口を開けば「なんでこんなに待たせるんだよ」っていう文句の様な事を言ってしまいそうで、でもその女性の表情を見れば、とてもそんな愚痴を言える様な雰囲気ではなくて、力なく私にすがりつきながら「少し・・・疲れちゃった」って言いながら強く抱きしめている内に、どんどん意識を失っていく様な感じがして、
多分「御免ね・・・御免ね・・・」がその女性の最後の力を振り絞った言葉に思えて、急いでその女性を抱える様にベッドに連れて行って、その女性のアウターとスカートを脱がせている内に生足である事に気が付いて(あれ・・・ストッキングは?・・・履いてない)って思っていると(破かれた?・・・そんなに激しくされたのか)などと、勝手にまた妄想と想像で涙が溢れてきて
「なんでだよ・・・なんでひとみはこんなにいろんな男に好かれるんだよ、なんで俺の心をこんなに鷲掴みにして離さないんだよ、苦しいよ・・・俺・・・」という言葉がその女性の耳に入ったのか、聞こえていなかったのか・・・服を脱がせながら、その女性を布団に寝かせると、
うわごとの様に「ありがとう・・・優しい雄一の事が大好きだよ」って言った直後に寝息を立てながら眠りについていきました。
(言いたい事、聞きたい事沢山あったのに・・・俺の気持ちも沢山言いたかったのに)って思ったりもしましたけど、昨夜の一部を音声で知っている私は多分何をどう聞けばいいのかもわかりませんでしたし「雄一みたいに感じたりしないから」って言ったじゃないか・・・なんて事を言ったところで、それはもう後の祭りであって、イカされてしまった事を音声で知っている私は、
その女性がどんな目にあっていたのかなんて聞く必要もなくて(昨夜は寝る暇もなく攻められ続けたのか)などと思うと、また涙が溢れてきて私はただ、その女性の寝顔を涙を流しながら見ているしかありませんでした。
その女性の横で座って見ている内に眠ってしまった私が目を覚ましたのは多分深夜3時を回った頃だったんだと思います。
ハッとなって気が付くと、その女性が私の顔を見ていて「ずっと診ててくれたんだね・・・心配かけて御免ね」って言いながら私の手を握ってきて、その女性もまだ声が擦れていて、まだ眠そうなトロンとした目だったので、私も布団の中に入ってその女性の首に手を回して、その女性を抱き寄せて、何か言おうとするんだけど、
やっぱり何を言ってあげればいいのかわからなくて、子供みたいに小さな声で「まだ眠い」って言うその女性が私の胸の中に顔を埋めてきて、また寝息を立て始めて、私もまた眠りについてしまいました。
金曜日の夕方から、その女性と会えない時間が始まって、辛くて堪らない一晩を過ごして、昼になっても戻らないその女性から連絡があった後に本当の地獄の様な時間を過ごして、土曜日の夜9時過ぎまで私もほとんどまともに眠っていませんでしたし、会話の内容から想像して、その女性もほとんど眠れていなかったんだと思います。
安心した様に私の胸の中ですやすや眠るその女性の顔が愛おしくて、私も安心した気持ちで眠ってしまいました。
日曜日の朝になって目が覚めると、普段ならその女性がキッチンで朝食を作ってくれているのに、その日はまだその女性も眠っていて(こんなに疲れてるひとみを見るの初めてだよ・・・いったいどんな攻められ方したんだよ)って胸を掻き毟られる様な思いでしたけど、できるだけその女性を眠らせてあげたくて、
ふとカレーの仕込みの途中だった事を思い出してキッチンに向かうとジャガイモは皮を剥いて刻んで鍋の中に入ったままだし、ニンジンはまな板の上で切ってる途中だし、牛肉は冷凍庫から冷蔵庫に移して解凍中のままだし、しょうがなく料理の途中から始めるしかなくて、肉と玉ねぎをフライパンで炒めて、水を入れた鍋を煮立たせながらタバコを吸って、
肉と玉ねぎを鍋に移してまた煮立たせて、アクを取って火を止めてルーを入れて溶かした後に、火をつけて塩コショウを入れてまた煮立たない程度の弱火で焚きながらほんの少しの砂糖とケチャップと中濃ソースで味を調えて(1時間くらい煮込めばいいだろう)と思いながらコメを研いでジャーのスイッチを入れて、保温ポットに水を入れてお湯を沸かしながら
珈琲の豆を2杯ドリッパーに入れている途中で、その女性も目が覚めたのか、キッチンのテーブルの私の対面に座って「御免ね・・・遅くなっちゃって」って言うので「うん・・・でも今回はちゃんと戻ってきてくれたから・・・いい」って言うと「なんか雄一元気ない・・・怒ってる?」って聞くので
「怒ってるのとは違うと思うけど、なんか落ち込んでる」って言うと「遅かったから?」って聞くので「それも・・・あると思うけど・・・」っていう途中で言葉が出て来なくなって、正直なところ(俺の気持も察してくれよ・・・どれだけ心がズタズタに傷ついてると思ってるんだよ)って思いましたけど、なんとか
「寝てるか寝てないかわかんない1日を過ごしてたからね・・・なんかまだ体がフワフワして正気じゃないみたいでさ」って言うと椅子から立って私の方に歩いてきて私の膝の上に座って私の頭を抱いてくれながら「心配させて御免ね・・・でもこれで私は晴れて雄一の彼女だよ」って言ってくれたのに私の心はまだ傷だらけで、
ガサガサな心ではとても笑顔でその女性に接するなんて事はできなくて、それでも私にキスをしてくれる、その女性にほんの少しだけ癒されながら、鍋が噴きこぼれて、その女性を椅子に座らせて火を小さくしながら「もう少しでご飯炊けるから・・・食べるだろ?」つて聞くと「お腹ペコペコ・・・カレー?雄一って料理できるんだ」って言うので
「一人暮らし初めてすぐにいろいろ料理を覚え始めたんだ・・・あんまり美味しくないかもしれないけどまあ食べてみてよ」って言うと「なんか楽しみ・・・雄一のカレー」って言うその女性の笑顔は少しずつ普段の表情になりつつあるのに私の心はまだやさぐれたままで、なんとかカレーの話しができた事は私の救いでした。
炊き立てのご飯を皿に半分乗せて、もう半分にカレーをついであげると、スプーンいっぱいにご飯とカレーを乗せて口に運んで「美味しい・・・私のカレーより上手いよ・・・なんだよ・・・雄一がこんなに上手なんだったらこれから雄一に料理して貰っちゃおうかな」って満面の笑顔で美味しそうにガツガツ食べ始めて、麦茶を入れてあげると、
コップ一杯の麦茶を一気に飲み干して「美味しい」って言いながら、またカレーを食べ始めて、美味しそうに食べてくれるのは嬉しいんだけど、歪んだ私の心は(飯も食わないでヤッてたのかよ)とか、時々腰を押さえて痛そうにしているその女性の仕草に(腰が痛くなるくらいしてたのかよ)とかひねくれた気持ちにしかなれなくて、
お代わりまでしてくれたその女性の食べっぷりに満足はしたものの食べ終えて二人でソファーに座ってタバコを吸っていると「何にも聞かないんだね・・・聞かれると辛いけど雄一が黙ってると私どうしていいか・・・」って言うんだけど、本当は心の中では(感じたの?気持ち良かったの?)とか聞きたくても、
差しさわりのない「もう・・・終わったの?ほんとにひとみは俺が独占していいの?」とか「俺はやっぱり会社にいられなくなるのかな」とか聞いてしまって、でもそんな事より、その女性の顔を直視できない私のザラザラした心を見透かされるのが怖くて、帰ってきたらその場でキンタマが空っぽになるまでその女性を抱きたいと思っていたはずなのに、
視線を落として目を合わせないまま、その女性の太腿あたりを見ながら(つい半日前までここにあの男のアレが・・・)と思うと怒りと悔しさで体中の血が滾る様な思いで、どうしても饒舌にはなれないでいると「二人とも会社辞めないで済みそうだよ」って言われて
「エッ?そうなの?部長の大切なもの奪っといてお咎めなし?俺は営業部だから、まあいくら部長って言ったって他部署の俺を辞めさせるなんて事はできないのかもしれないけど、ひとみはこれからも同じ部署で仕事する事になるんだよねー・・・ひとみは気まずくないの?」って聞くと
「前にも言ったと思うけど、あの人はそんなに販促課にいるわけじゃないし、いてもそんなに仕事の事でも話しをしたりしないしね・・・まあ割り切っちゃえば多分・・・大丈夫だと思う」って言うので「だったらいいんだけど・・・ほんとに大丈夫?」って聞くと
「もう終わった事だから・・・それに私との関係が社内に広がるのは相当警戒してたみたいだし、どのみちそんなに長く続かない関係だったんだよ・・・きっと・・・それにね、確かに雄一の事は殺してやりたいくらい憎らしいみたいな事言ってたけど、あの人は人事に関して何か力があるわけでもないらしくて私達をどうこうできるわけでもないみたいだよ」って言うので、
その事は素直に嬉しくて「そうなの?じゃあ俺達このまま仕事続けられるの?」って聞くと「みたいだよ・・・今のところ」って言うので「なんだよそのみたいだよっていうの」って聞くと「もしかしたら将来あの人が人事部に異動とかあったら、その時は復讐されるのかもしれないよ」って言うけど、
もう私は転職しなきゃならないと思っていたプレッシャーが一時的にでも回避された事で(助かった・・・)という気持ちでいっぱいでした。
「少しは元気・・・出た?」って聞かれて「うん・・・まあ」って言うと「あ、そうだ・・・雄一って機械とか詳しい?」って聞くので「まあ・・・PCとか部品交換くらいなら自分でするし、バイクとか車の部品も機材さえあれば、そこそこいじったりしてたしね」って言うと
「あのさー・・・昨日急にスマホのバッテリーがなくなっちゃってさ、そのせいもあって雄一に連絡できなくて困っちゃった・・・なんでかな・・・バッテリー交換しないとダメ?」って聞かれて、それまで地獄の様な1日の事は何も言うまい、何も聞くまいと思っていた気持ちが一気に崩れてしまって
「だいじょぶだよ・・・そのスマホのバッテリーは正常だと思う」って言うと「何?どこ見たらわかるの?教えて」って聞くので「昨日昼間電話してきただろ?」って言うと「うん・・・途中で部長が起こって取り上げられちゃったけどね」って言うので「通話切れてなかったんだ」って言うと
「エッ?・・・嘘・・・聞いてたの?・・・そのまま」って聞くので首を縦に振ると「そうか・・・だから何も聞かないんだ・・・だから私から目を反らしてるんだ・・・ずっと?聞いてたの?」って聞くので「部長がおもちゃがなんとか言ってたところで電源が切れた」って言うと
「そっか・・・じゃあ少なくとも1時間以上繋がりっぱなしだったんだ・・・じゃあバッテリーもなくなっちゃうよね・・・元々あんまり残ってなかったし・・・」って言った後二人とも何も言えなくなって2分くらい沈黙が続いた後に「ずっと・・・聞いてたの?・・・なんで?なんでそんな事したの?聞きたかっの?私が部長と・・・」って言ってる途中で
「聞きたいと思う?自分が一番大切に思ってる宝物が人の手で傷つけられる様な会話・・・すぐに切ろうと思ったよ・・・だけど金曜の夜に、やっぱり取り戻したくてどうしようもなくなってひとみが住んでたマンションの前まで行ったけど窓の照明は消えてたし、どこかのラブホかホテルかと思って回りを見渡したらホテルなんて無数にあって、どこに行けばいいのかわからなくて」
「しょうがないから、もしかしたらひとみが戻ってるんじゃないかと思って、ほとんど歩いて帰って来てもやっぱり戻ってないし、とにかくひとみに逢いたくて逢いたくてどうしようもなくて、ほとんど眠れないまま朝を迎えて、もう戻ってくるもう戻ってくるって思ってても全然戻って来なくて、やっと昼にひとみから電話があったから飛び起きて電話に出て、話せて」
「やっとひとみと繋がった・・・もう絶対離れたなくないって思ったら電話を切る事ができなかった・・・どんな状況でもひとみと繋がっていたかったから電話を切りたくなかった・・・またひとみが帰ってこなくなるんじゃないかと思ったら、どうにかして繋がっていたいと思ってバッテリーがなくなるまでずっと聞いてた」って言うと
「バカじゃないの?なんで自分で心を切り刻む様な事をするの」って言うので「もうひとみと離れ離れになるの嫌なんだよ、また戻って来なくなるんじゃないかって思ったらどうしてもひとみと繋がってたかったんだよ」って言うと「私の声も聞こえてたの?」って聞くので「多分・・・ほとんど」って言うと
「じゃあ・・・イッちゃった時の声も聞こえてたんだ・・・」って言うので「我慢してくれるって言ったのに」って、ついに一番言いたかった、でも一番言わない様に我慢してた言葉を、まるで子供がダダをこねる様に言ってしまって、でも多分それが私の一番の不満だったところで言わずにはいられなくて、でも急に顔を真っ赤にして怒り出したその女性は
「だったら雄一はどうだったの?彼女と最後の時やっぱりしたでしょ?私ちゃんとわかってるんだから・・・雄一はイカなかった?気持ちよくなかったの?せめて最後くらい気持ちよくしてあげたいとか思わなかった?あの時は私何にも言わなかったけど凄く傷ついたんだから」
「でも雄一が私と一緒にいたいって思うから彼女と別れて来たって言ってくれたから私は救われたの・・・だから私も雄一といっしょにいたいって思ったの・・・それと同じ事だよ?・・・もうこうなったら全部ぶちまけちゃうけど雄一の知ってる通り何回もイカされちゃったよ・・・だってしょうがないでしょ?」
「少なくとも少し前まで家庭があるって言ったって私の彼氏だったんだし私の事知り尽くしてるんだから我慢なんてできなかったよ・・・いけない?それに私も多分雄一が彼女と別れる時にせめて最後くらい気持ちよくしてあげたいって思った事もわかってる・・・それと同じ様に私もせめて最後くらい気持ちよくしてあげたいと思ったの・・・」
「多分雄一も同じ様に彼女の事が好きだった・・・そして私もあの人の事が好きだったの・・・そうだよ・・・雄一は何も聞かないで我慢してくれてたみたいだけど雄一が頭の中で悶々と想像してる通りいっぱい感じちゃった、雄一も聞いてただろうけど、気持ちいいって言っちゃった・・・しょうがなかったの、あの人は私の感じるとこ全部知ってるの、それなのに我慢できると思う?」
って言いながら泣き出してしまって、その女性の言ってる事は全部その通りで私は何も言い返せませんでした。
それからも聞いてもいないのに私の知らなかった金曜の夜の事まで話し始めて「最初は頑張ったんだよ・・・イカない様に必死で我慢したんだよ・・・でも(あいつの為に我慢してるのか、それで私が満足できると思うか?これで最後にしてやるって言うと思うか?)って言われたら素直に感じるしかないじゃん?」とか
「おもちゃだって嫌って言ったんだよ・・・でもこれで最後にしてやるって言われたら、そうしてあげるしかないじゃん?」とか言われ始めて、これ以上私の心をエグる様な言葉はないはずなのに、綺麗な顔が涙でグチャグチャになって鼻水もいっぱい垂れてて、それでもその女性の顔が堪らなく愛おしくて、私も涙が止まらなくなってしまって
「もういい・・・もう何も言わなくていい・・・俺とこれからずっと一緒にいてくれる?我儘言って御免ね、許してくれる?」って言うと、その女性も「私も御免ね、いっぱい気持ちよくさせられて御免ね・・・これからは雄一だけだから・・・ずっと一緒にいていい?私と一緒にいてくれる?」って二人で抱き合ってずっと泣いていました。
我慢して聞かずにいた事が逆に私の中でわだかまりになっていたみたいで、二人で毒を吐き出す様に口喧嘩をしている内に少しずつ毒が体から出ていく様な気分で、少しずつ気持ちが楽になっていきました。
でもやっぱり、その日のうちに体の中の毒を全て吐き出す事はできませんでしたし、抱きたい・・・っていう気持ちは満々でしたけど、あの男に抱かれてたんだ・・・っていう気持ちもありましたし、それよりもその女性の体を労わってあげたい気持ちで、せめてその女性が腰を押さえる仕草がなくなるまでセックスをせずにいました。
そして大変な壁を越えて月曜日、時間と現実はどんなに辛い思いをしても、どんなに楽しい時間を過ごしていても容赦なくやってきて、朝出社すると仲のいい同僚から「高村君・・・課長が呼んでるよ」って言うので、営業部のうちの課の課長のところに行くと
「お前最近女の事で悩んでるんだって?それが原因でこの成績の落ち込みか・・・お前まだ入社して1年も経ってないんだぞ、女に現を抜かせている場合か?・・・ずっと新入社員の中でトップだったろうが・・・たるんでるんじゃないか?」って言われて、かなりきつい言葉でしたけど、確かに私の中でいろいろあり過ぎて、課長の言われる通り、
確かに女に現を抜かしている事は確かな事で、何も弁解する事もできずに10分程お叱りを受けていました。
初めて成績の事で上司にきつく叱られた事に落ち込みもしましたけど、でも意外な事に自分の中で(そうだよな・・・まずは社会人としてちゃんと一人歩きできなきゃ・・・ひとみの言う通り俺はまだまだだよな)って素直に反省する事もできましたし、仕事にも気合が入って充実した日々が続きました。
でも一応仲のいい同僚には「お前、俺を課長に売ったな」って言うと「怒られたか・・・ハハハッ・・・少しは気合が入っただろ?」って言うので「俺の彼女事情まで課長に話す事ないだろ?」って言うと「だってお前最近飲みに誘っても断るし、お前社会人なんだからな、もう学生の頃とは違うんだぞ」って言われて
「わかってるよ、その内埋め合わせするからさ・・・それとこの前岡田さんに再アタックしたって言ったろ?なんか・・・うまく行きそうなんだ」って言うと
「マジか・・・やっぱりお前は殺す・・・折角俺が狙ってたのに・・・まあしょうがない・・・じゃあ元のお前に戻れるんだな?お前の調子が悪いと飲みにも誘えないし、販促課の女子たちも誘えないんだからな・・・頼むよ、ほんとに」って言うので「結局お前は私利私欲なのかよ・・・勘弁してくれよ」って言うと
「お前の元気が戻ってくれればそれでいいんだよ」って言って自分の仕事に戻って行きました。
そして木曜日の仕事を終えて、ある店で買い物をして私は足早に帰宅しました。