天罰により1年間の禁欲生活に突入する事なってしまい、そこで思い知る事になる彼女の大切さ。

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翌朝目がさめると喉がガラガラです。昨晩、カラダが冷えたまま寝てしまったせいか、身体もだるく熱がありそうです。

しかし、体温計がないため熱があるかどうかも分かりません。どうやら、ここ数日身体を酷使したうえ、昨晩カラダを冷やしてしまったため調子を崩してしまったようです。

トイレに行こうとしても身体が重く、立ち上がるのも辛い状況です。

今日は午後からスタンドのバイトが入っていましたので、とりあえず薬局で風邪薬と、当時発売されたばかりの「24時間戦えますか?」のフレーズで売り出し中のドリンク剤を飲んでスタンドに向かいました。

調子を崩し思考能力の低下した私には、この時のにはなぜか「休む」という発想はありませんでした。

スタンドに到着後、主人に「今日は体調が思わしくない」と伝えると、「今日の配達はいいから、夕方までの給油だけお願い」と頼まれ、重い体にムチを打って作業しました。

そして夕方暗くなってきた頃、主人が配達から帰ってきた2トンローリーのタンクに給油しようとして、タンクに登るハシゴに足をかけて、ハシゴを見上げた瞬間、目の前が真っ暗になって倒れてしまいました。

倒れた時、誰か聞き覚えのある女性の声で「エンちゃん。エンちゃん。」と名前を呼ばれたような気がしましたが、「この声だれだったかな?」と思い出せないまま気を失ってしまいました。

その後、どれくらい時間が経ったか分かりませんが、気がつくとそこにはボンヤリと見慣れないけどどこか懐かしい天井と四角い照明が見え。しかも、ベットの両隣がカーテンで仕切られています。

そう、ここはどこかの病院のベットの上です。しかも、私が目を覚まして真っ先に見えたその人は、以外にも以前パンクでお世話したバスガイドの夏帆でした。

夏帆は、私が目を覚ましたのを確認すると「あっ、目覚ました。」と言って看護婦さんを呼びに行ってしまいました。

私は、なぜか頭に包帯が巻かれ後頭部がジンジンします。更に左腕に点滴が刺さっていて、更にアソコもジンジンするので、以前事故で入院した時と同じく尿道にカテーテルが刺さっているものと思われます。

また、自分の身体を見ると見覚えのない赤いチェック柄のパジャマを着ていました。しかも、チョットキツめで手足が短くどう見ても女性ものです。

また、着ているシャツとパンツまで見覚えのないもので、知らない間に誰かが着替えさせたようです。

そこへ看護婦を連れた夏帆が戻って来ました。

私が体温など計られている中、夏帆は

「わたしガソリン入れに行ったら、トラックのハシゴを登るエンちゃんがいて、声かけようとしたらハシゴから落っこちて、起き上がらないんだもん。びっくりしちゃった。」

「声掛けても気がつかないから、店の人が救急車呼んでここに運んだんだよ。」

「しばらく、ここにスタンドの人いたんだけど、今日は給料日で忙しくなるからって、わたし看病頼まれて。」と、事の説明を夏帆がしてくれました。

続けて、検温していた看護婦から「倒れた時頭打ってるみたいだから、様子を見て入院3日ぐらいかな、って先生が言ってました」と告げられました。

私が、今来ているパジャマのことを聞こうとした時、再び夏帆が

「エンちゃんが救急車で運ばれた時、一旦寮に戻ってパジャマ持ってきて、看護婦さんと着替えさせたんだよ」と教えてくれました。

私が、「パンツも?」と尋ねると、

「もちろん。」と言い、続けて小声で「あんまり立派じゃなかったけど」と囁きます。

続けて「アソコに管刺すの凄く痛そうで見てらんなかった。痛くない?」と尋ねます。

私は、「僕のホースあんまり長くないし、前に事故で入院した時に慣れちゃったみたい。でも、相変わらずジンジンしてるよ。」と伝え、気になっていた「このパジャマって?」と尋ねると

「寮の先輩に借りたやつ。とても、私のじゃ無理っぽそうだったんだもん。」

「中のシャツも?」と更に尋ねると

「もちろん。でも、パンツはオンナモノって訳にはいかないから、それだけは下の売店」

と教えてくれました。

私はいろいろと世話になった夏帆にお礼を言うと、

「エンちゃん、前に自分で言ったじゃん。困った時はお互い様って。」

と、夏帆は言い切ります。

更に、看護婦さんがいなくなった後、夏帆が耳元で囁きます

「エンちゃん。胸元に何個かキスマーク付いてたけど、彼女ってどんな人?」と。

続けて、「あ〜あ。告白前に失恋か〜。密かにエンちゃん狙ってたんだよね〜。凄く残念。あっ、先輩がね。」と、ため息をつきます。

そこに、偶然にも夏帆の背後に現れたセーラー服のマコトの姿がありました。

私は、夏帆に「僕の彼女ってこんな人です」と背後にいるマコトを紹介しました。

夏帆は振り返り、私とマコトを交互に見ながら、「コレって、犯罪だよね。わたしも1年前はこれ着てたけど。」と、声が心なしか震えています。

するとマコトが私の隣に来て「ソフトボール部でピッチャーやってた小比類巻先輩ですよね。先輩有名人なんで知っています。あと、黄色いクルマ乗ってますよね。時々見かけます。」

続けて「あっ、はじめまして。わたしは、ただ今紹介のあった犯罪被害者の工藤です。マコトって呼んでください。」と自己紹介しました。

更に、「小比類巻先輩。なんでこんなところにいるんですか?」と尋ねます。

そこに私が割り込み、先ほど夏帆から聞いた事の顛末を説明すると、

「要するに、エンちゃんがドジだったって事で良いですか?」と、マコトが締めくくりました。

そこへ小さな花束と、ショートケーキの箱を持ったどこかで見たことのある女性が現れ、そこにいるマコトの姿をガン見しています。

それを見た夏帆は「こちら先ほど話に出た、パジャマ貸してくれたこだま先輩です。エンちゃんが、1年生の時に行ったオリエンテーリングで3号車のガイドしてました。」と紹介しました。

夏帆の説明のよると、オリエンテーリングの時に私と一言二言会話した事を覚えており、気になっていたというものでした。

するとマコトは「わたし、来月転校しちゃうんで、それからはエンちゃんフリーになります。エンちゃん次第ですが、チャンスです。こだま先輩。」と、本気なのか冗談なのか分からない事を言い出します。

そう言われたこだま先輩はキョトンとしています。すると、突然座っていた丸椅子から立ちあがり「ちょっといい?」と言って、夏帆を廊下に連れ出しました。

閉まりきれていない病室の扉の外から、二人の会話が聞こえて来ます。

「なんでそういうことになっているのよ!花とケーキ買って来てって頼んできたの小比類巻じゃないの?」

「こだま先輩すいません。急に状況が変わっちゃいまして。そういう事にしていおいてください…」

それを聞いた私は、何がどうなってそういう事になったのか全く考えが及びません。

その後、夏帆が生け花を花瓶に挿してくれ、更に私からパジャマを貸してくれたこだま先輩にお礼を伝えました。

そして、お見舞いのショートケーキを食べながらいろいろ雑談していたところ、以前クルマ関係で相談に乗ったいろんなバスガイドが制服のまま集結し、すごい事になってしまいました。

急にたくさんのバスガイド達に囲まれ、最初驚いていたマコトでしたが、みんなに囲まれてとても楽しそうなマコトの姿になぜか安心しました。

その後、検温に訪れた看護婦も相まって、セーラー服とバスガイドの制服と看護婦の白衣が一堂に会し、制服フェチの私にとって夢のコラボでした。

翌日も、昼間から今日たまたま休みという夏帆が訪れ、雑談し暇を潰していました。すると、マコトの姉のアキラから事情を聞いた織田も現れ、丸椅子に座っている夏帆のすぐ前で突然片膝をついて、更に夏帆の手を握り夏帆の目をジッと見つめると

「ああ、何という神様のイタズラ。僕の心に決めた女性がいなければ、僕は今ここであなたにすぐにでも告白していたのに…。こんな魅力的な女性は、世界広しといえど滅多にお目にかかれないのに。ああ〜なんてことだ。僕は今、神様を恨みます…」

と、大真面目に夏帆の目を見つめながら言い切りました。

言われた夏帆は顔を真っ赤にしながら、「チョットやめてくださいよ〜。わたし昨日、告白前に撃沈しちゃってるんですから。」と応えました。

続けて「でも、多分女の子は大真面目にこれやられると、コロっといっちゃうかもね」と付け加えました。

私は、平然とそれを言ってのけた織田に

「織田。これでアキちゃん落としたの?」と尋ねると、織田は

「うん。そのとおり。でもこれって、物凄い諸刃の剣で、途中で噛んじゃったり、にやけたり、目をさそらしたりすると、ただの変な人になっちゃうから物凄く危険なんだ。」と教えてくれました。

そして、「俺ってこう見えても、高校時代演劇部の部長だったんだぜ。特に演目は劇画タッチなやつが好きだった…。でも、部員少なかったんで、大道具とキャスト掛け持ちで大変だったけど、楽しかったな〜。」と教えてくれました。

この時織田は、スーパーやイベント広場でやっている戦隊ヒーローモノののバイトをしており、その動きが素人離れしていると思ったのは、そのせいだったと一人納得していました。でも、今のやり取りで何か私の心に引っかかるものがあります。それは、

夏帆の言った「告白前に撃沈?」「それって昨日マコトを紹介した時のこと?」と心の中で思いましたが、思い過ごしであることを願って、あえて話題にしませんでした。

そんな事のあった日の夕方前、一般診療の終わった病院で脳波やCT検査など行い、異常が確認できなかったという事で明日退院する事が決まったその夜、

「今日はマコちゃん来ないのかな?」と考えていた時、ひょっこりマコトが現れました。

「昨日給料日だったんで…」と言って持ってきたシュークリームを食べているとき

「僕の歴史上、昔から何かある節目にシュークリームが登場してたんだよ。まさかここでも登場するとは思わなかった。」と伝えると、

「エンちゃん、密かに甘党だよね。なんか、わたしといる時は格好つけてるけどお見通しだよ。」とマコトにはバレバレでした。

そして、マコトは急に真剣な目をして「わたし、これから先バタバタして伝えそびれちゃったり、直前になると多分冷静ではいられなくなるから、後悔する前にここで伝えるね。」と、座っていた丸椅子から立ちあがり

「わたしは、あなたの前からチョットいなくなります。でも、1年後にはきっと戻って来るつもりです。いや、絶対戻ってきます。どうやれば戻ってこれるかずっと考えていましたが、ここ何日かでなんとなくそのプランが見えてきました。」

「でも、その1年間、あなたを縛り付けておくつもりもありません。私と違う彼女作っちゃっても構いません。でも、1年後再会した時もう一度告白してもらえるような女性になります。」

「ありがとうと、ごめんなさいと、手紙の返事は早い方がいいと言われてますが、手紙のやり取りが結局エンちゃんを縛り付けておく事になるので、手紙もたまにに控えます。」

「最後にお願いがあります。わたしが旅立つまでの間は普通に接してください。気を使われるとかえって迷惑です。」

「そして旅立つ時に、行ってきますって言うので、行ってらっしゃいと言って送り出してください。」

と言ったマコトは、最後は涙で顔がグシャグシャでした。

翌日退院した私は、1日だけ休みをもらうとすぐにスタンドのバイトに復帰しました。マコトは不定期ですが、だいたい月・水・金と日曜日にはバイトに来ます。働く姿はいつも通りですが、1日、また1日とマコトに逢える機会が減ると考えると、とてもせつなくなります。

そんな最中、3月の彼岸に差し掛かった頃、私の夢に中学校の制服姿のあおいが出てきました。その夢の中のあおいは、笑ったり怒ったりと表情は豊かですが、何を言っているのかその声が聞き取れません。しかも、なぜかその光景はモノクロです。

でも最後に「エンちゃん、やっと1年過ぎたけどあと3年なんて待ちきれないよ〜。逢いたいよ〜。エンちゃん…」と言ったような気がした瞬間、フッと消えてしまいました。

そして、私が「おいちゃん。僕が悪かった。ちょっと待って…」と手を伸ばしたその格好で目が覚めました。

その時私は、「多分これが、神様が私に下した天罰なんだ。あおいや、ふたばに辛い思いをさせてしまったのと引き換えに、今度は毎日でも逢いたい人がどこかへ行ってしまう。これは、まさしく天罰。」

でも、永遠に遠くに行ってしまったあおいとは違い、1年待てばきっと戻ってくるとマコトは言っています。

よくよく考えれば、1年待てば逢いたい人が戻ってくるかもしれないというチャンスを残してくれたのもまた神様です。

そこで私はその「天罰」を前向きに捉え「試練」と読み替える事にしました。また、その試練は見方を変えれば、他の女性に対する「禁欲」という事にもなります。

「神様だってどこかで見ていてくれるはずだ。その試練(禁欲)に耐えれば、絶対神様は微笑んでくれるはずだ」

私は心の中でそのように解釈し、自分に言い聞かせ、自分を納得させる事にしました。

私がそのように悟りを開いたかのような胸中となったその日は、マコトがスタンドのバイトを辞める日でした。閉店後社長から、給料と頑張ったお礼と餞別を兼ねた金一封を渡されるとマコトは

「今までありがとうございました。凄く楽しかったです。皆さんも無理しない程度に頑張ってください。無理すると誰かさんのようになっちゃいますからね。」と言って笑いを取ります。

その後社長に見送られながら、マコトをアパートまで送っていくとなぜか織田のアコードが停まっています。

私とマコトがそのアパートをそっと覗くと、開いた玄関から明かりが漏れ、それに照らされるように、なぜかスーツ姿の織田が玄関先で土下座をしています。そばでは、マコトの姉のアキラが織田の襟を引っ張り上げようとしています。

しかも、その玄関ではマコトの母親らしき人が腰に手を置き織田に何かを言っています。

私とマコトがその会話を聞こうと更に身を乗り出すと、織田は二人に引きずられるように玄関の中に入れられ、そのドアがピシャリと締まりました。

マコトが「どうしよう。コレって、部屋の中、多分修羅場だよね。ちょっと帰れないよね。」と言って、私の袖を引っ張り、織田の車の脇に停めてあるハチロクまで私を引っ張ります。

ハチロクに乗り込んだ私はとっさに「マコちゃん電話だ。電話。何気ないそぶりで、今から帰るから何か買ってく?なんて電話して探り入れてみて。」と提案しました。

そこで、公衆電話のある近所のコンビニまでクルマを走らせるとマコトが家に電話します。そして何か話し終えるとクルマに戻って来ました。

そして「お母さんが、何かお茶菓子買って来てって。それでね…」と言ったところで話が止まりました。

私が「それでどうしたの?」とマコトのカラダを揺すると、

「エンちゃん連れて来なさいって…。」といいました。

私は、頭から急に汗をかきはじめ、心拍数が上昇したのが分かりました。

「ちょっと、心の準備が…。土下座ってどうするんだっけ?」なんてバカな質問をすると、

「お茶菓子買うんでしょ。こう言う節目には何が登場するんだっけ?」とマコトが急かします。

私が、シュークリームを買うと

「ホレ。帰るよ。」と、なぜか先ほどまでと違ってさっぱりした口調で私に言います。

その後マコトのアパートに着き、マコトが玄関を開け「ただいま〜」と声を掛けるのと同時にマコトがコッチを向き手招きします。

私がマコトに続いて、「お邪魔します。」とかしこまって玄関に入ると、なぜか上機嫌なマコトの母さんが私を歓迎します。

玄関から、台所を抜け和室に入るとなぜかスーツ姿の織田がコタツにあたりながら、「よっ、どか。奇遇だな。」と右手を挙げます。

また、織田のとなりでマコトの姉のアキラがぺこりと頭を下げながらお茶を飲んでました。

するとマコトの母さんが、「はじめまして。マコトとアキラの母です。エンちゃんのことは、マコトではなくアキラから聞いていてよく知ってますが、マコトは何も言ってくれませんでした。」と自己紹介しました。

私が自己紹介しようとした時、マコトが割り込んできて「何?母さん知ってたの?秘密だと思ってたのは私だけ?」と力が抜けた様子でした。

改めて「初めまして。僕がその話題の風谷です。みんなからはエンちゃんとか。どかちゃんとか呼ばれています。マコトさんとおつきあいさせていただいておりまして…その、ごあいさつが遅れましてすいませんでした。」と自己紹介しました。

すると、マコトの母さんは「ま、とりあえずここ座って。」とコタツを指さします。

私はマコトと並んでコタツに入ると、買ってきたシュークリームをテーブルに並べます。

「すいません。わたくしごとながら、此処一番の時はシュークリームと決めておりまして…」と伝えると、そばで見ていたアキラが、「やっぱりそうでしょ。」と言っています。

何がやっぱりかは分かりませんが、とりあえず歓迎されている事が分かり安心した時に、マコトの母さんが

「アキラって、妹のカレシの話はするんだけど、自分のカレシの話ってしないんだもん。マコトのオッパイ急におっきくなっちゃって、そんな時アキラからその話聞いてやっぱりなとは思っていたんだよね…」

「そしてね。マコトのカレシの話ばかりするもんだから、アンタのカレシはどういう人か全然知らないから一度連れてきなさいって言って、連れてきたと思ったらイキナリ土下座だもん。びっくりしちゃった。」

「さっき話してたの。アキラが織田さんと一緒になりたいっていう話聞いて、それ母さん認めたの。でも、織田さんがキチンと就職して生活基盤築いてからって条件付けたけどね。マコトはどうする?」

「でも、マコトはまず高校きちんと卒業する事だね。それまでは母さんの責任だからね。」

「それで卒業してからにはなるけど、セーラー服パリパリにしちゃったエンちゃんどうする?」と、マコトの母さんが急に私に話を振りました。

やはり母親です。あの時制服につけてしまった液体の存在は完全にバレていました。

私は、「責任取るとかいう義務感や、絶対なんて言葉はあてにはなりません。でも、僕の心の中ではマコトさんが例えどこにいたとしても、いつか絶対迎えに行くつもりでいます。もちろん、きちんと就職したうえでの話ですが」と答えました。

すると「やっぱりエンちゃんだよね。このオトコ嘘つけないんだよね。真っ先に責任とか絶対っていう言葉否定しちゃったもんね。でも、マコトは北海道連れて行っちゃうんだよ。それでもいいのかい?」と急に声のトーンが低くなりました。

私はとっさに「決してマコトさんの悲しむ結果にだけにはしません。」とだけ答えました。

すると、「うん。分かった。要は本人次第ってことだ。」と私にまるでプレッシャーをかけるかのごとく言い聞かせます。

続けて「あれ。二人とも結婚したら、織田さんとエンちゃんも兄弟ってことになるよね?」

「エンちゃん。織田さんのこと兄さんって呼べる?」と畳み掛けるように言います。

私が「その時になったら努力します」とだけ答えました。

その日は、「どうせなら泊まっていったら」というマコトの母さんの提案により、未成年のマコトと、妊婦の母さん以外はお酒が入り、マコトの小さい時の話や、アキラの近況などに話の花が咲きました。

アルコールが回った私が眠くなってきた頃、突然アキラが服を脱ぎ始めました。更には織田や妹のマコト。私にまで抱きついてキスをしてきます。織田は止めていますが、アキラの母さんは「この子、酔うとコレだからね。身内の恥は身内だけってって言うけど、みんな身内になるからいいか」なんて笑っています。

すると、アキラは全裸になりタオルケットに包まり織田にくっついています。しかも、先ほどマコトの母さんに渡されたタオルケットで包まれる時チラッと見えたアキラのあそこも、マコトと同様にパイパンです。

前に、マコトは姉さんも変態癖があると言っていましたが、それは「酔うと服を脱いで、手当たり次第キスをしてしまう」というものでした。

以前、思いがけない吹雪でホテルに泊まる事になった時に、お酒を飲んだアキラと織田が泊まった部屋を翌朝訪問した際、織田が「燃え尽きた」状態になっていたのも合点のいくと、この時思いました。

この後織田は、「やっぱりアキちゃんには、人前で絶対酒を呑ませられない」と真剣に言っていました。

そんなとても楽しい時間を過ごし、その後みんなで川の字になり眠りにつきました。私はマコトとマコトの布団で寝ましたが、その布団からするマコトの匂いが心地よく、惜しいことにもあっという間に寝落ちしてしまいました。

そんなことのあった数日後、マコトの高校の終業式の日を迎えました。

その日は、校門前までハチロクで迎えにきて欲しいというマコトの要望により校門前で待機しています。

すると、終業式が終わったらしく生徒が校門から出てきました。しかも、私のハチロクをジロジロ見ながら歩いています。しかし、いつまでたってもマコトの姿が現れません。

しばらく経ってやっと現れたマコトは、周りを沢山の女子生徒に取り囲まれ身動き取れない状況です。見るとその取り巻きがみんな号泣しています。多分、この集団はマコトが以前言っていた吹奏楽部の仲間かと思われます。

恐らく、マコトは今の今まで誰にも何も言っていなかったようで、別れの記念品的なものは何もありません。

マコトはやっとの事でその集団から抜け出し、振り返って深くお辞儀すると大きく手を振ってこちらへ走ってきました。

後ろで「マコト〜」と叫ぶ幾重の声が聞こえて来ます。

すると、ハチロクに飛び乗り「エンちゃん早く出して。今振り返ったらわたしダメになりそう。だから、早く」と言って急かします。

私のハチロクは、沢山の高校生をかき分けるように乾いた排気音を残してマコトの高校を後にしました。

そして、マコトをアパートまで送って行き着替えたマコトと、マコトの母さんを一緒にフェリーターミナルまで送って行きました。残されたアパートは、アキラが引き続き住むため、家財はそのまま残ります。

ターミナルに着くと、すでに搭乗手続きが始まっています。

マコトの母さんが大きなバッグを持って搭乗手続きをしている時、マコトが「ハチロクに私の制服一式置いておいたから預かっておいて。帰って来た時返してね。旭川じゃ別なの着るんで必要ないから。」と制服を私に託しました。

そして、「エンちゃんと出逢って今まであっという間だったね。いろいろありがとうね。」と泣きながら言いました。

私も「僕の方こそ、マコちゃんに出逢えてよかった。そうじゃなかったら、人間ダメになってたかも…。マコちゃん。死んじゃダメだよ。何があっても。」

私は、大学に進学する時に地元に置いて来て、待たせている間に亡くなってしまったあおいとのことが頭を巡ります。

「もう、二度とあんな思いはしたくない…」

「死んじゃったら、マコちゃんと一緒になる僕の夢が叶わなくなっちゃうから…」と私も泣きながら言います。

するとマコトも「それはエンちゃんの方。クルマの運転気をつけてね。死んじゃったらエンちゃん愛してるって言えなくなっちゃう。」と言いながら手を振り搭乗口へ消えて行ってしまいました。

そして、私がフェリーの停泊する岸壁まで行くとマコトが甲板で手を振っています。

私も手を振り返すと、いつもの間にかフェリーが動き出ししました。

すると、マコトの声で「行ってきまーす」と言う声が届きました。

私も「行ってらっしゃーい。」と返し、大きく手を振り答えました。

その後、だんだんとその姿が小さくなりしまい、最後にフェリーの汽笛とともに見えなくなってしまいました。

このあと少なくとも1年間は離れ離れです。夏休みなどに逢いに行けばいいとも考えましたが、前にふたばが「今は、お互いやらなければならい事がある」という言葉を肝に銘じ、敢えて逢わないという選択肢を選びました。

それはマコトも承諾済みです。マコトが転校した先で私より魅力的と思える男子がいたとすれば、それは私の負けです。勝負するつもりなどさらさらありませんが。

また自分も、この先マコトより魅力的な女性に出会うかもしれませんが、この段階でマコトより魅力的な女性はいないと断言できます。そのことから、黙ってマコトが戻ってるのを待つ事にしました。

多分、これが私に降された本当の「天罰」いや「試練」ではなかろうかと思います。

地元に残して来て辛い想いをさせてしまった今は亡きあおい。

不用意に妊娠させてしまっても、私に優しい言葉をかけてくれるふたば。

神様がこの二人の辛さの代償として、この試練を私に課すとすれば、これからは私と神様の根比べです。

この後、どんなことがあろうとも1年間マコトを待ち続け、マコト戻ってくることだけを信じて耐え忍んでやろうと心に誓うのでした。(終わり)

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