸く収まってるじゃん。結果オーライ。後で考えれば多分若気の至ってことになるから心配しないで。」

「でもアンタ・・・。アンタは丸く収まる前に一仕事残ってるよ。あの優子ちゃんのこと。あの娘って何か生い立ちがわたしに似てるから、今を逃すとオンナ捨てちゃうことになるよ。」

「わたしの時とおんなじようにその優子ちゃんっていう女の子のオンナってものを取り返してあげて。もうカレシでもなんでもないアンタに頼む筋合いはないんだけど・・・」

私は、ふたばが自分が幼少期に受けたことと優子ちゃんが今回受けたことをを重ね合わせているんだなと思いました。

「ふたば聞いて。僕さ、僕の彼女からも同じようなお願いされてて・・・・ちょっと悩んでるんだ。」

という会話をしたときに、対向車線にマコトの会社の観光バスが2台連ねて走ってくるのが見えました。

そして1台のバスの最前列に座っていたバスガイドが立ち上がって手を振っていたので、それは多分マコトだろうと思いましたが、2台目のバスのバスガイドは私のハチロクに気づかずそのまますれ違いました。

通常、複数台のバスが連ねる場合、先輩ガイドが1号車を担当するのが通例ですが、その1号車にマコトが乗務しているということは、一緒に乗務しているはずの夏帆の調子が悪いのだと思いました。

すると、ふたばが振り向き側に口を開きます。

「今のバスの1台目のガイドってアンタの彼女だよね。アンタってどこか変わってるとは思っていたんだけど、アンタの彼女も相当変わりモンだね。」

「もしかすると自分のカレシ取られちゃうかもしれないのに・・・」

「コレには色々あって。僕の彼女も修羅場見てるみたいなんだ。」

「彼女・・・も?」

「ていうことは、アンタの彼女・・・・」

「そうなんだ。僕と離れ離れになってた1年の間に・・・」

そこまで話した後しばらく沈黙が続きました。すると、再びふたばが口を開きます。

「もしかして・・・アンタ。またその相手のことやっちゃった?麻美子さんの時と同じように・・・。アンタって自分を見失うと何やるか分かんないタイプだから・・・」

この時ふたばが言った「やっちゃった?」とは、そうです。高校3年生の時、麻美子姉さんがレイプされていた現場に居合わせた私が犯人に殴られ、一旦は伸びてしまったもののその後逆上して逆にその犯人を自分の指が骨折したもの分からないほど殴り付けて警察のお世話になったというあの忌々しい事件のことです。

「さすがにそれはないよ。それって海を渡った先の北海道でのことで、しかもつい昨日打ち明けられたハナシだから・・・」

助手席でこちらを凝視しながら私の答えを待っていたふたばが、胸を撫で下ろしながら話し始めました。

「びっくりした。またやっちゃったのかと思った・・・。前にアンタあてに裁判所から封書が届いた時、母さんびっくりしちゃって・・・、わたしにも電話して来たくらいだもん。風谷さんなんかやっちゃったのかな?って。」

「わたしはその時、どうせ交通違反の免停かなんかじゃないかと思ってはいたんだけど。アンタ、自分を見失うと本当に何やっちゃうか分からないところあるから気をつけなさいね。」

「今はもう立派なオトナなんだから・・・。」

「なんかあったら将来棒に振っちゃうからね。これからって時にもったいないからね。拳振り上げた時はそれを思い出すんだよ。」

そういう会話をしていると高校の校門が見えて来ました。そして、校門を抜けると一足先に到着していた姉さんのブルドッグが見えて来たので、その隣にハチロクを駐車しました。

「優子ちゃんのハナシは、多分麻美子さんが小林先生とハナシしてなんらかの方向性が見えてると思うから、対応策はその後ってことで・・・」という結論のもと二人で車を降り昇降口へ向かいました。

すると、その昇降口でどこかで見かけたことのある女性が靴を履き替えていて、その女性が私を見て少し驚いた表情をしました。

「エン・・・ちゃん?」

「はい。そうです。風谷です。」

「あの・・妹がお世話になっています。あと、オリエンテーリングの時も・・・」

この会話で思い出しました。この女性はマコトの同期バスガイドの洋子ちゃんです。

その時一緒にいたふたばは気を利かせて「先に行ってるね。」とだけ言うと一人実習生控え室へ向かいました。

私はこの女性が優子ちゃんの件でここにいると言うことは推測できましたが、なぜそれがお姉ちゃんであるのか、なぜ今ここにご両親がいないのかが理解できません。

「あの・・・わたし、こっちで優子の保護者やってるんで・・・。ウチ、お父さんしかいなくって、そんなお父さんは漁があるから来れないし、おばあちゃんは車の運転もできないから来ることができなくって・・・しかも家が遠いし・・・。それで優子のこっちでの生活の一切については姉であるわたしが保護者ってことになっています。」

「ただ、会社でバスガイドは採用後半年は女子寮に住む社則になっていて、その後もやむを得ない限りは女子寮から引っ越すことができません。わたしの場合、そのやむを得ないっていうことに該当するので、半年経てば優子と一緒に住むことができるんですが・・・・。」

「今、あの娘。一人暮らしなんです。」

「1週間のうち何日かは外泊で優子のところに泊まれるんですが、仕事もあるんでそのほかはちょっと・・・。だからしばらくの間一緒にいて欲しいんです。」

「昨日の夜、同期のマコトに相談してみたんです。そうしたら・・・、エンちゃんに相談してみたらって言うんです。」

「そこで、エンちゃんってアンタの彼氏でしょ?って聞き返したら、エンちゃんは分かってると思うし、覚悟もできてるって言ってたんです。しかも、エンちゃんならなんとかしてくれるっていうんです。」

「なんか優子がエンちゃんを好きなのも知ってます。でも、そんなお願いしちゃっていいんですか?」

その優子ちゃんのお姉さんである洋子ちゃんは私にひととおり事情を説明すると、どう言うわけか申し訳なさそうにしています。

「うん。そもそもこうなっちゃったのは僕のせいっていうのもあるんだけど、僕の経験上こう言う時は、常に誰かがそばにいないといけないって言うのも知ってる・・・。その大役をさせてもらえるんだったら喜んで引き受けるよ。」

私がそんな申し訳なさそうにしている洋子ちゃんにそう答えました。それに引き続いて洋子ちゃんも話を続けます。

「若い男女が一緒にいればやがて何が起きるかも知っています・・・。でも、一緒にいて欲しいんです。優子が男の人を見るのあの怯えた目を見た瞬間ただ事じゃないって思ったんです。今、なんとかしてしてあげないと優子・・・ダメになっちゃう・・・夢だった学校の先生にもなる事ができないと思うんです。」

「多分、優子は男の人としてエンチャンを好きになったと思うんですが、それ以上に自分が目指している学校の先生という同じ目標を持った教育実習生のエンちゃんに憧れていたんだと思います。」

「わたしの言ってることって変ですか?」

私に憧れ?・・・男女の間に起きること?思いもよらないことを告げられた私は、こんな私のことを信頼してくれているこの洋子ちゃんに対して、なんか物凄く申し訳ないような気分でいっぱいです。

「僕ってとてもヒトが憧れるような人間じゃないんだ。そんなに頭も良くないし・・・女性関係なんかもだらしないし・・・。」

でも、私の彼女であるマコトから私について話を聞いていた洋子ちゃんは、そんなことは全く思っていないようです。

「そんなことはありません。マコトが言ってました。離れ離れになっていた間、1年以上もの間ちゃんと待っていてくれたって。夏帆先輩が何度アタックしてもダメだったって。信頼できるって。」

「それに、優子ちゃんが望むんだったら、エンちゃんの彼女になっちゃっても構わないって言っていました。最後に一緒になれればいいって。エンちゃんを1年以上待たせちゃったんだから、今度待つのは自分の番だってマコトが・・・」

泣きそうになって話す洋子ちゃんの表情がだんだん赤くなってきたのが分かりました。このままではまだ何を言い出すかわかりません。

「洋子ちゃん。ちょっと落ち着こう。はい。深呼吸して・・・」

私の前で、その洋子ちゃんが深呼吸しています。そして、さっきから手に持っていた来客用のスリッパをポンと床に並べるとそれを履きました。

ちょうどその脇にあった実習生用の下駄箱から上履きを取り出し私も上履きに履き替え、職員室にその洋子ちゃんを案内しながら歩き出しました。

「今、僕の姉さんと担任の小林先生が最善策を考えてくれていると思うんだ。その姉さんって、元警察官でその辺について個人的にもヒトより詳しいからいい考え示してもらえると思うよ。」

そう洋子ちゃんに告げると、隣を歩いていたその表情が幾分和らいだように感じます。

その後洋子ちゃんを職員室まで案内し、引き戸を開けて入るように促しました。そして、私が振り返るようにして実習生控え室に向かおうとした時、思いもよらないところから校長先生に呼び止められました。

「風谷先生と小笠原さんのお姉さん・・・こちらへ。」

校長先生に招き入れられたのは職員室の奥にある校長室の隣にある応接室でした。そこのソファーには教頭先生と小林先生が座っていて、ドアを開けた瞬間その脇に座っていた麻美子姉さんに手招きされました。

3人がけのソファーに私と姉さん。そして小林先生。向かい側のソファーに洋子ちゃんと校長先生が座り、一同が会した状態で校長先生が改めて話を始めました。

「ちょうど小笠原さんの保護者であるお姉さんが到着しましたので、話を始めたいと思います。お忙しい中、こんな朝早くがらお呼びだてしまして申し訳ありません。」

この時初めて分かりましたが、この洋子ちゃんもやはり学校から招集を受けていたようです。

そこで校長先生の隣に座っていた洋子ちゃんが、横を向いて校長先生を見つめました。

「申し訳なんて滅相もありません。わたしの妹がしでかしたことなんで・・・」

校長先生はそんな洋子ちゃんに目くばせをすると話を続けます。

「そのことなのですが、今回の事態が起きたそもそもの原因は、生徒から相談を受けた時点で報告を怠った風谷先生にあると判断されます。まっ、風谷先生はその責任を感じてご父兄を連れてこられたということでしたのでその辺は分かっていられると思いますが・・・。」

いや、分かっていません。少なくともその時点においては分かっていませんでした。しかし、時間軸に沿ってよくよく考えてみると、そもそもの出発点が私である事は明白であると考えざるを得ません。

でも、姉さんがここにいるのはたまたまの話ですが、機転を効かせた姉さんが私から呼ばれてここに来ているっていうことにしたんでしょう。

それでも校長先生の話は続きます。

「この後、本件に関しまして職員会議を開催したいと思っています。そしてその結果を臨時に開催する全校集会で生徒達に伝えます。また、兼ねてから問題視しておりました夜間徘徊がどんな危険を孕んだものなのかも、併せて生徒たちに理解して頂きます。」

「そして、本日の1時限目は全校集会に引き続きロングホームルームとして各担任から生徒たちにしっかりと伝えて、生徒達に考えてもらいたいと思っています。資料については偶然ですが先週出来上がったものがありましたので、それを使うように指示いたします。」

「と言うことですので、風谷先生は指示があるまで控え室で待っていてください。」

その時私は、処分については校長から言い渡され、深夜徘徊の危険性については教頭先生から説明されることと理解し、指示された通り一人実習生控え室に向かいました。

するとその控え室の引き戸を開けるとふたばが不安そうな顔で待っていました。

「さっきの女の人って、その優子ちゃんのお姉ちゃんでしょ。雰囲気が似てた。それでそのお姉ちゃんも含めて話し合ったんでしょ?。なんか進展あった?」

「うん。僕も処分の対象になるって。」

「えっ?アンタってなんかしたっけ?」

「うん。事件の直前にその・・・優子ちゃんから相談受けてて、それを上進しなかったことがそもそもの原因だって・・・」

そこでふたばはその事件当夜の状況を思い出していたようです。

「確かその日って懇親会の日だったよね。放課後直に会場に行ったよね。しかも、すぐにアルコール入ったよね。しかも、あの校長セクハラだったよね。いつ上進すればよかったの?相談したところで、こんな事件に進展するなんて誰が予想できたの?」

「あの平野ってヤツも懇親会に来るって言ってたよね。だいたいあの平野ってヤツが来るはずだった懇親会無断ですっぽかしてやらかした事件でしょ?なんでアンタが処分の対象なのよ!」

そこまでマシンガンのように話したふたばは顔を赤くして激怒しています。

「ふたば・・・、本当にありがとう。そこまで言ってくれるだけで僕は幸せもんだよ。でも、考えてみれば結果的にそうなっちゃったんだから仕方ないって思っている。」

「僕ってさ・・・、なんか先生に向いていないような気がするんだ。生き物を扱うって本当に大変・・・。コンクリートの強度計算や、構造物の構造解析のように数値上で扱えるものの方が自分に合ってるような気がする・・・。」

そこまで私が話すと、ふたばはそばにあったパイプ椅子にドカッと座り大きなため息を吐きました。

「アンタ・・・。見損なったよ。それって目の前の問題から逃げてるってことだよ。まあ、百歩譲って逃げてもいいけど・・・男だったら自分のケツ拭いてから逃げるんだね。他の誰かに拭かせるんじゃないよ。」

どう言うわけか、ふたばの怒りの矛先がだんだん変わってきたような気がしてきました。

「それこそ私がアンタのキンタマ握り潰してやるから・・・二つともね。アンタの遺伝子がここで途絶えるように・・・。」

この時、ふたばの鼻息がその体温とともに伝わってくるのが分かりました。しかも、ふたばがこんなに熱血漢っだったとは・・・。

でも、これは事情を知らない人が側から見ればまさしく学校の先生が生徒を指導している絵面だったかと思います。腕組みをして、時折指差された生徒が項垂れた姿で先生の目の前に立つ・・・。まさしくのそ状況です。

ちょうどその時、部屋の引き戸が申し訳なさそうに「カラカラ・・・」と空いて、他の実習生が顔を覗かせました。

「ふたば先生・・・。すごい剣幕・・・。本当の先生が本当の生徒を怒ってたようだったよ。その生徒何やらかしたの?」と、私を指さしています。

するとふたばは答えます。

「これから問題解決しなきゃなんない山積みの課題があるのに、やる努力もしないで逃げ出そうとしてたから・・・これは教育的指導!」

ふたばは言い切りました。努力しろって。逃げ出すなって・・・。

私は決めました。どんな処分が出されようと、それを甘んじて受け入れることを。

すると、今度は引き戸が勢いよく開き教務主任の先生が顔を覗かせました。

「風谷先生ちょっと・・・。」

私は教務主任の先生に続いて先ほどの応接室に向かいました。この時、なぜか姉さんをレイプした犯人を殴った後、警察署に連行される自分を思い出していました。多分、この後自分がどうなってしまうのだろうという不安がそうさせたのかと思います。

そして、先ほどの部屋に通されると私は死刑を宣告される被疑者のような感覚です。すると、私を待っていた教頭先生が口を開きました。

「先ほど、担任の先生と風谷先生のお姉さん、そして小笠原さんのお姉さんを交えて一定の結論に達しましたので、ここでお伝えしたいと思います。」

「これは生徒たちの手前、処分という形を取りますがご理解いただきたいと思います。」

すると、今度は校長先生が話を引き継ぎました。

「それでは行きます・・・。本件につきましては当事者が3名となります。まず、本校女子生徒を宿泊施設に同行させた実習生の平野先生。」

「また、平野先生に同行した1年6組の小笠原優子さん。」

「あと、その小笠原さんから事前相談を受けながら、上進報告を怠った風谷先生。」

「この3名の処分ですが・・・。まず実習生の平野先生については、本校での実習継続は困難と判断し実習中止と派遣元の大学への通告。」

「1年6組の小笠原さんについては自宅謹慎、昨日に遡り3日間。」

「残る風谷先生については在宅における教育実習の継続、本日を含め2日間。」

ということになったようです。先生という職業を諦め掛けていた時でしたので、ちょうど良かったのかもしれません。

すると、落胆の表情でため息を吐いた私に気づいた校長先生がその説明を始めました。

「あっ、風谷先生。そんな顔で心配しないでください。平野先生については実習の単位は諦めてもらうしかありませんが、風谷先生については実習継続となりますので、最後までやり遂げてもらえれば単位はしっかり出ますので大丈夫です。」

「また、小笠原さんにつきましても表向は謹慎ですが、実際には処分扱いではなく公欠扱いとします。」

「あと、この後の集会で本件についての事情を生徒に伝えます。口裏あわせということではありませんが、公式見解としては平野先生と夜間に繁華街を歩いていた時、たまたま宿泊施設の玄関前で巡回中の補導員に呼び止められ、結果的に補導に至ったということを見解として伝えます。」

「処分の趣旨としては、学校側で禁止している生徒における夜間の繁華街徘徊の禁止というものに該当し、それを率先した実習生も対象になるということです。また、事前相談に対して的確に対応していればこのようにならなかったということで風谷先生も対象に含まれますのでご承知おきください。」

「最後に・・・。小笠原さんは先生になるために進学を希望しています。今回のことで少なからず勉強が遅れてしまっています。これを補完するのが風谷先生の処分内容になります。」

「ここからは、私からの個人的なお願いになりますが、小笠原さんは事件の後精神状態が不安定になっていますので、そちらのフォローもお願いします。できる限りそばにいてやって下さい・・・。」

校長先生はそこまで言うとスッと立ち上がり、「後は教頭先生からお願いします」と言って校長室に入って行きました。

指名された教頭先生は、何か事前の申し合わせたあったかのように事を進めます。

「では、小笠原さん。風谷先生に妹さんについて何か伝えることはありますか?」

「今、優子は誰かにすがりたい気持ちでいっぱいです。それは両親でもわたしでもありません。憧れでもあり、想いを寄せている先生・・・それはエンちゃん先生です。優子を慰ってあげてください。」

「それでは体育館へ・・・」

教頭先生にそう言われた私と洋子ちゃんが教頭先生に続き会議室を後にしました。そしてなぜか麻美子姉さんがそれに続きます。

そして全校集会が行われる体育館に着くと、教頭先生は体育館の舞台脇にある体育教員控室に私と洋子ちゃんを体育館の外から案内しました。

「これから全校生徒に周知しますのでそこで聞いていてください・・・。」

そう言い残すと、そこから続く舞台袖から直接歩いて行き中央のマイクの前に立ちました。

私はその教頭先生を舞台袖から見上げるように見送った後、その控え室の小窓からこっそり体育館を覗くとすぐそこにマイクを持った小林先生が立っていて、その後ろにふたばをはじめ実習生が並んでいます。

でも、ここでもやっぱり火中の平野本人の姿はありませんでした。

すると、「ブツ」っとマイクに電源が入り「キーン」という音が鳴り止んだ後、小林先生が挨拶を始めました。

「これから全校集会を始めます。今日、集会を開催する趣旨につきましては、生徒の皆さんもご承知の通りの女子生徒が夜間徘徊で補導された件についてです。それでは教頭先生からお願いします。」

壇上で指名された教頭先生が口を開きました。

「え〜っ、本日皆さんにお集まりいただきましたのは、今ほど小林先生から話のあった通りのことです。本校では、夜間における繁華街徘徊というものを全面的に禁止しているところでありますが、先日それを守らなかった1年女子生徒がそこで補導されるといった事案が発生しました。」

「これにつきましては、補導に至らないまでも今まで何度か同様の事案が発生するたび注意喚起をしてきたところではありますが、悲しいことに一向にその数が減ることがありませんでした。そんな中、今回補導に至った経緯と処分。及びなぜ夜間徘徊を禁止してるかという話をこれからしていきたいと思います。」

「まず最初に、先日発生しました事案の経緯についてですが、本校で受け入れている教育実習生である男性の先生が、1年生の女子を半ば強引に夜間の繁華街に誘って徘徊をしており、最後に繁華街にある簡易宿泊施設の入り口付近で手を引かれて入るところを警ら中の警察官に発見され補導に至ったものです。」

「そしてそのことに関して関係者を処分しますのでそのことを全校生徒の皆さんにお知らせしたいと思います。まず本件に関する当事者は3名。まず1人目の実習生については・・・・」

と言ったところで生徒たちが急にざわめき始め、あちこちで「あのマドカ先生が・・・」なんていう会話が聞こえてきます。私は、先ほど教頭先生が言っていた「宿泊施設入り口前で補導と言っていたものに、手を引かれて」というのが加わってしまったことがちょっと気がかりでした。

そこで、マイクを持った小林先生が「静かにして下さい」と注意を促すと静けさが戻りました。

そして改めて話を始めた教頭先生が話を続けます。

「1人目の実習生。これにつきましては夜間において女子生徒を連れ出すという行為が校則に違反し、また先生が行う行動として相応しくないと判断し実習中止。またこれによる教育課程における単位差し止め。」

「2人目の女子生徒については、夜間徘徊の同行者として昨日に遡り自宅謹慎3日。」

「3人目につきましてはこれも実習生となります。この実習生は、2人目の処分対象者となります女子生徒から事前相談を受けていたにも関わらず、それを上進せず事件を未然に防ぐことができなかったことにより、本日を含め自宅謹慎2日としました。以上です。」

教頭先生がそう説明すると、マイクを持った小林先生が全校生徒に問いかけます。

「何か質問のある生徒はいますか?」

すると大勢並んで立っている生徒のどこからか「ハイッ」という女子生徒の声が体育館内に響きました。すると、ワイヤレスマイクを持った別の先生がその生徒を探し当てマイクを渡しました。そして「ブツ」っと、マイクの電源が入る音がしました。

「あの〜、噂ではラブホから出てきたところを補導されたって聞いたんですが〜、入るところだったんですか?出て来たところだったんですか?どちらが本当なんですか?」

壇上の教頭先生はそのような質問に対してきちんと「学校の見解」を伝えます。

「え〜、それにつきましては入ろうとして、ということが正解になります。その入ろうとして、と言うところを細かく説明しますと、手を引いて宿泊施設に引き入れようとした実習生に対して、それに抵抗した女子生徒と揉めていたところを現認されたと言うことになります。」

「今回は、実質的被害はないとのことでしたが、一歩は違えば取り返しの付かないことになっていたと想像できます。これで、本件の説明は終わります。」

教頭先生は当初説明予定のなかった具体的な事柄を、事実ではない表現で説明しました。でもそれは、優子ちゃんのセカンドレイプを防止したいという思いからだったと自分の中で納得しました。

私がそんなふうに考えていた時、気がつけば教頭先生が思いもしないことを言っていました。

「本日はこういった事情に詳しい講師に来ていただいてもらっていますので、続いて聞いてもらいたいと思います。それではみなさんそこに座って下さい。」

そう言われた生徒たちは一斉に体育座りでそこへ座りました。私にはなんか嫌な予感がします。するとその予感が的中しました。

私が、控え室の小窓から体育館を覗くと、どこからか現れた麻美子姉さんが舞台目指して歩いて行きます。私は止めようとして、外に出ようとしましたが後ろから手を引っ張られそれを制止されました。

私が振り返ると私の手を握った洋子ちゃんが首を振ります。

「お姉さんの胸中を話させてあげて。多分それって経験した人じゃないと伝えることができないと思うから・・・」

すると、マイクを持った小林先生が麻美子姉さんを紹介します。

「それでは、これから貴重な話をいただきます講師を紹介いたします。本日の講師は風谷麻美子さんです。元〇〇県警の巡査で現在〇〇県交通安全協会に勤務なされており、警察と道路管理者との調整や二輪車運転指導員としてご活躍されています。それではお願いします。」

そこで壇上に立った姉さんが体育館で整然と体育座りをしている生徒達を見回した後、舞台袖から心配そうに見ている私と目が合うと、姉さんが左手に持ったマイクに視線を移し、右手でスイッチ「ブツ」っとを入れました。それを見ている私は、姉さんが何をどこまで話すのかとても不安です。そして姉さんは大きく息を吸い込み深呼吸すると話しを始めました。

「初めまして。今ほど紹介されました風谷麻美子と言います。そうです今回教育実習をしていて、今回謹慎処分となった皆さんがマドカ先生と呼んでいるその先生のお姉さんです。皆さんよろしくね。」

「なぜわたしが皆様の前でこのような話をするかというと、皆さんが今一番興味のある性について話すためです。決して雄しべと雌しべなんていうまやかしの話ではなく、オトコとオンナのセックスの話ですので心して聞いてください。」

そこまで話しただけで体育館は騒然となりました。1年生の女子生徒なんかは左右をキョロキョロ見たりして落ち着きがありません。それを見た姉さんは話を続けます。

「また、1年生にとってはちょっと刺激が強い単語や話がバンバン出てきますので頑張って聞いてください。このことはやがて皆さんが必ず直面する問題ですので・・・」

「高校生というこの人生で最も充実していてあっという間に過ぎ去るこの時期は、カラダもココロも物凄く成長もする時期です。でも心が追いつかないまま男子は女子とセックスしたい。女子はカレシが欲しいなんて思う時期です。でもこのことは極々普通のことです。」

「まず、今わたしが先ほど言った、男子は女子とセックスしたいってことと、女子が彼氏が欲しいということは決してイコールではないことを分かって欲しいのです。」

「女子にとってカレシというのはセックスということをして得るものではなくって、そんなものしなくてもお互い好きになってさえいればそれがカレシなのです。」

「それに対して男子は、その女子のことがたとえ好きじゃなくてもセックスというものさえしてしまえば自分の彼女、または俺のオンナということになってしまいます。」

「女子は男女の間に愛情を求めますが、男子はカラダを求めます。まっ、それが普通です。」

「それは人っていう生き物もまた哺乳類で、本能的に自分の遺伝子を後世に残そうとしています。そこでです。その哺乳類のメスは出来るだけ強い遺伝子を残すため、自分に合った遺伝子を持つオスに惹かれます。そしてそのオスとの間に子孫を残したいと考えます。」

「それに対してオスは出来るだけ多く自分の遺伝子を後世に残すため、出来るだけ多くの生殖行為を行いたいと考えます。これは太古の昔から私たちを含めた哺乳類に刻み込まれた遺伝子によるものです。」

「でも、そういった生殖行為で生まれたその人間の赤ちゃんって体が弱く案外すぐに死んでしまったりします。」

「だから、哺乳類のオスは数多くの生殖行為を行おうとします。でも、悲しいことにオスの場合その生殖行為に愛情はあまり関係ありません。目で見た刺激、触った刺激。そんな刺激でその本能は蘇り、手当たり次第に自分の遺伝子を残そうとしたりします。」

「それがオトコです。」

「今までの話の中でわたしが男子を否定しているように感じているように思った人も多いと思います。それはわたしが性犯罪の被害者だからです。レイプされてしまったからです。つまり強姦です。」

「レイプというのは、相手の女性の意思とは関係なく己の欲望のままセックスをするということは皆さんも知っていると思いますが、それによってそのレイプされてしまった女性がどうなってしまうかってことはほとんど知られていません。」

「今まで、わたしのような性犯罪の被害者はそれがあったこと自体、社会から抹殺されている風潮があります。日本という国は都合の悪いことには蓋をしてしまう。そんなのは人ごと。喉元さえ過ぎてしまえばなんとかっていう国です。」

「これはわたしが警察官だった頃から常に感じていたことでした。皆さんに、決して日本という国も安全ではないってことだけは知って欲しいのです。」

「わたしはたくさんの性被害者に直面してきました。本当の仕事は交通指導や取り締まりだったのですが、女性警官の絶対数が足りなかったので、女性が関係する事件に駆り出されることが多々ありました。」

「その中にはやはりレイプというものも含まれていて、その被害者は20代だったり、それ以上だったり、中には小学生というのもありました。」

「また、その相手は知らない通りすがりの人だったり顔見知りだったり、驚いたことにカレシだった、なんてこともありしました。」

「カレシににレイプされてしまったというその女の子は、その時そんな雰囲気でもなくそんな気分でも何でもなく、セックスなんてものをしたくないって思っていたのにも関わらず無理矢理セックスというモノをされてしまっていました。」

「その女の子は殴られていたということもあり、ひどくココロもカラダも傷ついていました。また、カレシに事情を聞くと、俺のオンナに何しようと俺の勝手だろというのです。」

「その時、そのアパートの隣の部屋の住人からの通報で駆けつけたのですが、女性の悲鳴と男性の怒鳴り声がただ事ではなかったと言っていました。」

「女の子はセックスのための道具ではありません。ましてやタダでやれる風俗嬢でもありません。いくらカレシだからといってその彼女はそのカレシのモノでもなんでもありません。」

「女の子はきちんとした感情を持っていて愛を求めています。セックスというものをするのであれば愛情を持ってきちんと抱いて欲しいと思っています。」

「今言ったのは極端な例ですが、愛のないセックスはレイプと等しいとわたしは考えます。抵抗されたから、されないからというのは関係ありません。わたしがレイプされてしまったときは、最初こそ抵抗しましたが、心の中が絶望でいっぱいになり抵抗する気力さえありませんでした。」

「以前わたしが警察官だった頃扱った事案で、レイプ犯を問いただしたことがありました。すると、抵抗しなかったし、濡れてもいたからこれはレイプじゃないっていうんです。そもそも夜遅くオンナが出歩いてるっとことはこれを望んでいたんだろうっていうんです。これは違います。」

「それは絶望して抵抗できなかったのと、体の防衛反応でカラダの内側が傷つかないためにカラダが体液を分泌したというのが当たりです。しかもそんなレイプされたがっているオンナなんてどこにもいません。」

「いるとすれば、それはその辺で売っているビニ本(昔書店の店頭にあったビニールで包装されたエロ本)の中だけです。あと、エロビデオの中でもそんなストーリーのものもありますが、それは見ている男の妄想を駆り立てる演出です。」

「仮に、お互い同意のうえ愛のあるセックスをしたとしましょう。高校生ともなればこうなることもあるかもしれません。しかし、本来セックスという行為は哺乳類の繁殖行為です。たとえ、コンドームをつけていたとしても完全に妊娠しない保証はありません。」

「しかも、あなたたちはまだ高校生です。その行為で女の子が妊娠してしまったらどうしますか?オロしたらいいじゃん。産めばいいじゃん。なんて軽々しくちょっとでもそう思う人にセックスをする資格はありません。それで傷つくのは女の子です。」

「セックスしたら、俺も気持ち良かったけど彼女も気持ちよさそうだった・・・これから飽きるまでやりまくろうなんて男子もいれば、この先ちゃんと結婚してきちんと養おうなんていう男子もいるかもしれません。」

「でもセックスをした女子はいつも妊娠と背中合わせです。セックスをするたび妊娠したらどうしようとか、彼氏が避妊してくれなくって妊娠しちゃったかもしれないなんて常に不安だらけです。」

「そもそも女子はその行為に対してそんな不安ばかり抱えているのです。気持ちいいなんてもってのほかです。」

「私が今まで女の子に話を聞いた限りでは、そのセックスが気持ちいいって答えた女の子はあまりいません。どちらかというと痛いとか苦痛だとか答える女の子がほとんどです。」

「でも、捨てられちゃうから、早く終わって欲しいからという理由で感じている演技をしている女の子の話はよく聞きます。心当たりのある男子。聞いてますか?女の子は鋭いんです。女の子は愛のないセックスから快感を得ることは皆無です。」

「でも、そういう行為もだらだらと回数を重ねるにつれ今まで妊娠しなかったから大丈夫だ・・・なんて思った頃にたいてい妊娠が発覚します。」

「そんな時男子は大抵こうです。」

「そんなの知らない。」

「避妊しろってはっきり言わないお前が悪い。」

「しまいには本当に俺の子か・・・?」

「なんて言い出します。」

「男子なんてこんなもんです。女子の皆さん。男子に淡い期待を懐いてはいけません。」

「仮に、わたしの彼氏はいつも避妊してくれるし、するとき痛くないか?大丈夫?なんて聞いてくれる優しカレなんだ・・・なんて思っている女子はいませんか?」

「本当に優しい彼氏なら、」

「彼女のことを本当に想っていてくれる彼氏なら、」

「彼女のカラダを心配してくれている彼氏なら、」

「彼女の将来のことまで考えてくれている彼氏なら、」

「女の子に妊娠という不安を与えてしまうセックスという行為自体しません。」

「本当に優しい彼氏なら、きちんとその時か来るまできちんと待ちます。」

「本当に優しい彼氏ならその彼女の身に何か起きてしまった時、自分の力でなんとかできるようになる時まで、カラダを求めてはこないはずです。」

「お互い好きならココロが結ばれていればいいとわたしは考えます。カラダの繋がりなんて二の次です。」

「わたしはそのレイプという愛もへったくれもないセックスで妊娠してしまいました。もちろんそれは望まない妊娠です。しかも最初のレイプの時に写真を撮られていて、その後これを警察内部にばら撒くぞと脅されてもう一度レイプされてしまいました。」

「二度目のレイプの時、その最中に弟に助けてもらったんですが、その弟と犯人がもみ合いになって最後にその犯人が怪我をしてしまい、その後わたしは救急車で病院に、弟はパトカーで警察に行くことになってしまいました。」

「そして、近所でいろんな噂が広まってわたしも弟も家に帰れなくなって、親戚のところに身を寄せて、警察から帰ってきた弟に付きっきりで看病してもらっていて、しばらく時間が経った時です。わたしが妊娠していることが判明しました。」

「わたしは病院に搬送された時、検査中半狂乱になってしまい処置がままならなかったと後で聞かされました。」

「結局この時わたしは堕胎という選択をしました。でも、その手術の時先生から告げられた言葉が今でも耳から消えません。」

「あなたの体の中はひどく傷ついていて、今回堕胎したらおそらく二度と妊娠はできないでしょう。このまま産むという選択もありますがどうしますか?って聞かれました。」

「わたしはこの瞬間、わたしの人生がガラッと変わってしまったと実感しました。今まで思い描いていた将来の幸せっていうものが全て消えて無くなってしまったと実感しました。」

「もし今、これから妊娠しないなんてラッキーじゃん。ヤリ放題じゃん。なんて思った男子がいたなら今すぐここに出てきなさい!わたしが今ここでアンタの睾丸潰してやるから。アンタのその汚い遺伝子がここで途絶えるようにきっちりとやってやるから・・・。さあ出てきなさい!」

そこまで話をした姉さんは泣いていました。それに釣られて一部の女子生徒もハンカチで目を拭っています。

その時の体育館の中は生徒達の息遣いが聞こえてくるほど静まり返っています。

そんな中、姉さんは自らの頬を伝う涙も拭わず話を続けました。

「わたしだけだったらまだ良かったんです。それによってわたしの周りの人の人生が変わっちゃったんです。」

「当時のわたしは、小さかった頃からなりたくってやっとの思いでなることができた警察官という職業をそれで辞めました。」

「辞表を出したその足でこっそり家に戻ってわたしがレイプされた現場を見たんですが、見た瞬間そのことがフラッシュバックしちゃって、トイレでゲーゲー吐いちゃって・・・。もうダメだって思って死を決意したの。」

「そして、せめてもって想いでその時乗っていた赤い車をピカピカに磨いて弟に託して、死に場所を探して列車に飛び乗りました。」

「そして行く当てのない旅を1年近く続けましたが、わたしの知らないところでわたしが弟を道連れに飛び降り自殺したなんて噂広がっていたうえ、弟のマドカは決まっていた大学推薦を取り消され、思いもしない進路変更を余儀なくされちゃいました。」

「あと、そのマドカはそのことでその時想いを寄せてくれていた彼女と離れ離れになることになってしまい、その彼女が事故で亡くなってしまうまで逢うこともできませんでした。」

「しかも、わたしが小さい時に今は亡き父が建てた大好きな家は、事件現場ということになっちゃって取り壊されいました。」

「わたしの身に起きたことなのに、わたしの周りのわたしに関わった人の人生が何もかも変わってしまいました。」

壇上の姉さんはここまで話すと声が裏返るほど息が上がっていました。それはマイクを通して生徒達にも伝わっています。

そして姉さんはマイクのスイッチを切り、少しの間呼吸を整えるように肩を上下に揺らしています。

すると再び「ブツ」っとマイクの電源が入りました。

「話をもう少し続けさせてください。わたしが警察官だった頃、勤務先の警察に特殊浴場で未成年者が働いているというタレコミがあったんです。」

「早速内定捜査が始まりそれが2ヶ月続いた頃、住み込みで働いているソープ嬢の中に、行方不明者のリストの写真に似ている娘がいることが分かったんです。」

「そこでわたしがその店の前でパチンコ店のティッシュ配りをしながら、コンビニへ買い物に行くその娘の顔を近くで確認したらビンゴでした。その女の子は3ヶ月前に家出をした高校2年生だったんです。」

「その後裁判所から捜索差し押さえ令状というものを出してもらって、その店をガサ入れしたらもう一人未成年の女の子がいましたが、調べたら大体二人とも同じような境遇でした。」

「二人ともカレシのために働いてるっていってるんです。そのうち1人は、そのカレシが間違って怖い人の彼女を妊娠させちゃったっていうんです。そして、その堕胎費用と慰謝料を稼いでるって・・・・。」

「皆さんならもう分かると思いますが、この娘って騙されているんです。でも、愛は盲目ってよく言ったもんです。その彼女、カレシのことを全く疑っていませんでした。」

「結局その彼女は縁もゆかりも無いところで働いてはいたんですが、いくら聞いてもそのカレシの身元について一切口を割らなかったんです。」

「でもそこは警察組織です。所轄が違っていても関係ありません。ですので交友関係なんかからすぐにそれはどこの誰かって分かりました。するとそのカレシもやっぱり家出して別お店で使い走りみたいなことをしていて、結局のところ物凄く年上のソープ嬢と同棲中でした。」

「でも、捜査の過程で分たんですが、そのカレシ最初は真面目で高校でも成績はいい方だったんです。進学も目指してはいたんですが・・・・」

「きっかけはやはり夜の繁華街でした。その日塾の帰り道、駅前で中学校の友達とばったり再会して、どっかで話しようということで繁華街歩いてたら、その友達がポン引きに捕まっちゃってやむをえず怪しい店までついて行ったんです。」

「そこは綺麗なお姉さんが接待するような店だったんですが、当然真面目な彼です、コーラしか頼んでいません。その友達も同じようでしたがトイレに行くと言ったきり帰ってこなかったそうです。」

「この時、その友達はトイレのあの小さい窓から逃げたんです。後で事情を聞いたら、どうやってあんなところから出たのか覚えていないとのことでした。必死だったんでしょうね。」

「そうしているうち、その女の子達が誰かを接待する様子を傍で来ていただけだったんですが、気が付いたらその人たちも帰ってしまって残されたのが12万円の請求書だけ。」

「この時の客というのは同業者で、ようは暇つぶしに来ていただけだったんですが、その時女の子もいろいろ注文していて、その会計を全部持たせられたんです。」

「でも、本番はこれからです。このままだったら未成年者をそういういかがわしい店に連れてきて法外な料金を請求したってことで警察の出番となるところだったんですが、用意周到というか・・・」

「そこで、その店のオーナーの女が現れて、それは可哀想、そんなことしちゃダメ。ってその子の味方についたんです。そして、その後その女のところに連れて行かれて、一晩ソファーで休ませてもらったって言ってました。その時のカップ麺の味は忘れられないっても言ってました。」

「そうしたらです。次の朝、俺の女に手出しやがって、どうすんだこの野郎って知らない男に首根っこ掴まれて・・・決して殴ってはいないんです。傷害事件になっちゃうんで・・・。」

「その後生徒手帳やら何やらで身元調べられて、学校に知らせるぞとか、親の会社に押しかけるぞなんて言われて、結局は慰謝料を払うってことで一旦は解決したように見えたの。」

「それからそのカレ、友達なんかからお金借りまくって、言われた20万円払いに行ったのね。そうしたら、今度は俺のオンナが妊娠したってはじまったようなの。おかしいよね?何かしたからって1週間やそこらで妊娠なんて分かんないでしょ?。しかも、指一本触れてもいないのに。ただソファー使わせてもらっただけなのに。」

「結局オロす費用と慰謝料含めると120万円になっちゃって・・・。そのカレ真面目だったんで学校辞めて働くって、その時付き合ってた彼女に漏らしたのね。そうしたら、わたしも手伝うってことになったんだけど、その脅しかけてた男がすぐに金がいるから、彼女にちょっと働いてもらえれば勘弁してやるって始まってたの。」

「そうしたらその彼女もまた真面目で、そのカレシが学校辞めなくって済むなら、ちょっと家出をしたようにして働くって始まってね・・・。その時そのカレシは、責任は俺が取るから将来結婚しようなんて希望持たせて送り出したって訳。」

「そしてその彼女が最終的にたどり着いた先が、わたしがガサ入れしたその店ってことなのね。その彼女、彼氏と付き合ってはいたけどキスしかしたことなくって、それ以上のことはしたことなかったそうなんだけど・・・こんなところでいう単語ではないと思うけど、あえて言います。その彼女はその時処女だったんです。」

「その時、その店にその娘を連れて行った男からも話を聞いています。店の商品に傷でも付けようならどうなるか分かってるよな。なんて、その男も脅されていたそうです。」

「それで最初の店に着いた時、働く内容をレクチャーするからって店長に奥の部屋に連れて行かれて、そんなところで初体験しちゃって、おまけにいろんなこと教えられちゃったの。その娘、カレシのために痛いの我慢したって言った・・・この時、供述調書書きながらわたし涙出ちゃって。警察官なのにね。」

「その娘次の日から新人研修ってことで1週間そこで働かされて。そして次にきたのが私がガサ入れした店なの。」

「その店に連れて来られた時、その店の雇われ店長はその娘は二十歳だからって聞かせられてはいたけど、絶対に未成年だって思ったんだって。でも訳ありだから知らなかったことにして、ハタチの女子大生っていう肩書き付けて売り出したのね。そうしたらハタチってだけで人気が出ちゃって・・・。」

「そんな店って普通はそんな若い娘っていないんだよね。だいたい店の中の看板に女子大生っては書いてあっても実はおばさんだったりするのが相場なのね。でも、その客の中に話のネタに騙されてみようって人がいて、その娘を指名したら二十歳どころかうちの娘より若いんじゃないかってことで驚いてタレ込んできたって訳。」

「そういうことが夜の繁華街には潜んでいるのね。大人達はみんな知ってるの。そこにどんな危険が潜んでいるかって。」

「たとえその代償が高くついても、大人達にとっては高い授業料だった・・なんてことで済ませられるけど、まだまだ経済力もないあなた達にはそんなことはできないでしょ?」

「そういう大人達があなた達のことを心配して、そこには行っちゃダメ。近づいちゃダメって言っていることにはきちんとした理由があるの。危ないことなんかはスリリングで楽しいかもしれないけど、それによって起きることの全てを自分でなんとなできる範囲に留めておいて欲しいの。」

「お金で解決できる人。そうじゃない人。いろいろいるけど、その辺は自分で判断して。それくらいは分かるよね。もう、高校生なんだもん。」

「最後に。わたし実は先日、最近さっき話したソープで働いていた女の子の様子を片道3時間かけて見に行って来ました。」

「そしたらその娘、保育園のお迎えの帰りで、スモッグ着た女の子の手を引いて歩いていて・・・ママって言われてたの。」

「警察で保護した時すでに妊娠していて、若かったんで堕胎することができない時期にもなっていたこともあって、その後誰の子かも分からない子を産んでママになっていました・・・。」

するとそこで女子生徒が「うわーん」と泣く声が体育館に響き渡りました。

騒然となっていて、生徒達がバタバタしているところがありました。多分その辺の生徒かなと思います。そこって確か3年生だったような・・・。

すると姉さんは話をまとめに入ります。

「以上になります。皆さん、これから考えてください。皆さんがやろうとしていることと、それによってどれだけ影響があるかって。」

「それによって誰かの一生を狂われてしまうかって。オトナっていちいちうるせいよな。って思うことは、あなた達のことを思ってのことだということだけは忘れないで。」

「あなた達は今まさに飛び立とうと滑走路を走っている飛行機です。限られた滑走路を目一杯使ってスピードに乗って高く飛び立つも良し、スピードに乗らなくてもいいからパワーのあるエンジンを備えて飛び立つもいいでしょう。」

「でも、十分な加速も、十分なパワーもなく安易に飛び立ってしまったら、その先の高いところから見えるはずの綺麗な景色も見ることもできません。高いところにいればこれからどこへ行こうかなんて考えることもできますが、高度が足りないと飛ぶことで精一杯です。」

「これを決めるのは君たち自身です。大人達はその滑走路から外れないようにと後押ししかできません。それを忘れないで。」

そういうと姉さんはそこで深々とお辞儀をして体育館の舞台を降りました。

すると一瞬間を置いて拍手が起きました。

すると呆気に囚われていた小林先生が思い出したかのように「あっ、貴重なお話ありがとうございました。もう一度盛大な拍手をお願いします」というと、その体育館の中が拍手の音でいっぱいになりました。

私は教官室を飛び出すと、体育館の外周を回って体育館の出口で姉さんを待ちました。体育館の中からは小林先生の声で「この後はホームルームになります。1年生から順に教室に戻って・・・」なんて声がスピーカー越しに聞こえて来ました。

すると姉さんが教頭先生と一緒に体育館から出て来ました。私はその姉さんの姿を見るなり、教頭先生がそばにいるにもかかわらず姉さんに抱きついて泣いてしまいました。

それは今まで親族ですら聞いたことのない姉さんの歴史そのものです。姉さんがそんな人たちをたくさん見て、仕事とはいえ切ない思いをしたうえ自分まで・・・と思うだけで胸が張り裂けそうです。

すると姉さんは言いました。

「ふたばちゃんに謝っておいて。昨日、お酒飲んでそんな話し聞いてたから言ってみたくなっちゃった・・・睾丸の話。」

「でもね・・・前にまーくんには話したと思うけど、痴漢にホームから突き落とされた話。その前段で、姉さんね・・・さっき話ししたその娘に救われたの。」

「電車で死に場所探し続けたのはいいけど、いい場所見つかんなくっていつも間にか日本一周しちゃったけど、このまま帰ろうかどうか迷っていた時、そこの駅に電車が止まった時の駅員のアナウンスで思い出したの。」

そう話す姉さんは話の途中、この街の駅の方を指さしました。

「唯ちゃんのおばあちゃんのお家ってここだったよなって。その唯ちゃん、おばあちゃんのところに身を寄せるって言ってたよなって。」

「その時、後生大事に持ってた警察手帳の中身にそこの住所控えてあったのを思い出して、電車を降りてバスを乗り継いでそこに行ってみたの。」

「そうしたらその唯ちゃんが赤ちゃん抱いてて・・・・。そしてわたしに向かって急に謝ったのね。なんでって聞いたら・・・・この子の名前、婦警さんからもらいました。って言ったの。」

「麻美って名付けました。かわいいでしょ。ってその赤ちゃん見せながら言ったの。もう、姉さん人目も憚らないで大泣き。」

「その時、あんなに辛い思いをして、人生台無しにされて、望まない妊娠までして・・・それでも希望を失わないその目を見て、死んでられるか。死ぬくらい辛い思いをしたんだから、死ぬまでしぶとく生きてやろうって思ったの。」

「でも、生きてやろうと思ったその帰りに乗った電車の終着駅で乗り換える時、高校生を痴漢しているオヤジ見つけて捕まえたのはいいけど、手錠かけようとしたら当然そんなのないよね。動揺した時にホームから突き落とされて姉さん死にかけたけど・・・・。その時、本当に死ぬかと思った・・・。」

「でも、本当に感謝よね。今、こうしていられるのは本当にその唯ちゃんのおかげ・・・。」

姉さんは何か懐かしそうに遠くを見つめていました。

「姉さん。昨日急にこっちに来た理由って・・・。」

私がそう聞くと姉さんが答えました。

「うん。ハチロクの件もあるけど、どうせこっちに来るんだったら唯ちゃんに逢いたくって・・・ね。」

「実は昨日逢いに行って来たんだ・・・。改めてそこに行ったらここから結構近くってびっくり。」

「でも・・・行ったまでは良かったんだけど、スーパーでレジ打ちしてるその姿見た途端に声かける勇気が無くなっちゃって・・・。でも今日、帰り際にちょっと声掛けてみようかなって思ってる。」

そこまで話したところで、女子生徒が走ってきて姉さんに抱きつきました。よく見るとその女子生徒は、今まで何回か話をしたことがある放送部長の矢萩さんです。そしてその矢萩さんの目は真っ赤でした。

するとその矢萩さんは急に姉さんに向かってお礼を言い始めました。それを見ていた私は何のことかさっぱりわかりません。

「マドカ先生のお姉さんだったんですね。いつか逢ってお礼が言いたかったんです。唯ねえからいつも話聞いてて、あの婦警さんがいなかったらわたし死んでたって、いつも話聞かせられていました。」

姉さんは驚いた様子で「えっ?」とだけ言葉を返しました。

そしてその矢萩さんは話を続けます。

「その唯ねえって、私の従姉妹なんです。」

「さっきのハナシ聞いてピンと来ました。麻美ちゃんが生まれた時、唯ねえがお世話になった婦警さんの名前もらっちゃったなんて言ってたんです。それで分かりました。」

「今、唯ねえ頑張って夜学通ってるんです。卒業したら警察受けるって言ってました。風谷巡査のような頼りになる婦警さんになるって言って猛勉強してます。」

「昼間は麻美ちゃん保育園に預けてスーパーのレジ打ちやって、夜はおばあちゃんに麻美ちゃん預けて夜学通って・・・」

「確か、午前中だと空いてると思うんで逢ってやってください。喜ぶと思います。」

すると生徒がゾロゾロ歩いているちょっと離れた渡り廊下から女子の誰かを呼ぶような声が聞こえました。

「ぶっき〜・・・・。いぶき〜。ホームルーム始まっちゃうよ〜。」

するとその名前を呼ばれたその「いぶき」という名前の少女は姉さんの両肩を掴んでそのキラキラした瞳で囁きました。

「お姉さんの妹にしてください。わたし・・・マドカ先生のお嫁さんになるんで・・・。」

そう言い残すと名前を呼ばれた方に向かって走って行きました。

すると姉さんは「ハー」っとため息を吐きました。

「まーくん。アンタ悩み事ひとつ増えたよ。姉さん分かる・・・。あの目って結構本気だよ。」

そこまで傍で黙って見ていた教頭先生が一言。

「過去にもたくさんありました。女子生徒が実習生を好きになってしまうこと。でも、心配ありません。そのほとんどは教育実習の終わりとともに終わりますので・・・。」

それに姉さんがツッコミを入れました。

「教頭先生。今、ほとんどと言いましたけど・・・・。」

すると教頭先生が罰の悪そうな顔をしました。

「今まで何件か・・・結婚まで行った稀なケースがあります。」

でも、そこまで言った教頭先生は本当に罰の悪そうな顔をしています。そんなのは姉さんが見逃すはずもありません。

「先生。何か隠していませんか?」

「はい。すいません。実は・・・・わたしの奧さん・・・教育実習の時の教え子です。でも、先程のお姉さんの話聞いて反省もしました。わたし、その時その生徒にアパートまで押しかけられて、若かったんで抑えが効かなくって・・・・。でも、責任は取りましたよ、責任は。」

「あと、あの校長先生も同じです。」

するとそれを聞いた姉さんも何か言いたそうにしています。そして何かを振り払うようにその教頭先生に言いました。

「わたしがさっき言ったのはあくまで理想論です。若い男子にそんな寸止めが効くなんて思ってもいません。でも言いたくなっちゃったんです。本当に不幸な女の子が出ないようにするにはって・・・。」

すると教頭先生は姉さんに向かって深々と頭を下げました。

「今日は生きた話聞かせてもらって本当にありがとうございました。今まで我々が話したり、いろんな講師を呼んで言って聴かせてはいましたが、それぞれいろんな立場がありまして言えないこととかたくさんあったんです。」

「しかし・・・途中で言った、睾丸潰してやるっていうのはとても効いたと思います。そして滑走路の話も感慨深いものがありました。これも何かの縁ですもしかするとまたお呼びだでするかもしれませんので、その時まよろしくお願いいたします。」

そう言われた姉さんは胸を撫で下ろしたように見えました。多分、言い過ぎたことが胸に支えていて、それによる影響なんかも心配していたのかもしれません。

その後姉さんと職員室まで戻ると、今度は教務主任の先生が興奮気味に姉さんに話しかけました。

「いっつもでかい態度してる奴らも効いたと思います。全く・・・キンタマちっちゃいくせして態度だけはでかくって。でも、その奴らのちっちゃいキンタマもますますちっちゃく縮こまっていると思いますよ。」

「なんか、奴らにギャフンと言わせた感じがしてスッキリしました。本当にありがとうございます。」

そう聞かされた姉さんも私も驚いています。何せここは職員室ですし、その教務主任って女性です。

そして姉さんが校長先生に挨拶している間に、私はその教務主任の先生から「在宅教育実習の課題」とやらが入っている茶封筒を受け取り、先に来てお茶を出されていた洋子ちゃんから、優子ちゃんのアパートの地図と、「これから職場に行かなくちゃなんないんで、コレ。」と言って合鍵を渡されました。

その後、ふたばに挨拶したいという姉さんを連れて実習生の控え室まで行きましたが、ホームルームに行っているようでその部屋はもぬけの殻でした。

仕方なく姉さんから「よろしく言っておいて。楽しかったって。」という伝言を受け取りクルマまで戻ってきました

私が何の疑問を持たずハチロクに乗り込もうとしたところ姉さんが叫びます。

「まーくん。今日からアンタはこっち!」

そういってブルドッグのドアを開けました。

そして「一応任意保険は効くようにしておいたけど、ぶつけんなよ。」と付け加えます。

「でも、ぶつけたら小林車体なんでしょ?」と私が意地悪しました。すると姉さんがそれに応えます。

「ハチロク返してもらおうかな?これからまーくんはずっとブルドッグね。」

「それは・・・・でも、そもそもハチロクも姉さんのクルマだし・・・・」

「冗談よ。ちょっと借りるだけ・・・。でも、また化け物に変身しちゃうかもね。」

「うん。ちょっと期待しとくね。」

そんな会話を交わした後、姉さんはそのブルドッグの説明を始めました。私が見る限りではハンドルがハチロクと同じナルディーというブランドのものに変わっている他の内装はいたってノーマルで説明の必要は感じられません。

「カセットデッキの下の蓋の端、押してみて。開くから・・・。」

その場所を見ると、多分純正と思われるただの目隠し蓋にしか見えませんでした。そう言われた私がその蓋をポチっと押すと、その蓋が下側に開きメーターパネルが出てきました。

そして姉さんがそれぞれ指差し「これが排気温度計、これが空燃比計、これが吸気温度計」とそのメータを説明しました。それぞれに理想の数値と限界の数値が蛍光のシールで示してあります。

そして最後に、空調操作パネル下側の灰皿右側にある小物入れみたいなところを開きました。

それはタバコの箱くらいの大きさのもので、1.2.3と書かれたボタンとデジタルの表示部がついたもので、その蓋を開けないと見えないようにセットしてありました。すると姉さんが説明を始めます。

「これってブーストを制御するEVCっていうやつ。3番を押した時はこのメーターに注意して。」と排気温度計を指さしました。

「その3番って、スクランブルなんとかって・・・」

「そうなの・・・。」

「1番がノーマルで0.85キロ、2番が1.2キロ、3番が1.5キロ。」

「このクルマって、ターボが効き始める4千回転まではトルクが細くって出足が鈍いのね。でもその時アクセルを8割方踏むとスクランブルブーストが10秒間だけ効いて、その3番押した状態だとそれが最大1.8キロまで行くの。」

「まっ、ノーマルでもびっくりするくらい速いから、慣れるまでは1番だよ。いきなり3番押すとムチ打ちになるからね。」

そして、車内をよく見ると送風の丸い出口がブースト計に変わっていたり、結構手が込んでいます。また、乗り込んだ時ハンドル奥に赤いボタンがあったので、緊急脱出用のなんかだったら困るので聞いてみました。

「これは?」

「あっ、それ?それってインタークーラーのウォータースプレイのボタン。」

「吸気温度が高くってパワーが出ないな〜、なんて思った時押してみて。」

「あっ、あと、逆に妙にパワーが出ていて、調子がいいな。なんて時は、空燃比計と排気温度計をチェックしてね。ガソリンが薄いとパワーが出るんだけど、ある一線を超えるとノッキングが出て即ブローだから。」

「えっ?パワーってガソリン濃くすれば出るもんじゃ・・・」

「普通はそう思うでしょ?」

「これって義父さんに聞いたんだけど、このクルマ仕上げているときに電卓叩きながら何かの資料と睨めっこしてたの。そしてそれ何って聞いてみたら、永遠と難しいハナシ聞かせられたんだけどもうチンプンカンプンで・・・。」

「でも、ターボのチューニングカーってものに乗るんだったら理解して欲しいって言われたことがあって。」

そう言いながら姉さんはボンネットを開けるレバーを引き、前に回ってボンネットを開けました。

この時私は、義父さんってただの公務員で、しかも土木系の技術職員だったよな?なんでそんなに詳しいんだ?なんて思いながらそのエンジンを覗き込みました。

私が初めて見るそのホンダのエンジンは、とても改造っているような感じではなく、いたってノーマルでした。強いて言えばインタークーラーに繋がっているハイプがステンレスだったりカムカバーが赤い結晶塗装になっていて、只者ではない雰囲気を放ってるくらいです。

そこで姉さんが義父さんから聞かされたハナシを始めました。

「エンジンっていう内燃機関には理論空燃比ってものが存在していて、一番燃焼効率が良い常態が予想以上に燃料が薄い常態なの。でも、その常態だと燃焼温度がものすごく高くって、ノッキングが出たりエンジンの設計温度なんかも超えちゃうから燃料をわざと濃くして燃焼温度を下げたりするの。」

「今、メーカーのエンジニアが必死に研究してるのがその辺なのね。どこまで燃料薄くして燃費稼げるかって。でも、燃料薄くすると変なガスが出ちゃったりするから、排気ガスを再燃焼させたり燃料を直接シリンダーに噴く研究もしてるって。」

「それって直噴ディーゼルと同じじゃん。」

「そうなの。ガソリンエンジンでそれをやろうとしてるんだって。なんか分かんないけど、実用化は微妙よね。」

「でもね、そんな理屈が分かっていてアクセル踏むのと、何にも分かんないでアクセル踏むのではエンジンの持ちが全く違うって。」

「それでね、今大流行りのシルビアのCA18エンジンなんかは始めっからブーストアップ前提だから、安全マージン大きく取って燃料をリッチに噴いてるんだって。だから多少のブーストアップでは壊れないって言ってたの。」

「よく見るでしょ?シルビアのマフラー辺りにこびりついた排ガスのスス。義父さんあれ見るたび、あれって燃調濃すぎるんだよ。もうすこし燃料絞ればもっとパワー出るのに、もったいないって。いっつも言ってる。」

「結局義父さんがたどり着いた答えとして、このブルドッグのエンジンはインジェクターとタービン変えないで、インタークーラーを大きくしただけで出せる出力って200馬力なんだって。」

「あと、このエンジンって、過給圧を制御しているウエストゲートバルブって言うのを電子制御してるんだって。だからコンピューターで色々できちゃうって言ってた。さすが、F1のホンダよね。」

「それで、義父さんがこのエンジンは安全マージン取って180馬力に抑えているって言ってた。でも、3番ボタン押した時のスクランブルブーストで、5500回転まで回した時に200に近い馬力が出るって。だからムチ打ち注意ってこと。」

「シルビアのブーストアップ仕様に比べれば馬力的には大したことないけど、何せ軽いんだよね・・・このクルマ。」

「うん。説明ありがとう。ハチロクの方は低回転のトルクが細くって、回転落とさなければきちんと走るから心配ないと思うよ。でも、回転が8000を超えないとただの眠いエンジンだからきちんと回してあげてね。」

すると姉さんは持ってきた荷物を助手席にドサっと置くと、ハチロクに乗り込みエンジンをかけました。エンジンはインジェクションなので、特段何もせず普通に始動はします。でも・・・クラッチが重いし、発進のクラッチミートが難しいのです。

そのうえこのエンジンは低速トルクが細いうえ、ミートするクラッチの踏み加減が微妙でちょっと心配です。

そして、帰り際「来て良かった。色んな意味でスッキリした。」と言って手を振りながら、「それじゃ、教育実習頑張ってね。あと彼女紹介しなさいよ。公務員試験の時帰って来るんでしょ?気をつけてね。」と言いながらハチロクを発進させようとしましたが何度もエンストしてしまい発進できません。

何回か試みて、最後にエンジンの回転を高めにしてクラッチを繋ぎやっと発進できましたが、この先が思いやられます。そしてそのハチロクを見送って振り返ると、教室のベランダから身を乗り出してこちらを眺めている生徒たちがたくさんいました。

後で聞いたところ、「学校に暴走族が来たのかと思った」とのことでした。

そして私は改めてブルドッグに乗り込み、エンジンを掛けようとクラッチを踏もうとした瞬間、そのペダル配置に違和感を感じました。

よく見ると、右側のタイヤハウスを避けるように全体的に左寄りになっていました。これは、このクルマがそもそも走り向けの車ではないってことを物語っています。

私は「悩む前にまず慣れよう。」ということで、とりあえずその慣れないクルマを発進させるとまず大学へ向かいました。これは教務主任から手渡しされた書類を大学へ提出するためです。

その書類の入った茶封筒を少し覗いてみたところ、「教育実習における履修計画の変更について」なんて文字が見えましたが、それ以上は怖くて見ることができませんでした。

そして、姉さんに言われたとおり小物入れの中に装着されているEVCと言われる装置のスイッチの1番を押して発進させました。すると表示されていたデジタルが2から1に変わります。姉さんは2番でこのクルマを運転していたようです。

私は、ターボといえば「ドッカンターボ」と言われるくらいにターボが急に効いていきなりパワーが出るものだと思っていましたが、このエンジンもご多聞にもれず4千回転を過ぎた頃に急にターボの過給が始まりいきなりパワーの出る典型的なターボエンジンでした。

しかし、このエンジンのレッドゾーンは6千回転からレッドゾーンとなっていて、ハチロクみたいに高回転まで回して楽しむエンジンでないことは明白です。

しかも排気音がハチロクみたいな甲高い音ではなくとでもたくましく低重音で、とても快適じゃないクルマだとすぐに分かりました。

でも、このターボエンジン・・・・悪くありません。だって、エンジンをそんなに回さなくってもクルマがスルスル走ります。ハチロクもそんなに重い車じゃありませんが、このブルドッグは物凄く軽い感じがします。

しばらく市街地を走って、そろそろ郊外というところにいつもマコトと来る横綱食堂があります。ちょうどその入り口近くの信号で止まった時、その食堂の駐車場から大学生と思われるシャコタンの180SXが、なんか「ガリガリ」と言う音を立てながら出てきました。朝からカツ丼でも食べたのでしょうか?

その音は、駐車場から道路に出る際の段差で車の底が路面と擦れる音です。その車はそれほど車高を落としたチャンチャな車でした。しかも、ドアミラーの下あたりにいろんなステッカーが貼ってあり、よほど自分が使っている部品メーカーをアピールしたいようです。

すると片側2車線で空いている右側の車線にその180SXを横付けして、結構いい音を立ててエンジンを吹かし始めました。

恐らく、この排気量1230CCしか排気量のないこのクルマを馬鹿にしているとしか思えません。この時私は負けるのも嫌なので、とりあえずEVCのボタンの2番を押して信号が変わるのを待ちました。

すると、信号が青になる直前隣の180SXがフライングをして発進しました。私も負けじとアクセルを踏み込んだ瞬間、エンジンから「キーン」という金属音がし始め、エンジンの回転とともにものすごい加速をします。

しかもシフトアップの時、エンジンの回転が落ちるタイミングで「ブシュー」っと圧力の抜けるような音もします。

そしてその加速中、ハンドルが重くなって右に左にハンドルが取られ、姉さんが言っていた「トルクステア」ってこれかと思いました。

後輪駆動のハチロクでは感じられなかったハンドルに伝わるクルマの暴れた感じ。これが、腰を通してではなくハンドルに直に伝わる感じ。しかも、路面の僅かなギャップも敏感に拾い上げ、インフォメーションとしてドライバーに伝える感じ。

そんなハンドルからの荒々しいメッセージを受けながら、私は改めてこの車をブルドッグと名付けたメーカーの意図を感じていました。

そして、比較的柔らかめのシートに背中を押し付けられるようにしながらやっと見たブースト計は、スクランブルが効いているせいか1.5キロを指しています。その時思いました。1.5キロでこの加速なら、1.8キロまで掛かったら命の保証はないと。

その時の180SXは、私がギアを3速に入れる前にミラーに映っていて、ギアを4速入れるまでもなく決着が付いていました。そしてさっきまで息巻いていたそのクルマは、今では車間をものすごく開けて後ろを走っています。

その後、大学に到着し自分の駐車場所にブルドッグを駐車しました。すると、先ほどの180SXが2年生の駐車場に入ってきたのが見えました。先ほどは自分の車の音でわかりませんでしたが、かなり遠いところでも直管に近い音を奏でているのが聞こえます。

そして、高校で渡された茶封筒2通のうち、大学提出用の茶封筒を事務室の事務員に手渡し振り返った瞬間、聞き覚えのある男の声で呼び止められました。

「風谷、お前今教育実習中じゃ・・・」

私がその呼び止めたその男を見ると、それは先日めでたくバスガイドの夏帆のカレシとなった写真部長の滝沢でした。

その滝沢がなんか焦った様子で私に尋ねます。

「お前に連絡しようと思ってたんだけど・・・ちょうどよかった。ちょっと困ったことがあって、部室に来てくれないか?」

私は、これからあの優子ちゃんのアパートに行って在宅の教育実習を始めなければなりません。

「滝沢。ちょっとこれから行かなくっちゃならないところが・・・・」

「それは分かってる。でも、見てもらいたいものある。とりあえず来て欲しい。」

そう言われてその部室まで到着しました。するとその滝沢が鍵を開けて部屋に入れと促します。

その部室は目に染みるような薬品の匂いが充満し、奥の小部屋には何かの小さい紙みたいのがたくさんぶら下がっています。

するとその写真部長がテーブルの上にあった写真の束を持って来て私に手渡しました。

それを見ると、オリエンテーリングの時の写真です。

「滝沢。今これを見せたいって?・・・もちろん見るけど。」

するとその滝沢は言います。

「それはお前に関する写真。後で渡そうとしていたんだが・・・一番後ろを見てくれ。」

私がそれをひっくり返して一番後ろの写真を見ました。

「なんで滝沢がこの写真を?」

そして他の写真を何枚か見てみました。するとそれは見覚えのあるセーラー服の女子高生で、どうみてもあの優子ちゃんです。

しかも、それは制服を着ている写真だけだったらまだしも、それが段々と脱がされていて、最後は下着姿になっていました。

「滝沢。お前・・・」

「風谷、よく聞いてくれ。この写真は、36枚撮りのフイルム3本を現像したヤツのごく一部なんだ。多分お前が実習している高校の制服だろうなってことで、後で相談しようと思って焼き増ししておいたもので・・・」

「うん。確かにこれって付属高校の生徒だよ。それは分かった。でも、この写真誰が・・・」

「結構ヤバめの写真撮影して、写真屋で焼いてくれないようなヤツ持ち込んでくる輩って結構多くって、基本的にそういうヤツは断るし、もしそんなのは焼いても廃棄するんだ。後で問題になって、部室を取り上げられちまったら商売上がったりだからな。」

「でも、それなんだが・・・。それは俺の古い友達で・・・要は中学校の時の友達からのヤツで・・・仕方なく焼いたんだ。」

「しかも、焼いた写真のほとんどがアソコの接写だったり、顔にアレかけられてるヤツだったり、ヤッてる最中だったり、表に出せないものばっかりで・・・」

私は物凄い怒りが込み上げてきました。

「滝沢。お前って北海道だろ。なんで北海道の友達がこんな写真撮れるんだよ?」

そんな責められても仕方のないその滝沢が謝ります。

「悪い!そいつ、中学校の時転校してこっち来てたんだ。そしてここの付属に入って、頭良かったんであの有名大学に行ったんだけど・・・。」

そこまで話したその滝沢が何か隠しているようです。

「だから何なんだよ。言ってみろよ。この娘って普通科の娘だよ。1年6組の女子生徒なんだよ。まだ15歳なんだよ。」

そう私がその滝沢を責め立てるとその訳を話し始めました。

「俺の家って写真屋やってるっていうのはこの前話した通りなんだけど家にスタジオがあって・・時々20代の女の人が、体のラインが綺麗なうちに写真に残したいっていう依頼があって、密かにそういう写真集も作ってたんだ。」

「後で知ったんだけど、その業界ではヌードは滝沢って言われるくらい、親父って裸体撮るのがうまくって・・・モデルの気持ちを開くのが上手いってことなんだろうな・・」

「その時、たまたま親父がいない時現像室入ったらそんな写真がいっぱいあって・・・・。もちろんボカシなんて入ってないヤツ。」

「そんなハナシ、当時友達だった平野ってヤツに話したら・・・それ見せろって、しつこくって・・・」

「そして一回だけということでその現像室に連れて行ったんだよ。その時、たまたま親父が友達から頼まれているっていう半年に1度のその友達の娘の成長記録の撮影の後で、その写真を焼いた直後だったんだ。」

「そしたらその平野ってヤツがたくさんあった写真の1枚を掴んで、これもらうって始まって。」

「ダメだって断ったんだ。もちろんその写真の娘は素人だし、そんな写真出回ったらたちまち店潰れちゃうって子供ながら分かって・・・。でも、黙ってたら分かんないって押し切られて。しかもなんかあったらこの写真、雑誌社に売るからって脅されて。」

「それからなんだ。ヤツが女子高生に狂っちゃったのは・・・・。その写真の娘って高校1年生だったんだ。」

「それでだよ・・驚いたのは・・・。昨日、いきなりその平野が現れて、今教育実習やってるって。そして女子高生の彼女が出来たって。しかも、その娘の写真撮ったから現像しろって言うんだ。」

「でも、焼く前から嫌な予感はしてたんだけど、やっぱりそれは裸体で・・・」

「それで、現像して分かったんだ。この娘の目って、決してオトコに心を開いた女子の目じゃないって。笑顔の写真もあるけど、どれも目が笑ってないんだ。恐らく何かで脅されて笑顔にしてるんだけど、凄く怯えた目をしてるんだ・・・」

そこで私は物凄い不安が込み上げてきました。

「なあ滝沢。その平野って今どこにいる?なんか手がかりは?」

するとその滝沢が答えました。

「今朝一番にそいつが現れて写真受け取ると、今日は1日楽しみだ。色々準備したんだ。なんては言ってた。・・・」

それを聞いた瞬間、私はその滝沢に「ありがとう。」だけ言い残すと学部棟の廊下を全速力で走って、駐車場のブルドッグを目指しました。

そしてそのブルドッグに乗り込み、すぐさまエンジンを掛けて優子ちゃんのアパートを目指しました。

いつもこうです。何か起ころうとしている時に限ってどっか行っていたりする間の悪い自分を悔やみました。姉さんの時は、あの「あおい」とCBXで海に行っていました。

いつもの通りバイクでもいじっていればそれは起きませんでした。しかも2回もの時もそうです。ずっと姉さんの看病をしていて、たまたま学校に行ったときに姉さんは二度めのレイプをされていました。

しかし、こういう急いでいる時に限っていつも信号に捕まります。昔、母さんは言ってました。急いでいる時に気を落ち着かせるための神様の気遣いだと思って深呼吸でもして待てって。でも・・・

今までこんなに1分1秒が長く感じたことはありません。深呼吸をしながらも、イライラしながら信号が青になるのを待っている時、私の目に姉さんが慣れるまで押すなと言っていたEVCの3番ボタンが見えました。

もちろん私はそれを押しました。するとそのはこの端に表示しているデジタル表示が2から3に変わります。

そしてその信号が青に変わった瞬間、運転するブルドッグをフル加速させました。

そして、目の前のメーターパネルの扇子状のタコメーターが時計回りに動いていて、その中央にあるデジタル表示のスピードメーターが目まぐるしくその表示を変えていました。その左隣にあるTURBOと書かれたその表示は既にフルブーストを示しています。

それにしてもすごい加速です。目が追いつきません。やはりこの時もシートに背中が押しつけられるようにしてやっと見たブースト計の針が時計でいう2時のほうを指しています。確か3時の方向に2.5キロの表示があったような気がしましたので、多分その加速がブースト1.8キロの加速なんでしょう。

この間三度ほどそんな加速を味わいながら優子ちゃんのアパートにたどり着きました。学校で、洋子ちゃんから地図をもらった瞬間、冬場の灯油配達でよく来ていたところだって分かっていたので最短距離で到着する事が出来ました。

そして車を停め外に出た瞬間、停めたばかりのブルドッグに物凄い硫黄の香りが漂っているのが分かりました。

そういえば、空燃比が薄いと変なガスが出るって姉さんが言っていたのを思いましました。でも、そんな時排気温度計を見ろって言われても無理です。そんな加速中に目が追いつきません。

そんなことを思いつつ、洋子ちゃんに教えてもらったその201号室に向かいました。私が駆け上がるアパートの外階段の踏板の振動に合わせて、天井の波トタンの屋根から変な反響音が聞こえます。

そして祈る思いでその201号室のチャイムを押してみました。でも反応が有りません。そして「優子ちゃん!」と叫びながらドアノブを回しましたがもちろん施錠してあります。

私はなんか嫌な予感がしてきて即座に預かっていた合鍵でその玄関ドアを開けました。するとその玄関の足元にその優子ちゃんのハダカの写真が何枚が落ちています。これって、姉さんが2回目のレイプをされた時と状況が一緒です。

そして「優子ちゃん入るよ!」と言って踏み入ったその部屋の中では自分の目を疑いたくなるような状況でした。

居間の隣にある寝室に入った瞬間、部屋の奥にあるベットの縁に腰掛けているハダカのオトコと目が合いました。

そして恐る恐る視線を下に向けると、コレもまたハダカの女の子が正座をした状態でそのオトコの股間に顔を埋めています。

するとそのオトコが視線を上にして一瞬目を閉じて「うっ」っと唸るような声を出し、股間に埋もれているその頭髪の毛を掴んで自分の股間に押し当てました。

「ほ〜ら〜。今日はちゃんと飲めよ。出すんじゃないぞ。」

そう言いながらそのオトコはゆっくりとその手を離すと、今までオトコの股間に顔を埋めていた女の子はそこから解放され片手を床についてむせかえるように咳き込んでいます。

その女の子の顔は髪で毛で隠れていてその表情は分りませんでしたが、一瞬横を向いた瞬間その女の子が苦しそうにしている優子ちゃんであることがはっきりと分かりました。

そして苦しそうにむせかえるその口から、唾液なのかそうでないの分からない液体が幾重にも糸を引いて滴り落ちています。

「オマエ、優子ちゃんに何をした。答えによっちゃ・・・・」

私がそのオトコに向かってそう叫ぶとそのオトコがそれに答えます。

「なあ、風谷先生よ〜。アンタ、勘違いしてねえか?。」

するとそのオトコが優子ちゃんの髪を鷲つかみにしてその顔を私の方に向けました。

その優子ちゃんの表情は赤く高揚し目がうつろになっていて、何か薬でも飲まされたかのような雰囲気です。

「コレはオレのオンナなの。オレがオレのオンナに何しようがアンタには関係ないと思うけど?」

「オマエさあ、今オレのこと犯罪者みたいに思ってるようだけど、オレとこのオンナは今お楽しみの最中なんだよ!。」

「答えによればどうなんだよ!こっちが聞きてえよ!」

「この状況ってさ・・・、誰が見ても恋人同士がお楽しみのところにどうやって入ったかは分かんねえけど、いきなりその部屋に入ってきてゴチャゴチャ言ってるオマエの方が不法侵入者ってことになるんだよ!なあ、風谷先生よ。」

そう言われた私は何も言うこともすることもできなくなってしまい、そこに呆然と立ち尽くすしかありません。

するとそのオトコは優子ちゃんをベットの上に四つん這いにさせ、顔を枕に押し付けると再び口を開きました。

「今までのはホームルームだ。コレから1時限目始めるけど、せっかくだから授業参観してったらどうだ?」

と言いながら、そのオトコはおもむろに優子ちゃんアソコに人差し指を突き刺し、今度はゆっくり引き抜きました。

そしてそれを私に見せつけるようにして親指と人差し指をゆっくりくっつけたり離したりしています。

そう言われた私は見たくもないソレを見ると、そのネバネバした粘液の糸でその指の間が結ばれていました。

「なあ、風谷先生よ〜。コレ、見えるか?優子のアソコがオレのこと待ちきれないってよ。」

そういうとそのオトコは優子ちゃん後ろで膝をついて、その白い腰のくびれに手を添えました。

すると、そのオトコが手を添えた右手のあたりにマジックて書かれ、消えかかった正の字が見えます。

そしてその手を自分の股間に引き寄せると自分の物を優子ちゃんのアソコに突き刺し、そのまま腰を前後に動かし始めました。

「コレだよな〜。高校1年生。風谷先生よ。このオンナのコレの中って、コレからオレの形になって行くんだぜ・・・。」

「それにしてもいいぜ・・・この締まり。オマエには分かんね〜だろうな、この硬くって新鮮な感じ。」

「この前は課外授業で、時間のないところで数だけ稼いじまったからな。今日はじっくり行くからな・・・」

「優子。今日はオマエのためにいろんなカリキュラム考えてきたから、2時限目からいろいろやるぜ・・。」

この時私は他人のセックスというものを初めて見ました。しかもこんな間近で。

その時、そのオトコの腰を動かす「パンパン・・・」という音に混じって、さっき入ってきた玄関の方から「カチャ・・・」という小さな音が聞こえました。

ちょうどその時、そのオトコが腰を振りながら言いました。

「あっ、優子。なんか気持ちいいと思ったらコンドーム付けんの忘れちまった。もしデキちまったらこのオトコのせいだならな。悪く思うなよ。」

そのオトコはそう言い残すと腰を振り続けます。その部屋には「パンパン・・・」という音と、「ヌチャヌチャ・・・」というのが混じり合ったいやらしい音だけが聞こえてきます。

するとそのオトコが急に私の方を見て言いました。

「この1時限目が終わったら、休み時間にちょっとだけこのオンナ貸すから、オマエ、ここで筆おろししてったらどうだ。こんな新鮮なのあんまり無いぜ。オレって友達思いだろ?」

この時、そう告げられた優子ちゃんから小さな声が漏れてるのが分かりました。

「た・・・す・・・け・て・・・・マド・・・・カ・・・・先・・・生・・・」

私はそんな優子ちゃんの助けを求める囁きにも似た悲痛な叫びを聞きながら、何かデジャビュ的な感じを受けていました。

その瞬間、姉さんをレイプしたオトコが高校3年生だった私に言った言葉がフラッシュバックしました。

「この雌ブタで筆おろしさせてもらったらどうだ・・・・」と。

この時私の中の何かがプツンと切れたのが分かりました。この感覚も姉さんの時と同じです。

そして、その時私が「この野郎もう一回言ってみろ・・」と言いながらその男を優子ちゃんから引き離し、拳を振りかざした時、物陰に潜んでいた誰かが飛び出てきて、その誰かに手首を掴まれました。

その瞬間、気がついた時には逆にそのオトコの右ストレートが私のアゴをかすめ、大した衝撃でもないのに目の前が真っ暗になって倒れ込んでしまいました。

そして、何かにつかまろうとして掴んだガラステーブルが傾いて、上置いてあったリュックが私の頭の上に落ちてきました。

そしてそのリュックの中の硬い何かに頭を強打されなから一瞬見えたその視界映ったのは、今殴ったばかりの拳の手首を後ろ手に回されて「イデデデ・・・」と言いながらガラステーブルの向こう側にうつ伏せに抑え込まれているそのオトコの姿でした。

そして気が遠くなる中私は自分自身を憂いでいました。

「コレって姉さんの時と全く同じだ。自分って全然成長してないな・・・・。でも、あの時は誰も助けてくれなかったけど、今のは誰だろう・・・」

そこにそう思いながら気が遠くなって行く自分がいました。

今回のストーリーはここまでとなります。

原稿用紙換算で120枚を超える物語を最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。

今回は少し表現の仕方を変えており、会話を主体に表現しています。読みにくい点が多々あると思いますがその辺はご勘弁下さい。

またふたばとのやりとりや、姉さんの演説など省略しようかと思いましたが、まずは自分の書きたいことを表現しようとして長々となっておりますことも併せてご勘弁ください。

最後に、こんな長い物語にも関わらずこんなにも多くの評価を頂けるなんてとても光栄です。

手持ちのタブレットから返信メッセージが出来なかったり、何かある度執筆原稿がログアウトされてしまう等トラブルに見舞われておりますが、評価いただける限り続けていきますのでよろしくお願いいたします。

まことまどか

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