うちの高校は、卒業するまでに論文を書く必要があった。とはいえ、まあいわゆるバカ学校だったから、真面目なテーマで取り組む奴はいなくて、全員ウケ狙い。
でも蔑まないでほしい。良い論文を書いたからって良い大学に行けるわけじゃなし、何のメリットもない論文だったんだ。
で、俺のテーマはズバリ、「マスタベーションとセックスでは、射精後の精子の動きに違いはあるのか?」ってもの。素直に認めるが、バカ丸出しのテーマだ。
実験は簡単。オナニーとセックスで得た精液を、顕微鏡で観察して、よく動いている精子の割合を計算するだけ。
同級生の彼女に協力を頼むと、「バッカみたい。」と笑われながらOKをもらった。
朝からオナニーして、すぐに学校に行って顕微鏡で見る。やってわかったが、動き回る精子を数えるのはかなり大変だ。目や首が痛くなる。それに自分の精子を見るってのは、死ぬほどつまらない。
それでも、卒業のために研究はしなくては。
同じように朝から彼女とヤッて、ゴムに溜まったものを学校に持って行って観察した。結果は、セックスの方がやや活発だった。
こうして、オナニーとセックスのたびに、顕微鏡を覗き、データを蓄積した。
そして迎えた口頭試問。休み時間に、テーマに近い科目の先生のところに行って、合格印をもらえば終了。卒業が決まる。
生徒の間では、いかに教師を笑わせられるかが、最重要課題だった。真面目に論文を書く気なんて、はなからない。俺がああいうテーマを選んだのも、そういう理由だった。
生物の教師は陰気(100%童貞だと他の教師から言われてた)で、誰も笑わせたことがないと言われていた。俺がチャレンジしてみせる。そのつもりだった。
理科室で、そいつを前にプレゼンする。ギャグも入れたのに、シカトされた。
プレゼンが終わってからすぐ、質問された。いろいろあったが、致命的だったのは最後のやつ。
「データを積み上げたのは良いですが、同一個体のものですよね?他の個体と比較しないと、個体差という可能性が捨てきれませんよ。それについては、どう思いますか?」
こいつ、言葉遣いは丁寧だが、俺を「個体」扱いしやがった・・・。怒りは湧くが、問いには答えられない。
うまく答えられない俺を見て、不合格だと生物教師は告げた。
嘘だろ?もっとザルなやつはいるぜ?なんで俺だけなんだ。そう抗弁するも認められず。土下座して懇願すると、他の個体との比較結果を載せるという条件で、合格をもらった。
「では、私が実験台になりましょう。」生物教師の言葉に、その時は素直に感謝した。
その日のうちに、放課後に居残りして、そいつの精液を観察した。他人の精液の臭いなんて、不快でしょうがない。でも仕方なかった。
意外だったのは、そいつの精子がすさまじく元気だったこと。童貞のくせに。
とりあえず、報告に行き、次の資料(セックスした精液)を求めた。
「わかった。用意しとく。」生物教師の言葉にホッとしたのもつかの間、
「君は誰とセックスしたの?」とんでもないセクハラ質問が飛んできた。
「4組の本田です。」我慢して答えると、
「じゃあ、本田さんに協力してもらわなきゃいけないか。」とぬかしやがった。ハア?となった俺は、「どういうつもりですか?」と強めに問いただした。
「落ち着け。先生もやりたいわけじゃない。だが、実験は条件を揃えなきゃいけない。お前は実験でよく寝てたが、それは聞いてただろ?」
俺は言葉を失った。
翌日の放課後、俺と彼女は、生物教師と一緒に生物準備室にいた。俺が事情を説明すると、信じられない!って顔を彼女はし、無理だと言い切った。
「でも、本田さん。申し訳ないけど、あなたに協力してもらわないと、岡田くんが卒業できないのよ。」
生物教師の言葉にうつむく彼女。ためらいが出たらしい。そこにそいつが追い打ちをかける。
「会議で君たち三年生の卒業を話し合うんだけど、論文を受理しない場合、担当教員が事情を説明しないといけない。岡田くんの場合、本田さんが性交を拒否したからって・・・。」
これは彼女にこたえたみたいだった。最終的に、彼女は生物教師とのセックスに同意した。
彼女をセックスに差し出すなんて、俺は自分が情けなくて仕方なかった。そのあと、さらなる悲劇に見舞われるとも知らずに。
セックスの間、俺は隣の生物室で待つことになった。生物準備室を出るとき、彼女を振り返ったが、強引に生物教師に押し出され、扉に鍵をかけられた。
黙って待っていても悔しさばかりが募ってきたので、扉の隙間から漏れる音を聞いていた。
「本田さん、申し訳ないね。でも、彼氏のために頑張るなんて、偉いと思うよ。」
そいつにしてはやけに思いやりがある。
そんなたわいもない話で10分くらい過ぎた頃、
「じゃ、始めようか。」
というそいつの声が聞こえ、
「さっ、脱いで。」
と続いた。
あの野郎、人の彼女でストリップを楽しみやがって。はらわたが煮えくり返りそう。
「ほー、そのパンティー、かわいいね。いつもそんなの着けてるの?」
「ウヒョー、たまらん。君のおっぱいはほんと綺麗だよ。」
普段から想像もつかない変貌ぶりだった。その時、彼女の声が聞こえた。
「キャッ。」
「どうしたんだい?」
「それが・・・大きくて。」
「あはは。俺、こう見えて、童貞なんだけどね。岡田くんはチャラ男のくせに粗チンなのか。あはは。」
腹立つ。本当に腹立つ。
「俺はね。オモチャの収集家なんだ。いっぱい見せてあげるね。」
「先生、終わってからにしません?」
「ふふ。君はまだ純真なんだね。オモチャっていうのは子供用じゃなくて・・・ほら!」
「これなんですか?」
「これはねえ・・・。」
「え?先生?チョット・・・。」
ウィーンという音がした。その途端、
「アーーーン!」
「お?刺激が強かったか?気持ち良いか?じゃ、もっと強く!」
ヴィーン!
「あ、いや、ア、アーーーーーーー!」
「どうだ?感度が良いな。それ!」
「せ、先生。ハア。やめて。アアーーーーーーーン!」
信じられなかった。彼女があんなにも激しくイカされている。俺とのときはあんなではないのに。
「アアーーーン。アーーーアッアーーーーーー!」
絶え間ない彼女の喘ぎ声に、悔しさを堪えつつ待つこと5分。
「本田あ。ずいぶん楽しんでるな。ほれみろ。」
「え?うそでしょ?」
「かわいい白のパンツがびちょびちょじゃないか。感じやすいんだな。」
「先生、違います。ん、んーー!」
「なんだ、乳首も弱いな。お前はいつか、これを赤ん坊に吸わせるんだぞ。こんな風に。」
「い、いやーーーー!アン!アンッ!」
彼女が感じている。あんな童貞教師に。クソ!クソオ!
「そろそろ入れるぞ。」
「え?それ入りません。」
「大丈夫。優しく挿れるから。」
「え?あっ!あ、かた〜い!カチンコチン。」
「こんなエロい身体見て、フニャチンの男がいるかよ?あ、もしかして岡田は?どうなんだ?え?イエス?イエスなのか?あいつ情けねえー!」
怒りはピークに達した。でも、それ以上に、彼女がこのセックスに満足し始めたらしいことが、非常にショックだった。
まもなく、パン!パン!という音が響き始めた。
其のスピードが上がり始めると、「はあ〜ん。」という彼女の声が。
「オラッオラッ!どうだ!」
「フヒィー!アン、アーーーー!」
「もっとイカせてやるぜ!」
「う、ウヒィーーー!い、いやーーーーーー!」
「うっ!ハア、ハア。ハアア。いや、最高だったぞ。おい?大丈夫か?ああ、そうか。あれだけ感じ続けたもんな。よし、これを岡田君に渡そう!」
これを聞いて、俺は扉から離れ、椅子に座った。
2分くらいして、「お待たせ。お待たせ。」と言いながら、彼女を連れた生物教師が現れた。
「はい、大事な資料。頑張ってね。」
そう言って、彼女を連れて去っていった。
もう、俺はやる気をなくして、カウント作業は適当だった。
なんとか卒業できることにはなったけど、彼女とうまくいかなくなった。セックスで、彼女が感じなくなったのだ。そこから別れを告げられるまではあっけなかった。
四月に社会人になった俺は、しばらくして同級生と飲みに行った。
「おい、本田のこと、聞いたぜ。」
「え?何を?」
「お前知らんのか?元カレだろ?」
「ごめん、知らんかった。どうしたの?」
「あいつ、ドウティーと付き合ったらしいぜ。あの生物の。」
ドウティーとは「童貞ティーチャー」の略。あいつのことだった。
「でも、なんであいつと付き合おうなんて、思ったんかな?元カレ、教えてくれよお!」
「いや、俺、知らんし。」
「俺が思うによお、あいつ助平顔じゃん。意外にセックスうまかったりしてな。」
俺は固まってしまったようだ。
「あ、わりい、わりい。いくらなんでも、な。お前の前で言うことじゃない、よな。おーい、店員さん、唐揚げもう一皿!」
俺はぼんやりとそれを聞きながら、敗北感に打ちのめされた。あんなふざけた論文にしなければ、男としての魅力があれば、教師に彼女を取られたりしなかったのに、と。