いつも楽しく拝読しています。
昨日、日曜日。出勤中にエッチな記憶を懐かしんでしまったので、書いてみたいと思いました。
セックスなどの直接的なことは無いので場違いだとは思いましたが、良ければ聞いてやってください。
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日曜日の午前11時過ぎ。
駅近くのマッサージ店で柔道整復師として働いているわたしはいつものように、揺れる胸が千切れんばかりの勢いで地元駅の階段を駆け降りていた。
息を切らせながら電車の扉が閉まる音を聞き、息を整えながら車窓の動き出す様を眺めていると、ふと、扉の前に立っている一組のカップルの姿を見た。
彼氏の方は少し頼りなさげだが、いかにも年上といった感じで、にこやかに彼女の話を聞いている。
彼女の方は意外と大きな胸のふくらみを隠しているが、いかにも年下といった感じで、彼氏との会話を途切れさせぬようにがんばっている。
しかし、わたしが注目してしまったのは、その彼女の全身から噴き出る汗の方だった。
フリフリの可愛いデニムシャツの首元から、肩から、腋まで、深い青色の汗染みが彼女を覆っていた。
年上とは言ってもまだ若い彼氏の方は、それを指摘しないことが優しさだと思っているように、何事もなく彼女のニコニコした笑顔に話しかけている。
今から街に出て一日中デートするならば、早めに指摘してあげた方がいいのではないかと不安になったわたしだったが。
そう思うと同時にその二人を横目に、揺れる車窓の向こうにかつてのわたしの思い出を眺めているのであった。
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当時中学2年生だったわたしは、初めてのデートに浮かれていた。
その相手は、幼馴染の翔平の二個上のお兄ちゃんの雄平くんで、ずっとずっと好きだったから、まさかデートしてもらえるなんて思わなくて本当に本当に嬉しかった。
その日は梅雨も明けたばかりの、まさに昨日のような猛暑日で、わたしは緊張しながらも全ての身なりを整えて待ち合わせの駅に向かった。
駅の改札前で今日一日の期待に胸をふくらませながら雄平くんが来るのを待っていると、やっぱりカッコいい雄平くんが”ごめん遅れて”と言ってわたしの元に走って来てくれたので、改めてわたしの胸は高鳴った。
電車に乗り込むと車内は意外と混んでいて、わたしたちは扉の前で立っていることになった。
別にイケメンでモテモテなわけじゃないけれど実は優しくて面白い雄平くんの話はやはり面白くて、それまで何を喋ろうかとあれこれ考えていたわたしの懸念も全て吹き飛ばすくらいに楽しい道中にわたしは浸った。
けれどそんな中、一つの話が終わったあと、雄平くんはわたしにこう言った。
「ていうか美咲さ」
「うん?なに?」
「汗すごいな」
そう言われて初めて車窓に映る自分の姿を見た。
すると可愛い水色のワンピースの首元から、肩から、腋まで深い青色の汗染みがわたしを覆っていた。
瞬時に絶望したわたしだったが、優しい雄平くんはそのまま言ってくれた。
「駅着いたら、何か洋服買ってやらなきゃな」
驚いたわたしはすぐさま「いいよ、いいよ」と否したが、雄平くんは「いや、バイトしてるからいいよ。買ってやるよ」と言って何事もなかったように車窓を眺めた。
その余裕のある横顔に、大人びた年上の表情を見たわたしは、否応なくときめきいた。
そして、わたしをさり気なく隠してくれる雄平くんの優しさの陰にそっと隠れて、急に近付いた雄平くんのシャツの広い胸元に心臓が飛び出そうなほどドキドキしながら電車に揺られていたのだった。
***
駅に到着したわたしは、雄平くんに連れられるまま駅ナカのファストファッションの店に向かった。
そして「服の下にこれ一枚着るだけでだいぶ違うから」と雄平くんに言われるままに白のキャミソールの袋を受け取った。
雄平くんは高校に入ってからすぐ地元のクリーニング屋さんでバイトをしていたから、わたしは改めて、働いてる雄平くんの知識にときめき、感謝の言葉を呟きながらその袋を受け取った。
そして次に雄平くんに連れられて行ったのは、駅から少し離れたところの路地に構えるオシャレな古着屋さんだった。
その店は雄平くんのお気に入りらしく、当時はわからなかった70年代やら80年代の古着を手に取ってはわたしに当てがう雄平くんの真剣な眼差しに、わたしはただただ見惚れるばかりだった。
そんな中、リジッドデニムのワンピースをわたしに当てがった雄平くんが言った。
「美咲。これいいじゃん。着てきてよ」
そのワンピースの良さなど知る由もなかったが、わたしは雄平くんに勧められるままそのワンピースを胸に抱いて試着室に向かった。
そしてその簡易なカーテンだけで区切られた試着室にわたしが素足で踏み入るや否や「ここで待ってるから。早く着ろよ」と言って雄平くんはカーテンを閉めた。
雄平くんの横顔が見えなくなるとすぐに、わたしの胸はありえないくらいドキドキした。
こんな薄いカーテン一枚を隔てた向こうに、あの大好きな雄平くんがいる。
なのにわたしはそんな場所で、今から下着一枚になろうとしている。
例えば今日が、ワンピースではなくシャツとショーパンとかだったら別にそんなことはない。
けれどその日、ワンピースを着て来たわたしは、服を脱ぐなら下着一枚にならなくてはならないのだ。
朝には予定してなかった展開に、幼いわたしの恥じらいは半端なかった。
けれどそこでそのワンピースに着替えないわけにもいかないので、わたしは意を決して汗に濡れたワンピースのチャックを下ろした。
袖から肩を抜いてバサリとワンピースを落とし、何気なく鏡を振り返ると、そこにはだらしなく片乳をはみ出した小娘の姿があった。
その日は初めての、そしてせっかくの雄平くんとのデートだったから、カップ付きの下着を付けて来ていた。
子供用の下着には三種類ある。
ほとんどキャミソールと変わらない第一段階の下着、スポーツブラに似た第二段階の下着、本当は違うが大人と同じようなカップの付いた下着だ。
そしてわたしはその日、だいぶ前から買ってはいたもののずっと着けることを躊躇っていた第三段階の下着を着けて来ていた。
それは大人に近付いた胸を完璧に保護するものだそうだが、それに腕を通した朝から何となく予感していたように、まるで自分の胸の大きさに対応しているものではなかった。
母と一緒に行った下着屋さんで「お嬢さんはお胸の成長が早いみたいなので、余裕を持ってワンサイズ大きなDカップでもいいと思います」と店員さんは物知り顔で言っていたのに鏡を見れば全く見当外れだ。
可愛いフリル付きのパステルグリーンのカップからは、横から上から盛り上がった乳の肉がはみ出し、その中央で深く刻まれている谷間の左端から、恥ずかしいほどに茶色い乳輪が、乳首もろとも顔を覗かせている。
瞬時、幼いわたしは今まで乳首をはみ出したまま雄平くんと会っていたのか、という羞恥と自己嫌悪の渦に飲まれた。
けれども鏡に映っただらしない自分の姿を見ているうちに、妙に興奮している自分に気が付いた。
思春期とは恐ろしいものである。
無意識に、はみ出した乳首とパンツに指を這わせたわたしは、毎晩し慣れているように、雄平くんのことを考えながらその指を動かした。
薄い布越しにわたしはずっと雄平くんに乳首を見せていた。
薄い布越しにわたしは雄平くんの前で下着になっている。
そして薄い布越しにいる彼を想って、わたしは誰にも見せられないことを夢中でやっている。
鏡に曇る息が消えなくなってきた頃に、不意に彼の声がした。
「美咲ー!もう着たー?」
すぐさま正気に引き戻されたわたしは「…いやー…。もうちょっとー…」と声を出して、すぐさまリジッドデニムのワンピースに袖を通し、カーテンを開けた。
そして、ぼんやりしながら雄平くんの言葉を待っていると彼は言った。
「いいじゃん。可愛いじゃん」
普通ならそこで、ときめいて喜ぶのが正しい選択だったろう。
けれど寸前までの熱に浮かされていたわたしは、らしくない言葉を口走ってしまった。
「んー。そっかなぁ」
「なんだよ。可愛いよ?」
「んー。けど…」
「うん?」
「…。なんか、おっぱい、キツいかも」
そう言った時の雄平くんの表情は今でも覚えている。
それまで優しい顔をしてわたしを見つめていた雄平くんは、わたしの言わんとすることを理解するなり頬を真っ赤に染めてわたしの胸を見つめ、しばらく凝視したあとにハッとわたしの顔を見て目を逸らし、もごもごと呟いた。
「…あ、そっか…ごめん。…あの。…他の、探して来る」
雄平くんの後ろ姿を見ながらわたしは、たまらない気持ちになった。
雄平くんがわたしの胸を見てくれた。
わたしをそういう対象として感じてくれた。
そのことに感激して、けれど、だからと言ってどうすればいいのかわからない自分に苦悶した。
ほどなくすると雄平くんは、エスニックな薄いオレンジ色のワンピースを持って来てくれて言った。
「…これなら大丈夫だろ?その…多分…」
ワンピースをわたしに押し付けてカーテンを閉めた雄平くんの耳の形を思い出しながら、わたしはそのワンピースを眺めた。
確かに胸のところに切り返しが付いている。今着てるのよりはゆとりがありそうだ。
しかし実際に着てみると外国製だったためか、小柄なわたしには大き過ぎて、胸元から谷間どころか下着まではみ出している有様だった。
けれど熱に浮かれていたわたしの目に、それはまるで雄平くんを誘惑する着乱れた大人の女のように映り、収まっていた右の乳首を自ら引っ張りだしたわたしは、鏡の冷たさにおでこを付いて、夢中で指を動かした。
ほどなくすると「…美咲?その…着れた?」と雄平くんの声がしたので、わたしは気怠げに「もうちょっとー…」と色めいて鏡からおでこを離した。
けれど、いざ着衣を整えてみると、どうしてもはみ出してしまう下着を見て恥ずかしくなった。
なんなら素肌のおっぱいのふくらみくらいは雄平くんになら見られてもいい。
しかし、はみ出した下着を見られることにはどうしようもない恥じらいがあった。
もし今同じ状況ならさっさとワンピースを脱いで、元のワンピースを着直し”なんか、これ下着出ちゃうんだけど”くらい言って笑うわたしだが、当時のわたしは思春期のせいで頭がおかしかったのか、下着が恥ずかしいなら下着を脱いじゃえばいい、と思い立って早速下着のホックを外した。
そして眼下の鎖骨越し見える素肌のふくらみとその隙間の暗闇、オレンジ色の薄布を押し上げるツンと尖った突起にドキドキしながらカーテンを開けて言った。
「さっきよりは…大丈夫かな」
雄平くんの視線は全てわたしの胸に注がれていた。
わたしはそんな雄平くんの赤い頬を見ながら続けた。
「…どうかな」
口籠もりながら「あ…」とか「その…」とか漏らす雄平くんにたまらなくドキドキして、嬉しかった。
けれど雄平はそのまま特に何も言わずに、いつの間にか手に持っていたラウンドカラーのダンガリーワンピースをわたしに押し付けて「これ着て」と言ってカーテンをサッと閉めた。
熱の冷めやらぬわたしはその反応を少し寂しく感じてしまったが、言われるままにそのワンピースに腕を通すと普通にセンス良く可愛くて、それまでのやらしい気持ちなど全て忘れて可愛い自分にときめいた。
そしてカーテンを開けて雄平くんに見せびらかすと、雄平くんもいつもの優しい表情に戻ってわたしを「可愛い」と褒めてくれた。
それから雄平くんとわたしは、何事もなかったようにデートに行った。
映画を見て、カフェで話して、ウインドウショッピングをして、夕ご飯にマックを食べてバイバイした。
帰宅するなりベッドに倒れこんだわたしは、雄平くんに買ってもらったワンピースに身を包んだまますぐさま眠りに落ちた。
そのまま無邪気に眠って翌朝を迎えられれば、まだ少しはギリギリ可愛い女だったのかもしれないが、夜明け前にのっそりとトイレに起きたわたしは、それから妙に目が覚めてしまい、カーテン越しに夜明けの朝陽を感じながら延々と夢中で雄平くんへの想いを指先に託した。
そして翌朝、寝坊して学校に遅刻したことを、当時つけていた日記に書いてヘコんだことを有り有りと覚えている。
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流れる車窓から目を離したわたしは、再び扉の前のカップルを眺めた。
ウキウキした表情で、おでこに貼りついた前髪を直す彼女は夢中で彼を見つめている。
そんな彼女をニコニコしながら見返す彼氏は、この後、彼女とどこに行くのだろうか。
あの様子だとキスはまだだな。その前にまだ手も繋いでないだろうか。下衆な大人になったわたしは想像する。
ふん、と鼻を鳴らしたわたしは再び車窓に目をやった。
初めて雄平くんとキスをしたのは、汚いカラオケ屋の個室だったな。
しばし思い出に浸ったわたしは、車窓の景色がゆっくりと止まるのを待って目を上げた。
そして谷間を流れる汗を鬱陶しく思いながら立ち上がった頃には、幼いカップルの姿は扉の前になかった。