僕だけが知っているあの飲み会の日のデキゴト
大学3年生の春、サークルの飲み会で駅近くの居酒屋に集まりました。
そこは、少し古めの店でしたが、結構広めなので僕たちのサークルメンバー全員集まっても大丈夫です。
とはいえ、そんなに全員が揃うことはなかったので、その日も参加者はメンバーの半数程度でした。
男女比としては、少し男子が多いくらいで、バランスよく全てのテーブルに女子がいる感じでした。
席は、4人掛けのテーブル5つ分で、僕は奥から2番目のテーブルになりました。
同じテーブルになったメンバーに不満はありませんでしたが、テーブルの位置的にトイレに行く人が絶対に通っていきます。
僕たちのサークル以外にも、何組か別の団体が飲んでいました。
中には、叫び声をあげる猿のような集団もいて、何度も下品な話を大声でしながら横を通っていきました。
開始から一時間半くらい経って、僕もトイレに行こうと席を立ちました。
この店のトイレは、男性用小便器が1つと個室が2つ並んでいる形式で、とくに男女で別れてはいませんでした。
僕は、仕切りがあるとはいえ完全に丸見えな男性用小便器は嫌だったので、空いている個室に入りました。
水を流す直前、先に入っていた隣の個室から、例の猿集団のひとりであろう男の馬鹿っぽい声が聞こえてきました。
もしやと思い、水を流して扉を開ける音をさせてから、再度個室にこもりました。
隣の男は、そんなことをしなくても気にしていなかったかもしれません。
「こらこら、おっぱい柔らかすぎてドコ持っていいかわかんないじゃ~ん」
「ほら、ゆっくり座って。そうそうそう、いいねぇ~」
男の声しか聞こえてきませんでしたが、女を連れ込んでいるのは明らかでした。
女のほうが酔っぱらっているのか、個室の壁に何かが当たるコツンコツンという音も響いていました。
そして、やはり予測していた通りの展開になりました。
「あぁ~。見てみな、ガッツリ挿っちゃってる。恥ずかしい?」
「おいおい、そんな抱き着かれたら腰動いちゃうじゃねえか」
男の言葉から、隣で何が起きているのかはよくわかりました。
ガタガタという音とあわせて、女の抑えようとしながら漏れている声もかすかに聞こえてきました。
「今日会ったばっかりなのに俺達すっげえ相性いいよね」
「気持ちよくてドバドバでちゃったよ~」
大きく響くトイレットペーパーの音を聞きながら、僕は扉の音をさせないようにトイレを後にしました。
手は洗えなかったので、席に戻っておしぼりで拭きました。
気持ちを落ち着かせるようにしながら、後輩たちと話していると、見るからに馬鹿っぽい男が通っていきました。
トイレ側から歩いてきたので、多分あれが個室でヤッていた奴なんだとわかりました。
変な歩き方で去っていった男からしばらく遅れて、女も僕のテーブルの横を通り過ぎました。
それは、なんと僕のサークルの2年生の女子 A子でした。
A子は、明るい茶髪にピアス盛りの子で、サークル内では異質な子でした。
複数の男子メンバーとの関係を噂されているような人物なので、「うわー、アイツこんなとこで何してんだよ」と思いながらも納得してしまいました。
これだけなら、僕もサークル内でついつい喋ってしまったかもしれません。
しかし、別の女子メンバーからある話を聞いてから絶対に誰にも言えなくなってしまいました。
その子は、一番トイレ側のテーブルにいたのですが、同じテーブルにいた3年生のC子がトイレで寝てしまっていたらしいのです。
そして、C子を見つけてテーブルまで連れ帰ってきたのが、あのA子だったとのことでした。
つまり、あの男と個室で一緒にいたのは実はC子だったのです。
C子はサークル内でも見た目普通くらい、特に目立つことも無い真面目な子で、大学でも彼氏は居なかったはずです。
ハッキリ言って意外な人物だったのと、あのとき一切会話が聞こえなかったので、同意のもとでの出来事なのかわからず誰にも言っていません。
おわり