和泉菖蒲さんとの交際が始まったのは高校の卒業式からだった。
黒くて長い髪は、巻いたり染めたりしていないため、痛みのない天然の艶がある。
美白をうたう化粧品のすべてを黙らせるような白い肌。
ブレザーの上からでも分かる豊かな胸。
目立つタイプではなかったが、陰の清楚系美人として噂にあがることは何回かあった。
修学旅行の時に「お前は誰が気になるんだよ」なんて俗な話題が自分のクラスでもあったわけだが、何人かは和泉菖蒲さんと答えていた。
だから「鈴木くんのことが好きです」と言われたときは頭が追いつかなかった。
自分は平々凡々な学生生活を送っていたと自負している。幼馴染や男友達とそれなりの高校ライフを過ごしていた。
逆にいえばそれだけだ。
色恋沙汰の「い」の字もなかった。
故に和泉さんの言葉は完全に予想外のアウトコース一直線だった。
告白慣れしているイケメンならともかく、残念なことにこれが初めてであった自分はただ慌てふためいて返事ができなかった。
すると和泉さんは瞳に涙をためはじめた。
スカートの裾をつかんで俯いている。
何だかとても悪いことをしている気持ちになる。
荒波を立てたくない、穏便でぬるま湯な人間関係を築きたいというヘタレ精神の持ち主である自分は、涙を止めようとこう言った。
「いいよ」
和泉さんは顔を上げて口元を両手でおさえる。
「本当に、私でいいんですか?」
「うん」
「ありがとうございます……!」
結局泣いたんだけど。
悲しい表情から笑顔に変わっていたからマシにはなっただろう。
とりあえず胸を撫で下ろした。
自分も和泉さんも地方の国立大に進むことが決まっていた。
まさかの恋人有状態でのキャンパスライフが幕を開けた。
ここに投稿するからにはさぞ濃密な関係が、と思うかもしれないが、2年間はキス止まりの関係だった。
和泉さんはとにかく「一昔前の日本の女性像」の具現化みたいな人だった。
派手な場所や賑やかな場所は苦手で、公園や喫茶店のようなところを好んだ。
公園に行くときは手作り弁当を持参。
惚気に聞こえるかもしれないが、そのクオリティが高かった。
そういえば、高校の時の家庭科の授業で「誰が一番はやくキャベツのみじん切りと魚裁きが出来るか大会」があって、和泉さんが優勝していたことがあった。
普段から料理をしていたのだろう。
裁縫もできるようで、ボタン付けや裾直しもやってもらったことがある。
「家事は母から教わった」と言っていた。
一歩引いて男を立てるような、内助の功ってこういうことを言うんだろうなというような恋人だった。
一度だけ彼女の実家をたずねたことがある。和風の平屋に住んでいた。
今までの和泉さんの立ち振る舞いから、妙に納得した自分がいる。
そこで自分はこう思ったのだ。
(さぞ、恋愛関係には厳しいに違いない)
そういうわけで、キスまでにしておこうと思ったのだ。
人前でされるのも抵抗ありなんだろうなと思ったので、自分か和泉さんのアパートで触れ合っている。
「んぅっ……」
甘美な声は女性慣れしていない自分には刺激が強すぎる。
「ちゅぅっ、れろっ、はぁっ」
舌を入れる深めのキスを解禁したのは半年ほど前だ。
自分も和泉さんも成人したので許されるのではないかと勝手に思った。
和泉さんも初めは驚いたが、受け容れてくれている。
「わ、私もっ、んっ、んぅっ」
彼女の方から舌を絡めてくるようになったのはここ最近だ。
数か月前から、スキンシップに積極性が見え始めている。
今も背中に手を回されているが、あまりくっつかれると大学生になってますます熟した胸が当たって劇薬になっている……などというと哀れな男と思われそうで口にできない自分がいる。
「お食事、冷めちゃう……」
そう言うわりに、服の裾を摘まんで引っ張ってくる。
冷蔵庫にあったものでパッと作ってもらった料理には申し訳ないが、もう少し待っていてもらう。
「あっ、あぁっ」
和泉さんの頭に手を回す。
床に倒れるように背中をつけても痛くないように。
何分か経って唇を離す。
潤んだ瞳と乱れた息遣いでこちらを見つめている。
色白なので、頬の朱色がよく分かる。
ワンピースは肩の部分が肌蹴て露出している。仰向けになっていても胸の存在感は変わらない。
服の隙間からのぞく柔らかそうな太もも。
そんな彼女に馬乗りになっている自分。
「身体を重ねる3秒前」みたいな体勢だが、残念ながらお預けである。
「本当に冷めちゃうよな」
背中に手を入れて、起き上がるのをサポートする。
「身体の関係はキスまで」というマイルールを破ったのは、この1か月後であった。
学生の本業は勉強であるからして、アパートでレポートを書いていた。
だが今日は必要以上に喧しかった。
「俺はよお、悲しいぞ大和! お前ばっかり美人な彼女がいてよ! 裏切り者めが!」
夕方から夜にさしかかって酒が入り始めると、もうレポートどころじゃない男友達A。
和泉さんはクラブ活動が終わってからの参加なのでまだこの場にはいない。
「でもさ、和泉さんって大和のどこを好きになったんだろうね」
女友達Aが言う。それは自分でも疑問だった。
「特別顔がいいわけでもないし」
「お金持ちでもないし」
「ずば抜けて頭がいいわけでも運動できるわけでもないし」
俺への悪口集になっている気がするのだが。
「和泉さんのおっぱい触り放題とか羨ましすぎて憤死しそうだぜ! 実際のところ何カップあるんだよ、見たんだろ?」
興奮している男友達B。
答えられない。
身体の関係はキスまでで、当然胸を触ったことなどない。
「何、もしかして、あんな彼女がいながら童貞なのかよ!?」
「2年も付き合っててまさかの童貞!?」
何で俺の公開処刑タイムになっているんだ?
「大丈夫!? おっぱいの触り方、教えてあげようか!?」
酒の入った女友達Bは俺の腕を掴んで胸にあててきやがった。
「ちょ、やめろって」
「その反応が童貞の証拠じゃん!」
童貞童貞うるさい。
「どう? ちゃんと掴める? 和泉さんのおっぱいはこんなものじゃないんだから、練習しておかないと!」
この年ごろの男女というものは、どうしてエロ話に花を咲かせるのだろう。
自分は自分で、人生初の胸の感触やら羞恥やらで戸惑ってあわあわしていたのだが。
数十秒後、別の意味であわあわすることになる。
ふと扉の方を見ると、呆然と和泉さんが突っ立っていた。
童貞馬鹿騒ぎでチャイムが鳴ったことに気が付かなかったのだ。
静観していた男友達Cだけが音を認知し、自分の代わりに出てくれたのだ。
振り払うようにして女友達Bの胸から手をはなす。
「……遅れてしまってごめんなさい」
微笑んだ和泉さんだったが、それが本心でないことはさすがに分かった。
皆が帰った後、部屋には自分と和泉さんの二人だけになった。
友人が散らかしていった空き缶やらゴミくずやらを片付けてくれている。
何を言えばいいのだろう。
どう思っているのだろう。
あらかたゴミを片付け終えた時、和泉さんが胸元に飛び込んできた。花の香りがする。
「私、魅力がないですか……?」
瞳が潤んでいる。
「恋人になって、大人にもなったのに、口づけだけで、触れていただいたことないのに」
「それは、えっと、あれは不可抗力というか」
「他の子に触れるのなら、私にも……!」
ブラウスのボタンを外して胸元を見せてくる。深い谷間。
2年も付き合っているのに彼女のことを分かっていなかった、そのことが申し訳なかった。
「ごめん、不安にさせて」
顔を上げる和泉さん。
うるんだ瞳で下から見上げられるのは刺激が強い。
胸元が露出しているのでなおさらだ。
「和泉さん、身体の関係に厳しいんだろうなって、勝手にそう思ったから。嫌な思いをさせたくなくて」
「鈴木くん……」
「でも、本当は、俺も……!」
和泉さんを抱えてベッドに運ぶ。
そのまま押し倒して馬乗りになる。
自分にも人並みの性欲はあったのだ。
目を見開く和泉さんにキスを落とす。
「んうっ……!」
潤って柔らかい唇。
舌先を口に押し当てて、開いてもらうよう催促する。
「あっ……。はぃっ……」
その意味を覚えた和泉さんは口を開く。
舌を捻じ込んで上あごを撫でる。
「ああっ、はあっ、ちゅっ……」
口元にベタつく唾液を拭き取ってやる。
すると和泉さんも自分の口に手を当てて拭ってくれた。
糸を引いて舌が離れる。
「今の、気持ちいい、から、だめ……」
無知な彼女に加虐心と庇護心を同時にくすぐられる。
情事において、か弱い声による「駄目」は「して」に変換される。
再び唇を塞いで、舌先で上あごに触れる。
「んうぅっ……!」
唾液の混ざる音と吐息が重なる音で、室内はすでに嫌らしい。
より深いキスをしようと身体を密着させる。和泉さんも頭に手を回してくる。
「れろっ、ちゅっ、んっ」
獣のように口内を舐めまわす。
これだけで充分気持ちいいのだが、性欲というものは限りを知らない。
身体をくっつけたことで、和泉さんの豊乳を胸板でモロに感じるようになる。
(……触りたい)
本当はずっと触れたくて、揉みたくて、舐めたくて、たまらなかった。
舌を絡めながら、乱暴にブラウスを脱がせる。
驚きで舌の動きが止まる和泉さん。
顔を離してその姿を確認する。
絹のような白い肌。
くびれは滑らかな曲線を描く。
そして、淫らな乳房は白いレースの下着に包まれていた。
下着に手をかけて和泉さんの意思を確認する。恥ずかしそうに頬を赤らめるものの、嫌がるそぶりは見せない。
肯定と受け取った自分は、下着を外して生の乳房に対面した。
下着から解放される瞬間「たぷん」と擬音がつきそうな勢いで飛び出してくる。
「あっ」
揺れた胸に反応して和泉さんが小さく声を漏らす。
「今の女性下着は優秀だから、パッドで2カップくらい大きく見せられる」などという話を聞いたことがあったが、サイズの縮小は感じず、むしろ大きくなったようにすら見える。
後から知った話だが、逆に「小さく見せる下着」などというものもあるらしく、それを着用していたようだ。
仰向けになって、下着も外しているにもかかわらず、谷間は健在でかたちも綺麗な丸みを保っている。
左右それぞれの胸を、まずは1回揉んでみた。
「んっ」
「柔らかいっ……」
思わず感想が漏れる。
滑らかな肌触り。
手の動きに合わせて器用にかたちを変える弾力性。
予想外だったのは、あまりの大きさに片手では掴みきれないことだ。
下から持ち上げるようにして揉みこむ。
こんなに柔らかなのにこの重量。
不思議な感覚だ。
たぷたぷと揺らしてみる。
「あんっ、そんな、揺らしちゃ……」
「痛い?」
「鈴木くんなら、だいじょうぶ……」
自分なら大丈夫になる理屈はさっぱり分からないが。
揉んでいるだけでは和泉さんには物足りないかもしれない。
先端に目をやると、すでにぷっくりと尖っている。
親指と人差し指で軽くつまんでみる。
「ひゃんっ」
びくんと身体が跳ねる。
くりくりと動かしてみる。
「あっ、やっ、んうぅぅっ」
こねまわす力の強弱に合わせて声が変化する。
自分が和泉さんを支配しているような、そんな欲を満たされる。
「だ、だめぇ、どきどき、しちゃ……。思っていたより、ずっと……」
「思ってた?」
「鈴木くんに、触ってもらったら、どうなるのかなって、私……」
何だ。和泉さんも人並みに性への関心があったのか。
そうと分かれば遠慮はしない。
乳首に舌を這わせて、ねっとりと舐めあげる。
「ひゃあっ!?」
びくびくと小刻みに震えている肢体。
舌先で軽くはじく。
「あんっ、あっ、あぁっ」
片方の胸は舌で、もう片方は指で愛撫する。
「んっ、んぅっ、っ……!」
口元を手でおさえる和泉さん。
「手、どけて」
「だめっ……。声が……」
「聞きたいんだ」
誰も耳にしたことのない、和泉さんの淫らな声を自分だけのものにしたかった。
和泉さんは視線を横に向けて、やがておもむろに手を頬に動かした。
「鈴木くんが、そう言ってくれるなら……」
「ありがとう」
再び乳房に視線を戻す。
揉みこんでみて思った。
柔らかいのにほどよく弾力性があって、癖になる感触だ。
乳首を軽く吸ってみる。
「ふあぁっ」
わざと音を立ててやると、和泉さんの顔はすぐに朱色に染まる。
下から上に持ち上げるように揉みながら、舌と指で乳首をこね回す。
「ひゃっ、あぁんっ、おっぱい、きもちいぃっ……。あっ、あぁっ」
胸の感触を堪能している自分はいいが、和泉さんは本当によがってくれているのだろうか。
「嫌なら言っていいから。演技されると、逆に辛いし」
「あっ、う、嘘つく、余裕なんて、ない、です……。んっ、あんっ、ひゃっ」
息を乱しながら懸命に答える様子を見て、素で感じてくれているという自信を得た。
初めての刺激を懸命に受け止めようとする和泉さんが愛おしくて、本能的に口づけをしたくなる。
「んっ……。ちゅっ……」
キスをしながら頭を撫でると、心地よさそうに瞳を閉じる。
指通りのよい艶やかな黒い髪。
綺麗な曲線を描くくびれに沿わせながら手を下に動かしていく。
滑らかで柔らかい太ももを優しく揉んでみる。
「あっ……」
お尻が浮いたのを見計らい、するっと手を潜り込ませる。
丸みを帯びた柔らかいお尻に興奮する。
下着越しにではなく、直に触れてみたい。
生まれたままの和泉さんが見たい。
藍色のスカートをそっと下ろす。
「あっ……」
上の下着と御揃いの、白いレースのショーツ。
それに手をかけて、意思を確認する。
「……いいかな」
「恥ずかしい……」
「そのままの和泉さんが見たい」
困ったように視線を動かしていた和泉さんだったが、やがてゆっくりと頷いた。
「鈴木くんになら……」
自分にだけ許されるという優越感をこれ以上ないくらい満たす言葉をいただいた。
下着をおろし、和泉さんの肢体を隠すものは何もなくなった。
白い肌、黒い髪、紅い頬。
3色の絶妙なコントラストに芸術性すら感じた。
乳房とくびれ、お尻のなだらかな曲線美。
まじまじと見つめていたからだろう。
和泉さんは胸を隠すように腕を交差させる。
「あ、あまり見ないで……」
「ごめん、綺麗だと思って」
「そ、そんなこと……」
控えめな性格の和泉さんは、褒められると言葉に困るのだ。
きゅっと両足を閉じている。
秘部をさらすことには当然抵抗があるのだろう。
「優しく、触るから」
「で、でも、今は……」
出てきた言葉に違和感を覚える。
「今は?」
「あの、えっと……」
「怖い、ってこと?」
「ち、ちがっ……。その……。げ、げんめつ、しませんか?」
何に幻滅するというのだろうか。
「するわけないよ。和泉さんのだから」
「…………っ」
おもむろに、少しだけ股を開いてくれた。
綺麗な桃色の秘部。
がっかりする要素などどこにもない。
想像と違うところを挙げるとすれば。
「……濡れてる?」
太ももの内側にも垂れてきはじめている液体。
「す、鈴木くんに、触ってもらって、嬉しくて、ドキドキして、気持ちよくなって、私……」
はじめての子を相手にするので、濡らすのは一苦労だと思っていた。
「キスとか、おっぱいだけで、こんなになって、はしたないって、幻滅されちゃう……」
涙が溢れそうになっている。
何て幼気なのだろう。
「幻滅なんてしないよ」
「ほ、本当、ですか……?」
「嬉しいよ。感じてくれて」
和泉さんを気遣ってるわけではなく、正真正銘の本心だ。
先ほどの童貞連呼祭りで内心自信を失っていたのだ。
指の腹でそっと秘部に触れる。
くちゅっ、という音に和泉さんは目を閉じる。
「それに、濡れている方が痛みも和らぐから」
「あっ……。音、恥ずかしい……」
撫でる度にぴちゃぴちゃと嫌らしい音が響く。
触れる程度で、強く押し付けないように、痛くないように。
「あんっ、んぅ、あっ、あぁっ」
「大丈夫、力抜いて」
耳元で囁いて落ち着かせる。秘部を触りながら頭を撫でる。
口をはくはくとさせているのでキスを落とした。
「ちゅっ……」
唾液の絡む音と、愛液の漏れる音が混ざり合い、卑猥この上ない音楽を奏でている。
濃厚な口づけを交わしながらふと思う。
(ココを舐めたら、和泉さんはどうなるんだろう)
大人しくてお淑やかな和泉さんの淫らな姿を見てみたい。
その欲求に勝てず、舌先を膣の入り口に押し当てた。
「あ……っ!?」
胸が大きく揺れるほど身体が跳ねる。
初めての愛液の味。
美味しいかどうかはさておき、和泉さんのものだと思えばいくらでも舐められる気がした。
「だ、だめっ、そんな、きたない……!」
「汚くないよ」
唾液と愛液が混ざり合い、ぐちゅぐちゅと淫猥な響きを奏でる。
「んうぅぅっ……! 音、だめっ、あああぁぁっ……!」
びくびくと震える身体。
わずかな震えにも反応して、たぷたぷと乳房が揺れ動く。
「ああっ、んっ、やぁぁ、おかしくなるぅ……!」
汗ばんだ肢体、乱れる吐息、紅く染まる頬、潤んだ瞳。
和泉さんをこんな風にしているのは自分なのだと思うとたまらない興奮を得る。
秘部全体を舐めていたが、少しずつ、一番敏感なところに近づけていく。
そこ――クリトリスの皮を2本の指で剥いてみる。
そして舌先でちょこんと触れた。
「……!?」
一瞬喘ぎが止まる。
ソフトタッチで、左右に少しだけはじくように舐める。
「え、そ、そこ、な、なに、え、あ、あっ」
和泉さんは混乱している。
「触ったこと、なかった?」
「や、そこ、へんになる、なっちゃう……!」
「もう少しすれば慣れるから、ちょっと我慢して」
敏感な個所を弄られることに慣れてもらわないといけない。
「ああっ! あぁんっ! はあ、はぁ、あっ……!」
困惑が快感へと変わった頃合いを見計らい、舌を動かす速度を速める。
時々周りを舐めたり、動かし方を変えたりしながら、和泉さんの様子をうかがう。
「だめっ……! んっ、このままじゃ、わたし……。あぁっ! おかしく……んんぅ!」
「絶頂」を知らないのだろう。
初めて迎えようとしている感覚に戸惑っている。
淫靡な喘ぎ声、乱れた吐息、垂れ流しの愛液。
「すずきくんっ、わたし、あっ、あっ……!」
「そのまま、イって」
「ああっ! あんっ! あっ、あっ、あ、あああっ! ああぁぁあんっ――!」
飛び散った愛液が口元にかかる。
初めての絶頂に呆然としている。痙攣する身体を優しく包み込む。
「はぁ、はぁ……。鈴木くん、私……」
「うん?」
「ごめんなさい。私だけ……」
「いいんだ。和泉さんがイくところ見れたから」
額に触れるだけのキスを落とす。
目を閉じてそれを受け容れてくれる。
しばらくそうしていると、和泉さんが衝撃的なことを口にした。
「私にも、させてください」
思わず身体を起こす。
「私、こういうことには疎くて……。どうすれば鈴木くんは気持ちよくなるのか、教えてくれますか……?」
四つん這いになる和泉さん。
たぷたぷと乳房が揺れる。
先ほどまでの行為で、すでにモノは勃起している。
ジーパンのファスナーを下ろしてもらうよう指示する。
勢いよく飛び出す男根。
「お、大きい……」
和泉さんは比較対象を見たことがないから出た言葉であって、自分自身のサイズはそこまででもない。
「握ってみて」
「えっと、こ、こう、ですか?」
指先で優しく加えられる刺激は少々物足りない。
「もう少し、力入れても大丈夫」
「は、はい」
自分の一番気持ちいい加減を教え込む。
「それで、上下に動かしてくれるかな」
「分かりました」
絶頂を迎えた和泉さんを見て、モノはすでに我慢汁でドロドロになっていた。
おぼつかない手つきなのにこんなにも心地よい。自慰では絶対に得られない快感。
俺をよくしようと、一生懸命になってくれる。その事実がたまらなく気持ちいい。
「咥えてもらっても、いいかな」
「くわえる……? お、お口でですか?」
「うん」
和泉さんはおそるおそる、舌先を先端にちょこんとつける。
やがて、おもむろに亀頭を口に含んだ。
「好きに、舌、動かしてみて。キスの時みたいに」
そう言うと、遠慮がちに亀頭を舌で舐め始める。
上目遣いでこちらの表情をうかがってくる。
カリに舌先が当たる。
「……っ!」
亀頭と竿の間の段差をなぞる様に舌先を這わせてくる。
「あっ……。それ……」
感じていることが分かったのだろう。
上下左右、強弱、緩急、様々な舌の動きでカリを刺激される。
「んっ、んぅっ、はっ……」
場所が分かって余裕が出たのか、竿のしごきも再開される。
ごぽごぽと溢れるガマン汁。
「ちゅっ……。鈴木くんの、おしる……。ちゅぅうっ」
吸われる、という新しい刺激に息が乱れる。
止まらない先走りの暴走。
和泉さんに吸われてもなおだだ余り、竿をつたっていく。
「あっ……。こぼれちゃう……っ」
本人は無意識だったのだろう。
滴り落ちる汁を舐めとろうと、根元から先端へ、裏筋を舐めあげられた。
「は……っ!」
反応が変わったことを察知する和泉さん。
竿をしごく、先端を吸う、カリを刺激する、裏筋を舐めあげる。
奉仕初日にしては充分すぎるテクニックを身に着けてしまった。
このまま続けられたら果てそうだ。
だがどうしても、自分の中で果たしたい願望があった。
「んっ、ちゅっ、れろ……。はっ、はぁっ、んぅ」
奉仕している最中も、ぷるんと揺れ動く乳房。
「はあ、はっ、和泉、さん」
「はい……?」
「してほしいことがあるんだ」
「胸でモノを挟んでほしい」
そうお願いした時、意味が分からないというように、きょとんとしていた和泉さんだったが、
「鈴木くんが、それがいいなら……」
たわわな豊乳を寄せ上げて、男根に近づける。
「えっと、は、挟みますね」
ぎゅうっ、と包まれた時、穏やかな快楽が駆け上がってきた。
母性の象徴である乳房に挟まれて、安心感のある刺激が走る。
「い、痛いですか?」
何も言わなかったからだろう。
心配そうに上目遣いでこちらを見てくる。
「大丈夫、気持ちよくて、言葉でなくて」
申し訳程度に先端が顔を覗かせている。あとは完全に包み込まれてしまう。
「えっと、ど、どうすれば……?」
「動かしてもらえるかな」
遠慮がちに胸が上下に動き出す。
乳房の滑らかさと柔らかさを刻みこむように、たぷたぷと擦りあげられる。
モノで分け入る度に、柔らかな胸はそれに合わせてかたちを変える。
「ど、どう、ですか……?」
「うん、すごく、気持ちいい……」
先端からは遠慮なしに我慢汁が放出される。
先走りを潤滑油に、滑らかな乳房の滑りはさらによくなっていく。
強弱や緩急をつけて乳房が揺れる様は、淫猥という言葉がよく似合う。
「んぅっ……。おしる、たくさんっ……。あつくなって……」
ぷるんぷるんと乳房の揺れる音と、ぐちゅぐちゅと先走りの擦れる音が重なり合う。
正直、パイズリは視覚的心地よさしか得られないと思っていた。
和泉さんの胸の豊満さをなめていたとしか言えない。
先端を谷間にこすり付けようと、無意識の腰の律動が止まらない。
「あっ、そんなに、動いちゃ、挟めないっ……」
角度を変えて挿入しても、乳房はきちんと根元まで包んでくれる。
とうとう、胸の頂から谷間に向かって突っ込むかたちになった。
和泉さんは大きな胸を何とか固定してくれている。
激しく腰を前後させる。
モノが硬くなるのに比例して、対照的な乳房の柔らかさをモロに感じるようになる。
先走りが乳房を覆う。
「あんっ、そんなっ、おっきくて、かたいの、おっぱいに入れたら……! ひゃんっ、あぁっ」
胸を支えているのがだいぶ苦しそうだ。
これだけの大きさがあれば無理もない。
男性の手に収まらないのだから、女性がそれを固定するのは厳しいものがある。
最初の上下パイズリの体勢に戻る。
「こ、これで、また、わたしが……」
ここでまた予想外の刺激が加わる。
左右の胸でしごかれながら、先端を舐められた。
「はっ……!」
思わず目を見開く。
動かしながら舐める、そんなことまでできるボリュームだったとは。
先ほど身に着けたばかりのテクニックで亀頭を刺激してくる。
「ちゅっ、んっ、れろっ、んぅ……」
吸われ舐められる亀頭、谷間で擦られる裏筋、指で刺激されるカリ、柔らかな乳房に包まれる竿。
童貞の自分に我慢できる刺激ではない。
白濁が一気に駆け上がってくる。
「ごめんっ……。もう……!」
天に向かって、勢いよく精が発射される。
「んうぅぅ……!」
和泉さんの顔や口、鎖骨、胸にも大量にかかってしまう。
精でぐちゃぐちゃな谷間の中で、モノはビクビクと痙攣している。
「わ、私、ちゃんと、できてましたか……? 鈴木くん、気持ちよかったですか……?」
「うん……。すごい、気持ちよかった」
「よかった……」
胸を撫で下ろして微笑む和泉さん。
ここでふたつの衝動が頭をよぎった。
ひとつめは単純明快。
一途に尽くしてくれる和泉さんを押し倒して、男根をぶちこんで、自分のものにしたいという欲求だ。
もうひとつは――。
(……このまま、和泉さんを抱いていいのか?)
成人しているとはいえ、まだ身分は学生だ。万が一の時、とても責任などとれない。
いいじゃねえか。
こんないい子と繋がれるんだぞ。
それに、誘ってきたのは向こうだっただろ。挿れてしまえ。最後までやってしまえ。
駄目だ。
彼女のことが大切なんだろ。
それなら、将来のことまで考えないと。
男失格だぞ。目先の快楽に囚われるなんて。
「鈴木くん……?」
はっと我に返る。
不安げな表情の和泉さんがいた。
「大丈夫、ですか? すごい汗……」
頬に手を当てて、滴り落ちる汗をぬぐってくれる。
そんな和泉さんを見て、衝動的に彼女を抱きしめた。
「え、す、鈴木くん……?」
和泉さんはおどおどしている。
「……ごめん」
一呼吸おいて、続ける。
「最後までは、できない」
俺はヘタレなのだ。
「……やっぱり、私に、魅力がないから――」
「違う。身体は最後までやりたいって言ってるよ。和泉さんとひとつになりたいって」
ここで「責任は俺がとる!」とか言えれば格好いいのかもしれない。
「でも、和泉さんのことが、本当に大切だから、和泉さんの負担になるかもしれないことは、したくないんだ」
その美貌とテクニックで女性を虜にするイケメンなら、自信を持って和泉さんを抱けたのかもしれない。
「ごめん、情けなくて」
俺、鈴木大和は、ヘタレで、童貞で、情けない男なのだ。
和泉さんはしばらく黙っていた。
泣かれるのではないか? 怒られるのではないか?
そう覚悟していた。
だが、和泉さんから零れたのは涙でもない。怒鳴り声でもない。
「……やっぱり、鈴木くんですね」
微笑みだった。
「鈴木くんは、高◯生のときから真面目で、責任感があって、困っている人を助けにいけて」
背中に手をまわして抱きしめ返してくれる。
「私も入学したばかりの時、椅子から落ちたところを、保健室まで運んでもらって。お姫様抱っこだ、ってからかわれたのに。覚えてないですか?」
「……ごめん。覚えてない」
「ふふっ。そうですよね。他にもたくさんの子を気にかけていたから、私だけ特別なんてことありませんよね。それは分かっていました」
だから。そう言って和泉さんは続ける。
「卒業式の時、思い切って告白して、お付き合いできるようになった時、嬉しくて。誠実で、皆に平等な鈴木くんが、私を特別に思ってくれるって」
「和泉さん……」
「でも、本当は私への優しい嘘で、特別な感情なんてないのかなって。それで一人で焦って、こんなお願いをしてしまって」
和泉さんは微苦笑をする。
「情けなくなんてないです。私のこと、大切にしてくれているだけなんですから」
そう言ってくれるこの人を、一生大事にしようと思った。
「……菖蒲さん」
彼女の瞳に向き合う。
「すず――大和くん」
唇が触れるだけの、けれど熱いキスを交わした。
この日をきっかけに、マイルール……二人の間のルールは「身体の関係は本番まではいかない」に変更となった。
その結果、結婚初夜にようやく繋がるまでは、パイズリによる性欲処理となっていたため、気がつけばパイズリ依存症である。
マンネリにならぬよう、あらゆるパイズリを行ってきたので無理もないと思っていただきたい。
高校時代、色恋沙汰の「い」の字もなかった自分がこんな依存症になるとは思っていなかった。
散々友人たちを「変態」だの「欲の塊」だの言ってきたが、人のことを言える状態ではなくなった。
ただの性欲なら自慰で処理できるが、パイズリの依存症なので、自慰では胸の柔らかさを得ることができない。
結局菖蒲さんに頭を下げて、行為の流れにパイズリを組み込んでもらっている。
結婚生活もまもなく1年を迎えるが、そろそろ怒られそうなので、初心にかえるべく、この日の出来事を認めておく。