彼女と小太りで禿げたKさんが恋に落ちていった話

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俺(健)と彼女(加奈)は同じサークルで知り合ってからの付き合いだった。

俺と加奈と俺の元バイト先の店長のKさんの3人は、よく飲みに行ったり遊びに行ったりする仲だった。

俺と加奈は22歳、Kさんは40歳くらいなのだが、小太りで禿げていて、歳も離れているのに、どうしてこんなに仲が良いんだろうと疑問に思うような風貌をしていた。

元々3人とも同じ映画が好きで、一緒に見に行ったのが最初だったと思う。

Kさんは俺と加奈が付き合っているのは知っていたし、そこの所をわきまえてくれていたと思う。

ある日、3人で加奈の家で飲もうという話になった。

あいにくその日はバイトが外せなかったので、1人遅れていく事になってしまった。

加奈の家に到着し、ドアの前に立った時にはもう部屋の中から楽しそうな声が聞こえていた。

玄関の横の窓が開いていて、2人の声はそこから聞こえてきていた。

ドアを開けようとした時、ふと2人の声が止んだ。

何となく不思議に思った俺は、横の窓から部屋を覗き込んでみた。

2人はソファーに並んで座って缶ビールを飲んでいた。

(部屋の間取り的にソファーの前にテレビがあったので、必然的に並んで座ったんだと思う)

一通り盛り上がった後の静けさというか、会話の中で一瞬空気が流れたような雰囲気だった。

「健くん遅いねえ」

ボソッとKさんが呟いた。

「うん……」

加奈が答える。

2人の間に少しだけ心地いい沈黙が流れていた。

「あ、そうだ」

Kさんがそう呟いて加奈の方を見る。

自然2人の目が合う。

「……」

Kさんは数秒何か言おうとした様な顔のまま止まっていた。

「何?」

加奈が首を傾げる。

「忘れちゃった。」

Kさんはそのまま加奈と反対側の壁の方を見た。

「ふふ」

加奈は少し笑ってからぼんやりと床の方を眺めている。

明らかに少ない言葉数といつもと違う雰囲気に違和感を感じながら、俺はそのまま動けなかった。

2人とも話の種を探しているような、それでいてこの沈黙を少し楽しんでいるような独特な空気感だった。

黙って座っているだけだったが、2人とも視線は定まっておらず、2人にはきっと時間が長く感じられているであろう事が想像できた。

ふと、2人の膝と膝が触れ合った。

いや、当たったと言った方が正しいかもしれない。

しかし、2人はそれをどうして良いかわからないかの様に触れ合ったまま動かさずにいた。

流石に飽きてきてドアを開けて部屋に入ると、2人はこっちを見て「おかえり」「お疲れ」などそれとない言葉を投げかけてきた。

2人とも少しホッとした様な顔をしていた。

その日の2人は妙に饒舌だった。

それから何度か俺の家で飲む機会があったが、2人ともいつもとあまり変わらない様子だった。

2ヶ月ほど経ったある日、俺はバイト終わりにこっそりと加奈の家に向かった。

その日は加奈の誕生日だった。

俺はサプライズ用のプレゼントとケーキを抱え加奈のアパートに向かった。

ドアの前に立った時、俺はあの日の事を思い出していた。

宅飲みに遅れて行ったあの日の事を。

無意識にドアの横の窓から部屋を覗き込んでいた。

中には、Kさんと加奈がいた。

テーブルにはケーキの箱といくつかの酒の空き缶などが置いてある。

2人で先に誕生日を祝っていたのだ。

なんとも言えない気持ちが俺の心を包んだ。

2人は無言でソファーに隣り合って座っている。

ふと、2人の膝と膝が触れ合った。

まるでこの間の続きを見ているようだった。

1つ違うのは、俺は2人が部屋にいる事を知らなかったし、2人は俺が加奈に会いに来る事を知らない事。

また心地いい沈黙が2人を包んでいる。

お互いに全く目を向けず、しかし完全に意識は触れ合った膝に向けられているのが分かる。

ふと、Kさんが顔だけで加奈の方を向いた。

目を逸らしたまま、文字通り顔だけで。

どちらともなく、2人は手を握り合っていた。

2人の間の空気が、より静かになっていく。

加奈も首の向きだけを変え、Kさんの方を向いた。プルっとした唇がほんの少しだけ開いていて、鼓動の速さが分かる。そのまま上目遣いで恐る恐るKさんを見つめた。

2人の目が合う。

十数秒、2人は見つめあっただけだったが、俺にはもっと長く感じられた。

2人には、永遠のようだっただろう。

Kさんは真っ直ぐ加奈の目を見つめていた。

加奈がゆっくりと視線を下げる。それと同時に瞼が静かに閉じて行った。

そのまま、ゆっくり静かに、2人の唇が重なった。

そこからの流れはとてもスムーズだった。

唇を吸いあったまま、2人は器用にソファーに横になった。

加奈の足がテーブルの上の缶に当たり、床にビールがこぼれた。

Kさんの手が加奈の胸に向かうと、加奈はKさんの首に手を回した。

しばらくしてどちらともなく服を脱がせ、2人はお互いの体を求めあい、舐めあった。

どれほどそうしていたか忘れた頃、ついにその時がやってきた。

Kさんは何もつけず、そのまま加奈の中に入って行った。

その時の加奈の、満足感と幸福感、そして少しの痛みさえ愛おしく感じていた、あの表情が頭から離れない。

2人は何度も耳元で「好き」「愛してる」と囁き合っていた。

Kさんは幾度となく加奈に「いいの?」と聞き、加奈はその度にKさんの目を見つめ頷きかけていた。

やがて限界が近づき、Kさんの動きが速くなっても、加奈はKさんの首に手を回したまま話さなかった。

Kさんはそのまま加奈の中で果てた。

俺はそれを見たまま、全く動けないでいた。

2人はソファーに横になり、見つめあったり、二言三言話したり、気が向いたら唇を重ねたりして余韻を味わっていた。

30分もすると2人はまた抱き合い始めた。

それを4回ほど繰り返した後、2人は何か楽しげに話しながら床を掃除し、楽しそう笑い合いながら浴室に向かった。

10分程して、シャワーの音に紛れて加奈の声が聞こえてきた時、俺はとうとう逃げ出してしまった。

あれからすぐ、加奈とは別れる事になった。

あの日見た事は言わないでおいた。

そうした方が、いい気がしたのだ。

2人は結婚して、子供にも恵まれているらしい。

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