はじめやんちゃで馴れ馴れしくて苦手だったケンジだが、もう親しくなっていた。
ぼくがせっちゃんと”付き合ってる”とかいうことは学年で噂になっていないからぼく以外の子には話さないみたいだ。口が堅い。それに倉庫でおじさんに見つかりそうになった時もぼくをかばってくれた。男らしい。
馴れ馴れしいというのも人懐こいということで、実は思ってたよりもいい奴だった。
「(でも無茶するんだよな。中学生に平気でスカートめくりするし、あの一升瓶の件は本当に勘弁してほしかった・・・)」
・・・
その日、授業が終わって校門を出たとき、ケンジが背中の方からぼくのランドセルをつかんで話しかけてきた。
「なあぺん太、女って穴が3つあるの?」
「えっ、何?」
いきなりランドセルをつかまれて危うく転ぶところだった。
話しかけたのがケンジだから、身体の下半身のことを言ってるんだろうということはわかった。だが、ぼくはそのときまで女性の下半身の穴の数は2つだと信じていて、何の疑問も持っていなかった。
「2つだよ?おまたのことだよね?」
ぼくはいつもパパと妹といっしょにお風呂に入っている。妹のおまたも何度も見ているので間違いない。
「前の方にたてすじがあってそれがおしっこの穴、うしろの方にうんちの穴。その2つ。」
「でも”おまんこ”もあって3つだって言うんだ」
ケンジは自信がなかった。いつもいっしょにいる友だちから聞いたらしく、あまりよくわかってない。
ぼくも”おまんこ”という言葉は知っていた。原っぱに捨ててあったコミック誌に書いてあった。
「ああ、”おまんこ”ね。”おまんこ”っていうのは、たてすじのことだよ。男はおちんちんで女はおまんこ。形が違うから呼び方が違うんだ。」
ぼくは丁寧にケンジに教えてあげた。ケンジは女の兄弟がいないから知らなくても無理はない。
「いつも見ているからね」
見るチャンスがなくて友だちの変な話に混乱しているケンジに憐れみを覚えた。
ぼくは、せっちゃんが原っぱでおしっこしてるのを、真正面ではないにしてもそれに近い角度から見たことがあって、そのとき、たしかにたてすじからおしっこが出てた。たてすじは妹と同じだった。
それにひろしくんと遊んでる途中トイレにいきたくなって縁側から上がったとき、トイレの戸を開けたら知らない女の子(せつ子)がおしっこしていてびっくりした。
「(あのおまたは白くてすべすべしてきれいだった。おしっこもキラキラ光ってた)」
あらためて鮮明に記憶がよみがえった。あれほど間近で確認できたことはない、明瞭だった。
確実にたてすじからおしっこが出ていた。記憶に残るその映像には一片の曇りもない。疑いようもなかった。
ぼくは、ケンジのために話を整理した。
「うんちの穴は、男も女もいっしょ。おちんちんは男と女で違う。いいよね?」
「男がおしっこするところが”おちんちん”、女がおしっこするところが”おまんこ”。納得した?」
ぼくは図書館でよく本を借りて読んでいて、ケンジよりも頭がいいし、女の兄弟や友達もいるからこんなことでも知識が豊富だな、とちょっとだけ得意だった。
それで終わりと思った。ところがケンジが食い下がった。
「いや、”おまんこ”っておちんちんを入れる穴なんだ」