子供の頃、親が離婚した。
俺10歳、妹6歳の時だった。
俺は親父に、妹は母親に引き取られた。
父子家庭だったけど、不幸でもなければグレることもなく、大学まで行かせてもらった。
就職活動はリーマンショック後の世界不況の真っ只中。
卒業間近、就職決まらず。
バイト先のコンビニ店長が、
「うちの会社、受けてみる?」
コンビニの仕事は嫌いじゃなかったから、受けてみたら合格。
就職した会社は変な会社だった。
「しばらく社長に付いてくれる?」
入社初日から、社長と行動を共にすることになった。
朝、社長の自宅に社長を迎えに行く。
「ご飯食べた?腹減ってない?」
毎朝、社長に聞かれる。
初日、
「食べてないです」
って正直に答えたら、社長の家で一緒にメシを食うことになった。
独身、一人暮らしの社長は料理が趣味。
豚のしょうが焼き、いわしの酢漬け、筑前煮、豆腐の味噌汁に丼めし。
食後にヨーグルトとコーヒー。
「朝はしっかり食べないとね。どうしても時間がない時はバナナを二本食べなさい」
気さくで話し好きな社長。
「煙草は?」
「吸いません」
「ごめんね、吸ってもいいかな?」
社長の家だし、新入社員が社長に「ダメ」なんて言えない。
社長の車で一緒に出勤。
途中、コンビニで買い物。
「〇〇店、パンの陳列が乱れてたよ・・・」
会社到着して部長に報告し、すぐに車で移動。
雑居ビルに到着。
階段を登って、エレベーターで下りてきて、別の会社へ到着。
「〇〇ビルの掃除は行き届いていたよ」
またも報告。
すぐに車で移動。
昼食をファストフードで取り、別の会社に到着。
「〇〇店のトイレの電球、取り換えた方がいいと思う」
またも報告。
「働く人はいらない。仕事をする人が欲しい」
移動の車中で、社長はこんな話をよくする。
「人が動くで働くだ。人が武士の心を持って、仕事の仕だ。武士の心とはプライドだ。仕事とは人がプライドを持って、事を成すことだ」
説教じゃないけど、格言じみた話はけっこう聞かされた。
仕事終わりにメシ食いに連れて行ってもらって、キャバクラに行ったこともある。
翌日、別の会社に行く。
「キャバの〇〇。〇〇ちゃんの接客は俺には合わない。喋っているうちにタメ口になるのはいかがなものか・・・」
社長はコンビニ、不動産、飲食店、キャバクラ、と、いくつもの会社を経営している。
こんな感じで3ヶ月、社長に付いて回った後、俺はキャバの会社に異動になった。
配属先はキャバの店舗。
職種は「ボーイ」だ。
出勤初日、店長に連れられて女の子の控室に挨拶に行ったら、女の子同士が掴み合いのケンカ。
店長が間に入って治めた。
「あれも仕事だから」
事務室で店長にそう言われた。
オーダーを運ぶのもボーイの仕事だ。
初めてオーダーを運ぼうとした時、店長に止められた。
「今、客がレイちゃん口説いてるでしょう?このタイミングで持って行くと客が嫌がるから、口説きが一呼吸するまで待って」
お茶ひいて、控室にいる女の子にパシリに使われた時、
「すぐに買いに行かなくていいよ」
と店長に止められた。
女の子からは「遅い」と怒られた。
「ミナちゃんお茶ひいてイラついてるから、八つ当たりさせて発散させないとね」
店長から最初に言われたのは、
「ボーイの仕事は気配りと間。それがすべてだよ」
社長に付いて回った時もそうだったけど、俺は「仕事」以外の大事なことを教わっている気がした。
1年も店にいると客の間も掴めるし、女の子の揉め事も治められるようになった。
ボーイ仲間や女の子とも親しくなる。
「サヤ」ちゃんって女の子がいた。
サヤちゃんは指名が入ると、必ず最初に指名客が吸う銘柄の煙草を渡す。
煙草を吸わない客には好みの嗜好品を渡す。
俺達ボーイにもくれる。
俺のフリスク好きを知って、送りの時はフリスクをくれた。
これだけ気配りができて、大島優子似で可愛いくて、巨乳とくれば人気も上がる。
すぐにNo.1になった。
ところが、突然、店に
「辞めます」
とだけ書いたメールを送りつけて、出勤しなくなった。
店長がサヤちゃんのワンルームマンションに行ったが、引っ越していたそうだ。
店の人間も指名客も残念がったし、突然辞めたことを不思議に思っていた。
そして、忘れもしないあの日が来た。
「サトル君、修羅場くぐるかい?」
店長の口調がいつもと違う。
「キャバはどんなに飾っても、客も女の子も本性が隠せない。人間の本性を見るかい?」
店長が何を言っているのか、さっぱりわからない。
俺は店長を信頼していたから、店長に従うとだけ答えた。
あの日、俺は店長に言われて「レイ」を自宅ではなく、事前に店長に言われた廃工場に送った。
「ここで、店長から話があるの?」
レイはどうやら店長から、「話がある」と事前に言われていたらしい。
車から降りて怪訝な顔をするレイに、廃工場に隠れていた男達が襲いかかった。
俺の目の前で、レイは男達に乱暴に犯された。
「どんな気分です?レイさん」
いつの間にか現れた店長がレイに声をかけた。
「サヤちゃんにしたことの責任を取ってもらいますよ」
カメラやマイク、ライトが用意されて、撮影が始まった。
レイは放心してされるがままだったが、いつしかアエギだし、「いくッ」と、声をあげた。
そこからは狂ったように声をあげ、男達のどんな命令にも従っていた。
縛り、ムチ打ち、ろうそく、浣腸、アナル、あらゆる辱しめをレイは受けて、そのすべてを撮影された。
これは俺の想像だけど、サヤちゃんが入店するまでNo.1だったレイは、その座を奪ったサヤちゃんを誰かにレイプさせたんだと思う。
そして、店を辞めるように仕向けたか、辞めるように脅迫したのだろう。
「嫌がらせ程度なら放っておいてもいいんだけど、レイのしたことはケジメを取らないとね。店が成り立たない」
とだけ店長は言った。
サヤちゃんがどうしているかは知らないけど、レイはその後3年間客を取らされた。
それもアナル好きの変態の客ばかり・・・。
今はSMクラブで働いているらしい。
俺は異動になり、いくつもの店舗を渡り歩いた。
今は「サトル君」ではなく、「サトルさん」と呼ばれている。
色んなことがあったし、この前もレイと同じことがあって、俺が店長と同じ役割を果たした。
そしてこの夏、俺は新店舗を任されて、店長になる。
今は新店舗の立ち上げで忙しいが、また、キャバの話を書きに来るよ。