ぼくを押し倒した妹は、今まで抑えていた思いが一気に溢れたかのように何度もキスして、僕の胸に頬を当ててぼくの背中に回した腕でぎゅっと抱きしめた。
でも、ぼくの反応がなく、応じられるような精神状態ではないことに気づいた。
「・・・」
ぼくの無反応のせいで少し冷めてしまい、そのままの態勢でしばらく何か考えていた妹は、こわいことを言った。
「おにいちゃんがエッチな漫画を隠してたこと、パパとママにばらそうかなー。実は妹のわたしをエッチな目で見ていたって」
「!?」
せっちゃんを裏切った罪の意識に浸っていたぼくは、現実に引き戻された。
それは冤罪だ。妹をエッチな目で見るなんてことは今まで全然、いや、ほとんどなくて、むしろ着替えるときには部屋を出るほどエチケットを守っている。
ただ、たまたま買ったロリコミックの半分近くが妹ものというのも事実。その本をきっかけに妹を異性と認識したのも事実なので、パパやママがそう判断をくだす可能性があるのが厄介だ。
「幸せな家庭が崩壊するかもなー。」
聞こえよがしに、妹の一人芝居が始まった。
ママ「こんな子に育てたつもりはないわ」
パパ「おまえの躾がなってないからだろう」
ママ「あなただって仕事ばかりで、家庭のこと顧みなかったじゃない」
パパ「俺は家族のために必死で稼いでいるんだ」
ママ「私だってパートも家事もこなしてたのよ。それなのに毎晩一人慰める日々」
パパ「俺だって会社でうっかりママの裸を想像して、立ってるのを隠すのが大変なんだ」
ママ「私たちもうダメかもね」
パパ「もう、やり直せないな」
一人二役の声まねで、内容的にリアルなところもあるが、一部ロリコミックの影響が出ている。
「パパとママは離婚ね、確実に。おにいちゃんと私は別々に引き取られて離れ離れになる」
「(いやいや、全然確実じゃないし。その展開ならパパとママは十分やり直せそうで、離婚とはならないだろう)」
ストーリー展開が雑で突っ込みどころもあるが、面白いのでそのまま聞いていた。
「片親家庭になった私は、反抗期で自暴自棄になる。髪を染めて、チャラい誰かのものになっちゃう。」
“髪を染めて”の部分で、きくちゃんのことが浮かんだ。
小6のときに隣の席で優しくて可愛くて好意を抱いていたのに、中学生になって髪を染めて口紅を塗るようになり、つよしに暴行されてしまった。つよしに強い憎しみを覚えた。
「そして、そいつにタトゥーにピアス入れられて、毎晩地下室で鞭で打たれるんだ。」
思わず吹き出した。
あのロリコミックの中に、そんな話もあった。
今こそ既成事実化するチャンス、もう一生チャンスは訪れないとでもいうように、妹は訴えるような目でぼくを見た。
「(ねっ、だからえっちしよ?)」
こんなにもぼくを愛してくれるちょっとお馬鹿な妹がとても愛おしい。
ぎゅっと抱きしめる。せっちゃんに対する罪の意識は消えていた。
気持ちが伝わったみたいだった。安らかに目をつぶって抱かれている妹。
「ほんとうに由美は可愛いな。」
絶対にきくちゃんみたいなつらい思いはさせない。
「好きだよ」
ちゅっ
2段ベッドの一階で抱きしめ合ってキスを続けた。自然な幸福感をおぼえていた。
ぼくは意外と冷静だった。心が落ち着いていて、この後どういう風に進めればいいかな、と考える余裕まであった。
とりあえず抱きしめ合ってキスしていれば十分気持ちいいので、無理に先に進める必要はない。
そのうちママも帰ってくるかもしれないし、妹から求められて勃起しちゃってから考えよう、と思った。