後悔先の行方……。下巻

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愛子との時間は、僕にとって大切な宝物になったはず。自信に繋がったはずだと思っていた。でも、それをあんな簡単に壊されてしまうなんて……僕は思い違いをしてたのかな。

翌日も、その翌日も。僕は抜け殻のようだった。

肇の言葉は、僕が必死になって強固に作った自信(かんちがい)を、あっさりとすり抜けてきた。そして直接脳に話しかけてるような、まるで洗脳されてしまった感覚だった。

あれ以来、好奇心から想像してしまう。猜疑心から妄想してしまう。

でも、本当にそうなのか?愛子はそんな簡単に見せてしまうのか?

僕はその疑問だけでも解決したくて、学校が終わると愛子の家に向かった。

しかしインターホンを鳴らしても、中で繰り返し響き渡るだけだった。

会いたい。話しを聞きたい。あの日の真実を知りたい。

僕はうつむきながら、とぼとぼと隣にある家に帰った。

部屋に入ると、無気力からか何もやる気にならなかった。

今日は肇が来ないから、不思議と気分は穏やかだった。

(ちょうど一人になりたかったし)

すると、玄関のドアが開く音が聞こえたと思ったら、バタバタと上がって来た。

京子「ただいま達也」

達也「おかえり」

ベッドに横になってる僕は、背を向けながら言った。

母さんはそんな姿に何を思ったのか、肩に手を置いた。

京子「大丈夫?まだ体調悪いの?」

達也「あぁごめん。大丈夫だよ。勉強のやり過ぎかもね」

京子「そう。ねぇ私考えたんだけど、少し仕事休むわ。達也のことが心配だから」

僕は振り向き、母さんの不安そうな表情を見た。

そして勢いよく起き上がった。

達也「ごめんて。心配ないよ。それにもうすぐ大学生だよ?そんな子供じゃないよ」

京子「でも、最近なんか元気ないし。それに、寝坊も早退も、今までなかったでしょ?心配になるよ」

達也「疲れが出てるんだよ。勉強なんてらしくないことしてるから」

僕は笑ってみせた。

達也「それに、来月は父さんが帰って来るでしょ?そしたらさ、三人でどっか行こうよ。ねっ」

京子「……そうね。そう言えばすっかり父さんのこと忘れてた。てかさ、うちに父さんなんていたっけ?」

母さんは惚けながら、ニヤニヤと言った。

達也「あれ?いなかったっけ?おかしいなぁ」

そう言うと笑い合った。

京子「じゃあ温泉でも行こうよ。勉強疲れには、やっぱり温泉よ」

達也「いいね。実は僕も同じこと考えてたんだ。楽しみにしてる」

京子「うん。でも無理しないでね。疲れたらゆっくり休む。休むことも人生には大事なことだからね」

達也「わかった。ありがとう母さん」

―――

今年の梅雨は長く感じる。

そして今日も肇は、鞄の中にたくさんの本を入れてやって来る。

最近は、勉強を教わってるのか、欲求の捌け口にされていのかわからなくなっていた。

テーブルに広げると、肇はいつもと同じように、じゃあ始めようか、と言った。

「今日は、京子さん遅いのかい?」

唐突な質問だった。

達也「いつも通りだと思いますよ」

「そうか」

達也「なんでですか?」

顎に手を当てて、何か考えてるようだった。

達也「肇さん?」

「あぁごめんね。前々から思ってたんだけど、京子さんにお礼がしたくてさ」

達也「はい?」

「この家に来てから、いつも気を使ってもらってるし、お世話になってるからさ」

達也「そうですか」

「お酒は飲めるのかい?」

達也「多少なら」

「そうか。じゃあお誘いしようかな」

そのときの僕には、愛子しか見えていなかった。

その日の夜。

母さんがパートから帰って来ると、時間が遅かったこともあり三人で晩御飯を食べることになった。

母さんは、肇に好印象を抱いてる。

肇は常日頃から、母さんに対する言葉や態度に敬意を持っていた。それに加え、外見や内面、家のことの隅々まで褒める。

そんな肇の言葉は、母さんとの壁を薄く、低く、そして柔和にしていった。

「京子さん、もしよかったら、この後一杯注がせてもらえないですか?」

肇は、お酒を飲む仕草をした。

京子「そうねえ。じゃあ一杯だけね」

「ありがとうございます!」

椅子から立ち上がると、憎たらしく頭を下げた。

「それでは、ちょっと待っててください。近くのスーパーで少しだけ買って来ますから」

京子「え?じゃあ……」

母さんが立ち上がろうとすると、肇は手を出して止めて。

「いえいえ。いつもお世話になってるので、今回だけは、僕に頼ってください。それに少しだけですから」

すると、母さんは渋々頷いた。

京子「わかったわ。今回だけ、お言葉に甘えるわ」

その言葉を聞くと、肇はそそくさと家を出て行った。

しばらくすると、肇は袋を持って戻って来た。

そして、リビングのソファーで二人が飲み始めると、僕は母さんを残して部屋に戻った。

マンガを読んだり携帯でゲームをしていると、いつの間にか時計の針は夜の10時を回っていた。

そろそろお風呂にでも入ろうと思ったときだった。

階段を上がって来る音が聞こえると、その人はノックをした。

「達也君、ちょっといいかな」

達也「なんですか?」

「僕はそろそろ帰るんだけど、京子さんが疲れてたみたいでさ。飲んでる最中に寝ちゃったんだ。だから頼めるかい?」

達也「まったく」

僕は呆れ気味に返事をすると、リビングに行き母さんを抱えて寝室に連れて行った。

「ごめんね。ちょっと飲ませ過ぎちゃって」

達也「いいですよ。それに母さんはそんなに強い方じゃありませんから」

「じゃあ僕は帰るね。あっそうそう。明日さ、愛子ちゃんと勉強することになってるから」

達也「……はい」

何が言いたいのかわからなかった。

しかしその瞬間、神様の悪戯だろうか。不意に母さんが寝返りをうつと、膝上丈のベージュのスカートが捲れ上がり、白いパンティとお尻が丸見えになった。

僕はすぐにスカートを直したが、時既に遅し。肇の顔は、いやらしく恍惚な表情を浮かべていた。

―――

朝からすでに憂鬱な目覚めだった。

むしろ、悔しさまで込み上げていた。

今日は愛子と肇が二人になる日だ。だからと言って何かできるわけじゃないけど。

それに愛子だって僕に合わせていたら、一向に勉強が進まない。むしろ目標の為に、少しでもペースを上げて頑張りたいはずだ。悔しいけど、だからこそ提案を受け入れた。

ただ残念ながら、肇の正体を知ってるのは僕だけだ。しかし思い返してみると、僕が見てる肇は、本当の肇なのだろうか?

あの人の行いは確かに目に余る。だけど、愛子の助けになっていることは紛れもなく事実だ。

スカートを覗いたのは偶然かもしれない。触れた目的はマッサージだし、ちゃんと始める前に断りを入れてる。

僕は疑心暗鬼になり、及び腰になっていた。

(いったいあの人は、何が目的なんだ?)

そのときだった。頭の中で一つの光が走った。

僕はうつむいていた顔を上げ、胸を張った。

(そうだ。何かあったら飛んで行くって約束したんだ)

僕がいるのはそのためじゃないか。どんなことがあっても、絶対……。

(大丈夫。なんとかなる)

学校が終わると真っ直ぐ家に帰り、自分の部屋に入った。

肇からメッセージが入り、家に着いたら返信が欲しいという内容だった。

僕は意味がわからなかったが、とりあえず返事をして、そわそわと落ち着かなかった。

すると、今度は電話がかかってきた。

僕は、嫌な予感を巡らせながらも、恐る恐る耳に当てた。

達也「もしもし?」

無言だった。

一度画面を確認するが、通話中になっている。

僕はもう一度口にしようとした。

達也「もしも……」

「そうだね。でも安心して、僕がいるし」

達也「え?肇さん?」

「愛子ちゃんならできるよ。自分を信じて」

達也「……」

状況が飲み込めなかった。

肇はしばらくの間一人で話していた。もちろん、相手は愛子なのだろうけど、僕に電話をしてきた意図がわからなかった。

「じゃあ、そろそろマッサージに入ろうか」

達也「えっ?」

かすかにだけど、愛子のはいと言う返事も聞こえた気がした。

「うつ伏せからね」

僕は何も言わずに聞き入った。いや、携帯を耳から離すことができない。あのときみたいに、体が硬直してしまった。

「また凝ってるね。愛子ちゃんは少し頑張り過ぎかもしれないね。もちろん偉いことだけど、たまには力を抜かないと」

「..も..か..」

「そうか。じゃあ僕も本気で愛子ちゃんと向き合うように頑張るからね」

「…とう…」

愛子の声は、遠くて上手く聞き取れなかった。

「よし!肩はオッケー!次は腰ね」

頭の中には、肇の視界が鮮明に浮かび上がってくる。

どういった体制なのか、どこに触れているのか、手に取るように想像できた。

そして、そのときは突然だった。

「愛子ちゃん、今日はスカートだから緩められないね」

「..す…ん.」

「愛子ちゃん。僕は無礼を承知であえて言うけど、下心はまったくないんだ。でも本気で君の力になりたいし、体を楽にさせてあげたい。だから聞いてくれるかい?」

「….で..か?」

「スカートを脱いでもらいたいんだ」

衝撃の言葉だった。僕は携帯を握る手に力が入った。

達也「ダメだ、断れ!」

僕はおかしくなっていたのか、届くはずのない言葉を必死に繰り返していた。

「当然恥ずかしいのもわかってる。でも考えてほしいんだ。僕はそんな最低な男じゃない。それは愛子ちゃんがよくわかってるはずだよ。だから僕を信じてほしい」

「…..ま.た」

「うん。ありがとう。さっそく脱がすね」

頭の血管一本一本に急激に血が上っていくのを感じる。頭が破裂してしまいそうなほどの怒りに包まれた。

爪が肉に食い込み、血が滲む。携帯を握る手も、反対の手も、自分の手じゃないみたいだった。

「愛子ちゃん。じゃああらためてマッサージするね」

(愛子。どうして)

「本当に愛子ちゃんの肌は綺麗だね。それに、お尻の肉付きもいいし、触り心地が最高だよ。このパンティとお尻は見ているだけで興奮するよ」

達也「止めろ!」

気づくと階段を駆け下りていた。

そして愛子の家に向かい、インターホンを連続して押すと、勢いよくドアが開いた。

達也「愛子!」

愛子「なんだたっちゃんだったの。びっくりしたよ!」

達也「愛子!大丈夫か!?あいつは!?」

僕は愛子の肩を掴むと、前後に強く揺すった。

愛子「痛いっ!やめて!」

達也「いるんだろ!」

愛子「やめてよ!」

達也「あっ」

血の気が一気にひいていった。

後悔と自責の念に駆られ、愛子から離れると、その怯えた瞳は僕を見た。

愛子「怖いよ。ちゃんと説明して。どうしたの?」

掠れていて泣き出しそうな声だった。

その悲しげな表情が痛いほど胸に突き刺さる。なんてことをしたんだと、自分を殴ってやりたくなった。

そして頬に伝うものを感じると、膝を抱えるようにうずくまってしまった。

達也「……愛子……ごめん」

そんな僕に、愛子はゆっくりしゃがむと、背中を優しく擦ってくれた。

愛子「大丈夫だよたっちゃん。何か勘違いしたのかな?たっちゃんは優しいから、それで飛んで来ちゃったんだね」

その手はとても温かくて、まるで母さんのようだった。

達也「……今二人なの?」

愛子「ううん。一人で留守番だよ」

達也「え?」

愛子「それでか。誰かと一緒だと思ったんでしょ?残念ながら、一人寂しく留守番です」

ホッとした。

達也「上がっていいかな?」

愛子「え?」

何故か一瞬、動揺を見せた。

達也「愛子?」

愛子「あっ、ううんごめん。今日はね、目一杯勉強したいんだ。なんか、調子いいみたいだから」

視線を合わせることなく答えた。

達也「そっか。僕こそごめん……本当にごめん」

愛子「気にしないで。ありがとうたっちゃん」

ドアが閉まると、どこか晴れない気持ちを残しながらも、僕は家に帰った。

その日の夜。

僕は部屋で、夢中でマンガを読んでいた。

昔から、気分が落ち込んだり、不安になったり、良くないことがあるとマンガの世界に入り浸ることにしていた。

現実逃避と言えばその通りだけど、色んなことが忘れられる。

見たくないものも、考えたくないことも、背けたいことにも、僕にとっては全てから逃げることができる世界たっだ。

しかし今回だけはそうもいかなかったようだ。

肇からのメッセージが届くと、僕はその世界からあっけなく連れ戻されることとなった。

―――

「おはよう達也君」

翌日の授業でのことだった。肇は来てそうそう、白々しく笑った。

達也「なんのつもりですか?」

「なんのことだい?」

達也「惚けないでください!昨日の写真ですよ!」

部屋で問いただすと、肇はやれやれと言った面持ちだった。

達也「どういうつもりなのか聞いてるんです」

「見たかったんだろ?じゃあよかったじゃないか」

その写真は、うつ伏せで寝かされた愛子のお尻全体を、上から写したものだった。しかも、スカートは穿いていない状態、白いパンティが写っていた。

達也「だからって、こんなやり方最低だと思わないんですか?」

肇は、そんな僕の言葉を軽々しくあざけ笑った。

「達也君。よく考えるんだよ。もちろん僕がやったことは決して許されるわけじゃない。でも、考えるんだ!やがて、愛子ちゃんにも恋人ができる。その相手が君じゃなかったら?」

まただ。肇の世界が嫌悪感を煽るように広がっていく。

「そう。相手が他人なら、愛子ちゃんはもう君の元から去るということ。それは心が離れるということさ。でもね、体だったら今目の前にあるんだ。それこそ手の届くところに」

(ダメだ)

「心は遠くても、体は目の前だ。愛子ちゃんが大切な存在なら、見ていいんだよ。今しかない一瞬を逃したら、もう取り戻せないんだよ!」

(ダメだ!!)

大きく首を振ると、声を強めた。

達也「ダメだ。そんなことはダメだ。たとえ見たくても、触れたくてもだ。僕は正々堂々と伝えたいんだ。愛子が大切だから!」

「……そうか。君も立派だね」

一つため息を吐くと、肇はゆっくり腰を下ろした。

「達也君。座って」

顔を逸らせながら、嫌々と座った。

「達也君。腹を割って話さないか?お互い同じ男だ。君と同じように、僕だって思春期を越えて来た。それに人間には性欲があるんだよ?だったら、別に恥ずかしいことじゃないだろ?」

達也「僕が言いたいのはやり方の問題です。別にスカートを覗いたり、触れたくなるのは僕だってあります。でもやり方が最低だって言ってるんです」

「いや、正直に言ってくれよ達也君。君だって愛子ちゃんを求めてるんだろ?見たいはずだよ?ほら、力を抜いて」

肇は僕の後ろに回ると、いつものようにマッサージを始めた。

肩と首、頭部を入念にほぐしていった。

「自分でも感じるね?こんなに力が入ってる。塞ぎ込んではダメだ。君の本音を聞かせて。自分を解放するんだ」

わかっていても、直接脳に語りかけるような声が、僕を支配する。

やがて、全身の力が抜けて空にも飛んで行けそうな気分になると、口からこぼれてしまった。

達也「……見たいです」

「何がだい?」

達也「愛子の……体が……見たいです」

うつむく僕を嘲笑うかのように、肇は言った。

「達也君!君は偉い!本当に利口だよ。じゃあこれを見て」

携帯を取り出すと、後ろから抱きしめるようにして、僕に送って来た写真と同じ物を見せた。

「よく聞いて想像するんだよ?このお尻の二つの膨らみに両の掌を置くだろ?そして、大きく円を描くように擦るんだ。ただ注意しなきゃいけないのは、パンティには触れないようにして、割れ目に食い込ませるように意識することだ。するとどうなる?パンティが食い込んでいってさ。みるみるお尻が露になっていくんだよ。たまらないだろ?」

達也「……」

僕は興奮していて、股関が異常なくらい大きくなり、ズボンを押し上げていることに気づいた。

「ほら、もっと想像して!愛子ちゃんのお尻が君の目の前に晒されるんだよ。それでさ、本当に愛子ちゃんは可愛いんだよ。自分でもどういう状況になってるのか、パンティが食い込んでお尻が丸見えになってるのがわかったんだろうね。全身が真っ赤になってさ、よほど恥ずかしかったんだね。可愛いと思わないかい?」

下腹の奥が苦しい。得体の知れない何かに、鷲掴みにされてる感じだった。

苦しい。でもなんでこんなに興奮するんだ。

「そのあとは当然、このふっくらした桃のようなお尻を、入念に味わうように揉みまくったよ」

肇の荒々しい息が、不快に肌をつたう。

すると、肇は思い立ったようにすっと立ち上がった。

「あぁダメダメ。我慢できないよ」

僕が振り向くと、肇は勢いよく部屋を出て行った。

そして、玄関のドアが開いて閉じる音が聞こえると、家は静寂に包まれた。

一人携帯を取り出すと、写真を眺めた。何も考えず、ただ無心で愛子のパンティに見入った。

いったいどれくらいの時間が過ぎたのかわからない。

肇から電話がかかってきた。

僕は携帯を耳に当てると、また無言の相手だった。

「あ……」

達也「え?」

「あん….あっ..」

達也「もしもし?」

「ん……はっ……あん」

達也「まさか!?」

その後の記憶は、遠い梅雨空へと消えて行った。

―――

―――

―――

(あれ?僕はいったい?なんでここに?どうして?)

雨が止み、曇り空の隙間から太陽の光が玄関にそそがれたとき、僕は絶句した。

目の前には、目から大粒の涙を流す愛子と、唇から血を流し、頬を抑えて座り込んでる肇がいた。

達也「え?これは?どうして?」

愛子「何……言ってるの?たっちゃんが……やったんでしょ?」

達也「僕が!?」

愛子「そうだよ。たっちゃんが……たっちゃんが殴ったんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、記憶が眩しく点滅するように、連続して蘇ってきた。

そうだ。あのあと家を飛び出して、愛子の家に向かった。

玄関を開けると肇の名前を叫んだんだ。すると愛子が血相変えて下りて来て、僕を咎めた。

そして愛子を壁に力いっぱい押し付けると、肇が現れた。

僕はその顔を見るやいなや、視界の端から拳が飛んでいくのが見えて、気づいたときには殴ってしまっていた。

もうそのときの僕は、怒りに支配され半ばパニックに陥っていた。自分の怒りに我を忘れて、構わず怒鳴り散らした。目の前の幼なじみの瞳に涙が溢れていることすら気づかないほど、ましてや、記憶が飛んでしまうほどに自分を見失い愚かなことをしてしまった。

そして、そんな僕の目を覚ましてくれたのは、愛子の手。僕より一回りも小さな手だった。

その音は、大きく家にこだましたのだ。

達也「愛子」

罪悪感に打ちひしがれながら、その潤んだ瞳を見つめた。

愛子「……出ていって」

しかし、その返事は思っていたものとは程遠いものだった。

消え入りそうな声で、悲しみを帯びていた。

達也「え?待って……待ってよ……」

愛子「たっちゃん。お願い。出ていって」

その声は聞くに堪えなかった。まるで心をえぐられるような苦しさと痛みが伝わってきた。

僕は、何も言い返せなかった。それは、自分がしたことの重大さを、その声に痛感したから。

もうその場を去ることしか選択肢はなかった。謝ることさえ許されない人間に堕ちていた。

振り替えることもなくゆっくり家を出ると、外は、久しぶりに清々しいほど晴れていた。その日差しは強く、僕の心の空しさをよりいっそう照らすように。

部屋に戻ると、見計らったように携帯に着信が入る。もちろん肇からだ。通話状態にすると、無音とかした部屋の中で、じっと耳を澄ませた。

「愛子ちゃん。もう泣かないで。達也君は何か思うことがあったんだよ。じゃなきゃ、あんな優しい好青年がこんなことするはずがないよ」

愛子「で..たっ..嫌..」

「そうだよね。嫌だよね。でも安心して、僕がいるから。さぁ抱きしめてあげる」

愛子「……」

「そう、それでいいよ。僕が楽にしてあげるから、身を委ねて」

愛子「.わ…た..」

「大丈夫。じゃあ落ち着くようにマッサージしてあげようかな。そのまま座っててね。後ろから揉んであげる」

愛子「……」

「そうそう、深呼吸をして。1回、2回、3回。ほら、力が抜けて来た」

愛子「……」

「このブラウスシャツのボタンを外すよ?この際だから、心を開ちゃおうね。このボタンのように一つずつ外して行くから、愛子ちゃんも一つずつ心を開くんだ」

愛子「で……」

「僕を信じて」

愛子「……」

「……うん、よく頑張ったね。それじゃあ脱いでしまおうか。……綺麗な背中だね。まるで愛子ちゃんの心を見ているようだよ。綺麗な心を持っていると外見に出るからね」

愛子「う…い…」

「さあ、そのスカートもだ。この前みたいに下着姿になって。今日はとことん、愛子ちゃんのそばにいるからね」

愛子「あり……す」

「まずはこのまま、座ったままでやろうかな。女の子座りで、少し足を広げて。そう」

あのときもそうだったように、肇はわざと状況を教えてくれる。

「愛子ちゃんはいい匂いがするよ。肌もきめ細かくて、それに……色気があるね」

(そんなこと、いちいち言う必要なんてない)

「愛子ちゃん。このブラを外そうか。恥ずかしいかもしれないけど、僕のことは信頼してるよね?だから大丈夫。君のためだから」

内に興奮を感じながらも、体は動かなかった。ただ一つの部分を除いて。

「……あぁ、いいね。美乳だ。愛子ちゃんにふさわしいよ。乳首も小さくて、可愛いピンク色だね」

股関だけは、心と無関係に大きくなっていた。

「はあぁああ。まるで吸い付いてくるような感触。素晴らしいおっぱいだよ。この重み、弾力、でも柔らかくて温かい。ん?恥ずかしいのかい?わかってるよ。でも、それでいいんだ。それは君が純粋な証拠なんだから」

(もういいよ)

「やっぱりここも凝ってるね。いっぱい揉んで、いっぱいほぐしてあげるね」

(もういいって。早く……やれよ)

「それじゃあ次に移行するね。そのままでいいからジッとしてるんだよ。今から、この指がこのまま下がって行って、お腹を這って、下腹へ、そしてその可愛い白いパンティの中に入る。そして、愛子ちゃんの黒い毛を掻き分けて、重要なところにたどり着くんだ」

(……)

「愛子ちゃん。ここは一番大事なところなんだ。君にも僕にも。信じてほしい。いいね?」

「さぁ、進んで行くよ。今お腹を通り、へそを避けて、下腹に着いたね。ゆっくり、今パンティの中に入った。指先に陰毛の感触を感じる。そして、やっとたどり着いた。愛子ちゃんのおマンコに。これからほぐしていくから、どんどん気持ちよくなるよ」

(とうとう……入ったんだ)

「愛子ちゃんどう?まだ早いか?もう少し念入りに、根気よく続けるからね。ほら、音が聞こえてきた。じゃあ、ベッドに仰向けになろうか。座ってると疲れちゃうしね」

ここからも、肇の執拗な言葉は続いた。

愛子は寝かせられ、乳房や乳首、秘部。繰り返しマッサージと言う名の愛撫を受けていた。

長い時間だったと思う。この間も、肇の口は閉じることもなく、延々と喋り続けた。

今、愛子はどんな気分なのだろう。気持ちよくて、体をよがらせているのか、甘い吐息を出しているのか、それとも肇の体に自分の腕や足を巻き付けているのかもしれない。

それから二時間ほど経った頃。

通話が切れた。僕は、そこで二人の愛撫(マッサージ)が終わったことを知る。

数分後。肇は僕の部屋に入って来た。

「はぁ、疲れた。初めての体だからね、入念にほぐして愛撫してあげたよ。達也君、気分はどうだい?」

艶々しい顔で、腰に手を当てながら言った。

達也「なんの用ですか?」

僕はその姿を見ると、うつむき床に視線を落とした。

「顔を上げて」

その瞬間、僕の鼻に指を押し付けてきた。

「さあ、匂いを嗅いで。それが、今さっきまで愛子ちゃんのおマンコに入ってた指だ」

僕は一吸いして、胸を大きく膨らませた。

「どうだい?幼なじみの好きな女の子の匂いは?」

達也「……わからない」

肇は、かぁぁっと奇声を上げたあと。

「はぁ。まぁいい。今日の僕は機嫌がいいからね。さっきのはチャラにしてあげるよ」

何も答えなかった。

「そういえば。愛子ちゃんは処女膜がなかったよ。スポーツとかやってるのかな?」

達也「知りません」

「そうか。じゃあ……。なるほどね。達也君。気が変わった。さっきのパンチの分は償ってもらうよ」

達也「え?な、何でですか?」

「当たり前だろ?そんなことじゃ世間には通用しないよ。後悔したって遅いんだよ」

全身に力が入る。僕は自分を責めて責めて責めた。本当になんてことをしてしまったんだと、もう一度悔やんだ。愚かで軽率で、しかも怒りで回りが見えなくなって、そしてついには殴ってしまった。

一瞬だけの間違いだった。積み上げて来たこれまでが、ものの数分で……これまでの愛子との思い出が、脆くも儚く崩れていった。

達也「……ごめんなさい」

「そう。まずは謝らなくちゃね」

達也「許してもらえますか?」

「うん。僕だって鬼じゃないからね。許してあげる」

達也「……ありがとうございます」

「ただ、一つだけやってもらうよ?」

達也「なんですか?」

いつかの。あのときの、忘れもしない顔だった。

「明日も来ることになっていたよね。明日僕は、愛子とセックスする」

もう止めてくれ。そんな感情でいっぱいだった。

心も体も、頭の中も、支離滅裂で滅茶苦茶で、混沌としていて、どうにかなってしまいそうだった。

「君には、廊下からその一部始終を見ててもらう。いいね?僕が愛子と繋がる瞬間の立会人になるんだ」

達也「……わかりました」

「理解が早くて結構。そう、君には拒否権がない。はいかイエスしかないんだ。あぁ、楽しみだなぁ!愛子と繋がれる。本当に今日我慢してよかったよ。愛子は初めてだからね。今日は愛撫に徹した。ちゃんと順を追わないと置き去りにしてしまうし、僕は紳士だからね。愛子の体は大切にするよ」

―――

朝は起きられなかった。

正確には、目は開いていたけど、体が起き上がらなかったのだ。

普段の目覚める時間にはまだ早かったが、そのときにはすでに、学校を休むことを決めていた。

行けるわけもないし、動きたくなかった。体に鉛が巻き付けられているくらい重く感じた。

今日、肇は愛子と……

あれから、いったい何回目だろうか。こうやって悔やむのは。

戻れないだろうか?あの笑い合ってた頃に。

無しにはできないだろうか?あの瞬間を。

いっそのこと、消してくれないだろうか?僕を。

京子「達也ー」

階下から、いつもの温かくて優しい声が聞こえて来た。

達也「うん」

布団にくるまっている僕の声は小さくて、覇気がない。聞こえるはずがない。

……そう、聞こえなかったんだ。僕の思いは。

肝っ玉と同じくらい小さかった。

愛子に届けるには、もっとお腹の底から、精一杯伝えなきゃいけなかったんだ。

京子「達也!」

ノックはなかった。

達也「なに?」

京子「達也。今日……」

母さんは僕の異変に気づいたのか、ベッドの横に来ると、膝をついて肩に手を置いてくれた。

京子「今日は、私も仕事休むね」

達也「え?私も?」

京子「やっぱり達也はおかしいよ。私心配だから、しばらく仕事休む」

達也「何言ってるんだよ。ダメだよ。前にも言ったろ?子供じゃないんだから。それに、ちょっと風邪引いただけだよ。最近天気がころころ変わるからね。体が合わせるのに疲れたんだよ」

母さんの表情は暗く、切なく見えた。

京子「本当に大丈夫?私……」

達也「母さん。安心して。僕は大丈夫だから。それに、来月の温泉楽しみにしてるんだからさ」

母さんはその言葉を聞くと、いつもの明るい表情に戻った。

京子「そうね。私も楽しみにしてるわ。でも……」

達也「無理はしません。わかってるよ」

京子「うんわかった。じゃあ仕事に行って来るね。でも早めに帰って来るからさ。晩御飯は達也の好きな物にするから」

達也「うん。ありがとう」

満面の笑みを見せた。

そして、家には物音一つない世界になった。

母さんが仕事に向かってから、そんな時間も経っていなかった。

でも、体は相変わらず。一向に動く気配がない。自分の体なのにまるで他人。

愛子は、今何をしてるんだろう。学校で何も知らずに授業を受けているのか。これから、肇とセックスをすると言うのに……。

愛子はどんなセックスを……。

―――

部屋の中に、携帯の着信音が響き渡った。

どうやら寝てしまったらしい。時計の針は午後を回っていた。

僕はその画面を確認すると、前日の記憶が不愉快なほど溢れ返った。

その相手は肇。

達也「もしもし」

「こんにちわ。今家かい?」

達也「はい、そうですけど」

「そうか。今、ちょうど駅なんだ。用事が早く終わってしまってね。それで迷惑じゃなければ、上げてもらえないかな?」

達也「……どうぞ」

「ありがとう」

選択肢なんてないだろ。僕は、憎々しく携帯を切った。

そして、肇が醜悪な顔でやってきた。

家に招き入れると、さっそくトイレに向かおうとしたが。

「あっ、そうだ。ちょっとお願いがあるんだけどいいかい?」

達也「なんですか?」

「京子さんのパンティを貸してくれるかい?」

それが何を示しているのかわからなかった。

達也「え?」

小さい声を発すると、息を飲んだ。

「パンティだよ。いいよね?」

その射貫くような目は、脅しにも似た恐怖があった。

達也「わかりました」

僕は、二階に上がろうとした体を寝室に向けた。

「できれば……やっぱり白だな。白で頼むよ。光沢があるやつね」

そして、タンスの中から1枚取り出すと、肇に渡した。

「京子さんのパンティ。さすがにいい趣味してるね。僕はこういうシンプルなのが好きなんだ」

すると、目の前で鼻に押し付けると、大きく匂いを嗅いだ。

その光景は、とても許せるものではなかった。

「はあぁ!いい匂いだ。愛子とはまた違った香りだね。じゃあ、ちょっと借りるよ」

そして、トイレのドアノブに手をかけた。

達也「何をするんですか?」

肇は手を離すと、呆れた様子で答えた。

「決まってるじゃないか。このパンティでオナニーするんだよ」

(やっぱりそうなんだ)

何も言わずに振り返ると、階段を上がった。

部屋に入り、ベッドに横になると、肇がなんで毎回トイレに行くのかわかった。

おそらくだけど、僕が階段を上がると、肇は寝室に行って下着を持ち出し、トイレでオナニーしていたんだ。

肇は、もともと母さんのことをずっと褒めていたし、気に入っていた。

それに、この前の母さんが寝返りを……。

あのとき、母さんは酔って寝てしまった。いったいどれくらいの間だったんだ?僕が部屋に上がって、肇が呼びに来るまでの間は二時間ほど。

(母さんはいつから寝ていたんだ?)

握り拳に力が入る。まさか母さんに?

しばらくして、肇が部屋に入って来た。

達也「肇さん。聞いていいですか?」

「なんだい?あっ、パンティはちゃんと汚さずに戻しておいたから安心して」

達也「違います。この前のお酒の席で、母さんが寝てしまったじゃないですか。そのとき……」

突然肇は笑い出した。

「ははは!あぁ、バレちゃったか。でも、大丈夫だよ。挿入はしてないから。僕は根っからの前戯好きでね。好きな人や気に入った人ほど、挿入より、念入りな愛撫が好きなんだよ」

腸が煮えくり返っていた。

「だから安心して。でも、あの夜は興奮して寝れなかったなぁ。京子さんのおっぱい、パンティ、そしておマンコ。どれも最高だった。寝顔が本当可愛いくて、キスしちゃったよ」

僕が勢いよく立ち上がったとき、肇は手を突き出した。

「わかってるよね?」

頬にとんとんと指を当てると、僕は引き下がるしかなかった。

「それに、減るもんじゃないんだからさ。じゃあ続きね。キスをして、その口の中に舌を入れてグルングルン掻き回したんだ。京子さんの唾液がいっぱい溢れて、美味しかったぁ。もう、フレンチキスをたっぷり」

僕は力む体を必死に抑えていた。

「そのあとは、おっぱいを揉んで乳首をしゃぶって、パンティをずらして、おマンコの中の恥ずかしいお汁を飲ませてもらったよ。大きくはしょってしまったのは、君が退屈そうだから。本当は詳細に言いたいんだけどね。本当にもったいないなぁ」

そして、肇は何かに気づいたように携帯の取り出した。

「おっ。愛子からのメッセージが届いたよ。達也君、わかってるね。そっと玄関を入って来て覗くんだよ?部屋のドアは少し開けておくから」

達也「……はい」

―――

最初は、普段と変わらない勉強だった。

愛子は帰って来てすぐだったこともあり、制服のままだった。それに、前日のことは忘れてしまったかのように、不思議なほど平然としていた。

愚かな僕が作ってしまった原因で、肇に体を晒してしまった。マッサージという名の愛撫を受け入れてしまった。

全てが僕のせいだ。僕はいたたまれなくなっていた。罪悪感が溢れ、すぐにでも床に額をつけて謝りたかった。

勉強も進みしばらくすると、肇がそわそわと落ち着かなくなってきた。

「愛子ちゃん、ちょっと休憩しようか。マッサージしてあげる」

愛子「え?いえ、まだ大丈夫ですから」

「ううん。休むときに休む。いいね?」

愛子「……はい」

渋々うなづいた。

「よし。じゃあさっそくシャツとスカートを脱いでくれるかい?」

愛子「……このままじゃダメですか?」

「わかるよ。恥ずかしいよね。でも僕を信じて」

8畳ほどの一室。愛子の横顔は赤く染めながら、ボタンを一つ一つ外していった。

次第に肌が露になっていく。僕にとっては、言葉だけでずっと頭の中で焦らされた姿だった。

それが、今は現実に目の前で……肇に肌を露出していく。

外し終わると、そっと腕から袖を抜いて、床に畳んで置いた。

今日の愛子は、ピンクのブラだった。

スカートの横に手を運ぶと、ファスナーの下ろす音が部屋に響く。ジリジリと。

そして、ストンと落としてしまった。

僕はゴクリと息を飲んだ。愛子の体は想像以上に綺麗だった。

何回も、幾度となく頭の中で想像した。しかし、そのどれよりも現実の愛子は美しかった。

「今日も綺麗だね。そのまま立っててね」

肇は、愛子の後ろに回ると、脇の下から腕を通して、いきなり胸を揉みんだ。

愛子「肇さん……止めてください」

「昨日言っただろ?凝ってるって。これはマッサージだ。だからここから初めることにするよ」

肇は下から寄せて上げて、寄せて上げた。

見てる僕でさえ、生々しくその重さや感触が伝わってくるのだから、直に触れている肇は、さぞ誇らしいだろう。

顔はすでに恍惚な表情を浮かべていた。

「愛子ちゃん。気持ちいいかい?自分でするのとは大違いだろ?」

愛子は体をもぞもぞと動かし、顔はうつむいている。

そして、肇はさらに首筋に顔をつけて、匂いを嗅いでるようだった。

それによく見ると、舌を出して上から下へ、ペロペロと舐めていた。

「美味しい。あっでも、これもマッサージの一つだからね」

言い終えると、ブラのホックを外しスルスルと抜き取ってしまった。

不意なことだったが、愛子は胸を隠そうとせず、ただ苦情の表情をして動かなかった。

上半身を裸にされ、あとはパンティ一枚だけだった。

肇は、ふたたび胸を責めた。

今度は乳首。人差し指と中指で転がすように弄くると、不意に挟んだり、こねたり。

その度に、愛子の体は小刻みに震えた。

「昨日の余韻が残ってるのかな?ねぇ愛子ちゃん?昨日の夜は、僕を思い出してオナニーしたんだろ?」

愛子は驚いて、床に向けられていた視線が正面に上がる。

愛子「いえ、してません」

すると、肇は乳首を摘まんだ。

ビクッと体が動いた。

「正直に言うんだ。したね?」

愛子「……しました」

強く瞼を閉じると、弱々しく言った。

「やっぱりね。あれだけ僕にほぐされたんだから、我慢できなかったんだね。愛子ちゃん、こっちを向いて」

促されるまま、ゆっくり顔を向けると、肇は唇を合わせた。

(ああっ……)

それは初々しくて濃厚な、愛子の初めてのキスだった。

ただ、肇の場合は、キスとは程遠く感じる荒々しいものだった。

貪っているかのように、口やその回りを舌で舐め回し、無理やり中に突っ込むと、嫌がる愛子の頭を掴み離さなかった。

長かった。そして、嫌がっていたのは最初だけ。次第に馴れてきたのか、愛子も口を開けて舌を受け入れた。

「チュ……チュパ……はあぁ……チュパ」

しばらくの間。二人の息遣いと、唇が重なり合う音がただただ聞こえた。

やがて、二人は向き合うと、肇は背中に腕を回して恋人のように抱きしめていた。

(なんで愛子は、受け入れてしまったんだ)

僕にはわからなかった。

「はぁ。いっぱいチューしたね。愛子ちゃんも実はエッチな子だったんだね。僕は嬉しいよ」

しかし、愛子は自分の姿を確認すると、すぐに胸を隠して小さくうずくまった。

愛子「違う!違います。なんで……なんで、私こんなこと」

その体は、恐怖からか震えていた。

僕と同じ。肇の言葉の世界には、いつの間にか引き込まれてしまうんだ。

肇はそんな愛子の肩を抱きしめた。

「それはね。愛子ちゃんがまだ自分をさらけ出せていないからだよ。昨日言ったよね?心を開こうって。さぁ立って。自分を解放するんだ」

愛子の腰に手を回して、立ち上がらせた。

そして、肇はパンティを一気に下ろした。

愛子は何が起こったのかわからない面持ちだった。

「さあこれで生まれたままの姿になったよ。どうだい?解放感を感じるだろ?」

愛子「えっ、えっ?」

頭の中が真っ白になってしまったのか、混乱しているようだった。

そのとき、愛子の裸体が窓から射し込む光に当たり、妖艶な雰囲気を醸し出していた。

それに、顔に似合わないほど黒く生い茂っている毛は、よりいっそう刺激的に、いやらしく映えて見えた。

僕の鼓動は早まり、息が荒くなる。体が熱を帯びていく。

「愛子ちゃん、足を広げて。中もマッサージしてあげないとね」

半ば強引に広げると、肇はしゃがみ、口を秘部に近づけた。

愛子「いや……ダメ。そこは、汚いですから」

顔を覆い隠しながら言った。

「ふふ、可愛いね」

同感だった。僕も仕草と言葉にゾクゾクした。

愛子の反応は、その一つ一つが僕の何か大事なところを擽るのだ。

肇は、そんな愛子の恥じらいを気にすることなく、一直線に向かった。

そして、そこに到達すると、チューっと吸い出すかのように音を鳴らした。

愛子「あっ、ダメ」

聞こえていないのか、肇は何の反応も示さない。

しかし、幾度か繰り返していると、音の中にジュルっという水分を含んだ音が聞こえてきた。

僕はそれが何を意味するのか理解すると、胸の奥でぽっかりと空白が生じた。

「ハァハァ。愛子ちゃん、とっても美味しいよ」

愛子の全身が真っ赤になった。

「やっぱり昨日の愛撫は正解だったね。まだまだ残ってる。愛子ちゃんの体は、僕に反応するようになってるんだ」

ふたたび秘部に口をつけてると、音を出して吸った。

肇の額には、玉の汗が浮かんでいた。そして、僕も。額も脇も背中もびしょびしょだった。

愛子は眉間にシワを寄せて、目を瞑りながら天井を見上げている。肇は、両手を愛子の太ももに添えながら、股に顔を埋めて、クンニを繰り返していた。

この光景も長く続いた。キスと同様に。肇が前戯を好んでいるのは事実だった。

それに、悔しいけどその指先と舌先はとても優しかった気がする。

僕だったら、こんなことはできない。興奮と欲求に身を任せ、無我夢中で愛子を犯しただろう。

その無傷の性器を、心に傷をつけてしまったかもしれない。

そして、それと同時に僕の頭の中には、別の光景も浮かんでいた。

肇は、母さんにも同じようにしていたということだ。

寝ている無防備なところに、顔を埋めて執拗な舌先で、その体を味わった。

つくづく……。

肇の愛子への愛撫は、なかなか終わらなかった。

もう、外から差し込む光もなくなっていた。

「さて、君の新品のおマンコも、今日で見納めだ。何故か感慨深くなるね。でも、僕は君を大切に思ってる。君の体を宝物のように扱うからね」

愛子「……」

「……もう君の体は僕を求めてる。考えてごらん?これまでの反応を。それが証拠だよ。だから、準備はいいかい?君の初めてを……」

肇は、ベッドに寝ている愛子を床に移すと、足の間に移動した。僕からよく見えるようにするためだ。

肉棒を秘部にあてがった。そして、その瞬間は、あっけなく突然訪れる。

「愛子。好きだよ」

肉棒がニュルっと入ると、腰が前後にスライドを始める、愛子の体がゆっくり、ゆっくり、前後に動き始める。

「この瞬間、君の体に印が刻まれたよ。もう二度と戻れない印。……ああぁ、いいねぇ。愛子、愛子のおマンコ。凄いよ」

肇の全身が高揚した。

愛子「んっ….ん……んっ」

「あぁキツイ。ヌルヌル。愛子のおマンコが僕のチンポを包んでくれてるよ」

愛子「んん……あっ……んっ」

「ダメだよ、遠慮しないで。愛子の恥ずかしい声を聞かせてくれ。この僕に、愛子の全てを見せてよ」

愛子「あっ……いやっ……あん」

「恥ずかしいんだね。でも安心して、これからも僕が一緒にいてあげるからね」

愛子はそのあとも、必死に溢れる声を我慢していた。

肇はそんな愛子に構わず腰を振り続け、そして、その態度も変化していった。やがて本性を現した。

「本当に最高の体だ。僕は間違ってなかったようだ。愛子、君のような美人で利口な子は、僕みたいな立派な男にふさわしいよ。愛子の処女は僕にこそ捧げるべきなんだ。愛子、君は正しい判断ができる、素晴らしい人間だよ。誇りに思っていい」

これが本当の肇。人間という名の服を着た、プライドの塊。

そのときだった。

「ん?なんで泣いてるんだい?あっそうか。嬉しいんだね。僕に抱かれていることが、セックスをしていることが。僕のチンポは意義深くて、尊い物だからね。君もありがたく思うんだよ」

運命は無慈悲だったと思う。でも、一番の罪を犯した人間は、それを紛れもない僕だった。

愛子の頬につたう涙を見ても、僕の体は一向に動く気配がなかった。止めようともしない。考えることも。

僕は怖かったのかも知れない。一線を越えてしまうのが。

そして、その腑抜けで臆病な心が、たった一度の過ちを犯した結果、目の前の光景を生んでしまった。

僕は愛子に嫌われることが……心底怖かった。

肇は、両腕を掴みながらバックで突いた。

パンパンと、肉と肉とがぶつかり合う音がこだまする。

「愛子。愛子のお尻の肉が波打ってるよ。スケベなお尻が喜んでる。今度撮って見せてあげるね」

愛子「あん……あっ……あん……あぁあん」

「可愛い声が出てきたね。その調子で、愛子の全てを晒け出すんだ」

愛子「はぁん……あぁ……あん」

今度は、騎乗位。

長い髪を振り乱し、胸を上下に弾なせながら、肇の上で、一心不乱に腰を動かしていた。

愛子「ああぁん……あん!……あっいやっあん」

「絶景だね。まるで山頂から日の出を見るようだ。愛子は本当に幸せだよ。僕のチンポで絶頂にたどり着けるんだから。でも、今回は僕だけだ」

愛子「はぁん……あぁあ!あん… …あん」

「ごめんね愛子。愛子のおマンコのせいで僕が先に逝っちゃいそうなんだ。だから、ごめんね」

愛子「あっ……ダメっあん……中はっやめって」

「ふふ。可愛いなぁ愛子。僕はそんな男じゃないよ。ちゃんとゴムは着いてる。でもその先は、僕と愛子が愛を誓い合ったらね。だから楽しみにしてて、僕の精子は特別だから」

肇は、最後は好きな体位でと言いながら、バックで挿入した。

四つん這いの愛子は、いっそう激しい喘ぎ声を出した。

愛子「ああ!…あん…あん…あぁん」

「愛子、ああぁ凄い締め付けだ」

愛子「ああぁ…あぁ…あんっ…んああ」

「あぁもうすぐだ!」

ピッチが上がると、肇の両手は、愛子の胸を鷲掴みにして、腰をさらに早く強く打ち付ける。

「ああ!愛子の全てを感じる!」

さらに、背中に舌をつけて、ベロベロと舐めていった。

愛子「あっ!…あぁあ!…あん!…あん!…あぁっ!」

「イクよ愛子!僕の精子が出るよ!あっもう!あぁっ!」

愛子「あぁぁっ!」

重なるように倒れ込むと、聞こえるのは二人の息遣いだった。

「ハァハァ……愛子……ごめんね。本当はもっと君を気持ちよくさせたかったんだけど、我慢できなかった。だから、次は一緒にね」

愛子「……」

愛子の瞳は、どこか遠くを見ているようだった。別の世界。空の彼方を。

「こっちを向いてくれるかい?」

愛子「……」

二人は上下で重なりながら、また濃厚なキスを交わした。

僕は、痺れる足を引きずるようにして、そっと家を出た。

自分の部屋でマンガを読んでいると、肇は喜色満面にやって来た。

「ふぅー。どうだった達也君」

達也「別に……なんとも」

「そう。じゃあ、愛子は僕がいただくね」

達也「……」

「なんだどうしたんだい?元気ないじゃないか」

達也「当たり前ですよ」

「そうだね。あはは」

達也「それで、他に何か?」

「はい、これはお土産」

テーブルの上に出したのは、2枚のパンティだった。

達也「これは?」

「ピンクが愛子。その黒が愛子のお母さんのだ」

唖然とした。

達也「えっ?瞳さんの?」

「そうだよ。前に欲しいって言ってたろ?だから待って来たんだ。ちなみに愛子のパンティは今日穿いてたやつだから、貴重だよ。さあ、疲れたから帰るか。達也君、また来週ね」

そのとき、突然ある日の愛子が浮かんだ。

達也「待ってください!」

「ん?なんだい?」

達也「教えてください。あの日、愛子は嘘をついたんですか?母さんとお酒を飲んだ次の日です」

肇は腕を組ながら天井を見上げた。

「ああ!あのときか。簡単なことだよ。愛子ちゃんの立場になってみて。僕の前で脱いでしまったんだよ?たとえ君が知り得ないことだったとしても、そんな恥ずかしいこと言えるかい?」

達也「……」

「もういいかな?じゃあね。おやすみ」

肇は、僕の返事も聞かずに帰って行った。

そのあと、一人になった僕は、2枚のパンティでオナニーした。

―――

その後、僕は母さんと話し合い、肇との家庭教師を解消した。

理由に関しては、適当な嘘を並べた。まさか愛子を寝取られたから嫌いになったとは言えるわけもない。

肇も最初は驚きの表情をしてとまどっていたが、話しが進むにつれ意味を理解したのか、最後は笑顔で去って行った。

しかし、それからほんの数日後だった。

なんと肇は、愛子との家庭教師をあらためて始めていたのだ。

週に2回。勉強して、マッサージして……おそらくセックスをする。それを繰り返す。

僕は、学校からの帰り道、遠くから肇を見かけることが幾度かあった。

そのとき、いつもこう思うんだ。

あぁ、二人は今日も繋がるんだって。

そして、何度も想像した。

肇は全身に汗を滲ませ、愛子はその汗を全身で感じるのだろう。

肇の卑劣な突起物で、愛子の卑猥な穴を掻き回されるのだろう。

セックスの最後に、肇は、愛子の子宮に精子を注ぎ込んでいるのだろうか。

僕の愛子への思いは、自然と冷めていった。

しかしたとえ冷めても、僕は愛子のことをいつも考えてる。

今はどこにいて、誰と、何をしているのか。

そう考えてしまうのは、嫉妬なのか、妬みなのか、はたまた未練なのかはわからなかった。

でも一つ学んだのは、今までのようになんとかなるって思ってた自分が嫌になり、なんとかしなきゃって考えが頭に根付いたことだ。

待ってるだけじゃダメ。失敗を恐れたとしても、ときには自分から歩き出さないといけない。伝えなきゃいけないと……。

ある日家の前で、偶然にも肇とばったり会ってしまった。

「あれ?久しぶりだね」

達也「どうも」

「どうした?元気ないね?」

当然だ。僕は二度と会いたくなかったから。

達也「勉強ですか?」

「そう。それで終わったらマッサージ」

達也「肇さん……また一つ聞きたいんですけど」

ずっと胸の奥で引っ掛かっていたことだった。

「どうぞ」

達也「あのとき、わざと僕を起こらせたんですか?」

「さぁどうかな」

達也「教えてください」

肇は、腕を組み悩むと、一息吐いてから話し始めた。

「そう、わざとだ。まさに計画通り。一つを除いて」

達也「一つ?」

「君に殴られたことだよ。どうだった?楽しかったでしょ?あっ、ちなみに、君が暴走したときの喘ぎ声はAVの音声ね」

達也「……だと思いました」

「でも、今回のことで色々勉強できてよかったんじゃないか?」

達也「……そうですね」

「それに計画というのは、愛子とセックスをすること。そろそろいいかな。満足したかい?」

達也「はい。もう結構です」

肇の横を通りすぎて、僕が家のドアに鍵を差し込むと。

「達也君!よかったら見に来るかい?僕のマッサージ」

つくづく腹が立つ言い方だった。僕は振り向くこともせず家に入った。

そして、黒いパンティを取り出すと、その人を思い浮かべながらオナニーした……。

―――

―――

―――

《あとがき》

最後まで読んでいただきありがとうございました。

そして、たくさんの評価をありがとうございました。

今回のお話しは、この投稿を持ちまして完結となります。

少しでも楽しんでいただけましたら、大変光栄です。

次回からは、僕と亜樹〜シリーズにもどろうと思いますが、サイト様の仕様も変わりましたので、投稿できない場合もありますが、ご理解をよろしくお願いします。

それでもできるかぎり続けていきたいと思いますので、もしよろしければ、続編希望の評価をお願いします。

重ねて、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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