中学1年の体育祭のときの話です。
当時僕は中高一貫校に通っていて、全校生徒は中高あわせて千人ちょっと、たしか女子のほうが少し多かったと思います。
僕たちが入学する前年の体育祭で、卒業生が教室棟に侵入して、黒板にスプレーで怪盗参上って書いたせいで?おかげで?僕が一年のときは、体育祭の間校舎への侵入は生徒も禁止されました。
その間使えるトイレは、体育館横の男女別トイレと、運動場前にある男女共同のトイレだけでした。運動場前のトイレは男女共同ということもあり、普段女子で使っている人は見たことがなかったです。
運動場で練習していた女子テニス部も体育館まで走って行ってましたし、何度か時代遅れのそのトイレの建て替え案は出たらしいんですが、結局僕が卒業して三年経つまで、そのままでした。男女共同とはいえ、古い印象もなく水洗で、耐震的な意味でもとくに問題がなかったからじゃないかと今は思っています。
体育祭当日も午前の最初の時間に一度運動場前のトイレに行ったときは、女子生徒は並ばずに、お年寄りだけがやってきて使っていました。ただ、先生たちにそんなこともわからなかったのかとあとで問い詰めた女子がいたと聞いたんですけど、全校生徒千人で女子の方が多くて、それに加えて親御さんたちもやってくるわけで、トイレは十時を過ぎたあたりから混雑し始めました。
運動場前のトイレにもちらほらと体操服姿の女子生徒がやってくるようになりました。友達と体育館横のトイレがやばいらしい、と聞いて見に行くと、長い行列ができていました。僕らの同級生もその中にいて、苦しそうにお腹を撫でていたのを覚えています。その横を回転率の速い男子トイレでさして待つことなく僕たちは用を済ませました。
昼前に放送で保護者の方は近くにあるスポーツセンターのトイレを使ってくださいって放送が流れていたんですけど、そのあとも学校内のトイレを使う大人はいて、混雑は解消されませんでした。生徒は体育祭中に学校外へ出ることは禁止されていて、中には外のトイレを使ったっていう生徒もあとからいたって聞いたんですけど、真面目に並んでた生徒のほうが多かったと思います。
あと、教室棟のトイレにはセ○ムが入っていて、ドア開けたら警報音が鳴り響くっていう噂を体育祭中何度か聞きました。そんなもの解除して使わせてあげればいいのに、とその体育祭にいた大勢が思ったと思うんですけど、結局、体育祭が終わるまで校舎には入るなといわれてました。
お昼ご飯を食べてから少しして、男子の騎馬戦が終わったあたりで、僕はお腹が痛くなりました。ご飯のあとの休憩中に食べたアイスが原因だったと思います。
体育館前も運動場前もどちらも大して変わりないと思い、僕は運動場前のトイレに並ぶことにしました。どこの遊園地かと思うくらい長い列で、五十人は並んでいたと思います。これまで男子として大して並ばずに用を足していたことを申し訳ないと感じると同時に間にあうのだろうかと心配になってきました。僕はお腹をおさえ息を吐きながら列が進むのを待ちます。
前の女子生徒が足を交差したり、しゃがみこんだりしていて、すごく我慢しているのが伝わってきました。
彼女が一瞬、こちらを振り返りました。友人の姉の有希さんでした。僕たちより年が五つ上なので高三です。学年一とまではいわずとも、美人で、とても大人びていて、当時中一の僕からすれば彼女は大人でした。芸能人でいえば若い頃の橋○愛に似ていました。背は当時百六十くらいだった僕より少し高かったと思います。
友人の話によると社会人の彼氏がいて、朝帰りして怒られたといっていたことを当時の僕は思い出していました。
「俊哉くん」
名前を覚えてもらえていて、嬉しかったことを覚えています。
「こんちは」
「お腹壊したの?」
そうでもなければ男子がこの行列に並ぶ理由はないと思ったのでしょう。はい、と僕は答えました。そこで有希先輩もお腹壊したんですか、とはさすがに聞きませんでした。
「顔色悪いけど、大丈夫?」
「大丈夫です」
そういう彼女の顔色もあまりいいとはいえませんでした。僕と話しながら、交差していた足を組みかえていました。足先を地面につけたり、浮かべたりもしていました。総じて落ち着きがありませんでした。前にはまだ二十人近く並んでいます。
それ以上、会話は続きませんでした。
応援団の声が聞こえてきました。有希さんは手を握っては開いて、ほんのりと赤くなった顔で風邪をひいた病人みたいに息を吸っては吐いていました。
有希さんは膝に手をついてお尻を突き出しました。ハーフパンツ越しでも、その彼女のおしりが子供のそれとは違う大きく男を虜にするものだと伝わってきました。
途中で僕の友達がやってきて、漏らすなよ、と僕の肩を叩いて去っていったときには殺意を覚えました。僕の腹痛にも波があり、ときどきお腹を押さえて、目をぎゅっと瞑っていました。
残り十人近くになったところで有希さんが前の人の肩を叩いて、変わってくれない、といいました。前の人は首を振りました。有希さんは足をせわしなく組換え、ときどきしゃがみこんでは、トイレのほうを恨めしそうに眺めていました。
僕の腹痛はというと、正直もう治まっていましたが、一応、行っておこうと思ったのと、有希さんのことが気になったのもあって並び続けました。我慢している人からすれば迷惑極まりない行為です。
有希さんの顔は青ざめていましたが、額には汗が浮き出ていました。小刻みに震えてもいて、呼吸のスピードが速かったです。もう、足の動きは止まらず、ずっと動き続けていました。
トイレは階段数段上ったさきにあって、トイレの入り口は塀で隠されており、そこに到達した途端、有希さんは股を大きく抑えました。中一の僕の同級生だってもうそんなことをしている子はいなかったのに、高三の彼女がそういった動作をするなんてどれだけ我慢しているのだと思いました。
なにより、彼女が前にしているトイレは男女別ではなく、用を済ませてでてきた男子生徒は前を押さえた彼女を見て驚いていました。
ようやくトイレの中に僕たちは入りましたが、男子用小便器と個室との距離は狭く、横を向いて僕たちは立っていました。ちらちらと有希さんを伺うと、もう彼女はお構いなしで足踏みをし、時折前を抑えていました。額から汗が落ちます。
あ、と彼女がいって手を離しました。その場で駆け足を始めます。残り二人。彼女は待っている女生徒を追い抜いて前に出ます。ハーフパンツの一部で丸く濃い色が浮かんでいました。
「お願い早く出て!」
彼女は叫びながら前を押さえて、駆け足をし、そしてやがて「ああ、ああ」と声をあげながらガニ股になっていきました。
外では体育祭の盛り上がる音が聞こえていますが、トイレの中は別の回線の音と思えるほど静寂に包まれていました。誰もが有希さんのおもらしを呼吸すらやめて見つめているようでした。
「じゅううううううううううううううううううううううううう」
お風呂の栓を抜いたときの音をさらに濁らせた音が、僕の耳に飛び込んできました。
幼稚園児がおもらししたみたいに、ガニ股で、とても女性としての慎みなんて忘れた様子で、彼女のおしっこは出てきました。太ももからふくらはぎを伝っていく水流もありましたし、恐らくこれは隣に立っている僕にしか見えなかったと思いますが、勢いをハーフパンツと下着で殺しきれなかったおしっこが布たちを突き破って前方の壁にあたり、伝ってもいました。
途中、男子生徒がまだ出るのかよ、とあざ笑うような声でいい、有希さんは股を抑えましたが、効果はなく、ハーフパンツをさらに色濃く染めただけでした。彼女は逃げ出すこともなく、その場ですべてを出し切りました。
どれだけ続いたかは数えていないので覚えていませんが、服にしみ込み、ズボンに沁み込んでなお彼女のお漏らしは周辺一メートルにも及びました。
がやがやと騒がしくなってくると、有希さんは顔を真っ赤にして、トイレから出て来た女生徒を押しのけて、個室に逃げ込みました。次の競技のなかった僕はトイレの前で、さも友達を待っているといいたげな顔をして、突っ立っていました。
五分と経たず、保健の先生がやってきて、個室から有希さんが出てきました。彼女は顔を涙で濡らし、先生に付き添われて、校舎に向かっていきます。ハーフパンツからは滴が落ちて、彼女の歩いた道にぽつりぽつりと染みができていました。朝帰りだってする高校三年生がおしっこを我慢することができずに、お漏らしをした。
僕の新たな性癖が開花した瞬間でした。