以前、勤めていた会社は外資系であったが、アメリカ風の合理主義的な雰囲気と日本企業のような温かみある、折衷型のよい企業だった。
その会社では、関連会社含めて、全16チームくらいからなるソフトボールのトーナメントが毎年開催されていた。
自部署においても、フロアの隣りあわせの部署とチームを作り参戦。
しかし、メンバーが9人ぎりぎりだった。
9人の中には、野球経験者が複数居て、見事にトーナメント初戦を勝ち、準々決も勝って決勝に進出。
グランドは、会社のビルの横にあるソフトボール専用グランドで、福利厚生名目で、
特別にグランドの所有者と契約によって、ソフトボール部の練習(試合)、このような大会時に貸し切りとなっていた。
午後から、グランド4か所で(ちなみに、4隅を利用して、一度に4試合まで出来る)一斉に8チームが凌ぎを削るのだが、その試合も前述した通り勝って、決勝の運びとなった。
そのタイミングで、フロアの顔でもある女性の執行役員(Aさん)が応援に駆けつける。
Aさんは、まだ40代前半の風貌(噂)で、見た目も若く、取締役というより、
アイドルの榊原郁恵の熟女然とした雰囲気。
そうした人懐っこさもなくはないが、榊原郁恵の第一印象を、
上手く表現できないが、肌のハリ艶によってというか、能面、または菩薩のそうした、堅い、厳かな表情から来る魅力を上書きするように醸し出し、適度に近づきやすく、
反面、近寄りがたい印象があり、それも含めて不思議なカリスマ性というか、魅力のある方であった。
敢えて言えば、それはダイアナ妃の王室特融の風格に似ていた。
Aさんは、財務のスペシャリストであり、その会社にヘッドハンティングされるまで、銀行、金融系の厳しい世界で管理職を歴任されてきたわけで、
一言でいえば、熟女(女性)としての、大人の落ち着いた魅力(色気)のみならず、そうした有無を言わせないような風格をも持ち合わせていたわけだ。
そのAさんは、部署に、新たに海外から赴任となる外国人の役職者が居て、ちょうど前日に来日され、職場見学されたいということで、休日(土曜日)であったが付き合い(案内)で出勤をされていた。
が、接待を終え、何と、午後からのソフトボールの試合に、チームを激励に訪れてくれたのだった。
Aさんが、激励後、試合開始から、およそ20数分で帰ろうとされた矢先のこと。選手の1人である年配の男性が足をくじいて、動けなくなっていた。
男性は、攻撃時に3塁打を狙って、2塁を蹴った際、ベースを踏み誤り、足を
ひねったのだった。しばらく、治療法を模索していたが、ちょうど、攻撃が終わって、守備は難しいという話となっていた。
試合のルールは、9人に満たないチームは、その時点で失格。
審判兼大会運営者の意見では、負傷者による人員不足は、即席で登録が可能とのこと。
決勝だけに、試合放棄は避けたく、迷っていると、Aさん自ら、手を挙げ『あの~(その後、しばらく沈黙して、押し黙る)た、立っているだけなら、私でも、で、で、できますか?』とおずおずと申し出るではないか。
若手の執行役員とはいえ、運動系は得意ではないらしく、いつものカリスマ的な、Aさんが、その瞬間だけ、別人みたいに大人しく、自信を欠いたようになり、
しかし、いつもと勝手が異なる、ためらいがちで、はにかんだ、Aさんの表情も、正直、また魅力的なのであった。
我々は、試合が続行できる上、Aさんが加われば、別の意味で、どこかワクワクする部分があり(これは多言を要しない)、自然の成り行きで、Aさんを6番ライトで、その男性の代わり役を務めることに。
(男性のポジションは、ちなみにセカンドだったが、守備のみ変更)
Aさんのライトは、センターが定位置を大きく離れる形でフォローし、ピッチャーもライトには打たせない配球を徹底し、2回表の守備は無難にこなしたのだった。
次の回も守備は無難に守り、いよいよ、最終回、7回裏の攻撃となっていた。
(ちなみに、その時点で確か2点差で自チームは負けていた。)
5番が、2塁打で出塁すると、いよいよ、Aさんに打順が回って来た。Aさんは、それまでの打席はすべて空振りの三振であった。
ところで、Aさんの服装はというと、黒の高級ジャケットに紫の花柄の刺繍のあるブラウス姿。
スカートも、テニスみたいに、ひだが付いた黒の膝丈タイプで、
明らかに、他はほとんどジャージ姿同然なので、自然に、その場に浮かび上がってしまうような風貌だった。
決勝とはいえ、相手ピッチャーが、最後位は打って貰おうと思ったか?
Aさんに気を遣って、ど真ん中の緩いボールを連発。
しかし、運動オンチのAさんは、初球、2球目とまた空振り。
Aさんは、思わず苦笑を浮かべつつ、3球目を思い切り振りぬいたら、幸運にも、バットにボールが当たり、打球は緩いが、3塁ベースに当たり、ファールグランドを転々。
そこで、何を思ったか、Aさんは3塁ベースに向かって走り出してしまったのであった!!
2塁ランナーが3塁を回って、Aさんと鉢合わせに。
普段、社員としては、下っ端で、野球だけが取り柄のランナー男性は、あきれ返ったように、Aさんに身振り手振りで、1塁を差して指示。
『1塁だって!!向こうに走るのっ!!急いで、早くっ!!!』と、
頭を抱えた様子。
いつものカリスマ然とした、ときに部下を人前で強く叱責するような、Aさんの表情は完全に消え失せ、
涙を浮かべた様子で、また恥ずかしさと失態とで、パニックになっていたのが読み取れた。
ボールが、グランド脇の茂みに隠れたか?
3塁手がボールを掴んで、1塁に送球するタイミングと、Aさんの1塁に駆け込むタイミングとで微妙な感じだった。
(ちなみに、その間に、2塁ランナーは生還していた。)
選手全員が、1塁に走るAさんに盛大な声援を送る。『頑張れー!Aさん頑張ってー!!走って!!速くー、』
Aさんも、パニックになるどころではないと、特有の女走りながら、懸命に、気を取り直して、1塁に向かって走っているのが伝わってきた。
ところが、
ベースを踏む手前で、ハイヒールから、間に合わせの運動靴に履き替えてはいたが、石ころにつまずいてしまったか、大きくバランスを崩し、
更に、1塁ベースの角に接触しつつ、思い切り転倒したのだった。
その瞬間、Aさんが転ぶと同時に、黒の膝だけタイプのスカートが完全にめくれ、”パンスト越しの純白パンツ”が、露わになるではないか!!!
送球が一瞬、早く、アウトになってしまったが、もう勝ち負けや、アウト、セーフは、Aさんの転倒モロパンを拝めただけで、正直、どうでもよくなっていた。
主審の男性が、全速力で1塁に駆け寄り、Aさんのめくれ上がったスカートを直したが、いかにも不自然な近づき方で、Aさんの、モロパンを近くで拝むついでというのがありありだった。
結局、そのまま1点差でチームは敗れたが、
翌週の月曜のフロア朝礼で、この話がなぜか噂話で社員の間に広まっていたようで、
いきなり、ネタになってしまった。
口調は、劣勢の最終回に、体を張ったヘッドスライディングという風だったが、
朝礼後、あちこちで、『Aさんが転んでパンツを見せたってホント?』と、男性の間で、ひそひそした会話のやり取りが聞こえてきた。
その会話の数々に、赤面するAさん。既に、飛んだ失態で、いつものカリスマ性は消え失せた感じだったが、フロアや通路で、すれ違って、あの『転んで、パンツ丸見え事件』を、思わず思い出し、笑いそうになるのを必死こらえていたが、それも見透かされるようで、思い切り睨まれるのであった。
それでも、まだ、転倒!パンモロ!!の失態に打ちひしがれて自信をなくしたAさんより、
怒ったような睨んだような顔の方が、どこか妙に、晒したパンツを、何故か、意識させるようで?それも含めて、どこまでも魅力的で、カリスマ性あふれる、そんな、Aさんのパンチラ大事件なのであった。
(完)