僕が中1だったとき、体育の先生は男のA先生だった。
A先生は格闘技で全国大会に出たこともある30位のかなり体格のいいゴツい人だった。
プールの授業でその事件は起こった。
初歩的な練習で、プールサイドにつかまって平泳ぎの脚の動きだけを練習していた。
A先生はプールサイドの上からみんなを見て回り、アドバイスを出したり、「君は合格だ!」などと言ったりしていた。
プールサイドの右側では男子が練習し、左側で女子が練習していたのだが、最初のほうは男子も女子も満遍なく見て回っていたA先生が、なぜだか全然こっちに来なくなった。
「合格!」と言われた人からプールで自由に泳いで良いと言われていたので、
「せんせーい、見てください!」
と男子たちがA先生を呼び始めた。
「おう、行くよ!」とA先生は応じながらも、ずっと女子に指導している。
たまに申し訳程度にこっちに回ってくるが、テキトーに男子に指示してすぐ女子の方へ戻っていく。
A先生が女子の指導に注力しているのは誰の目にも明らかだった。
僕は友達に「A先生はロ◯コンだな」と言った。
友達は「ロ◯コンって何?」と真顔で聞いてきた。
僕は手早く、ロ◯コンとはああいう幼い女子が大好きな大人のこと、と友達に説明すると、他のクラスメイトたちも話に加わってきて、男子全員がA先生はロ◯コンだということで一致団結した。
みんなで楽しくA先生を愚痴っていると、誰かが「ロ◯コンA先生!僕たちもちゃんと見てください!」と大声でA先生に聞こえるように言った。
そのときA先生はしゃがんで、プールサイドに捕まり脚を必死でクネクネ動かしている女子生徒に何かアドバイスをしているところだったが、
急に立ち上がると僕らに向かって吠えた。
「誰がロ◯コンじゃ!!!!!」
その迫力と剣幕に、水をジャバジャバしていたクラス全員が静まり返った。
予想以上に静かになった空気の中で後戻りできなくなったA先生は、威厳たっぷりの足取りでゆっくりと男子たちに向かって歩いてきた。
「おい、伊東。もう一度言うてみろ」
A先生が今度ははっきりと、「僕は先生として生徒を叱ってますアピール」をしながら、伊東の前で仁王立ちになった。
伊東は何も言えない感じだった。
A先生はクラス全員が注目してるのに明らかに顔を紅潮させていた。
ブチギレして、ロ◯コン呼ばわりに過剰反応してしまった自分を猛烈に責めているようだった。
それから先生はみんなに向かって「続けろ!」と言って何事も無かったかのように振る舞ったが、
男子も女子達もみんなA先生がロ◯コンと呼ばれてブチ切れたという事実をそう簡単に忘れることはできなかった。
その後、僕は授業終わりに女子が伊東に「ロ◯コンってなに?」と聞いているのを目撃した。
A先生は3年間僕たちの体育の先生だったが、
もも◯ロファンだと判明したり(「あの子たちは頑張ってるよ。なかなか出来ることじゃない」とA先生はもも◯ロを褒めていた)、
保健の授業で「自慰行為はね、やってみるとまあぁ気持ちいいですわ。」と発言したり、いろいろと生徒たちの物議を醸していた。
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中◯生という思春期の入り口に立っていた僕たちは、たくさんのことを学び大人になっていった。そこにはA先生の授業もしっかりと役立っていたと今では思う。
本当にありがとう、A先生。
またどこかで会いましょう。
いつまでも、ぼくたちのロ◯コン先生でいてください。それでは、また。
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これを、僕たちの青春に捧ぐ。
追伸:
僕は同じクラスのHちゃんがずっと好きでした。ついに言いだせませんでしたが。
Hちゃん、これをもし読んでいるなら、また同窓会で会いましょう。