少し迷ったが、自分のロリコミックを取り戻すことはせず、ぼくはそのまま妹の机の引き出しを閉めた。間もなく帰ってくる妹がどうするのか様子をうかがうことにした。
セーラー服姿の妹が帰宅して、予定より早くぼくが合宿から帰ってきていたのでびっくりした。ぼくを見て嬉しそうな焦ったような表情をしていた。ぼくは妹に着替えと猶予の時間を与えるために、ダイニングに移動しおやつでもないか探した。
しばらくすると妹もダイニングに現れた。妹はまだセーラー服のまま、着替えていなかった。
「おにいちゃん、早かったね」
妹はついさっき嬉しそうだったのに、やや非難めいた口調で、自分のいたずらが発見されたか見極めようとする目で
「どうしてこんなに早かったの?」
ぼくが事情を説明した。
「ふーん、そう」
自分が質問したくせに返事に興味が無さそうな妹
「今から着替えるから、入っちゃだめだよ。見たいなら来ていいけど」
いたずらっぽくぼくをからかって、部屋に戻っていった。しばらくして
「もういいよ」
部屋に入って自分の机をちらっと確かめると、ロリコミックは僕の机の上の参考書カバーの中に戻されてあった。
2段ベッドの1階に腰掛けている妹が、並んで座れと、ポンポン手でたたいた。ぼくは腰掛けて、合宿の帰りにみんなで立ち寄ったおみやげ屋さんで買った、妹の名前が入ったキーホルダーを渡した。
おみやげがサプライズだった妹は、受け取るとうつむいた。
「おにいちゃん・・・」
「おにいちゃんって、わたしのこと好き?」
遠慮がちに手を握ってきた。
やっぱり勘違いをしている。妹ものストーリーが詰まったロリコミックを兄が隠し持っている理由は、兄がシスコンだからだと決めつけている。
もちろん妹のことは好きだが、それは可愛い妹だから家族として当然のこと。誤解のもとになっているあの本は、たまたま書店で気になって買ったものがそういう内容だっただけだ。
いろいろ前提は必要だが、好きかと質問をされている今は、そう答える。
「好きだよ」
誤解を解くため、まだ続きを言おうと思っていたが
「よかった・・・」
感極まった様子の妹に先に涙ぐまれて、続きが言えなくなってしまった。おみやげのキーホルダーがたまたまツボにはまってしまったのだろうか。
「わたしは子どものころからずっとお兄ちゃんが好き。でも、おにいちゃんはわたしのこと、好きじゃないのかと思った・・・」
片思いを我慢して育ってきた妹が、相思相愛を遂げられたと勘違いして涙ぐんでいる。スポーツが得意な健康優良児だったのに、こんなセンチメンタルな面もあったのか。
隠していたロリコミックを見つかってからかわれたり、ママにばらされたりするのを覚悟したが、想定外の展開にほっとしながらも戸惑った。でも妹がぼくを好きでいてくれることは嬉しいし、ぼくも妹は好きだし、わざわざ訂正する必要はない。
妹が涙を流しているとき、なんとかするのが兄の務めだ。
思春期の中学一年生の妹のペースに合わせながら、ロリコミックの発見の経緯とか、突然の妹の告白の背景をそのまま聞こうとしていた。引き出しの奥で見つけた雑誌の付録と妹の関係についても、勝手に妹の引き出しの中を見た負い目があるからこちらから聞けないけど、関心は全く消えていない。
「もしかして・・・机の上に隠してたコミック、読んだ?」
機嫌がよくなってきた妹は、髪に手をやり、ばれたかというふうに一瞬片目をつぶって舌を出した。でもすぐ開き直った態度に出た。
「えっ、あれって隠してたつもり?」
もう妹は大丈夫みたいだ。
「人前で堂々と見せられるものじゃないし」
「たしかに無理だね」
「やっぱり読んだんだ」
自白というか、いもうとは平然と語りだした。
「おにいちゃんはよくあの参考書をしまってそわそわするから、気になってたの」
「(ばれてたのか)」
「で、おにいちゃんがいない隙に見たら、なんと」
「おにいちゃんがエロいのは昔から知ってるけど、あそこまで重度のシスコンとはね」
いもうとは嬉しそうだ。
「わたしもブラコンだけど、あそこまでは(無理)」
さりげなく結構すごい告白を交えながら、まんざらでもなさそうに、頬を赤らめている。
たまたま1冊コミックを持っていたからといって、その内容すべてをぼくが希望していると結びつけるのは早合点がすぎる。でも勝手に勘違いして赤くなっている妹は可愛かった。リクエストしたら応じそうなのが怖い。
「いやいやいや、それはちがうから」
たぶん妹は、一部の過激なシーンだけをぼくが否定したと受け止めた、そういう意味じゃないんだけど
あとでわかった当時の妹の考えていた許容範囲は、通常の恋人同士がするイチャラブまでだった。キスとかエッチとか。
ちょっと緊縛とか、軽いアナルとかおしっことかのいたずらの範囲はOK。コミックには、もっと過激な、3PとかSMとか、いろいろあった。
もう妹はうきうきしている。スポーツをやってるからか、切り替えが早い。
「今日は記念日だね」
突然の転換にとまどう。
「えーと、何の日だっけ?」
「順序が逆になっちゃったけど・・・。おにいちゃん、こっち向いて」
ぼくよりちょっと背の低い妹は、伸びあがるようにぼくに口づけをした。
ちゅっ
妹の柔らかい少し湿った唇が僕の唇に触れた。
「おにいちゃんと初めて恋人キスをした記念日」