H先輩らの私へのからかいはなくなったわけではないが、徐々に相手の興味も減退したのだろう、普通に生活できるようにはなっていた。
夏も終わりに近づき、憧れのO先輩が部活を引退する時期になり、すごく寂しいの想いが日々色濃くなっていった・・・。
私は小○生からスイミングに通い、1年から大会に出場していた。
少しでも速くなりたい。
その一心で、練習には精を出した。
水泳部はどこもそうだろうが、泳ぎが速い者がセンターコースで泳ぐ。
O先輩は5コース。
2番目に速いコースで泳いでいる。
私も速く5コースに行きたいと必死だった。
しかし、その執念もむなしく、私が5コースとなったのはO先輩が引退する日のタイムトライアルでだった。
「CD@裏垢くん、やったじゃん!」
嬉しい反面、悔しさで泣きたかった・・・。
そして、その5コースにはH先輩もいるのだ・・・。
「巨チン野郎と同じコースで泳げるか!笑」
などと、H先輩がガタガタ言ってる横で、喜んでくれていたO先輩の可愛らしさに、想いを更に募らせていたことを昨日のように覚えている。
O先輩の容姿は、グッディの寺川奈津美ちゃんのような感じ。
実は見るたびに今もO先輩を思い出している・・・。
その日の夕方・・・。
O先輩はいろんな後輩に激励の言葉をかけていた。
面倒見もよく、後輩から手紙をたくさんもらっていた。
そりゃそうだよな・・・と何かぶつけようのない寂しさを感じながらトボトボと帰宅しかけた時、O先輩の甲高い声が響いた。
「CD@裏垢くん、ちょっと待って!」
私は足を止めると、
「5コース、来週から大丈夫?」
と心配そうな顔で聞かれた。
「わかりません・・・」
困らせてやろうとして言ったら、ちょっと待っててと男子の部室に向かって歩き出した。
「Hくん!いるならちょっと出てきて!」
おいおいと言う間もなく、H先輩が
「なんだ?ハミーか」
と面倒くさそうに部室から出てきて、O先輩をジロジロとにやけづらで見ている。
「あのさ、くだらないことで人をからかってないで、もっと真面目に部活しなよ!センスあんだから」
「うっせえな、お前もちゃんと手入れしとけよ!笑」
「また言ったなー!笑」
そんなやりとりが何か羨ましくも、腹立たしくもあった・・・。
「CD@裏垢くん、来週から5コースだから、負けないようにしないと知らないよ!笑」
「巨チンに負けるか!笑」
バーン!
「いってぇ!!」
O先輩が思いっきり、H先輩の背中を叩いた。
「じゃあね!笑」
あまりの痛みにH先輩が顔をゆがめながら、
「ボウボウ女!ふ、ふざけん・・・な・・・」
と声にならない声でもがいていた。
何か私の気持ちもスッキリした。
そんな光景だった。
「CD@裏垢くん、絶対Hくんに負けないでね」
その真剣な顔は、今でも忘れることができない・・・。
いろんな意味でO先輩は、私に託したんだと察した。
絶対に負けないと心に誓った。
校門を出ると、O先輩とは家路が真逆だ。
O先輩に
「じゃ、ここで」
と言うと、私はすぐに背を向けて家路を急いだ。
「CD@裏垢くん、またね!」
O先輩の明るく元気な声が背中越しに聞こえたが、私はこんな楽しい日々を明日からはO先輩とは送れないんだという切なさを想い、頬を伝う涙のせいで振り向くことはできなかった・・・。