あらかじめお話しておきますが、エッチなどの描写はありません。
それを踏まえて、読んでくださいね。
今から、2年前の4月のこと。
私は、市内で催されたある話し合いの場にいました。
手術の経験者がここに集い、おのおのの経験を話したりする場所です。
私は幼い頃、大腸疾患での手術を受けました。
物心が付いた頃には、お腹に傷跡がありました。
私には、二つ下の弟がいました。
一緒に風呂に入ることもありましたが、なぜか、弟のお腹には、傷跡はありませんでした。
すごく、引け目を感じていました。
その話し合いが終わり、私はすぐに帰ろうとしていました。
「ごめんなさい。少しだけいいですか?」
突然、後ろから声をかけられて、振り返りました。
「あっ、はい、いいですよ」
彼女と会場の庭にあるベンチに、並んで座りました。
その女性は、まだ20代くらいに感じました。
私とは、年齢もだいぶ違います。
当時、私は59歳。
定年を、翌年に控えていました。
実は、私は50歳で初めての結婚をするも、2年で離婚しました。
もう、年齢のことを考え、結婚はあきらめていました。
そんな私に、まさかの事態が起きるなんて、当時の私には、知る由もなかったんですね。
私に話しかけてきた女性は、まだ24歳。
過去に心臓疾患で手術の経験があったそうです。
まだ、彼女が10歳のこと。
突然、心臓の鼓動が不規則になったそうです。
彼女の病名は、心臓弁膜症。
テレビのコマーシャルでも、最近耳にする病名です。
心臓の弁が、突然機能を失う。
当然、緊急手術。
なんとか、命だけは取り留めました。
麻酔から覚めた彼女は、自分の体を見て、愕然としたそうです。
体に、傷跡がある。
男性なら、仕方ないと割り切れることも、女性からすれば、大ショックですよね。
あれから、毎日、学校の教室の片隅に、ポツンと一人ぼっち。
当然、体育の授業なんて、できません。
それをやっかむ、クラスメートもいたそうです。
彼女は心を閉ざし、制服のスカートさえ、履くことはなかったそうです。
「治療に、どれだけかかったの?」
など、心ない言葉を浴びたそうです。
彼女は、話し合いの場にいましたが、結局、発言することはありませんでした。
そんな彼女が、なぜか、私に話しかけてきたのです。
「もし、良かったら、だけど、、、アドレスを教えてくれませんか?」
突然のことで、悩みましたが、受け入れ、アドレス交換をしました。
その日の夜、彼女がメールをくれました。
「今日は、本当に、ありがとうございました。私の話を聞いてくれて、ホッとしました。また、お話しさせてくださいね」
「こんな私でも、いいんですか?別に私は、構わないですよ」
次の日、私は心臓弁膜症について、詳しく調べました。
機能しない弁を、手術により、人工弁と交換する手術であること。
それも、二種類あること。
ひとつは、半永久に使える弁であること。
ただし、これを選択した場合、血液をサラサラにする薬を、毎日飲むこと。
ということは、いざという時に、血が止まらないというリスクがあります。
もうひとつは、定期的に交換する必要がある弁であること。
おおむね、その周期が、15年であること。
ということは、傷跡がまた増えるというリスクがあります。
彼女の両親は、定期的に交換する必要のある弁を選択したんですね。
その後、彼女が高校生の時の話をしてくれました。
初めての友達ができた時のこと。
だけど、なかなか受け入れることができず、何度も激しい言い合いになったとか。
だけど、クラスメートたちも、あきらめませんでした。
彼女は根負けし、手術後、初めての友達ができました。
やがて、仲良しのクラスメートの何人かに、彼氏ができました。
お付き合いが始まり、仲良く並んで帰る姿を見て、心が揺れたそうです。
だけど、
【この体では、恋愛なんてできない】
そう思ったそうです。
高校を卒業して、まもなく9年。
彼女の友達には、結婚してママになり、一部は引っ越しして、近畿や九州に移り住んだ人もいるそうです。
もちろん、今も、交流は続いていますよ。
あの頃、それぞれの理由があり、お互いに
【結婚はしない】
というスタンスでした。
ところが、あれから数ヶ月が過ぎ、話は思わぬ方向へと動き始めることになります。
次回では、物語のシナリオを、
【想定外なレベル】
に変えた、その日について。
そして、それ以降の話もしていこうと思います。