何年も前の、とある大学のバスケ部でのお話。
自分が2年生の時、部は久々に勝ち抜き、入れ替え戦までたどり着いた。
2部昇格をかけた大一番である。
2・3部とか一般の人が聞くと大したことないと思われるだろうが、
2部のチームでも監督・トレーナーやら栄養管理士まで専属で置き、
外国人留学生を選手として揃えてるところもある。
うちのチームはどちらかと言うと中堅~弱小ではあるが、レギュラーともなれば、
高校総体クラスが顔を揃ってるくらいなのだ。
登場人物は、4人。
自分は総体にも行った経験もあり、2年にしてベンチ入りで準レギュラー。
6割くらいはスターターだ。
A君、彼も高校バスケ経験者であり、ベンチ入りしたり外れたりの、
対戦相手や欠員1名状態で主力選手の休憩交代要員だ。
一度格下相手の試合にスターターとして抜擢されたが、
前半で交代させられてから出番がない。
B君、中学・高校と運動部にいたが、バスケは高校で同好会にいただけ。
フィジカルは群を抜いていて、赤丸急上昇中。
ベンチ入りを果たすが、こちらも主力選手の休憩交代要員の域を出てない。
同期の3人は、それなりの成功者であり、自然と仲も良くなったのだ。
もっとも逆にライバル同士として分裂しなかったのは馬が合っていたのだろう。
女子マネのハルカは2年であり同期である。
しかし当然のごとく体育会系の部内では我々より身分も立場も上。
女子マネも3人入ったが、1年経って残ったのはハルカ1人と、先輩を合わせて3人。
それと元選手の男子マネが2人の5人体制だが、それでも多忙なのである。
女子マネというとドラマや漫画では、オマケの印象が強いけど、
1部のチームともなればマネージャーは男子ばかりで女子はいないのが普通だ。
逆に我々のような、3部常連の弱小チームの女子マネともなれば練習時のお手伝い
やらトレーナーの物まねでテーピングしたりアイシングしたり、当然の様に練習中の
飲料水の用意やら練習後の後片付けなどもある。
試合や交通手段の手配から宿泊先の確保など挙げればきりがない。
むしろこの程度のチームだとマネの仕事はハンパないものがある。
ハルカは、そう、女の子を10人並べれば可愛さ・綺麗さ・スタイル共に3・4番目、
と言ったところ。しかし性格がいいのだ。
仕事はてきぱきこなす。
エヴァのアスカ並のボーイッシュな面もあるが、それでいて女の子らしい。
男を立てることを絶対に忘れない。
上級生やレギュラーの人たちだけに優しい、
多くの女子マネはそんな感じになってく場合が多いのだが、
彼女は全員に対して平等に接するところがいい。
レギュラー一歩手前の人、全然無理そうな人にも愛想を振りまく。
部員もそういった事で部内の雰囲気をまとめてくれてることに、深く感謝してるんだ。
女子マネの鏡、つーか、彼女候補、いや嫁さん候補として、
男なら一度は考えるだろう女性なのである。
冗談は通じるが悪乗りしても、つっこみ入れても乗ってこない。
男子との距離の採り方が嫌味なく、それでいて上手いのだ。
本人の本意に沿っているかどうかは知りようもないが、
結果的にガードの高い女なのだ。
チャームポイントは何といっても笑顔。あの笑顔を見るときつい練習も耐えられる、
同じことを思っている部員は多いハズだ。
以上、前置きが長くなった。大一番の入れ替え戦だ。
観客も多いし、OB達も結構応援に来ている様だった。
優勝争いとか入れ替え戦は、ホントに白熱するのだ。
しかも勝てば創部以来2回目の快挙だから尚更だ。
試合では、自分はスターターだったが、バテたため後半途中で退いた。
A君は前半最後の5分間のみ、接戦の前半最後を走り回ってのプレス役だった。
普段なら出場機会はないのだが、格上相手の総力戦だったので、
出番が回ってきただけではある。
B君は主将の休憩交代要員。
しかも前後半併せて10分ちょいの出場にもかかわらず、
守備に圧倒的な貢献をしていた。
しかもしかも、後半の交代中に、
終盤の厳しい場面で3ポイントを立続けに2本決め試合の流れを変えたのだ。
未経験の彼が必死の努力で得た数少ない機会に大仕事を見事やってのけたのだ。
自分のバスケ歴の中でも、奇跡に近いくらいのシンデレラストーリーだった。
負けて当然の相手に接戦の末の大勝利だった。
試合後、お決まりの祝勝会があった。涙と笑顔一杯の宴会である。
OBも結構いたので、総勢60名くらいであろうか。
大人数になると人の輪がいくつかに別れる。OB・4年・3年の一部と女子マネ、
3年と2年の主力、その他辺りだろうか。
その後2次会で、第一グループが2つに別れて
その一方から自分とシンデレラボーイに声が掛かる。
当然A君も一緒。
10名くらいでカラオケに行ったがその中にハルカもいた。
気を良くしていたOBが、奢るから3次会へ飲みに行こうと言う。
正直、激戦の疲れで、体はまだいいが精神的にまいっていたところがあり、
言葉を選んで辞退の意を伝えると、意外にもお疲れさんの一言で開放された。
3人でこれから大学のグラウンドへ行ってみようと話をした。
3人だけで感傷に浸りたかったのだ。
すぐに話がまとまり、駅へと向かおうとすると、立ち聞きしていた女子マネのハルカも、
一緒に行くと言い出した。
A君は自宅生だったが、他の3人は下宿生で大学の近くに住んでいる。
帰宅前に学校へ立ち寄るって話だ。
駅から電車、そして大学へと向かう。
その道中で、
ハルカ:お疲れさん、やったじゃないの、3人とも大活躍だったよ。
(2人の肩を両手で叩きながら。酒は入っていたけど、かなりテンション高めだ)
自分:活躍したのは2人だけだろ。
A君:まさか俺抜きじゃないだろうな。
ハルカ:そんなコト言わない、言わない。A君だって前半最後を締めてくれたじゃない。
B君:そう言えなくもないな。
(B君はシュールな奴だが、こんな時にブラックするとは予想外だ)
ハルカ:ははっ。
(ハルカはいつもこうやって微妙な雰囲気を自然と和ませてくれるんだな)
A君:全員だよ。何だかんだいって3人揃ってベンチにいること自体、1年の時は想像できなかったから。
ハルカ:ホントそうだよねー。3人揃ってレギュラーだなんて、しかもこの快挙の立役者でしょ。まるで夢みたいね~。
(A君、ハルカの言うことはごもっともだ。自分も試合に出れてること自体凄いことだと思う)
自分:だから1人はレギュじゃ・・・・
ハルカ:ベンチ入りしたら正真正銘、レギュラーですから。
A君:そうだ、そうだ。
B君:うん、そうだな。一番夢じゃないかと思ってるのは自分だからなぁ。
自分:悪気はないけど、ホント奇跡のレベルだよ、B君はさ。
ハルカ:B君って頑張り屋さんなんだよねぇ。
(ちょっとむっとして)
A君:俺だって努力してんだぞぉ~。
一同:わかった、わかった。
(A君、ちょっとむくれる。少し間があいた後)
B君:俺達だけじゃなく、影でハルカちゃんも頑張ってくれたからね。
自分・A君:ほんとだよ、有難う。
ハルカ:どうも、でも選手の人たちほどじゃないから・・・・。
3人:そんなことない、ない。
(ハルカは少し照れて、珍しく返答に詰る)
他、他愛もない雑談の後、大学のある駅に到着した。
途中のコンビニでビール3本とュース1本を買った。
大学へ到着し4人で静まり帰ったグラウンドに向かう。
ほんとならバスケコートのある体育館が筋なのだが、
あいにく夜間は閉まっているからしょうがない。
はっきり言って、ハルカは女子マネだが、部のアイドルにして戦友なのだ。
違和感なく3人に溶け込んで、その4人でとりとめもない話を少し。
ビールを飲もうとしたが、寒い時期だったので自然と部室へ移動していった。
3人でビールを開け、ハルカはジュース。今日、何度目の乾杯だろうか。
いや、何度やってもいい気分だ。
ハルカ:おっめでとう~さん。
酒は半分以上醒めていた。しかしこれだけテンション高いハルカを見るのは初めてだっ。
選手並に真面目に裏方やってるからこそ人一倍嬉しいのだろう。
ハルカ:ほんと、やっちゃたね。
2次会までは上級生達もいたから、抑えていたところもあったのだが、
ハルカだけでなく分ら3人も開放感につつまれて勝利に酔いしれていた。
自分の事の様にはしゃぐ言葉が心に心地よく響く。
試合を振り返りながら、各場面での思い思いを話しだす。
何度か繰り返すと、やはりB君の大仕事は凄い、ってコトに話が落ち着く。
ハルカ:B君てやっぱ凄いよ。
ここでシュールなB君の目から一筋の涙が流れる。
B君:うっ。3ポイントはまぐれ、入った瞬間に驚いたのは自分の方だ。でも・・・・。
ハルカ:泣いてるの?
B君:いやっ、コレは汗だ、汗に決まってる。
B君らしく否定する。ハルカはこんな時の対応の言葉は持っていなかった。
ここでB君が暴挙に出た。うぉ~、興奮してきたと言いながら、
なんとズボンとパンツを脱ぎ捨ててちんちんを扱きだした。
自分:おいおい、なんだよ急に。
ハルカ:何やってんのよ~っ。
ハルカは女子だが、仮にも体育会系の女子マネである。
新歓コンパの芸で新人勢ぞろいを見てるし、そもそも普段の練習後にシャワーを
浴びた後全裸で歩き回ったり、そのまま部室で涼んでいる者もいるから、
別段何とも思わないだろうし、こちら側も気遣い無用だった。
むしろシュールなB君がいきなりなもんだから驚いてしまったのだ。
やはりB君も人間、余程嬉しくて仕方ないのだ。1人でやり始めるB君を傍目に、
何とハルカがこう切り出した。
ハルカ:B君頑張ったもんね、ご褒美にあたしがやってあげよっか?
そういう間にB君のを手にとって介助し始めた。
A君はあっけにとられている。自分も、まさかあのハルカがこんな行動に出るとは
夢にも思わない。
次の瞬間、自分はやばいと思い、部室内にあったスポーツ新聞を
B君の前へあてがった。
ハルカ:B君、気持ちいい?
嘘だろ、天使モードのハルカだよ。
B君は、意味不明の声を張り上げながら唸っている。程なく任務遂行となる。
自分はB君が羨ましくなり、
俺だってレギュラーで頑張ったんだ、チューしてと、お願いする。
ハルカは、ん~、しょうがないなぁ、と言いながら近づいてきてほっぺにちゅーしてくれた。
A君:みんなずるい、ずるい。僕も。
自分・B君:おまえはダメ。また今度だ。
ハルカ:可哀想じゃないの、そんなこと言って。
ハルカはA君へ近寄ってチューをしようとした。するとA君はちゃっかり顔を
素早く向き直って、こともあろうにハルカと接吻しやがった。
自分:なにやってんだよ。
少し笑いながらA君をしばいた。B君もむっとしているようだった。
叩かれたA君は、みんなが苛めるよ~、と言って今度はずけずけと頭を下げ、
ハルカちゃんのふとももに頬をスリスリしやがる。
当のハルカは、陽気にきゃはっ、とはしゃいでいる。
無邪気に笑っているハルカを見ていて、頭に雷光が走った。
(いつものハルカじゃない。どーかしてるよ)
自分はA君がスリスリしてる反対側からハルカの肩を抱くようにして、
ハルカちゃ~ん、とじゃれてみる。相変わらず笑い続けている。
接近しているハルカの体から、若い女の子のいい匂いがした。
自分:ハルカちゃんって良い匂いするね。女の子の体ってこんに柔らかいんだぁ~?
そういいながら、肩に回したのと逆の手で胸に軽く手をかける。
軽いイタズラ感覚のつもりだった。
それを見たA君は、向き直って顔面を両ふとももの間に顔を埋めながら、
ハルカちゃ~ん、と叫んでいた。
明らかにA君は自分とは違う意味で行動してると思われた。
B君は突っ立っていたが、その時点で何を考えているのかは不明である。
ハルカ:もう何なのよ。男って馬鹿じゃないの。
声が裏返っていて、動揺しているのが解った。
ハルカ:男3人に囲まれて、これじゃ逃げられないじゃない。もうっ。
この言葉でA君・B君の表情がはっきり変わった。
でも最後の少し怒ったような”もうっ”の言葉に怖気ついて自分と一緒に
ハルカから距離を採った。恐らく自分以外は期待なんかしてやしない。
確かに自分が少しだけ誘導したことは認める。
ただ交通事故並に偶然の事柄が重なって
ハルカが勝手に早とちりしてるだけなんだから。
普段のハルカだったらここで、
馬鹿じゃないの、早くどいてよ、主将に言いつけてやるから、と言ったハズ、
そう確信を持てる。
そして自分ら3人も大人しくなって、何事もなかったろう。
その日のハルカは違った。
勝利に酔いしれ精神が昂ぶっていたので、普段通りのまともな思考が出来なかった
のだろう。それとも3人で母性本能を刺激してしまったためなのか。
ハルカ:もうっ。
少し怒っているようだった。少し間を置いて、少し下を向きながら言葉が放たれた。
ハルカ:いいよ、好きにしても。ご褒美なんだからね、今日だけなんだからね。