小学校の同級生と再会した一晩を32000字で書いてみた。

Hatch コメントはまだありません

6月終わりの日曜日、俺は学生時代ぶりに試験を受けに行った。

大学卒業後就職した会社を一年で辞め、未来への当て所なくアルバイトを始めては辞め、また始めては辞める生活を続けていたものの、先日26歳の誕生日を迎えたとき、その”20代後半”という年月の重みと自分の中身の軽さに否応ない焦りを覚えたことをきっかけに、アルバイト先の先輩に勧められるまま検定試験を受けに行ったのだ。

その試験とは色彩検定なる試験だった。

それは現在、駅ビル内のアパレルショップでアルバイトをしている日常の中、とりあえず何でもいいから挑戦したいという思いの俺にとっては打って付けの検定で、久しぶりの受験生活に一喜一憂しながら一ヶ月間なんとか勉強を続け、ついに受験日を迎えたのだった。

試験の出来は上々だった。

だから「やめ」という試験管の声を聞いた時、長らく忘れていた達成感と充実感に満ち溢れ、快い溜息をついた。

松島さんとの再会はそんな時だった。

試験管から退出許可が出て、筆箱を閉める音や問題用紙をバッグに入れる音、ささやかな話し声や座席を立つ音に辺りが騒めきだした頃、うんと背伸びをして筆箱をバッグに入れた俺は、うっかり受験票を床に落としてしまった。

受験票の行方を追って視線を落とすと、それを拾ってくれた人の細い指が斜め後ろから目の前に突き出された。

ありがとうございます、と口ごもりながら視線を上げると、その途中で視線が止まった。

肌の白さが映えるコーラルピンクのワンピースのふんわりとしたシフォン素材をギチギチと押し上げる大きな二つのふくらみが、かがんだ胸元からはみ出している。

うわっ、デカっ、と思うと同時に「えっ」とその人の声が降って来たので、己を恥じて顔を上げた。

すると目を丸くした美人の女と目が合った。

その女は俺の顔と受験票を交互に眺め、そして笑顔になって俺の名を呼んだ。

「えっ!うそっ!川瀬くん?」

ーーー

松島さんは小学校の同級生だった。

と言っても取り分け仲の良い間柄だったわけではなく、ただ単純に同学年の女子たちの一人で、それは松島さんにとっても同じだったと思う。

しかしそんな間柄で、いや、そんな希薄な間柄だったからこそ俺は彼女に対する一つの強烈な印象を持っていた。

それは、俺にとって松島さんは、”初めて生のおっぱいを見た女の子”だったことである。

小◯生の頃の松島さんは本当に地味な女子だった。

クラスのリーダー的グループなど雲の上の存在のようにして、わりと控えめなグループにいたにも関わらず、それでもそのグループ内で下っ端の扱いを受けていた松島さんは、いつもゴワゴワの髪の毛にヨレヨレのTシャツを着て、お洒落のカケラもないメガネの下の口元には、いつも濃い産毛を生やしていた。

それは、流れる雨が窓を濡らす今ぐらいの時期だったか。

高い湿度が背中に貼り付く気持ち悪さに、やっぱり半袖を着て来て良かった、などと思っていた小学6年生のある日、何かの小テストを受けていた時だった。

さっさと全問解き終えてしまった俺は静かな教室内でやることもなく手遊びをしていたら、ポロリと消しゴムを落としてしまった。

消しゴムの行方を追って視線を落とすと、それを拾ってくれた人の丸々とした指が斜め後ろから目の前に突き出された。

ありがとう、と口からすぐに出ないまま視線を上げると、その途中で視線が止まった。

肌の白さが映える色褪せたピンクのTシャツのヨレヨレの胸元から、盛り塩のような小高いふくらみと薄茶色の先端がこぼれていたのだ。

えっ、俺の胸と全然形が違う、と思うと同時に変にドキッとした気持ちを覚えている。

「ねぇ」とヒソヒソ声が降って来て顔を上げると、ダサい眼鏡の奥の瞳と目が合った。

すると先程とは違う温度でドキッとしたので、松島さんの手から消しゴムを引ったくって何事もなかったように机に向かったのだったと思う。

それからしばらくは、お礼の言葉もなく消しゴムを引ったくった罪悪感と、もう一度松島さんの胸を見てみたいけどそれは何だか良くないことのような気がする、というジレンマが混じり合って、松島さんを避けたり、ちょっかいをかけたり、変に優しくしてみたりしていた時期があった。

けれどそれも俺が中学受験で別の中学に行ってからは、過去の記憶となった。

思春期でまともに中学の女子と喋ることができなかった俺は、松島さんの記憶を引っ張り出しては夜な夜なティッシュに劣情を吐き出して、罪悪感を深めた。

しかしそれも高校に上がって部活に恋に勉強にそれなりに忙しくなってからは、まったく思い出すこともなくなっていった。

ーーー

「えー。でもそんないいところに就職してたなら、やっぱちょっともったいないね」

「うるさいな。辞めて後悔はしてないから、まじで」

午後6時過ぎ。

松島さんと俺は繁華街のバルのテラスで初めてお酒を酌み交わしていた。

試験会場で再会を果たしたあと何となく近所のカフェでお茶をすることになった俺たちは、募る話が意外と盛り上がり、気付けばお腹の空く時間になっていたので、俺が唯一知っている繁華街のお洒落なお店に誘って夕食をとる事にしたのだ。

俺にとっては久しぶりの女子との食事だった。

新卒で入った会社をすぐに辞めてしまって以来、俺は自分への劣等感でどんどん内にこもる生活を送っていたので、久しぶりの女子との食事は本当に楽しい時間だった。

それは今思えば、永らく誰とも話さなかったフラストレーションが試験終了の充実感によって解放され、少しだけ自分を赦せる心が生まれたからかもしれない。

「そっか。それならいっか。結構アパレルも楽しいもんでしょ?」

初夏の遅い夕暮れをバックに2杯目のサングリアを飲み干した松島さんに、俺はタパスを突きながら「そうやなぁ」と応えた。

松島さんはこれまで、アパレル一本で生きてきた女だった。

高校卒業後なんとなくデパートのショップ店員としてアルバイトを始め、なんとなくそのまま就職したものの、26歳になることを機にデザインの社内コンペに参加することを決め、そのために今回の検定を受けたとのことだった。

「じゃあ松島さんはこれからデザイナーになるんだ?」

「そうやね。なりたいと思ってる」

テーブルに届いた3杯目のサングリアを煽った松島さんは言葉を続けた。

「けど正直、今からじゃ遅いスタートよね。ウチのデザイナーの人たちって専門学校で勉強してすぐにデザイナーになった人たちばっかりやもん」

はあ、と溜息をついた松島さんにパエリアを取り分けてあげると、松島さんは「ありがと」と言ってパクパク食べた。

「けど松島さんなら大丈夫やろ」

「なんでよ」

「だってなんか、お洒落になったし」

酔いに任せて思ったままのことを言うと、松島さんは俺を見つめるなり、鼻息だけで小さく笑って言った。

「そうやね。わたし、昔いつもヨレヨレの服ばっかり着てたもんね」

「いや、そういうこと言ってんじゃなくて」

わざとらしく自嘲的に笑った松島さんに、続けて素直な気持ちを言った。

「綺麗になった、って言ってんの!」

俺は何を言ってるんだ、と内心恥ずかしくなると同時にテラスの前を行き交う雑踏が大きく耳に聞こえた。

しかし俺がそう言ってから松島さんは何も喋らなくなってしまったので、俺はその雑踏を聞いているしかなかった。

ほどなくしてテーブルのサングリアにちょこっと口をつけた松島さんは呟くように言った。

「何言ってんの、急に」

「いや。ごめん。大声出して」

「うん」

「けど、言ったことは本当だから」

「…」

松島さんは再び喋らなくなってしまった。

なので俺はそのまま自分の気持ちの間違いない部分だけを言った。

「だから、その、まあ、応援してるよ、ってことだから」

俺がビールに口をつけると松島さんは口を開いた。

「なにそれ。なんで”綺麗になった”が”応援してるよ”になるわけ?」

「知らんわ。けどそう思ったんやからしょうがないやん」

取り繕うために口につけたビールを一気に煽ると、また鼻息で小さく笑った松島さんは笑顔を見せて言った。

「ありがとね」

その笑顔はやっぱり綺麗だったが、その表情はどこか見覚えのある可愛さで、俺は不意にドキッとした。

すると何も喋られなくなってしまった俺は雑踏に目を向けて、空いたビールに口をつけた。

どうして俺はこの笑顔に見覚えがあるんだろう。

ただのクラスメイトだった松島さんが、かつて俺にこんな笑顔を向けてくれた覚えなんてないはずなのに。

しばらくすると松島さんはポーチを持って「ちょっとトイレ行ってくる」と言って、テーブルから去って行った。

そして少しして戻って来ると、何だかクッキリした目鼻立ちになっていた松島さんが快活な子供みたいに目をキラキラさせて聞いてきた。

「ねえ」

「ん?」

「川瀬くん、このあとどうすると?」

「え?んー…特になんもない」

「そっか。わたしも」

「うん」

「…」

「…」

「…川瀬くん、明日は?」

「明日は遅番…だから余裕ある。松島さんは?」

「わたしは普通に朝から出勤!…だけど、まあ、何てことないけど」

「そっか」

「うん」

「…」

「…」

三たび訪れた沈黙と空気はここ数年忘れかけていた感情を思い起こした。

胸の奥で高鳴る鼓動がどんどん耳に近付いて来ると同時に血液が降りて一点に集まっていく。

俺は言った。

「あのさ」

「うん?」

高鳴る鼓動に自分の声が聞こえなくなる前に俺は言った。

「どっかで飲み直す?」

「どこで?」

「どこでもいいけど…」

「…」

「…いや違うな」

「うん?」

「俺ん家。俺ん家で飲み直そう」

「…」

「…イヤ?」

ふふん、と鼻息で笑った松島さんはうつむいて、サングリアにちょこっと口をつけて言った。

「いいよ」

そんな松島さんの笑顔を見た俺は、ああ、良い歳して勉強して良かったなあ、もっとがんばろう、と心の底から思った。

ーーー

いつもなら電車で帰るが、早く二人きりになりたかったので奮発してタクシーで帰った。

申し訳なさそうな顔をしながら何だか嬉しそうな松島さんの表情を見ながらタクシーを降り、コンビニに寄ってマンションに到着した頃にはすっかり夜の帳が下りていた。

「お邪魔しまーす」と言って玄関で靴を脱ぐ松島さんを室内に促し、電気とテレビをつけてコンビニの袋をテーブルに置いて、ソファの左にドサリと腰を下ろした。

すると松島さんがどこに座ろうか迷っている様子だったのでポンポンとソファを叩くと、松島さんは拳一個分の距離を開けて俺の右隣に座った。

そして松島さんがあまりにもキョロキョロと辺りを見回すので俺は少し苦笑しながらコンビニの袋から缶チューハイを出して言った。

「あんまりジロジロ見ないでよ」

「ごめん」

缶チューハイを手渡された松島さんはふふっと笑って目を伏せた。

「連れて来るのに何か問題あった?」

「いや、なんか、綺麗にしてるんだね。本当は彼女とかいるんじゃないの?」

自分の缶チューハイを開けた俺はソファにもたれて素直に悲しい現状を応えた。

「残念ながらしばらくおらんよ。松島さんこそ本当は彼氏いるんじゃないの?」

「わたし?わたしもまあ、そりゃ、いないよ」

変に含みのある言い方だったが深くは考えないことにして、ひとまず缶チューハイを掲げて言った。

「そっか。じゃあ、お互い恋人のいない者同士、再会を祝して、乾杯!」

「ふふっ、乾杯」

缶を突き合わせて一口飲んだが、すぐにそれをテーブルに置いてテレビを眺めて沈黙した。

そして松島さんも同じく一口飲んだだけでそれをすぐにテーブルに置いてテレビを眺めて沈黙した。

お互いそんなことはわかっていた。本当に飲み直すためだけにこの部屋に来たわけではない。

静かな室内をテレビの喧しさが埋めた。

ちらほらと二人に会話はあったが、そのどれもが内容のないもので、それが一層これから起こり得る二人の期待をありありと示しているかのようだった。

すでに法律など関係ない法律相談番組がCMに切り替わった頃、俺と松島さんの間のソファに松島さんの左手が置かれていることに気が付いた。

なので俺は何気ない風を装って、その手のひらを右手で握った。

すると意外にも松島さんの手のひらは手汗でじっとり濡れていた。

瞬時に手を離した松島さんはゴシゴシと手のひらをコーラルピンクのワンピースで拭いて呟いた。

「ごめん、手汗」

「いや、それくらい別にいいけど」

俺も一応チノパンで手のひらを拭いて再びソファに置くと、松島さんもそっと手のひらを重ねてくれた。

うつむいた松島さんは言った。

「ここでこんなこと言うのも何だけどさ。その…ほんとに、久しぶりなんだ。こういうの」

「そうなんだ」と言って手のひらを握ると、松島さんは小さく笑ってその手を握り返した。

「緊張してるの?」

俺が問うと松島さんはうつむいたままコクリとうなずいた。

間違いなく俺も緊張していた。なにせ会社を辞めてバイト生活を始めて以来、ずっとこういう機会から遠ざかっていたから。

けれど松島さんの緊張があまりにも手のひらから伝わるので、その対比で俺の緊張は薄まっている気がした。

「じゃあさ」

俺が言うと松島さんはうつむいた顔をこちらに向けて次の言葉を待った。

「ゆっくりしようよ」

俺は手のひらの力をやんわりと抜いて、言葉を続けた。

「俺も緊張してるし」

ふふっと笑った松島さんはわざと問い質すような声色で「本当に?」と続け、俺が左手で松島さんの頭に触れると、やんわりとその頭を俺の右肩に預けてくれた。

俺は髪の香りに緊張を解かしながら、綺麗に染められた髪の頭をゆっくりゆっくりと撫でた。

ーーー

電気の消えた室内で、消音されたテレビの灯りだけがくちびるを重ねる二人の輪郭を照らしていた。

くちびるの先を触れ合わせてから一体どれくらいの時間が経っただろう。

聞こえるのはどちらのものともわからない吐息と、どちらのものでもある水音だけで、香るのはサングリアの果実味と松島さんの匂いだけである。

口内から伝わる久しぶりの甘やかさに脳が包まれた俺は、もっともっとその甘さに脳を浸すべく何度も何度も松島さんの中を確かめた。

すると最初は俺の舌に応えようとしていただけの松島さんの舌も次第に俺の中により深く入って来ようと動き始め、それがさらに心地良くて、俺はもっともっと松島さんの中に没入していった。

小刻みに身体を震わせていた松島さんが不意に「ねえ」と言って俺の身体を離したので、俺は荒い息を吐きながら同じく呼吸を荒げた松島さんの言葉を待った。

すると松島さんはうつむいて言った。

「ちょ、ちょっとさあ」

呼吸を整えることを努めるように松島さんは続けた。

「な、なんか、は、激し過ぎるよ」

甘さに浸された脳味噌は何のことだかわからなかったが、俺はそのまま聞いた。

「…イヤ、だった?」

とろりとした瞳で松島さんを見つめると、同じくとろりとした瞳を返した松島さんは言った。

「いや、その、イヤじゃ、ないけど、なんか、わたし」

“イヤじゃない”と聞いて脳がゴーサインを出したので俺が再び松島さんの中に入っていくと、松島さんは再び小刻みに震え始め、その口端から露骨な喘ぎ声が飛び出るや否や「待って!待って!」と吐息に乗せて再び俺の身体を離した。

意味不明な気持ちを吐息に込めて「なんだよ」と問うと、松島さんはとろりとした瞳で困ったような眉毛の形で言った。

「ごめん、なんか、変だ、今日、わたし」

荒い呼吸に唾を飲み下して松島さんは続けた。

「いつもは、こんなんじゃ、ないんだけど、なんか、なんか…」

要領を得ない物言いに困惑した俺は、沈黙して松島さんの言いたいことを考えた。

とろけた頭はまるで正常に働かなかったが、松島さんが「なんか、わたし、もう…その…その…」と続け、ワンピースから伸びた太ももギュッと締める動作を見て、脳内に考えが一つ浮かんだ。

なので、まさかとは思いながらも俺は口を開いた。

「なに、その…イきそうなの?」

そう問うなり松島さんはくちびるをギュッと締めて、荒い呼吸の中でうなずいた。

俺は驚きながらも、ずっと繋がれたままの手のひらを強く握り返して言葉を続けた。

「でもまだ、イけないの?」

うつむいた松島さんは小さくうなずいた。

とろけた脳内に少しだけ冷静さを取り戻しながら俺は続けた。

「イきたいの?」

聞くなり松島さんの手のひらがギュッと握られた。

けれど口には決して出さない松島さんの恥じらいに途方も無い愛しさを感じた俺は、松島さんの身体を背中から抱きしめるように俺の身体にもたれさせ、右手は繋いだまま左手で松島さんのワンピースの裾をめくった。

するとギュッと締められた真っ白な太ももの根元に三角の黒の布地が現れた。

「裾、持ってて。濡れちゃうから」

素直に裾を持った松島さんが、さり気なく俺を見上げたので俺は聞いた。

「この体勢でイけそう?さっきの方がいい?」

「…これがいい」

「そっか」と言って早速ひざから太ももの隙間に指を這わせると、いきなり熱い吐息が頬にかかったので俺はそのおでこにくちづけながら指を布地に落とした。

狭い布地越しに指先を上下させながら俺が「どっちが好き?」と耳元で尋ねると、松島さんは呼吸の中で「…外」と呟いたので布地の手前を念入りに引っかいた。

すると平面の布地上で一箇所、吐息が大きくなる点を見つけた。

なのでそこをこちょこちょと引っかいていると、松島さんの吐息が徐々に明らかな喘ぎに変わっていった。

右手で俺の右手を、左手で真面目に裾を掴んで悶える松島さんに俺は静かに聞いた。

「このままがいい?もっと?」

まぶたを閉じて無防備に喘ぐ松島さんは、吐息の中で応えた。

「こ…このまま…。…つよいのは…イヤ…」

「わかった」と応えてそのまま布地越しにそこをこちょこちょしていると、とろけた顔面を抗うようにゆがめた松島さんの喘ぎ声が、うなされるように低く深くなっていった。

なので俺が”イきそう?”と聞こうと松島さんの左耳にくちびるを寄せると、瞬時、松島さんの口から「う」と音が飛び出して、俺を掴む右手を握りしめ、硬直した腰が低く持ち上がった。

そして叫ぶように口を開けるも、そこから声は続かず、喉元でつかえたような空気が「あ、あ…」のような音になって漏れた。

ほどなくすると、大きく息を吐いた松島さんの腰はドサリとソファに落ち、それから短く不規則な呼吸を始めてぐったりと俺の身体に全身がもたれた。

正直、俺は、その何もかもに驚いていた。

かつて付き合ってエッチをした女の子たちにイってもらった自負はあったが、ここまで明らかにイったであろう姿を見たことはなかった。

思えばかつての女の子たちからは、わかりやすく喘いで少し身震いしたあと、言葉にて”イっちゃった…”と報告されるばかりだった。

そう考えればもしかして今までの女の子たちがイったというのは本当は…。

なんだか冷たいものが心にポトリと落ちた気がした俺は、再び指先で布地を引っかいた。

すると「ぁあ!」と大声を出して起き上がった松島さんは俺の左手を振り払い、再びバタリと俺の身体に倒れ込んだ。

そして「ちょっと、ちょっと待って」と懸命な様子で伝えたので俺は素直に待っておくことにした。

呼吸が規則的に整ってきた松島さんは、ふー、と大きな息を吐くと、取り繕うようにムクリと起き上がり、片手をソファについてぐったりとした身体を支え、少しの間だけ何でもないところを見つめたのちに、俺の目をチラリと見て微笑して言った。

「ビックリした」

“俺もビックリした”と言いかけたが、何だか言葉が出なかったのでそのまま松島さんの横顔を見つめていると、松島さんは小さく言葉を続けた。

「いつもこんなことしてんの?」

「…え。なにが?」

「ふんっ、”なにが?”って」

「…」

「…」

「…」

「…わたし、生まれて初めて、マジでイったかもしんない」

「え?」

「いや、こんなこと言うのも恥ずいけど。26年も生きててこんなこと言うのも恥ずいんだけど」

「…」

目をパチパチさせて天井を見上げた松島さんが指先で目尻を拭ったので、反射的に背中をさすってあげようと俺が手を伸ばすと、ワンピースの背中に触れるや否や松島さんはビクリと跳ねてその手から距離を取って、言った。

「なに!」

「いや、背中さすろうかと思って」

「なんでよ!」

「いや、”なんでよ”って」

「…」

「…優しさ?」

「はあ?」と言った松島さんは、俺が渡したティッシュを受け取って目元を押さえたのち俺を見つめて言った。

「なんか怖いんやけど」

「…」

「…」

「…え。もう、したくなくなった、とかじゃないよね?」

「えー、するとー?」

不服そうにおどけた松島さんにつられて俺は言った。

「え、するやろ!ここまで来たら!」

「えー、入れるとー?」

「え、入れるやろ!ここまで来たら!」

「えー、変態ー」

もちろん言葉にした気持ちも本心だったが、正直このまま松島さんと戯れているだけでも悪くない心地だった。

ーーー

ティッシュで鼻をグズグズやっている松島さんを眺めていると何だか喉が渇いてきたので、俺はソファから立ち上がって冷蔵庫から取り出した2リットルのミネラルウォーターに口をつけ、ふう、と息を吐いた。

せっかく久しぶりに女の子を家に連れ込んだというのに、自分がやけに穏やかな溜息をついたことに小さく笑ってしまうと、背後から「どうしたと?」と松島さんが聞いてきたので「なんでもない」と応えて振り返り、言葉を続けた。

「水、飲む?」

「あ、うん。ちょーだい」

言われるままにペットボトルを手渡そうとしたけれど、両手を広げて笑顔で俺を見上げる松島さんの可愛さに愛しさを感じた俺は「口開けて」と松島さんに言って、自らの口内いっぱいにミネラルウォーターを含みソファに座る松島さんに覆いかぶさった。

松島さんは「え?え?まじ?え?」と戸惑いながらも、そのくちびるに俺がくちづけるとコクリコクリと喉を鳴らして冷たいミネラルウォーターを飲み干してくれた。

くちびるを離して松島さんの顔を見つめていると、それに気付いた松島さんは短く息をついてサッと目を逸らして言った。

「…やっぱ変態」

「どこがだよ。イヤだった?」

「いや別にイヤとかじゃないけど」

ムスッとして目を合わせてくれない松島さんにきびすを返してペットボトルを冷蔵庫にしまい戻って来ると、鎖骨の辺りを手で拭っていた松島さんは俺を見るなりムスッとした顔を作り直して目を逸らした。

俺は言った。

「あ。ごめん。服、濡れちゃったね」

「別にいいけど、それくらい」

俺がソファに腰を下ろしてからも、松島さんはずっとムスッとしてそっぽを向いたままだった。

なので俺は松島さんの右手を引っ張って、ソファの上で俺の正面に女の子座りさせてから言った。

「じゃあ…」

「んー?」

「…」

「…」

「脱ぐか、服」

「やだ」

「なんでだよ!」

ムスッとした顔をほころばせて松島さんは言った。

「だって川瀬くんエロいことするもん」

「さっきからエロいことしてんじゃん!」

「そうやけど…」

「そうやろ?」

「やっぱやだ」

「なんでだよ!」

ニコニコしながら拒否してくる松島さんの突然の大人げなさに、変に不貞腐れた気持ちになって黙っていると、まるで自分がイイ女であるかのような声色で「しょうがないなあ」と言った松島さんが後ろ手にワンピースのチャックを開けようとした。

なので俺はその手を退けて両手でチャックに手をかけた。

ふふん、と笑う松島さんの顔が目の前にあった。

チャックを下げると松島さんの顔が少し上がったので、俺はそのくちびるにちょんとくちづけた。

すると再びふふん、と笑った松島さんはお返しするように俺のくちびるにちょんとくちづけてくれた。

チャックを下ろして両手で松島さんの肩に手をかけると、松島さんはピクンと微動するも袖からゆっくりと片腕ずつ抜いていった。

バサリと布地が落ちた音がしたので眼下を見やると、視界いっぱいの真っ白なふくらみが黒布に寄せられて谷間を深めていた。

「でかっ」

思わず乱雑な言葉が口から飛び出ると、松島さんは苦笑いをして口を開いた。

「そんなでかくないよ」

迷わず下着のホックに両手を伸ばすと、松島さんは笑いながらも外しやすいように背中を反ってくれた。

けれどパサリと黒布が落ちると、細い両腕がサッとそのふくらみを覆い隠してしまった。

「どうしたの」

「んん、なんだろ、その」

なおも小さく笑いながら松島さんは言葉を続けた。

「やっぱ、なんか、恥ずかしいね。小学校の同級生に見られるのって」

“なんだよー。昔、俺はすでに一回見てるよー。いまさら気にするなよー”などと言ってしまいそうになったが当然、脳内で警報が鳴ったので「そうだよね」と言って誤魔化した。

しかしこちらからアクションをしなければ一向に両腕は開かぬ気配を見せたので、俺は腕にやんわりと触れて言った。

「ね」

「ん?」

「見せて」

「…」

松島さんは何も言わなかったが、その腕は俺の手に導かれるままそろりそろりと開かれた。

するとそこには、記憶とはまるで違う、大人の女の乳房があった。

鎖骨からなだらかに下りて腋から急にふくらみを増すそのたわみは、胴体の中央から腋の下まで圧倒的な質量の拡がりをもって、見るからに重たそうに鎮座している。

不安になるほどに脇腹はえぐれ、それはヘソの下をやんわりと覆う脂肪がパンツのゴムにさり気なく乗っていることに安心するほどである。

そして記憶の中では、盛り塩のような小高いふくらみの先の焦茶色だったはずの頂点は、ふくらみの大きさのためにその面積を増し、明るい薄茶色になっていた。

そして目の前に広がるそれらのすべてが、今まで見たものの中で一番綺麗だと思った。

しばし呆然とその身体に魅せられていると細い左腕がそれを隠そうとしたので、ハッとして顔を上げると笑った口元に探るような瞳で俺を見つめる松島さんと目が合った。

松島さんはいじけるようにして言った。

「ごめんね、垂れてて」

「いや…これだけ大きかったら垂れるやろ。…てかこんなん垂れてるウチに入らんやろ」

「ははは、ありがとーフォロー」

「てか本当に…」

俺は、肌に這わせる視線を隠さずに呟いた。

「…めっちゃ綺麗」

肩に鎖骨にお腹に胸に、その胸を隠す腕の細さにまで魅せられて再び呆然とした。

するとそろりそろりとその細腕が下りていって、その仕草が自分にもっと心を開いてくれたように感じられて、思わず右手で二の腕に触れると、松島さんはさり気なく短い吐息を漏らした。

松島さんの身体にもっと触れたくなった俺は、その身体をソファの背にもたれさせ、松島さんの左肩の細さを自分の胸に感じながら、右手を回して右肩を抱きしめた。

再び松島さんの顔が目の前に来たので、俺は迷わずそのくちびるにキスをした。

するといきなり松島さんの鼻から甘い嬌声が抜け、俺の舌先に松島さんの舌先が絡みついてきた。

再び口内から伝わる刺激に脳味噌を浸した俺は、まぶたを閉じてその甘さに没頭しながらも、当たり前のように松島さんの肌の上を這う指先から伝わる感触を確かめていた。

しっとりと貼りつくような太ももの柔らかさからジットリと湿っている熱さを感じる布地、もちもちとした下腹に触れた時には腹筋に込められる恥じらいの意思を感じたのでそこは早めに切り上げて、ゆっくりと脇腹から背中に指を這わすとしっとりとかいた汗に触れた。

けれどそれ以上に気が付いたことは、背中を這っている時の松島さんの吐息が一段と大きくなったことだった。

なので背中を重点的に探っていると、松島さんは背中というより骨盤の裏辺りがどうやら好きなようだったので、その辺りを念入りに確かめた。

すると、くちびるを離した甘い声が「ねーえ?」と俺を呼んだ。

「なーに?」

「また触ってー?」

「…どこを?」

「さっきんとこ」

震える甘い吐息を鼻に感じながら俺は重ねて聞いた。

「さっきんとこって、どこ?」

すると意思表示するようにくちびるを結んだ松島さんは、鼻から荒く息を吐きながら俺が気付くのを待った。

そのまま知らんぷりをして隠語を言わせる方向にしてみようかとも思ったが、俺はあまりそっちに食指が向かないので俺は言葉を続けた。

「またイきたくなっちゃったと?」

そう聞くと松島さんは困ったように小さく「うん」と応えた。

「松島さんはすぐイっちゃう子なんやねー」

そう言うと松島さんはくちびるを結んで「んーん」と顔を横に振ったので、どこがだよ、という気持ちを込めて俺は再び布地の上を指先で引っかき始めた。

すると割とすぐに。

さっきより控えめに。

松島さんはイってしまったので何だか物足りない心地がした俺は、松島さんの張り詰められた力が抜けるたび何度も何度も念入りに、お願いされた箇所を引っかいては引っかき続けた。

“念入りに”と書いたが、今考えると普通に”執拗に”だったと思う。

けれど、俺の腕の中で何度も何度も慎ましく絶頂に迎える松島さんの横顔を見ていると、俺は否応ない愛しさを感じて、やはり何度も何度も松島さんの身体に触れ続けた。

ーーー

午前0時過ぎ。

背中に規則的な寝息を聞きながら、ソファにもたれて興味のないサッカーのハイライトを眺めていると、名前だけは聞いたことのある選手がドリブルからのスーパーシュートを決めて大歓声が起こった瞬間、大きな鼻息を吸い込んだ背後の女が起き上がる衣摺れが聞こえた。

顔だけで振り向くと、そこにはタオルケットに包まれた松島さんが眠そうな瞳をパチパチさせている姿があった。

苦笑しながら俺は言った。

「起きた?」

「…んー。…ごめん。寝てた?」

「うん」

先ほど何度も何度も念入りに松島さんの身体に触れていたら、何度も何度も身体を硬直させては脱力することを繰り返した松島さんは、気付けば喘ぐこともなく痙攣するだけになっていたので、それが落ち着くのしばらく待っていると、松島さんはスヤスヤと寝息を立てて眠ってしまったのだ。

松島さんは呟いた。

「…ごめん」

「ふん、いいよ別に」

「…どれくらい寝てた?」

「んー、一時間くらい?」

「そっか」

「うん」

番組が次のコーナーに変わった頃、松島さんは再び呟いた。

「…ごめん」

「ふふん、だからいいって。…もう寝る?」

ぼんやりとした瞳で松島さんがブンブンと首を横に振ったので俺は笑いながら言った。

「いやいや、眠そうやん」

「んー」

しばらくの沈黙のあと、松島さんは「とりあえずトイレ!」と宣言してタオルケットを抱きしめて部屋から去って行った。俺はパンツの黒布が食い込んだ松島さんの真っ白なおしりの大きさをしかと目に焼き付けた。

部屋に戻って来た松島さんは無理やり頭を起こした表情で「ただいま」と言ってソファに腰掛けた。

「おかえり」

「んー」

「…水とか飲む?」

「んー…飲む」

立ち上がった俺は冷蔵庫からペットボトルを取り出しながら話しかけた。

「酔いが覚めてビックリ、って感じ?」

「んふふ、そんなことないよ。別にそんなに酔ってたわけじゃないし」

「それは良かったわ。起きていきなり『そんなはずじゃなかったのに!』とか言われたら俺ちょっとヘコむもん」

「んふふ」

手渡されたペットボトルをコクリコクリと飲んだ松島さんは少しぼーっとしたあと再び、んふふ、と笑ったので俺は聞いた。

「どうしたん」

「んふふ、いや、なんか」

「うん?」

「そういえば、さっきは口移しでお水飲んだなぁと思って」

松島さんは何でもないところを眺めながらペットボトルの飲み口を拭った。

「あ、ごめん。また口移しが良かった?」

「ふふふ。はあ?そんなんじゃないし」

「そうなん」

「うん」

その返答に何気ない寂しさを感じた俺は、ズカズカと松島さんに歩み寄ってドサリとソファに座って言った。

「俺も、水」

「ん」と言って松島さんがペットボトルを差し出したので俺は続けて言った。

「そうやなくて。口で」

「はあ?」と笑った松島さんが「やだ」と続けたので、俺は「ん」と言って口を開いて松島さんを見つめた。

しばらく笑って誤魔化していた松島さんだったが、それも続かなくなると大きく鼻から息を吐いて「わかったよ」と呟きペットボトルに口をつけた。

けれど松島さんはそれからどういう動作をすればいいかわからない様子だったので、俺はソファの肘置きに頭を乗せ、そこに松島さんが上から覆い被さるように促した。

するとソファに乗って俺の頭の両側に両肘をついた松島さんのタオルケットははだけ、鎖骨の奥に現れた大きな胸のふくらみが揺れるさまが見えた瞬間、俺のくちびるは塞がれた。

松島さんのくちびるから注がれるミネラルウォーターは、とても甘くて冷たかった。

頬を伝う冷たさをもったいなく感じながら、コクリコクリと喉を鳴らしているだけで股間が勃起していった。

けれど心はとても穏やかで、永遠に松島さんから水を飲ませて欲しいと願った。

長い吐息を俺の口内に満たした松島さんは言った。

「これでいい?」

「いや、もっと」

俺がそう呟くと、松島さんは少し笑って俺の中をゆっくりゆっくりと舌で潤してくれた。

しばし甘美な時間に包まれた。

けれど松島さんがくちびるを離したので、まぶたを開けると、目の前の松島さんは穏やかな瞳に俺を映して微笑んでくれていた。

松島さんは言った。

「なんかさ」

「うん?」

「照れるね」

「今さら?」

「うん」

顔を隠すように俺に抱きついた松島さんの笑いが俺の左耳に伝わった。

すると俺も何だか笑えてきて、少しだけ二人してヒソヒソと笑い合った。

けれど俺が松島さんを抱きしめようと、その背中に両手で触れると、瞬時、松島さんの身体はビクンと震えて松島さんは顔を起こしてしまった。

再び目の前に来たその顔に、俺は問うた。

「松島さんってさ」

「うん?」

「めっちゃ敏感よね」

「んー」と考えて「んふふ」と笑った松島さんは言葉を続けた。

「”めっちゃ”ってほどでもないはずなんやけどな」

再び両手で松島さんの背中に触れると再び身体をビクンと震わせた松島さんに「どこがだよ」と俺が言うと、松島さんは「んー」という声色と表情で怒っている意思を見せた。

俺は言葉を続けた。

「素直じゃねーなあ」

「んー…別に”素直じゃない”とかやないんやけども」

怒ったような困ったような、考えているような顔になった松島さんに俺は続けた。

「まだおっぱいも触ってないのに」

「ふふん。あぁ、そういえばそうやん。え?川瀬くんってあんまりおっぱい、好きやないと?」

「いやそういうわけじゃないけど、なんか、松島さんの顔見てたら触るの忘れとった」

「はあー?なんなん?それ」

「なー、なんなんやろ、まじで」

いつもなら裸の巨乳があればすぐに触りたくなる俺なのにどうして松島さん相手だとそんな風にならなかったんだろう。

そんな疑問に頭を悩ませたが、それより触りたい気持ちが沸々としてきたので俺は迷わず言葉を続けた。

「ね。触っていい?」

「はあ?」と言って少し笑った松島さんは、しょうがないないあ、とでも言うように続けた。

「いいよ」

松島さんが上体を起こすと、眼下に大きなおっぱいが揺れた。

重力にたわんだそのふくらみは、その向こうに見えるはずの太ももをまるごと隠さんばかりの大きさを以って揺れていた。

両肘を畳んで垂直に持ち上げた手のひらに伝わる柔らかな重みは、やはり手のひらから溢れ出て、そして思っていた以上に重たかった。

松島さんのさり気ない微動をスルーして俺は言った。

「重いなこれ」

「ねー。そうやろ」

温もりをもったそれを持ち上げたり降ろしたりしながら俺は言った。

「なんか、普通に、こんだけ重たかったら生活に不便なこと多そう」

「ふふん。わかってくれるのかい、川瀬くん」

松島さんのおどけた声を聞きながら、重力にたわむおっぱいを真横からやんわりと握ると、短く切れた吐息が松島さんの口から漏れた。

「すげーなー。こうやって握れるんだもんなー」

「ふ、ふふん。…そうやろ」

握って揉んだり、持ち上げて揉んだりしながら俺は言った。

「昔はこんなにデカくなかったのにな」

言った瞬間、”しまった”と思うと同時に脳内の警報が鳴った。

けれど松島さんは変わらず、さり気なく微動しながら話を続けた。

「ふふっ、そりゃそうやろ。だ…だってわたし、おっぱい大きくなり始めたのって中2とかやったもん」

話の流れとして発言に問題がなかったことに安堵した俺が、手のひらでふくらみをこね続けながら「そっか」と何でもない返事をすると、明らかに熱い吐息を漏らした松島さんは、それでも微動を隠すような調子で言った。

「そ、そうだよ…。…だって川瀬くん、他の中学に行っちゃうんやもん」

松島さんの荒い呼吸を聞きながら「そっか」と応えて、ふくらみをこね続けていると松島さんは続けた。

「…みっ…みんな…寂しがってたよ?」

「ふん、嘘だよ。俺、そんな人気あるほうじゃなかったやん」

「…うっ…嘘じゃないよ…」

「いいって、いいって。そういうフォロー」

「ほんっ…本当だって…」

いつの間にかまぶたを閉じて、甘えるような喘ぎを吐息に混じらせていた松島さんは続けた。

「すっ…少なくとも…。…寂しがってる人は…本当にいたよ…」

ふんっ、と鼻を鳴らした俺は心の中で自嘲した。

いったい誰だよ、そんなやつ。

俺だって寂しかった。みんなと離れて違う中学に行くのは寂しかった。

だけど、それから付き合いが続いた同級生なんて一人もいない。

あの頃、地元の中学の制服を着て歩いてるやつらを街中で見ると、本当に本当に羨ましかった。

耐えきれないような喘ぎ声が細く長く伸びると同時に、重たい温もりが俺の手のひらから離れた。

すると、「はい、おしまい!」と言った松島さんが赤い顔をして居住まいを正した姿が俺の眼下にあった。

“どうしたんだよ”と俺が言う前に、松島さんは肩で息をしながら早口に言った。

「ていうかさ、川瀬くんさ、ズルくない?わたしばっかりこんな…」

一つ息を飲んで松島さんは続けた。

「…川瀬くんも脱いでよ。…わたしばっかり裸じゃ平等じゃないじゃん!」

俺を見つめるその瞳は、ふやけた表情の中にあって有無を言わさぬ眼光だった。

だから俺が「わかったよ」と言ってシャツのボタンを外しインナーのTシャツまで脱いで松島さんを見つめると、ゆるんだくちびるをキュッと結び直した松島さんの瞳が遠慮なく俺の裸の上半身を這った。

少し恥ずかしくなってきた俺は言った。

「なんだよ」

「ん。別に」

「…」

「…」

「…ていうか下も脱いでよ」

「ああ、うん。…。え?いやいや、松島さんだってまだパンツは履いてるじゃん」

「うるさいなあ!もう。いいから早く脱いでよ!」

すっかり細腕で胸を隠した松島さんは断固とした眼差しを俺から離さなかったので、不服にも根負けした形で俺がベルトを外すと、まるでそれが彼女の中の礼儀であるように、細腕を解いた松島さんは揺れるおっぱいも気にせず俺のチノパンをよいしょよいしょと下ろしてくれた。

するとチノパンにくっついたボクサーパンツが一緒にずり下がり、解放された屹立がバチンと俺のヘソの下を打った。

それが目に入るなり固く結んだくちびるから「ふふっ」と笑いを漏らした松島さんは、すべての着衣を俺の足から抜くと、それを丸めて床に置くなり、再び俺の屹立に視線を落とした。

少しの沈黙のあと、結び直したくちびるの上でダルダルにゆるんだ瞳を俺の股間に注いでいる松島さんを見て、俺は言った。

「…触ってよ」

「…え、あ、いいの?」

「”いいの?”って」

「ははは、そっか、そうやね。何言ってんだ、わたし」

小さな笑いが収まったあと、松島さんはそろりそろりと右手を下ろし、細い指先で屹立の中程をそっと触った。

それからさり気なく屹立の根元から先っぽまで、その形を確かめるように握った松島さんは、俺の視線に気づくなり鼻息で「へへへ」と笑って言った。

「やっぱり川瀬くんのって…おっきいんだね」

童貞を卒業したばかりの頃はそう言われて調子に乗った時期もあった。

しかし卒業してしばらく経てば、自分が井の中の蛙であることをよく思い知った。

俺のは別に小さくはないがそれほど大きいわけでもない。

いつの間にか当然のように握ったり離したり先っぽを突いたり玉をプルプル弾いたりしていた松島さんの無邪気な笑顔のくちびるの形を眺めていると、割とすぐに果てる気配がした。

なので股の筋肉に力を込めてそれを遅らせようと試みるも「うわー、ぬるぬる出てきた」と言って指先を先端で遊ばせる松島さんの笑顔に否応なく甘い後悔を感じた。

すると。

ふと。

一つの疑問が脳裏を駆けた。

なので、俺は聞いた。

「ねえ。松島さん」

「うわ。てか近くで見るとほんと大きいね、これ。…大きいって言うか、太い?頭のとことかすごい張ってんじゃん!うわー、川瀬くんのってこんなだったんだねー」

松島さんの親指と人差し指が屹立にちょんと触れた瞬間、絶頂の予感が目の前に現れた。

けれどそんなこと露も知らない松島さんは「それにしても昔好きだった告白をするタイミングとしては最悪だよね、ははは」と笑いながら屹立を検めるので、俺は思わず「うっ」と吐息を漏らしてしまった。

するとニヤリと笑った松島さんは言った。

「なに。どうしたと?」

「いや…別に…」

「…」

「…」

「あっそ。ビックリするくらいヌルヌル出とるけど」

そう言うなり松島さんは屹立に触れる指を遠慮なく上下し始めた。

するとすぐさま俺は限界を感じたので、左手で松島さんの右の手首を握って言った。

「ごめん。嘘。俺もうイきそう」

「えーなんでー。川瀬くん早漏なん?」

「いや…そんなことないはずなんやけど…」

「”けど”?」

「うん。”けど”…」

「…」

「けど…なんか、今日、俺、変やわ」

「ふふん?なんでよ」

「なんでやろ。…わからんけど、松島さんやからかな」

「はあ?」と笑った松島さんは、一息置いて「ふふん」と小さく笑ったのち、何か思い出したように少しだけ眉間を哀しげに悩ませて、それから柔らかい口調で尋ねた。

「…もう入れる?」

「え?」

「だって…もうイっちゃいそうなんやろ?」

「…ああ」と考えるための相槌を打ちながらも、俺はすでにどうしたいか決めていた。

「いや、一回イってから、改めて入れたい」

「ええ?」と笑った松島さんは続けた。

「大丈夫と?それ」

「大丈夫。てか松島さん相手なら何回でもイける気がする」

俺が本心を伝えると、松島さんは「はあ?」と笑って困ったような顔を作った。

けれどすぐに俺の屹立の前に顔を持って行っては、ゆっくりと指先を上下させて言った。

「もう。…わがままなんやから」

「はあ?どこがだよ。松島さんだってそ…。…。…ちょ、ちょっと待って。もうイきそう。舐めて」

「はあ。もうほんとわがまま」

そう言って松島さんは指先を動かしながら俺の屹立を見つめた。

そして一瞬「ふん」と優しげに笑って、ヌルヌルと光る俺の屹立の先端にちゅっとくちづけた。

瞬間。

あっ、と声も出ぬままに大きな絶頂が脳天を駆け抜けた。

ギュッとつむったまぶたの裏にチラチラと光が点滅していて、何も考えられない頭でただただ全身を駆け回る快楽に身を預けた。

そしてようやく頭の片隅に一欠片の冷静さが戻って来たと思ったら。

不意に。

いつの間にか屹立の頭を覆っていた柔らかさがヌルリと離れて、強過ぎる刺激が屹立裏の根元から先端に駆けて這い上がるのを感じた。

なので開いた瞳で眼下を見やると、そこには、いやらしい瞳で眉間にしわを寄せ、だらしないほど開いたくちびるから伸ばした舌先で俺の屹立を拭う松島さんの顔があった。

俺は言った。

「ま、松島さん、いいって。そんな、してくれなくて」

怒るような視線で俺を見た松島さんは言った。

「だって舐めてほしいんやろ」

強過ぎる刺激に腰の奥が所在なく戦慄くも、松島さんはそれを上体で押さえ込みながら舐め続ける。

俺は言った。

「い、今は、出したばっかりで、その、敏感だから…今は、その」

「ふん。そうでしょうね」と言った松島さんは独り言のように続けて呟いた。

「…いきなり飲ませるとかマジ勝手やん」

「え?の、飲んだの?」

「だってあの状態で出すとか、そういうことやろ?マジ調子乗んなし」

「い、いや、別にそんな…」と応える言葉を強過ぎる刺激が遮り、俺は身悶えた。

するとそんな様子を見ていた松島さんは怒ったような口調で言った。

「”松島さん相手なら何回でもイける”んやろ?」

ただひたすら刺激に耐える俺に松島さんは続けた。

「それなら、いっぱいイかせてもらったお礼にいっぱいイかせてあげなきゃいけませんね、これは」

眼下を見やれば、俺を睨みながら屹立を舐め続けている松島さんがいた。

けれど俺は、何も考えられない視界の中に一つだけ気が付いたことがあった。

それは、俺を睨みながら屹立を上下する松島さんの右手ではない方の手が、さり気なく松島さん自身の太ももの間に潜っていることだった。

時折、濡れた屹立に、松島さんの震える吐息がかかった。

けれどそのとろけた瞳を見れば、目が合うたびに怒ってるような視線に変わるので。

俺は何も考えないことにして、松島さんから伝わる刺激に感覚の全てを預けて呻いた。

ーーー

2度目の絶頂の波にたゆたいながら呼吸を整えていると、ふふん、と楽しげな鼻息がしたので、薄っすらとまぶたを開けた。

するとそこには、艶めいた瞳で俺を見つめる松島さんの穏やかな笑顔があった。

急に恥ずかしさが込み上げて来た俺が、苦笑いをして目を逸らすと、再び楽しげな鼻息をついた松島さんが口を開いた。

「またイっちゃったね」

そう言うなりツンと甘い刺激が俺の股間の先端に走り、思わず呼吸を深めてしまったので、俺はガバリと跳び起きて、ニヤニヤ笑う松島さんの顔を睨みつけて言った。

「触んじゃねーよ」

「なんでよ」と聞き返した松島さんは、ソファの下にダラリと伸びた俺の先端をなおも指先で突こうとして来たので、やんわりとした取っ組み合いみたいになって、違う意味で二人して息を切らした。

ソファに座ってもつれ合ったまま、呼吸を整えた俺は言った。

「2回もイかされるとは聞いてない」

「ねー。2回もイくとは思わんかった」

「イった直後に舐め続けるとかマジひどいわ」

「えー、なにー?もう立たんとー?」

「いやそれは…。…少し時間がかかるだろ」

「でもこれだけ大きいんだから、ちょっとくらい柔らかくして入れた方がいいでしょ」

「俺はガチガチのまま入れたかったんだよ」

「えへへ。ごめんね」と言った松島さんは俺の右胸に頭を預けて笑った。

けれどすぐさま頭を起こすなり、不安げな表情で俺を見て言った。

「…怒った?」

「ふふん、いや別に怒ってはないけど」

そう言って何気なく松島さんを見つめると、俺を見つめる松島さんの瞳の中に本気で怯える松島さんの姿を見た気がした。

なので俺は不思議に思いながらも、瞳に心を込めて”本当だよ”と伝えた。

すると、しばらく見つめ合ったあと、「良かったあ」と言って再び俺に頭を預けてくれた松島さんは言った。

「なんか、川瀬くんなら許してくれる気がしとった」

「なんだよそれ。なんかナメられてる気がする」

「ふふん。え?なに?また舐められたいと?」と言った松島さんが早速、股間に手を伸ばすので「だから触るなって!」と俺が手を退けると「えへへ」と笑った松島さんは俺に頭を預けたまま、ふー、と長い呼吸を伸ばしてポツリと呟いた。

「昨日はまさか、今日こんな日になるとは思わなかったなー…」

「そうだな」

「試験、受けて良かったなー…」

「ふふん。そうだな」

「…川瀬くんに昔、告白してたら、また人生変わってたのかなー」

「ふんっ、なんだよ。ずーっとアパレル業界で働いてるなんてめっちゃキラキラしてるじゃん」

自嘲するように小さく笑った松島さんは続けた。

「全然だよ。別にショップ店員になりたくてなったわけじゃないし、わたしの職場、女同士の人間関係めんどくさいし、わたしもう26だし、それに…」

松島さんがやんわりと口籠もったことに気が付いた。

“濡れてるの?”などと聞くのが野暮なほどにふやけた肌の隙間に、上へ下へと先端を沿わせると、俺の両肩をグッと握った松島さんは、くちびるを結んで眉根を引き上げながら、ゆっくりと顔をうつむけた。

「…入れるよ?」

うつむいたおでこをささやかに縦に振った松島さんを見て、柔らかな太ももに両手を置いた俺が、その手のひらにゆっくりと力を入れると、屹立の先端が小指の爪ほど埋まったところで松島さんは”う”とも”あ”ともつかない鼻声を漏らし、ぬめった入り口が俺の先端をグッと押し返した。

なので俺は、「松島さん」と名前を呼んだ。

そして薄っすらと俺を見つめる松島さんの瞳を、先ほど感じた温かな気持ちのすべてを乗せて、静かに静かに見つめると、松島さんの瞳がそっと笑うなり屹立の頭がズプリと温かなぬめりの中に落ち、開かれたくちびるから”あ”と音が飛び出した。

するとすぐさまその入り口が、ものすごい力で屹立の首を締めたので、進もうか退こうか逡巡していると、それに気付いた松島さんはこめかみに汗を流しながら微笑んで「…そのまま入れて」と言ってくれた。

なので俺が再び両手に力を込めると、どろりと熱い肉壁に俺の屹立が埋まっていき、埋まっていくほどにくぐもった鼻声が松島さんから吐き出された。

屹立の中腹ほどまで埋まったところで手のひらの力を抜き、そのまま松島さんの脇腹に触れると、驚くほどの力が腹筋に入っていたので、俺は再び松島さんの名前を呼んでその目を見つめた。

瞳で”すごい力入ってるけど”と伝えて笑うと、松島さんも困ったように笑って”ごめんね”と返してくれた。

“このまま入れるよ?”と瞳で問うと、首を縦に振った頬から汗がポタリと落ちた。

三たび両手に力を入れると、松島さんは両腕で俺の頭を抱きしめ、俺の屹立はゆっくりゆっくりと松島さんの中を押し分けながら埋まっていった。

そしてついにそのすべてが松島さんの中に収まると、手のひらから力を抜いた俺は、松島さんの汗に濡れた背中を抱きしめて言った。

「全部、入ったよ」

すると松島さんは俺の左肩に顔を埋めたまま、二人にしか聞こえない声で「うん」と呟いた。

それからしばらく、静かな室内で、松島さんの身体から強張りが抜けるのを待った。

髪を撫でて、肩を抱いて、背中を手のひらで何度もさすった。

すると次第に、松島さんが落ち着いて来たことが肌から伝わり、少し余裕を取り戻した小さな手のひらが俺の身体の形を確かめるようにあちらこちらに触れたあと、ピッタリと俺の身体を抱きしめた。

と同時に。

突如。

俺の屹立を包んでいた松島さんの中が、ものすごい勢いで蠢き始めた。

まるで予期しなかった事態に完全に戸惑っていると、上体を離した松島さんも同じような顔をしていて、しばしお互い見つめ合っては意味なく二人でその接続面を眺めた。

硬い屹立でのみ感じられる蠢きが、ついに収まりをみせると、俺は考える前に言葉を発した。

「何、今の」

「いや、わかんない」

「え、なんか、締めたり緩めたりしたわけではないと?」

「いや全然。だからわたしも驚いとる」

「まじで」

「うん」

「…」

「…」

しばしの沈黙のあと、戸惑いを共有した二人は笑うしかなかった。

せっかくいい雰囲気になってはどちらかがグッタリしてしまい、せっかくいい雰囲気になってはどちらかが寝てしまい。

ついに結ばれたかと思えば、またしても甘やかな雰囲気は中断されてしまった。

止まらない笑いの中で俺は言った。

「何なんやろうね俺ら」

「ほんとそれ、なんなんまじ、もう」

笑っては見つめ合い、見つめ合っては笑った。

しかししばらく笑い合っていると、松島さんの笑いの中に妙に艶めきが混じっていることに気が付いた。

けれどそれすらも松島さんのギャグのように思えた俺が、止まらない笑いに身を揺すっていると、うつむいた松島さんが「んーっ」と本当に甘やかな声を出した。

「…松島さん?」と俺が呼びかけると、顔を上げた松島さんはすっかり艶やかな顔色で困ったような表情をしていたので、俺は続けた。

「どうしたと?」

「んー…いや…なんか…」

やんわりとした屹立が入っているお腹をさすった松島さんは、俺と目を合わせると自問するように言った。

「…めっちゃ気持ちいいんやけど」

しばしその顔を見つめていた俺が、ふと思い立って、やんわりと腰を上げるように下半身を揺らすと、「ぅああっ」

と明確な喘ぎ声を発した松島さんの白黒した目と目が合った。

なので俺がそのまま身体を何度も揺らしてみると、「ぅあ…ぁあ…あぁ…」と止まない松島さんの喘ぎ声は徐々に戸惑いから艶めきの色が濃くなっていき、そんな声と増していく紅潮を見つめていると俺の興奮もどんどん増していき、すると松島さんは「んんっ…おっきくなってる…かたく、なってる…」と言って俺の気持ちを身体で共有してくれたので、さらに興奮した俺が無我夢中で一定のリズムの揺らぎを松島さんの身体の中に刻み込んでいくと、すぐさまブルルと身を震わせた松島さんから張り詰めた力が一気に抜けて、俺に抱きつくようにしてヘナヘナと倒れ込んだ。

俺の左肩に顔を埋めて身体を規則的に微動させる松島さんに向かって「松島さーん」と声をかけながら再び身体を揺らすと、「んあん」と甘ったるい嬌声だけを漏らした松島さんは返事をしてくれなかった。

なのでちゃんと返事をしてくれるまで「ねーえ」とか「松島さん?」とか声をかけながら何度も何度も身体を揺らすと、ほどなくして松島さんは再び張り詰められた力を一気に脱力させて、力なく微動した。

なので俺がまたも「あのさあ」とか言って身体を揺すろうとすると、残ってない力を振り絞るようにして起き上がった松島さんは、今まで見たことないくらい無防備な顔で俺を眺めて言った。

「…もおいじわるせんで…」

「意地悪?」と聞き返しながら身体を揺すると、目の焦点の合ってない松島さんはだらしなく喘いだ。

「別に意地悪のつもりやないんやけど」と続けた俺がまたもや身体を揺すると、松島さんはすでに会話を放棄して、全身に伝わる刺激にその身を浸していたので、俺はその無防備な顔を見つめながら何度も何度も身体を揺すって何度も何度も果てる松島さんの表情をまぶたの裏に焼き付けた。

そんな美しい松島さんの姿を永遠に見ていたいと願った俺だったが、もはや呪いのような終止符の予兆を屹立の奥に感じた俺は、あえなく腰の揺すりを止めて、ゆるやかに息を切らせながら松島さんの顔を眺めていると、ふと目が合った松島さんは力なく笑って言葉を発した。

「…川瀬くん…めっちゃえろい顔してる」

ゆるやかに笑った俺は応えた。

「松島さんも一緒やん」

「…そっか」と呟いた松島さんは続けた。

「一緒やね…わたしたち」

ぼんやりとしながら「うん」と俺が応えると、ゆっくりと伸びて来た松島さんの両手が俺の頬を挟んだ。

そして松島さんは前傾になりながら、その顔がゆっくりと近付いて来ると、俺の屹立をピッタリと包み込んでいる温かな肉壁に擦れて不意の絶頂を迎えてしまいそうになったので、俺が松島さんの肩をやんわりと押すと、「なあに?」と松島さんが聞いた。

なので「動いたら…もうイきそう」と俺が素直に応えると松島さんは優しく微笑んで言った。

「…いこう」

うっとりと俺の頭を撫でる松島さんの指先から伝わる優しさに陶酔しながら俺は聞いた。

「…いいの?」

「うん…。…一緒にイきたい」

「…一緒にイけるの?」

柔らかに笑った松島さんは応えた。

「うん。…もう…何回もイってるから。次はわたしも…川瀬くんがイくまで我慢するから」

ぼんやりとして、しばし松島さんの美しさを眺めた俺は、「わかった」と応えて松島さんのたっぷりとしたおしりに手をかけた。

「本当にすぐイっちゃいそうだから、ゆっくりするね」

「んふふ。わたしもそうして欲しいと思ってた」

手のひらからはみ出る柔肉に五指を広げた俺が、ゆっくりとそれに力を入れると、ゆっくりと松島さんの身体が持ち上がると同時にたまらない刺激が屹立から俺の全身をかけた。

「ぅ…ぅああぁっ…ぁぁっ…」と、まるで俺を代弁するように松島さんは呻き、俺の屹立の頭が松島さんの入り口に引っかかってそれ以上下がらなくなると、俺は五指への力を緩めた。

すると松島さんの身体が重力に落ちると同時に、「ああああああっ!」と松島さんは咆哮して俺も歯を食いしばった。

全身を駆け巡る刺激の強さは、絶頂が目の前にあることを明確に伝えた。

きっと次か、限界まで耐えてもその次に確実に来る。

すでにガクガクとして震えが止まらない松島さんの柔肉を再び持ち上げると、「…ぁぁっ…ぁあっ…ああっ…」と鳴る呼吸を顔面に浴びた俺は再びその力を緩めた。

すると「ああああああああっ!」と叫んで身体を落とした松島さんは、力いっぱい俺の両肩を掴んで呟いた。

「…も、もっ…もうだめ…。つぎっ、つっ、次でもう…わたし…だめ…」

それはやはり俺を代弁する言葉だった。

そこまで誰かと感覚を共有した覚えがなかった俺は、その言葉にどうしようもない感激を覚えた。

すると、すでにこれ以上ないくらい硬く熱くなっていた屹立にさらに全身の血液が集まっていくのを感じ、すると松島さんはそれを察知したように「…ぁぁ…ぁぁ…川瀬くん…川瀬くん…」と、すがるように俺の名前を呼んだ。

頭に血が回らなくなっていた俺もまた「松島さん…。…松島さん」と目の前の人の名前しか口に出せず、勝手に力の入った五指と持ち上がる身体から伝わる刺激に最後の抵抗をしながら、松島さんの姿を見つめた。

すると三たび屹立が入り口に引っかかり、その身体の動きが止まった瞬間、焦点の合ってない松島さんの瞳と、はっきり、目が合った。

その顔はすでに表情を作る力もなかったが、その瞳は俺を見つめて、優しく、温かく、微笑んでいた。

なのですっかり安心した俺は五指から力を抜き、二人を包む絶叫に全身を浸しながら、自分の全てを彼女に預けたのだった。

ーーー

けたたましく鳴る携帯の着信音にまぶたを開くと、頼りない梅雨の朝日にカーテンがぼんやりと曇っていた。

薄暗い室内に目を落とした俺は、床に落ちた自分の携帯が鳴っているわけではないことを知ると、そのまままぶたを閉じて松島さんに声をかけた。

「松島さーん…電話ー」

「…んー。…いいよー…無視して」

それならいいか、と思った俺が、消えた着信音に安心して眠りに就こうとすると、間髪入れずに再び着信音が鳴り響いた。

背後で「ああもう!」と低い声が聞こえて、その気配が俺をまたいで携帯をふんだくると、それは寝室の向こうのトイレの中に消えていった。

誰だろう、こんな時間に。

職場で何かトラブルでもあったのかな。

そんなことを考えながら眠りの浅瀬に揺蕩うていると、寝室とトイレの扉二枚を隔てた遠くから、苛立った声が小さく聞こえた。

やっぱり何かトラブルがあったのかな。

社員ってやっぱり大変なんだな。

半分眠った頭でそんなことを考えていた俺は、扉を開いてこちらへ歩いて来る気配に向かって呼びかけた。

Categories
未分類
Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です